例年どおりその年に "プレイ" したエロゲ(含む一般ノベル)26作品を気のむくまま語っていきます。核心的なネタバレはしませんが、作品内容には触れますしダメなものはダメと言いますのでそこはご注意下さい。
・2014年にプレイしたエロゲ18作品
・2015年にプレイしたエロゲ27作品
また本記事では「おすすめ度」と「私的満足度」をつけていきます。
おすすめ度はその名の通り「他者に勧められるかの度合い」で★★以下が駄作、★★★(3.5)が平均ライン「普通」、★★★(3.8-3.9)が「結構おすすめ」、★★★★(4.0)超えは「とてもおすすめ」で多くの人に愛されるだろうと見込んで付記します。ただその分星4を超えるのは中々ないようにしています。(最高は星5)
同時に表示される私的満足度は私がいかに満足したかの指標になっていますので、両者を見比べてみるのも面白いかもしれません。
(詳しい評価内容はこちらで→おすすめエロゲリスト)
ちなみに本記事の文字数35,700文字、まったり読んで頂ければ幸いです。
それではどうぞ。
段落SKIP
- トライアンソロジー~三面鏡の国のアリス~(2016,07th Expansion)
- 少女たちは荒野を目指す(2016,みなとそふと)
- 去人たち(2007,k2cee)
- Corona Blossom(2016,FrontWing)
- グリザイアの旋律(2016,FrontWing)
- 果つることなき未来ヨリ(2015,FrontWing)
- 鬼哭街 リメイク版(2011,Nitroplus)
- fault - milestone one(2013,ALICE IN DISSONANCE)
- ひまわり-Pebble in the Sky-(2015,FrontWing)
- ピュアガール(2012,FrontWing)
- HOLY BREAKER!(2014,H. I. Design Office)
- 恋色空模様(2010,すたじお緑茶)
- Hyper→Highspeed→Genius(2011,ういんどみる)
- あえて無視する君との未来(2012,ALcotハニカム)
- Bullet Butlers(2007,PULLTOP)
- 彼と彼女と彼女の忠義(2009,non color)
- ゆのはな(2005,PULLTOP)
- つよきす Full Edition(2011,Candysoft)
- つよきす 三学期 Full Edition (2013,Candysoft)
- つよきすNEXT(2013,Candysoft)
- 戦国ランス(2006,アリスソフト)
- RanceVI (2004,アリスソフト)
- ランス03 リーザス陥落(2015,アリスソフト)
- 百花繚乱エリクシル(2013,AXL)
- BALDR SKY Dive1(2009,戯画)
- アルカディアの灯火(2015,NostalgicChord)
- 魔女こいにっき(2014,Qoobrand)
- おわり
トライアンソロジー~三面鏡の国のアリス~(2016,07th Expansion)
退屈を紛らわすべく魔女・アリスはあらゆる『カケラ』を貪り喰っていた。『カケラ』とは異なる世界や運命のことであり、可能性だ。
そのハラワタを引きずり出し一番美味しいところにかぶりつく。ガブガブ。それが彼女の今までのやり方だったし、だからこそ"腸裂きのアリス"などと呼ばれていた。
けれどそんな食べ方をすれば一つのカケラなどあっと言う間に終わる。楽しみはなくなる。一瞬で消費。それ確実。ならば今回は趣向を凝らして「異なる世界を順番にめぐる」ことにしてみよう。
――青春田舎物語『カントリーガアル』
――学園ラブコメ『学園恋愛(と呼ぶにはおこがましい)アドベンチャー』
――未来戦争SF『ベスピオ2438』
この3つのカケラを紅茶やスコーンを交互に、少しづつ、召し上がるように愉しむ。アリスはそう決めた。
そうして3つの世界を旅する魔女のお話が、はじまった。
もしも『2016年ADVアイディア賞』があるのならば本作は受賞間違いなし、というくらいに奇抜で奇妙な世界構造であった。メッタメッタにメタメタである。*1
まずアリスが上位存在として3つの物語を俯瞰していることがメタだし、その3つの世界も一巡するごとにメタ的な謎が現れてはチェーンのように繋がっていく様がなかなかに面白い。本来関わりがないはずのカケラ同士はなぜ「結びつく」のか? またそれはどんな「結び方」をしているのか? あるいは誰が何のためにこんなことをしているのか? そしてラストで暴かれるのものとは? そう推理するのが楽しい作品である。
アリスのTeachingは丁寧すぎるほどに丁寧であり、ひとつの謎が現れたら整理して可視化。整理しては可視化することで奇天烈な世界観に混乱するプレイヤーの一助になる……のだがしかしこういう物語に慣れている者からするとその丁寧さがヒント過多になりすぎて、却って考える過程を奪われているように感じるかもしれない。
というか私がその一人。もうすこしこちらを信頼してくれてもいいのにとふくれっ面になる。そこまで整理してくれなくてもいいよと。もっとこちらに考えさせておくれよとなる。
とはいえ物語難易度的にはここらへんが万人向けだと思うので、気になりはするが不満に思うことはなかった。『ひぐらしのなく頃に』『うみねこのなく頃に』よりも難易度は大分下がっていることを念頭に置いておくとよいかもしれない。
大作という程ではないが十分見所はあるので、もしトリッキーな作品を探しているのであれば本作はその期待に応えてくれると思う。ラストが爽やかな読後感なのもいい。
私的満足度:★★★(3.9)
おすすめ度:★★★(3.8)
売り上げランキング: 4,007
原画:竜騎士07 , 伊東フミ , たつひこ
シナリオ:田中ロミオ , 竜騎士07 , 都乃河勇人
音楽:dai, ラック眼力 , xaki , pre-holder , M.ZAKKY , 六弦アリス
歌手:木野寧, 佐倉かなえ, 本木咲黒
少女たちは荒野を目指す(2016,みなとそふと)
学生がエロゲ制作に奔走する『少女たちは荒野を目指す』は、業界事情を混ぜながら作品を創ることの苦楽を描く作品である。
正直にいえば、山場は一瞬で片付けられるしエピソードの掘り下げは浅いし終わり方は雑で安易に褒められない賞賛できないないない尽くしのデキではあるものの―――そういった欠点に目をつむってしまう程に「全パート」が楽しい。
めっちゃ楽しい!
黒田砂雪が北条文太郎に声をかけられて挙動不審になったり、安東が無断でうぐいすの絵を加工すればぴりっとした空気が生まれては、細川さんがくれば独特の喋りで場はカオスに呑まれる。誰と誰が話そうとも、どんな変人が出てこようとも、シリアスな雰囲気に晒されようとも何故か「楽しい」と思えてしまうシーンで溢れかえっているのが本作の魅力だ。
物語展開がいいのではなく、Micro上の日常描写がいい。とても良い。
そしてそれはつまるところ『しょこめざ』における全てのMicro的なシーンの描写が良いといっても過言ではないし、だから最初から最後まで楽しい時間を過ごせる物語になっているのだろうとも思う。
特にキャラの「掛け合い」は絶品レベルだよこれ。本当呆れるほどに会話がうまい。
ただし。ただし。Microでの描写はよくても、全体的な、Macro上での描写は難ありである。様々なエピソードを絨毯爆撃のように炸裂するにも関わらず、最後まで読み進めると「あれは一体なんためのお話だったのだろう?」と首をかしげるものはいくつもある。
とはいえ「それ以上描く必要がない」からこそ描かなかったエピソードなのかもしれない――という考えを抱かせるものではあるが、そこに不満を抱く読者は大多数いると思われるのでぶっちゃけ大衆向けの作品ではない。
またEndingの出来は本作を褒めている私ですら「ちょっとこれは……」というレベルなので(そこまで悪いわけではないけど大味すぎるかなと思う)、やはり大勢に好まれる作品ではないだろう。
それを踏まえておすすめできる人がいるとすれば
・「伏線」という言葉を安易に使わずに物語を語れる
・物語における「描くもの」と「描かないもの」について考えたことがある。
・物語の大筋を求めない
この3つに当てはまる人は『少女たちは荒野を目指す』はとても楽しい作品になるだろう。「アニメ版」は見ていなければよりいい。
一応理由を説明しておくと、あらゆる物語においてその物語が「描くもの」と「描かないもの」ってあるわけね。その物語が「描かない」としているものに対して、「◯◯を描かないなんておかしい」というのは的はずれな意見だというのは分かるでしょ? でもそれを見極めるのって案外難しいし、絶対的な答えがあるわけでもない。
そういう気難しい境界の上で成り立っている「描くものと描かないもの」について一考もしたことがなければ、きっと『少女たちは荒野を目指す』という作品を読めば不満たらたらになってしまうわけだ。なにせ本作はそういう作品だから。
そしてそれについて理解している人は、「伏線」という言葉を安易に使わないし、その言葉抜きで映画『シックス・センス』や『G線上の魔王』のような作品を語り切ることができる。というのが私の持論である。
物語の大筋に関しては、本作は徹底されてはいないので求めないほうが無難。求めるとしたらパート・シーンの質の高さを望んだほうがいいし、アニメ版を見ていなければ第一部は新鮮に読めるはずなのでより楽しめるんじゃないかなと思う次第。
それにしても条件多すぎ? でもこれくらいハードル高めにしないと受け入れられにくい作品なので致し方ないのかもしれない。
ちなみに私的満足度は★★★★(4.1)であり、おすすめ度は★★★(3.6)という感じでAmazonではワゴン価格の有様。それすらも覚悟の上で「ならば我こそは」という人は是非手にとって欲しい作品である。
砂雪「そしてこっちにあるソフトはどれも500円」
文太郎「お安い」
文太郎「……なんで?」砂雪「ワゴンセールといって、要するに……敗北した美少女ゲームたちだからよ」
文太郎「元々は8800円で売りたかったものなんだよね?」黒田さんはうなずく。
文太郎「……元取れないんじゃない?」
砂雪「仕入れたショップは大損でしょうね」
砂雪「でもそういう世界なの」
文太郎「クソゲー作っちまったら大変だな」
――少女たちは荒野を目指す/第一部
原画:松竜
シナリオ:田中ロミオ(山田一)
音楽:GoKoY , Shade(東京紅蓮) , 大和(東京紅蓮)
声優:山下誠一郎 , 佐藤聡美 , 明坂聡美 , 千菅春香 , 花澤香菜, 豊永利行石田彰, 中井和哉 , 伊藤静 , 佐藤利奈 , 岸尾だいすけ , 四宮豪 , 堀秀行 , 渡辺明乃, 小西克幸 , 浅川悠 , 中原麻衣 , 保志総一朗, 子安武人 , 立木文彦 , 黒田崇矢 , 大亀あすか , 石塚運昇 , 島﨑信長 , 斉藤壮馬, 大山鎬則 , 佐藤拓也 , 伊藤美紀 , 末柄里恵 , 久野美咲 , 巽悠衣子 , 茅野愛衣 , 優希 , 丸山有香 , 日高里菜 , 種田梨沙 , 川澄綾子 , 杉山紀彰 , 井口裕香 , 千葉進歩 , 能登麻美子 , 河西健吾 , 間宮康弘
去人たち(2007,k2cee)
公式サイトでは、本作はこのように言い表されている。
"学園サイコミステリーナンセンススラプスティックパロディSFライトデジタルノベル" または "スカトロジック精神分析ドタバタ似非純文学ディアクロニックヌーボーライトデジタルノベル" と。
なんのこっちゃ、って感じだけど実際に読むと「なんのこっちゃ」っていう作品なので間違ってはいない。謳い文句に偽りなし。もう少し簡潔にまとめると「精神病者がうんこを投げ合う物語」と言えばわかりやすいかもしれない。一層分かりにくくなった? まあいいや。
とかく『去人たち』の特徴はその「文学的で衒学的なテキスト」にある。小難しいことを小難しそうに語りながらもそれを全く説明しないある種のユーザビリティの欠損。ブレヒト、バロック、異化効果、アプリオリ、anima、現象学、シニフィアン、ニルヴァーナ―――それらを千を超えるバリスタ弾のごとくぶっ放して読者は死ぬ。
もちろん耐えることができれば読み続けられるだろうし、そのサイコでミステリアスな雰囲気に魅了されてのめり込むこともあるだろう。しかし耐えられなければ死ぬ――そんな人を劇的に選ぶ劇薬のような作品である。
――去人たち/(k2cee)
私の感想はというと、[残秋輓歌]あたりで既に心が折れかかってた。はやく終わらせたい、はやくやめたい、そんなふうに思っていた。当然でしょ? 理解させる気も読ませる気も全くないこんな作品に付き合うほど暇じゃない。
それでもギブアップは御免だったのでなんとか読了はしたが、楽しいとは程遠い作読後感であり、実際の数倍のプレイ時間を充てたと思ってしまうくらいに『去人たち』は長く、気怠げに長く、厭になるほど長かったのを覚えている。
最果ての荒野でひとりで何の目的もなく、どこに行くかも分からないまま歩き続けているようなね。そんな感じ。
――でもね本作の場合、個々人のanima/animus(=永遠の女性/男性)の鋳型にぴったりはまりこめば傑作になりえるような作品なので、「ゲームとしては全くオススメできないけど一度プレイしてみてはいかが」と言いたくなるものでもある。
外れれば大惨事だが、嵌まればラッキー。みたいなね。よくあるじゃない?そういうの
ちなみにフリゲなので、今からプレイ可能。
私的満足度:★★★(3.5)
おすすめ度:???
考察記事→『去人たち』考察―精神病者は踊り狂い
原画 吉川にちの
シナリオ @lice
音楽 G9Fried
声優:
Corona Blossom(2016,FrontWing)
以前書いた記事から、概要を抜粋。
"『Corona Blossom』は空から落ちてきた金属生命体・アルネと出会い、暮らし、そして――故郷の宇宙へ返そうとする物語。Vol1では主人公・大崎景次がそう決意したところに、宇宙海賊・リリが現れて閉幕した。
一言でいえば丁寧な作品ではある。登場人物だけが事を理解しずんずん話しが進むなんてことはなく出会いは出会いとして、日常は日常として、ハプニングはハ プニングとして過不足なく表現されている。のちの(Vol2以降)に繋がるであろう"仄めかし"をのぞけば描写に対する不安感はない。"
というふうに、本作はヒロインが金属生命体であることを除けばいわゆる落ちゲーであり、「宇宙人とのボーイミーツガール」と思ってくれて構わない。
そしてそんなお話は今ではありふれたものなのでそれ以上の何かがあるかと思えばないし、『コロナ・ブロッサム』は"オーソドックス"を地でいく感じなので2016年にやるととても退屈に感じる可能性が高い作品である。
引用文でも触れたように作品外形から演出描写まで手堅い出来ではある。あるのだが、(全三作のVol.1ということを鑑みても)胸をはって面白いとは言いにくいのが正直なところだ。
詳しくは上記事に任せるとして、「原画・ななかまい」「Emoteシステム」と聞いて心が動かなければ買わなくていいと思う。
――Corona Blossom vol1/FrontWing
そしてもし買うのであれば、パッケージ版は注意したほうがいい。
私はパケ版は買ってないので人づての話ということで聞いて欲しいのだが―――どうもパケ版はパケ版だというのにDVDROMが同梱しておらずDLsiteにて付属のシリアルコードでDLしてねという代物らしい。さらにHシーンはストーリーとは関与しないifもので――本編では恋人関係になっていないのに恋人としてヒロインとHする。そしてシーンの内容は薄い為――満足度は低いと聞く。
「DL版・H無し」でよいのであればSteam版が個人的にはおすすめだ。価格も980円とお手頃ですし。
私的満足度:★★★(3.2)
おすすめ度:★★★(3.1)
レビュー記事→立ち絵がぐりぐり動く『Corona Blossom vol1』レビュー
・パッケージ版
売り上げランキング: 2,262
・Steam版
原画:ななかまい
シナリオ:安堂こたつ(七央結日)
音楽:松本文紀
声優:秋野花, 藤森ゆき奈 , 橘まお , 成瀬未亜, 手塚りょうこ,春咲実李
歌手:桃井はるこ(UNDER17), Ayumi
美術監督:金子雄司
メカニックデザイン:大河広行
グリザイアの旋律(2016,FrontWing)
『果つることなき未来ヨリ』の初回特典として新規開発されたものがこの『グリザイアの旋律』であり、CG・シナリオ共に書き下ろしとなっている。
内容は日下部麻子からナンバー"9029"を正式に引き継いで間もない頃、風見雄二に「少女(9歳)の要人警護」の依頼がやってくるというお話だ。
――果たして、雄二は少女(9歳)を華麗にエスコートできるのだろうか…?
最初は「おまけ作品ねfmfm」と期待せずプレイしていたのだけど、『旋律』でもグリザイア節は健在だった。
雄二の独特な女性観にくすっと笑ったり(←買い物に付き合うのが嫌すぎてついつい女の買い物にどう向き合えばいいか思案したり)、天然ジゴロでマリオンちゃんをツンツンからデレデレにしたりと楽しすぎる。
そこに組織とのドンパチが加わり、スリルと日常が上手い具合にバランスが取れているのもグッド。なんというか描き方がとてもいいのだよね……。久しぶりに"テキストを読んで"るだけで楽しいなあ……って、ノベルゲームってやっぱり面白いんだなあと終始幸せなままプレイすることができた。
"特典"という言葉からは程遠い出来で、これ一本で十分お金を取れるレベル。特典元である『はつみら』よりも楽しめたって人も多いと思うし、「短編ノベル」として見るならばトップランクの作品だろう。
グリザイアシリーズファンならばおすすめなので、是非やって欲しいと思う。
問題は本作をプレイするためには『はつみら』(初回版)を買わなければいけないという所である。ただ来年に発売する『グリザイア・コンプリートボックス』では『旋律』の他にもアニメDVDの特典となった『有閑』『残光』のDLカードも同梱されるらしいのでそちらをチェックしてもよいかも。
私的満足度:★★★★(4.0)
おすすめ度:★★★★(4.0)
原画:渡辺明夫(ぽよよんろっく、桜桃ひな)
シナリオ:藤崎竜太
声優:五十嵐裕美
果つることなき未来ヨリ(2015,FrontWing)
これは日本の海軍兵士がファンタジー世界に飛ばされ、異種間戦争に否応なく巻き込まれていくお話である。
「戦争」を全面に押し出しつつも本作は肯定的な描き方はせず、「戦争に正しいもクソもない」とか「戦争への参加を美化するつもりはない」とそれぞれのキャラクターは言い切る。
けれどそう言いつつも大義名分を掲げて戦争に参加する矛盾。他者を殺すことへの欺瞞。果てには戦争を終結させてもまた別の戦争へと歩き出す者を描いた。――つまり『はつみら』は「戦争」に対し絶対的肯定でも否定でもなくニュートラルな、とても繊細な立ち位置で表現された戦争AVGであったように思う。
そして私はこういう単純な二項対立に囚われない作品が好きである。
正義と悪がいるのではない。正義と悪ではない者がいるのである。みたいなね。人々はもっと複雑でもっと細分化された立場によって紡がれているのにも関わらず、往々にして私たちは「0・1」で考えてしまうのはそれが楽だからだ。
対立は、複雑な状況を軽々とわかりやすい構図にへと押し込めてしまう。そしていつの間にかはAを踏まえてのB、Bを踏まえてのC、Cを踏まえた上でのDという微細な立場は失われ、あるいは奪い去られ、極論から極論へと思想は鋭くなりぶつかっていく。
でも実際はそうじゃないよねと。狂っているのはお互い様だし、"正義"なんてものはどちらにも無いし、例えあったとしてもそれは国でも社会でも組織でもなく個人に従属するとても自己満足的なものなんだ。戦争がいいとか悪いとかそういう話じゃないんだよ、っていうバランス感覚が実に小気味よかった。
それは基本的に三森一郎の言葉の節々に表れるものだが、エレンの言葉にも伺え知れよう。
「…人が死ぬのは嫌だし…殺すのも嫌だよ…? でも、嫌だ嫌だって言っても戦争はなくなんない…どう頑張ってもなくなんない…」
「どっかの国が平和を唱えたところで…全世界が平和になんかならない…むしろそれが原因で戦争が起きるし、戦争を起こさないための戦争なんて訳のわからんないのも起きるよ…」
「どうせなくならないなら、戦争と上手に付き合っていくしかないんじゃないかな…? よくわかんないけど、知らない間に戦争で死んじゃうのが嫌だから、私は軍人になったのかな?」
――エレン/果つることなき未来ヨリ
こういうバランス感覚が『はつみら』は優れている。単純な0・1で物事を斟酌しない。
――とはいえ問題がないわけでもない。
共通√は文句がない出来であるものの――本当に素晴らしい出来であった――だが個別√はうーんという首をひねるものが多い。それはアタック感が弱かったり、不完全燃焼だったり、茶番の様相を見せたりと一癖も二癖もあるものばかり。正直、手放しで褒められるものは一つも無いかもしれない。
でもこれだけは言っておきたい。アイラ√は最高だったと。ほんとに良かったよ。これだけで『はつみら』のマイナス全てがチャラになるほどに美しい物語だったし、この√がこの世に存在してることに感謝しかない。(詳しくはネタバレになるので別記事で書く)
もちろん万人向けの√ではないので誰彼構わずすすめることは難しいけど、響く人には絶対響くものなので機会があったら是非やって欲しいなと思う。
私的満足度:★★★(3.7)
おすすめ度:★★★(3.6)
共通√~アイラ√:★★★★(4.3)
原画:フミオ , 渡辺明夫, INO , ななかまい(SD原画)
シナリオ:藤崎竜太 ,桑島由一 , 安堂こたつ, かづや
音楽:ピクセルビー , 松本文紀
声優:かわしまりの , 清玉澄加,三枝もこ , 芹園みや,木村あやか , 青葉りんご,民安ともえ, 楠鈴音 , 中里圭太, 門戸開 , 三川春人 , 手塚りょうこ , 雪村とあ , 橘まお , 秋野花 , 白雪碧, ほうでん亭ガツ , お代官.さま, 桃山いおん, やじまのぼる , 水樹空 , 倉島丈 , あかしゆき , おイモ , 桜あいね , 沢澤砂羽, 乙参, 火野琉乃 , 桃川春香 , ゆーな , 小見川千明 , 浮野乱 , ハナイワミドリ , 成瀬未亜 , 西郷大 , まきいづみ,
歌手:Rita(理多), Duca , 茶太, 三枝もこ , micco
ロゴデザイン:木緒なち
メカニックデザイン:MAGNUM, SUDACCI
鬼哭街 リメイク版(2011,Nitroplus)
中国文学における英雄時代劇(=武侠片)にサイバーパンク世界観が合わさった『鬼哭街』は、近未来の上海を舞台にした復讐劇である。
最愛の妹を取り戻すべく兄は敵を屠っていくのだが、それに伴う演出描写のレベルが頭ひとつぶん抜けてる。一つ一つのCGは臨場感を伴い、的確に使用され、かつ一瞬にしてバンバン消費される感じ。使い回されるものは殆どなく、映画を見ているかのように常に新しい風景が目の前を彩っていく。とてもリッチなヴィジュアルノベルだ。
本作は劇中内の論理に一切のご都合主義がないため、各々のキャラクターは自身が導き出せる最善手を選び道を切り開かんとする。それが主人公・孔 濤羅に留まらず敵側もまたそうであった場合、そこに「決死」とも呼ぶべき状況が幕を上げる。
一戦目で血を流せば二戦目でその"血を流した分"だけ戦いは不利になっていくし、限界を超えて戦えば"限界を超えた分"のツケが溜まっていく。何を当たり前な、と思うかもしれないが『鬼哭街』はそれが徹底している。そしてその徹底ぶりはやがて身動きが取れないほどに巨大な枷となり、うねりとなり、物語を襲うのだ。
まるで「もうこれ以上は進めない」と物語自体が泣き叫ぶかのようなラストは虚しく美しい。合理主義を突き詰めたとても冷たい作品ではあるが、ほんの一滴。救いがあるのだ。それが読後感に「美しい」と感じさせる所以かもしれない。
かのジャバウォック王ならば「これが物語である」とにやりと笑い舌鼓をうつだろうか。
私的満足度:★★★(3.8)
おすすめ度:★★★★(4.0)
(2002年・原作)
(2011年・リメイク)
原画:中央東口
シナリオ:虚淵玄
音楽:ZIZZ , 磯江俊道 , 大山曜 , 神保伸太郎
声優:田村ゆかり , 井上和彦, 速水奨,藤原啓治, 大塚芳忠 , 樫井笙人, 折笠愛 , 小杉十郎太, 佐藤健輔 , 福田賢二 , 上別府仁資 , 川原慶久 , 家弓家正,杉野博臣 , 飯田真矢
歌手:いとうかなこ
メカニックデザイン:石渡マコト
fault - milestone one(2013,ALICE IN DISSONANCE)
『fault』を箇条書きにするとこんな感じ。
↓
- クーデターから逃げ延びたルゼンハイド国のお姫さまとその護衛2人のロードノベル
- CGが綺麗
- "3Dカメラ"による画面演出のこだわり
- 辞書機能がプレイヤーのインセンティブと噛み合い使うのが楽しい
- 5時間ほどで終わる短編もので、その分価格も安い
ハイファンタジーというわけではないが、独自の仮想言語を構築していたりと中々に土台あるファンタジー作品となっている。
特に私が注目したいのは"3Dカメラ"と呼ばれる「カメラアングル」の気持ちよさで、1クリックごとに何とも言えない楽しさを味わえるのだ。……地味だけどね。地味な演出なのだけどプレイ体験には多いに貢献していそうである。
わかるかな?アングルが移り変わる「するするっ」とした感じ。
↓
――fault - milestone one(2013,ALICE IN DISSONANCE)
さくっと終わるのでボリュームなので、息抜きにどうぞ。
私的満足度:★★★(3.8)
おすすめ度:★★★(3.7)
紹介→立ち絵が美しい!5時間以内に終わる同人ファンタジーノベル『fault - milestone one』を紹介するぞ!
感想→やや強引なストーリーだが心地よい『fault milestone one』の購入経緯+感想レビュー(6303文字)
原画:小夏はれ
シナリオ:Munisix
音楽:PerLKS
歌手:緑坂亜綾
ひまわり-Pebble in the Sky-(2015,FrontWing)
同人サークル・ぶらんくのーとが2007年に発売した『ひまわり』は、広大なSF世界観に人気が人気を呼びコミック・ドラマCD・豪華声優を起用したPSP版とさまざまにメディアミックスしてきた作品である。
そのPSP版を下地にしつつキャラクターデザインを一新したのがこの『ひまわり-Pebble in the Sky-』であり、立ち絵差分は「最低限」という感じで少なくあるもののその絵柄は同人っぽさが抜けて商業的なビジュアル品質になったのは見て分かるとおり。
無印版の絵柄とは大分違うので好みは分かれるかもしれないが、まあ私は無印をやっていないので比較はできないものの――『Pebble in the Sky』だって決して悪くないけどね!可愛いけどね!――無印版のほうが作品の雰囲気と合っているように感じられた。
また『Pebble in the Sky』は全年齢版なためショッキングなシーンの表現がマイルドになっていること、そしてここが大事なのだが「『ひまわり』はHシーンを描かずして『ひまわり』と呼べるのか?」という作風であるにも関わらずそのシーンが丸ごとカットされているので全年齢版だと物足りなく感じるかもしれない。という感じるはず。
なので『ひまわり』をプレイするならば、まずは無印版(18禁)を買ったほうが満足度は高いと思う。
――ひまわり-Pebble in the Sky-/FrontWing
本作の魅力は宇宙のごとく膨らみ続けていく世界観である。
最初はよくあるあるボイミーツガールかと思えば、瞬く間に"ぶわっ"と広がりその認識を改める自体に陥る。「ただのボイミーツガールではないこれは■■か?!」と思えば、またもやその認識さえも違えていたのだと気付く事実が次々と浮かび始める感じだ。
一度や二度ではない"世界の膨張"とでも呼ぶべき体験が『ひまわり』の醍醐味であり、「宇宙とはこういうものか……」とよく分からない事を分かった気になって口走るくらいに広大で壮大な作品である。
プレイしたら絶対いろいろ考えたくなって饒舌にべらべらと喋りたくなるようなやつなので、この作品でブログ開設する人も多いかも。
私的満足度:★★★★(4.1)
おすすめ度:★★★★(4.0)
1,296円
原画:空中幼彩
シナリオ:ごぉ
音楽:dai, 中畑丈治 , 竹中敬一 , chica
声優: 野中藍,川澄綾子 , 保志総一朗, 田村ゆかり , 高橋美佳子,小西克幸, 柚木涼香 , 江原正士, 真殿光昭 , 福圓美里 , 秋元羊介 , 藤原啓治
種崎敦美 , 徳本英一郎 , 小原敬生, 川村拓央
歌手:eufonius, 茶太
ピュアガール(2012,FrontWing)
性に目覚めた4人の変態少女(=ピュアガール)と同姓生活する作品。
パッケージを見ると「萌えゲーかも?」と思うかもしれないがれっきとした抜きゲーであり、「オナ中同輩」「全裸先輩」「エロゲ妹」「チュッパチャップス後輩」といった個性豊かな(しかしわりと型通りな)ヒロインがあなたの性生活を彩ってくれるはずだ。
――ピュアガール/FrontWing
ちなみに精神的なコミュニケーションを伴うセッ久ではなく、アオカンや学校でのエッチというシチュエーションありきの記号的なセッ久であるため前者を重視する人は注意したほうがよい。
ストーリーは添え物程度で、「抜く」ことを第一義とした実用的な作品である。
私的満足度:★★★(3.6)
おすすめ度:★★★(3.6)
感想→エロゲにエロはいらない人間が変態ヒロインと四六時中しまくる『ピュアガール』を(まちがって)買ってしまった -
HOLY BREAKER!(2014,H. I. Design Office)
2014年4月、樋上いたるの一枚のイラストから生まれた『HOLY BREAKER!』はよくある世界観に、見飽きた運命を背負わされたキャラクターの迫力のない戦闘をこれでもか!と描くアクションノベルである。
まず言っておくことがあるとすれば、致命的なまでにシナリオ/テキスト/演出のレベルが低い。
世界観はよくある「願いを叶えるための争奪戦に巻き込まれる主人公もの」で、そこに「十支の武器」「二つの月」「塔」「陰陽」エッセンスを加えたものとなっている。よくある世界観だからダメだなんて言わないが、それらを生かし切ることないままラストまで突っ走るので「よくあるお話がよくあるお話のまま終わってしまった」という読後感を覚えるものとなっている。
また戦闘描写は「迫力」といったものがなく、ただただ状況をスケッチするだけに留まるのもポイントだ。その緻密なまでのスケッチが「野暮ったさ」「もっさり感」といった印象を戦闘シーンに付与していくのはもうなんていうか…なんて言えばいいんだろう……。
そこに天舞ミナセの詠唱三連カットインを闇雲に多用する点はもはや地獄である。テキスト自体勢いのないものだが、このカットイン演出によってさらに戦闘の勢いは死んでいき「魔女2人による迫力のあるバトル」が「チンケなケンカ」くらいに収まるのはある種の見応えがあるかもしれない。いやない。
他にも安倍晴歌はいちいち状況を説明しはじめる露骨な説明キャラになっているとか、斐太海勝から滲み出る負け犬キャラぶりだとか、詠唱の台詞回しや技名のセンスのなさ(=顕現とかいて"オープン"、返照とかいて"リフレクト"という具合)にいろいろ言いたいことはあるのだが結局は「致命的なまでにつまらない」という一言に集約される。
(この衣装は一体……)――HOLY BREAKER/H. I. Design Office
良いところがあるとすれば音楽くらいのもので、総合的な作品の質を期待すると拍子抜けしてしまうだろう。
個人的には積極的にプレイするべき作品ではないように感じるし、この出来では第2巻を買おうとは到底思えません。
私的満足度:★★(2.7)
おすすめ度:★★(2.7)
原画:樋上いたる
シナリオ:樫田レオ
音楽:どんまる
声優:井ノ上奈々,中村繪里子,杉山紀彰
歌手:飛蘭(MASAMI)
恋色空模様(2010,すたじお緑茶)
『恋色空模様』は「茶番」について考える機会を与えてくれた作品だ。
今まで感覚的に「あれは茶番じゃないか」と思ったことはあるものの、しかし果たしてどういう条件下においてある作品は茶番となりえるのか、もしくは茶番とはどう定義すればいいのかを考えたことはなかった。いつもなんとなくで済ませられる環境にいたからだろうか。
とかくこの作品に出会ったことで「茶番」について思考を深めようと思ったし、2016年が終わる今頃になってようやくそこに一応の答えとで呼ぶべきものを導き出せるようになった。
結論から言えば「①エントロピーの崩壊」「②合理の欠落」の2つによって、茶番は成立する。
(物語における)エントロピーの法則とは「何か現象が起こるたびにエントロピーは増大し、また勝手に減少することはない」というもので、因果に絡め取られる事実とその不可逆性を指したものだと捉えている。
だから白米を炊けば炊いた分だけ米びつは軽くなるし、人を殺せば殺した者は生き返りはしない。またご飯を食べればその「食べた事実」が周囲に大なり小なり影響を与えお腹をすかせた妹が「あー私の白米お兄ちゃん食べたー!」と怒り出すかもしれないし(ナンダソレ)、人を殺せば法の裁きが下りて周囲からは白い目で見られることになる。
もちろん物語においてその「論理」は違うので一概には言えないが、ある行動・現象を起こせばその分だけ因果に絡め取られていくということだ。
そしてそれら全てを「なかった」ことには出来ないものの、物語における論理に沿った上でならば少ない範囲でなかったことには出来る。
例えば主人公が人を殺した。罰を受けることに怯えてその罪を他者になすりつけることに成功したとする。このとき(その物語において)本来ならば「罰を受ける」という因果を、主人公は回避したことになる。ただし「主人公が人を殺す→他者に罪をなすりつける→罰を免れる」という一連の因子はなくなりはしない。ずっと残る。
だから物語は無限の可能性に満ちているようでいて、時間が経過するごとに、キャラクターが動けば動くほど「定められた結末」に向かっていくしかないのだ。あるいは「最も妥当な終わり」を迎えるものである。
(アニメの1話はとても可能性に満ちていて面白いと感じることが多いけど、話数が重なっていくとその可能性はじりじりと狭まっていって最初は面白かったのに最終回までみると退屈だったなーって思うことないかな。あれである)
そしてもしそれすらも――絡みに絡まった因子を、増大しきったエントロピーを――超越したいならば、『魔法少女まどか☆マギカ』のような物語論理を提示しておく必要がある。
逆にそういったものを劇中内で提示していないにも関わらず、大幅にエントロピーを無視した時、その作品は茶番と言われはじめるのだ。(多少ならば問題はない。大幅に無視するのが問題)
『恋色空模様』であれば、序盤で起きた藤堂春樹の一件を終盤でアノヨウに描いたことに尽きる。
―― 序盤/恋色空模様(すたじお緑茶)
次に「②合理の欠落」とは合理的判断が物語内で適切に通らない時に生じるものである。
例えば本作ならば加納佳代子の過去が■■であると明かされた時、ではこの世界では■■の家系が蔓延っており、日夜彼らはお仕事しているということになる。今まで『田舎小島のラブコメ廃校問題』を描いてきたというのに、何故このような異なる世界観を挿入してきたのか? 今になって■■のお話を挿入するのは筋が通っているのか? と言われればそうではないだろう。これが後々のストーリーに影響を与えるならばセカンドステージということで納得はできるがしかし■■の家系という要素は加納佳代子の個別√にしか適用されていないとなればそんな馬鹿な話があるかとなる。
他にも "高校生の域を出ない能力を持つ主人公" をつかまえて島中の学生から大の大人まで「あいつはすごい!」「なんてやつだ!」「彼のような逸材を我々は埋もれさせていたのか!」「くくっ、ますます欲しくなってきましたよ(職場に)」とヨイショし続けるのは本当に……ほんとに……これはいったいなんなんだ……。
こういう物語が提示した要素に、劇中内で何かしらの筋を通す要素・描写がないならば、合理的価値観が欠落した状態だと言えよう。
「エントロピーの崩壊」「合理の欠落」この2つのうち1つが首をもたげるとき、おそらく目の前には茶番の様相が幕を上げているだろう。もちろん2つともならば、結果は想像するまでもない。
そして『恋色空模様』はその2つを成し遂げてしまった作品である。
私的満足度:★(1.5)
おすすめ度:★★(2.2)
- ①恋色空模様のどこがダメで、どこを批判したいのか語る
- ②恋色空模様に『失敗』はあったのか?
- ③恋色空模様の表現力の低さは『失敗』にはならないのだろうか
- ④恋色空模様―神那島の空が緑茶色に染まる―感想レビュー
原画:るちえ , みかぼし , 広瀬まどか , ぬじま
シナリオ:氷雨こうじ
音楽:山田屋カズ, 石川直人 , ユージ・ナイトー, アムーヴ , 椎名治美 , SENTIVE , EXELION , 新井健史, bassy
声優:遠山枝里子 , 安玖深音 , 夏野こおり , 月城真菜, さくらはづき,五行なずな , 木村あやか , 青山ゆかり , 風音
歌手:Duca, 霜月はるか, nao
Hyper→Highspeed→Genius(2011,ういんどみる)
特殊能力を持った『守護者』と能力を持たない『一般人』で二分されたこの世界では、往々にして巨大な力を持つ『守護者』が大手を振って歩いていた。力無き一般人は脅され、怯え、暮らす日々。主人公・明智久司朗はそんな世界に怒り覚えるものの、たかが一学生に何ができる?と見て見ぬふりを続ける。
しかしある日Mephistoが現れ『この世界を変えたいですか?』と囁きては、世界を望むままに変革させられる『世界長』の立場を巡る争奪戦も始まった。
――"Hyper→Highspeed"(高速思考)という考えるだけの力と、悪魔から授かった"悪魔図書館"を頼りに明智久司朗がこのくそったれな世界をぶっ壊す!!
というのが以上、あらすじだ。
――Hyper→Highspeed→Genius(ういんどみる)
本作はこの2つが魅力的である。
本来、能力戦では「考える力」など無力に等しいものだ。何故なら相手はより直接的な「剣戟」やら「停止」といった能力でもって、こちらを打破しようとしてくる。しかし相手の能力を少ない事実から推測し、見極め、その上で裏の裏を読み勝利する。
また『世界長』の座につけるのは参加資格がある「3人のヒロイン」だけで、当の明智久司朗にはない。だがヒロインを"落と"し傀儡にできれば彼の思想である『守護者優位な世界を変革する』という目的を間接的にではあるが果たすことはできる。
そのいずれも難易度は高いが、でもだからこそこの2つの駆け引き戦は際立ち物語を彩っていくのだ。
――そう思われた。終始その2つを意識しながら明智は作戦を実行していくのだが、いかんせん都合が良すぎる展開に目眩がしはじめる。
"悪魔図書館"(=過去のデータベースから能力の断片を広いあげ能力の全容を解き明かせる能力)を明智は授けられた。ならばそれを使って相手が隠している能力を暴かれていくのだろうと思う。現に刀条院京香等は「策略をつかい能力を使用させ→情報の断片を取得→"悪魔図書館"で検索」という流れでいかなる『守護者』か暴いてみせた。
しかしその描き方がどうも安っぽい。
というのも「策を弄せば必ず相手は情報の断片を残し」かつ「その情報を元に悪魔図書館で検索すれば必ず目当ての能力にHITする」。そこには小学生が考えつくような策でも相手はものの見事に重要な情報をばら撒くし、情報の断片が足りないからもっと相手を探ってくれなんてことにはならない。「情報が足りない?ああじゃあ◯◯はどうかな」「ビンゴ。見つかったよ久四郎」のパターンでいつもいつも済ませられる。
そこには"悪魔図書館"を駆使した知能戦、なんてものはないご都合主義的展開でしかないのだ。
さらに"悪魔図書館"なんてもう用済みだよと言わんばかりにアイリス=ウィンザーは「これが私の能力っすー」という具合にべらべらと自分の能力を喋り、時雨里姫乃は「パティの能力は◯◯よ」と仲間の能力を開陳しはじめる始末。
また聖ジュライ学園√での水無月学園対抗戦ではな・ぜ・かパトリシアの能力を"悪魔図書館"で検索するのをうっかり忘れる明智は窮地に追いやられる。
「窮地」を生み出すために明智はパティの能力について考えなかったのではないか?と考えてしまうぐらいに杜撰な展開ではあるものの明智は窮地に追いやられた。
もう勝ち目がない!やばいどうしよう!参謀である彼が思いついたのがこれだ。
「頑張れ!」
たった4文字の音に、胸の中で渦巻く思いを全て込める。
感動でも、喜びでも、誇らしさでも、何でもいい。
形や言葉になんかならない叫びを、そのまま放つ。
「……それ、策ですか?」
――明智、アイリス/Hyper→Highspeed→Genius(聖ジュライ学園√)
頑張るしかないんだよ頑張るしかっ!さあ!!
そしてこのあと驚くべきことに敵・水無月学園はギブアップ宣言をし、頑張らずとも勝利することになる。同様に水無月学園√の皐月学園戦も似た悲劇を辿ることを我々は目撃することとなった。
そうさこれが "tyabandaaaaaakyousukeeeeeee!!!!" なんだ。誰も観たくなかったコールドゲーム。
明智は突っ立てるだけで物事は有利に運び、寝ているだけで勝利に導かれる存在なのだろう。参謀としての能力は皆無であるにも関わらず、これまた周りから「あいつは出来る」と一目置かれては、なんだかんだで作戦は成功するかうやむやになる本当にひどい作品であった。
もうこういう作品に出会いたくない……。
さらに言えば明智はヒロインを落とそうとするが、逆にころりとヒロインに恋してしまう。そこには「悪漢」であるがゆえの懊悩はあっさりとしか描かれず、簡単に恋に落とされることからも彼は悪漢などではなく「悪漢っぽい」だけの男の子でしかなかったことが伺えるだろう。「ピカレスク」ではなく「ピカレスク"風"AVG」とはこういうことなのだ。
あんなにも「世界を変えるために手段を選んではいられない。こいつらを籠絡するのも厭わない」みたいなことを言っておいて明智さんこれですからね。心の機微は安っぽく、表面的なのは辟易とする。
「辞書機能」がプレイヤーのインセンティブと噛み合い何度も使いたくなる代物でないことからも分かるように――あのさ「朝の挨拶:一日を始めるに当たって必要なこと。これをきちんとするかしないかで、好感度の上がり方に著しい差がでる」なんてどう考えても要らないでしょ。こういうのが数十個もある辞書機能って何なの――「選択肢演出(=HS)」「セーブ&ロード構造(=RN)」も単体でみると「お」と興味をそそられるが、いかんせん物語にうまく接続出来ていないため「だからなに?」という感想しか覚えない。劇中内で浮いてしまっている代物たち。
そういった欠点ばかりが際立つのが『Hyper→Highspeed→Genius』、というのが私感だ。
良いところがあるとすれば、キャラクターが可愛いらしいところは救いかもしれない。このせいで「キャラクターの魅力」と「ストーリーの魅力」って関連性が希薄なのだなと気付かされた。
つまりいくらストーリーが杜撰でも、キャラクターの可愛さや価値に直結するわけではないということ。逆はあるかもしれないが、その逆はない。そんな仮説が芽生える。
私的満足度:★★(2.2)
おすすめ度:★★★(3.0)
雑記→もしも凛堂禊(ギャングスタ・リパブリカ)が『Hyper→Highspeed→Genius』の世界で『守護者』になったら、みたいな妄想楽しすぎ
原画:ミヤスリサ(宮栖里紗) , ユキヲ
シナリオ:サイトウケンジ , 三日堂 , 深山ユーキ
音楽:Elements Garden , 羽鳥風画
声優:澤田なつ,斉藤愛子 , 雲雀鈴愛 , 魁皇楽 , 真中海 ,
佐藤しずく, 日比谷小桃, 小町多すずえ , 加賀ヒカル , 髭内悪田 , 五行なずな, 木島宇太 , 堀川忍 , 杏子御津
歌手:星谷美友(μ) , 斉藤愛子 , 真中海 , 澤田なつ, 雲雀鈴愛
あえて無視する君との未来(2012,ALcotハニカム)
ここからは省エネモードでお送りします。
- 主人公・沢渡拓郎は『未来視』を有しており、彼が見た未来は実現してしまう。そこに「未来は決まってない!」と豪語する転校生が現れて……?というストーリー
- 『未来視』をエッセンスにくだらない会話と何気ない日常でお送りする青春学園モノで、無敵可愛い幼馴染と無敵残念すぎる妹が愛くるしい作品でもある。
- 心があたたかくなるシーンが多く、その殆どは"ブルマ師匠"の言葉によるものが大きい。さすが師匠!愛してるー!
ごくたまに「存在」するだけで周りの人間を幸せにしていく者がいる。その者は別段なにかするわけじゃないのだが、ただその一挙手一投足が、笑顔が、声が――一緒にいるだけで――隣人の不安を打ち払い安寧へと導いてしまうのである。
『あえて無視する君との未来』ならばそれは"師匠"だろうか。師匠は別れを厭がる後輩へやさしく言葉を手向けていく。最初は渋る後輩も、段々と、師匠の声に耳を傾けていくうちに未来への不安はどこか遠くへ消えてしまっていく様子が福音を告げる者なのだなと感じてしまう。
ただいろいろ「齟齬」がある作品なので、ちょっとおすすめしづらい。それについて批判記事で書いたのでそちらをどうぞ。
私的満足度:★★★(3.6)
おすすめ度:★★★(3.4)
批判→『あえて無視する君との未来』批判レビュー。最も重要な部分をスルーしてしまった本作
原画:風見春樹 , タコ焼き , Riv , あおなまさお(蒼魚真青、桜花すし)
シナリオ:瀬尾順
音楽:Angel Note
声優:北見六花,雪都さお梨 ,上田朱音 , 桐谷華, 林田澄香, 黒瀬鷹 , 樹林凛子 , 真宮ゆず , 柚木ヒロ, 水崎来夢
歌手:ohko , 中山マミ
Bullet Butlers(2007,PULLTOP)
- 執事と主×燃えゲー×強度あるファンタジー
- 語りたいことが全くもってなかった(私にとって)稀有な作品。今振り返っても何か語る必要性を感じないし、何かを語りたくなることもない。なんでだろ?…んーなんでだろうねえ。悪くはないんだけども。
私的満足度;★★★(3.7)
おすすめ度:★★★(3.7)
原画:中央東口
シナリオ:東出祐一郎
声優:平井達矢 , 佐本二厘, このかなみ , 九条信乃.ヘルシー太郎 , 黒瀬鷹 , 紅万寿, 肘肩腰三 , 遠山枝里子, 一色ヒカル, 嬉野祥子, 小次郎 , Rita, 安玖深音,タケムラ, 野神奈々 , 如月葵 , 松園ルイ, 空乃太陽, 杉崎和哉, 紫原遙 , 松涛エルザ , 事務台車
歌手:Antistar
彼と彼女と彼女の忠義(2009,non color)
- アパートの一室で繰り広げられる「男とネコ」の同居生活フリーノベル
- Hシーンはないが、際どいシーンはあり。そしてそこが笑える
- フリゲにしては珍しくボイス付き
- 一時間もせずに読み終わる短編モノで、息抜きしたいときにプレイする感じ
女体化したネコとすごす日常は淡々としたものであり、時折くすっと笑ってしまう場面もありながら正直特筆するべき点はない。でも "日常" ってこういうものだよねと言われたら頷いちゃう感じにさりげなく、なにもなく、ふつうな日々なのである。そういう空気感がでているところが本作のポイントといえばポイントなのかもしれない。
私的満足度:★★★(3.4)
おすすめ度:★★★(3.3)
感想→彼と彼女と彼女の忠義の感想 ネコは綺麗好きにゃ
公式HP→彼と彼女と彼女の忠義
原画:七条貞之
シナリオ:はと
音楽:はと
声優:雪白ゆり
ゆのはな(2005,PULLTOP)
ジャン!
↓
『ゆのはな』は、そんな人との奇妙な縁に微笑んでしまうような、ある冬の暖かい物語であった。
バイクで事故った草津拓也を助けたのは、ゆのはという土地神。青年は救命費と祠の修繕費を神に払うべく『ゆのはな町』でバイトをする中で、いろいろな人と出会い、いろいろな人と一緒に笑ったり泣いたりする。(中略)
そこには重厚なテーマも、驚愕すべきドラマティックな展開も、哲学的な問答さえない。あるのは彼らが一生懸命物事にあたり、精一杯生きること。そして最後には幸せにくるまれて終わるのみ。
てな感じでひたすらに「あったかい」物語。夏にやるには暑苦しいかもしれないけど、真冬にはきっとぴったりな作品だと思うので鍋をつつくようにプレイしてみてはいかが?
なんでもないけれどその「なんでもなさ」がよい。ある意味日常系に片足くらいは突っ込んでいる感じでああいうほんわかとした空気感が好きな人にはおすすめできるはず。
私的満足度:★★★(3.8)
おすすめ度:★★★(3.8)
原画:藤原々々 , 仁之丞(渡真仁)(SD原画)
シナリオ:丸谷秀人 , J・さいろー
音楽:ジャンゴマン , 椎名治美 , NoBrand Sounds(雑音工房NOISE)
声優:一色ヒカル , 木葉楓 , 七原ことみ, 生田香織,萌原ぷりん3せい , 福島梨亜 , 茶谷やすら , 棟方一志, 楠鈴音,柴原遥
歌手:原田ひとみ
プロデュース:椎原旬
企画・ディレクター:朝妻ユタカ
つよきす Full Edition(2011,Candysoft)
強気なヒロインがテーマの『つよきす』(2005) に、『近衛素奈緒√』『PS2版追加テキスト』『姉、しよっ!VSつよきすのショートストーリー』を追加したのがこの『つよきす Full Edition』。
詳細は以下で語ったとおりで
一見すれば、癖の強そうな女性ばかりなのでストレスのかかる物語なのかな?と疑心暗鬼になってしまいそうだが、これが最高なのである。
女性に主導権を握られるというのは尻に敷かれるのと同義ではあるが、合意の上ならば安心感に変わる。気軽に甘えられるということでもある。まるで「姉と弟」のような、その延長線上のような恋愛。案外これはこれでいいものだなと気付かされた。
男性が男性としてのプライドを傷つけずに甘えるには、それ以上の「強い」存在が恋人であればいい。それは腕っ節の強さかもしれないし、カリスマという人間強度、精神的成熟度が自分より「上」だと認めざるを得なくなったとき安心して隣人に寄りかかれるのではないだろうか。
小動物系のほわーんとしているヒロインだけが好みということでもなければ、そして上下関係を強いてくるヒロインを苦手ではないということであれば、きっと気に入る作品になるだろうか。
あるいはまだ知らなかった「強気ヒロイン」という嗜好の開拓に一役買ってくれること間違い無しの学園ラブコメである。
私的満足度:★★★★(4.1)
おすすめ度:★★★★(4.1)
感想→『つよきす Full Edition』レビュー ゴキブリをかばう前代未聞のヒロインに腹筋が震える
無印→つよきす感想_とても楽しい時間だった(16816文字)
原画:白猫参謀(最神扇道) , 吉野恵子
シナリオ タカヒロ
音楽:I've , 井内舞子(羽越実有)
声優:金田まひる , 青山ゆかり, 海原エレナ, 北都南.神葉愛良 , まきいづみ , 草柳順子 , 川中嶋悟, 間寺司, 中本伸輔 , 柵間拓哉,内村みるく, マルコ , 芹園みや, 木葉楓, AYA , 長崎みなみ
歌手:KOTOKO , 怜奈
つよきす 三学期 Full Edition (2013,Candysoft)
- 原作『つよきす』の大部分を無かったことにして、キャラクターと世界観を三学期に持ち越した作品。(何を言っているか分からないかもしれないが私も何をい以下略)
- 無印版のコミカルさを過激に捉えたおかげで、とうとう登場人物は空を飛び、スライムは学校を襲い、校舎に船が突っ込みはじめる。
- 無印版の最大テーマであった『強気女子』という要素が剥落し、乙女姉さんもエリカもなごみも「強気でもなんでもない普通のヒロイン」と化す。
- レオの持ち味だった『テンション理論⇔熱血モード』も同じく行き場を失い、本作ではほぼ言及されなくなる。
- 立ち絵の塗りは一新されるものの、背景の塗りはそのままなので背景に立ち絵が"乗らない"自体が発生。
・これが無印『つよきす』
・これが『つよきす三学期FE』
キャラクターの彩度が高すぎて背景と全く噛み合っていない
総じてつよきすの名前を借りた二次創作作品でしかなく、原作の良い部分を軒並み殺したのが本作である。『つよきす』の延長線上にこの『つよきす三学期』は全くもって必要ないし、位置すること自体不愉快ですらある。むしろもう別物として語ったほうがいいかもしれない。
とはいえ単体で見る分にはそこまでひどくはない。
私的満足度:★★★(3.5)
おすすめ度:★★★(3.4)
感想→つよきす 三学期レビュー 無印版を全てなかったことにして新たに作り直された本作は「つよきすとは何か?」を考えさせてくれる
原画:吉野恵子 , 田中松太郎
シナリオ:さかき傘
音楽:I've , 一色由比 , TAKAO , ARIELWAVE
声優:青山ゆかり,北都南 , 草柳順子 , 金田まひる , 海原エレナ , さくらはづき , 山田ミライ,まきいづみ,比留間京之介, 間寺司 , 中本伸輔 , 藤景吾 , 陳幻齋
歌手:KOTOKO, 詩月カオリ, Rita
つよきすNEXT(2013,Candysoft)
- 対馬レオが在籍してた頃を「伝説世代」と呼ぶようになった(約10年が経過した)竜鳴館では生徒会と風紀委員が対立していた。その争いに巻き込まれる主人公と新たな強気なヒロインで描かれるのが『つよきすNEXT』である。
- 蟹沢きぬの"縁戚"である蟹沢さなぎを主人公とし、対馬レオの"縁戚"対馬はかりをヒロインにする本作は、『つよきす』の中心人物はあまり干渉してこないもののさりげなく匂わせる感じだ。
- そしてこれまた「強気女子」の部分がおかしく、どうも本作では「自己主張をする=強気」であると劇中内で定義付けソレにそって物語は展開していく。つまり『無印版』で描かれた字義通りの"強気"ではなく、強気でもなんでもなかった『三学期』と同じニュアンスのヒロインを「強気ヒロイン」として無理矢理押しつけられるのだ。確かに刃牙音子や伊那瀬子羽は強気と言っていいと思うが、はかりさんとチェリッシュはどう考えても違うでしょ。
――つよきすNEXT(2013,Candysoft)
「別に強気女子じゃなくても面白ければいいんじゃないの?」
と思いはするんだけど、じゃあ「つよきす」っていうタイトルを借りるのはやめて欲しいし、つよきすの世界観で物語をはじめるならば"核"であった強気なヒロインの意味付けを変質させるのは一体どういうことなの?という呆れ。
例え『つよきすシリーズ』として観なくても単純にすっごい微妙なのね。会話は面白くないし、キャラは浅いし、体育祭を「謎のパワー」で勝利しちゃったりする本作は「本当に面白くないな」って思える。私はね。
『つよきす』の物語論理ってかなり危ういバランスで成り立っていたんだなって思える。オウムが喋ったり、祈先生の奇術で突然フカヒレがパワーアップしたって普通に考えれば「ありえない」。それも現代の学園恋愛を描くとすれば余計そういった要素は突飛すぎだし溶け込みにくいので、ちょっとしたことでガラガラ崩れ落ちたかもしれないそれらを絶妙に「笑い」に変えていたわけ。でも『三学期』『NEXT』共々それを継承することができず、ただ過激にしただけで笑いを取ろうとするから、そりゃこういう物語になる。
だから『NEXT』のラストは校舎が"ああいう"ふうになる最悪のEndingになるし、『NEXT』はそれを許容するのだ。あーはいはい。そうだねーそうなんだねーもういいよ。
チェリ坊のEDは「こういう恋愛の形もありだよね」って好きではあるけども。
私的満足度:★★★(3.0)
おすすめ度:★★★(3.5)
原画:天海雪乃
シナリオ:さかき傘
声優:かわしまりの , 波奈束風景, 藤咲ウサ, 上原あおい,ワンモアチャンス , 上田朱音 , 西乃ころね, 夢野ぼたん , 篠原ゆみ , 梅咲チャーリー , 御苑生メイ , 桜川未央 , 比留間京之介
歌手:真理絵(marie) , 佐咲紗花 , 綾瀬理恵
戦国ランス(2006,アリスソフト)
以前書いたものから抜粋。
↓
2006年にアリスソフトから発売された本作は、ランスが織田信長家の影番を務めながら全国統一を目指す『地域制圧型戦略シュミレーションゲーム』である。
北は北海道から、南は鹿児島まで進軍しては地域から金を巻き上げたり、その大金で雑兵施設を建造したり、敵武将を説得して仲間にできる自由度の高さがウリだ。
そして自由度が高いだけではなく、1ターンに2回しか行動できない部分や、敵勢力を知るために[斥候](=投入した味方はこのターン行動不能)する必要がある「制約」の部分もうまい。
「もっといろいろ行動したい」「もっと味方を投入したい」という欲求は中々実現できず歯がゆい思いをするだろう。しかしそれが次ターンの"引き"になっており、「次回は万全の兵力で伊賀に進軍しよう」という具合にあれよあれよと時間を投入してしまうのである。
気付いたら2時間とかザラだ。
時間をどばどば投下してしまうゲームシステムの秀逸さに加え、CGの綺麗さ、各キャラクターの√やエピソードも読んでて楽しいので「質の高いSLG」を求めている人は買って損はない。
あと「エロを見るためのSLG」を求めている人も同様に。
私的満足度:★★★★(4.5)
おすすめ度:★★★★(4.5)
感想→ 戦国ランスは81時間吸われるくらいに楽しい。しかし最後はぐったりする程に疲れてしまうSLG作品でした(褒め言葉)
原画:織音(ORION)
シナリオ:六花梨花 , TADA
音楽:Shade
背景:よーいちろー
ディレクション:TADA
RanceVI (2004,アリスソフト)
人種差別によって社会階層が固定化した国家をランスが革命するシナリオに、RPG要素(3D迷宮ダンジョン)が加わったのが本作である。
レベリング、武器の購入、キャラクターの使用回数から敵の強さのバランスがまとまっているため、プレイ時間が40時間超ということを飲み込めればいい作品かもしれない。
疑似客観的に見ても欠点らしいところはないし、魅力を削いでいる部分があるというわけでもない。全体的によく出来ているとは思う。
という前提での感想になるが、私にとって『ランスⅥ』はシナリオもRPGも今一歩で「普通」の域を出なかった。普通のシナリオ。普通のRPG。普通のプレイ体験。つまらないとは言わないが普通。面白くないとは言わないが面白いとは言いにくい普通の出来。
なんていうか、ぱっとしない。
だからか私にとって夢中になるほど遊んだゲームでもないし(実際一周目しただけでおまけシナリオ等はやれていない)、嫌々になって放り出したくなったゲームでもなく「悪くはないんだけど良くもない」RPGだった。
こういう作品が一番扱いに困る。ランス03(2015)のように明らかにゲームデザインが雑で作業ゲーになっているのならば、「これはだめだ」と言い切れる。でも『Ⅵ』はどこも悪いところはない。あるいは今の私には判断できないだけかもしれないが、少なくとも現状では批判に値すべき箇所なんてものはない。
世間的には高評価なタイトルなので、私の感想はすみっこのほうにでも置いやって、興味あれば一度やってみるとよいと思う。――と慎ましやかに言えばいいのかもしれないが、シナリオの質・面白いRPGを求めている人にとってはおすすめする程の作品ではないと言っておきたいところ。「エロを見るためのRPG」くらいの期待値ならば、満足度は高いのかもしれない。
私的満足度:★★★(3.5)
おすすめ度:★★★(3.5)
原画:織音(ORION)
シナリオ:六花梨花(とり)
音楽:DragonAttack(雷丸)
3Dマップ製作:栗林
戦闘背景:好緒
ランス03 リーザス陥落(2015,アリスソフト)
ランスシリーズの世界観を大きく広げた『Rance III』 (1991)を26年の時を経て再構築し、ストーリー、ゲームシステムをブラッシュアップ。さらにシリーズ初のフルボイスを付けたのがこの『ランス03 リーザス陥落』だ。
カード型ダンジョンやスキルを組み合わせるバトルシステムは一見の価値があるし、肉感のエロさが溢れているCGは見応えあるものとなっている。そういった良いところもあるのだが、全体的に見ればいろいろと残念な作品であった。というのが私感である。
本作はどこまでも「一本道」であり、課題Aが終わったら次の課題Bをやってくれ。課題Bが終わったら課題Cをやってくれという指示の元プレイヤーは淡々と与えられた業務をこなしていくだけだ。
聖武具を買い戻さなければいけない→お金がないのでギルドクエストを受けなければいけない→リスの洞窟へ行かなきゃいけない→聖武具がローラに買われてしまったので自由都市カンラに行かなければいけない→……
といった具合にランスを最大目的「リア(&リーザス国)救出」に到達させるために小目的をひたすらこなしていき、かつそれ以外やることがない。これが本作の作業感を高めている最大原因だろう。
MAP上の都市/ダンジョンは最初から全て解放されておらず、特定の課題が終わるごとに1つ1つ開かれていく。このことも定められている線路上を歩いている印象を強くさせ、また移動できる場所が増えれば増えるぶんだけ楽しさが増すかと思いきや、そうはならない。
プレイヤーは自発的にストーリーを進行させる自由は与えられているし、MAP間の移動だって(一部シーンを除いて)自由に決定できる。しかしだからといって寄り道するようなダンジョンははにわ神殿しかないし*1、そのはにわ神殿だってクリアできるコースは簡単にクリアできるものの一つ上のレッドやスーパーコースは戦略性で踏破するのではなくストーリー進行で増えるPTメンバーを揃えつつレベルを格段に上げて挑まなければいけないため「たまに行ってみようかな」となりがちで積極的に挑戦するようなダンジョンではなくなっている。またストーリー上レベルを上げなければ勝てないボスは(魔人ノス戦以外)存在せず、このため無理に一度踏破したダンジョンに潜りこみ地道なレベル上げをする必要性はないし、バトルスキルも頑張ってお金をためて買う理由もなくなっている。集めてみたいアイテム(=徳用電池)も終盤以降に限られており、つまりほとんどのシーンにおいてプレイヤーは「ストーリーを進める以外にやることがない」のである。
仮初の自由はあるが、無価値な自由さにしかなっていない。インセンティブが常にシナリオパートにしかなく、インセンティブの使い方(あるいはその概念が希薄)なため本作はただただ与えられた業務をこなす "お使いゲーム" 。
…これでは、プレイヤーは『ランス03』を遊んでいるのではなく、"遊ばされて"いる傀儡のようでさえある。(中略)
またバトルパートは戦略で勝つものというよりは「レベルを上げて殴るRPG」なので、魔人ノス、ハニーキング、ウルンセル戦に挑むためにはダンジョンに潜ってひたすらレベル上げする必要性が出てきてしまうのも最悪である。「レベル上げが楽しくなるギミック」――つまり苦痛を→楽しさに変換する仕組み――が搭載されているならば、レベル上げに悪印象は持たずむしろここの評価は逆転するだろう、がそういった事もなされていない。私が苦言を呈しているのは要素ではなく、その要素が「苦痛になっている」部分なのである。
この2点によって『ランス03』はいっそう作業感の強いゲームとなってしまったし、私が本作を低評価にする主な理由である。
――『ランス03』レビュー 正直おすすめできない作業作業RPGだった。(9417文字)
via:ランス03/アリスソフト
いわば「ストーリーを駆動させるためのRPG」でしかないので、別にRPGいらないよね?なくてもOKじゃない?ってレベル。なので本作を『RPG』として観たとき、そのゲームデザインの雑さによって大きく評価を落とすことになる。
「エロを見るためのRPG」くらいに捉えるならば大丈夫かもしれないが、それにしてもこれがフルプライスだと考えるとほんと憂鬱になる出来だと思う。
私的満足度:★★★(3.3)
おすすめ度:★★★(3.4)
感想→『ランス03』レビュー 正直おすすめできない作業作業RPGだった。(9417文字)
原画:魚介 , 遊喜(SD原画)
シナリオ:ダイスころがし , ヨイドレ・ドラゴン
音楽:DJ C++(ASTLYRE)
声優:橘まお , 真中海, 由嘉鈍 , 鶴屋春人 , 七ヶ瀬輪 , 早乙女綾, 高橋さや , やじまのぼる, 小倉結衣,榊原ゆい, 北都南 , 加賀ヒカル , 御苑生メイ , 桜川未央 , 香澄りょう , 金松由花 , 桃井穂美, 胸肩腎 , 真木将人 , 姫川あいり, 古河徹人 , 荒木幸男 , 草村ケイ , 桜城ちか, 手塚りょうこ , 榛名れん, 野☆球 , 鈴谷まや, 綾瀬あかり , 萌花ちょこ, 白月かなめ, 高天元忍斎 , 乙参 , 牛蛙キタロウ , 壱伊なるせ,黒咲ユキカ , 平野響子 , 折笠伸明 , 秋野花 , かわしまりの , 佐和真中 , 藤森ゆき奈 , 風見健 , 有栖川みや美 , 青葉りんご, 雨戸武治 , 北板利亜 , 星一人, あかしゆき , 榎津まお , こたつみやこ, 沖田かずひろ, TOSAKA , 奥川久美子 , Lee , 羽瀬らいる , 雪村とあ , ますおかゆうじ
ディレクター:いってんちろく
プロデューサー:TADA
百花繚乱エリクシル(2013,AXL)
"巡察使"とよばれる地方行政を監督する主人公が、貨幣経済が滞り、税を収められず、まともな特産物もない辺境の地・ミルトスの再興を目指す。
「今までの倍、税金を払えるようにしてやる!」
ファンタジー世界を舞台にした村おこしアドベンチャー、ここに開幕!!
(経済的に)干乾びた土地を立て直しながら領主の娘や護衛士と恋を育んでいくエロゲ――そう聞くとすごく地味に聞こえるかもしれない。かも ではなく実際にジミーだ。
世界を救うわけでも巨大な陰謀に立ち向かうわけでもないし、カタルシスを覚えるようなものでもない。 波乱万丈な展開があったとしてもそれはささやかなもので、終始どこか「ふんわり」とした柔らかい空気に満ちている。
まるで「例え何が起こっても最後には必ずハッピーエンドになる」そんな空気。どんな苦難も、どんな悲しみも、やがては幸せに回帰していくようなね。そんな感じ。
でもそれは悪いわけではない。むしろそこがいいのだ。癒される。疲れきった生活に慈悲を与えるように『百花繚乱エリクシル』は"おとぎ話"として私たちに語って聞かせてくれるのである。
正義は悪を貫き、永遠の恋はここに結ばれた――と。
それは現実では起こり得ない夢物語だからこそ、美しく見えるのだろう。あまりにも甘いお話。でもそういうおとぎ話がどこかにあってくれればいいなと願わずにはいられない、小さな祈りのような物語。
ハッピーエンド大好きな人には是非ともおすすめしたい。
私的満足度:★★★(3.9)
おすすめ度:★★★(3.8)
シナリオ:長谷川藍
音楽:PELVISMUSIC inc., solfa
声優:青山ゆかり, 桃井穂美, 鈴音華月, 武石あゆ実 , 碧山もか,いちごみるく, ピロキ, 事務台車, 堀川忍,韮井叶, 赤羽まつり, 静陵聖 , 篠原ゆみ
歌手:KOTOKO, 霜月はるか, 茶太 , iyuna, Ceui , 小春めう
プロデューサー:GOU
BALDR SKY Dive1(2009,戯画)
本作は「過去編と現代編」「ADVとACT」2つのスイッチングによってプレイヤーを飽きさせないつくりとなっている。
前者は主人公・門倉甲は電脳戦のいざこざで記憶障害に陥いってしまい、その記憶を回復させることを望まれる。そしてその回復する手続き上彼の意識は「現代から学園時代」へと移り変わり、ある程度のシークエンスが描かればまた「学園時代から現代」のお話へと戻っていく感じだ。
後者はADVを文章を読むことを目的としたゲームだとするならば、ACTは字義通りアクションゲームで敵機体を破壊することが目的となっている。
――BALDR SKY Dive1(2009,戯画)
そんな2つが何度も何度も切り変わっていくことで、プレイヤーの物語展開の予測と期待は遅延に追い込まれ退屈とは無縁のプレイ体験が生まれるのである。
物語・アクションゲームどちらとも単体で十分遊べる品質のものが――上手い具合に――組み合わさるとこういう面白い作品が出来上がるのかもしれない。
あと『BALDR SKY』は続編構成となっており、Dive1、Dive2とそれぞれ買う必要がでてくるのは注意。私が今回プレイしたのはDive1だけだが、満足度高かったのでDive2も既に購入済み。来年、時間をつくって遊びたいなと思っている。
私的満足度:★★★★(4.0)
おすすめ度:★★★★(4.2)
紹介→『BALDR SKY Dive1』は過去と現代・ADVとACT2つのスイッチングで退屈をはぎとる!
原画:菊池政治
シナリオ:卑影ムラサキ , 企画屋
音楽:MANYO(Little Wing、六浦館) , Barbarian On The Groove , SHIM(TGZ SOUNDs) , I've(主題歌)
声優:山下一真,神村ひな , , 岩田由貴 , さくらはづき,杉崎和哉, 中里圭太, 有栖川みや美 , 奥川久美子 , 祭大!, ZEN , 薬師寺兼一 , 古河徹人, 上下左右 , 熊野茶太郎 , 奥田香織,梨野つぶて , 美月, 日椰たぬき , 由貴恵, 斉藤ミサ , 一二三一, 矢車想司 , 奏雨 , つぼみ , 望月ゆず姫, 葵海人 , 徳本英一郎 , 深川緑 , 小原敬生
歌手:KOTOKO , 片霧烈火
メカデザイン:MUSASHI
アルカディアの灯火(2015,NostalgicChord)
本作は「楽園」をテーマにした2つの作品が収録されたもので、1つはアメコミ風グラフィックに軍事描写が折り重なる近未来戦争SF『楽園の守護者』。もう1つはある日異世界転生してしまう6人がどうにかこうにかして新世界に馴染むまでを描く『マリーベルは死んだとパパに伝えて』。
両者とも独特の魅力を兼ね備えているが、特に『マリーベルは(略)』はまるでそんな異世界が本当にあるかのように法・倫理・生活様式・セカイの仕組みがしっかしており、そのディティールの細かさが育む"生々しさ"によって見知らぬ世界の居心地の悪さは半端ないし、モンスターに命を狙われればひやっとしはじめる所は本当に傑作だと思う。
惜しむらくはこれが短編ということorz (もっと続き読みたい!もっと続き読みたいよー!)
・『楽園の守護者』
・『マリーベルは死んだとパパに伝えて』
――アルカディアの灯火(2015,NostalgicChord)
それもこれ「1000円」ですからね。短編ノベルとはいえこのレベルの作品が1000円っていくらなんでも安すぎじゃない? 安すぎだと思います。
私的満足度:★★★(3.9)
おすすめ度:★★★(3.9)
『マリーベルは(略)』:★★★★(4.0)
感想→アルカディアの灯火―らくえんはあるよ ここにあるよ―(感想レビュー)
原画:KeG(KEG) , JUNNY
シナリオ:早狩武志 , 健速
魔女こいにっき(2014,Qoobrand)
――物語は無価値か?
物語を語ったことがある者ならば、一度はこの疑問に行き着いたことだろう。
自分が語ったものが誰かの心を震わし、勇気づけ、そのセカイにのめりこませることがあったとしても現実には数ミリしか影響を及ばさない。せいぜいがセラピー的作用や人生観をアップデートさせるくらいで、家族の暴力に苦しむその現状を救済したり貧困であえ食べ物すら変えない現実を救う力なんてもの物語にありはしない。そう気付く時がくる。それは小説の市場価格が1000円前後で食費の10分の一の価値も認められていないことからも分かるだろ? 所詮娯楽なのだ。実用性はない。利便性もない。ただのくだらないおとぎ話だ。現実で重篤な問題が起こればまず現実の問題を解決されることを望まれるくらいには、物語の優先度は低い。
いつだってだ。
いつだって現実より下なんだ。
そうして物語を読むことのリソースは現実に食い散らかされる。「この物語はこのセカイの何よりも大切なんだ」そう語った者から、物語は"抜け"ていく。小説や漫画よりも現実のほうが楽しくて、恋人の逢瀬がなによりも大事で、そちらに惹きつけられるのを止めることはできないと知った時、あの頃の気持ちを忘れてしまった時、「物語の価値」について疑いを向けてしまうようになる。
――物語は、なにも残せないのかな?
『魔女こいにっき』はそこにひとつの光を照らしてくれる。物語を愛し、語り、けれどその力のなさに絶望した者にとって希望になる。だがそれは単純な肯定ではない。それは単純な否定ではない。もっと別のものだ。
ラストは圧巻で、王とアリスが至ったものを理解できれば万感の思いを持って拍手してしまうに違いない。そうだよこれが物語の果てを求めたものが手に入れられる光景なのだ。これが物語を語ることをやめなかったものが到達できる風景なのだ。
物語を語ったことがあるならば『魔女こいにっき』は絶対に響く。そういう作品だ。
こういう作品を味わえるからこそ私はエロゲが好きなんだなと実感するし、もっともっとこういう挑戦的な物語が増えてくれればいいのにと願わずにはいられない。
そのため、誰にでもその魅力が届くかと言われるとそうではないと思うのでおすすめ度はこんな感じ。
私的満足度:★★★★(4.4)
おすすめ度:★★★(3.9)
原画:小桜りょう , 狗神煌, 朝倉はやて , 白もち桜 , ぺろ , MOZUKU
シナリオ:新島夕 ,博恵夏樹 , 佐藤礼
音楽:樋口秀樹 , 水月陵, I've
声優:くすはらゆい, 森川ゆゆ, 佐本二厘, 千葉山もみじ , 山田ゆな, 結衣菜他
歌手 Larval Stage Planning , WHITE-LIPS , monet他
おわり
あけましておめでとうございます(予約投稿日が1月1日)、
こんな日でもエロゲ記事を読んでくれるとは有り難い限りです。今年も宜しくお願いしますね。
そうそうそう言えば『しょこめざ』を12/30に起動したらなんと「コミフェス中は せそう 話しかけないでもらいたい!」とその期間中専用の安藤テルハボイスが流れて驚くなど。本作のこういう細かい所好きっ。
※「せそう」としか聞こえないんだけど、文脈的に「拙僧」つまり私に話しかけないでねと言いたいのだろうと考える。
◆
*去年=2015、今年=2016、来年=2017 で本項目は記述されています。
一月前からこつこつ書いてきたエロゲ総括もやっと終わりを迎えることができて一安心。2015年は押しに押して翌年の2月投稿になってしまいましたから、今年は年始に合わすことができて良きかな良きかな。
ただ1作品500文字だとしても×26で13000文字。実際はその2.5倍の32000文字なわけでひたすら疲れました。もうやりたなくないなと思いつつ、来年もきっとやっている気がする。やりたくないわけではないんだけど、この労力分見合っていない感がすごいんだ。
さて。去年と同数程度の作品をプレイすることができましたが、去年よりも(私にとって)当たりハズレの多い年だったように思います。恋色空模様とかHGGとか本当に辛かった。
ADV媒体って面白い作品だとアニメや映画と比べてほんと至福な時間を過ごせますが、逆につまらないものだとストレスが半端なくてぐったりするんですよね。ハイリスクハイリターン。
でも「何がダメなのか」を考えて言語化する過程は、その次の次のそれまた次の作品を語るときに役立つことが多いので無意味ではないんですよね。「何がダメか」を分かっていると「何が良いか」も必然と理解できますから。
それを意識し始めたせいか今年は感想スタンスもじわじわと変わり、「批判」と「総評型」を中心に書いてきたなと。内在批評を下地にした考察は結局『去人たち』だけでしたし。
いやほんとは『魔王物語物語』『四月馬鹿達の宴』(←RPG)『魔女こいにっき』の考察下書き、また総括としての『トライアンソロジー』とかのメモはあるんですけど、結局形にできませんでした。
なんでだろうなあ……って考えると、去年とブログの記事数を比較したら3倍ほど違う。2015年は300強の記事を投下しているにも関わらず、2016年は100記事くらいしか書けていない。なんだかんだ時間取れなくなってるところが数字として如実に反映されてきてるのが、悔しい。でもまあしょうがない。
プレゼントしていただいたエロゲも本年度中にプレイできなくて、なんだか申し訳なかったりしていたり。ごめんなさい;;来年には必ず……!
あとHTML文字で10万文字になっているので、もしかしたらこの記事全部表示されないかもしれない(プレビューモードでは半分あたりで記事が途切れている)という不安を抱えているんですが、うまく表示されればいいですね。文字制限ないほうが嬉しいのだけど。 ←今確認したらちゃんと表示されてました。よかった。
それにしても今年は「物語」の概念をめちゃくちゃ掘り下げることができた年でした。あるいは私的に『魔女こいにっき』に染まった年。ジャバウォックが『答えは得たよ、ありす』と微笑む情景を思い描くくらいには、私もある答えを手に入れることができて大満足。恐らくこれはある種の"マスターピース"のようなもので、もう少し練度を高めていけばほとんどの物語を穿てるものになるかもしれない。
別にそこを望んでいるわけではないんだけど、副産物としてそういうのも出来るかもねと。私が目指しているのは"マスターピース"を手に入れることではなく、物語という概念に対する多面的な姿(=深淵)を見たいだけなのであまり興味がない、といいつつ強いツールなので関係ない作品にもばりばり使っちゃいそうで怖い。『ロンギヌスの槍』……うむ。なるほどそういう感じか。
◆
ということで(何度閑話休題するつもりなの?というツッコミは置いておき)、2016年にプレイした中で「個人的にとても満足」というのはこの9つ。
トライアンソロジー
少女たちは荒野を目指す
去人たち
Corona Blossom
グリザイアの旋律
果つることなき未来ヨリ
鬼哭街
fault - milestone one
ひまわり-Pebble in the Sky-
ピュアガール
HOLY BREAKER!
恋色空模様
Hyper→Highspeed→Genius
あえて無視する君との未来
Bullet Butlers
彼と彼女と彼女の忠義
ゆのはな
つよきすFull Edition
つよきす三学期Full Edition
つよきすNEXT
戦国ランス
ランスVI
ランス03―リーザス陥落―
百花繚乱エリクシル
BALDR SKY Dive1
アルカディアの灯火
魔女こいにっき
約3本に一本は「心の底から好き!」って言っている状態。これが2本に1本レベルならもっといいのに……と思いはするんだけど流石に高望みかな……。
ただ★★★(3.8~)の作品もいれると計13作品まで膨れ上がるので、約2本に一本は気に入っている作品と接していることになる。あれ?全然高望みじゃなかったのかも。
ちなみに今までギブアップしたことがなかったのに、今年になってとうとうギブアップしてしまった事態がちらほら。『NOeSIS』しかり『つよきすFESTIVAL』しかり『WHITE ALBUM -綴られる冬の想い出-』と3作品。
NOeSISはもう記事書いたので詳しくは以下で、でリメイク版のホワルバはアドベンチャーモードが搭載されていてヒロインと「コマンド選択で会話」しなくちゃいけない。どうもこれが私には合わない。合わないというより物語とマッチしている気がしないのと、シナリオが10の長さだとするとこのアドベンチャーモードによって3倍の長さまで水増ししている感じがしてしまってうーんとなったんですよね。シナリオを中心に読ませてほしさ。原作版のホワルバが通常のADV形式だけの物語ならば、もうそっちをプレイしたいなと思っていたりいなかったり。『つよきすFESTIVAL』は先述したとおり『三学期』『NEXT』のダメさを引き継いでいるので合うわけもなく(CHRONICLEパックを買ったのは大失敗)放置してしまっています。
関連→ 累計800,000ダウンロードされた『NOeSIS』の文章レベルが低くてGiveUpしたお話
まあ、でもいつかやるでしょう。多分。いやいやでもそんな自分に合わない作品に費やす時間なんて無い気がするので……うーんどうなんだろ。
とかく来年もこんな感じでエロゲについて語れればいいと思います。(今回ちょっと一般ゲー多い気もしますけどね)
それではよい新年を。またね。
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*1:とはいえ2残念ながら『トライアンソロジー』に近いものを既に私は読んでいたのでその驚きは半減してしまったものの、まそれでもぐいぐいとこちらを引っ張る牽引力はよいと思う