猫箱ただひとつ

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福音をもたらすブルマ師匠とあえて無視する君との未来

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あえて無視する君との未来×福音

 

ごくたまに「存在」するだけで周りの人間を幸せにしていく者がいる。その者は別段なにかするわけじゃないのだが、ただその一挙手一投足が、笑顔が、声が――一緒にいるだけで――隣人の不安を打ち払い安寧へと導いてしまうのである。

『あえて無視する君との未来』ならばそれは"師匠"だろうか。師匠は別れを厭がる後輩へやさしく言葉を手向けていく。最初は渋る後輩も、段々と、師匠の声に耳を傾けていくうちに未来への不安はどこか遠くへ消えてしまっていく様子が福音を告げる者なのだなと感じてしまう。

 

拓郎「師匠、僕、今日で施設を出ないといけないんだよ?!」

少女「そうだな」

拓郎「もう、この海岸にも来られないんだよ?」

少女「――そうだな」

拓郎「師匠とも、もう……」

会えない、とは言葉にできなかった。
言葉にすると、きっと泣いてしまうとわかっていたから。

少女「たとえ、そうだとしても……」

師匠は両手の指を僕の前で組んで見せた。

不思議な手。
そこから師匠は色々なモノを生み出した。
鳩、花束、小さな世界中の国旗
僕の大好きな魔法の手。

少女「キミが幸せになれるのなら、私は嬉しいよ」

長い指が解かれる。

師匠の手のひらには、缶ジュースが載っていた。


――『あえて無視する君との未来』:序

 

 

両親を事故でなくし天涯孤独となった沢渡拓郎(さわたり たくろう)。彼は児童施設での生活を余儀なくされ、不安の中で出会った"師匠"の笑顔に何度も助けられたのだと言う。

私にはそれが分かる気がする、なぜなら"師匠"は存在自体が福音的なのだ。彼女が「君の未来は輝くよ、私が保証する」と言ってくれたのならば例え人間が断言できる事柄でないにせよ「わかりました」と納得してしまえる。実際に未来がどうなってるか誰にも分からないけど未来は明るいと思わせてしまえる力が彼女にはあるのだ。

 

他の誰か、じゃない。

 

彼女の言葉だからこそ私達は荒唐無稽な未来予想図に首肯できる。厳しい言葉だって受け止めてみせようと思える。こちらの身を思ってくれていることがわかるからこそ、師匠の言葉もまた大切にしようと思えるのだ。

 

拓郎「行きたくない」

拓郎「師匠と別れたくない」

少女「いや、ダメだ」

少女「それは停滞だ、拓郎くん」

拓郎「テイタイ?」

少女「立ち止まるという意味だ、少年」

少女「人は常に未来に向かって歩き続けるものなんだ」

少女「キミが立ち止まることは、私が許さない」

師匠は厳しかった。
優しい時もあるけどだいたいは厳しい。

 

 

――『あえて無視する君との未来』序

 

 

両の目に涙が滲んでくる


少女「泣くな、少年」


拓郎「泣いてない」


手の甲で速攻、涙を拭って強がった。


少女「……なあ、拓郎くん」


師匠は僕の肩に手を置いた。
温かな体温が伝わってくる。


少女「キミのその特別な能力にも、きっと存在する理由がある」


少女「それを探してほしい」


少女「キミの人生の師として、私はそれを切に願うよ」  

 

 

――『あえて無視する君との未来』序

 

 

 涙がまたにじんでくる。


少女「うつむくな、少年」

 

拓郎「う、うん……」

 

少女「キミの未来はきっと輝いている! 素晴らしいものになる!」

この温もりを忘れないように、と心に誓う。
大好きな人の温もりを、絶対に。

拓郎「うん!」

力強く返事を返す。

少女「鳥は歌い、花は咲き誇り、世界はキミに優しく微笑んでくれる!」

拓郎「うん!!」

拳を握って、天に突き上げる。

少女「ブルマ師匠が保証する!」

 

 

――『あえて無視する君との未来』:序

 

 師匠は茶目っ気あふれる人だった。

 

   ◆

 

こんなふうに周囲に勇気を与え、心象世界を書き換え、善き報せを告げる存在を『―福音―』(エヴァンジェリン)と名づけてみることにする。

これは「福音をもたらす人間」だけに当てはめるのみならず、複数の意志が絡みあった末に生まれる「土壌」や、「状況」においても包括されるものだと定義する。

《物語そのもの》がこれに該当することだってあるだろうしね。