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あえて無視する君との未来 感想

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 <あえての一連エントリ>

1)福音をもたらすブルマ師匠とあえて無視する君との未来
2)『あえて無視する君との未来』批判レビュー。最も重要な部分をスルーしてしまった本作

 

  プレイ時間   18時間
  面白くなってくる時間  30分くらいから
  退屈しましたか?   していない
  おかずにどうか?   使え……る?
  お気に入りキャラ   三咲師匠

公式HP│あえて無視するキミとの未来 ~Relay broadcast~|ALcot ハニカム

 

「―福音―」の概念について、本作の批判について、これまで書いてきましたが今回はそれらをざっくりとまとめた『あえての』の感想になります。

ではどうぞ。(もちろんネタバレ注意)

 

 

あえて無視する君との未来 感想

1,購入経緯

前作ALcotハニカム『春季限定ポコ・ア・ポコ』のやさしい雰囲気が好きだったこともあり、その次回作の『あえて無視する君との未来』(2012年)もまた楽しみにしていた。

体験版をプレイしてみるとどうやら今度は「未来が見える少年」のお話のようだ。未来視かーベタベタだなーと思ったもののポコポコだって音楽特待生のベタベタな学園生活を描いた作品だったので別段気にはならなかった。大事なのは世界観の特異さではなく、その世界観をどう"魅せ"るかだろう。ポコポコはありふれた世界観ながらもその"魅せ"方がうまく――特にラストの余韻がにじむ演出はよかった――『あえての』のもまたそういう作品なのかなと思った。

そして体験版をプレイした時点で「未来視という能力を持つが故の苦悩」「兄を溺愛する駄妹」「主人公に全く恋愛感情がない幼なじみ」「先輩が仄めかす謎の過去」「向日葵のような笑顔を向けてくる師匠」がグッときており、発売されたら買おうと思ったもののそれから4年が経っていた。今は2016年。

アレー??(汗)

 

買うの遅すぎやしませんか私?と私は私にぐちぐち愚痴りたくなってくるのだが、やりたい作品でも購入が後々になる人ですのでこういうことよくあるんですよね…。購入リストに突っ込んでおくものの、「今やりたい」と思わなければすぐ買わない感じなわけです。

ともかく。

今年になってようやく本作に触れたわけなのだけれど、体験版をプレイした当時と2016年にプレイした今では「感じ方」がだいぶ変わっていたのが面白かった。

例えば幼なじみ・真鍋計は沢渡拓郎の手を握ってきて「どう?なにか感じる?」と問いかけて「ね、やっぱり何にも感じない」とワタシはキミに恋心は抱いてないですからねと宣言してくるところが昔はきゅんきゅんしていたんだけど、現在では「そうですか」という心持ちだったりする。

つまり2016年の私と2012年の体験版をプレイした私とでは「反応」が蛋白になっていたのだった。

考えられる理由としては、体験版で一回性を奪われてしまっているからかもしれない。すでにこのシーンは一度通り過ぎているのであり、計さんがそういう態度を取ってくることは分かりきっていたのでそこに目新しさもなければ新鮮な驚きはない。となれば「そうですか」と蛋白な反応ならざるをえないのかもしれない。

それにしたって今回、体験版の範囲の物語をプレイし終えたときに「あえてのを買うか買わない」と考えてみたら買わないかなと私は思ってしまった。そりゃ4年も経過しているので嗜好の変化もあるだろうさ、あるいは良い物語を摂取しすぎたせいで霞んでしまったこともあるだろうさ、としみじみしたりもした。なんていうか、作品は買いたいと思ったときに買うべきでありプレイするべきなんだろうね。

2012年プレイ時の感触を朧気ながらに覚えていると、こういう昔と今の「反応の差」が楽しい。なるほど、今の私はそう感じるんですね沢渡さん? といった感じに。

とはいえ、転校生・三咲爽花が

「あの部活はいいな。何の打算もない仲間たちとの時間」

とつぶやくシーンはやっぱりくるものがあったり、師匠が落ち込んでいる所を励ましてくれるシーンは4年前と変わらずお気に入りだったりする。当時と感じ方が変わってしまった所もあるが、変わらない部分もあるのだなと、そう感じ取れることになにかしら価値があるような気さえしたのだ。

参照→福音をもたらすブルマ師匠とあえて無視する君との未来

eroge-pc.hatenablog.jp

 

 

2.感想

本作が全面に押している「未来は変えられるのか?」という主題は、結局のところズレてしまっているように感じられた。

計、南、爽花、七凪のお話は「未来」についてのひとつの答えかもしれないが、「未来視」についてのものではない。最初は「未来視」について物語が展開しているのに、作品全体を眺めると「未来」のお話になってしまっている。

そんな些細な部分が微妙な違和感となり、物語同士がうまく咬み合わない齟齬感のようなものが生まれていると個人的には思う。

そこは別記事で語ったので興味あれば読んでほしい。

参照→『あえて無視する君との未来』批判レビュー。最も重要な部分をスルーしてしまった本作について

 

とはいえ、本作を「学園モノ」あるいは「未来視ではなく未来のお話」として読む分には そこまで 障害があるポイントでもない。ここがしっかりしていればもっと良くなるだろうが、致命的な部分ではないということでもある。

私の感想を言わせてもらえば、「悪くはない」に尽きる作品だった。悪くはない、でも突き抜ける作品ではなかった。学園モノとしても未来視のお話としても時間を費やしてまで読む価値があるかと聞かれると……ちょっと悩んでしまう。

そう悪くはないのだ……。
悪くはないが…。
"良い"と胸を張って私は言えないのだ。ごめん。

好きなシーンはあるし、泣いちゃった部分もあるけれどやっぱり「これおすすめだよ」と他者にすすめるには至らない。

   ◆

ここで話が大きく変わり、私が『あえて無視する君との未来』でいちばん好きなシーンは七凪√のラストだったりする。

実は兄の両親を殺したのが自分の両親で、兄が家族になることを喜んでいた自分はどれほどにバカだったのだろう、どれほどに酷いことをしていたのだろうと罪悪感でいっぱいになっている七凪。そんな彼女に兄・拓郎の声は届かない。どれだけ呼びかけても、どれだけ話しかけても、七凪は自分を責め続けていた。

そして文化祭当日。修正に修正を重ねた拓郎シナリオを読み進めるこのシーンがグッとくるわけです。

 

私は、つぎのページをめくって、妹に言った。

七凪「僕も、キミが大好きだよ」

――え?

内容が――

変わってる?


七凪「キミが僕を騙すとか」

七凪「キミが僕を傷つけるとか」

七凪「そんなことは何ひとつ関係ないんだ」

あ……。

七凪「兄さんは、キミと出会った時から、キミを守るって決めてたんだよ」

こ、これは兄さんが

(中略)

七凪「ああ、今まで、照れくさくて、言えなかったけど……」

七凪「キミが、僕にいつも、言ってくれた言葉を、贈るよ……」

七凪「僕は、」

七凪「兄は――」

 

七凪「キミのことを」

七凪「永久に、愛して、るよ……!」

 

――『あえて無視する君との未来』七凪√

 

もうね、めちゃめちゃベタベタな展開だけれど、この虚構に現実が入り交ざったこの瞬間――兄の言葉が物語を通じて七凪に伝わった瞬間――私はこういうの弱いんだよと視界を滲ませていた。現実での言葉が伝わらないなら虚構に落とし込んでしまうそのやり方が、ちょっと、ずるい、って思っちゃうほどに大好きだ。なんか無性にうるうるしてしまったよこの野郎!

お兄ちゃん(拓郎)の気持ちが「発話」されたときと、「物語のセリフ」になったときって全然違うものなんだな……とかね思っちゃうわけですよ沢渡さん?   

どういう差異があるのかをうまく言葉に出来ないんだけど、とにかく全然違うものになっているのだなあと。その言葉に込められた(あるいは受け手が解放する)意味も「発話」するか「物語のセリフ」で受け取るかでは後者のほうがその気持が数倍強く感じられるような気さえする。

――僕は、兄は、キミのことを、永久に、愛してるよ!

七凪ちゃん心がぐっちゃぐちゃな時に大好きな兄からこんなこと言わちゃったらぐっとくるしかないわけで……。七凪ちゃんがすぐさま兄の元へ駆けつけてしまうのもムリはないわけです。

『物語』の気持ちの伝達効率の高さってすごいんだなと。

 

それと拓郎の幼少期に出会うブルマ師匠。彼女とのたわいもない会話が毎回毎回うるうるしてしまった。ああいう憧れている年上の人って琴線に触れるんですよね……憧憬って恋よりも尊い気持ちですもの。たぶん。

とかく、私としては師匠のお話が欲しかったな! 本当に欲しかったな! 個別√か欲しかった。true√がほしかった。そして師匠の10年後の姿を拝み倒しつつ会話をし、安らぎを得たかったよ。あーなんで師匠のお話がないんだろ悔やまれるorz

こうやって人はSSを書く動機を得るのですね、わかります。

 

 

3.全肯定して見る『あえての』内在的批評を書きたかったが

 ▼

↑リンク先では『三咲爽花と付き合う未来』を本作は無視してしまったせいで、未来視についての物語が未来の物語になってしまい序章と個別√の齟齬感がでているようなことを書いた。

けれどそこを完全無視して、全肯定して、『あえての』を語るとしたら本作は「未来視」のお話ではなく「未来」のお話だったのだ―――とか言えちゃうかもしれない。(それが難しいから批判記事を書いたわけですがでもそういう視点もありだよとも言いたいわけですね)

  • 七凪√は『未来の解釈性』
  • 計√は『未来の肯定』
  • 南√は『現在推測できる未来変更』
  • 爽花√は『絶対に実現する未来視の未来変更』

この4つを絡めながらそういった内在的批評を書いてみたかったのだけれど、ちょっともう時間がないので着手できそうにない。

……こういうことやってみたかったんだよ、というログだけ残しておこうかなと。

 

 

 4.おわり

そんな感じで私にとっての『あえて無視する君との未来』の感想や、感触を語ってみた。やっぱり自分にとっての感想記事って思考ログの部分が大きく占めるなーとなんとなく思ったりもした。

そんな感じでおわり。

私的満足度:★★★(3.6)
おすすめ度:★★★(3.4)

 

 <あえての一連エントリ>

1)福音をもたらすブルマ師匠とあえて無視する君との未来
2)『あえて無視する君との未来』批判レビュー。最も重要な部分をスルーしてしまった本作