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やや強引なストーリーだが心地よい『fault milestone one』の購入経緯+感想レビュー(6303文字)

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*想定読者=既プレイ者のみ

 

 

(1)fault購入経緯

 

 6月。友次郎氏のツイートを見て『fault』シリーズに興味を持った。

 

 

言及どおり、まず要求スペックが半端ないし「ノベルゲームにそんなマシンパワー必要?」という疑問を覚えざるを得ない。しかし添付画像がしめす美しさで氷解。なるほど、ここまで拡大しているのに「ぼやっ」とした感じがないのはすごい。鮮明だ。

これが8K制作(書き出し半分てことは実質4Kと考えていいのかな)……ごくり。

現行ノベルゲームは1280*720が主流であり、高くても1920*1080の解像度までだろうか。その数倍の解像度で生みだされる「画面」とは一体どういうものなのか? 一体どれほどの「美しさ」に仕上がっているのか興味が尽きなかった。

ワクワクした私は衝動のままsteamアカウントを作り、steamに登録されている一作目『fault - milestone one』(以下ms1)の体験版を落とす。プレイ。初っ端からわかる音楽の質、画面の拘りぬかれた感じにファンタジーノベル独特のEmotionに満ちあふれてに圧倒され「買い」だと思った。ゲーム本編のテキストを読む前であったものの、心動かされっぱなしだったのである。

よく分からないままに始めるプロローグ時の音楽が特に好きで好きでね。"ファンタジー" がはじまる音がするっ!ってくらいにワクワクしてしまう。

 

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――Prolog/『fault - milestone one』

 

 

あとなぜ『SILENCE THE PEDANT』(以下STP)の美麗画像に興味を持ったのに、『ms1』をプレイしたのか? 

それは『STP』はfalutシリーズ最新作であり、一作目をやる前に――例えデモ版でも――プレイするのは気が引けたからだ。不意なネタバレを喰らう可能性もあったため敬遠したのである。

それに一作目がつまらなかったら、最新作までやろうとは思えないので『ms1』に触れて本シリーズがどの程度のポテンシャルを秘めているのか見極めたかったという思惑もあった。まさかそれがたった2分で達成されてしまうとは予想外ではあったけど。

 

6月下旬。ばたばたして購入を忘れていたところにsteamがサマーキャンペーンを発表。対象作品が割引になるイベントであり、faultもその対象だったため『Mark of the Ninja』『Undertale』などいくつかと一緒に購入。

(実はこれがはじめてのSteam購入体験であり、"Steam" がどんなものか分からなくて、ひやひやしながらインストールを進めるもののうわこれめっちゃ便利だ……ギャルゲー全部steamで管理したいんだけど……と思うほどに「購入→インストール→プレイ」のストレスが軽減されてるシステムはすごいぞ。ここはいずれ記事書きたい。むしろ今まで私が触れてきたDLサイトが未熟なだけだったかもしれないが)

 

7月下旬。一月が経ってようやくプレイし始める人がそこにはいた。というか私だった。いくらなんでも遅すぎかもしれない。そんな購入経緯であった。

 

   ◆

 

ちなみに『STP』(デモ版)のほうは『ms1』が終わったあとにプレイしたが、ほんと……変態的な美しさであった。最高すぎ……

 

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――『SILENCE THE PEDANT』(ALICE IN DISSONANCE)

 

この美細さお分かりになるだろうか?――とはいえ、スクリーンショットではどうしても構造上劣化してしまうため、デモ版ではこの画像の2,3倍美しかったりする。是非自身の目で見て頂きたい。

このデモ版ではfalutシリーズのネタバレは一切ないことが分かったので、初めての人も安心してプレイできるのもいいよね。そして

「この画面作りすげえーーー!!!(爆発四散)」

と本作に興味を持つのが目に見える……見えるぞ。

DL先→fault SILENCE THE PEDANT | ALICE IN DISSONANCE

 

faultシリーズは『milestone one』、『milsetone two 上(side: above)』が現在発売されており、上記画像はシリーズ最新作『SILENCE THE PEDANT』のデモ版である。今回私がプレイした『milestone one』は解像度1280×720であることに注意。

 

 

(2)fault・ms1感想

 

 

本作は「(そこそこ)独自の世界観で構築されたファンタジー物語」であり、クーデターから逃げ延びたルゼンハイド国のお姫さまとその護衛である少女2人のロードノベルだ。

つまり「ファンタジー+旅」を主軸にした作品と考えてもらって構わない。

ms1では不適切な転移でアウターポール(=世界の裏側)に飛ばされてしまった姫様一行がどうにかして本国に帰ろうと四苦八苦しながら、カディア市で出会ったルーンという少女の家庭問題に首を突っ込み、最終的には仲間として迎える短編作品である。こんなふうに1舞台・1作品でルゼンハイド国に戻る旅路が綴られていくのかなと思う。*1

そんな世界観の広大さに加え、雰囲気を彩る音楽、同人ノベルと鑑みなくても美しいイラスト、『3Dカメラ』という独自の画面演出によってプレイの楽しさを底上げしているのも特徴的だ。さらに辞書機能によって固有語の説明の少なさからくるストレスを限りなく軽減している所も注目であり、『fault milestone one』は作品外形-内容まで一定水準に達していると言っていいだろう。

実際に読んでいて心地よいし、おもしろい。

 

 

 ▼紹介記事

立ち絵が美しい!5時間以内に終わる同人ファンタジーノベル『fault - milestone one』を紹介するぞ!

 

紹介記事でも言及したが、「CG」「音楽」「画面演出」「辞書機能」なる作品外形がしっかりしているのが大好きだったりする。

やはり良い絵はプレイを促進させるし、良い音楽は物語に没入させてくれる。演出が秀でていればドキっとするし、ノンストレスな設計は心地よさを底上げしてくれるものだ。そういった"外形"のよさを改めて再確認できた。

ノベルゲームは総合芸術なのでやはりここを疎かにしてはいけないし、拘り抜かれているほど読後感は全然違ってくる。例え『ms1』がわりとどこにでもあるストーリーラインだったとしても、そんなのはプレイ中の楽しさを甘受できるならば些細なことだろう。

むしろ奇をてらっていない分、王道ながらもしっかりと纏め上げた作品と受け取ることもできる。

 

 

faultにも悪い部分はある

 

とはいえ、本作にも悪い部分はある。結論からいえばストーリー展開にやや強引な箇所があるのだ。

例えば「ルーンの様子がおかしくなった」時、セルフィーネは"マナショック"の危険性を踏まえた上でもカディア市に留まり調査したいと言う。

しかしマナショックはクラフターにとっては一大危機であり、体内マナの絶対量が低下することもそうだが、マナの薄いアウターポールに身体が慣れてしまえばマナが潤沢な土地にはいけない事態に陥ってしまう。

つまり二人の最大目的であるルゼンハイド国に戻れなくなってしまうのだ。

王族の秘技であるパスダウンを使用し前王の経験と記憶を継承してきた『王女セルフィーネ』ならば尚のこと、王国の行く末を考えるならば「体内マナの低下」「マナショック(王国へ戻れない)」この2つは避けなければいけない。

 

「私も話しでしか聞いたことがないのですが、私達の体も、持って5日と言われています」


「それ以上の時間アウターポールで過ごすのは…絶対に避けなければならない」

「下手をしたら、私達もこの土地以外では生きていない体になってしまいますからね」(脱字が見受けられるが原文ママ)

 

 

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――リトナ/『fault - milestone one』

 

 

ルーンの様子がおかしくなる前、ルーンは「正午まで」待って欲しい渡したいものがあるからと二人に約束を取り付けようとした。

しかしリトナからすればカディア市からさっさと移動したいのだ。朝早くに旅立ちたいし正午まで待つその「たった数時間」が惜しい。ではなぜそこまで時間に拘れなければいけないのかをセルフィーネに丁寧に教えているのが↑のシーンだ。マナショックは絶対に避けなければいけないんですよ、と。

しかしセルフィーネは「友達を大切にしたい。今度はいつ会えるか分からないから」という理由で断り、またルーンの様子がおかしくなってからは――選択肢を「関与する」「放っておく」どちらを選んでも――それを調べるために2日も割くことに同意してしまう。

前日の夜。朝に旅立つか正午に旅立つかの「数時間」を焦点にしていた問題が「2日」という大規模な範囲をあっさり了承するセルフィーネもどうかと思うが、それを提案するリトナは一体どういうことなのだろう?

 

    ◆

 

「アウターポール」がなぜマナ文明ではなく科学文明を発達させたのか?――答えはそこにマナがないからだ。そしてすぐ近くに潤沢なマナ土地がないからだとも推測できる。

もしも近接地域にマナが溢れているならば移住すれば「マナがない」というアウターポールにおける諸問題は一気に解決する。しかしそう簡単に出来ないからこそアウターポールは科学技術を発展しなければいけなかったし、マナを自在に操るクラフターを奇異の目で見つめ、世界から「神々に見捨てられた土地」と呼ばれているのではないか。

すなわちいくらカディア市から出ても、マナが豊かにある土地に辿り着くには長い長い距離があるはずなのだ。そんな「移動時間」も考えなければいけないこの局面で、このお姫様は明らかにおかしなことを言っていることになる。また強引に止めない所かルーンの調査に2日割くと提案したリトナもどこか歪みを抱えている人物になってしまうのである。

もちろん本来はそうではない。セルフィーネは博愛思考の持ち主で困っている民や友人を放っておけない女の子であり、リトナはそんなお姫様に忠誠を誓っているガーディアンだ。

 

だがそういった二人の気質も

・「ルゼンハイド国に帰還(最大目的)」⇔「昨日知り合った友人が気になる」

この2つを天秤に掛けて(あっさりと)後者を取るならばただの頭の悪い子になってしまう。当然だろう。自分達の今後の未来/これまで励んできたこと全ては昨日出会った友人よりも価値が低いと言っているのだから。

セルフィーネの「民を大事にできる王」の心意気は立派だが、しかしそれは王国に戻れなくなるかもしれないこの場面で貫くものではないのは明らかだ。それでも無理を通して貫くならばやはり頭のおかしい子になってしまう。

もちろんここにそう感じさせない「描写」があるならば別だ。マナショックを踏まえた上で「それでも」友人を取る納得のできる理由や、ある種の強引な物語展開を"良い強引さ"に見せる演出がされているならば、今まで語ってきた二人の疑惑は取るに足らない問題となる。

 

①例えばセルフィーネは「合理的判断が出来ない」思考様式を持っており――それは有り体にいえば壊れている人間だ――リトナはそれを承知した上で付き従っている。王女の博愛思考は自己選択によって生まれたものではなく機械的に動作する手段でしかなく、第三者から見ればとても歪んだものである等。これならば「二人のおかしさ」も一本筋が通る。

②例えばルーンの問題に踏み入るか迷うとき、「(ヴァラ様なら)関与する/放っておく」2つの選択肢が出るのだが、ヴァラ様つまりセルフィーネの父でありルゼンハイド現王の考え方が「(他国の価値観へ)関与する」と少女二人が捉えるならば、ルーンを助け出そうとするのも納得できる。けれど「(他国の価値観は)放っておく」と二人が捉えた場合でもルーンを助けようとするのが問題なのだ。放っておくを選んだのだから何故放っておかないのだろう?……どちらを選んでも――マナショックの危険がある中で――ルーンに関わろうとするのは彼女たちの行為は馬鹿げたものに見えてしまう。故に、選択肢のうち一つをルーンにかまけずすぐ旅立つならば先の印象も薄まるだろうだと思うのがどうだろうか。そういったルーンと交わらなかったENDがあるだけでも随分と抱く印象は違うと思う。*2

③例えばms1では(この世界での)移動手段・運搬手段がはっきりと明示されていないのでもしかしたアウターポール→潤沢なマナ土地まで一瞬で移動できる「なにか」があるのかもしれない。そうなればルーンのために2日間割り当てることも別段おかしな行動ではない。ただ、それならば何故リトナは宿にて「正午まで待ちたくない理由」をセルフィーネに話していたのだろうか?という疑問は残る。やはりそれはマナが潤沢な土地へ軽々と移動できないからこその焦りだったのではないか。

④例えば、先に「近接地域にマナが潤沢にあるならばアウターポールの人々は移住すればいい」と語った。しかしもう先にどこかの民族がその土地で暮らしていたり、領土問題や、マナの独占、大量移民の受け入れ拒否などなどアウターポールの人々は簡単に移住できない何かしらの「しがらみ」があったのかもしれない。あるいはそういった土地から追い出された人々のたまり場がここなのかもしれない。だとするならばカディア市を出てセルフィーネ一行がすぐにマナが豊かな土地へ駆け込める可能性も0ではなくなる。(とはいえこれも③と同様、リトナが「正午まで待ちたくない」と宿で語った言葉に謎が残ってしまう。というか二人ともこの土地を全く知らないのは序盤で示されているので例えこういった事情があったとしてもリトナが知り得ているとは思えない)

 

――本作にはそういった最も優先度の高い目的(=王国帰還)を阻害するマナショックという危険を冒してまでルーンに関与する納得のある理由・描写を提示することなく、大真面目に姫様一行は「放っておけないから」という理由で昨日今日出会った友達を助け出そうとする。

これが強引なストーリー展開に映ってしまうのである。

ここに目を瞑れば、丁寧に作り込まれた作品外形から滲む物語の心地よさはいいと思うが……やはりこの強引さは悪い強引さだろう。『ms1』を台無しにするほどのものではないが、評価を押し下げているポイントにはなっている。

こんなふうに「目新しい物語を求めている」「強引なストーリーは絶対嫌だ」という事でもなければ、作品外形のポテンシャルに心奪われるし、かつさくっとできるボリュームなので人にオススメしやすい作品ではなかろうか。

読む価値はあると思う。

私的満足度:★★★(3.8)
擬似客観視:★★★(3.7)

 

 

 

 

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*1:あるいはルゼンハイド国に戻ってもすぐ元通りの王政ができるわけではなく、クーデターは何故起きたのか? 誰が起こしたのか? どうすれば以前の体勢へ立て直せるのか? というふうに別の物語が始まるのかもしれない。

*2:それにどちらを選んでもストーリーが何も変わらないのであれば「選択肢」である意味がない。むしろms1は選択肢が「選択肢」足りえていない(=どちらを選んでも結果は変わらない)ことももっと追求したほうがいいのかもしれない。ただ視点を変えればあの選択肢は「他国の価値観の是非(=奴隷制度)」への少女達の態度の可視化と捉えてもいいが……けれどそれはどこか別の場所でやればいいだけで選択肢にする必要性は特に感じられない