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猫箱ただひとつ

物語追求blog。アニメ、マンガ、ギャルゲーを取り扱ってるよ

はつゆきさくら考察_死者が生者へと至るためには何が必要か?(26587文字)

ゲームレビュー ゲームレビュー-はつゆきさくら 考察/批評
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固有評価:White Graduation!




―――卒業おめでとう




<!>冬から春へ至る純愛ADV

  プレイ時間

  40時間
  面白くなってくる時間  22分
  退屈しましたか?   していない
  おかずにどうか?   使え……る?
  お気に入りキャラ

綾/あずま/ラン

公式HP│ はつゆきさくら


ここから私が『はつゆきさくら』をどう見て、どういう感想に至り、なにを掴んだかを語っていきます。めちゃくちゃ長いですが、よろしければお付き合い下さい。


それではどうぞ。


<!>ここからネタバレです注意を。






復讐という手段

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河野初雪は2人を憎んでいた。

ランを殺したコノハサクヤと、ホテル爆発事故の首謀者である佐々木恭吾に復讐を望んでいた。

事実。玉樹桜√ではゴーストパレードの日に佐々木を殺そうとしているし*1、サクヤにも何度も戦いを挑んでいることから、初雪の憎しみは本物だと私たちは認識するようになる。

当然だ。彼には復讐する動機もあるし、何より憎い憎いと言い続けながら復讐相手を殺そうとするのだから、初雪の気持ちが嘘だなんて思うわけがない。偽りだなんて考えるはずもない。

でも違った。違ったんだ、そう思わされていただけだった。初雪は本当はだれも憎んでなんかいないのである。コノハサクヤも佐々木恭吾のことだって恨んでもいないし怒ってもいないのである。

このことはあらゆるところで見られる。

例えばあずま√終盤、あずま夜のアイスダンスを見届けた後、初雪はこう語る。

あずま夜
俺よりも世界を憎み、俺よりもがんばった少女
彼女に春が訪れたならば、俺がなすことなんて、実はもう何もないのだろう。

――初雪(あずま√)


この言葉に違和感を覚えないだろうか? 初雪の憎悪はあずまより小さいだなんてとてもじゃないが思えない。だってあずまの憎しみは人を殺すほどのものじゃなかったはずだからだ。

いつも街が憎いと言い続けながらも、最後の最後まで「自分の手」で復讐を実現したことがないあずま。いつも呪いという遠回しな方法でしか他者を恨むことしかできなかったメア。

彼女たちはアイスリンクに魔法陣を描くばかりで、いつだって自分の手で復讐を成したことなんてなかった。一度もだ。さらに魔法陣を描く理由すらも「ゴーストチャイルドに街を滅ぼしてもらう」といった人任せなものだった。

反対に河野初雪は復讐を自らの手で行ってきた。

けれども初雪は「あずまのほうが自分より世界を憎んでいた」と言うのだ。比較対象であるあずまの憎しみなんて、佐々木を殺そうとした初雪に比べれば大したことがないはずなのに。となると初雪の佐々木たちを憎む気持ちは偽りだったと彼自身が言っていることにならないだろうか。ほんとう復讐なんて気持ちはなかったのだと。


シロクマ√の終盤では「佐々木を追いかけて殺すorシロクマを助ける」という2択を初雪が選ぶシーンがある。

このとき玉樹桜の声を聞くことで、初雪はシロクマを助けることを選び、自動的に佐々木への復讐をやめてしまうことになるんだけれども、このことを見ても彼の復讐なんてその程度のものだったと言っていい。

桜に声をかけられればやめてしまえる程度の、そんなあいまいな復讐動機でしかなかったんだと。

奴が逃げる。
「待てっ」

「う、ぁ……痛い、ょ」

「ち」
この機会を逃したら、二度と……

「河野君」
……
「なに?」
「……」
「お前は……」
「玉樹か?」
「……」
「いや、お前は。そうだ」

「外はもう、春だよ」
……
「くそ……っ」

「手を伸ばせ」

「シロクマ」

―――初雪、シロクマ、桜/(シロクマ√)

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さらにもうひと押ししよう。

シロクマ√の終盤で。初雪は自分はなぜ復讐するのか?という問いに答えられなかった。

俺は、なんで復讐をしようと思ったんだっけ?
ランのため……。皆のために。

シロクマのじじぃなんて、なんでこうまで手にかけようとしたんだっけ。そうだあいつが……このホテルで、皆を、俺の大切な人たちを殺したから。

しかし俺はあの頃、まだ物心つくかつかないかで、強く恨むほどの記憶なんて無いはずじゃないか。佐々木恭吾などという男の仕業だと、どこで俺は知ったのか。そう思うようになったのか。

この焦がれるような復讐心は一体誰のものだったんだ。
俺は……
どこかで、俺はなにかに、屈していたのか。
心の中に巣くい、俺を駆り立てていた、暗い何かに。


――初雪(シロクマ√)


つまり、初雪の中にあった復讐したいと思っていた気持ちは自分ものじゃなかった。佐々木を殺したいと思っていたのは誰か? 復讐を望んでいたのは誰だったか?───それは10年前に死んでいったゴーストたちである。

ゴースト達の気持ちだ。廃ホテルに住まう、あの時の爆発事故で死んでいった者たちの怨嗟の声なのだ。初雪が今まで佐々木を殺したいと思っていた気持ちは、ゴースト達のものだったのだ。初雪はそれを自分のものだと思い込んでいたにすぎないのである。

さらに続けよう。サクヤに復讐するのだってなにも彼女が"憎い"から復讐していたのではないのだ。復讐という結果を欲していたのではなく、復讐という「手段」を実行していただけなのだ。初雪は。とある目的の為に。(ここは後で詳しく説明する)

もう一度繰り返すが河野初雪の復讐動機は偽りにすぎない。彼はだれかを憎んでいたわけじゃないし、サクヤや佐々木に対して怒りを感じていたわけじゃないのだ。

ならばここで疑問が生まれる。ではなぜ、河野初雪は誰も憎んでもいないのに復讐をするのか?。


Q.初雪はなぜ誰も憎んでいないのに復讐をするのか?


この答えは2つだ。

A1.ゴーストチャイルドになった本当の理由を綺麗な嘘で塗り固めたため

A2、復讐こそが会えなくなった人たちに会えることだと信じているから。


順を追って説明していく。


A1.ゴーストチャイルドになった本当の理由を綺麗な嘘で塗り固めたため


この答えを説明する前にまず小坂井綾との物語を思い出してもらいたい。この√にこそ初雪がサクヤ達に復讐するきっかけが描かれているからだ。

ということでざっくりと振り返ってみる。

 ◆

初雪はランと暮らしていた。

旧内田市外にあるボロボロの廃ホテル・ホッシェンプロッツで2人仲良くご飯を食べ、時にはケンカをし元気体操をしジャーマンスープレックスをかけられ毎日を楽しく過ごしていた。

そんなある日。コノハサクヤの手によりランの魂は消滅した*2。ランが死んだあと、廃ホテルに巣くうゴースト達はホテルから初雪を追い出した。これは初雪が高校1年生に起きたものである。

帰る家が無くなってしまった初雪は、貯金を崩しながらネカフェや安ホテルを転々とし学校には行ったり行かなかったりする毎日だったという。この宿なし状態のまま季節は流れゆき、冬が、春が、秋が、夏が終わり―――また新しい冬が巡ってきた。

それはランがバニッシュされてから一年後の冬。初雪が高校2年生になり小坂井アキラと小坂井綾と出会うことになる冬でもあった―――(事実確認終わり)

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さて。

まずここは外してはおけないのが、なぜランが討たれてから一年もの間、初雪は宿を転々としていたのか?

ここすっごく大事だよ。初雪はなんどなんどもも「ランを助ける」「会いたい」「彼女を討ったコノハサクヤに復讐を」と言い続けているが、じゃあなぜランの魂が消えてから一年もの間、なんの行動も起こさなかったんだろう。

おかしいじゃないか。そこまでランのことを想っているのであれば、宿を転々するのではなくランを助ける為の行動を起こしてもいいものだろう。ここはとても不可解。

さらにもっとおかしな事がある。ゴースト達は初雪をホテルから締め出すものの「ゴーストの王になるならばランを救う手立てを教える」と言っているんだ。

「なぜあなたがここで暮らしていたか。何のために……」
「その使命を」
「このホテルへ、王として帰還されることお待ちしています」
(中略)

「彼女は私達が守ります。そして王として帰還された折りには、彼女を救う手立てもお教えしましょう」

――ゴースト

(このゴースト達の言葉は、ランがサクヤに討たれたその日に言ったものである)

初雪がランを取り戻したいと本気で思っているのならば、すぐさま「俺はゴーストの王になる。だからランを救う方法を教えろ!」と宣言してもいいんじゃないだろうか? 

しかし先ほども言ったとおり彼は一年以上ものあいだ、ゴーストの王にはならなかった。

ということは初雪にとってランを助けるということはその程度ということになる。本当はコノハサクヤなんて全然憎くないんだよ。そしてランという存在さえも、初雪にとって「すぐ」助けようと思うほどの"動機"を持ち得てはいないということである。

……でもそれはそれで仕方ない。初雪はこのとき自分のことでいっぱいいっぱいだったからだ。いきなり家族を殺され、得体のしれない幽霊が現れ、家を失った。それは一個人にすれば途方もない不幸の出来事だったと想像するのは難しくない。

ゆえに茫然自失のまま一年間をさまよい続けていても仕方ないと思うのだ。話を戻す。ここまでをまとめると

初雪が佐々木たちにに復讐するキッカケになったのは、ランの為じゃない

ということが分かったと思う。

それじゃあ初雪が佐々木達に復讐したいと思ったキッカケはどこか? それはアキラとの会話の時である。小坂井綾√のバレンタイン祭当日。剣道場にて初雪はアキラと会話をしたあそこで全ては始まる。

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アキラは言う。小坂井綾は涼しい顔で生きている。復讐したかったのはあいつだったんだと。この言葉を受け、初雪は胸の中で毒づく。


「あいつが、涼しい顔で生きている?」
「てめぇは……」
「甘ったれんなよ」

いつだったか。とても、甘ったれたことを考えたことがある。

この剣道場で半年以上も寝泊まりしながら……秋が終わり、寒さが厳しくなっていく頃。 いらだたしく、甘ったれたことを考えた。

なぜ、誰も気づかないのか。

こんな状態で、俺は放って置かれて、なのにクラスの連中は、どうして平和そうに変わらなぬ日々を送っているのか。誰かが、あの扉を開けて、俺の話を聞いてくれないかと。

まるで……神さまのような存在が現れるのを、待っていた

今思えば、なんて甘えた考えただろう。
誰にだって、悩みはある。

綾「私は卒業、しない方がいいんじゃないかって思ってる」
綾「ほら私って、何考えてるか分からないところがあるから」

のんきに、涼しい顔で生きてる奴にだって。暗い、悩みは尽きない。 自分だけが不幸と思って、誰かを羨む権利も、恨む権利も、そうそうあるわけがない。

それでも、どうしても……恨まずにいられないなら。

自分は他人よりも、業を背負っていると言い張りたいなら。
そいつは、人ではない何かに、なるしかないじゃないか。

あらゆる倫理を否定して……なお哄笑をあげられるような、ゴーストに、なるしかないじゃないか。ゴーストの王に。

――初雪

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「くくく」

「あはははははははははははは!!!」


「河野。お前一体、何者だ」


「礼を言うぞ、アキラ。なるほど俺は1人では至れなかった」

「お前が地獄の一丁目あたりまでは、道案内してくれたからな」

「晴れて、地獄へ帰還できそうだ」


――初雪、アキラ

この会話をきっかけに、初雪はゴーストチャイルドになる覚悟を得た。アキラとの一件が終わったあと綾に背中を押しもらいながら廃ホテルに戻りにゴーストの王になると声高々に宣言した。ランを失ってから一年ぶりの我が家への帰還だった。

つまり河野初雪はランを救いたくてゴーストチャイルド(=復讐する為の力が欲しかった)わけではなく、誰かに助けてもらえるような存在になる為にゴーストチャイルド(=人ならざる者)になったということである。

人ではない何かになって、人間以下になってゴーストの王になって誰よりも俺は不幸だと叫ぶ権利が欲しかった。ぼろぼろな自分を誰かに助けて欲しくて泣き叫んでいただけだった。

世の中にはいくらでも口開けて人の親切あてにしてる人間が腐るほど腐ってるだろうがよ!


「君がそれでしょ」


――綾、初雪(小坂井綾√)


「君は弱い。そしてかっこわるい」

「私が君1人にこんなにかまうのはね、君が私の周りにいる誰よりも、いっそうみじめで目障りだからだよ」

「ただただ可哀想で見てられないだけだよ」

「孤独なくせして孤独になりきれなくて、助けほしいのに助けてくれって言えない」

「いっそ消えちゃえばいいのに。誰もいないところで寂しがってなよ。1人で寂しがってなよ」

――綾

剣道場の寝床を引き払うときに綾にも言われているが、初雪は自分の甘ったれているところを自覚していない。そしてようやく自分が甘ったれていると理解したのが、バレンタイン祭でのアキラとの会話なのだ。

初雪は誰かに助けて欲しくて学園に通っていた。呪うような表情でクラスメイトに煙たがられていたのも彼なりの「助けてほしい」というサインだったんだろう。

学園の生徒の目に留まるような剣道場をあえて寝床にしていのも、そうしていればいつか誰かが手を差し伸べてくれると思っていたからこそだ。

初雪は自分自身でも言っているが、この考えはとても甘ったれたものだ。誰かに助けて欲しいなら、助けて欲しいと言えばよかったんだ。誰よりも誰よりも自分は不幸だ!と叫ぶ権利を欲するのではなく、ただ助けてくださいと言えればよかったんだ。

しかし初雪は立派になることを望みすぎていたからこそ、誰かに頼ることが出来ない少年だったのではないか。立派に生きることは誰かに助けを求めるそんな弱い生き方ではないと思ってしまっていたんじゃないか。

立派になる。

それはランが願っていたということもあるが、初雪も立派に生きることを強く望んでいた。白咲学園に入学したのも、卒業したいと何度も何度も呟くのも、学生にカツアゲしそうになったときランの顔をふと思い出し罪悪感を感じていたのも全部そうだ。立派になりたかっただけなんだ。

ラン「気にすることないよ。私は分かってるよ、初雪のこと」

ラン「うん。初雪のことなら誰より分かってる。初雪は立派なことをしてるよ」

初雪「立派になりたいなぁ」


ランだけが俺の隣にいた。家族だった。
成長していくことに、意味を与えてくれた。

ランが願ってくれるから、立派になってと願ってくれるから、がんばれた。

――初雪


初雪「立派になりたかったよ

初雪「お前が願ってくれたように。立派に、なりたかったんだ」

(玉樹桜√ラスト。ホテルが炎に包まれ死去する刹那)


立派になりたいと望んでいるのに、でも立派になれない自分が存在してしまったとしたらどうする? 弱くてかっこ悪い自分がいたとしたら、そんな嫌な自分を自分で選んでしまったとしたらどうする? 

―――簡単だ。自分を欺むくしかなくなる。自分のみすぼらしい本当の気持ちを、綺麗な嘘で塗り固めるしかなくなる

ゴーストチャイルドになった本当の理由が「ランに会う為」だったらどれだけカッコイイんだろうか。どれだけ美しい動機なのだろうか。そして誰かに助けて欲して人ならざるものを選んでしまった自分はどれだけかっこ悪いのか。

……立派になれない自分への歯がゆさと苛立ちで、必死にもがき苦しんでる少年の姿がそこにはあった。
……。

ランを救う為にゴーストチャイルドになったと  思いたい からこそ、初雪は復讐を実行し続ける。それが自分がゴーストチャイルドになった理由なのだから、実行し続けなくてはいけなくなる。もし実行するのをやめてしまったとき、自分の本当の気持ちに気づいてしまうのだから。

綺麗な嘘で塗り固められたものが溶けて、みすぼらしい理由が表に出てきしまうのだから。

そうして後はゴーストの言われるままだ。ゴーストが「復讐こそがランに会える唯一の方法ですよ」
と言うから初雪は復讐をしてしまう。ランに会える唯一の方法がそれならばそれを実行するだけのことなんだ。
初雪には選択肢なんてない。だってどうしろと言うのだ? 死んでしまった人間にもう一度会える方法なんてふつうに考えればないじゃないか。この世界のどこにも死者と会える方法なんて存在しない。だからこそ「死」という現象は辛く悲しいものなんだ。この世界でもっとも取り戻すことが出来ないのが死なのだから。

そんな時ゴーストから「復讐こそが」「復讐によって彼女に会えます」と言われたら、従うしかなくってしまう。ランを救う為に初雪は生きていたいのだから、それを躊躇なくやってのけてしまう。

例えその復讐が10年前に死んだゴーストたちの肩代わりだとしても構わない。ランを救う為、ランに会う為ならば初雪はなんだってするし、その方法が一つしかないというのならそれを選ぶだけのことだ。

だってランに会う為に、ゴーストの王になったのだから。
ランに会うための方法があればなんだってするしかないんだ。

だから。
誰も憎くないのに、
ランを一年もほっぽりだしていたのに、
ランの為にと復讐し続ける。
人を憎むゆえの復讐ではなく、手段としての復讐を実行し続ける。

それが河野初雪だ。




A2.「復讐」こそが失われた人たちに会えると、信じているから


Q.なぜ初雪は誰も憎んでいないのに復讐をするのか?

2つめの答えは「復讐することがランに会えるとそう信じている」からだ。前述した説明と似ているかもしれないが、少し違うので詳しく語らせて頂きたい。

現在高校生である初雪からさかのぼって約10年前。ホテルで爆発事故が起きた。この事故のあと、まだ幼い初雪に父親である大野にこう言う。

復讐とは会えなくなった人たちに会えるものだと。


初雪「ゴーストになれば……」
初雪「……会えるの?」
初雪「皆と会えるの?」
大野「……」

大野「……あぁ」
大野「会えるよ」
大野「復讐とはそういうものだ」

大野「もういない会えない誰かに捧げる供物だ」

大野「ただ、一瞬でもあの人達に会うためのものだ」

初雪「分かった」


初雪は爆発事故の後遺症のせいかパーティーでの記憶欠落が見られた。つまりパーティーでの出来事をすべて忘れてしまっている。

それはなにも事故直後だけの話しではなく、10年経過した高校生になっても父親である大野のことを依然忘れたままだし、パーティーの様子、桜のこと、爆発直後の父親との会話、入院した病院での出来事もばっさりと忘れている。

それでも初雪は無意識に「復讐は失われた人たちに会える」と思っているのかもしれない。大野の言葉が、呪いのように初雪を縛り付けていると見てもいいと思う。

あの時の大野の言葉を信じているからこそ、復讐を実行していれば会えなくなった人に会えると信じていることに繋がる。魂を失ってしまったランに会える方法が復讐だと盲目的に信じ続けていられるのは、こういった経緯があるからだと考えられないだろうか?

廃ホテルのゴースト達も「復讐こそが失われた人に会える」と言っていたが、それは実のところ霊媒的にみれば根拠のある理屈なのかもしれない。死者にあえる方法が、唯一、復讐なのかもしれない。

だからこそ佐々木のこともサクヤのことも憎くないのに殺そうとする。2人に憎しみなんてて持ち合わせていないのに初雪は己の命を賭けてまで復讐し続けようとした。それは尋常ではない。異常だった。

彼がここまで復讐という手段に拘り続けるのは、「大野の言葉を信じていなければ」できることじゃないと思うのだ。

「なんでそんな根拠もない大野の言葉を信じられる?」そう思った人もいるだろう。もしも例え霊媒的な視点でも意味のない行為だったとしよう。けれどそこは重要なところじゃない。信じることに根拠なんていらないんだから。信じることに理屈も理由も科学的証明も必要ない。

信じているから信じるのだ。信じるとはそういうことだ。初雪はそれを信じた。信じたことを実行しているだけなんだ。

つまり「復讐とは懐かしい人達に会える」という大野の言葉を、頑なに信じているからこそ、初雪は憎くもない佐々木を殺そうするということである。


先に語った1つめの答えと、今語った2つめの答えは連動している。

(A1)の答えは、初雪の自己欺瞞ゆえにゴースト達から「その嘘の動機を叶える為の手段は復讐しかないよ」と言われたから、ランに会うための手段として復讐を取り続けるしかないと語った。

(A2)の答えは過去に父親に言われた「復讐とは会えなくなった人に会うためのもの」という刷り込みによって、初雪はランに会うための方法としてとして「復讐」をという行為を選んだということである。*3


つまりこう言いたい。


河野初雪は自分を欺いた結果として、ランに会わざざるをえない状況になってしまった。ランという死者に会うためにはなにか行動を起こさなければいけない。それが復讐だった。

彼にとって復讐とは、他者を憎しみ続けた結果に起こそうとするものではなく、死者を復活させるための手段だったのだ。

そして復讐という手段を選ぶものの、初雪には復讐する対象はいない。なぜなら誰も憎んでいないからだ。サクヤも佐々木も実のところ憎んでいない。憎む相手がいないならどうする? なら憎む対象をでっちあげればいいだけの話である。

コノハサクヤを憎んでいる自分をでっちあげ、佐々木を憎んでいるゴーストたちの憎悪を肩代わりすればいいだけのことであった。

故にサクヤも佐々木も憎んでいないのに、手に剣を持ちて他者を害しつづけ復讐を実行しつづける少年が―――それが河野初雪の正体である。


以上で、Q,なぜ初雪は誰も憎んでいないのに復讐をするのか? という答えにさせてもらう。





みんな狂っているってこと


初雪が復讐する理由を見てもらった通り、彼は狂っている。その狂気が具体的にどういうものだったのかをもう一度見ていこう。

たとえば「Graduation」では初雪が本当に狂っていることがよく分かる。(そんな初雪が私は大好きだよ!)

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「復讐を果たせば、破滅の向こうで彼女たちが迎えてくれるという幻想に逃げているだけだ」

「あなたの中のゴーストがそうささやくから。あなたもまた、その幻想に身を任せるのが楽だから」

「そうでも思わなければ、俺は生きられない。そういうことだ」

――サクヤ、初雪


「復讐?」

「そんなことをしたって、愛しい人たちに会えるなんて、限らないわ」

「会えるよ」

「そう信じて、生きてきたんだ。会えると思う以外にないさ」

――サクヤ、初雪


事実かどうかなんて、今となっては、どうでもいい。
自分が何者かなんて、どうでもいい。

……桜
ラン。
それに……。

そうだ。いつかの冬に、俺の中から、記憶とともに失われてしまった、懐かしい人達のために。

「復讐を果たそう」

――初雪

初雪にとって「本当の真実」なんてものに意味はない。価値はないんだ。復讐しても桜に会えないことが科学的に証明されようと霊媒的に立証されようとも彼にとってはどうでもいい。

だってそう"信じて"ここまで頑張ってきたんだ。それが今さら無意味ですよと言われてはいそうですかと頷けるわけがない。理屈じゃないんだ。正しさでもない感情なんだ。

周囲からすればそんなのは狂っているだろう。100%成せない!!それは無駄なんだ!と系統立てて教えているのに根拠のない「いや会える」と叫んでいるのだから。

でもこの支離滅裂で不理解で不可解で、矛盾を内包した感情の狂いこそがが人が人である証なんだ。狂気を有しているからこそ人間であるんだから。ゆえに

―――初雪は叫び続ける。

届かないことを知りながらも届けようとし、信じていないのに信じ続けることができた。



「河野初雪!」
「もう、終わりにしましょう」
「長い冬を……」
「自らの内に巣くう父の亡霊を、今こそ討ちなさい」

「お断りだ」

「復讐は終わらない」

「なぜ……」

「そうしなければ、魂は復活しない」

「まだそんなことを」
「たとえ復讐を果たしたって、死者が蘇るわけがないでしょう」

「だとしても!」
「だとしても、止まらないんだよ」
「彼女たちに会えないとしても……」

「せめて叫ぶために」

「届かなくても、聞こえなくても、そこにあいつがいなくても……」

「それでも、届けたくて、聞かせたくて。幻を見るためにいくんだよ」


狂気の果てへ……あの世に一番近いところまで

――初雪、サクヤ

この狂気ゆえの行動は、なにも河野初雪だけじゃない。『はつゆきさくら』では至る所に狂気が介在していた。


ランが復讐を願いつつも初雪に立派に卒業して欲しいと思っていること。(この二つの願いは相反する為同時に成立することはほぼ不可能)

・シロクマが店長はもういないんだなと理解しつつも、ロシアに留学し店長を探そうとしたこと。(信じていないけど信じてるってこと)

・玉樹桜がパーティでの一瞬を、永遠にまで昇華してしまったこと。(たった一度きりあった相手を10年以上もの間愛し続けたってこと)

・あずま夜は街を憎んだ結果、本来の目的を忘れてしまい復讐することが目的となってしまった。(本当にしたいことを感情の狂いにより見失う)

・小坂井綾は初雪を愛しすぎたあまり、命を捨てることに躊躇いが無かった。(命と記憶を天秤にかけ「記憶」を手に取った。動物である我々は自身の命が最も重要であるに関わらず愛によってそれを超越することが出来る)

・アキラは世界を憎むあまり、復讐する為に復讐するようになった(手段が目的になってしまい、ぐるぐるとどこにも辿り着くことのできない存在となる)



ランなんて本当に言っていることがメチャクチャだった。

佐々木恭吾の復讐の傀儡として初雪を唆してきたのは他でもないカンテラオーナーでる彼女だが、でも誰よりも初雪の幸せを願っていた。


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「まだ先の話だけど、約束して欲しいの」

「学園、きっと卒業しよう」

「うん。きっとね、これから先、辛いことがたくさんあると思うの。それは学園に関係があったり、なかったりすることかもしれないけど」

「この学園は、初雪がはじめて、この街で……こうしたいと思ってがんばって、そうして入学したところだから……」

「ちゃんと卒業して欲しいって、思うんだ」


――ラン


「つらいことがあっても、お酒に逃げちゃだめだよ。約束したはずだよね」

「ちゃんと卒業するって約束したでしょう。つらいことがあったら、相談して」

「ね、がんばろう」

――ラン


「ねぇ初雪」
「なんだよ……」

「初雪は強いよ、きっと、自分で思っている以上に強い」

「あぁ?」


「その強さをこれからは、自分と大切な人のために、使ってね」


――ラン、初雪


「彼女はあなたを騙していました」

「あなたが会いたいと願うこと自体が、彼女の罪の証なのです。そうやってあなたをがんじがらめにしてしまった彼女の」

「追い求めるのはやめることです」

「あなたは、あなたが見つけた大切な人のために、この最後の冬を、生き抜いてください


――カンテラオーナー(ラン)



……初雪の幸せを願っていないと……こんなこと言えないと思う。


「卒業しよう」とか「立派になろう」なんて言葉は、初雪を道具のように扱っていたら言えないと思うんだよ。いつだってランは彼を心配してたし、大切にしていた。

ランの心からこもった励ましや厳しい言葉は、初雪をめちゃくちゃ愛していたからこそだ。

けれども一方で、ランは初雪を復讐の道へとそそのかしていたのも事実なんだ。

初雪に強制的に反魂香をかがせ復讐の王に仕立てようとしたり、カンテラのオーナーとして水面下で復讐の計画を練っていたのもランという女の子の素顔である。様々な手を使って彼女自身の復讐を、何の関係もない初雪に実行しろと迫っていた。

そんなランの言動は矛盾だらけだ。初雪の幸せを願いながら、復讐という不幸を望んでいるのだから。

これこそが狂気なんだろう。相反する願いを同時に叶えようとする精神は、常人じゃうまく理解できない。


初雪には幸せになって欲しいけど不幸にもなってください―――そんなものを理解できないよ。


  *


そして、小坂井綾の真√がこの「狂気」を一番体現していたと思う。

なぜならこの真√は狂気を貫いた女の子の物語だからだ。

ということで振り返ってみる。



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(小坂井綾・真√)

この冬、ランの手引きもあり綾は一年前の記憶を取り戻した。

その記憶は断片的であるものの初雪を愛した欠片だった。一年前の初雪との思い出が手元に戻ってきた。このとき綾は思ったのだろう、一年前に失った気持ちを今度こそ持ち続けてみせると。

だからこそ宮棟に何度パニッシュメントされようとも、胸のうちで燃え続ける狂気(愛)は消えてなくならない。


「なぜだ。なぜ、正気にかえらない」


「私は、もう失いはしない」


「彼への気持ちを」


「いくら私を刺したところで、私の気持ちは消えはしない」

――綾、宮棟



そんな綾を見て宮棟は言うのだ。「あなたはゴーストになってしまったんですね、哀れなあなたは死ぬことでしか救われないでしょう」と。

これは一年前、初雪が綾に向けて言ったものと同じだ。アキラを救う為に自分を犠牲にしようとした綾の魂をバニッシュした初雪と同じことを、宮棟もまた言っているのだ。

綾が抱えている狂気(愛)は消し去らない限り生者には戻れないと。その狂気(愛)を消すことができないのなら、あなたの魂ごと消し去るしか救済される手立てはないと。

それに対応する言葉もまた、去年の冬の再現であった。

初雪の言葉を、今度は綾が紡ぐ。


死ねば救われるか!? 

人の苦悩も、愛も、そんなに簡単なものだというのなら!


やってみろよっ

――綾

綾の言葉どおり、宮棟は剣でメッタ刺しにする。「バニッシュ」と声をそろえながら肉を裂き、魂をも貫いた。

でもそれでも綾は正気に戻ることはない。なぜなら彼女の気持ちは(狂気という名の愛は)本物だったし、彼女もまたその情念を失いたくはないと願っていたのだから。


この痛みが、血が……私の気持ちだから。見てよ、ゆきち」

「好きなんだ。この冬に、気付き始めた頃は、なんとなくうずくだけの感情だったけど」

「今はもう、止められないほど……あふれるほどに好きなんだ」

「忘れていた分だけ、好きなんだ。君のことが」

――綾

綾は初雪が好きだと言って、死んだ。

私は思ったんだよ、誰かを好きになることはとても狂気的なんだと。愛によって自分の命を捧げてでも守りたい人がいる、自分の人生の全てを失ってでも助けたい人がいる――――それはなんて狂っている気持ちなんだろうか。
……。

綾と初雪は死に、死ぬその一瞬に、2人は桜舞う幻想に導かれる。

この幻想世界は、生前、綾と初雪が叶えられなかった願いを叶える為の場所だ。彼女たちが出来なかった一年前の卒業式を復活させるための世界なのである。

そうだ、あの日……
彼女に会って……
ゆきちと呼びかけてくれたら、言おうと思っていた。

――初雪



一年前の卒業式、綾はゆきちと呼んでくれなかった。当然だ綾は初雪との思い出を忘れてしまっていたのだから。そして初雪はあの卒業式の日に綾に言いたかったことがあったんだ。

初雪が綾に「卒業おめでとう」と言えなかったかことを 言える世界。
綾が初雪に「ゆきち」とあの卒業式で言えなかったことを 言える"世界。

2人とも互いに言ってあげたかった言葉を桜舞う幻想世界で言うことが出来た。これは2人の「狂気の一瞬」によって辿りつけた卒業式である。

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桜が舞っている。
「……」
なんで今日はこんなに、花は満開に、日差しは明るく……どいつもこいつも笑顔で、何かを祝福するように、華やいでいるんだ。
あぁ、そうか。
今日は卒業式だっけ。
……
校門のすぐとなりに少女がたたずんでいる。
舞い散る花ビラや、まわりでさざめく同級生たちの声に無関心そうに。
ただ、誰かを探すようにぼんやりと、視線を遠くへ投げているようだ。

そうだ、あの日……
彼女に会って……
ゆきちと呼びかけてくれたら、言おうと思っていた。

綾「……」
初雪「……」
綾「やぁ」
綾「ゆきち」

初雪「……」
初雪「よう」
綾「……」
初雪「卒業おめでとう」

少女は卒業証書を掲げながら、少し照れたように笑う。

綾「ありがとう」
綾「えへへ。なんとか卒業できました」
綾「君のおかげだよ」
初雪「そうかね」
……
綾「行こうゆきち」
初雪「どこへ」

綾「ランちゃんの、魂をさがすんでしょう」

初雪「あぁ……」
綾「協力するよ」
初雪「そうか……」
初雪「行こう。綾」
綾「うんっ」

……歩き出す。

2人の背中を追いかけるように、花ビラが、ひらひらと泳いでいく。
桜は舞い続けている。おだやかに。

光の向こうへ2人の背中が消えるまで。


(小坂井綾・真√。最後)


現実世界での2人は死んでいるだろう。

この事実は客観的にみればとても不幸なことでしかない。初雪は桜に会うこともできず、立派になることも卒業することも出来なかった。綾は綾で、好きだった人と恋仲になるも、一瞬で溶け消えて死んでいった。

そんなどこにも行けなかった2人。

でもこの桜舞う幻想世界を見るとそんなことないよねと不思議に思えてくる。だって綾も初雪もとても満たされたような顔だからだ。現世が不幸だとかそんなの気にしていないように見える。

それは綾が叫んだように、明晰な世界も狂気の世界も関係ないということなんだろう。

現実がどうだとか狂っているとかどうでもよかった、ただ愛しい人がいて、果たせなかった願いを叶えることが出来れば人は満ち足り得るんじゃないだろうか。


2人は現世では卒業は出来なかったけれど、この世界に辿り着いた。そしてこの世界でまた再び彼ら自身の卒業を迎えるのだろう。綾と2人で一緒に歩き続けるこの幻想世界で。

それが例え観念の世界だとしても、きっと悲しいことでもないし可哀想だと思われるようなことでもない。狂気の果てにたどり着いた風景がこんなにも幸せなものだから。

ゆえにこの物語は―――狂気(愛)を貫き続けた女の子の物語なんだ。



桜の花びらは2人を応援するかのように舞い続けている。

  ◆

余談だが、なぜ綾の真√は「死」しかなかったのだろうか? 

初雪と綾がふたりとも生きて現世で幸せを享受したっていいじゃないか……と。

それは多分こういうことなんじゃないか。綾は初雪に対する好きを受け入れてもらえればそれで良かった。それで良かったというのはその事実を持って小坂井綾の人生が全うされるほどの意味を持った出来事ということ。

そして初雪もまた、あの場面で玉樹桜ではなく小坂井綾を「抱く」ことに意味があったと見る。桜の為に復讐していた初雪が、桜以上に綾のことを再び好きになってしまった。好きになるための過程が選択肢後の「SEX」だったと見てみる。

すると初雪にはもう復讐(=桜に会う)理由が希薄になってしまうんじゃないか? だってイチバン好きな綾が隣にいるんだ。桜とかランとかどうでもよくなってしまったのかもしれない。

ようは2人とももう生きる動機を失ってしまった。だって自分の本分(願いや約束)を全うしてしまったのだから。互いに傍にいることで、彼らの人生はほぼ完了してしまった。

その上で(生存動機が欠けた状態で)、宮棟&サクヤと対峙したのだ。死す可能性はドンと跳ね上がる。ゆえに「死」という結末しか生まれなかった。と……思うのだがどうだろうか。

  ◆

話は戻るがどうだったろうか。みんなみんなどこかに「狂気」を有し、そのことで行動や気持ちを狂わせていった。

狂気という人の情念。気持ち。狂った感情をを貫き続けると一瞬だけ、ほんの刹那、『観念の世界』の扉が開かれる




狂気の一瞬によって、現世は観念に昇華される



綾・真ルートの桜舞う幻想世界は現実で果たせなかったことを観念の世界で果たしたと言い換えられる。

現実ではできなかった卒業式を観念の世界では叶えることができた。この「観念の世界」というのは、狂気の一瞬によって辿り着ける境地である。狂い続けることで開く世界なんだ。

これは『はつゆきさくら』では何度も繰り返されている。てことで順を追って説明していく。

まず観念とはなにか?


玉樹桜√で、宮棟は語った。

「これは復讐の物語」

「我々は忘れない。けれど、今を、生きるためには、復讐に囚われ続けては進めない。平穏は訪れない」

「自らのうちにある、無念を、義理を、けじめを。いくつもの、心を、殺しながら……何食わぬ笑顔を浮かべて、生きなければならないときがある」

「それが大人というものです。社会に生きるということです」

「それでも、どこかで忘れてはならない。実生活の中で滅び去るしかなかった者達を、せめて観念の世界で生かし続けたいと思うから」

「だから私達は、この劇を作り続ける」

「置き去りにされた哀れな魂達に、この劇を、捧げ続けるのですよ」

「そうやって今を生きることだって出来るのですよ。創作とは、芸術とは、許さずさまよい続ける想いの救いの場なのです」


――宮棟

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気づいているとは思うが、宮棟もまた初雪と同じく内田側の人間だ。

つまり宮棟はパーティーの爆発事故になんらかの形で関わっている被害者ということだ。そして"カスガ"を率いていること、河野初雪なるゴーストチャイルドを討伐しようしているところを見ると「内田側でありながらも復讐を否定した者」なんだろう。

廃ホテルに巣くうゴースト達(またはラン)は佐々木を憎み復讐を企てた。しかし宮棟は佐々木に復讐することなく佐々木を守る立場についた。

ランと宮棟。2人を分け隔つものはなんだったのか? それは救済をどこに求めるかの違いだった。

ランは佐々木を殺害することで自分の中にある憎しみを救おうとした。反対に宮棟はあのパーティーの時滅び去るしかなかった者達をせめて観念の世界――つまり舞台という物語――で生かし続けることで自分の気持ちを救ってきた。それが2人の違いで、大きな分かれ道だった。

話を戻そう。観念世界とは何かというものだったな。

私達が生きている現実世界が実体というべきものなら、幻想世界は観念だと言える。観念の世界ではすべてを満たせるし、すべての願いを叶えることができる。

失った命も、失われた愛も、消えてしまった懐かしい人すらも取り戻せる。例えそれがほんの刹那の時間だろうとも巣くうことができる。

どうすればこの世界に辿り着けるのかというと、狂気し続けることだ。そうすれば観念世界の扉は開くのである。

そうさ『はつゆきさくら』はいつだって狂気に満ちていた。


・綾と初雪が心中したあとに見た、桜舞う幻想世界。

・シロクマ√の終盤、初雪がもう現世にはいない桜の声を聞きいいたのもそうだ。彼が復讐に囚われ続けた(狂い続けた)からこそあの声は聞こえたのだ。

・これまたシロクマ√の終盤。シロクマがロシアに留学するその日、たしかに店長からの「卒業おめでとう」という言葉を聞くことができた。あれはシロクマが恋し続けた(狂い続けた)ゆえに聞くことができた。そう、だってもう初雪はこの世界にいないんだ。狂わなければ聞けないんだよ。

・Graduationの最後、初雪と桜が10年前のパーティーの日に戻り、あの世界で婚姻を交わしたのもそうだ。初雪が桜を追い求め続けたからこそ、あの世界に至れた。

・Graduationの卒業式。ランの顔が"とても懐かしいもの"に見えたと初雪は語る。ランの顔は本当ならば火傷の後遺症できっと直視できるものじゃない。(そんな後遺症を患ったからこそランは佐々木を憎悪したのだ)。けれども初雪が見れば、ランはランのままでとても懐かしい顔をしていたという。

Graduation卒業式後。初雪は誰も居ない教室で、桜と一緒に作った"White Graduation!"という名のアルバムを見る。そこにもう現世にはいないはず玉樹桜が現れて微笑えんでいた。これもまた初雪の恋ゆえに狂気ゆえに起きた現象だ。

「俺は、復讐がしたかったわけじゃない」
「ランを、綾を……桜を……」
「彼女たちを求め続け、さまよい続けた」
「だから、狂気の果てに……一瞬、聞くことが出来た」

「あの人達の、声を」
「その声に、答えるために、俺は行くよ」
「春へ」

――初雪(Graduation)



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―――狂気とは何かを強く想う気持ちだ。

憎い悲しい寂しい怒り好き嫌い愛しい……そういった強い情念が狂いを生み、狂いは現実の狭間から観念の世界を見出だせるようになる。【現実では果たせなかったこと観念の世界で昇華できる】ようになる。

宮棟は観念の世界を「今を生きる為」ものだと位置づけた。

今を生きるものがすでに失われたもの死んでしまったものの意味を復活させることで、自身を救済することが出来るとそう言っているのだ。

しかし時に観念の世界は今を生きる為のものではなく、「生きれなくなった者へ」の救済として機能する。

玉樹桜√なんてまさにそうだ。この√では、初雪は佐々木恭吾に復讐をし、そのまま廃ホテルの自室で炎に包まれながら死んでしまう。

しかしその死ぬ一瞬にランと再会し、桜と再開できた。


ランが、父さんが……母さんが、微笑みながら見守っている。

「さぁ、王子様と王女様の婚礼を執り行おう」
「ゴーストプリンスと、ゴーストプリンセスの婚礼だ!」

ここからやり直そう。
もう決して、この手を離しはしない。

俺が守る。
だから、大丈夫だよ。
もう、誰も傷つかない。

帰ろう。楽園へ。

「病めるときも健やかなる時も、新郎を愛することを誓いますか」

「はい」

「永遠に、愛します」


――桜、初雪、懐かしい人達

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桜√の初雪は、復讐にとらわれ続け(=狂い続けた)結果として、楽園幻想に導かれる。

……結局のところ彼は卒業もできなかったし、愛せる人を見つけられなかった。でもそんな彼にも最後の最後には人生の意味を蘇らせることができた。

"ここからやり直そう"
"もう決して、この手を離しはしない"
……。
…………。
玉樹桜√と綾true√だけは、観念の世界は今を生きる者のために機能していない。今を生きれなくなった者たちの救済であったと言っていいだろう。


そうだ。

狂気の一瞬とは、
現実を観念で昇華するということは、
現世で失われてしまったものを、

―――それでもどこかで復活させなければ死んでも死にきれないという人の情である

初雪「悪かった」
綾「……え?」

初雪「俺が間違っていたのかもしれない」

初雪「いつだって、誰にだって狂気が存在するものだ

初雪「それを取り除いてしまったら、きっと、人の気持ちとか魂みたいなものは、成り立たないんじゃないか」


初雪「お前と過ごした時間も」

初雪「ランと過ごした時間も」

初雪「桜と過ごした時間も」


初雪「そこには全て狂気が介在していた。けど、だからこそ、かけがえのないものだった」

初雪「だから……俺は……」

初雪「例え、狂っているとしても、止まれない」

初雪「巡り会えると願って何が悪い。そうれなければ、それこそ、俺は生きてはいけない」


(Graduation。サクヤの術中にハマり体育館で窮地に陥った初雪を、綾が助けだしたあとの廃ホテルにて)

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さてここらへんで一旦まとめようと思う。あまりにも文章が長くなりすぎてしまった。



一旦まとめ

・河野初雪は誰かに助けてほしかった。そのためにゴーストチャイルドになるものの恥ずべき自分とでも立派になりたい自分の相克により、ゴーストチャイルドになった理由を「ランに会うため」と欺いてしまう。

結果として、彼はなんとしてもランに会わざざるをえない状況になってしまった。ランという死者に会うためにはなにか行動を起こさなければいけなくなってしまった。それが復讐だった。ただ彼にとって復讐とは、他者を憎しみ続けた結果としての報復ではなく、死者を復活させるための手段にすぎなかった。

復讐という手段を選ぶものの初雪には復讐する対象がいない! なぜなら初雪は誰も憎んでいないからだ。憎む相手がいないならどうする? なら憎む対象をでっちあげればいいだけの話しである。

コノハサクヤを憎んでいる自分をでっちあげ、佐々木を憎んでいるゴーストたちの憎悪を肩代わりすればいいだけのことであった。

サクヤも佐々木も憎んでいないのに、手に剣を持ちて他者を害しつづけ、復讐を実行しつづける少年。それが河野初雪の正体である。


『はつゆきさくら』の面々は一様に狂っていた。


狂気とは人の感情であり、魂を形作る要素である。


狂気し続けることで、ある一瞬に現世の出来事を「観念の世界」で昇華できるようになり人生の意味を復活させることができるようになる。


  *


さて以上を踏まえて、初雪が死者から生者へと復活したキッカケを探ってみる。


では行ってみましょう。





初雪が生者へと復活するにはどうすればいい



今まで河野初雪という人間に迫ってきた。

甘ったれた気持ちを偽るための自己欺瞞し、復讐こそが失ったものを取り戻せることだと頑なに信じていたがためにメリーゴーランドのような復讐を実行していた。

そんな初雪には説得なんてものは通じない。過去から語りかけようとも、真実を伝えようとも全くの無意味だしその言葉は届かない。

けれども河野初雪を生者へと導く方法がある。

それは「生を実感させる」ことが挙げられる。つまり初雪は、生に執着していないからこそ容易く命を賭ける復讐をしてまえるのだ。だから生きることに執着させることが出来れば、死者から生者へと導くことができるはずなんだ。


初雪がいかに生きることに拘ってないかは、ゴーストたちのやりとりをみれば明らかだ。


「ゴーストチャイルド」
「肉が欲しいですか」
「……あ?」

「ずっとこの世界にとどまりたいと、思いますか」

「ずっと、その辺が、俺には良く分からないんだ」

―――初雪、ゴースト

初雪はいつだって、どうしても生きたいなんて思ったことがなかった。現実の世界に固執していないからこそ、彼は真冬にとどまり続けるゴーストとなってしまう。先程も言ったようにだからこそ彼に生きることの歓びを教えてあげることができれば、自ずと死者から生者へと復活することができる。

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例えばあずま夜√では、あずまのアイスダンスを見届けたあと、「いつの間にか、な。あいつといるうちに、いつの間にか……」と言って初雪は復讐をやめてしまう。

これはあずま夜と幸せな毎日を送れたからこそ、復讐することの意義と価値を見つめなおすことが出来たんだと思う。

もし彼女と恋をし、触れ合うことがなかったら簡単に死ぬことを決意し、復讐し続けることを初雪は選んでいたんじゃないだろうか。

「だけど、お前の願いを叶えてやることができたら」

「俺も、一つくらいこの街に、何か……綺麗な足あとを残せるような気がするんだ」

「だから……」

「だから、お前と一緒にいたいと、言ってもいいんだろうか」

「はい」

――あずま、初雪



更にこの√の最後には、あずまと初雪が2人でアイスダンスをしているうわさ話が語られる。あれは初雪が死者から生者へと帰還したものだと思ってもいいだろう。

つまり、あずまに会いたい、あずまと一緒にいたいと思うからこそ、彼はこの街に帰ってくることが出来た。


またシロクマ√では、初雪はシロクマを助けるかどうかの土壇場んで桜の声を聞くことができた。「もう外は春だよ」と。それを聞いた彼は佐々木を殺すのではなく、シロクマを助けるようになる。

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これは桜の言葉のきっかけが大きいのだが、それでも初雪がシロクマという少女を好きだったからこそ、「助ける」という選択を選べたんじゃないだろうか。(……ただ生者になるのが遅すぎたためあのあと死亡したと思われる)

ここで分かるのは、例え嘘の復讐だとしても断ち切るにはランではない誰かを愛さなければいけないんだということ。それはあずまでもシロクマでも希でもいい。とにかくランではない誰かを愛すことが出来ればそれでいい。

いなくなったランを愛してしまうからこそ、復讐に執着してしまうのだ。

「あはははははは」

「雪をふれふれもっとふれ」

「全てを喰らい尽くしてしまえ」


「彼は世界を愛さなかった」


「彼は、生きる者を、誰をも愛さなかった」

「あなた達も彼を愛さなかった」

「だから、こんな街には、価値はない」


「彼が愛さないこんな世界に価値はなあああい!」

―――桜

初雪が誰かを「愛」し、生の実感を覚えたとき、復讐は自ずと終わる。


最後に希√も触れておこう。

この√では初雪は希に「さよならだ」と今生の別れを告げたあと、追いかけてきた希に「また会おう」と再会を約束した。

面白いと思わないだろうか。最初はもう会わないつもりだったのに、最後にはまた会おうと言っているのだから。

ではなぜ初雪は、死別を意味した「さよなら」を言ったあと、心変わりをしたかのように「また会おう」という言葉を口にしたのだろうか? 

それは希に「さよならだ」と言った 後 初雪はこう思うからだ。


妻と渡り合う希を見て、正直、俺だって驚いた。
一瞬、数年後の希の姿を垣間見たような気がした。
それは、むかつくくらい、まぶしい姿に見えた。

こいつは、きっとどんどん成長していくんだろう。

その隣にいたいと思ってしまった自分を、そっと、哀れもう。

時はせわしくめぐる季節の中で、花ビラのように、飛び去っていく。立ち止まり、ひとかけらの非日常を追いかける暇もない。

こいつには……無限の未来が開けているのだから。
その一瞬に関われたことを、俺は、幸福と思おう。

―――初雪



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"その隣にいたいと思ってしまった自分を、そっと、哀れもう"


もし彼がそういった希と一緒にいられた生きることの歓びを実感できなかったんだとしたら、希が追いかけて卒業証書を渡したとしても「また会おう」なんてことは言わなかったはずだ。

初雪が希との恋人としての日常をたいせつにしていたから、希が追いかけてきた時に、また会いたいと思ってしまったんだろう。きっと再会を予感させるあの言葉は、初雪だって生きたいっていう強い想いの現れなんだと思う。

そして2年後の春。東雲希が3年生として卒業するその日に "帰って" くるのだ。死者としての河野初雪ではなく、生者として生きて帰還する。好きな人とこの世界で生きるために。


初雪「あの世で見ていよう。お前の勇姿を」

初雪「そうして、お前に会いたいと思うからこそ、地獄の底から俺は再び這い上がって見せよう」

初雪「また会おう」

希「また……」
希「あ、あぁ!」
希「待ってるぜ!! 初雪」



―――あずま・シロクマ。希の物語は、河野初雪が愛しい人を見つけることができたからこそ、死者から生者へと復活することが出来たお話だ。*4



さらにもうひと押しして「Graduation」。


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この√は本当に特別で、初雪が 愛しい人を失っても"なお復讐を乗り超えることが出来た物語。

この物語では玉樹桜という大切な人を、初雪は見つけられた。愛する人を見つけられた。そして桜が好きだからこそ、自然にコノハサクヤの復讐も、佐々木への復讐もやめてしまう。

桜と初雪が恋人になった日々を思いだしてみて。初雪は復讐のことなんてもう頭からなくなっていることが読み取れるから。

しかしそんな桜との日常も長くは続かない。復讐をやめるきっかけになった玉樹桜は、宮棟の手によって討滅されてしまう*5


桜を失った悲しみから、またも初雪は復讐の道に走る。


もうそれは本当に意味のない行動だった。だって佐々木を殺したところで、桜に会えるわけないのだから。サクヤを殺したところで桜に会えるわけがないのだから。あの復讐はどこまで狂い続けた少年の行動でしかない。

しかし狂気し続けた彼に、ほんの一瞬だけ、観念の世界の扉が開かれる。

「河野君」

「さぁ。行こう」

「懐かしい人達に会いに行こう」

「冬と春の境目に、死者はよみがえる。一瞬だけ」

「だから、一瞬だけ、会いに行こう」


――ゴーストプリンセス


そこでは桜に再開することも、そして桜の想いを受け取ることができたそんな幻想世界。



"生者が死者の夢を見るように
死者が生者の夢を見ることだってあるんだよ"

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桜の言葉は、「桜のいなくなった世界でも生きてもいいかな」と初雪が思えるには十分だった。



もしも。
生者が、夜な夜な死者の夢に焦がれるように。
死者もまた、生者の夢を見ているのなら。

もしも、彼らが……俺の夢を見てくれているというのなら。

そんな、懐かしい人達のために。
生きてみても、いいかもしれないと……。
このクソッタレな世界で。

――初雪



桜の

"生者が死者の夢を見るように
死者が生者の夢を見ることだってあるんだよ"


という言葉は、誰かの人生を夢見る行為である。


初雪頑張ってほしいなとか、こうなって欲しい、ああなってほしい、幸せになってほしいという気持ちのことである。

―――それは応援という言葉に集約される。誰かを想う気持ち、誰かを励ます気持ち、誰かの背中をそっと押してあげるような存在になりたいという願いである。

そんな桜の願いは、初雪に生きる歓びを実感させてくれるものだったんだろうし、なにより「誰かが自分のことを応援してくれる」っていうのはとても嬉しいものだ。

だから初雪は、このクソッタレな現実で生きてみてもいいかなと思えたんだろう。


そして


いつだって


どこにだって




『はつゆきさくら』には応援が満ち溢れていた。




『卒業の幽霊』はいつも誰かの背中をそっと押してくれていたんだ――――





 

 

 

ねぇ、ゆきち。
誰かは、ちゃんと知ってるんだよ



誰もが君を不良だとののしっても

怠けものだと非難しても……分かってくれる人はいる

 

誰も、君をがんばったと言わないかもしれない

 

だけど、そんなことはないんだ

 

どんな形でも、最後のほうまでたどりついたなら

確かに頑張ったんだよ

 



 


「がんばれ」

「苦しいよ。店長」



「がんばれ」


「はぁ、はぁ……」

「俺が背中押してやるから」


「うんっ」

「走りぬけよ、シロクマ」


「うん―――」

 

 

 

「あずまぁぁ、がんばれ!!!」

「よっちゃん、ふぁいとー!」

「ふれぇぇえふれぇぇぇあーずーまー先輩ぃぃぃ!」

「エルオーブイイーあ・ず・ま!」

「頑張れ、2年!」

 

 

 

「あずま、お前は生きろ」

「俺が生かしてやる」

「信じて、踊りきってみろ」

 






ラン「あなたは1人じゃないよ」


妻「河野!!」

希「初雪っ。行かないでくれ」

あずま「先輩!!」

竹田「河野ぉ!」

久保「てめぇ、ひきこもってるなよ、河野」



ラン「外に、あんなにたくさんの友だちが
あなたのために集まってくれてる」



ラン「それが、あなたが3年間がんばって得たものなんだよ」





びんご!



やってみたら、意外とできるもんだよ。
怖がらずに、さぶーんだ



ファイト、ファイト!




 

「誰か―――」


「誰か俺の話しを聞きやがれっ」



聞いてるよ


「俺の話しを聞けよぉ」


聞いているから




「うー……」




「俺だってさぁ!」




なんだい?




「俺だって……」


うんうん。寂しい気持ちを吐き出してごらん



「なんで、俺って……」















「どこでも、一人なんだろう」



あ……




私が、いるよ




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「めぐる春夏秋冬」

「終わる1095日」


「それは幻のように、通り過ぎてしまうのだろうか」


「ゴーストのように、消えていくのだろうか」


「けれど桜のように」



「未来へ、再び花開く予感を残して」



卒業、おめでとう―――





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はつゆきさくら―――それは死者から生者へ捧げられた応援の物語。






―――――――――――――――

―――――――

――







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ここから感想です。(すんごいだらけた文なので、だらけた心構えでもって読んでくれると嬉しいですてへ)


やったー!!ようやく「はつゆきさくら」の総括記事をを書き終わったー!!いやっほう!!


『はつゆきさくら』をプレイ終了したのが確か1月12日だったかな? 今2月22日なので40日ほどこの記事をかくのにかかったと思えば、感動はひとしおです。

そして今だからこそ、眺められるものもあると、曖昧だった風景が明晰なものとして見渡すことができると!∑笑 深夜テンションなのでいつもより変かもしれない。


とにかく、とても心地が良かった物語でした。
やってるとむしょうに泣けてきますし、なによりも桜達が初雪を導くところを見ているとあたたかい気持ちでいっぱいです。さらに初雪自身もあずまや東雲妻を「応援」するところなんて、初雪おま……うるうるみたいな感じでした。

それと桜、あずま、綾、ランがとても大好きです。もうなんか彼女たちの声を聞いているだけで、一日頑張ろうと思えますよね、というか元気でますうんうん。い、癒される……。


あと宮棟の「バニッシュだ」という力強い声がたまりません。いつもはにゃへへ~♪みたいな猫かっぶりの声なのに、ゴーストを討滅するときだけはほんっとカッコイイ。あの低音声は痺れますシビレルネー。

そういえば2週してようやく気づいたんですが、宮棟も内田側なんですよね。だってカスガを率いている人物ですから。え……とつまり、初雪は復讐を肯定する内田側で、宮棟は復讐を否定した内田側の人間ということです。

"我々は忘れない" と舞台という劇で死んでいったものたちを救済することで宮棟は復讐せずにすんでいる。そして復讐という行為を虚飾された動機で行なっている初雪に、心底苛立っている理由もようやく理解できました。


「どれだけの、自覚のもとに、復讐などだいそれたことを口にする。河野初雪」

お前だけが、戦っているつもりで、やけばちになる権利があるなどと、思うなよ。河野初雪」

「忘れるな。あなたが滅びるのは、誰のためでも、誰のせいでもない」

「あなたが愚かだからだ。それだけだ。それだけは忘れずに滅びていけ」

「間違っても他人を恨み、たたるなよ」

「ゴーストチャイルド」

―――宮棟



そう初雪は、自分だけが戦っていると思っているところに、宮棟はカチンときているのが分かります。このことを理解したとき(つまり宮棟もまた死者の無念と戦っていると知ったとき)、より一層彼女のことが好きになりました。

宮棟カッコ可愛いよ!


  *


それと宮棟が言っていた「観念の世界」は、今まで追ってきた概念だったのでようやく腑に落ちたなーとか。そうかそうだよね、私達は現実を観念へと昇華することが出来るんだと嬉しくなったり。

神様のメモ帳』のアリスの「失われたものを情報に還元できるのが探偵」だという言葉にもようやく納得したというか。

神様のメモ帳 (電撃文庫)

神様のメモ帳 (電撃文庫)


兎にも角にも素敵な物語でした。ナツユメナギサをやる日も近いかもですにしし。




ナツユメナギサ
ナツユメナギサ



はつゆきさくらの関連記事はこちらです。

とはいってもほんと乱文なのでそれでもいいよという方は読んでくれると嬉しいです。(あう)


Prologue編 感想(26452文字)

あずま夜 感想(25326文字)


シロクマ 感想 (26088文字)


小坂井綾 感想 (29804文字)

玉樹桜 前編 (31892文字) 

玉樹桜 後編(37254文字)




心に残った言葉



「河野。相手が見えない時こそ、それが誰かなんて、突き詰めるものじゃぁない」

「それが何なのかではなく、誰なのかを追求しようとした途端、見えなくなるものがある。本質を見失う」


「ファントムはファントムさ。幻だ」

―――来栖



「いいだろう。今回は、不問ということにしようじゃないか」


「しかし心からの忠告で言っておこう。交渉なんて、これきりにしておくんだな」

「交渉なんて、やったところで、勝ったところで、いいことなんてない」

「何かを人質に取っているんだ。卑怯なことなんだよ。相手はその悔しさを、覚えているぞ

―――来栖


「その先生のことも、自分のことも、正しかったと信じられるのなら」

「それでいいと……思うけど」

「他人が何て言おうと」

「それじゃぁ、だめだったの?」

―――希



「ぐじぐじするなぁ」

「そういうものを、誰だって抱えて頑張ってるんだよ」

「どこかにたどり着きたいなら、歯を食いしばって進みなよ」

「安易に、安息の場所が見つかるなんて、思うなぁ」

「うるせぇよ、ぼけ。きれいごとぬかすな」

―――初雪、ラン



「痛みは正しく循環しなくてはならない」

「痛みを受けたならば……1人で抱え込まずに、その痛みを、誰かに受け止めてもらわなければならないのです」

「ため込み続ければ、やがて邪念に心を侵され、気づかないうちに、ゴーストに変貌してしまうでしょう」

「あなたのように、ね?」

―――宮棟



「物事の終わりの間際……最後の山場。もうくたくたで、走れない。ここまで頑張ったからいいじゃないかって、疲れた心は考える」

「そんな一番つらいとき、その幽霊が背中を押してくれるんだよ」

「それは何なのか、誰なのか分からない。ただ、近くで応援してくれるその気配だけは感じるんだ」

「でもその時は必死だから、それが誰なのか確かめる余裕もない」

「そうして、ゴールした歓びを一番に伝えたい、分かりたいのはその人なんだ」

「だから振り返る。けど、その人はどこにもいない」

「ただ、緩やかに風が吹いている」

「ありがとうと、伝える相手はいない」

「一体、あれは誰だったんだろうと考える」

「私は思うんだ。あれは、きっと……」

「いやみな先生とか、気の合わないクラスメートとか。けど、どこかでわかり合っていた相手。そういうものの、集合が、誰かの幻影のようなものを、作り出していたんだ」

――綾



「卒業なんて、ただの区切りだろ。何の意味があるんだか」

「区切りで、ゴールだから、だよ」

「前に進んで振り返ってみたときこそ、当時は何かに曇っていた風景がやっと、明晰に眺めることが出来るのかも知れない」

「だから進んで、やり通して……その時こそ、振り返ることが大切なんだよ」

「自分と、全ての懐かしい人達に報いるために」

――初雪、ラン



「結局、今過ごしている時間がどんな時間かなんて、その時は分からない」

「過ぎ去って振り返ったときこそ、見えてくるものがあるんじゃないか」

「だから、とにかくやりきってみるしかないんだと思うけどな」

「自分と、懐かしい人たちに報いるために」

―――綾、初雪



「でもね。私には、そんな激情なんて、ないよ。自分が、家族がどうこう言われようが、静かに、あるがままを受け入れるだけだ。つまらない人間なんだ」
中略
「興味ない相手には、怒るなんて、面倒なことはしないよ。ただ黙って相手の言うとおりにうなずいていれば、一番関わりあいにならなくて済むんだからね」

「さ、さめてるな……」

「そうそう、体力を使いたくないんだ。自分のためであってもね」

―――綾、初雪



「彼を行かせてあげなよ」

「彼を幸せに出来るのが死者だけだとしたら。彼が求めるものを、死者しか持っていないのなら」

「行かせてあげるしかないじゃないか」

「明晰な世界も狂気の世界も関係がない」

「そこに、愛しい人がいる」

「だったら、行かせてあげなよ」

――綾




らくがき

はつゆきさくらのラクガキをぽつぽつ書いていたのでここに残しておきます。

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最後にみなさんに聞いてみたいクエスチョン。私では辿りつけなかったのでもし答えをお持ちの方は、教えてください。(うーん未だに考えても難しいとくにミイラが)

1、物語終盤・廃ホテルの「開かずの間」が開きますが、あれは一体なんだったのでしょう? 桜はなぜ白骨化したミイラを、初雪に見せる必要があったのでしょうか。私の考えとしては、あの桜の行動は「私がパーティーのとき手をつないだ女の子なんだよ」と示したかったのかもしれないなと思いました。白骨化した自分のミイラをみせることで、初雪の記憶を刺激したかったかもしれないと。
しかし……なんというかイマイチな答えな気がします。もっと別の良い答えがあるっぽいなと。


2、コノハサクヤとは一体なんだったのでしょうか。

・宮棟がサクヤをカスガの総代として召喚したということ(←ゴーストチャイルドを滅ぼす為に喚ばれた)

・サクヤが白ドレスを着ていること(←死者は白装束を纏う。つまりサクヤは無から生み出された存在ではなく死人から精霊になった存在)

・ただバニッシュすればいい初雪を、遠回りな方法で救おうとしたサクヤの行動。(←初雪という人間に何かしらの思い入れがある?)

この事からコノハサクヤは河野初雪の縁者、あるいはそれに近い人物だと私は思ってるんです。初雪が大野の一人っ子じゃない可能性。つまり姉か妹がいた可能性。あるいは幼なじみ。あるいは従姉妹。また10年前のパーティーで死んでしまった人物じゃないかなとも睨んでいます。(あずま√での意味深なサクヤの発言と、白ドレスを着ていることからそう考えました)

けれども確固とした確証がなく、事実から思考をかなり飛躍しただけなので、むーむーという感じです。「サクヤの正体は本当はこれ!」と分かる方は教えて頂けると嬉しいのです。


おーわり!それではまたね!


<参考>

カルマルカ*サークル
カルマルカ*サークル

キサラギGOLD★STAR
キサラギGOLD★STAR

はつゆきさくら コンプリートサウンドトラック
はつゆきさくら コンプリートサウンドトラック

*1:自室にて「誰かが、俺の成したことの結果を……伝えに来てくれるはずだ」という初雪の言により佐々木に致命傷を与えたことが見られる。

*2:正確にはランは生きているが、初雪は知りえない

*3:これは一種の親からの呪いなので、それをバニッシュするのがGraduationでもあるのだろう。初恋から卒業し、親の呪いからも卒業するのである。ばにー♪

*4:小坂井綾√は狂気の愛を貫いた物語なので、むしろ死者のままという、あと希の話は例外的で生者へと復活するも佐々木の復讐を実行したEND

*5:サクヤ達の計画により、桜の身に宿った大いなる呪いは弱体化の一途を辿っていた。ゆえに桜が消されるのは、本人もサクヤも宮棟も承知の上。きっとこういう結末しかなかった