猫箱ただひとつ

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玉樹桜 感想_前編 (31892文字)

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f:id:bern-kaste:20140204092248j:plain「そ、そうなんだ。あ、じゃあね。良い、クリスマスをお過ごしください」 

……。 


▼ あとこれは「はつゆきさくら」の感想を詰め込んだ考察記事です。

『はつゆきさくら』_初雪が春へ至るためには何が必要だったのか? 死者は何をもって生者へと復活できるのかを考えてみた(21461文字)  

。 

 

 

 

 

ゴーストプリンセスの応援

「い、行ってきますっ」

「いってらっしゃい」

「いってきます……」

 

なんとなく、誰もいない玄関に向かって俺は答える。 

「って、やべぇ。走らないと」 

「走れ走れ」 

「はぁ、はぁ……っ」 

「走れ走れ」

 

―――初雪、ゴーストプリンセス

 
ちっちゃい桜が「走れ走れ♪」と応援してくる様子はとってもキュート。毎日毎朝、初雪はこういうふうに桜に応援されながら学校に行っていったと思うと、胸が締めあげられる。

 

 

「急げ急げ」 

「ハンカチ持った? ちり紙もった?」

「持った持った」

「もたもたするな~♪」

「いえい」 

―――ゴーストプリンセス

 

 誰かが心配してくれて応援してくれるのって、いいよなあ……と心の底から思ってしまう。元気になるもんね。

 

 

「入学おめでとう」 

―――ゴーストプリンセス

 

 

 

 

 コノハサクヤは精霊

 

「コノハサクヤ。この街に、春をもたらすためにやってきた精霊よ」

 ―――サクヤ

 
サクヤは精霊と自分を言う。宮棟もサクヤのことを精霊と呼んでいた。カスガの総代として召喚したとかだっけな?……。

召喚してから3年とも。

あずまの時に考えていた「サクヤゴースト説」はあんがい良い線行っているのかもしれない。


ゴーストと精霊の明確な区別方法が存在しないように思えるのと、悪しきものをゴースト良き行いをするのを精霊と呼んでいるだけで、本質的な部分は変わらないんじゃないか?

+++

 

春をもたらすためにやってきた、カスガの総代。か。(保留)

 

 

 

 

サクヤと桜の契約。そして身体について

 

 「じゃぁね。あんまり乱暴なことしないでね。今の身体、けっこう気に入っているの」 

―――サクヤ

 

サクヤとの別れ際そう言われる。

「今の身体」という点が気になる。兎の身体? それとも桜の身体を言っているんだろうか。


兎の身体のことを言ったとすれば、初雪が日頃ウィッキーに酷いことをしているんだと伺える。「ウィッキーの身体気に入っているんだから!あんま乱暴しないで」と言っているように見えた。


……サクヤが兎の身体を気に入っていると呟くのは、なんかおかしなものを感じてしまうがっ。

あんがい獣の肉体は使いやすいのかも? それとも人間関係に疲れないでいられる点だろうか。

 

 

 

 校内放送と桜の一途さ

 

「てめぇがまともな口きくなら、俺だって普通に口きくくらいならするっての」

「……ほんと?」 

「あぁ」 

「じゃぁまともな口きく。がんばる」

「そうかよ」 

「……」 

「前みたいに、たまに手握ったりしてもいいの?」

 

―――初雪、桜

 

 桜は一途というか健気というか、なんだかむしょうに可愛くて仕方がない。

初雪は「まともな口聞いたら話す」といっているがあれは意地の張り合いでぽろぽろ出てきた言葉でしかない。だというのにそれを素直に「うん」「うん」と首肯している桜は……ああ可愛い……。

 

校内放送でリアルタイムに音声が流れている点もどうしようもくいいね!

 

 

 

 

帰ってからは無理! 桜の事情

 

「帰ってから打てばいいだろ。本来、そのためのメールだ」 

「帰ってからじゃ無理だもん」 

「あぁ? なんでだ」 

「…………」 

―――桜、初雪

 
桜の携帯をなぜか買うことになり、メルアドを交換した2人。

で、桜がいうには帰ってからではメールが出来ないという。それはやっぱり帰ってから(夜)になると、サクヤが人の姿と顕現しなんらかの活動をするためだろうか?

サクヤが人型になれば、桜はおのずと失神してしまう。桜からみれば強制的な眠りと言ってもいいのかもしれない。

もしそんな状況ならば、たしかにメールは不可能だよね。

 

 

『私には、時間がないかもしれないから。大変だから……きっと、言えるタイミングってほとんどないと思うから』 

『今言っちゃいます』

『河野君が好きです』

―――桜


桜がいう時間とは、この世界にいられる時間だったはず。廃ホテルに鎮められた災厄をもたらすゴーストも、桜の願い(=初雪とのふれあい)をかなることで少しづつ弱体化していく。

そして鎮められているゴースト達が「どこまで」弱り切るかが、桜のいられる時間と直結しているんだろう。サクヤが楽に討滅できる時期になったら、桜は討たれる。

 

 

 

お前ってガキだよな精神年齢がさ

 

 

「お前ってガキだよな」 

「……へ?」
 

「いろいろと、どうなんだと思ってたんだ。ちょっと、精神年齢が低いっつーか。胸なんぞは、年相応より、見込みがあるくらいなんだが……おかしいよな」
~ 

「そのバニーうんぬんを、イチイチしつこく挟んでくるところとか」 

―――初雪、桜

 

そう言われてみると……? と思ったけど、別段桜が精神年齢が低いとかガキだとかは思わないかな……。

なんかもう個性として見ちゃってるせいだと思う「バニー」とか「ぴゃー」とかさ。

+++

シモネタが苦手なのと、バニー(寒いギャグ)をかますのが初雪の言うとおり精神年齢が低いんだとすれば、桜という女の子は、

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パーティーの事件のあとから、精神的に「変化」していないことになる。事件のあとから約10年ほど、初雪は心を変化(成長とはあえて言わない)させ擦り切れさせつつあるのに、桜というゴーストプリンセスはずっとパーティーの時から精神が止まっている……のかな。

現世とあの世。

現世に必ず適用される「時間」という概念が、もしかしたらあの世では消失しているのかもしれない。

時間というか変化してしまう要因っていうのかな……。ずっと「そのまま」でいられることを許された世界かもねと。

現に桜はあの時の精神状態らしいし、初雪にまとわりつく幽霊もパーティーの事件の怨嗟をいまだ持ち続けている。

変わらずにいられない―――ではなく変わることができない。


そんな世界の理なのかもしれないと想像してみる。

 

 

 

 

 

サクヤ怯える。しかしなにを恐れていた?

 

 

何かが来る。このままここにいては、危険」

「え? 何かって? ゴースト?」

「いや、あれはもっと別の……とにかく、一度距離をとって」

「で……でも」 

「はやくっ。ゴーストならともかく、あれからあなたを守れるか、分からない

「何におびえていたんだ。あのコノハサクヤが……」

確かに、誰かに見られていた。
玉樹達がいなくなったのを確認してか、その気配もどこかへ消えてしまった。
気のせいか……誰か、知ってる奴のような。

 

―――初雪、桜、サクヤ

 

ここはGraduationを終えても謎すぎる。サクヤが怯えるほどのなにかが、あの時あの公園に襲いかかろうとしていた? しかしそんな存在ってなんだよ……。



要素を列挙する。

1、何かが来るという発言から、行動できる存在を推測
2、ゴーストではない別の存在
3、サクヤが桜が守れるか分からないほどの脅威
4、初雪は誰かに見られていたと語る
5、初雪はとくに脅威を感じなかった。
6. 初雪が知っているやつ



まず私が最初に思ったのが、「サクヤの狂言か?」と脳裏をよぎった。なぜそんなことをするのか分からないが、サクヤがあやばい!いかなくちゃ!桜!みたいな感じで初雪を引き離したかっただけかもなと。

でもこれは否定されるべきかもねとも思う。

なぜならサクヤ以外の人間もその存在に気づいていたからだ。初雪のことだが。

となると他に考えられることってなんだ……。



・本当にサクヤが怯えるほどの脅威が存在したと仮定する。


まずサクヤが怯えるほどの脅威を考えてみる。彼女の様子からすると、自分の手に余るほどの強敵だろう。

しかしそんな存在なんかいるのか? ……いたな……。

桜が鎮めてきた「荒神」ならば、サクヤが恐れるに値する存在だ。街を滅ぼすほどの脅威を宿している。

うんこれなら「サクヤがおびえる」といった要素を突破できる。しかし……荒神は桜の指示に従う存在である。そんな彼らがサクヤの「脅威」になりえるかは微妙なんじゃないか。

けれど他に脅威となる存在なんて……。大野敦では足り得ないしなあ……。宮棟の連中にしたってサクヤがおびえるといった状態になると思えないし。

もーわからん!

 

 

 

 

ランの怨恨の深さは並じゃない

 

「お前の魂を討った、あのくそウサギの仲間の玉樹を」

「好きになってしまった」

「俺はどうすればいい……答えてくれ」

 

「摘み取ってしまえばいい」

「大丈夫、片時も離れる摘み取ってあげる。慰めてあげる」

「その子への想いが何度芽を出しても、私が摘み取ってあげる」

 

「やがてくたびれて、地中でうずくまるあだ花となるように、私が何度も何度も摘み取ってあげる」

 

「ぐしゃぐしゃに握りつぶしてあげる。ぐしゃぐしゃに。ぐしゃぐーしゃに!!」

 

―――ラン、初雪 

 

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身体中から怨嗟を拡散させいていくラン。そんな彼女をみて初雪は「これはランじゃない」と考えるが、やっぱりこれはランなのだろう。

復讐に狂っているのも、家族として愛情を捧げてくれたのも同じ人物。相手のきったないところを直視するのは覚悟が必要だよね……。

 

「大丈夫だよ初雪」 

「思い出させてあげる」

「楽園を」

「あなたにとって、一番大切なものは何なのか」

 

「怖がらないで初雪。あなたは忘れてしまっているから、恐ろしく感じるだけ。本当は全部、懐かしいあなたの家族なんだから」

「桜のことなんて忘れて、永遠の冬へ、いらっしゃい」 

―――ラン

 

ランを見て、アキラを見て、東雲妻を見て、あずま夜を見て、


復讐とは復讐せずにはいられない状態を指すんだと分かった。


復讐したくないと思っても相手を叩きのめすことが頭に浮かんでしまう。そのまま実行に移してしまうことだってある。

復讐は感情だ。したくないという感情よりもせずにはいられないという感情が勝ってどうにもならないときそいつを亡者と呼ぶのだろう。怨嗟に狂ったゴーストと。


ランは初雪の卒業を望んでいると同時に、初雪の手による復讐も望んでいる。この2つは同時に達成するのは極めて困難だ。それでも望んでしまう。そういう気持ちを理解できるかどうかが……ランという少女を見るときに必要なことかもしれないとそう思った。


おそらく「希編」では、初雪は復讐を実行し佐々木をぶちころした未来だと思っている。そして復讐を果たした上でさらに初雪は「卒業」もしている。だがこれはもうほんとに低確率の出来事にしか見えない。

一歩間違えれば、シロクマ編のように手遅れだったという事態も十分にありえるからだ。

 

 

 

 

 

 再び初雪に出会うことができれば、取り戻すはず

 

「先生は、ゴーストチャイルドに会えば、私の探しものが見つかるって言ってましたよね」

~~

「彼の正体を知った今、再び彼に会うことが出来れば、その時こそ取り戻すことができるよ」 

「あのホテルを訪れたときに、あるいはあなたは、取り戻すはずだった」 

「けど、彼の方が、まったく正体を表そうとしなかった。だから、無駄に終わってしまった」

―――桜、サクヤ

 


サクヤの行動がとても不可思議だよね。桜が自分のことを探しものを忘れているというのなら、サクヤが教えてあげればいい。

ゴーストチャイルドのこと、ゴーストプリンセスのこと、カスガのこと、大野敦のこと荒神のことを。

でもそうはしない。忘れたものは全部「桜自身が(なるべく)気づける」ことをしないとダメみたいな雰囲気を感じる。


どちらかというとサクヤはそうなるのを願っているみたい……なのかもしれない。

初雪が桜を、桜が初雪を、互いに互いを自分たちで気づける流れにしたかったように見える。

って! ほんとサクヤは名前の通りお伽話のような手段をとる子だった。利小主義というかそんな感じ。宮棟の「まったくこの子は」といった気持ちが、今少しだけ理解できた。

 

「サクヤ。名前の通り、あの子のやろうとすることは、いつもおとぎ話なんですよ」

 

―――宮棟

 

 

 

 

 

 

お前を好きになったら復讐ができない

 

「ふざけるよなよ……っ」

「俺は、信じてやってきたんだ」

「復讐を、すれば会えるって」

「俺の、大切な人たちは……向こう側にいて、復讐をすれば会えるんだって」

 

「だから、ここまで誰にも心をゆるさずやってきたんだ」

「お前を好きになったら、復讐が出来ない」

「それでも、俺はお前が好きなんだ」

 

―――初雪

 

「君の仇はとりたい。君の魂を取り戻したい」

「でも……」

「玉樹を恨むことは出来ない」
「どうしても恨むことが出来ないよ……」
「ごめん……」

―――初雪

 

 

今はいないランに謝る初雪。復讐をすれば叶うと願っていたのに、諦めざるを得なくなるほどに初雪は桜を好いていた。懸想していたのだ。

今思えば、もうこのときに初雪は桜を通じて「明日」や「未来」や「現実」という実感を強く強く感じていたんだろうと思う。だからこそ復讐より玉樹桜という女の子を選ぶことができると思う。



Prologueでは、誰も愛さながった故に復讐を果たした。
あずま夜では、彼女の生き方を見て復讐をやめた。
シロクマでは、狂気の一瞬に桜の声を聞いて好きな子を応援しようとした。
東雲希では、彼女がいても復讐を果たしてしまうが彼女との約束により春にいたれる。
綾は今は除外。


希に足りなくて、シロクマ・桜・あずまに足りていたものはなんだったんだろう。どうして希編では、初雪は復讐をやめようと思わなかったんだろう。


初雪が東雲妻の「復讐」の後始末をすべて請け負ったからこそ、妻も無事卒業でき、希が願う卒業式を開催することができた。

初雪が体育館の騒ぎを「自分がやった」と言わなければ、もちろん妻に影響が及ぶ。

ゆえに? ゆえになのか? だから初雪は復讐を果たしにいったんだろうか。形骸化されたものだと知りつつも、そこにもはやなんの意味も感じられなくても、佐々木をぶちのめしに。

結果に意味を求めたのではなく、そういう「体裁」を整えることで希が願う未来を守った……とか?……。


……。

 

 

 

 

 桜がゴーストとしての記憶を思い出す

 

「河野君じゃなかったんだね」

「私は……」

「私こそが……」 

「街を滅ぼすんだ」

「冬の終わりに、この街を、永遠の冬へ閉じ込めてしまうんだ」 

―――桜

 

「あなたは、あなたの願いを叶えなさい」

「河野初雪を愛したなら」

「彼を救えるのはあなただけだ」

「あなたを救えるのも彼だけだ」

 

「さぁ、最後の冬だよ、桜」 

―――サクヤ

 

 サクヤの言葉は「初雪を愛した人だけが彼を救える」と言い換えられるのかもしれない。

……。いやどうなんだろう。

シロクマもあずまも希も、最後に初雪を救ったのは初雪自身じゃないのか?……。たしかに彼女たちの影響あってこそ、初雪は復讐をやめたり復讐しても春に至れた。

けれども、それはなんというか彼女たちの「直接的な」行動が原因で起きたことじゃない。初雪は「影響され」て、行動を変えただけだ。

初雪を変えようとして変えた女の子なんて、桜だけなんじゃないか?


……。
綾は……綾は……、綾と初雪が愛せば2人は報われないんだよなあ……もうどうなっているんだろう……なんで死んでしまうんだろうか……。

 

 

 

 コノハサクヤの名にかけて

 

「コノハサクヤ。この名にかけて、あなたは私が導く
「だからあなたはあなたの、願いに、戦いに殉じなさい」

「そうすることが、最後の最後に、河野初雪が真に、この街に巣食う悪霊を討ち果たすための、力となるでしょう」 

―――サクヤ

 

サクヤは一体誰から、「コノハサクヤ」という名を貰ったんだろう。この名前は本名ではないと彼女は言っていた。ならば、名付け親なる人物がいるんじゃないだろうか。

それとも自分でつけたのかな。そういう存在に焦がれているのならばありえる。

ゴーストプリンセスに「玉樹桜」と名づけたのも、サクヤだし、サクヤは「桜」「春」にこだわりがあるように思える。


注意※(玉樹桜って、ゴーストプリンセスの本名ではないよね?……どうだったっけな……)

 

 桜が願いを叶える(=初雪と触れ合う)ことで、初雪がこの街に巣食う悪霊を討ち果たすための力になる……か。ふむ。

 

 

 

 

 憎むことでしか救われない想い

 

「憎むことによってしか救われない想いというのはあるよ」

「ならば憎みなさい。誰に遠慮することもない。君には、その資格があるのだから」 

「しかし憎むだけでは、自らを毒するだけだ。それを、しかるべき相手に、しっかりと受け止めてもらわなければならない」

 

「そうやって、世の中の痛みは正しく循環していくべきなんだ」 
「なぁ初雪」
「何度季節がめぐっても、春の陽気にさらされても、夏の陽炎にかすんでも、秋の木枯らしに疲れても、冬の雪に冷やされても」
「お前の復讐が、休まることはない」
「さぁ、復讐を果たせ」

―――声(大野敦)

 

コノハサクヤ桜に語りかける場面からいってんし、大野の語りがはじまる。

言葉は初雪に向けられているが、しかしそこに初雪はいないような気がする。つまり大野は一人で語っているという状況なんじゃないだろうか。


さぁ復讐を果たせ。


そう繰り返して。繰り返して繰り返す。何度でも。幾度と無く。

私は思ったんだ。大野のこれは「初雪が胸の内にささやくゴースト」そのままなんじゃないかと。


この大野の言葉「痛みは循環しなければ」「憎む資格がある」「復讐を果たせ」は、つねに初雪の胸内で繰り返される言葉なんじゃないのかと。



 

 

 宮棟はなにをしていたバニッシュ

 

「バニッシュ」 

「春が来るよ。おうちに帰りなさい、ゴーストどもよ」

 「さもないと、一番怖いゴーストが来ちゃうよ」
「だからはやく、おうちに帰って、安らかに眠りなさい」

「バニッシュ」

「バニッシュだ」

 

―――宮棟

 

 

公園に宮棟と他2人がそこにはいた。仮面とマントと剣を手にしていた。彼女らは、手当たり次第にゴーストを討滅していたように思う。

宮棟はいう「オーラスだね」と。終わりが近いから反魂香によって溢れでたゴーストを狩ってしていたんだろうか?

 

 

 

 

また『肉』か

 

「けれどゆめゆめ忘れないことです。肉を持たないあなたは、この冬が終わる時、このままでは焼け滅びるだけの運命なのですから」

―――ゴースト

 

ここで言っている「肉」とは、「Prologue」で示唆された誰かを愛すことに近い意味を持っているんじゃないだろうか。

初雪は生者とも死者とも未だ決めかねている。生者として生きるのならば、とても強い動機が必要だ。死者ではなく"どうして"生者になることを選んだのか、その強い動機がなければ、現世から引き剥がされてしまう……。そういうことか?

もっと簡単に言えば、初雪に必要なの現世に留まることのへの執着。そういった気持ちがなければ彼は死者となってしまう。必要なのは世界を肌感覚で実感させてくれる人物。

初雪が好きになった人は例外なく、現世への「執着」を取り戻させてくれる人達ばかり。あいつと一緒にいたい。あいつの隣に居続けたい、そう思えれば初雪は生者として復活できると私は思う。

だからこそ、そういった生きるための動機がないことを「肉を持っていない」とゴーストは言っているんじゃないだろうか。

 

 

 

がんもどきとお肉と僧侶

 

「そしたらね、形じゃなくて味が似てるんだって。お肉が食べたくても食べられない僧侶さんが、精進料理として開発したのががんもどきなんだって」 

「私思うんだ。お肉を食べられないから、お豆腐で我慢するっていうのは、なんだかいじらしいようで違和感もあるんだ」

 

「お肉を食べたいと望んで、かなわないから肉もどきで我慢をする。それで、満たされたとしても、本分は果たされてるのかな

 

「それって結局、肉を食べたいっていう欲望も、肉を食べはいけないっていう規律も、両方半分くらい侵しているような気がするんだ」

「それは、それでいいのかなって思うよ。はむはむと、がんもを食べながら」 

―――桜

 

桜が言っていることは難しい。なので考える。


お肉を食べたいと望んで、かなわないから肉もどきで我慢をする。

本当にしたいことを、別のなにかで紛らわしてしまう。でもそれで満足してしまう。でもそれって本分は満たしているのかな?



初雪の復讐のことを言っているのかな?……

初雪の本当にしたいこと(ランの復活懐かしい人に会う)は、復讐という行為では叶わないけれど満足してしまうことを指摘しているようでもある。でもなんか違うような気もする。





卒業アルバム

 

「これから卒業までに、2人のための卒業アルバムを作る!」

―――希

 

希は相変わらず卒業生のためならなんでもするみたいだった。その心意気は素敵。

 

 

好きな歌

「好きな歌って、不思議と前から知ってたような気がするよね。それと同じだと思う」

 

―――シロクマ

 

綾の初雪にたいする恋は、「好きな歌って前から知っていた気がするのと同じだよ」というシロクマは指摘する。

綾もああそうかもしれないと頷いてみせた。

果てしなくどうでもいいんですが、「好きな歌を不思議と前から知っていた感覚」というのを感じたことがないなと。たぶん既視感の類だとは思うのだけれど、個人的には遭遇したことがない。

 

 

 

 

カスガと佐々木の爺が手を組んでいる? それともジジイはカスガの人間?

 

「さっきからなんだい。物陰からこそこそと、人を脅して」

「河野初雪」

「奴は化け物だ」

「……なに?」

「くれふれも、お嬢様に怪我をさせないよう」

「待って!! 君。一体、何なんだ」

「……カスガ」

―――綾、??

 

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ええええ?!! ちょっと待ってよ!私はなんかとんでもない勘違いをしていた気がするよ?!

 

シロクマをお嬢様と呼ぶ連中。彼らはカスガと名乗った。佐々木の爺さんの孫娘であるシロクマ。彼女を監視しているカスガ。

 

カスガって……内田市側の人間のことだよね? 霊媒師としての家名?みたいなふうに私は認識していたんだけどあれ?

 

だって佐々木の爺は川邊側の人間だよね。初雪は内田側の人間。大野も内田側の人間。

 

わっつ?!

 

 

 

 

綾の死んでしまった記憶

 

「あなたはすぐそこまで来ている。あとはきっかけさえあれば、取り戻せるでしょう。失った物を」

 

「たとえ思い出しても、取り戻せない過去……すでに死んでしまった過去というのはあるんです」 

―――オーナー

 

 

綾は一年前の初雪との思い出を取り戻せるところまで来ていた。

でもオーナー(ラン)は言う。取り戻せてもそれは死んでいると。


死んでしまった過去。というのは、"意味"が失われてしまった思い出ということだろう。綾が今さら初雪との思い出を取り戻したところで、なにがどう変わるわけじゃない。

綾一人の手によって、初雪は復讐をやめることもしなければ、続行しようという起爆剤にもならない。

綾の存在は初雪にとっては「最も重要な」ものではなくなっている。もしこれが一年前のあの日だったら、違ったのかもしれない。


でも今の初雪には、小坂井綾という女の子の存在は、自身の行動を決断するための大きな要素にはならない。

……なんでだろう…なんでこんなことになっているんだろう……。綾だけが……綾だけが報われないじゃないか……。

初雪が綾に「キス」しようが「抱く」ことを選ぼうとも、綾だけは……。


だって前者は爛々と輝く炎を背景に2人は心中してしまうし、後者は綾と初雪は結ばれることはない。(少なくとも卒業式までは)

Graduationのあと、初雪は綾を選ぶことはあるんだろうか。惚れ込んだ桜がいつも見守ってくれていると知りながらも、彼女を選ぶことはあるのだろうか。

……。


 

白いドレスは死に装束

 

「ゴーストは、白いドレスを着ているように見える」 

「あれは、なんだろう」 

 

「死に装束といったところでしょうか」 

「死に装束?」 

「真っ裸で現れたら、ストリーキングをしているみたいで、格好がつかないでしょ。くす」

「あのドレスがプレーンな状態といったところです。そこから、どんな姿をとってこの世を彷徨うかは、そのゴースト次第でしょう」 

―――宮棟、初雪

 

ゴーストが現世にあらわれると、まずは白いドレスを着ることになるのかほむ。それが素の状態。あとはどういう服装を……いやどういった「姿」で彷徨うのかはそいつ次第ってことらしい。

宮棟が服装ではなく「姿」といった意味が分かった気がした。たぶん初雪にまとわりついているゴースト達も最初は死に装束(白いドレス)を着ていたんだろう。

けれどそこからああいった怨恨の塊、人の憎しみが具現化したような姿を取ることを選んだとそういうわけか。

サクヤが白いドレスを着ているのもやっぱり注目すべきところだろうか。
アキラも最初は白いドレスを着ていたんだろうか……ふふふw いやもしかしたら男性なので白タキシードかもしれないが。


 

 

 

 

ゴーストは想いの強さで現世に触れられるか決まる

 

「ゴーストは、ああしてぼんやり見える奴から、はっきりと姿を持って、他の生きた人間と区別のつかないもの。それに触れられるものまで様々だ」 

「その違いは、どこで生まれるんだろう」

「想いの……魂の、強さですよ」 

「蘇るだけの理由。現世への未練であったり、執着であったりが強いほど、ゴーストはその存在を増すでしょう」 

―――宮棟、初雪

 

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シロクマ編で焼死をとげた初雪がなぜ、「人の姿をもって生きて帰ってきたのか」を考えてきたが、なるほどね。

宮棟の言うとおりならば、初雪は肉体を燃やされ死と断定されようとも、想いの強さにより霊魂のみでこちらがわへ帰ってきたということか。

それも現世に物理的に干渉できるほどの力を有しながら。それほどまでに彼の情念は深い。


また綾編のアキラが、現世に物理的に干渉できなかったのは、その程度の想いの強さということだったのかもしれない。初雪とくらべてだが。一般人からすればアキアの想いも十分に強くは見える……。



 

 

 

コノハサクヤは精霊

 

「コノハサクヤ。あれは、ゴーストというより精霊です。その辺の霊体とはわけが違います」 

「普段はウサギの身体を借りていますが、彼女がその気になれば、いくらでも現世に姿を現し、生者に干渉することが出来る」 

「とはいえ。いくら、強い力を持ったゴーストであろうと、どこでもぽこぽこ、現れることが出来るわけじゃありません」

 「前提があります。反魂香……。ゴーストにしろ精霊にしろ、この世に迎えようと思えば、そういう下地が必要です」

 

「また、夜……あるいは、暗い場所でなら、顕現もしやすいでしょう。闇は、本来、人ならざる者の住処。冥界に近い、場所ですからね」 

―――宮棟

 
宮棟の口ぶりからすれば、強さのランクによって「精霊」か「ゴースト」という区分になるような感じ……なんだがどうだろう。

つまり霊体の格が高ければ精霊と呼び、低ければ有象無象のゴーストと呼ぶそんな感じじゃないだろうか。

だとするなら、やっぱりサクヤの本質はゴーストとなんら変わらない。現世側の存在ではなく、あちら側の存在。


彼女の出自(ルーツ)は一体なんだ?

+++

桜が夜になるとメールが出来なくなるというのも、サクヤが夜に活動しているからだろう。宮棟によれば、昼間より夜のほうが顕現がしやすいとのこと。

ふむにゃるほどね。

2年前サクヤがランを討ったその日も、たしか夜だったはず。この時、街には反魂香が焚かれていなかったというのに、彼女は現世を闊歩できていた……か。

サクヤの「存在」としての強さは高いことが伺える。


 

 

 

少しサービスしましょう

 

「あなたにとりついているゴースト達は、反魂香の匂いが濃ければ濃いほど。闇が深ければ深いほど、存在を増すでしょう」

 

「少し、サービスしましょう」 

「ねぇ。どうして、この街には、反魂香の匂いが充満しているのでしょう。あなたは知っていますか?」 

「これは、とあるゴーストをお招きするため。それだけのために、ある人物が、ばらまいたせいなんですよ」

「ええ。その方が、この街のどこにでもいらっしゃることが出来るようにと、反魂香を、この街全域に焚いているのですよ」

 

―――宮棟

 

宮棟はなぜ、初雪にサービスと言い桜の情報を与えた?

宮棟は初雪を貴重なサンプルとしてしか見てないことは、本人の口から語られている。ならば情報を与えたことは、初雪になんらかの行動を取ってもらいたいからなんだろうか。


「とあるゴーストをお招きするため」

 


初雪が桜をゴーストだと知って、いったいなにが起こる。どんなことが起こりえることだと予測できる?

宮棟の第一目的は、この街を(おそらく)守ること。そのために玉樹桜・ゴーストプリンセスが鎮めている「荒神」を討滅しなければならない。

しかし荒神の力は強大で手に負えるものじゃない。だからこそ街に反魂香をばらまきゴーストプリンセスを現世に顕現させ、願いを叶えさせ、荒神の弱体化を狙っている。

脅威である荒神が弱ったところを討つ。そして街に安全をもたらす。それが(おそらく)宮棟の第一目的。

そして。


初雪に玉樹桜がゴーストプリンセスだと知らせることがそれにどう関わってくるんだ。……。くそ分からない。


宮棟の性格が分からないからこそうまく思考が掴めないんだよな……。

1、宮棟が第一目的を絶対順守する性格ならば、よけいなアクシデントは起こしたくないはず、ならばこれらの言葉は、より円滑に計画を薦めるために呟いたとみるべき。

2、宮棟は河野初雪を貴重なサンプルだと言う。ならば初雪が「ある行動」を起こすのを望んだがゆえの言葉だった。つまり彼女は第一目的(街を守る)をそこまで順守はしていない。


さて……。どうなるか。

 

 




 はつゆきからさくらまで

 

「ラブっていう単語は入れたい」

「却下だ」

「え? じゃぁ、例えば……そう……」

 ……

「初雪から桜まで」

 

―――桜

 
卒業アルバムの名前がとうとう決まった。

「初雪から桜まで」

冬から春にいたる物語。

 

 

 

 

 

 私を見つけてくれるまでそばにいたかった

 

「河野君も知っちゃったんだ」

「それでもあなたは思い出さないんだね」

~~

「本当は、そこまで待ちたかった。あなたが、私を見つけてくれるまで、そばにいたかった」

「終わりみたいだね」

「さぁご挨拶だよ、河野初雪」

「いや、ゴーストチャイルド」 

―――桜

 

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桜は初雪が自分のことを"見つけて"くれるまで、待とうとしていた。

自分がゴーストプリンセスだと、いつも君を見ていたんだということを「初雪自身で辿り着いて欲しかった」そんな風に聞こえる。

  

 

「一つの街が、統合によって滅びようとしていた」

「かわりに、彼らは、精霊の祝福を受けたふたりの少年と少女を引き合わせ、土地の魂をつなぐ契約を結ばせようとした」

 

「そんな大人たちの思惑とは別に、ふたりはただ、出会い、結ばれようとしていた」

「けれど……」

「悲しい事故によって、二人の運命はそこで終わりを迎えます」 

「その時からふたりは、それぞれに大きな呪いを背負った、ゴーストになってしまった」 

―――桜

 

「 精霊の祝福」とはなんだろう。

桜は巫女の末裔である。じゃあ初雪はなんの血脈を受け継いでいるんだろう。気になる。

あのパーティーは内田市の結束を強めるというより、土地の魂とつなぐ契約だとか。土地のたましいを繋ぐってなんだ。契約したらどうなる。


 

「あなたは忘れている」

桜は悲しそうに目を伏せる

「目の前の復讐にばかりとらわれて……自分自身のルーツを失っている」 

「あなたは誰か。どうしてここに住んでいたか。どうしてゴーストの王になったのか」
~~

「私が、誰だったのか」

「それを、私に聞くのは、あまりにも残酷だと知ってほしいよ」 

―――桜

 

あずま夜編でもサクヤによって語られた「自身のルーツ」。つまり自分の出自といったもの。

桜からすればそれはとても大事なことらしい。初雪が自分が誰でどういう生まれでどういう存在なのかを知ることは。


初雪が自分のルーツを知ったところで、何かが変わるんだろうか……。過去から言葉を届けようとも、初雪には届かないことを桜は知っているはずなのに。

 

……。

ここちょっとひっかかる。

初雪が「桜と婚約することになっていた」ことを思い出す。そうするとなにかが変わる?……

 

 

 

 

 終わりにしようゴーストチャイルド

 

「このままで……どうなってしまうんだ」

「………………」

……

「そうだね」

「終わりにしよう」

「……おわり?」

「うん。いい機会だから、終わりにしよう。これ以上は、お互いのためにならないよ」 

「どのみち、私には、もうほとんど時間は残されていない」

 「私はあなたと過ごして、もう、ほとんど滅びかかっているんだよ」 

―――桜、初雪

 



今まで和気あいあいと同棲していた初雪と桜。その雰囲気が壊れる予兆なんてどこにもなかった。少なくとも傍目に見る分には。

しかし初雪が「桜はおまえはゴーストなのか」と問いかけることで、こういった事態にまで発展してしまった。桜はいきなりもう終わりにすると言い放つ。


 これ以上一緒にいることは、お互いのためにならない?……。

 

トリガーは初雪の問いかけなのだとしたら、一体なにがそんなに彼女の気にかかったのか分からない。


1、桜は自分がもうそろそろ消えてしまうことが分かっている
2、初雪は桜をゴーストだと気づいても、「いつも傍にいた存在」だということには気づかなかった。


じゃあこういうことか?


桜は「終わりにするきっかけ」というものを少なからず意識していた。それを初雪の「お前ってゴーストなんじゃ」という問いかけによって、明確な行動へと結びつくようになってしまった……ふむ。


「いい機会」だからというのも、そういうことなら納得できそうだ。

これ以上お互いのためにならないというのは、引き際を謝れば大きな傷を残しそうだなという予感ゆえだろうか。

 

―――この前の会話が重要だった。参照してみる。

 

「俺がいろんなことを忘れている。昔のこと。お前のこと……」
「それは分かったよ」
「けど。俺が知りたいのは、これからのことだ」
「これから……」
「桜。お前はどうなる」
「どうなるって?」
「このままで……どうなってしまうんだ」
「………………」
……
「そうだね」
「終わりにしよう」 

 

そうかようやく桜の気持ちが分かった。

初雪は桜との「未来」を望んでいる。けれどもそれは叶わない。なぜなら桜に未来はないからだ。彼女の運命は討滅されるというべき明日しかない。

桜がこのまま、ゴーストのまま初雪とずっと一緒にいる未来なんてない。彼女に宿っている荒神が弱体化し、頃合いがくればサクヤ達が討ちにくるからだ。

もしそれを先延ばしにしても、反魂香という下地とサクヤとの契約がなければ「玉樹桜」は存在できなくなる。河野初雪に触れ話すことはできなくなる。


だからこそ、「いい機会だから、そろそろ終わりにしよっか」「だってもうあなたと私は一緒にはいけないのだから」という意味が込められていたのではないか。

 

 

 メモ

 

(「あなたの願いを叶えてあげる。そして、あなたの呪いを浄化する」) 

「それが、コノハサクヤの狙いだった」

「彼女は私を討てなかった」

「けど、私の願いを叶えることによって、私、私に、とりついた精霊たちを、浄化しようとした」

 

(「ええ。さぁ、桜……おいで。生者の世界へ」)

 「そうして私の願いは叶えられて……あなたと過ごして幸せで。今ではもう、呪いはほとんど、消えかけている」 

「私を討つことが出来る」 
「けど、何かのはずみで、また、精霊たちの怒りは、蘇らないとも限らない」
「だから、今こそ終わりにするべきなんだよ」

―――桜

 

 

 

 

 

 

 

 初雪に終わらせて欲しいと望む桜

 

「できたら私は、あなたに終わらせて欲しいと思っている」

「この剣で。私を、浄化させてほしい」

「さぁ、河野君。私を討って」

 

―――桜

 自分の終わりを、好きな人の手によって……というのはなんとなく分かる。気持ち的にロマンチックだよね。

……という意味ではなく、もっとあるのだろう。桜からすれば「初雪が自分の手で」想い人を討つことが。

 

「今こそ、私もあなたも、生者になるか死者になるかを決定するの」

「そうして、この身にとりついた呪いを克服して、冬を終えるべきなんだ」
―――桜 

 

生者になるか死者になるかを決定する。
自分で選ぶってことなのかな。
自分の身にとりついた呪いを克服して、冬を負えるべき……。

桜も、初雪も自身の双肩に負わされているのは、"自分で" 負ったものではない。2人とも親の意志によって背負うことになった呪いと言っていい。


そう親の呪い。他者からの呪い。それを穿つにはどうすればいい。

 

 

 

 

 

 

でも大丈夫。初雪は春に至れるから

 

「これから、最後の冬がはじまる。怖いことがいっぱい起こる」

「でも大丈夫だよ。きっと、あなたは春に至れる」 

「そのために、私達は、二人で、この冬を過ごしたんだから」 

同じ場所にはいけなくても。恋人だったから」 

「お願い」 

「私を切って」 

「そうじゃないと。私、悲しくて、苦しくて……また……」

―――桜

 

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 ああ……やっぱり桜は「初雪と一緒にどこにも行けないこと」を覚悟しているんだなと思った。

同じ場所にはいけなくても。"恋人"だったから。

この言葉は、シロクマ編で卒業式に校長先生が言っていた言葉と酷似する。つまり不安や憎しみに囚われようとも、懐かしいまばゆい思い出さえあれば大丈夫だよと。

心の中でゴーストがささやきかけたとき、その明るい思い出で自分の胸のうちを照らしてみてくださいと。

桜と恋人だったときの記憶があれば、「きっと、あなたは春に至れる」と。

+++

それと桜の

「そうじゃないと。私、悲しくて、苦しくて……また……」

この「また」という言葉が気になる。また?ってなんだ。

 

 

とりあえず箇条書き。

 

 

Q、桜が発した「また」という言葉はどういう意味を持つのか。(この言葉を発した状況としては、初雪が桜を討たないと桜は悲しいし苦しくなるという流れから)

 

1、桜は「Prologue」の世界、その終わりを経験しているゆえの「また」。

 

ふと思ったのが「Prologue」のラストで、桜が街を食ってしまうこと。ゴーストによって街を破滅にしてしまう最後を思い返してしまった。

でもそうでは……ないよね……たぶん。

だってそれを認めるということは、「Prologue」という世界と「Graduation」という2つの世界を玉樹桜は知っているということになるもの。

世界飛行者っていうわけではないと思うんだが……それともほんとうにそれ?……。

 

 

違うとは(根拠なく)思うんだが、でもこれ以上の「また」なんかあるのか?

 

>最後の冬がはじまる。でも初雪は大丈夫春に至れる。だって私達はこの冬を2人で過ごしたんだから。

 

「Prologue編」では桜はいった。初雪は「世界を愛さなかった」と。だから彼は復讐を果たしそのまま焼き果てたと。

そういう視点で見るのなら、この冬は! 初雪は世界を愛したと言ってもいい! だって桜を愛していたのだから!

 

 

この前の言葉で桜は「私もあなたも生者になるか死者になるか決定する」と言い。さらに「この身に取り付いた呪いを克服して冬を終える」と言っている。

 

つまり、桜が自分をその剣で初雪に討ってというのは、初雪が身に宿した呪い(=復讐という感情)を克服するキッカケが出来ると考えているんじゃないだろうか。

 

 

なぜ「初雪の手で桜を討滅すること」が、初雪の復讐という気持ちを克服することに繋がるのか。

 

……分からない。少なくとも言えるのは「克服」ではないのかもなと。これは後ろ向きな提案なのかもしれないと思った。

 

このあと桜は初雪ではなく、宮棟によって討滅されてしまう。

初雪自身が桜を消滅させたのではなく、他人の手によって終わらせてしまった。

 

このことによって、初雪は「桜のために復讐する」気持ちを灯してしまった。

 

「ランの為に復讐をする」という気持ちを、玉樹桜という存在によって一度は消えたのに、玉樹桜が消えてしまえばまた「復讐」という感情は再燃してしまうんだろう……。

 

 

つまりね、桜がしたかったのは、初雪に「また」復讐をさせないことだったんじゃないかってこと。

 

初雪の手で桜を討たなければ、彼は「桜が消えることに納得できない」から。そうなるとまた失った人を取り戻そうと、結果のない復讐という行為に身をやつしてしまう。

 

そう考えての、桜の「私を討って」という言葉だと私は考える。

 

 

 

 

 

 

内田川邊の事情

 

「中央の資本を背景として、勢力を伸ばし、いにしえよりこの地の中心であった内田市さえ飲み込み、統合しようとしていた川邊市」

「一方の内田には、古い時代より神事を司り、政治の中枢まで食い込んで支配していた者達がいた」

「彼らは、権力の移譲が行われないように、霊媒技術を駆使して、政争を続ける構えでした」 

「あの夜、このホテルで開かれていたパーティーは、決起集会でもあったのです」

―――宮棟

 

川邊市というのは財力が武器。内田市は霊媒技術が武器ということなのかな。


 

 

 

初雪の名前の変更。それはなにをもたらした

 

「大野ゆうき」

「この名前に、聞き覚えはありませんか」

「あなたの、本当の名前ですよ」 

―――宮棟

 

 ここは簡単にスルーしていたが、かなり重要なキーだと思う。考える

まずは疑問点を列挙する

 

1、なぜ初雪は「河野初雪」として名を与えられた?

2、なぜ初雪は本名である「大野ゆうき」という名前を聞いても何の反応を示さない

 

「1」。初雪の名前を最初に呼んだのは、ラン?それとも大野敦? どちらにせよどういう意図をもって本来の名前と変更したんだろうか。

考えられるのは、名前のとおりに目的を果たすような子になって欲しかったからとかどうだろう。彼らは霊媒世界に身をおいている。私があまり価値を置いていない「言霊」というものにも、彼らにとっては深い文化があるのかもしれない。

雪のように真冬のようにと。復讐を遂げることがだけを願われた子どもとして存在するようにと名付けられた。それが「河野初雪」という名前だったという可能性。

あるいは「大野」という苗字は、ここ内田川邊では禁忌のような象徴だったのかもしれない。そんな苗字の子どもがいたら、疑われるのは必至……そういう環境だった為に、名前を変更した可能性。



「2」。なぜ初雪は「初雪」という自分の名前に疑問を持ってこなかったのか。また宮棟から「大野ゆうき」という言葉を告げられても無反応だったのはなぜか。

考えられるのは、初雪は、本名である大野ゆうきという名前を忘れているんじゃないか? パーティーの事件の後遺症によって記憶が吹っ飛んでしまったというのもありえる。


 

 

 

 

桜とサクヤと宮棟との約束

 

「私は逃げない」

「サクヤと、そう約束したから」

「でもすーちゃんは」

「分かってますよ。それもこれも、約束です」

「じゃぁ……」

「私を討って」 

―――宮棟、桜

 

初雪が預かり知れぬところで、桜・サクヤ・宮棟の間ではなにかしらの約束を交わされたいたらしい。正確には桜とサクヤに交わされた約束を、宮棟も守っているという感じか。

この桜と宮棟のやりとりからすれば、桜を討つかわりに河野初雪は殺さないという約束だろうか。

この約束があるかないかにせよ、宮棟たちは桜を置いて初雪を先に殺すというのはありえない。(初雪をまず殺してしまうと桜が暴走するとするからだろう)

しかし桜がいなくなったあと、「初雪を殺さない」という約束を守るのはサクヤだけか。(宮棟は守る気あんまなさそうだったよね)

 

 

 

 

焼け付く花の匂い

 

「玉樹!!」

血は流れない。

ただその代わりに、焼け付く花の匂いとともに、白い霧のようなものが玉樹の傷口から、あふれ出す。 

―――初雪

 

ゴーストが討たれると「焼け付く花の匂い」をまき散らしながら消滅していくのだろうか。

焼くつく花の匂いって、反魂香の匂いと同種のものだよね。

 

 

 

 

 

 

 

雪が天へ昇っていくよ 風花

 

雲が切れて、晴れ間が差し込むように、旧市街を覆っていた夜の闇が引いていく。そうして雪と共に、まぶしい光を注ぐ。

何が、起こっている。
「雪が天へ昇っていく」

「魂が滅びようとしている」

「ゴーストが消え去るよ」

―――??

 
桜が宮棟に討たれた直後の出来事。桜もとい彼女に取り付いていた荒神の消滅によって、旧内田市街の空気も変わっていく。

闇が引いて行くとは、荒神の怨嗟が消えた証拠か。


「雪が天へ昇っていく」

雪とは魂。桜の魂。面白い。雪とは天から"降る"ものであり積もるもの。しかしバニッシュされたのであれば、雪(魂)は天へ向かうのか。

じゃあ「雪が降る」ということは、魂が降り積もることを指し、まぶしい光が街を覆ったとき「雪は昇」っているのかもしれない。

重要っぽい感じなので付箋。「曇天の中で降る雪」と「晴れ渡る空に降る雪」。後者は降っているのではなく、"昇って"いる雪なのかもしれない。

 

そう、風花といわれる現象。

 

 

 

初雪の動機の輪郭が強くなる。いや思い出したというべきか

 

俺は、もつれる足で駆け寄り、白い光に包まれていく玉樹の身体を支える。掴まないと、すぐにでも、どこかへ行ってしまいそうだった。 

そうだ。
決めたじゃないか。 

もう一度会えたなら。二度と、この手を離さないと。
だから会いたくて。

そのために、俺はゴーストチャイルドになったんじゃないか。 

「桜!」 

―――初雪

 

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初雪が桜のことをようやく「思い出す」までに至った瞬間、桜は消滅してしまう。

初雪はなんで忘れていたんだろう。なぜ自分のルーツを忘却してしまっていたんだろう……。んー。

というか初雪が「ゴーストチャイルド」になったキッカケが瀑としすぎている。

+++

初雪はランと暮らしていいた。その生活は周囲からみれば異常なものであっても彼らにとっては平穏たるものだった。
それがある日、サクヤによってランは失われてしまう。その冬、初雪はゴースト達によりホテルを追い出されてしまう。そこから一年後、綾とアキラに会いゴーストチャイルドになると決断した

ここまで確定要素。事実確認です。問題はここから。

→なぜ初雪は「ランが討たれてから一年ものあいだ宿を転々としていたのか?」

ここすっごく大事だと思います。初雪がゴーストチャイルドになるきっかけがランを取り戻したいというひたむきな願いであるのならば! 「一年間行動を起こさなかった」というところが疑惑が生じます。

つまり、初雪にとってランという存在は大事だけれども、「すぐ」「即刻」彼女を取り戻す行動を起こすほどの"動機"を持ち得なかったということです。

初雪はランがサクヤに討たれた後、約一年間に渡って宿を転々とします。ホテルに戻ればランに会えるのに。ホテルに戻りたければゴーストチャイルドになると決断すればいいのにし・な・かった。

このことは初雪にとって、ランは「ゴーストチャイルド」を決断するための動機とはなり得ないことなんじゃないでしょうか。


次に初雪がゴーストチャイルドになろうと思ったのは、(おそらく)バレンタイン祭のとき剣道場にいてアキラとの会話です。


アキラは言います。姉は涼しい顔で生きているそれが憎いと。そして初雪は心の中で思うんですね。誰にだって悩みはあると。それでも自分は他人よりも業を背負っていると言い張りたいなら、"人ではない"何かになるしかないと。

 

小坂井綾 感想 (29804文字) - 猫箱ただひとつ。

 

私はこの初雪の言葉から、そして次に続く「初雪がこの冬に甘ったれた考え事をしていた」という内容から、

初雪がゴーストチャイルドなると決めた動機は、「人ではない何かになって、誰よりも誰よりも憎む権利を得て、誰かに助けて貰いたかった」と考えます。

これが第一の動機。

次に綾との会話「そろそろ家に戻りなよ」「がんばれ」によって、ホテルに帰還する初雪。このとき彼は「そろそろ逃げまわるのはよそう。ランを取り戻したいと思ったら」と言っているんですが、ランを"取り戻したい!"と思った心情が一切ないのが不思議です。

ランを思い出したのは、食うものに困って少年にカツアゲしたときに一瞬思い出したきっりです。それ以降、初雪は「ランを取り戻したい!」と思うほどに彼女のことを考えてところはない。

だとすれば、この言葉はイミテーションなのでは? と私は考えます。そうまがいものの動機。けれど第一の動機を隠すにはつごうのいい動機とも言えます。

なぜなら第一の動機は、とても甘ったれた考えだからです。初雪もそのことは理解しています。自分自身でもこんなくそ甘い考えを持つのが嫌けれども、でも思ってしまった。でも隠したいとすれば、自己欺瞞に陥るのは想像に難くないです。

つまり、「人ではない何かになって誰よりも誰よりも憎む権利を得て誰かに助けて貰いたかった」という動機を欺くために、「ランを取り戻す」動機に自分ですげ替えたということ。

付け加えるとすれば、たしかに初雪はランを取り戻したいとは思っているでしょう。またパーティーで一緒になった女の子にまた会えたなら、もう二度と手を離さないと思ったのも事実でしょう。


けれども「ゴーストチャイルド」なった動機という点でみれば、それは第二、第三のものでしかないと思います。


さらにいうと、そんな初雪が私は大好きだったり。だってとても人間らしいじゃないですか。いろいろな動機が複合的にあわさって、原初の考えよりも欺瞞だった動機のほうを「本当」だと思ってしまうところとかが!

 

 

 

 

 

最後に私を見つけて欲しい

 

「泣かないで」

「外へ行こう」

「ほら、外はいい天気だよ」

「行こう」

「もうすぐ春がくるから」

「そして……できたら、最後に私を見つけて欲しい……」

―――桜

 

 そっかすごい勘違いしてた。桜は宮棟にバニッシュされたからといって存在は「消えない」のだ。ただ存在が「見えなくなる」だけなのか。

宮棟が討ったのは、桜ではなく、桜に宿っている荒神たち。そして荒神たちと桜とを断ち切ったとき、コノハサクヤとの契約も切れてしまうのかもしれない。

だから初雪には"見えなく"なってしまうのか。それゆえの「最後に私を見つけて欲しい」という言葉か……。

桜はいなくなったわけじゃない、ただ見えなくなっただけ。いつもずっとこれからも初雪の隣にいる。でもそれじゃやっぱり悲しいから、見つけて欲しいなとそう思ってしまった。

とするとにゃるほど。

 

 

 

 

本当はそれだけで良かった

 

「覚えてる。はじめてこの街に来て……ここで、河野君と会った夜のこと」 

「1人でこんなところに放っておかれて、暗くて怖くて……泣きじゃくってたら、河野君が声をかけてくれた」 

「驚かなかったよ。悪い人だって、思わなかった。不思議だね」

 

「ただ、あのとき……河野君に会って、私は、恋をしたんだよ」「さっきは、それだけじゃないって言ったけど……」
「なんで思い出してくれないのって、怒ったけど」

「本当は、それだけでも良かったんだ」

「私には、この冬に、河野君と過ごした思いでさえあればよかったんだ

「ただそれだけで……」

「何も思い出さずに」

「過去なんて関係なくて……私達は、ただのふたりの学生で」

「恋人で」

「それで……」

「一緒に卒業したかった」
―――桜

 

桜にとって初雪に触れ初雪と会話できるだけで、とんでもなく嬉しかった出来事なんだと思う。

自分が陰ながら見守っていたことや、一緒に卒業したいっていう願いは原初の願いの派生にすぎない。"できれば" 叶えたかった願い。

 

「手を握ってくれてありがとう」

「いっぱい、一緒にいてくれてありがとう」
―――桜 

 

 

 

 

 

先に桜を討った理由

 

「とにかくまた、何かの拍子に、あの子が力を取り戻すか分からなかった」

「だったら、さっさと滅ぼしておくのが一番でしょう」 

「……」

「まだ、河野初雪が残っているわ」

「桜を失い、彼がどう動くか……」

「あんなのは雑魚ですよん」

「桜のトリガーとなり得る存在だから、手を出さなかっただけ」 

 

―――宮棟、サクヤ

 

 宮棟がいう「トリガー」とは、街を滅ぼすって意味の引き金だろう。ふむ。

 

 

 

 ミッションクリア

「彼がやることといったら、せいぜい、もうろくじじぃを1人、始末するぐらいでしょう」 

「あるいは爆弾を背負って、人の群れに特攻をかけるかしら。どのみち、私達が関与するレベルの話じゃない。警察か病院にでも任せておけばいい」

 

「そんなわけで。桜という大いなる呪いが無くなった今、ミッションクリアといったところですね。わーおめでとう。お疲れ様です。パチパチ」 

「私は、最後まで手は抜かない。あの子のためにも」

「私だって、別に、手を引く訳じゃないですよ」
―――宮棟、サクヤ 

 

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宮棟の「私達が関与するレベルの話じゃない」という言葉がすごい引っかかる。

宮棟一派の目的って、桜に取り付いた荒神を討ち、滅び行く街を救うというものなんだろう。これまでの口ぶりや行動からするとさ。

で、このあと初雪が起こすであろう民衆への被害は、「関与するレベルの話ではない」として切り捨てる。


じゃあさつまり、宮棟たちにとって仕事?ミッション?は「桜を討つ"だけ"」だったってことだろうか。あるいは初雪というもう一人のゴーストチャイルドも討滅するが、それに及ぶ被害は関知しないという意味なんだろうか。


ふむ。

宮棟の言葉から察するに、おそらく「ゴーストチャイルド共々討滅」なんだろう。桜も初雪もしっかりとパニッシュメントする。

しかし、その際に起きる被害はどうだっていい。宮棟一派はヒーローではないのだから。対象を消し去ることだけを至上目的とし、それに派生する被害はきにしないと。

けれども、サクヤだけは個人としてそういう気持ちは共有していないと。サクヤはあの子のためにも、桜のためにも初雪を「どうにかする」未来予想図を描いているんじゃないか。

 

 

 

 

 宮棟が初雪に興味を持っているものはなに?

 

「河野初雪自体には、興味があります。稀代の霊媒師、大野敦の忘れ形見にして、最高傑作です」 

「生身の人間でありながら、あれほどの霊障をコントロールしているのは、確かに賞賛に値する。あは」 

―――宮棟

 

 宮棟が興味を持っているのって「霊媒技術」の最高傑作としての初雪っぽい? 生身でありながら、霊障を操ることができるその技術や存在がサンプルとして有用価値があると言っているように聞こえる。


となると、宮棟もそっちがわの人間ってことだろうか?

同業者ゆえに興味があり意欲をそそられるんじゃないか。ゴーストを使役する初雪。ゴーストを討つ宮棟。

内田市はすごい昔から、そういった霊媒技術を駆使していたそうだ。霊や巫女といった類の超常的な力を行使できる一族。それが大野家や玉樹桜の家柄なんだろう。

川邊側はただ財力を持っていただけらしい。つまり霊媒的な超常的な力の行使は出来ないと見ていいんじゃないか。(組織または家系的に)

となると「宮棟」という存在は、川邊側に雇われたゴーストハンターみたいなもんだろうか?……。


 

 

 

 

 

 復讐しかない復讐しかない

 

「彼に役目を果たさせる以外に、彼が救われる方法はないのです」

「もうずっと、彼はいくつものゴーストたちとともに生きてきました」
「それはもう、彼の魂の一部となり、切り離せるようなものではありません」

「無理に浄化しようとすれば、彼もまた、ゴーストとして、魂を失うだけでしょう」
「…………」

「だから、彼にこのまま、復讐を果たさせろと言うのか。そんな……」
―――オーナー、綾

 

生き続けてもなお地獄か。

初雪の「動機」と「目的」がもうずいぶんとめちゃくちゃなまま、ここまで来てしまった。そのツケが報われないままに役目を果たすということに繋がっている。

イミテーションされた動機をホンモノと思い込み。結果に結実を結ぶと信じて疑わないその在り方が、もうすでに異常なのかもしれない。


復讐の先には本当に何も待っていない。初雪が望むことはなにも起きない。
でも復讐をしなければ、彼は壊れてしまう。狂ってしまう。

そんな状況。
……。

玉樹桜と出会い、初雪は一旦は復讐をやめた。けれど"再び"同じ状況に陥れば、ランと同じように桜も目の前で失われれば、初雪はまた結果のない復讐を繰り返してしまうってことか。

 

 

 

 

 

 

ランの懇願と初雪への想い

 

 「死人が出るかもしれません。どれだけの人が傷つくか分かりません。それでも……彼は助かる」 

「それ以外には、もう、彼を救う方法はない」

 

「彼自身、犯罪者になり大きな十字架を背負うことになるでしょう。けど、魂を失い抜け殻として生涯を終えるよりはいいでしょう」

「役目を果たした暁には、彼はこの街を離れ、名前を捨て、過去を捨て……。やっと新しい季節へ踏み出すことができる」 

「だけどたった一人では寂しすぎる。誰か一人でも、彼を失っている人がそばにいなければ、それはやっぱり死んでしまうと同じ事」
 

「だから私に、ゆきちのそばにいろと?」 

―――オーナー、綾

 

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ランは何を思ってこの言葉を吐き出しているのか。

初雪をここまで!ここまで彼の心をぐちゃぐちゃにした張本人であるランが、たった一人では寂しすぎると、だから彼のそばに綾にいて欲しいと頼むその心境はなんなのか。


ランはこれまでも矛盾しているような言葉を残している。

「初雪は強いよ、きっと、自分で思っている以上に強い」「あぁ?」
「その強さをこれからは、自分と大切な人のために、使ってね」

―――ラン、初雪

 
とかね。あと「ちゃんと卒業しよう」とか「立派になろう」とか、そういう初雪の今後のことを考えるとまったく適していない言葉ばかり。

初雪は復讐の傀儡とするために育てているのはランじゃん。いわば立派になれない人生を歩もうとさせているのはランじゃん……。


……。


この「初雪に復讐して欲しい」ていうのと、「初雪には卒業してほしいし立派になってほしい」と望む気持ちをランは同時に持っているんだと思う。

そして初雪が復讐を成し遂げたら立派になれないまま孤独になると知りつつ、綾に一緒にいて欲しいと懇願する。

相反する言葉。矛盾する行動。

もうラン自身もどうしたらいいのか分からなくなってるんじゃないのかな……。なんか、なんかさ。

初雪もアキラもあずまも東雲妻もランもみんなみんな

 


"復讐せずにはいられない" っていう感情が、自分の心をしっちゃめっちゃかにしている印象を受ける。

 

 

「……ずっと彼の近くにいたけど、結局、いなかった。幻みたいな存在でした。闇の中でした、私は彼と向かい合うことは出来なかった」

 「あなただけなんです。彼の隣にいることが出来るのは」

「お願いします」 

―――オーナー

 

 

 

 

 

 復讐せずにはいられない

 

「桜は……ゴーストだった」

「そぅして、あの女に、魂を狩られてしまった。ランのように」

「桜の魂も、取り戻せるのか?」 

「え。復讐を果たしたなら」

「会えるでしょう」

「あぁ……」

「もう、会えないなんてないよな。……桜」 

―――初雪、ゴースト

 

 もう何度も繰り返しているけど、みんなみんな目的と手段がぐちゃぐちゃなんだよね……;;

そしてそうなってしまうのは、「復讐」という感情の発露でそうなってしまう。理屈じゃないし理由もいらない必要なのは誰かを憎んでいる、ただそれだけ。

その怨嗟の極大化により、目的と手段がぶっこわれ"復讐せずにはいられない"っていう感情に到達してしまうんだと思う。

復讐に意味がないと知っていても
目的を叶えるための過程になぜか復讐という行為があろうとも気にしなくなる。周りがぜんぜん見えていない。見えなくていい。ただ"やる"。"やらなくてはいけない"

理性がぶっ壊れて、あと一歩で狂うそんな状態。それが今の初雪や、アキラだったんだと私は思うんだ。

 

 

 

 

 

 バニーバニー。桜の思い出。初雪の忘れ物

 

「おおおおおおおおおおおおお」 

「すごいよ、なにそれ。耳がはえてるっ。すごいよ。とんでもバニーだよっ」 

「えへへ。ほら、これ」

「あ、うさぎっ。うさぎちゃん、後ろにっ」

「こういうことでした」

「おおおおおおお」

「面白い!」

「ヾ(*´∀`*)ノキャッキャ」

「バニー!」

「ヾ(*´∀`*)ノキャッキャ」

 

―――少女、少年

 

 

……桜がずっとバニーいっていたのって……こういうことかあ……ああ;;;

 

 桜にとってあの日の一瞬がずっとずーっと忘れないられないものになっていて、それだけを持ち続けているのか……。

あのとき初雪が笑ってくれたから、今の初雪も笑ってくれると思ってバニーと何度も何度も叫んでいたのか。なんかもうふざけんなとうるうるする……。


 

 

 

 

 白い影と骸骨と

 

夢を、見ていた。
反魂香によって見た幻なのか。
何が現で、何が幻かも、分からなくなっていた。
記憶の一番向こうには何がある。
俺は、どうして、思い出せなかった。
お前のことを……
「……ん?」 

白い影が、入り口に立っている。
誰だ。

白い影は、ふらふらと廊下を歩いて行く。

影はホールの奥に達、開かずの間の扉を見つめている。
この扉の向こうに、何が……。
「なん、だと」
決して開かなかった扉が、たやすく、吸い込まれるように開いていく。

 「これは……」
影はそこに立ち尽くしている。
扉の向こうは……小さな部屋になっていた。
何もない。ただ、中央に椅子が置いてあり、そこに誰かがぐったりと腰掛けている。

それは……小さな、子どものミイラだった。

―――初雪

 

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廃ホテルにある「開かずの間」の描写ってここ以外にあったけ?……。私の記憶だとここの一箇所しか思い出せないんだけど……むむ「Prologue」や「シロクマ編」であったような気も?

+++

初雪が10年前のパーティーの出来事を夢として思い出してあと、とつじょ白い影が現れる。

玉樹桜・ゴーストプリンセスの姿の白い影。この影が初雪を開かずの間に導くようにして歩き出す。

そして開くはずのなかった扉が、な・ぜ・か開く。その部屋にあったのは一体の子どものミイラ……。


推測する想像する考える。まずは疑問を列挙する。

 


1、子どものミイラとは誰のものなのか?

2、なぜ今までその扉は開かなかったのか?
3,桜(白い影)は開かずの間に初雪をなぜ導いたのか?

 

 

 まず「1」から。桜(白い影)が導いたことを加味すると、生前の桜の身体ということだろうか。生きていた・桜の・身体だったもの? それがミイラとなっている?

……。おかしくないか?……。

パーティーで爆発事故が起きた。火災でホテルが全焼した。ランや大野からの言葉から察するには死人は多くでた。生き残ったものも後遺症を残す人もたくさんいた。

それくらいの規模の爆発。事件。そうだよ、もし死体が廃ホテルに存在するのならばそれは焼けているか、四肢バラバラになっているものなんじゃないか? 次に廃ホテルに死体が"存在"するというのもおかしい。なぜならこんな大きな事件なんだ警察が介入しないわけがない。救急班が介入しないわけがない。

→アンサー「開かずの間」


開かずの間にあった子どものミイラを桜本人ものと仮定。推測。爆発があったあの日、桜はなんらかの形で「開かずの間」に入ってしまった。そこから十年ずっとあの場所にいて、椅子に腰掛けながら命を引き取ったと考える。

次に桜は巫女としてお母さんとの約束をしている。それはこの地に宿る土地神(荒神)を沈めるという役目を引き継いだこと。



桜は「開かずの間」から出ようと思えば、助けをよぼうと思えばいつでも出来たんじゃないか? でもしなかったということはお母さんとの約束、自分との約束、初雪の未来を見たいという願いから彼女はずっとあそこに居ることを選んだんじゃないかと想像する。


「2」なぜ今まで扉は開かなかったのか?

桜(白い影)が「開かずの間」の扉を開いた、とするなら意図的に閉じていた可能性が出てくる。桜は誰にも(もしくは初雪に)この部屋の中に入ってほしくはなかった?

あるいは荒神を宮棟に討たれたことで、ようやく扉を開けることが出来るようになったのかもしれない。 つまり荒神を沈める要素が「扉を閉じる」という点に関係している可能性の示唆。


「3」なぜ桜(白い影)は、初雪に開かずの間へと導いたのか?

まず考えられるのが

1、子どものミイラを初雪に見て欲しかった。

2、開かずの間という「場所」を見て欲しかった。

ってのが簡単に思いつく。

1から考える。初雪に子どものミイラを見てどうして欲しかったんだろう?……。あのミイラが桜のものだとすると、「私は今までここで荒神を鎮めてきたんだよ」というメッセージを彼に与えられるかもしれない。ふむその可能性はあると思う。

2にしても、その見方なら通るような気がする……がいかんせん「開かずの間」の描写がこれ以降無い。どういうことだ? 初雪はこれを見てなにか心境でも変わったんだろうか? 保留だ。

 

  

 

 

 内田市と川辺市、初雪は呪いの傀儡

 

「10年ほど前の出来事です。ある夜あるホテルで、祝賀パーティーが開かれていました」
「内田市と川邊市。歴史ある2つの街の統合と、そして、ふたりの少年と少女の婚礼の約束を、祝う集いでした」

―――サクヤ

 

「 100余名が亡くなる、大惨事となりました」

「あれは……事故ではなく、事件だったと言う者もいました」
「当時、内田市と川邊市の統合にあたって、長年政治の中枢に関わってきた、霊媒師集団を排除しようとする勢力が仕掛けたものだと」

「事実、内田市を牛耳ってきたのは、政治家でも資産家でもない。精霊に通じた霊媒師集団……カスガと呼ばれる集団だったと言います」

「彼らは、あらゆる霊媒技術を政治に持ち込み、長く長く、内田の地の支配者であったと言います」
「新しきもの達は、そうした古い力を恐れ、新時代の幕開けの前に、彼らを排除しようとしたものだと言います」

―――サクヤ

 

 

「真実は闇の中」
「けれど、あの爆発事故の生き残りや、縁者達は……信じました。そこに、悪意があったことを」
「しばらくしてから、川邊側の要人の襲撃事件が立て続けに起こりました」

「全ては未遂に終わり、ついにその首謀者が逮捕されます」
「大野敦」
「当時カスガを率いていた、内田市議委員。稀代の霊媒師」
「彼はあの爆発事故から、一命を取り留めて、生き残りを束ねて彼らを罠にかけた者達に、復讐を企みました」
「けれど全ては失敗に終わり、逮捕された時にはもう、瀕死の状態でした」
「そして、この世を去る間際に、言い残したといいます」

 

「俺が死んでも、我らの無念は終わらない」

「魂は滅びない」

「全ての魂は、我が子にかえっていくだろう」

「無念の、復讐の魂より生まれた、ゴーストチャイルド」

「ゴーストの王」

「いつかお前らに、大いなるわざわいをもたらすだろう」 

―――サクヤ、大野敦

 

 大野敦というのは延々に繰り返される呪いのメタファーだろうか。死んでも死んでも復讐はなくならい呪いは血のように溢れでて、怒りのように沸騰し続ける。

そういう示唆だろうか。

 

 

 

 

 

あの子はもういないんだよ

 

「桜に合わせろ」

「あの子は、もういないんだよ」

 

―――初雪、サクヤ

 

 初雪の実直な感情が伝わってきてつらい……。あの子はもういない。そんな言葉をはいそうですかと頷けないそういう気持ちと、会いたくて仕方がないという感情が理解できる。


でもサクヤは言う。何度でも  

「復讐?」

「そんなことをしたって、愛しい人たちに会えるなんて、限らないわ」

「会えるよ」

そう信じて、生きてきたんだ。会えると思う以外にないさ」 

―――サクヤ、初雪

 

初雪にとって「本当の本当の真実」なんかどうでもいい。彼のなかで「桜は復活する」と思えばそれはもう彼にとっての真実なのだから。

そう外界を遮断し他者を廃絶したその先に待っているのは、心象領域の拡大化。内界のみに価値を置き過ぎるとこうなってしまう。


周囲からみれば狂っていると言われるだろう。なぜなら初雪が吐き出す言葉のロジックが理解できないからだ。100%桜が戻らないと科学的に、現象的に、霊媒的に示されようが、初雪は認めない。彼の中では数多の理論はすべて無意味だからだ。理屈じゃない理由もいらない。彼が求めているのはそうなると"信じて"きたことだけなのだから。

 

事実かどうかなんて、今となっては、どうでもいい。
自分が何者かなんて、どうでもいい。
……桜
ラン。
それに……。
そうだ。いつかの冬に、俺の中から、記憶とともに失われてしまった、懐かしい人達のために。
「復讐を果たそう」
―――初雪


「報いる為に」という概念が、復讐か、卒業かの違いだけなのかもしれない。到達するゴールが違う。

 

 

「観念しなよ。ゴーストチャイルド。ここまでだよ」

「バニッシュだ」

「く……っ」 

銀の剣が突きつけられる。

俺が綾にしたように。桜が討たれたように。

俺の中のゴーストが討たれようとしている。

それで俺が正気に返ると思っている。 

……こいつらは分かっていない。

俺はとっくにゴーストになっている。

ゴーストを討つというのはつまり、俺自身をも討つことだ。

―――初雪

 

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ゴーストを討つことは根本的な解決じゃないのか……そうか……そうかそうか。だから後に、初雪は綾に謝るのか……。


大事なのは「復活」か。死者を討つことではなく死者が復活することが肝要なんだたぶん。

 

 

 

 綾の覚悟とその言葉

 

「彼を行かせてあげなよ」

「彼を幸せに出来るのが死者だけだとしたら。彼が求めるものを、死者しか持っていないのなら」 

「行かせてあげるしかないじゃないか」 

明晰な世界も狂気の世界も関係がない」 

「そこに、愛しい人がいる」 

「だったら、行かせてあげなよ」  

―――綾

 

綾はいいかんじに倫理を超えているからほんとうに大好きだ。

世間でいわれるところの「こうしたほうがいい」「こうするべきだ」と言われる常識やふつうといった考え方を取っ払うのは難しい。まず気づけるかどうかもかなり難しいしなによりそれを行動に起こせるところが素敵すぎる。

私達は現実世界で"ここに"立って生きている。だから"ここ"がもっとも価値があるとそう思い込んでいる。(そう思わないと生きれないというのが正しい)、でも誰かにとってはそうじゃない場合がある。

この世界じゃないもっと別の遠い世界に行きたい人だっている。そこに在り続けたいと望む人もいる。周囲からは狂気と言われるような場所だったとしても、本人が望んでいるのならそれ以上の幸福はない。

というか本人以外に幸いであるかどうかなんて、決められない。もし決めるのだとしたらそれはとっても傲慢なことであると自覚しないといけない気がするんだ。

 

 「この街の平和よりも、ゆきちに、生き延びてほしいから」

 

 愛とか恋とはそういう感情は、対象者以外の価値を削ぐし毀す。対象者の価値が大きくなりすぎて、"世界"という言葉の意味がそのまんま"対象者"に移行される。

 

 

「私には分かる。もう、彼の生き方を、私達がどうこう言える段階にはないんだよ」 

「彼を、止めることはできないんだ。どうしても止めようとするなら、彼そのものを、滅ぼさなければならない」

「私は、それを認めない。だから、君たちに、刃を向けることにしよう」

 「そんな……」

「それは諦めじゃないか」

「選択だよ。いずれしか選べないなら、どちらを取るかの選択だ」

「俺は友人として、河野にこのまま破滅の道を行かせるわけにはいかない―――」 

―――綾、妻

 

 友人が死のうとしている。その死を友人が望んでいようともだ……。さらにその果てに幸いなんて得られないと分かったとき、私はいったいどういう選択を取るべきなのか同様に悩む。

綾のように本人の意志を尊重することがいいのか、妻のように自分の主観的な価値観を是とし死にゆく人を止めるべきなのか。


もちろん答えなんかない。そしてこの2択は2択であるがゆえに、決断が難しくなる。

初雪は幸せになんてならない。憤怒にまみれ怨嗟に狂い死にゆくだろう。もし復讐を果たしても陽の目を浴びる日なんてこないかもしれない。それは自分が培ってきた価値観であれば「否認」してしまう行為である。

だからその上で、その上で初雪の意志を尊重するということは一種の諦めであるのだ。彼がそういうふうにしか生きられなかったことを、傍から眺めることなのだから。

けれども……そうけれどもだ。だからといって初雪が今本当にしたいことを阻止していいのか? 彼の意志を阻んでいいのか? なんて考えてしまう。

綾も妻も初雪を大切に思っているからこその行動であるが、お互いの価値観の相違によって選んだ答えが違ったなんだろう。

綾は初雪の意志を、妻は自分の意志を尊重するとそういうことだと。

 

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「私でよければ……そばに……いさせて、くれないか?」 

―――綾

 

 

「君の旅路へ、連れていってくれないか」

「あぁ……」

 

 

 

 

 小坂井綾の決意と一年前の想い

 

「ねぇ、ゆきち。私は、一年前の冬に君と出会って……」

「でも忘れてしまった」

「浪人、お前……」

「だけどね、ゆきち」

「好きなんだ」

「それでも確かに今、君のことが……好きなんだ。」

 

―――綾

 
一年前の記憶をすべて取り戻せなくても、今、たしかに初雪が好きだと告げる綾。

綾の様子を見ていると、「ああ過去なんて関係ないんだな」とそう思えた。大事なのは今この瞬間なんだ。

もちろん過去の価値の大きさを否定するつもりじゃない。でも過去ばかり大事なわけでもない。積層されてきた想いは良いことばかりじゃないし……。復讐といった執着のようなものを生み出してしまうことだってある。(話しがずれた)

過去ではなく今、今からこれからのこと。過去ばかりに目を向けるのではなく、今や明日にも目を向けてもいいんじゃないかな。そう思えた。

綾がそれほど過去に執着していないように、桜が過去から初雪を呼びかけるのではなく「今」から声を届けたように。

大事なのはもっともっといっぱいある。

 


綾はSEXの最中こう呟く。

「何て言うか……すまなかった」
「なんで謝るの」
「いや。確かにそういうことがあったのに……」
「俺があんたから、思い出も奪ってしまたちょうなものだから」
「……」
「その話しは、もうやめよう」
「もう、何も悲しくないから」
―――初雪、綾

 

失ったなにかを取り戻せなくても、いいのかもしれない。一年前の思い出をなくしても、「もう何も悲しくないよ」とそういえる感じが。

 

 

 

選択肢

 

 →綾にキスする

→綾を抱きしめる


ここで選択肢が現れる。綾にキスをするということは、初雪が一年前の「綾への好き」を取り戻したということなんだろうか。

桜を本気で好きになったあとに、また別の誰かをすぐ好きになれることなんてあるんだろうか。……初雪は今から一年前に綾のことを本気で好きだったしな……そういうこともあるのかもしれない。


痛みが循環されていくように
好きもまたぐるぐると循環されていくものなのかもしれない。

それを不誠実だという人もいるかもしれないが、私はどうもそんなことは思えないようだった。初雪が桜を本気で好きになるのも、綾を本気で好きになるのも納得してしまう。

なんでだろう……。

 

 

 

明晰な世界と狂気の世界で

 

「悪かった」

「……え?」

「俺が間違っていたのかもしれない」

「いつだって、誰にだって狂気が存在するものだ」 

「それを取り除いてしまったら、きっと、人の気持ちとか魂みたいなものは、成り立たないんじゃないか」

 

「お前と過ごした時間も」

「ランと過ごした時間も」

「桜と過ごした時間も」 

「そこには全て狂気が介在していた。けど、だからこそ、かけがえのないものだった」 

「だから……俺は……」

「例え、狂っているとしても、止まれない」

「巡り会えると願って何が悪い。そうれなければ、それこそ、俺は生きてはいけない」

―――初雪、綾

 

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 初雪は一年前、綾に取り付いていたアキラを討ったことを謝った。

人には狂気が存在する。そしてその狂気を取り除いてしまえば、人の感情なんてものはなくなってしまうと__だから綾の中にあった狂気をパニッシュメントしたのは間違いだったと言う。

綾がアキラに肉を差し出してもいいと願った感情は、傍からみれば「狂気」といわれるものなのかもしれない。けれども狂気の何が悪い? そんなふうに狂気という精神構造を肯定できる出来事が初雪にはあったのだろう。

 

初雪は自分がおこそうとしている復讐がいかに狂っているのか自覚しているんだと思う。じゃないと綾に謝るなんてしないよねと。


「狂気」がいかに人間の根幹に大事なものなのかを知る。理屈じゃない理由はいらないただのプリミティブな感情。

 

 

 

 

綾と交接

 

「ああああああああああああ!!!」

浪人を……

いや、綾をそっと抱きしめた。
「ゆきち……」

いつかの2人には戻れないけど、それでも、俺達は似たもの同士だった。帰れなくって彷徨うもの同士。

―――初雪

 

綾と交接することを選ぶと、初雪は小坂井綾を「浪人」ではなく「綾」と呼ぶようになる。

初雪が綾のことを「浪人」と呼んでいたのは、一年前に過ごした「綾」と呼べる関係には戻れないからこその線引だったのかもなと思った。

そして再び交接することで、綾への呼称を変更する。一年前とは同じような関係ではないけれど、それでも"好き"という共通項によって。

 

+++

初雪は自分と綾が似ているという。

―――帰れなくなって彷徨う者同士、と。


帰れなくなる?……。

それは居場所的な意味なんだろうか。帰る場所がない者同士。これは実際の物理的な「家」ではなく、精神的な拠り所のことを示しているんだろう。

物理的な居場所に、精神的な拠り所がある場合もある。


綾は学校を卒業してしまったので学校(後輩やクラスメイト)という拠り所は失われた。母と父も田舎のほうに戻り畑仕事(もしかしたら綾の両親は子どもに愛着ない人なのかもな…)、喫茶カンテラだって初雪がいなくなってしまえば拠り所とは言いがたい。

綾の帰れる場所(精神的な拠り所)ってたしかに考ええてみれば無いのかもしれない。

 


対して他の3人はそこはかとなく「拠り所」と言える場所はあると思う。
これがあずま夜だったら、家族。
シロクマだったら、学校の友人。
希だったら、家族や学校。
桜は…なんだろう?ふむ


綾って間違いなくゴースト的な生者だよなあ……と再認識する。

綾は人柄いいし面倒見いいし明るいし頼れる先輩だけれど、よくよく見るとなんというか一人ぼっちなんだよな……。誰とも深く繋がっていない、繋がろうとしないそんな暗さを感じる。





 鎮魂歌

 

「葬り去られたいくつもの青春へ送る、鎮魂の歌を……」

「うさぎ女。今夜は、てめぇに捧げよう」

 

「戦慄しろ大人たち。震えろ、運命」

「俺たちに覆い被さる、社会という名の、軍勢よ」

「聴けよ。かよわい羊たちの叫びを―――」

「反逆の歌だ」 

―――久保

 
久保は言う「メリーゴランドをぶっ壊せ」は鎮魂の歌だと。
死者をなぐさめ亡者を鎮めるための歌。


この歌はメリーゴーランドをぶっ壊せと何度も叫んでいる。

 お前の手で ぶっ壊せ

と。そう叫び続ける歌である。つまり初雪に「いい加減楽園なんて幻想だってことに気づけ!!お前の手でぶっ壊せよ!!」とそう言っているように聞こえる。

いい加減気づけと。鎮魂歌……なのかな?。どちらかというと、気づきの歌という感じがする。
 

 

 

 



Graduation編はまだ続きます。次回は(2/2)です。

 

 

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Prologue編 感想(26452文字)

あずま夜 感想(25326文字)

シロクマ 感想 (26088文字)

小坂井綾 感想 (29804文字)

東雲希 感想(18500文字)

 

玉樹桜 後編(37254文字)

 



<参考> 

 

はつゆきさくら (1) (カドカワコミックス・エース)

電撃HIME はつゆきさくら 玉樹桜 抱き枕カバー
電撃HIME はつゆきさくら 玉樹桜 抱き枕カバー