猫箱ただひとつ

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あずま夜 感想(25326文字)

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「先輩こそ、何しているんですか」

 

 


▼ あとこれは「はつゆきさくら」の考察記事です。

『はつゆきさくら』_初雪が春へ至るためには何が必要だったのか? 死者は何をもって生者へと復活できるのかを考えてみた(21461文字)  


 

 

 

 

立派になれると思うから

 


「なんなんだろうなぁ。てめぇもそいつも、特別立派な奴とは思えないが、無遠慮に人に注文つける図々しさは、どこからきてるんだろうな」

 

「いや、なんででしょうね。私も別に、誰にでもちゃんとしろとか言うわけじゃないですが……」

 

「それは、先輩が立派になれる人だと、思えるからかもしれません」

 

「なに?」

 

「でもいろんな事情でそれが阻害されていて……なかなかそうなれなくて、見てるこっちがはがゆくて」

 

「だから、応援したくなるのかもしれませんね」

 

―――あずま、初雪

 

 

うんわかる。期待している人には、ついつい「がんばれ」といった余計な一言を言ってしまいがちになる。

 

それは立派になれるから……か。ランもあずまも、桜も、希も、綾も、みんなみんな誰かを応援している。初雪を応援しているのか。

 

 


「ただ、私は……」

 

「私はなれなかったですから」

 

―――あずま

 

 

そうなんだろうか……あずまだって今なお頑張ってるし、立派ではないなんてことは無いと思うんだが。

 

 

 

 

だもん

 


まぁ、俺の都合で引っ張ってきたからな。

 

久しぶりにこの店のデザートを口にして、俺も少しサービスしてやろうと思った。あずまの喜びそうな話題……。

 

「おい」

 

「はい?」

 

「最近セックスしてるか」

「ぶ―――」

 

「ななななななな、何を言い出すんですか、ああんたはっ。わた、私は、そんなこと―――」

 

~~~

 

「処女だもんっ」

 

―――あずま、初雪

 

 

初雪の会話のセンスがあまりにもヒドイ。さらにこの子、別段この質問がおかしいとも思っていないのがある意味すごいというかなんというかw

 

だもん♪ と だよもん。っていう語尾はいちいち可愛い。

 

 

 

頼み事と断れない心境

 


「はぁ……そうですか」 

「まぁ……無理ですよね。私から、謝っておきます」

 

「……」 

「なんでてめぇが謝るんだ」

 

「え? それは、まぁ。人付き合いって、そういうものですし」

 

「……めんどくせぇな」

「ち……」

 

「??」

 

「まぁ、てめぇの頼みだから、会うだけは会ってやってもいい」

 

「な、なんですか、私の頼みだからって。変なこと言わないでください。いつから私が、先輩にそんな影響力を持つようになったんですか」

 

「影響力っつーか」

 

「借りはあると思ってるよ。妙な勘違いがあったり……」

 

―――あずま、初雪

 

 

へー……、ほー……、はー。と思った。

 

いつもの初雪なら、「謝ったおきますね」「ああそうしろ」で済むものなのに、あずまに報いるその気持ちはいいなーと。

 

あずまと二人で踊ったアイスダンスの予選。あのときはあずまとの関係を拒み、どうでもいいと嘯いていたのに、どうしてあずまを気にかけるようになったんだろうか。

 

……なんだかんだずっとつき合ってくれるものね。パフェとかいろいろ。

 

気持ちを共有する時間が長いと、心を開くものか。そうだよね。

 

 

 

 

初雪節

  


「てめぇの、兄の記憶なんて重ねられても、迷惑だって言ってんだよ」

 

「迷惑……」

 

「きもい」

 

「ききききもい!?」

 

「ギリギリ」

 

―――初雪、ミク

 

 しかし初対面であるにも関わらず、ここまでガシガシ他人に悪態をつけるのはある意味羨ましい。 

初雪のこういった「倫理を超えて」という行動は、失うものが極端に少ないからなのかもしれない。

 

もうすでに、学校でのクラスメイトに関わりは薄く、それ以外の場所でも初雪は誰かと深く関わりあっているわけじゃない。

 

綾とも思い出を断絶してしまったし、部下なのか先導者なのか分からないゴースト達でさえ、初雪にとって大切なものでもなんでもない。

 

失って痛むものではない……。初雪はもう既に大切なものをこれでもかと失っているからか……。

 

何かを失うことがない/失うものが極端にない状態だと、こういった誰かに嫌われるリスク、行動ゆえの失敗のリスクなんてものは気にならなくなってしまうものなのかもしれない。

 

 

 

 

反魂香とミクと倒れている玉樹桜

 


「お前、反魂香をつけていたことがあるな。一体、何を企んで俺に近づいたっ」

 

「はんご? い、いや……っ。痛いよ。おにーちゃん」

 

「いいから教えろっ」

 

(やばい。メロメロにしすぎた)

 

「はじまった!」

「止めましょうって。玉樹先輩」

 

―――初雪、ミク、あずま 


この三人の想いの散り散り具合が笑えてきて仕方がない。とそうじゃなかった。

反魂香?……ね。 ミクもあのインチキ占い師(宮棟)から、反魂香を買ったんだろうか。でもいったい何を蘇らせていたんだろう?

 

もしかしてミクが大好きなお姉ちゃんはもう既に幽霊だったとか? ふむ。

 

―――街中に反魂香を焚く。

 

それは宮棟一派の計画のためである。ゴーストプリンセスを穏便に消滅させるために。

 

しかし実際問題として、反魂香を街中に"焚く" というのはどういうことだろう。言葉のニュアンスからして、火をつけて煙をたくイメージがあるがそうではないんだろう。

 

霊的な、ゴースト的な意味での "焚く" 。あずまはシールだったか、それをふとももに貼っつけていた。匂いを含有しているアイテムとして、売りさばいている。あとは綾のときのように、「死者と会える」という触れ込みで売っているのか。

 

建造物や土地に反魂香を焚くのではなく、「人間」を媒介にさせて、反魂香を焚く。

 

なにか理由でもあるんだろうか。個人的には、土地や建造物に匂いを付着させる提案でも十分「街中に反魂香を焚いている」状態といってもいい。

 

 

 

玉樹の失神。サクヤの助言

 


「ゴーストが、いた」

「あれは……危険だわ」

~~~

 

「あずま夜。彼女に関わるなら、用心した方がいい。かなり、危ういものが彼女の近くにいる」

 

「それに彼女自信も、少し、様子がおかしい。深入りするなら、慎重にやりなさい

 

―――サクヤ

 

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へぇ……珍しい、サクヤが助言をするなんて。いやサクヤの何を知っているのかと言われれば何も知らないと言うしか無い程にこの子は謎的存在ではあるが。

 

でも、初雪に助言をする。それはなんというか……サクヤは初雪を敵視しているわけではないのか……ふむふむ。

 

この助言は、サクヤが自分の役目を遂行させるため、円滑にするために言ったものではない、と思う。少し気にかかった、ちょっと心配だよねみたいな心配りを感じる。

 

心配と心配り(こころくばり)って、字まんまなんだね、今気づいた。

 

 

 


「なんでてめぇに、そんな指図されないといけないんだ」

「そもそも俺は、別に奴に進んで関わるつもりなんてない」

 

 

 


「ただ、同時に、あなたには分かるかもしれない」

「聞けよ」

「分かるかも知れない」

 

「ランという少女の正体が」

 

~~~

 

あなたは私を討ち、復讐を果たせば彼女の魂がよみがえるなどと考えているらしいけど、それはとんでもない勘違い

 

「魂は奪ったり戻したり出来るようなものじゃないわ」

 

「あなたがランと呼んでいた少女もまた、魂を失ったのではなく、あるべき姿に戻ったというだけ」

 

―――サクヤ、はつゆき

 

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サクヤは……サクヤはなんだろう。この子は一体なにを考えているんだろう。

 

なんかこれじゃ、初雪をほんとうに心配しているみたいじゃないか。ランのことに気づかせるための促しの言葉なんて、本来不必要なんじゃないか? 

サクヤの役目(=ゴーストプリンセスを浄化)に関していえば、初雪にここまで関わる必要なんてない。

  

ランの本当の正体(=生霊)だったことを、あ・え・て初雪に言わないのは、言っても信じてくれないからだろうと踏んでいるんだろう。

 

サクヤの口から「ランは生きている」「あなたがランだと思っていたものは幽霊ではなく生霊」と言われてハイソウデスカなんて初雪は思わないだろうね。

 

だから、初雪が「自分自信で気づく」ことを促しているのか。

 

 

 

 

あずまへの復讐

 


「あずまちゃんと仲が良さそうだから、私がちょちょいと誘惑してー。そしたら、あずまちゃんが泣いたりするかなぁって思っただけ」

「そしたら、予想外にいかれててびっくりしたわ。類は友を呼ぶってやつだよね」

 

~~~

 

「私と仲が良さそうだから、邪魔? なんでそんなこと、するの」

 

「なんでって」

 

「復讐」

 

―――ミク、あずま

 

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復讐……か。

 

初雪は知るんだろう、自分と同じ存在がこの世界にはいっぱいることに。あずまを憎むミクしかり、この街のすべてを憎むあずましかり。

 

自分が抱いている気持ち、自分が行なっていることって、「目で直接見ないと」分からないものなんだよね。

 

例えば、初雪が行なっている復讐も、他人が、親しい誰かが行なっていることを見ると「ああああいうことを俺はしているんだな」と体感覚で実感できるというか。そんな感じ。

 

自分を外世界と比較してはじめて、「本質」を知るみたいな。「鏡」として自己を見ることの大切さ……ね。

 

 


「私が何って?」

 

「え?」

 

「私がしたことを教えてくれるんだよね」

 

「あれ、なんか、あなた……」

 

「聞きたいなぁ」

 

「ひ―――」

 

―――あずま、ミク

 

 

あずま自身も言っているが、根本的にはじめじめした性格らしい。根暗……とは違うのかな。いや根暗なのかも。

 

そういった暗さを感じさせないくらい、高校では猫をかぶっているのだが、誰かを憎いと思ったときには、滲んでしまうものなんだろう。ちょっと昔のあずまに、戻ってしまう……か。

 

 

 

 

玉樹桜とあずま夜の仲の良さ

 


「あずまちゃんは、なんか私に優しくしてくれたし。プレゼントのお返しとか、すごい可愛いのくれたし」

 

―――桜

 

 なんかお二人さん仲良しだよね。意外というわけじゃないけど、そういった様子がぜんぜん無かったから、ほうーと。

 

 

 

 

 

さりげなく失礼なこと、でもほっこり

 


「河野君なら、出来ると思うよ。河野君、空気は読めないけど、人の弱いところはちゃんと分かってると思うから」

 

―――桜

さりげなくひどい!w でも最後の「人弱いところ分かってるよね河野君って」って言われると、そんな言い方されると例えそうじゃなくてもそう振る舞ってしまうよねと。

 

期待って重い。

 

 

 

 

憎いよ。憎くてたまらない

 


「ゴーストを、呼び出したいの」

 

―――ナイトメア

 


やめろやめろやめろやめろ。やっと出来る復讐なんだ。このために、滑ろうとしているんだっ」

 

―――ナイトメア

 

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ゴーストチャイルドを呼び出して、憎い連中を酷い目にあわせる。憎いっていう気持ちの矛先を、他者に向けているあずま。

 

"痛みは正しく循環しなければならない"

 

やっぱり、この言葉は、誰かが誰かの痛みを受け止めてあげくちゃいけないってことか。その「痛みを受け止める」というのは、相手の気持ちを大事にしたり、理解してあげたりそういうものだと思う。

 
あとメアが言うこの言葉。

「やっと出来る復讐なんだ。このために、滑ろうとしているんだっ」

これは、そうか初雪と本当に一緒なんだな。初雪が望んでいることと、復讐は本来関係ない。ランを取り戻すことと、佐々木議員を殺すことは繋がっていない。けれど、「関係している」と思い込んでしまっている。

これはあずまも一緒なんじゃないだろうか。

あずまが「呪いなんて関係ない、立派になった自分を大会でみせてやりたい、そしてこの街を気持ちよく去りたい」という願いも、復讐なんて必要ないはずなんだ。

街のやつらに、自分に暴言を言ってきた連中を酷い目にあわせたところで、あずまの願いは "叶うわけじゃない" 。

 

 

 


「美しい……」

 

「……」

 

「そうなりたかった」

 

「けど、それを許してくれなかったから」

「だから、私はこうやって復讐するしかないんだ」

 

「誰に……」

 

「この街の奴らだよ」

 

―――初雪、ナイトメア

 

 

なにも悪いことをしていないのに「いいきみだ」「いいざまだ」と言われ続けたあずま夜。理不尽な暴言、不理解な嘲笑、いろいろなものを壊されてきた彼女にとって、憎むべき矛先は絶対的な個人ではなく、「街のやつら」という概念なんだろう。

 

誰か、ではなく、誰も彼もが憎い。

 

 


「私、やっぱりこの街を憎んでいるんだ」

 

「復讐がしたかったんだ……」

 

 あずまは、初雪以上に「憎しみの感情」を有している人間だと言ってもいい。初雪の復讐は結局のところ、ゴースト達によって範囲を拡大されてしまったものだし、初雪の復讐の気持ちはあずまと同じ「理不尽な出来事」から起因するように思える。

 

そして、あずまも初雪も「復讐」をしたい、というより、復讐をした先に進みたいという願望の持ち主。

 

あずまは、ちゃんと大会にでて、悔いなくこの街とお別れしたい。

初雪は、最愛なるランを取り戻したい。

 

 

 


「でも、あそこまでされる理由なんて、分かりません」

 

「出場を取りやめた方がいいって薦める人もいたんです」

 

「それどころか、指をさして、糾弾したんです」

 

「いいざまだって」

 

―――あずま

 


「また、何もしてないのに、ひどいこと言われるんだって思うと……スケートなんて、もうやりたくなかった」

 

 

 


「私、この春に、引っ越すんです」

 

「なんだかこの街の思い出は、辛いことばかりだった気がします。私にとっても……」

 

「やっぱりそれって悔しくて」

 

 

 


「私、証明したいんです。

私は何も悪くなかった。誰も呪ってないし、呪われてなんかいない

 

「もう一度、大勢の前でちゃんと演技をして……自分はこんな立派に滑れるんだって、見せてやりたいんです」

 

「家族にも……。貧しい仲で、私にスケートをさせてくれた、パパやママにも」

 

「そうして、この街を去りたいんです」

 

―――あずま

 

 

 

そうか、あずまも「立派」になりたいのか……。立派、かー。

 

立派とは美しい生き方だと思っていたけれど、どうも違う。

 

おそらく「立派だと思える」ことが大事なんだ。立派だと納得できること。自分が歩んできたこの人生は、立派だったと、満足できると、美しかったとそう"納得"することができるかが重要なのか。

 

 


「私は誰も呪ったりなんかしていない。だから、誰に遠慮することなく、大会に出ていいんです」

 

 

 

 

 

 

細剣のでどころ

 


闇の中で鈍く光る、細剣を取り出す。

 

初雪はなぜか「細剣」を持っている。手にしていた。宮棟からもらったのかな? それとも一年前の綾のときと同じ剣なんだろうか。あれ以来ずっと所有していたとしても不思議じゃないが。

 

 

 

 

宮棟は物騒だよね

 


「簡単ですよ」

「本体を殺せばいいんです」

 

「要するに、本人にやめさせればいいってことかよ。ゴーストを呼ぶのを」

 

「そうです。殺してやめさせればいいのです

 

―――宮棟、初雪

 

宮棟の言葉ひとつひとつに、勘ぐってしまう。

初雪はあずまに取りついている幽霊・ナイトメアを浄化させるために、宮棟に相談をもちかける。その答えが、「本人を殺せばいいんです」というもの。

 

これは、あずまに言っているんじゃないなと。ランに本体がいることをうそぶいているのか……。

 

 

  

 

行く手を阻むもの。障害だらけのこの現世

 

 


「踏みだそうとしていたのに」

 

「私は、まだ、恨まれてるんです。何もしてないのに、数年たっても、あんなに強く、恨まれてる」

 

 

だったら、私も恨まないとダメだよねぇ!!

 

 

「奴らが、人を呪わば穴2つと言うのなら―――」

 

私だって、奴らを呪ってやらないとだめだよね!!

 

―――あずま、ナイトメア

 

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そうだね、その通りだ。理不尽な出来事は許せない。罪をかぶる道理も、指をさされるいわれもない。

 

悪いことなんてなにもしてないのに、他者の聖域を平気な顔で、笑いながら侵してくるくるやつがいる。だったらそうだったら、こっちもやり返さないといけない―――あまりにも正しすぎる。

 

あずまが言っていることは、間違っていない。正しいくらいに正しすぎる。でも……なんだろうこの違和感は。 

 

「Prologue」で復讐を果たした初雪を見ると、復讐は「自己を焼きつくす行為」なのかもなと思った。

 

自分を焼いて、皮膚を燃やして、心を爛れさせる。そういうものなのかもしれないと。

 

良いとか悪いとかじゃない。復讐という行為は、自傷行為に近いものなんだろう。復讐を果たして報われることだってあるだろう。けれど、振り返ってみれば、心はもうずたぼろなんだ。

 

泣きたくても泣けない、笑いたくても笑えない。そんな心象領域に落ちるかもしれない。

 

 

 

 

復讐には復讐を

 

 


「なんで、なんでなんで。ほっといてよっ。メアのことなんて、ほっといてよ」

 

「てめぇのおせっかいが、ほんとうにうざかった」

 

だから、復讐してやりたくなるよ、あずま

 

 

「よくもしりもしねぇ奴に、あれやこれやと、正論らしきことを押し付けられるのは、なんてうっとうしいんだろうなぁ、あずま」

 

―――メア、初雪

 

 

復讐はおそらく正しいよ。私はなんども言っているけど、とても間違っていることなんて思えない。

 

憎いという感情を、誰かを殴りたいという想いを、それが受けた分の傷と等しいのならば是と出来るよ。

 


「にくい、にくいよ。こんなの、憎い」

 

 

でも、復讐はぐるぐるぐると回り続けるものなんだろう。ぐるぐるぐると。

 

安っぽい言葉だが、復讐の連鎖はうんちゃらーとある。復讐は止められない。だってそれは感情で動いているものだから。でも復讐をすることは、復讐をよび、最後には自己を焼きつくす……。

 

……。……。

…………。そうか、これは「復讐」を最終目的としているから起ることなのかな……どうだろうか。

 

 


「それでずっと私のことを恨んでるって……。おねーちゃんは怪我で選手生命が絶たれたのに、あなたがまた活躍するなんて許せないって」

 

「私、説明したけど、話しなんて聞いてくれなくて」

 

何も終わってなかった

 

「過去が消えるわけがないですよね」

 

―――あずま

 

 そうかみんな「幽霊」なのか。

生者ではなく、亡者と成り果ててしまった人たち。ミクもあずまも初雪も。過去に囚われている、復讐に縛り付けられている。春には至れない存在……か。

だから「バニッシュ」という討滅が必要なんだろう。

 

 

 

 

失ったもの、そして春を目指すこと

 


何か名状しがたい、怒りが、湧いてくるのが分かった。この少女のためだけじゃない、もっと、いろんなものへの怒り。

 

「なんでかまうのかって、聞いたな」

 

「俺も不思議だったよ。なんでこんな面倒なことをしているのか」

 

「お前と俺は、似ている」

 

失われたものを求めて、復讐しようとあがいている

 

―――初雪、メア

 

 あずまと初雪を見ていると、願っていることがあって。でも割り切れない感情があって、そのせいで願いを叶えるための行動がおかしなものとなっている感じがする。

(何回もこのことは繰り返し言っているけれども)


 


「俺は、ある冬に、大事なものを失った」

 

「あの子だけが、俺にとって唯一の家族で、唯一……俺に生きる意味を与えてくれた

 

「あいつは、ただあそこにいて……ずっと俺の将来だけを願ってくれた。それだけの存在だった」

 

「なぜ、討たなければならない」

 

 

 


「それで、どこに行けば良いのか分からなくなった。心の仲にある、優しい風景に戻りたいと願うことだけが、唯一の希望だった」

 

「そのために、復讐をしなければならないと思いながら」

 

「でも知っているんだ。……本当は、知っている」

 

「そんな場所は、本当はどこにもない。あるとしたら、俺の心の中だけだって」

 

多分、それには終わりがないんだって、なんとなく分かっているんだ

 

「俺は……どうしたって、たどりつけないものを求めているんだ」

 

―――初雪

 


でも、ちゃんと、向き合うべきだったんだろうか。ランと。

 

「探し続けるしかないんだ」

 

「消えてしまったなんて、認めることは出来なくて」

 

人形に魂を戻すなんて。

 

「例え狂っていると言われても、探し続けるしかない」

 

「だから俺は……やがて、この世ならざる場所まで、踏み込んで、彼女を……彼女たちを探しながら」

「ゴーストになっていた」

 

「ゴーストの王様に、なっていた」

 

 なにかが "行き過ぎる"と人は狂うのかもしれない。

 

 

 

 


「人ではない何かになって、人ってものに……社会ってものにケンカを売って、そうして……」

 

「俺にも、春が来るのかも知れないって……」

 

「思っていたのかも知れない」

 

「叫び続けていれば、春に辿り着けるって、思っていたのかもしれない」

 

初雪はことあるごとに「最後の冬だ」とか、「もう俺は春に至れなくていい」と言う。

 

でも、初雪がいちばん望んでいるのは、春に到達することなんだと思う。「春」とは、ゴールであり、立派であることなんじゃないか。

 

「春」と「卒業」はおそらく同じものだと思う。ゴールで立派になった象徴としてそこに存在する。初雪が心の中に思い描いている、「やさしい風景」と言ってもいいのかもしれない。

 

 

 


「そうして、やがてこの街を去る」

 

「復讐だけを残して」

 

「だけど、お前の願いを叶えてやることができたら」

 

 

「俺も、1つくらいこの街に、何か……綺麗な足跡を残せるような気がするんだ」

 

「だから……」

 

「だから、お前と一緒にいたいと、言ってもいいんだろうか」

 

「はい」

 

―――初雪、あずま

 

 今の初雪にとって「復讐=ランを取り戻すこと」になっている。ランとの約束「卒業すること」と「立派になる」ことは後回しになってしまっている。

 

叫び続けていれば、春に至れるというのは、

復讐を果たしたら、立派になれることと同じなんじゃないだろうか。

 

それは到底叶わない夢物語だろうけれど。初雪はそう思っていたのかもしれない。だからこそ、「Prologue編」でこの現世で報われないまま、観念の世界ですべてを自分を救済する形で幕を閉じてしまう。

 

 

 


「バニッシュだ」

 

―――初雪

このとき、初雪はなにをバニッシュしたのか? ナイトメアは消えていないし、あずまだってぴんぴんしている。

 

となると、このバニッシュは、初雪自身をバニッシュしたのではないだろうか。

 

初雪はいわば復讐の塊だった。生者なんかではなく亡者であり、幽霊だった。バニッシュとは、幽霊を討つことに他ならない。

 

初雪は自分自身である、幽霊(=復讐する気持ち)を討滅したんじゃないかと見ている。

 

あずまの物語では、はつゆきはとうとう佐々木議員を殺すという復讐を起こさなかったわけなので。(たしかそうだったと思う)

 

 

 

 

 

桜直伝のバニーがあずまを襲う

 


「私もバニーなんちゃって」

「私、バニされちゃった、感じですか?」

「わ、私も先輩を、バニしたいです」

 

 

こういうバカな会話、嫌いじゃない////

 

 


「ちゅちゅちゅ、先輩の唇って、ううん。ストロベリーミルクの味! あれれ? 甘えてるのは、私の唇でした。ちゅ」

 

「なにこれ、馬鹿! 馬鹿! 馬鹿ぁぁぁぁ!!」

 

―――あずま

 

 

騒ぎながらものりのりなあずま。にやにや

 

 


「時には、馬鹿になるのも大切なんですよねっ」

―――あずま

 

 

馬鹿になる(=羞恥や人の目線を気にしない)ってことは、大切だよね。思い切りの良さというか、なんだろうか。

 

 

 

 

 

オーナーの正体

 


「少々、拘り過ぎではないですか」

 

「あ……?」 

「その少女が、呪われている、誰かに反魂香を渡された。だから、あなたに何の関係があると?」

 

「……」

 

「あんまり未練を残すと、あとあとつらくなるだけですよ」

 

―――初雪、オーナー

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おそらくオーナーは、ランなんだろう。生霊としてではなく、ちゃんとした肉を持った彼女なんだろう。

 

やたら多い忠告・注意も、ランが心配していると見れば……納得な気がする。

 

 


「彼女はあなたを騙していました」

 

「あなたが会いたいと願うこと自体が、彼女の罪の証なのです。そうやってあなたをがんじがらめにしてしまった彼女の」

 

「追い求めるのはやめることです」

 

「あなたは、あなたが見つけた大切な人のために、この最後の冬を、生き抜いてください」

 

―――オーナー(おそらくラン)

 

ああ……。そうか初雪は「ランだけが大切な人」になっていると、復讐を果たしてしまって、そのまま焼け死んでしまうのか……。Prologueのように。

 

ランではなく、違う誰かを。違う大切な人を求めることで、初雪はある意味で救われるのか。

違う言い方をすると、「ランを忘れる」ことで初雪は春に至れると。

 

 

 

 

あずまがつけていた反魂香の出所

 


「あれはコーチが、ある人からの差し入れだって、くれたんです。私が香水集めてるの知ってましたからね」

 

「誰からだって、聞かなかったのかよ」

 

「聞きましたよ。でも、教えてくれなかったんですよ。あいまいに笑うぐらいで」

 

―――あずま、初雪

 

 

んー謎だ。コーチの「曖昧に笑うくらいで」ってどういう意味だ。


1、コーチは差出人を知っている。けれど、名前を言い出せない相手
2、とても奇怪な方法で与えられた差し入れゆえの、コーチの苦笑?


1……かな。コーチは知っているんだろう。というかコーチ自身があずまに対して、、、という可能性もあるかもしれない。

 

 

 

ストレスによって出てくるナイトメア

 


「あの子が呼ばなくたって、あの子がストレスを感じたとき、こうして勝手に生まれることが出来るの」

―――メア

 

あずまがストレスを感じたときに、生まれて出てくる……ね。

ナイトメアは生霊である。あずまの過去の霊である。当時のあずまを人間性を反映している存在。

当時あずまは、言われもない誹謗中傷に耐えかねて、本来のエキセントリックな自分を隠したという。これ以上あることないことを言われないように。

きっとそれは、あずまが抑圧していた「自分」なんだと思う。本当はちょっとずけずけ言ってしまう、わがままな自分。そして、暴言を吐いた連中に、理不尽な野次を飛ばしてきた連中に「憎い」「殺したい」と思っているあずまの心が、ナイトメアなんだろう。

ナイトメアは、あずまの「憎い」っていう気持ちの現れ。だとするなら……。

 

 

 

 

闇鍋のおそろしさ

 


あれが、河野の尻の感触……

 

「わ、私は何をしてたんだ」

 

「闇が本性をさらけだす、か」

 

―――竹田

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「あれが河野君の耳の穴の感触……」

 

「むほん! 私は何を触っていたんだっ」

 

「闇が本性をさらけだす、か」

 

―――桜

 

 


「河野にいっぱいいじられちゃったぜ……」

 

「は!」

 

「俺は、何を喜んでいるんだ」

 

「闇が本性をさらけだす、か」

 

―――久保

 

へんたいだー!!(以下画像略)

 

竹田が意外に(?)初雪に興味あるんだなーと分かった。へえ……。そうなんだ……ほうー。竹田なんかめっちゃ可愛いよね。ギャル系だけども憎めない感じである、まる。

 

 

 

 

痛みの循環

 

 


「その痛みは、俺が受け止めてやる」

 

「え?」

 

「そしてしかるべき相手に、返してやるさ」

 

「痛みはそうやって、正しく循環していくべきなんだ」

 

「お前とあずまの代わりに、俺が果たしてやる」

 

「復讐を」

 

―――初雪、夕陽 

 

初雪が言っているこの「復讐」は、今までの意味と違うなと、なんか思った。とくに理由はない。根拠なんてないけど、たぶん、「殺す」「仕返す」といったそういう意味ではないんだろうなと。


あずまと接してきて、初雪が抱いていた「ランを取り戻すためのの復讐」という気持ちも、だいぶ変わってきたと思う。"ズレ" に気づいてしまったというか。

ランを取り戻すための「願い」が、復讐という「手段」でなせるかどうかの疑いみたいな。

 

 

 

 

殺す殺す殺す殺す 誰のために?


「やっぱり、呪い続けるべきだった」

 

「殺す…。ころすころすころす」

 

「この街の人間が、憎い……っ」

 

 

誰のために、お前は憎んでいるんだ

 

―――初雪、メア

 

誰のために、それは自分の為に、家族の為に……?


「スケートをさせてくれた家族のことを思うと、悔してくたまらないと」

 

「そして、春に、この地を後にする家族のために、最後に、復活したいと、良い思い出を残したいって」

 

「……」

 

「家族に聞いてみろ。あなた達は、復讐を望んでいるかって」

 

「死者は口をきかないから、しばしば生者に取り付く」

 

本当はそんなもの、望んでいないのに、復讐を果たすことだけが、彼らのためだと、俺たちは思ってしまう

 

―――初雪、メア

復讐に大義名分なんてない。正義もない。「誰かの為に」なんてことを掲げても、突き詰めれば、それは「自分がそうしたいから」以上のものではない。

だから「復讐をするのは自分の為」と割りきってしまうのが一番いいのかもしれない。でもここで問題が発生する。


では復讐をして、自分の為にいかなることが起るのか? と。憎んで呪って殴って相手を殺した。復讐は終わった。では残ったものはなんだろう。終わったあとに、自分の今までの軌跡を振り返ってみてどう思うんだろうか。

たぶん空虚さしかないんだと思う。達成感はあるのかもしれない、でもそれはすぐに掠れていってしまう。手元に残るのは、伽藍な空間だろうか。

……。

 

それじゃまるで……意味がないみたいじゃないか……。復讐することに意味がないみたいじゃないか。

……「復讐」という感情の矛先を向けるのは、他者ではなくもしかして「自分」なのか? 自分に向けたほうがいいのか? あずまの最後しかり、初雪の終わりしかり、そんなふうに思えてくる。

―――復讐をするべきなのは、自分の気持ちにだと。

 

 

 


「やりきるんだ。あずま」

 

「その時こそ、見えてくるものもあるだろう」

 

にくくても、もっと別のものに殉じてみろ

 

「……」

 

―――初雪、メア

 

初雪もなんだかそんな事を言っていると、思うんだよね……。復讐(=街の連中を殺す)のではなく、アイスダンスをやりきれと。そこに意味を与えろと、殉じてみろよと。


そしてこの言葉は、初雪にも帰ってくる。"にくくても、別のものに殉じてみろ"

初雪が抱いている復讐という気持ちの、ちぐはぐ具合を認識するには、同種の人間と触れ合わないとダメだったのかもしれない…………いやそんなことないのかもしれないけれど、あずまは初雪に1つの気づきを与えてくれたと思う。

 

 

 

 

復活することと死者

 


「おにーちゃんは、当日は、来てくれないんでしょ」

 

「あぁ……」

 

「そのまま、どっか行っちゃうんでしょ」

 

「…………あぁ」

 

「俺は死者なんだ、あずま」

 

「お前と一緒には行けないよ」

 

お前は復活するんだから

 

 

―――初雪、メア

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「死者」と「復活」。

「復活」という言葉は、いったいどういう意味なんだろう?……。

辞書を開いてみた。

 


1 死んだものが生き返ること。よみがえること。蘇生(そせい)。

2 いったん廃止したものなどを再びもとの状態に戻すこと。また、消失したものが、再びもとの状態に戻ること。

 

死んだものが生き返ること……。死者が生者になること。じゃああずまは"死んで"いたのか。そして、復活できる存在だとも初雪は言う。


あずまが死んでいるとは、どういうことだ。彼女はもちろん幽霊ではない、れっきとした肉を持った人間である。しかし初雪が言っているのはそういうことじゃないんだろう。

何かに強く執着し固執し、未練たらたらでさまよっている存在のことを「死者」と呼んでいるんじゃないか?

じゃあ「生者」とは、生きるとはなんだろう? 春に至れる存在。……何回も繰り返し考えているけど、明確な言葉をいまだに見つけられない。

春に至れること、死者ではないこと。ゆえに生者であること―――。それはなんだろう。


………………。


ただ1ついえるのは、「初雪は復活した」からこそ、最後にはあずまの元へ帰ってきてくれたということ。

アイスダンスの大会から、消えてしまった初雪。彼は彼なりに、春に至れたからこそ、生者へと復活できたからこそ、あずまの隣にいるために戻ってきた。

またもや疑問。初雪はなぜ死者である自分と「一緒には行けないよ」とあずまに言ったのか。


これは難しくないのかもしれない。「死者から生者へと復活」することが「春に至れる」ことと同じだとする。そして、「冬のままい続ける」ことを「死者」だとする。

春と冬の間には、大きな壁があるのかもしれない。だから、春に至れない死者は、春に至れる生者と一緒にい続けることはできない

……いやなんか答えになってないな……。

保留です。

 

 

 

 

許さない

 


「許さないよ」

 

「ほう?」

 

「え。いや、河野君のことじゃなくて。あずまちゃんのこと、邪魔してる誰か。許さない」

 

「お前が許さなくても、誰も困らないからな」

 

許さない

 

―――初雪、桜

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うわーすごい難しい「概念」にぶち当たった気がする。

「復讐」という感情は、「許さない」という言葉に集約されるんだろう。許さないあいつをこの街を許さない。

でも「許さない」って、どういうことなんだろう? ゲシュタルト崩壊しそうな感じだけれど、"許 さ な い" って、なんだろう? (言っている意味分からないかもしれませんが、私もなにをいっているのかry)


んー……と、なんて言えばいいんだろう。


「許さない」っていう感情は、なにかをするわけじゃないんですよね。何かの行動に結びついている言葉ではない。

例えば、あいつを殺したいとかなら分かるんです。復讐という面でもとても納得できる。自分はこんなにも苦しい思いをしてきた、全部お前のせいだからだ。だったらお前も同じくらいの苦痛を味わうべきだろさあ死ね!殺す!

 

という感じに。

でも「許さない」は、なにも行動に直結していません。違う言い方をするなら、「そんなことは許容できない」ですかね。

 

「憎む」「怒る」一歩前の、感情がこの「許容できない/許せない」だと思うのです。


んー難しい。

 

 

 

 

 

すべての可能性を考慮しなさい。

 

 


「あのね。先生が会いたいって」

 

 


「あずまさんは、3年前、噂通りの行いをした。その償いをすることなく、今またリンクにあがろうとしている」

 

全ては、真実であるからこそ、力を持って……今、正当な報いとして彼女に降りかかっている。そうも、考えられない?

 

「怒ってるね。けど、怒るだけの真っ当な理由があるの?」

 

「あるよ」

 

「俺が……」

 

「あいつを……愛しているから

 

 

「……」

 

「そう」

 

「は?」

 

「……お前、なんで泣いているんだ」

 

「泣いてる? そう。私は泣いているの……」

 

 

「それは、私の役目が終わったから、かな」



―――サクヤ、初雪

 

桜は屋上に行ってほしい。先生が待っていると初雪に言う。

屋上に行ったら、そこにはサクヤがいた。フェンスに腰を掛けていたなんていうバランス感覚。もしかしたらお尻は痛くなっているのかもしれない()

そこでサクヤは言う。あずまの呪いは当然の報いだと、その可能性を考慮してみろと、じゃないと真実は見えないと。

私はサクヤって子は情に乏しく、少し冷めた女の子だという印象を持っていた。でも、彼女は彼女なりに大切だと思える人間もいるということなんだろう。

サクヤはあずま夜を気にしている。心配している。だからこそ、初雪に忠言を下す。その段取りまで組んだ。ここまでするってことは……あずまのこと好きなんだなーって思った。

+++


興味深いのが、初雪の「俺はあずまを愛しているから、そんな可能性は考えない」と言ったあとに、サクヤの目に涙が流れること。

サクヤはどうして涙を流したんだろう? 彼女がいうには「私の役目が終わったからかな……」とのこと。



初雪があずまを愛していること
サクヤの役目が終わったこと
だから、サクヤは泣いた

……どう関係してくるんだこれは。難しい。

1つの見方とするなら、サクヤは初雪を好きだった。だから好きな人が、自分ではない誰かを「愛している」なんて蜜言を口に出されるのは、とても悲しい出来事だった。

ということ。けれど「サクヤの役目が終わった」という点は、分からない……。

 

?!!? ちょっとまってよ。もしかしてサクヤの役目って、「桜の浄化」以外に「初雪をどうにかする」という件も含まれているのなら、いけるんじゃない?!

 

「初雪をどうにかする」というのは、ゴーストチャイルドである彼を浄化することに他ならない(と思う)。そこでここの「浄化」とは 殺す か それ以外の方法と分けられるはず。

もし初雪個人に、愛着を持っていたのなら、殺さない方法を取りたいと思うんじゃないだろうか。

つまり、初雪が抱いている「復讐」という気持ちをどうにかしてあげたいと、思うんじゃないだろうか。

初雪の抱えている問題は、復讐という手段をもって、ランを取り戻そうとしていること。願い事を叶えるための手段が、おそろしく間違っていることに尽きる。

そしてもう1つ。初雪がランを取り戻そうとすること自体が、初雪自信を復讐の亡者として駆り立たせているということ。ランという存在への執着を捨てない限り、初雪はこの現世でほぼ確実に報われない最期を迎える(参照:Prologue編)

整理しよう。


初雪が心に抱えている問題とは、

1、「願い」と「手段」が噛み合っていないこと。矛盾した構図はどこまでも彼の心を満たせない状況になっている。

 

2、ランという少女を思い続けるほど、固執するほどに、「復讐」しなければと思い込んでしまう。ランへの執着をなくすことで、初雪は復讐をしなくなる。


つまり、「初雪がラン以上の【大切な人】を見つけることが出来れば」、初雪は春へと至れるのだ。

そして冒頭の話しに戻る。サクヤは初雪の問題をどうにかしたかった、それが彼女の役目の1つだった。なぜそう思ったのか? 多かれ少なかれ初雪に惹かれていたからだ。

けれど、初雪はあずま夜という女の子を得ることで、すでに自身の問題にケリをつけようとしていた。

それを感じ取ったサクヤは「私の役目が終わったからかもね」と涙をする……。

 

どうだろう、これは通りそうかなと思う。

 

 

 

 

 

サクヤはなにを言っているんだ?……

 


「ねぇ、河野初雪。たわむれに、こんなことを私は考える」

 

「全ては、あずま夜という少女の祈りから、生まれたのかも知れない」

 

「彼女はこの冬に、ゴーストの王を呼び寄せる魔法陣を、ずっとあのリンクに描こうとしていた」

 

「そうして私とあなたがこの世に呼び出された」

「そうして……私もあなたも、彼女を愛した」

「彼女は魂を、肉体を差し出してくれた」

―――サクヤ

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「ならば私達は、あの子の願いを叶えなければならない」

 


「あの子の願いはなに? 復讐? それとも……」

 

?……???? へ? サクヤは何言っているんだろうか。

あずま夜によって、「初雪」と「サクヤ」がこの世に呼び出された。
そしてサクヤも初雪もあずまを愛した。
あずまは、魂と肉体を差し出してくれた? ……サクヤに?

あずまの祈りというのは、ゴーストダンスによってゴーストチャイルドを呼んで、街の連中に復讐したいっていう憎しみの行為だよね。

それがなぜ、サクヤと初雪を呼び出すんだ? というかサクヤと初雪に関係なんてあるの?

……これはサクヤからのメッセージなのかもしれない。そう思った。実際に起きた事実を言っているのではなく、この言葉を通して初雪になにか伝えたいんじゃないか?


私とあなたは「似ている」とか「同種の存在」だとか、そういった意味に聞こえる。

初雪は人の身でありながら、100のゴーストを内に抱えるゴーストチャイルド。霊障をもって現実に干渉する死者。復讐にとらわれた亡者である。

反対にサクヤといえば、……彼女は以前不明な存在だが、考えられるべき点はある。



1、卓越した剣さばき(バニッシュ)。
2、兎に変身できることと霊(桜)と契約できたこと(人間ではない可能性)
3、宮棟と同じく、なんらかのゴースト退治の組織に加入してそうだということ。
4、兎から人型への顕現時の衣装(白いドレス)

 

まだあると思うけど、今ぱっと思いついたこれで考えてみる。

ゴーストを退治し、街の平和を守っていると思われるサクヤ達の組織。おそらくサクヤはそこに属しながら、今まで何百というゴーストを退治してきたのかもしれない。卓越した剣さばきは、経験を感じさせる。

しかし、もしかしたら彼女はこの街に ぱっと 呼び出された可能性も否めない。つまり、現世にて登場したのはこの年この月この期間のみである。剣さばきは、元々の能力として最初から卓越していたと。

そして、彼女が人ではない可能性について。兎に変身できたり、桜というゴーストプリンセスと契約できる事実は、超常的な存在を匂わせる。


それはあたかもゴーストのように。サクヤの起源は、ゴーストという可能性もある。

そして兎から人への顕現時「白装束を纏っている」。たしか誰かが言ったいた気がする。白いドレスは、ゴーストの証だと(桜だっけかな?)

ここから飛躍してみる。サクヤはゴーストである、そして桜に関わり、初雪に関わっている。

もしかすると……ホテルほっしぇんぷろっつのパーティーの自己の被害者なのかもしれない。被害者であり死者だと。そこで疑問がわく、サクヤには実体がある、この世界に干渉できるだけの肉体を持っている。それはどこから調達したのか?

 

ヒントは―――宮棟と反魂香だろうか。宮棟の組織が、反魂香を用いて、さらになんらかの手段を用いて、パーティーの被害者であるサクヤを現世に復活させたとするなら?

そのサクヤをもって、ゴーストプリンセスの交渉をさせたり、ゴーストプリンスである初雪に関わらせていたとするならどうだろう。

もしくはこう言えるかもしれない。それは「サクヤが望んだこと」かもしれないと。

宮棟(一派)は、ゴーストであったサクヤの願いを叶えていたという見方もできる。


 

またサクヤはこういう。自分のルーツなど曖昧なものだと。

 


「言ってる意味が分からないな。そもそも、お前は何者なんだ、ゴーストなのか、神さまなのか」

 

「物事のはじまりというのは、瀑としていて、そこに実体なんて無いのかも知れない」

「あなたが、自分のルーツを求めようとしたら、同じ命題に突き当たることでしょう」

 

―――サクヤ、初雪

 


なんだか煙に巻いたような言い方である。けれど、サクヤ自身自分でも分からないとしたらどうだろう。

自分でさえ、自分のことが分からない。記憶があやふやだったり、自分が何者であるかを証してくれるものが存在しないのだとしたら


こういうふうな言い方をしてしまうものなんじゃないか。

 

 

 

 

 

桜に導かれる

 

 


「先輩も私も、結局そういう時間を過ごしてしまったんですよ」

 

「きっと玉樹先輩が……」

 

「あ? なんでここで玉樹が出てくるんだ」

「なんとなくです」

 

「もちろん、あの人は何の計算もしてないと思いますけど。全部を良い方に、導いてくれていた気がするんです」

 

「名前の通り、桜みたいな人……。春に、導いてくれるような」

―――あずま、初雪


もしこの年この冬に「玉樹桜」が初雪の前に現れてなかったどうなっていただろう?

あずま、綾、希、シロクマ。妻。白咲ヤンキース


桜に出会ってなかったとしても、この4人とはなんだかんだ一緒にいただろう。あずまとは反魂香絡み、綾は喫茶店の従業員、希は来栖の命令にて邂逅、白咲ヤンキースは希の人情にあてられ―――縁を結んでいただろう。(妻はもとより)

そう考えると、桜がいたから、なにかが起こった。ということはないように思える。玉樹桜がいてもいなくても、初雪の周りにとくだんの変化をもたらしたわけじゃないと。

それは「Prologue」でも明らかだった。桜がいたところで、初雪は誰も愛さず、1人で寂しく火炎に包まれていってしまった。

しかし、どうも「サクヤ」という少女が干渉してくると、違う結末に行きやすいような気がする。

あずまの件しかり。またオーラスなる「Graduation」のときもサクヤは初雪のために奔走していた。

桜はたしかに春に連れていってくれる力を持っているのかもしれない。でもそれは本当に微々たるものなのではないか? どちらかというと、サクヤが干渉することで初雪の気持ちを動かいているようにも見える。

サクヤと桜。二人は1人で二人であり、1人で二人なのだとしたら……。

サクヤと桜が二人とも、初雪をどうにかしたい!って思えれば、彼の復讐によって幕を閉じることはなくなるかもしれない。

(まだ保留)

 

 

 

 

復讐よりも大事なこと


「パレードに混じって、あの男に接近します。そうして……」

 

「待った」

 

「少し待っていて欲しい」

 

「ゴーストチャイルド?」

 

「―――っ」

 

「どこへ、行かれるのですか」

 

仇は目の前に、いるのですよ!!ゴーストチャイルド!!

 

―――初雪、ゴースト

 

初雪は、あの「バニッシュ」の時から復讐への価値が無くなってきたように思える。今までだったらぶち殺す相手が、目の前にいたら流のままに剣を振り下ろしただろう。

でも、そういう状況になっても初雪にしてみれば、もうどうでもいいことなんだろう。

 


「行きなさい」

 

「あの子は、私にとっても大切な後輩だから。助けてあげて」

 

「ううん。私を慕ってくれていたわけじゃないけど」

 

「それでも……やっぱり、可愛い後輩だから」

 

―――サクヤ

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初雪があずまの元へかけ出した直後、現れるサクヤ。

彼女の言い方からしてみれば、初雪を追うゴーストの群衆を蹴散らしていたのかもしれない。

~~~

大切な後輩……ね。

あずまが慕っていたのは、もちろん桜のほうだろう。サクヤに対しなんらかのコミュニケーションをあずまは取っていたとは考えづらい。兎であるサクヤはなでなでされるくらいがオチだろう。

けれども、サクヤはあずまを「可愛い/大切な後輩」だと言う。


なんでだろう……。んーなんだかね、「桜のことを慕っていたあずま」だから好意を持っているのとは違う気がする。

 


「彼女は魂を、肉体を差し出してくれた」

「ならば私達は、あの子の願いを叶えなければならない」

―――サクヤ

 

ちょっと前の会話のこれが関係してくるはず。

あずまがゴーストダンスによって、サクヤを呼び出した。あずまはサクヤに魂と肉をくれた。だからこそサクヤは彼女を愛しているし、彼女の願いを叶えたいと思っている。

私は、あれは初雪にたいする隠喩によるメッセージだと思っていた。たしかにそういった面もあるのかもしれない。

でも、もしこれが本当だとしたら? するとサクヤが「あずまに好意を持っている」理由も頷ける。


本当だと仮定しよう。時系列を書いてみる


あずまはこの冬にスケートリンクに、魔法陣を描こうとしていた。
それによってサクヤが呼び出された。肉と魂を得て実体できた。

ここで疑問がでる。でもサクヤって2年前から存在していたよね? ランを殺したとき、その際初雪は彼女の姿を観ていたこと。サクヤがゴーストプリンセスである桜と交渉をしていたこと……。

これはどう見ればいいんだ?……。


やっぱりなんか違うな、サクヤの言葉はメタファーなんだろう。


あずまによって「呼び出された」「肉と魂を差し出された」、ゆえに「サクヤがあずまを愛す」。これを結び付けられる事柄は一体なんだろう。


街には反魂香が大量に焚かれている。すべてはゴーストプリンセスをお迎えするために。その計画の一環として、宮棟は反魂香を一般人に売りつけていた。さばいてさばいて売りさばいていた。

……。

この冬(なのかな?)、あずまはコーチから香水だと称された反魂香を手にする。何気なく使う、なんとなくメアちゃんが出てきた。なんかメアは怒っている。メアはいう「復讐しなきゃ」と。

そして、あずまはゴーストダンスによって、リンクに魔法陣を描く。それはゴーストチャイルドを呼ぶため。復讐をするために。


……。わからない。

あずまが描いた魔法陣によって、「なにか」が起きたのなら、分かる。でも結局あれは、なにも起こしてはいない。あずまが大会でカエルの大合唱をさせたくらいか?……。

違う見方をしてみよう。あずまのゴーストダンスは結果的になにも起こせなかった。ただその過程により「初雪が呼び出され」、あずまと出逢うことになる。

初雪は反魂香を追う立場であったから、あずまによって「呼び出された」という言葉はしっくりくる。しかしここでも、「サクヤ」は関係してこない。

あずまが描いた復讐の魔法陣、それがどうやってサクヤという存在に繋がる?……。

 

 

 

復讐を是とするなら、復讐され返すこともまた是としなくてはいけないか

 

 


「いい加減にしろよ、ガキめ。呪いなんて、本当にあると思うのか。そんなもので、てめぇの姉が怪我をしたと、本気で信じているのか」

 

「あるわ!」

 

「それが証拠に、あいつは罰を受けたっ。人を呪わば穴二つってね。同じ失敗をしたんだわ」

 

「そうして、ぬけぬけと復帰しようとしたって、周囲は許さない。呪いは消えない」

 

私も、罪人がしかるべき報いを受けるための手伝いをしているだけなんだから

―――初雪、ミク

 

 

ミクの行動は、初雪にたいする裏返しに近い。

当事者でもない第三者が、復讐をする。


初雪はパーティーの事件からいえば、当事者であり被害者だ。けれど復讐をしたいとは別に思っていない。でも復讐しようとしているのは、他人の受け売りの思想に近いものだ。それは父親の怨嗟、あの日なくなった無数のゴーストの憤怒。

それにあてられて、復讐をしようと思っているにすぎない。第三者が、復讐に関わっている状況に近いと思うのだ。


そしてミクの行動を観ていると、「復讐を是認するのならば、復讐し"返される"こともまた認めなければいけない」のかもしれないと。

復讐することは是とできる。その気持ちにいたった初雪やゴーストたちの原感情を私は理解できる。けれども、復讐し返されるのは嫌だ。そこに正当性、合理的、正義などあるとかないとかではない。単純に他者の憎悪にアテられるのが酷く心が揺れ動く。

アンフェアだろう。まったくもってフェアな考えじゃない。

……。。。 復讐されるのが否だとするならば、復讐をするのもまた否定しなければいけないのだろうか……。もう私には分からないよ……。

 

 

 

 

死にたくない生きたい!

 


「なぜ今になっても、てめぇは、あずまに対して、そんなに深い憎しみを抱いている」

 

「……」

 

死にたくないから

 

「なに……?」

 

「当時……誰もが私に期待してくれた。この街の希望だった。私こそが、一番綺麗な花だった」

 

~~~

「そうしてあれから、演技はできなくなったけど、私は悲劇のヒロインとして、生き続けることが出来た」

 

~~~

 

「ゴーストめ。何をそんなに執着している。あずまを地獄へ引きずり込んでまで、何を果たそうとしている」

 

「何って?」

 

「あんたは死んだんだ」

 

「いくら生者の脚を引っ張っても、あんたは、蘇ることは出来ないのに

「……っ」

そうだ。

……復讐を果たしても、生者を生贄にしても。

蘇ることは、出来ないんだ。

死んだ人達は……

―――初雪、翔子

 

初雪の「手段」と「願い」が食い違っていることに、やっと「実感」できたのがここだと思う。

 

 

 


「今でも、そんなにあずまが憎いのか。あいつがあんたに何をした」

 

「言ってるでしょう。あの子自身を、憎んでるわけじゃない」

 

「私はね、ただ……死にたくない!

 

消えたくない!!! 例え幻としてでも、私は生きつづける」

 

「ミクが、私の従姉妹が大会に出る。あの子は、はっ。演技の方はてんでダメだけど、私の親戚という点だけ、価値はある」

「でもそれでいいの。あの子の身体を借りて、私はよみがえることが出来るんだから」

「私は復活できる。そうして、生きつづける。人々が描く幻影の中で」

 

 

 

 


「哀れだな」

「美しく滑りたいと、その姿を多くの人間に見せたいと願ったあんたが、なぜそうまで……醜い姿になってしまった」

「てめぇが死にたくないって言うなら、ここまで、あずまの妨害に執着する必要なんてない」

「お前は、あずまの演技によって自分の記憶が塗り替えられるのを、恐れたんだなぁ」

 

「とんだ、臆病者だな」

「お前は醜い。誰が知らなくても、俺は断じてやる」

「醜悪の極みだ。うじのたかった、ゾンビそのものだ」

 

 


「あんたの演技はきっと素晴らしかったんだろう」

「けれど、時がたてばどんなに美しいものも、忘れられていく。それは確かに、悲しいことだ」

 

「でも、だからこそ」

 

「大切にあんた自身が守るべきだった。その思い出を」

「……それを、ここまで汚したのは、お前自身だ」

「お前が、過去の自分を殺しているんだ」

 

「お前は復活できないよ」

 

「あずまは復活する」

 

―――初雪

 

 

 

 

 

 

 

復讐という気持ちに復讐を

 


「うううううううううう」

「どうかお願い。私をいじめた奴らを、みんなみんな、滅ぼしてよ」

「あなたなら出来るでしょう! ゴーストチャイルド!!!」

 

「悪いがその願いには、応えられない」

「俺は、てめぇをしばきにきたんだよ」



―――初雪、メア

 


「なんで、叩くの。なんでっ。おにーちゃんも、私をいじめるの? 私、何もしてないのにっ。私、何もしてないのにっ。なんで、皆から責められるのっ」

 

 


「せめてなんかいねぇよ」

「ぴーぴー泣くなっつってんだ」

「いいかげん、目を覚ませよ」

 

「誰もに死にやしねぇ」

 


「だって……」

「皆がいじめるんだもん。私はただ、一生懸命、きれいに踊りたいだけなのに」

「皆が、私が悪いって。全部、私のせいだって。いじめるから……っ」

 

「そんな声は気にするな」

「聞けよ。野次だけじゃない。てめぇを応援する声だって聞こえるだろ」

 

「あずまぁぁ、がんばれ!!!」

 

「よっちゃん、ふぁいとー!」

 

「ふれぇぇえふれぇぇぇあーずーまー先輩ぃぃぃ!」

 

「エルオーブイイーあ・ず・ま!」

 

「頑張れ、2年!」

 

 

 


「あずま、お前は生きろ」

 

「俺が生かしてやる」

 

「信じて、踊りきってみろ」

 

 


「三年前もこうして、近くにいてほしかった」

「あぁ、一緒にいるから。もう一度、踊るがいい」

 

「うん……私のこと、守ってね」

「あぁ」

 

「ゆっくりと、安心して……踊れよ」

「そうして、ゆっくりと眠れ、ゴーストよ」

 

 

 


「バニッシュだ」

―――初雪

 

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あずまを通して、浪人・綾の言葉が思い出される。

おれは卒業の幽霊のお話。誰かがそっと応援してくれるやさしい物語。

この一連のあずまの事件は、初雪が(&学園の皆が)そっとあずまの背中を押し応援したものだった。

そう―――誰かはちゃんと見てくれている。あずまの頑張りを、頑張り続けたその時間を。みんなは頑張ってなんかいない、卑怯でずるで呪いの姫だとそう嘲笑うかもしれない。

だけどそんなことなんてない。あずまは最後まで到達したのだから。嫌がらせをされ、妨害を受けてでもこの大会にエントリーしたのだから。


そんなあずまを応援しているのが、「初雪」だということがとてもほっこりする。

なんだろ……、初雪はどちらかというと応援される側だった。頑張ってないと言われる彼を「そんなことない頑張ってるよ」「ファイトだよ」とそっと手を引かれる存在だった。

でも、初雪でも誰かを応援したり、誰かの手を引っ張ったりすることが出来るんだなと。そして、「誰かを応援できる」ということは、もう初雪は冬にい続けるだけの存在ではないことなんだとも。


初雪は言う。メアが復讐したい!憎い憎いよ!という叫びに「誰も死なない」と。「いいから生きろ」と。

そして最後にはメア自身を"バニッシュ"した。

これは、あずま夜の立派に踊って街を去りたいという「願い」を叶えるためのものだっと思う。その願いを叶えるためには、矛盾している手段「復讐」という気持ち(=ナイトメア)を討った。


あずまを春に至らせるために。
死者から生者へと復活させるために。

 


「我はゴーストチャイルド」

「誰が生者で誰が死者かは、俺が決める」

 

―――初雪

 

 

 

 

 

 

雪解けの音

 


ギャラリーは誰1人席を外さず、目の前の光景と旋律に飲まれ、そんな静止した世界の中であずまだけが舞っている。

 

広いリンクの上で、その姿はまだとても頼りない。
空を舞う雪のように。

何かに別れを告げるような雪のように、ぼんやりとしている。それはちょっとした光の加減によって、姿を変え、花弁にかわっていくこともあるのではないか。

 

春を告げる、やさしい色彩の花ビラに。

無意識な呪いの1つ1つが、少女の上に冷たく重い雪となって覆い積もり続けていたことに、誰が気づくだろうか。

 

雪はみずからそのかたくなな心を溶かし、彼女を誘ってくれるのだろうか。

「……」

 

会場から響いてくる拍手は、雪解けの音だ。

パチパチと、それは暖かく、雪が溶けながら立てる音に聞こえた。

 

あずま夜。

1人の少女の復活を祝福する音だ。

 

いつだって、自分の問題は「内側」にしかなくて、内側をどうにかすることでしか一歩前へ進むことはできないのかも……しれない。

決してそれは「自分だけで」といった、1人ですべて背負うものじゃないにせよ。外世界と内世界はシームレスに繋がっているようにみえて、実はとても高い壁が聳え立っているのではないか。

 

 

 

 

 

あなた諦めたの?


「河野初雪」

「結局、あなたは諦めたの?」

「復讐は……」

 

「いつの間にか、な。あいつといるうちに、いつの間にか……」

 

「俺は……あいつのように生きられたら、良かったな」

「今更そういうことを思い知らされた」

「もう遅い」

「冬が終わる」

 

「……これから先の物語は、もう俺は知らない」

―――初雪、サクヤ

 

 

あずまのように生きられたら、良かった……か。

復讐を願って、それにむかって頑張って、最後には願いを叶えられた。そう立派になることができた。胸を張って自分に誇りが持てるそんな生き方。

きっとそれは、春に至れることという言葉なんだろう。

でも、初雪だって、もうここまで来たんだからあとは心の持ちよう次第なきもする。もうちょっとだけ……足を前に進ませるだけで春に至れそうだなと私は思うんだよ。

 

 


あずま夜

俺よりも世界を憎み、俺よりもがんばった少女。

彼女に春が訪れたならば、俺がなすことなんて、実はもう何もないのだろう。

 

帰ろう。

楽園へ?

いや、もっと別のどこか、かもしれない。

そうして……。

 

やがて再び彼女に巡り会うことはあるのだろうか。

 

分からないけれど。願うくらいなら、良いだろう。

彼女がゴーストを望んだように、俺もまた、彼女を願うとしよう。

 

なんだろう。みんな何かを願って、何かを許せなくて、そうやって……そうやって"い"続けているのか……。

 

 

 

 

 

桜の声と応援

 


「あ……?」

 

桜の花びら。

どこから……

「お疲れ様」

 

「あぁ……。そうか」

お前も、ずっと、ここで待っていたんだな

春が来るのを。

 

「……そう、か」

「そういう、ことだったのか」

ならば俺も、どれだけ時が経とうとも、信じてみてもいいのかもしれない。

 

「……」

 

「じゃあな、あずま」

―――初雪

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初雪は言った。「あずまのように生きられたら」と。そして、そんな言葉に呼応するかのように、「お疲れ様」という言葉が降ってくる。桜の花びらとともに。

桜は……いつも初雪のことを見ていて、陰ながら応援しているんだな……と思わずに入られない。

おそらくサクヤの手によって、浄化された後なんだろう。でもそれでも「春」を待ち続けている。たぶん初雪が「春に至れることを待ち続けている」。

そんな応援のメッセージ。だからこそ初雪も

ならば俺も、どれだけ時が経とうとも、信じてみてもいいのかもしれない

 

と言ったんじゃないだろうか。つまり冬は終わってしまう。ここからさきの物語は知らない、どこに行けばいいのかもわからない。

でも、「春に至れることを信じてもいい」と。

 

 

 

 

Happy End! あずま夜

 


「殺すぞ」

「うるせぇばか。ちょっと聞いたくらいで、知ったような口たたくな」

 

「私の恋人、ゴーストの王様だから。あほなこと言ってると、呪い殺しちゃうから」

 

「お、おい。そんなこと言ったら、また、変な噂立っちゃうぞ。あずまっち」

 

「気にしないもん」

「私はもともと、こんな風だったもん。3年前は、もーっと、エキセントリックだったんだよ」

 

「周りがなんて言おうと、無理しない」

「生きたいように生きる」

「スケートだって続けるもん」

 

「言いたいやつには言わせておけばいいもんね」

―――あずま夜

 

ナイトメアが"バニッシュ"された。でもあれは「憎い」気持ちを討っただけなんだろう。

ゆえに、押さえつけていた自然体のあずまの人間性も表面化されるようになった、のかな?

昔のあずまであるメア、そして今まで猫をかぶってきたでも優等生のあずま。

今のあずまが、昔のあずまを認めた。ということでもある。
昔の自分を受け入れられるようになった。それはもう「呪いの姫」だとか誹謗中傷なんて気にしない。外の声なんて気にしない。っていう現れだと思います。

 

 


 「あのね。先輩、あれな人だったけど、不良とかじゃなかったよ」

 


「とにかく、先輩のことは私が誰よりも、一番知ってるの」

 

「それで……」

 

「いつか、もっとちゃんと……先輩のこと、知りたいよ」

 

「……今は」

 

 


「バイバイ! 先輩っ」

―――あずま

 

 

 バイバイっていい言葉だなあと思う。それは別れの言葉じゃなくて、再会を望む言葉だから。

 

 

 

 

うわさ

 


「ゴーストダンスは、滅びた魂をあの世から呼び寄せる、魔のダンスでね。だからあの日、ゴーストが現れたって。」

 

「死んだ恋人を呼び出すために、踊っていたとか、そんな話を聞いたなぁ」

 

「その恋人は、事故死した昔のダンスのパートなんだけど、彼が好きだったダンスを1人で踊っていると、いつの間にか、現れて、一緒に踊ってくれるみたいだよ」

 

 なんか、サクヤを彷彿としてしまううわさなんだが……。サクヤが遠回し二位行っていたことってやっぱり、

「自分は滅びた魂」
「あの世から戻ってきた」
「事故死した昔」
「(もしかしたら)初雪と面識があったパートナー」

 
という意味なんじゃないのかなと思うわけですよ。

 

 


「でもね、噂では、たまにわざわざこっちに戻ってきて、踊ってるらしいよ」 

「そうなの? どうして? ……あ、分かった。恋人のゴーストに会うためだっ」

「うん。駅前のスケート場で……営業時間が終わった後、あの子が一人で踊っていたって、噂もあるんだよ」

 

 

「それは月の無い夜に、誰もいないリンクの上で……」 

「最初は1人で踊ってるのかなって思ったら……」 

「よーく目を凝らしたら、一緒に踊っている男の人がいたの」 

「男の人は青い顔で、血走った目をしていてね。まるでゾンビみたいなんだって」

 

「2人はそうしてずぅっと、滑っていたんだって」 

「ホラーだね」

 

「うん。ホラーはホラーだけど」

「全然、怖くなかったって」

 

 

 


「2人の様子は……」

「とてもきれいで」

「幸せそうだったって」

 

 

 

<あずま夜 感想 終>

 

 

 

メモ


「ずっとこのリンクで、ゴーストの王を呼んでいただろう」

「だから来てやった」

「そうです。私はゴーストダンスで、ゴーストを呼んでいました」

 

「皆を、呪うために」

「違うだろ」

「復活するためだ」

 

「そのためのダンスだ」

 

「……復活、するため……」

 

 


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『はつゆきさくら』_初雪が春へ至るためには何が必要だったのか? 死者は何をもって生者へと復活できるのかを考えてみた(21461文字)  


<参考> 

はつゆきさくら(仮) (SELEN NOVELS)
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ドラマCD はつゆきさくら 第1巻~ゴーストトラベル~
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はつゆきさくら (1) (カドカワコミックス・エース)
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