猫箱ただひとつ

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Prologue編 はつゆきさくら 感想(26452文字)

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「あはははははは」


「雪をふれふれもっとふれ」


「全てを喰らい尽くしてしまえ」




▼ あとこれは「はつゆきさくら」の考察記事です。

『はつゆきさくら』_初雪が春へ至るためには何が必要だったのか? 死者は何をもって生者へと復活できるのかを考えてみた(21461文字)  



ネムというネーミング

 


眠らない街。略して、ネム

―――桜

 

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桜はこの街に顕現してから、まだ数時間(?)ほどしか経っていないのに、先生ことコノハサクヤに「ネム」と名付ける。自分が誰かも分からなく、目の前の兎が敵か味方かも分からない状態なのに、名前をつける。

環境への適応能力が高そうだなと思った。

いやもしかしたら、「価値」があったから名づけたのかもしれない。目の前の兎が自分にとって価値があるからと、ソシュール的なやつ、でね。

 


「ほら、目が赤いでしょ。なんか眠って無さそうだから」

―――桜

 

ネーミングセンスいいね桜ちん。私だったら出逢った状況とか、身体的特徴で名付けしまうかもしれない、他には「兎」という特徴は必ず繋げて考えていたかもしれないというのに、目が赤いから眠らない……fmfmw

 

 

 

 

初雪の素直さ

 


「違うだろ……まぁいいけど」

「あと、傘にも入れてくれて」

「は」

 

俺は手にした傘に目をやり、苦笑する。

「それはなんだ、暗に傘を寄越せと言ってるのか」

 

―――初雪、桜

 

初雪のこういう素直っていうのかな? ストレートな部分いいすなー。こういう子好きだよ。

ふつう、といったら語弊があるか、私だったらそういったよく分からない不可解で、曖昧な、疑問を目の前にしたとき「察し」てしまうことが条件反射のように出てしまう。もしかしたらなにも言わずに傘を桜に差し出してあげることが良いようにも思えるが

 

正直なところ、こうやって「それはなんだ? 傘を寄越せと言っているのか?」という言葉を紡ぐのが苦手だけだからだろう。だからさ、こういう他人との恐れや誤解をものともしない言動は気持ちがいい。

 

 

 

 

ラン、か、かわいすぎる……いやみんな可愛い


「もらっはふむぅ」

「ほんむっっふわらぁ」

「ひゃほろもろほぁ」

 

「……どれが、一番柔らかかたかな」

 

―――ラン

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こういうバカなノリできる子いい!すごくいい!いやっほううううう!!

どれも柔らかそうですねひゃほろもろほぁ……ほんむっっふわらぁ? 

 

……。ひゃほろもろほぁ~(やわい)

 

 

 


「ゆきち、誰が相手でも、そんな口調でしゃべってるわけじゃないよね?」

「八方美人になれとは言わないけどね。せめて女の子には優しくするんだよ。せっかくの男っぷりがさがるよ?」


―――浪人

 

浪人は浪人で気安くていい……。

 

 


「これで、一昨日と合わせて、千五百円。
 お前、明日には絶対返せよな」

「はいはい」

 

―――初雪、桜

 

この空気感、この空気感が堪らない。(うまく言葉にできなかった)

桜お金結局返してくれなかったよなーと。いえそうではなく、お金関係をこうやって「はいはい(にっこり)」で済ませられる間柄っていいよね、ヘタすると金銭トラブル√いきますが。

 

 


「なんか私、いつの間にかすごく面倒なことに巻き込まれるような……」

「お前が勝手に来てるんだろう。ぐちぐち言うなら、家帰ってオナニーしてろ

 

「そ、そら来たっ。そういうの!」

―――あずま、初雪

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ああこの距離感がたまらん。

 

 

 

 

 

玉樹桜が授業にでること

 

 


聞けば、俺と同じで受験の予定は無いらしい。それじゃぁ一体何がうれしくて、必死に授業を受けていたのやら。

 

―――初雪

 

必死に初雪の手を繋いだり、学園に出てきて必死に授業を受けてみたり、でもそれは楽しそうで嬉しそうな桜。

幼少期、火災によって命を落とした彼女は、それまでの多くの人が経験する「なにか」を得ることができなかった。だとすれば、そのなにかを取り戻そうとしているようにも見える。

学校に通うこと、クラスメイトとお話すること、授業に出ること……出来なかったこと、やれなかったこと、したくても叶えられなかった願いを。

 

桜の知識や経験は、おそらく幼少期のころのまま止まっていると思う。だから白咲学園の授業についてこれるか?と言われると、たぶんついていけてはいないんじゃないかな。

すべての授業が意味不明なのかもしれない。けれど、きっと「取り戻している感覚」っていうのは、そんなものは瑣末なことに成り下がるんだと思うんだよね。

 

 


せっかくだから出来るだけ、愛着持ちたいじゃない。たとえ、短い間しか、お世話になれないとしても

―――桜

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「やっぱり学園っていいよね。ビバ、学園だよね」

「さっきから、何にそんな感心してるんだ」

「何て言うかな。皆で同じ制服着て、小さな世界を大切に大切にしてさ。そういうのって良くない?」

 

「……」

「ね、いいよね?」

 

「……」

 

「よくない?」

―――初雪、桜

 

いいと思うよ。日本の学校は閉鎖的でいじめが起きやすい環境だけれども、そのかわり強い個性を持った小さい世界が出来上がる。きっとそれは、振り返ってみるととても懐かしい思い出だとも。

 

 

 

 

そういうの相手の気分を悪くしちゃう

 


「だから、河野君が、生返事ばっかりするからでしょ。そういうの、よくないよ。相手の気分を悪くしちゃうよ」

 

―――桜

 

こういうこと相手に言うのって、けっこー難しいと私は思うんだけども、(だって生返事している相手に、そういうのよくないよ?って言うのちょっと覚悟が必要)、あっさりすっぱり言えちゃう桜はいろんな意味で "うまい" なあと思える。うんうん。

 

「握ってないとなんか不安になる気持ちって分からないかなぁ」

 

「おでん、でんでんでんででん♪

 

 

 

復讐

 


「河野君は、探しているゴーストを見つけて、どうしたいの」

「……」

なぜだろうか。それだけは、本当は、誰にも言うつもりのない言葉。最後まで、俺一人で抱き続けたいと思っていた言葉を、ふと目の前の少女に、くれてやりたくなった。

 

「……」 俺は玉樹の方へ横顔だけ向けながら、短く答える。

 

「復讐」

―――桜、初雪

 

なんでだろうね。ふだんの初雪なら絶対といってもいいほど、本当の気持ちは吐き出さない。吐き出すとしても、根幹に関わるようなことは言わないのに。たぶん……共有して欲しかったんじゃないのかなと思う。

 

復讐する気持ちを。憎む感情を。全てを毀したいとおもう欲求を。

 

 

 

 

おはよう

 

 


「おはようっ」

「え? あぁ……あぁ」

登校中に声をかえられることなんて、滅多に無いので、多少面食らいながら振り返ると、ご機嫌そうな玉樹が立っていた。

 

「あぁ、じゃなくて。おはよう」

「……あぁ?」

「あぁ? じゃなくておはよう」

 

―――初雪、桜

 

おはようって言われると嬉しいよねー。挨拶は大事だなあと実感する。

 

 

 

 

そこまで他人に責任持てるか

 


「奴も奴らも、一年前までは、他の生徒と変わらない……むしろ真面目なくらいだったんだぞ」

「それが、お前に憧れて、ぐれたらしい」

 

―――河野を見てると、俺、このままでいいか分からなくなったんだよ

 

「が、もとをたどれば、お前が、あの4人をダメにしたんだ」

「あほくさ。そこまで他人に責任持てるかよ」

「お前は、将来なんてどうでも良いと思っているだろう」

「だから、そんなにいつでも投げやりにやっていけている」

「過去にはいいことがあったか? 先生は優しかったか? 勉強は楽しかったか?」

 

「お前は未来を見ていない。もっともっと別の何かに立てた操のために、しょうがなく生きている、生かされているだけのゾンビのようだな」

 

―――来栖、初雪、(久保)

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来栖はいまいち何を考えいるかわからん。ここまで言われなきゃいけないんだろうか。嫌な見方をすると、さっさと退学しろとでも言わんばかりだぞ……。

それも、初雪の人間としての根本的な部分にまで歩みを進めている感じ。踏み込まれた感覚はある。でも踏み込んだ理由が分からない。聞くしか無い、たぶん本人に聞くしか無い。

 

来栖はもしかして……心配している……可能性も……?……。ていうか、この人も自分に踏み込ませないタイプだからなあ……。行動に起因する感情が読みにくすぎるんだよ。


それと久保たちの人生なんて、面倒見切れるわけがない。直接的な原因(=初雪が唆した)わけでもない、間接的によって不良になったからといってだからなんだと。

それじゃまるで、親の呪いの話と一緒じゃないか。

子どもが悪いのは、その子がそういう人間性を獲得したのは、そういう性格になったのは―――全て親のせいだと。

でもじゃあその親の親のせいでもあるわけだよ。そして親の親の親の人も悪ということになってくるわけだよ。そんな果てしない「悪」の因果関係を突き詰めようとしたって無駄だと私は思うんだよ。

なんの解決にもなっていない。ただ、お前には罪があると指摘しているだけで、それもかなり的はずれな言い分でしかない。

 

 

 

疎外されている感覚

 


「この街にあるもの、暮らす人……。決まり事、日々の悪いニュース、良いニュース。どいつもこいつも、腹立たしいくらいよそよそしくて、むかむかするんだ」

 

「俺は、ダメなんだ……どうやっても、こっち側の人間にはなれないんだ……」

 

「……帰りたい」

「初雪?」

「こんな世界嫌だ」

「嫌なんだ」

 

―――初雪、ラン

 

こういった自分と現実の疎外感は、人・社会・世界といった、自分とは別の異物とうまくコンタクトを取れないときに感じるものだと思う。半端ものはいつだって狭苦しい。

いや自分は半端ものだと"思う"からこそ、狭苦しいのかもしれないが。

 

 


「ぐじぐじするなぁ」

「そういうものを、誰だって抱えて頑張ってるんだよ」

 

「どこかにたどり着きたいなら、歯を食いしばって進みなよ」

「安易に、安息の場所が見つかるなんて、思うなぁ」

 

うるせぇよ、ぼけ。きれいごとぬかすな

 

―――初雪、ラン

 

そして、こういった「感覚」は、他人に理解されることがない。……いや、難しいんだよね……。体感覚を相手に共有してもらうには、その相手にそれを理解するための構成物がないとダメだと思うので。

綺麗事や厳しい言葉に人の心は動かされない。こういうときは、ランちゃんぎゅっとしてくれるのがベストだよ!ほんと!うん!きっとね!

 

 

 

* 約束したこと

 

 


「つらいことがあっても、お酒に逃げちゃだめだよ。約束したはずだよね」

 

「ちゃんと卒業するって約束したでしょう。つらいことがあったら、相談して」

 

「ね、がんばろう」

―――ラン

 


「昨日と同じ今日なんて来ないなだからねっ」

―――ラン

 

 約束・卒業……。ランとの。
ねー。

 

退学してしまうのはつらい

 


「だって、このままじゃ……先輩たち、揃って退学になってしまう」

「一度は相談受けた人たちなんだ。このまま退学してしまうのは、つらい」

「せっかく入学したのに、自らの意志でなくて……卒業できないというのは、悲しいと思う」

 

―――希

 

 

「卒業」ができないかあ……卒業……。もっと何か別の意味があるような気がするけど今はわからない。

希は「卒業する」ことをかなり意識している。先輩たちが「卒業」するのであれば、いくらでも手を貸そうといわんばかりの気持ちが見え隠れしている。

 

 


「久保田だっけ? も言っていたけど、何をそんなにがんばってんだ」

「?」

「実際のところ、あんなクソ教師の言いつけを守る必要なんてないだろ。俺や奴らみたいに、進退を決める顕現まで握られてるわけじゃないんだから」

 

「ろくでなしの相手をして、ののしられて、何がしたいんだ」

 

卒業して欲しいから

 

―――希

 


「今年の4月に入学したとき……思ったんだぜ。いろいろあると思うけど、3年間がんばろうって

 

「俺は、入学式に思ったんだ。卒業までがんばろうって」

 

「それで、久保先輩達だって……初雪だって、入学式の時に、同じことを思ったんじゃないかって。もう忘れてるかもしれないけど」

―――希

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ん……。となんだろうな……。希ちゃんのやりたいことってすなわち、「自分が抱いた気持ち」を大事にしたいのかもしれない。

入学式のときに3年間頑張ろうって抱いた気持ちを。そして頑張り続けた先輩たちがいて、その人達がゴール(=卒業)に行けず立ち止まっているのなら、背中を押してあげたい……と。

 

 

 

 


「そういうのじゃなくて……もっと、切実な……ちゃんと卒業したいんだって、気持ちが、河野君にあるみたいだから」

 

「ごめん。河野君は、資格とかには本当はこだわってないように見えるから」

 

「どちらかというと、卒業していったい何があるんだろうって、むなしくしているタイプだと思うけどな」

 

―――桜

 


「それを確かめるために卒業したいんだ」

「約束だからな」

 

―――初雪

 

卒業していったいなにがあるんだろう―――……ああこれはまさしくほんとうにそう。

なにがあるんだろう? ゴールテープの後を走り続けるなんて、あまりにも滑稽だよ。そんな言葉が浮かんでくる。

「終わり」というものが、人生での「死」でしかないのなら、終わりと始まりを繰り返して繰り返す。目的を設定し続けて走り続けることに、いったいその先にはなにがあるんだろう? という気もするんだよ。


 

 

ファントムより

 


「来栖教師は、死者である。そして殺人者である」

―――ファントム


久保宛に送られてきた手紙には、そのようなことが書いてあったらしい。「ファントム」とは、東雲兄のことだろう。彼は来栖にゆさぶりをかけたかったのかもしれない。

久保たちじゃ、決定的な事件を起こす可能性は極めて低い。けれど、来栖に「自分たちをアピール」するという点では、……なるほどそれなりに有効な手なのかもしれない。

しかし解せないな……。この「殺人者である」という一文は、来栖「兄」に向けての言葉だろう。東雲兄は、来栖教師(兄)を慕ってこのような行動を起こしている。にも関わらず、なぜ慕っている人物を貶めるような発言をしなければならないんだ?

揺さぶりをかける……という意味ではそうかもしれないが、別にこの言葉を採用する必要は無かったように思う。嫌じゃないのかな……、仮にも大事な人を貶す言葉を吐くというのは。

 

……それをしてでも……ってことなのかも……。そこまでしてでも、東雲兄は叶えたいのか。彼の名誉の復活を。

 

 

 

桜の寝床

 


「私、明日から数日、学園に来れ無さそうなんだ。ちょっと問題が起こったとかで」

 

―――桜

 

あー、一日中サクヤが出張ることにから、桜は学園に来られなくなるということかな?。

ついつい忘れていたけれど、桜は夜にどこに帰っているんだろう? 寝床的なものはどこにあるんだろう。ていうかサクヤは組織だって動いているのか?……。サクヤについて何も分からん。

 

 

 

 

元気が出る体操

 


「テンション上げて♪ テンションさげないで、テンション上げて♪ いったんテンションさげて。テンションさげないで、テンションあげて♪」

 

「元気♪ 元気♪ 元気があればなんでも出来る♪ はいてんしょ~~ん♪」

―――ラン

 

元気でる!!!でた!!はいてんしょ~~ん

 

……

 

………くっ

 

 

 

ランの愛情

 


「謙遜か、この立派メン。あんな立派な学園に入れたんだから、十分頭良いのに」

 

「ねぇ初雪」

 

「なんだよ……」

「初雪は強いよ、きっと、自分で思っている以上に強い」

 

「あぁ?」

その強さをこれからは、自分と大切な人のために、使ってね

―――ラン、初雪

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ランの愛情がこれでもかと感じれる。初雪が今まで腐らず、そこそこに人生に前向きだったのは、ランという存在がいてくれたからだろうな……って思う。

 

誰かの愛情がひしひしと伝わってくるのはいいね……ランに癒されまくり。例え彼女が、初雪に復讐を望んでいたとしても、そのために一緒に住んでいたんだとしても、

ここにあった日常は暖かくて、ランが初雪にたいする想いは偽りのないものだと思うよ。

大事に大切に、家族になろうとしているその想いはどこまでも純粋だって思えるもの。


 





操のために関係を破壊するっていうこと

 


こいつが巻き込まれているいざこざについては、俺に出来ることなんてないし、してやる切りもない。

しかし反魂香。これだけは、こちらの領分だ。練習を終え、奴は今、シャワー室か。やるとしたら、今か……。

 

「はぁ……」

なんかやたらと気が重かった。

まぁ、結局、こういう役どころだろうよ。俺は。

 

―――初雪

 

あずま夜との仲もだいぶいい感じになってきた。ちょっと信頼されてきたかな?という自惚れも感じられるほどに。

そんなな良好な関係を、自分から破壊してしまうってもうとんでもなく気が重い。実際に実行してしまう(=レイプと取られても仕方ない行動)初雪はほんとうに復讐を望んでいるんだなとわかる。……あー……あー;;

 

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「こんな……っ、こんなことするなんて、信じていたのに」

「は……」

「ばーか」

「な……っ」

「お前さぁ。もう少し、他人を疑ったほうがいいんじゃないか。 何の得もなく、てめぇみたいなガキに協力しようって言い出すわけがないだろ。どこの物好きだ、そりゃ」

―――初雪、あずま

 

「悪役」を演じるのって、辛い……辛すぎる……。本来、初雪は"ここまで"のことをあずまに対して思っていない。口からでまかせ、というわけじゃないけど「突き放す」ために行っているんだろう。

あー……。たぶん初雪はこういうことを幾度ものなく繰り返してきて、今に至るんだろうなと思った。誤解も勘違いもすべて呑み込んで、言いたい奴に言わせたままにして、弁解なんてしない。

死人とはまた違う在り方。それは来栖のように亡者(ゴースト)か。

死に続けている人間はとても綺麗なんだよね。未練もなく執着もない。ただただなぜか生きている。「透明」と呼ぶにふさわしい。ふとしたきっかけがあれば、ころりと死に至るそんな在り方。

でも、ゴーストは違う。心に未練を残し、ときに復讐という火炎で身を焼き付く存在。彼らには、澄んでいる様子なんて微塵もない。怨嗟を、憤怒を体中から発している。そんな在り方……か。





立派に


「気にすることないよ。私は分かってるよ、初雪のこと」

「うん。初雪のことなら誰より分かってる。初雪は立派なことをしてるよ」

立派になりたいなぁ」

 

―――初雪、ラン

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"立派"。

卒業、立派……。桜に初雪。ここらへんは一本の線で繋がる気がする。

初雪やランがいう「立派」とは一体どういう意味なんだろう。立派な人……。社会的に……という意味ではないと思う。なんとなくね。


辞書ではこう記載されている。


 威厳があって美しいさま。堂々としているさま。また、非常にすぐれているさま。「―な邸宅」「―な業績」
 十分に整っているさま。不足や欠点のないさま。「―に生活を立てていく」「―な大人」


私の感覚だと、立派という言葉には「美しい生き様」という意味があるように思える。

美しいと思える人生、行動、をラン達は言っているのかも。




誘拐事件?


「5日前の夜にね……ある、女の子が誘拐されたんだって。ゴーストタウンへ」

「うん。その子は、『鍵』になる子なんだって」

―――桜

んー……? 今思い返してみれば、この誘拐事件と、鍵なる女の子はいったいなんだったんだろう?

サクヤが桜に「女の子を探せ」と指示したのは間違いない。となると……これはブラフ?嘘?の可能性がでてくる。

桜がゴーストチャイルドに邂逅するための、サクヤの計画の1つ?




誰かを面と向かって嫌いっていうこと


「そこまで邪険にすることないと思うんだけど。私達、パートナーみたいなものじゃない」

「へぇ」 適当に聞き流すつもりだったが、何かが俺のしゃくに触ったらしい。悪いが、俺はお前のこと嫌いだぞ

 珍しく、言わなくてもいいことを口にしてしまった。

「がつん」

「それなりに、傷ついた」

~~~

「傷ついてなんて、いないだろう」

「そんなこと……なんで?」

「は」

とにかく、俺はお前が嫌いだ

「自分のことを疑ってる奴のことを、好きになれるわけがないだろう」

―――初雪、桜

初雪のこういう「がつん」とした言葉は、やっぱりいいなーと思う。本人が目の前にいないところで、「俺はあいつは嫌いだ」というのはでなく、直接本人の目の前で「嫌いだ」ということが。

倫理を超えて。とても生きにくい生き方だけれども、そこに美しいものを見いだせる。出来ないからこそ、出来る人間に価値を見出すといってもいいのかもしれない。




あずまに対する気持ちでキュン死しそう


「先輩も! お疲れ様でした!」

着替えを終え、俺はスケート場を後にする。場内ではそろそろ競技が終わったらしい。後は表彰式を残すのみだが、それを待たず帰り始めている連中も少なくない。

俺も帰るとしよう。

あずまは……まぁ、落選ということはないだろう。本大会ではせいぜい、まともなパートナーを見つけて、がんばってくれってところだ。

「……」

……どうでもいいが。

―――初雪、あずま

反魂香があずまと初雪の関係を結び、アイスダンスを通じてちょっといい雰囲気になりながらも瓦解。

けれど、最後には二人で高揚感に満ちた大会を迎えることができた。

そんな初雪の一言

(……どうでもいいが)

……なーんかね、なーんか悲しくなったなと。あずまは初雪に対して、そんな悪くはない感情を抱いているし、初雪だってあずま個人に悪くはない感情を抱いている。

このまま交流を深め、言葉を重ねていけば、「悪くない」が「好き」になるそんな可能性を秘めている。良好な関係になる一歩手前だからこそ、初雪の気持ちが、少しずつずれ込んでいく様子は……胸にくるものがある。ぎゅーって。


こういうの弱い。




誰かを許さないっていうこと


「だからって、あのことを、許したわけじゃないですからっ。そこは言っておきますっ」

別に許してもらおうなんて、思ってない

―――あずま、はつゆき

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初雪は「反魂香」を調べるために、あずまの入浴中に乱入した。裸体の彼女に無理やり接触することになった。

これは今の倫理観で考えると相当な「悪」と言っていい。そして、それを許さないと思うあずま夜の気持ちも当然だろう。

あずまは言う「あなたを許しません」と。けれど初雪はそう言われても、「どうだっていい」と返すこのやりとりを見て思った。

「許す許される関係」とは、互いに「許す」・「許される」という気持ちを抱いていないと成立しないのだと。(思考整理中なので、何を言っているかわからないかも)

んーとねー、あずまが許さない! といっても初雪はあっそうと言えば、そこに「関係」と呼べるものが無くなってしまうというかねそんな感じだろうか。

初雪があずまに許しても許されなくてもいい、と思い続けている限り、あずまの「許せない!/許したい!」っていう気持ちはどこにも向かうことができない。




みんな死ねばいいのに


「これ、先々月に、父に買って貰ったばかりなんですよ。復帰祝いみたいな感じで、奮発してもらったんだけどなあ」

「皆、死んじゃえばいいのに」

―――あずま

あずま夜という女の子に、すごい興味を持った瞬間。

こういった言葉のあとには「ま! 修理すれば直るんですけどね」とか「ちょっと悲しいですけど、大丈夫です」みたいな言葉が来るんじゃないかと思っていた。

でも、彼女が言ったことは「皆、死んじゃえばいいのに」という、とても物騒な言葉だった。

あずまを見て、痛みや苦しさ、憎しみや怒りは、吐き出すべきものかもしれないと思った。無理に押し込めたりしても、それは自分を殺す毒にしかならないものだと。

 


"痛かったら痛いって言えばよかったんだ、お前は"

 

そうだよね、そうだと思う。

 

 


"痛みは正しく循環しなくてはならない"

正しく正しくぐるぐるぐるぐると回っていかないといけないかもしれない。





 

ロシアはわるくない

 


「ロシアのことを悪く言うなっ」

 

―――シロクマ

 

お前がロシアのなにをしっている?!! というツッコミを思わずしてしまった。シロクマの挙動が愛くるしいですが、意味深で謎です。

 

 

 

 

卒業の幽霊

 


「てめぇ、幽霊なんてものがいると思うか?」

 

「幽霊?」 浪人はしばらく、じっと考えこみ、やがて小さく微笑んでうなずいた。

 

「いると思うよ」

「私はするりと卒業できたわけじゃなかったんだ。受験に失敗した身だけど、それはいい。なにより、卒業出来て幸運だったと、今でも思うよ」

―――綾、初雪

 

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「物事の終わりの間際……最後の山場。もうくたくたで、走れない。ここまで頑張ったからいいじゃないかって、疲れた心は考える」

 

「そんな一番つらいとき、その幽霊が背中を押してくれるんだよ

 

「それは何なのか、誰なのか分からない。ただ、近くで応援してくれるその気配だけは感じるんだ」

 

「でもその時は必死だから、それが誰なのか確かめる余裕もない」

 

「そうして、ゴールした歓びを一番に伝えたい、分かりたいのはその人なんだ」

 

「だから振り返る。けど、その人はどこにもいない」

 

「ただ、緩やかに風が吹いている」

「ありがとうと、伝える相手はいない」

「一体、あれは誰だったんだろうと考える」

 

「私は思うんだ。あれは、きっと……」

 

「いやみな先生とか、気の合わないクラスメートとか。

けど、どこかでわかり合っていた相手。

そういうものの、集合が、誰かの幻影のようなものを、作り出していたんだ」

 

 

それはまるで、「桜」という幽霊そのもののような、または「ラン」みたいな存在のようではないか。いつも頑張ってと、背中を押してくれる。初雪がめげていたり、あーめんどくせーと愚痴を呟くときに、


「ファイトだよ!」

「まだまだこれからだよ!」

「バニーだよ!」

 

とそっとそっと後押しをしてくれる誰にもみえないゴースト・桜。

 

 


「卒業の幽霊が訪れるのは、きっとがんばっている人のもとだけなんだ」

―――綾

 

見えないけれど、そこには確かにいて、いつでも見守ってくれる存在。それはなんていうか……神さまに近いよね。

 

 


「ねぇ、ゆきち。誰かは、ちゃんと知ってるんだよ。
誰もが君を不良だとののしっても。怠けものだと非難しても……分かってくれる人はいる」

 

「誰も、君をがんばったと言わないかもしれない」

 

「だけど、そんなことはないんだ」

 

「どんな形でも、最後のほうまでたどりついたなら、確かに頑張ったんだよ」

―――綾

 

綾の言葉を聞いていると、人は正当な評価が欲しいものなんだと思う。自分が今まで苦労してきたことへの、相応分の代物が。

頑張ってきたのに、頑張っていないと言われたり。
怨嗟の炎で身を焼きつくしてながら、歩いてきたのに、それは間違っていると指摘されてもうまく納得なんてできない。

卒業することは、普通で当たり前のことなのかもしれない。大勢の人間が成し遂げられているから、相対的に価値が低いものと見てしまうのかもしれない。

でも、最後までたどりついたそのゴールが、無価値だなんてことはないよねと。そこに至ったのは、ちゃんと君が頑張ってきたからなんだよと綾は言っているんだろうか。初雪は頑張っているよ、自分自身がそう思ってもいなくても。

 

 

 


「そのことを、忘れないで、あと一歩、がんばれたらいいね」 

 

「なんだかゆきちがめげそうになっているように見えてね」

「私の経験からも、ちゃんと、卒業した方がいいと思ったから。ちょっとでも応援したいなぁって」

 

「でも、背中を押してあげられるのは私じゃないと思う」

「残念ながらね」

―――綾

 

 その役目は、やっぱり桜なのかな。

 

 

 

 

記憶の復活

 


「ぎゅ」

「最近君を見ると、どうしようもなく……胸が痛い」

 ~~

「もっと切実なものだよ」

―――綾

 

 


「死んじゃたんじゃなかったか」

―――綾

 

一年前、アキラの魂と同化したことが件によって、綾はその冬の記憶を失ってしまった。

でもそれは完全ではない……か。

 

 

 


「それなら、その少女を店に置かなければいい」

 

「……」

「それは……こいつが勝手に来たんだろう」

 

「追い返すことも出来たはずでしょう」

 

「……」

 

「いい加減に未練を捨てたらどうですか」

 
―――初雪、オーナー

 

 

未練……ねえ。

初雪が、綾に対してもつ未練とは、「恋」なのかなやっぱり。そりゃそうなのかもしれない?……。

初雪がいまなお引きずっている未練とは、

・学園生活(ランとの約束の卒業)
・綾を店に置いていること


くらいかな?

 

 

 


「しばらく休めよ」 

「そうした方がいいのかもしれない。……でも心配なんだ」

 

「心配?」

 

「君が遠くに言ってしまう気がして」

 

「なに……?」

「………………何を、言っている」

 

「ゆきち。君は良い子だよ。周りは……少なくとも私は、それを知っている。だから……孤独を感じないで欲しい」

―――綾、初雪

 


お疲れ様! 誰が分からなくても、私は初雪ががんばってること分かってるから

 

―――ラン

 

 綾ちゃんとランすげーなって思うもの。

 

 

 

 

 

 

メリーゴーランドをぶっ壊せ

 

 


「戦慄しろ大人達。震えろ、運命」

 

「私達に覆い被さる、社会という名の、軍勢よ」

 

「聴けよ。かよわい羊たちの叫びを―――」

 

「―――反逆の歌だ」

 

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ぐるぐる まわる まわりつづけて

ぶっ壊れ続けていく このメロディ

―――白咲ヤンキースVo

 

 

 

これは初雪の在り方を描いた歌だなー……と思う。

 

序盤にある、ママに連れられて、遊園地にやってきて、メリーゴランドに乗った。

 

というのは、ランに手を引かれて、彼女との楽園を見つけたことの示唆でしょうね。しかし、回り出したメリーゴランドは、ただ回るだけでどこにも行くことがない、どこにも辿り着くことができない居場所だった。哀れな羊(=初雪)を乗せて。

 

そして晴れた日に、男が一人なにも持たず歩き、遊園地に辿り着く。その場所で、子どもをのせたメリーゴランドを見て、ぶっこわせと叫ぶ。

 

というのは、晴れた日(=春を迎えた)に初雪はようやく自分自身を遠くから観ることができたんでしょう。過去の自分、今現在の自分がどこにも行くことができないメビウス輪のような楽園を目指していると知る。そして彼は壊すことを決意した……と。

 

それはまるで、最後に初雪が、復讐にけりをつけ、卒業できたかのように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雪という魂

 


この雪は……

 

この空に舞う雪は、いつしか冷え切った魂へとかわり、知らぬ間に街に降り積もり……気づいた時には、全てを食らい尽くしているだろう。

 

「俺が……」

「俺がやらなければ、ならない」

 

1095日が終わる前に。

 

―――初雪

 

 


これは、雪じゃないよ、玉樹。

 

魂だ

 

―――初雪

 

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 初雪はことあるごとに、振り続ける雪を「魂」だと見做す。おそらくそれは死者の魂であり、怨嗟による想いの象徴だろう。

雪。

魂が降り積もる。積もっていき、街を覆い尽くすことで、食いつくす……。街が滅びるようなイメージを想起させるけど、一度も「街が滅びたことはない」。

なら、これは一体なにを示している? もしかしてこれは、初雪自身の心象風景と合致していく様子なんじゃないか?

痛み、悲しみ、苦しみ―――その想いが雪へと昇華していく様子。雪は冬を連想させ、冬は死を連想させる。終わり終わり終わり…か。

 

 

 

初雪の復讐の熱量

 


自分でもどこかで、自分のやっていることに自信が持てない

 

―――初雪

 

 初雪の復讐は、コノハサクヤただ一人。けれど、ゴーストの群衆によって、復讐の範囲が拡大してしまっている。

パーティーをめちゃくちゃにした当事者、佐々木氏を殺すこと。あの場所で新入ったものたちを解放すること。それが初雪の復讐にまで関わってしまっている。

そしてそれを成せば、「ランが戻ってくる」「楽園に至れる」と言われ続けている。もちろん、確証なんてない。

ただ、それはそういうものなんだ、と言っているにすぎない。理屈もなく根拠もないことに、自信なんか持てないよ…。

 

 

 

コノハサクヤを知っているラン

 


「何かがくる」

「奴らがきた」

「コノハサクヤがきた」

 

―――ラン

 

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ランはコノハサクヤに討たれる前に、コノハサクヤのことを知っていたみたいである。

 

……コノハサクヤって結局どういう出自の人間で、どういった存在だったんだろう?

 

ランがこの時既に知っているということは、「ゴーストを殺すコノハサクヤという敵」という認識はあったんだろう。

ならサクヤはゴースト狩りを生業にしていた?……。 占い師のあの子が、サクヤの出自に関することをなんか言っていたけど、なんだったかな……。

 

 

 

 

 

 生者ですか?それとも

 


生者ですか死者ですか

 

―――コノハサクヤ

 

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 サクヤは言う。初雪に向けていう。お前は死んでいるのか生きているのかと。

もちろん初雪は生きている。ちゃんとした肉体を持っている。でもそういうことを聞いているんじゃないんだろう。

死に続けたまま生き続けることもあるように、また生きたまま死に続けることもある。

「死者」とはなんだろう。生きながらも死んでいるというのはどういうことだろう? 「生きる」ことを前に向かって進んでいくことと定義するなら、「死」は前に進まないことであり、立ち止まり、振り返り続けることなのかもなと思った。

私が思う「死」って、前にも言った「透明」のような存在のことを指すんだけれども。サクヤがいっているのは、ゴースト的なことなんだろうね。

現世に執着と未練を抱えた存在。死にたくても死にきれない在り方。


復讐を願う気持ちを持つということは、生きてないことになるんだろうか……。







 

 

ゴーストの狙い

 


「あのまま。奴をくびり殺してしまえば良かったんじゃないか」

 

「まだいけません。まだ」

 

「まだ、あなたはなりきれていない。ゴーストに」

 

「百のゴーストを率いる、王に」

 

―――初雪、ゴーストの群衆

 

 一年前。初雪はアキラを殺し、綾との思い出を殺すことによって、ゴーストチャイルドの自覚を得た。復讐を望み、怨嗟を覆させ亡者の無念を晴らすために。

みんなを取り戻す為にと、そう決意した。

 

けれど、ゴーストたちはいう。まだ足りないと。まだ王になりきれてはいないと。

 

彼らの話しを聞いていると、どうも初雪に「王としての自覚」を多分にもとめているように思える。しかし、なぜ……そんなことをする必要がある?

 

初雪は、一年前よりもゴーストの王としての自覚を得て、その為に学園生活を切り捨ててきたんじゃなかったのか。 

 


わずかに残った未練を、どうか冬の終わりまでに断ち切ってしまいますよう

 

―――ゴーストの群衆

 

もしかして彼らは危惧しているのだろうか。初雪が復讐を捨ててしまうことに。"もしかして" という状況を排除するために、可能な限りの未練を捨てさせ王の自覚を強固にしてくことを促している?

 

 

 

 

浪人との一年前の精算

 


浪人の様子がおかしかったことを、ふと思い出した。

 

「どうした?」

 

「いやなんでもない」

「…………」

アキラか……。一年前の精算か。この冬にやり残していることがあるとしたら、そういうことなのかもしれないな

 

―――東雲、初雪

 

浪人とアキラ関連での、「一年前の精算」といったら……、どういうことなんだろうんん。やり残していること? 綾との決着? 決着ってなんだ。

 

 

 

ランの心

 


「まだ先の話だけど、約束して欲しいの」

 

学園、きっと卒業しよう

 

「うん。きっとね、これから先、辛いことがたくさんあると思うの。それは学園に関係があったり、なかったりすることかもしれないけど」

 

「この学園は、初雪がはじめて、この街で……こうしたいと思ってがんばって、そうして入学したところだから……」

 

「ちゃんと卒業して欲しいって、思うんだ」

 

―――ラン

 

 

もしランが復讐に駆られ、初雪を道具のようにしか扱っていなかったらこんなことは言わないよ。学園を卒業することって、ランの復讐には少しも関係ないもの。

 

これは初雪の為に、初雪だけを想って出た言葉だと私は思うんだよ。

 


―――学園、きっと卒業しよう

 

 

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「卒業なんて、ただの区切りだろ。何の意味があるんだか」

 

区切りで、ゴールだから、だよ

 

 

前に進んで振り返ってみたときこそ、当時は何かに曇っていた風景がやっと、明晰に眺めることが出来るのかも知れない

 

「だから進んで、やり通して……その時こそ、振り返ることが大切なんだよ」

 

「自分と、全ての懐かしい人達に報いるために」

 

 

区切りで……ゴールで、懐かしい人達にむくいるために……。

進んだ先で、ふと、振り返ること。

振り返る? 過去を? 想いを?

 

「振り返る」ことと「進んだ先のゴール」っていう言葉についてちゃんと考えないとダメだと思った。たぶんもっともっと隠されているんじゃないだろうか。


ある地点に到達したとき。山頂で今まで歩んできた道を見下ろす感覚。その時は必死でどう足を運ばせたかは覚えていない。どういった気持ちだったかも曖昧模糊としてよく分からない。

けれど、今のこの地点から振り返ることで、分かることがあるのかもしれない。あんな行動をしてバカだったなとか、あれが最善手だったとか、誰かの気持ちに気づけるものなのかもしれない。

明晰な風景を眺められるのかもしれない。

それは誇らしい気持ちを覚えるものなんだろうか。卒業という到達した地点で、それまでの道筋を振り返ること。いやなんか違うな……。

「振り返られる」ってことが大事なのかも。振り返られるための精神的余裕とか、振り返られることができるゴールに至れたことが。そうか、なんかそんな気がする。fmfm

 

 

 

 

復讐は感情だ

 


「見つけたぞ。お前の魂につながる糸を」

「取り戻してやるからな、お前の魂を」

「皆の魂を、俺は救ってみせる」

 

「滅びた、あの人達の……報われない心を、この手で、取り戻す」

「ゴーストの……王として」

―――初雪

 

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初雪の感情がぐんぐん伝わってきて、涙しかでてこない。失ったものを欠けてしまったものを、取り戻そうとする感覚。必死になって泥水をすすりながらも、ランを、あの日常に戻りたいというその気持ちを否定なんかしたくない。

初雪のしていることは、社会的に世間的に「間違っている」といわれるものなんだろう。でも、でもその復讐の根源を辿れば「間違ったことをした人」が既に存在し、初雪は被害者なのだ。

被害者が、適した相手に、復讐を望むことを、間違っているだなんて想いたくはなかった。

 

 


「卒業、か」

「そんなことはどうでもいい」

「俺はもう、春に至れなくてもいい」

「それよりも、最後の冬に、はじめよう」

 

「この罪深い街に」

「復讐を」

―――初雪

 

ランと交わした約束。「卒業する」ことを破ってでも達成したい悲願。

大事なものを捨てることで、大事なものを取り戻そうとするのは……ひどく矛盾を抱えているようにも見える。

 

楽園へ行くために、楽園の切符を手放してしまっているような、そんな感慨を覚えてしまう。

 

……復讐は感情だ。そこに正義や大義など存在しない。もしあるのだとしたら、それは後付で外付けの代物だよ。理屈なんかない、通る筋なんてものはない。

 

ただ、憎いから。悔しいから。復讐をする。―――でも、初雪の復讐はランを討った「コノハサクヤ」ただ一人のはずなんだ。なのに、彼の復讐は「町」という範囲にまで広がってしまっている。……負担が大すぎる生き方だとね……思うんだよ。

 

 


「復讐、するの?」

 

「……」

 

「そういうことになるだろう」

 

「あまり乗り気じゃないみたい」

 

「そういうもんだろ。楽しいことじゃない」

 

「じゃあ、やめるの?」

 

「無理だ。……そういうもんだろ」

 

―――桜、初雪

 

 

けれど、初雪はけっして乗り気、やる気というわけじゃない……か。

 


「ゆめゆめ、勝手な真似をしないように、お願いしますね? そんなことをしても、ランは救われません」

 

―――ゴーストの群れ

 

ゴーストが初雪を誘導しているのは、間違いないのない事実だろう。でも……でも……彼らの無念を考えると、彼らの行動を否定できなくなってしまうんだよね……。

 

焼かれ、殺された。生きることを剥奪された彼らは、もう誰かを憎まずにはいられない。その方法を叶えるために最善手(=初雪を王とする)を打つことに否定なんかできない……。

 

たしかにそれは、非道かもしれない。初雪に任せるのではなく、自分たちの手で行うべきだとそう言われるかもしれない。そういうものなのかもしれない。

 

でもね、何かを成し遂げることは……。…………。

 

 

 

 このーこのー

 


「白咲学園は、県下一番の進学校で、知事さんだって、白咲の出身なんだって」

 

「ふーん」

 

「そんなところの生徒さんになっちゃって、どうするの、このーこのー」

 

「将来は政治家さんになっちゃうのかなぁ、どうなんだぁ。このこの」

 

「このーこのー」

 

~~~

 

日々のこと、将来のこと。俺のために本気で心を砕いていくれる人がいる。それはなにものにも代え難い、慰めだった。

 

 

愛さている実感ってほんとにほんと、大切だなって思う。

 

 

 

 

 


「さらわれたメスガキはどうしたんだ」

「見つかったって」 

「……は?」

 

「それで、なんか、もう大丈夫なんだって」

 

―――初雪、桜

 

 

 

 

 

 

 

 

かっこいいだけの

  


「そういう自分がかっこいいだけの言葉は、女の子には響きません」

 

―――桜

 

ほんとにね!

 

 

さいけつしちゃうぞ。にゃん♪

 

 

 

 

 

鏡とゴースト

 


「前にもちらっと話したんだけどね、ゴーストって実は自分がゴーストだって自覚してないことも多いなんだって」

「だから、鏡を見せれば、自分が実は死んでいたことをやっと思い出して、消滅してくれるらしいよ」

 

「そういうものかなぁ、じゃあ自覚してたら、意味ないの」

「そういうことだね」

 

―――うわさ

 

 これはなんだ……誰のことを言っている?

 

いやたぶん多くの人間に当てはまるものかもしれない。自分がゴーストだと気づくには、「ゴーストである他人を見て」ようやく自覚するんだろう。あー自分はあいつと同じ亡者だったんだと。

 

あずま夜の件しかり、綾の件しかり、東雲兄の件しかり。もしくはラン自身のことについて

 

 

 

 

 玉樹桜と学園

 


「学園が無い日は、勝手に出てきちゃダメなの」

 

―――初雪

 

ほー……? 学園がない日は、「サクヤ」が顕現したいからってことなんだろうか。ずっとうさぎのままじゃ息詰まるものだから?

 

やっぱりそのあいだ、桜の肉体はどこに安置されているのか気になる。

 

 

 

 

劇と観念

 


白い仮面をつけた、マントの男。明らかに異質な姿の男を、一家の誰も見とがめない。 

誰にも見えぬとこたちは、その剣で、町の人々を次々に串刺しにしていく。

男に刺された者達は皆、仮面の者となり、男と共に、街の人々を手にかけていくのだ。

 

「これは復讐の物語ですよ」

「現実では果たすことの許されない復讐の……演舞」

 

―――宮棟

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おでんのおやっさんからもらった劇のチケット。初雪と桜は二人で劇を見に行くことになる。

その劇で上映されていたのは、復讐の物語。これは偶然か?

宮棟が計画したなにかなのか?

 

わからない。

ただ宮棟は、初雪にこれを見て、真実をちゃんと直視しろとでも言いたげな言葉ばかり吐きつける。

 

 

 


「我々は忘れない。

けれど、今を、生きるためには、復讐に囚われ続けては進めない。平穏は訪れない」

 

「自分のうちにある、無念を、義理を、けじめを。いくつもの、心を、殺しながら……何食わぬ笑顔を浮かべて、生きなければならないときがある」

 

「それが大人というものです。社会に生きるということです」

 

「だから私達は、この劇を作り続ける」

 

「置き去りにされた哀れな魂達に、この劇を、捧げ続けるのですよ」

―――宮棟

 
宮棟のいうことはきっと「楽に生きる」という意味では正しいんだろう。憎しみを抑えつけ、苦しみを抱えながらも、平然とした顔で生きていくことこそが、大人なんだと。

そしてそれが叶わないなら、その痛みを「観念の世界」で昇華させてしまえばいいとも。そういう道だってあるんですよ初雪さん、と宮棟は言いたげだ。

 


そうやって今を生きることだって出来るのですよ。創作とは、芸術とは、許さずさまよい続ける想いの救いの場なのです」

―――宮棟

 

「物語化」という現象がいまいち、私には腑に落ちていなかったけれど、宮棟のこの言葉はまさに「不幸を"物語化"し救済する手立て」と同一のものだ。

実体の世界はではなせないことも、観念の世界ならばすべて救済できる。すべてを助けることができる。そしてそれを偽物、紛い物と呼ぼうが関係ない。偽物と本物違いなんて無いのだから。

両義的な関係にすぎない「本物/偽物」。


なら、初雪の「復讐したい気持ち」も、実体の世界で叶えるのではなく、観念の世界で叶えてしまえばいい。……。理屈としてはわかる。私としては納得もできる。けれど、初雪はこれを納得できるのか?……。

 

 


痛みは正しく循環しなければならない

 

「痛みを受けたならば……1人で抱え込まずに、その痛みを、誰かに受け止めてもらわなければならないのです」

「ため込み続ければ、やがて邪念に心を侵され、気づかないうちに、ゴーストに変貌してしまうでしょう」

 

 

「あなたのように、ね?」

―――宮棟

 

 痛みは。正しく。循環しないといけない。か。


―――その痛みを誰かに受け止めてもらわなければならないのです


これはなにも直接的な暴力、だけといった意味じゃないんだろう。初雪が気持ちを吐き出し、なぜ復讐したいのか? なぜそんなことになったのか? そういった感情を受け止めてくれる人がいればいいとも聞こえる。

そういった気持ちの共有とは、"痛みを受け止める"ことと同じだからだ。相手が辛いを思いを共有したのならば、受け止めたがわも辛くなる。


痛みは正しく循環せねばならない。


だとしたら、これが最良の手だとするなら、「初雪を救うには、初雪自身が心を許せる相手を見つけなければならない」とも言える。誰かに自分の怨嗟の声を聞いてもらうために。


つまり、「初雪が世界を愛さなかったら」、初雪は死ぬ。

 

 

 


「あの舞台にこそ、お前の知るべき真実が含まれている。

そろそろ、いろいろなものから目を逸らすのをやめて、向き合うことが出来ませんか」

―――宮棟

 

宮棟のこの行動は、とても急いでいる感じがある。初雪に劇をみせ、彼の心を揺さぶり続けていく。

サクヤはこのことを承知していたのか? いやそうじゃない。

宮棟は「オーラス」を見る限り、初雪に興味がなさそうだった。研究用としてのサンプルとしての興味は合ったと言うが、人としての興味はなかった。

じゃあこれは、宮棟の慈悲による行動ではなく、なにかしらの「イベント/事件」を起こすための一手ということなのか?

 

Q1、宮棟はなぜ初雪にゆさぶりをかけた?←保留。いまだ謎。

 

 

 

 


「俺の何を知っている? ですって」

 

「あなたこそ、自分のことを、この街のことを……何を知っている」

 

「どれだけの、自覚のもとに、復讐などだいそれたことを口にする。河野初雪」

 

お前だけが、戦っているつもりで、やけばりになる権利があるなどと、思うなよ。河野初雪」

 

「忘れるな。あなたが滅びるのは、誰のためでも、誰のせいでもない

 

あなたが愚かだからだ。それだけだ。それだけは忘れずに滅びていけ

 

「間違っても他人を恨み、たたるなよ」

 

「ゴーストチャイルド」


―――宮棟

 

 厳しいね、辛辣な言葉ばかりだね。

宮棟が何を背負って生きて、どういう人間で、どういった思考をして、なにが好きなのか結局分からなかった。

でも、彼女にも許せないことがあるんだろう。そんな滲みをこれらの言葉から感じ取ることができる。

初雪の行動や生い立ちが、宮棟にとってとても神経を逆撫でられるものなんじゃないだろうか。愚かで愚鈍だということを、思い知らせるために、お前がだけが戦っているわけじゃないんだということを教えてやらねばと彼女は思ったのかもしれない。

明らかに、宮棟は、初雪に、好意的な感情を持ちあわせていないからな……。

 

 

 

無知を肯定するということ

 


「河野君。何か事情があるなら話して。私は、ほんとのところまったくの無知だから……」

 

「さっきの劇を見て、河野君に……重大な発見があったとしても、分かってあげられないから」

―――桜

 
桜のすごいところは、こういったところだよなあ……と何回も思う。自分が「知らない」ことを、肯定できる力とでも呼べばいいんだろうか。

私にはまったく分からない。分からないことを「分からない」と口にだせること。分からないからこそ、「どういうことなの?」「教えてよ」と"知る"ための行動を紡げるということが、素敵だなと思う。

なにか分からないことがあったら、口を噤んでしまう人が殆どでしょう、私も含めて。知らないことは恥ずかしいこと、という倫理観がはびこってますから。だから、「分からない」と口にだせない。

分からないことは別に恥ずかしくもない。無知であることも、なにも知らないことを"良し" とできるほうがいいと思う。


 

 

サクヤの忠言

 


「これ以上はいけない。これ以上話したら……あなたは……」

―――サクヤ

 

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廃墟という楽園

 


今振り返ってみれば、どう考えたって異常な境遇だったけど、そんなことは思わなかった。

 

むしろ外にいるとき……学園にいるときのほうが、俺は異邦人のようだった。間違って紛れ込んでしまったような、居心地の悪さ……。

 

このホテルにいるときの方が、ずっと自分がそこに生きているんだっていう、実感を得ることができた

 

ランがいたから……俺は、やっていくことができた。この世界で。

―――初雪

 

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初雪のこういった「疎外感」はどうして生まれてしまったんだろう。

彼は稀代の霊媒師の息子だった。ある日、出席したパーティでの火災により、いろいろなものを喪う。わりと平和だった日常とかそういうのを。

父親やその取り巻きは、復讐に駆られた。死ぬ間際まで。その果てぬ想いを息子に継がせるために、ランに初雪の教育(&保護)を任せるほどに。


あのパーティの事件をきっかけに、心象領域が捻れてしまったのだろうか……。いや、どうも違う気がする。

ランとの生活が心地良すぎただけなのかもしれない。初雪とランの廃墟生活は、世間から見れば異常だろう、社会と比較すれば狂っているだろう。

でも彼にしてみれば、そこが一番落ち着いた場所だっただけ……か。

 

 


ランだけが俺の隣にいた。家族だった。

成長していくことに、意味を与えてくれた。


ランが願ってくれるから、立派になってと願ってくれるから、がんばれた。

―――初雪

 

 ランの愛情は、いろいろなものを失ってしまった初雪にとって生きる意味と同義になり、その代わり、失ってしまえば、ゴーストになりえる代物。

 

 


「寂しくて寂してくて、死んでしまいそうだ」

「皆に会いたいよ」

 

「俺は肉体もいらない。この世で、花の匂いをかぎたいとも思わない。触れたいとも思わない」

―――初雪

 

初雪が欲しいのは、楽園幻想ってことか……。もしくは黄金色に彩られた郷。

 

 

 

 

楽園幻想の乾きの果ての、求めてやまない交接

 


「いく、いくよぉ。もう、もう、いっちゃうよぉぉぉ!!!」

 

「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

 

「あ……」

 

ふと、意識が醒める瞬間があった。そして身体の中で焼けるような温度を持っていたはずのランの身体が、冷たく硬くなっているのを感じた。

俺に抱かれているランは、人形だった。

暗い、うつろな目で俺を見ている。

 

俺を哀れんでいる。

―――初雪、ラン(幻想)

 

いいなあ……これほんといい……。

 


「ラン!! ラン!」

 

一度、気づいてしまえば、もう……ランの身体に熱がともることはない。

 

彼女は人形なのだから。それでも俺はランを求め続ける。

 

「ああっ、ああぁっ……。初雪っ。んぁっ、ああぅっ、あん、んぁああああっ!」 

  

こういうセックスいいなあ……と思う。乾ききってひび割れたような心を、少しでも慰めるようなそんな交接。

求めて求めてやまない存在がいて、それだけを望んで、それだけを願っている、小さな幸せをどうにかして叶えたくて仕方がないような。

どれほど願っても叶えられない悲痛さが、胸をえぐっていく。いくら腰を打ち付けても、太ももを擦っても、そこにあるのはただただ空虚な想いの残滓のみ―――そんな感じがとてもいい。

 

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そうして……心の奥底の方で、何かが燃え上がるのを見た。

それこそ、最後の冬に至るための……。

 

 

 ランとの交接を経て、初雪は到達してしまったんだろう。「王の自覚」という境地に。もう現世に未練も執着もなくなっているようだった。

すべてを捨てさって、なくしたすべてを取り戻そうと必死になっているように見えた。

 

 


最後の冬だ。パレードのはじまりだ。

 

「おい」

 

「む?」

 

「覚えているか」

 

「我々は……」

 

「お前によって葬られた、いくつもの魂だ」

 

―――初雪、男(おそらく佐々木)

 

 一周目ではよく分からなかったけれど、この「男」というのは、「佐々木議員」という老人のことに違いない。

 

 


「やめなさい、河野初雪」

 

「その人をあやめたって、どうにもならない」

 

「死んだ人は帰ってこない」

 

―――サクヤ

 
そうだねその通り。佐々木を殺したところで、誰も蘇らない。得るのは、達成感だけなんだろう。

でも「復讐」は理屈じゃない。感情だけで動いているこれは、本能で動いている獣とそうかわりはない。悪い意味ではなく、復讐は感情だから。気持ちだけで動いているものだから。

 

 

 

 

玉樹桜の行方

 


「よう、ウサ公。玉樹は、どうした」

 

彼女なら、あるべき場所に帰ったよ

 

「そして、審判をくだそうとしている」

 

「ねぇ、河野初雪。なぜ、この街には反魂香の匂いが満ちていたのか知ってる?」

 

「全ては、あの子を……桜を呼ぶためのものだった」

―――初雪、サクヤ

 

 桜のあるべき場所とは、あのホテル「ホッシェンプロッツ」に戻ったということか。あるいは、サクヤの手に討たれて「消えていなくなった」ことを言っているんだろうか。

後に、桜は哄笑しがら泣く。だから、サクヤの手によって討たれてなくなった線は無いように思える。……でも、そうするとおかしいな……サクヤは「桜という力」を恐れて、街に反魂香を焚き、願いを叶えるべく奔走していたんだから。

どういう場合が考えられるだろうか。前提としては「審判を下せる」「あるべき場所に帰った」「後に哄笑する桜が現れる」という3点をクリアすればいいはず。

1、桜は消えていない。


桜はサクヤ によって討伐されていないと考える。審判を下せるというのは、桜がもともと持っている(?)莫大なゴーストの力によって「街を殺すかどうか」のこと。

あるべき場所とは、「ホッシェンプロッツ」に舞い戻ったんじゃないだろうか。あの場所に封じられているゴーストの群衆を利用するために。

 

しかしここで問題が発生する。それはサクヤの行動動機につじつまが合わなくなるということ。(さっきここは言ったので割愛)

となると、サクヤは、自分の動機をあえて覆したということになる。

つまり、サクヤがするべきはず「桜を沈める役目を放棄」したということ。

「オーラス」によって、サクヤは初雪にあわい恋ごころを秘めているようなことを言っていた。

そしてサクヤは、桜のことが好きだろう。接し方をみるに。彼女がどういう境遇のもと、こんなゴースト狩りをしているのかわからないが、「玉樹桜」「河野初雪」という人物に当てられ、役目を放棄してしまった。

と見てもいいと思う。

桜に街を壊してほしくはないけど、もう止められない。みたいな……さ。

あるいは役目を放棄したのではなく、桜の力が手に負えなかっただけなのかもしれない。もうサクヤの力では手綱を握ることは出来なくなったと。

 

 

 

2、桜は討たれて消えた

 

サクヤは桜を討った。ゆえに彼女がいう「あるべき場所」とは、「消えた」という意味だろう。現世にはもういないよとそう言いたかったんじゃないだろうか。

しかし、桜を討っても、彼女という存在は消えなかったという可能性。「オーラス」で、桜は卒業写真にうつっていた。ならば、彼女は討たれても「存在し続けられる」んだろう。

想いの強さによって、初雪の憎しみを肩代わりして、街を滅ぼすようになってしまった(=審判を下そうとしている)。という見方。

 

 

 

 

 役目を果たした初雪

 


「はぁ、はぁ……はぁ……」

 

「ぅぅ……」

 

ぐったりと、部屋の真ん中に倒れ込み、辺りを眺める。

……誰もいない。

このホテルをさまよっていた、ゴーストどもの気配も消え失せた。

俺は、役目を果たせたのだろうか。

 

―――初雪

 
佐々木議員を殺そうとしたところ、サクヤに止められた後。なんらかを経て、傷つきながら初雪は帰ってきた。

状況を察するに、サクヤ(または仮面の集団)との死闘を繰り広げてきたんだろう。体中は傷つき、息も絶え絶えになるほどに。

そして、おそらく―――初雪は佐々木を殺した。

 初雪は「役目を果たせたんだろうか?」と自問する。そして何かが起らないのかと待ち続ける様子は、「役目を果たしたからこその状態」だといえる。


役目とは、復讐を成就すること。復讐とは佐々木議員を殺すこと。

 

 

ランやゴースト達の願いは叶ったんだろう。パーティの事件を引き起こした当事者(と思われている)佐々木をぶち殺したんだ。復讐を叶えた彼らは____たぶん満足して消えていったんじゃないか?

 


彼女の、皆の、魂は、解放されたのだろうか。今はそれだけが気になった。

「……」

 

俺は、ただ待っていた。

誰かが、俺の成したことの結果を……伝えに来てくれるはずだ。

 

「なぁ。誰かいないのか」

……

 
だからこの廃墟には、もう誰もいない。ゴーストの気配もない。ランは……どうなったのかは分からないが……。

 

 

 

 

 その先にあったもの

 


あの学園だけは、俺が唯一、自分で選んだものだったんだな。

 

そうして、出会えた人もいた。あの場所で、俺は確かに存在出来たんだ。


もう、帰れない。

こだわっていたのは、ランとの約束のためだった。愛着があるとも、思ったことはなかった。

 

でも今思うと……

  

胸糞悪い顔に、胸糞悪い思い出ばかりだけど……


その先にあるものを、見てみたかった

―――初雪

 

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「Prologue」は初雪の復讐を叶えた物語。

憎き人物を殺し、長年の願いを叶えることができたそんな物語。

でも。初雪はその果てに思う。

「学園での思い出は胸糞悪いものばかりだったけど、その先にあるものを見てみたかった」と。


…………。私はさ、何かをされ、何かの被害を受け、その果てに憎しみを持つことを否定したくない。「復讐」という行為を否定なんかしたくはない。初雪の歩んできた軌跡を、決して悪いものではなかったと言いたい。

復讐は意味のない行動だとか、無価値であるとか、そういうことじゃなくて。そう思った気持ちを認めたいという感じなんだろうか。

復讐の果てが、すこし悲しくて寂してく、乾いた空虚さを伴っていたとしても……。

 


いろんなことに、気づけなかったのかなぁ。

大切なことを、取りこぼしてしまったのか。

だから今、一人、こんなところに取り残されてしまっているのか。

―――初雪

 

 でも、もし、復讐を捨てるのではなく、「超えた」先に、もっともっと初雪にとって幸せな未来があるのだすれば、それも是としたい。楽園幻想に包まれ、火炎で身を焼かれるゴールよりも

 

卒業(=ゴール)という道を歩んで欲しいと思うのは、いったいぜんたいどういうことなのか自問してしまう。

「Prologue」で迎えた結末も、私はそれなりに好きなのかもしれない……。初雪の苦渋の末に至ったこれを。心臓から血を吹き出しながらも足を止めなかった彼を私は好きなんだろう。

だから、虚ろな最期に一握りの幸せがあったんだと思ってしまう。(あーナニヲイッテイルカワカラナクナッテキタネー)




涙で景色がにじんでいるのかと思ったら、煙が立ち込めていた。

火がまわっているらしい。

+++

ただゆっくりと現実が焼け落ちていく。ぼろぼろと。

けれど、崩壊していく景色の中にあって、逆に浮かび上がってくる影があった。

 

まるでこの世界全てを引き換えに、俺に与えられたような、それは……

 

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部屋には煙が充満し、火がすべてを燃やし尽くしていた。

なぜ、初雪の部屋に(廃墟ホテル)が火で覆われてしまったのか?

初雪がしたことなのか?
それともサクヤの一派がしたのか?

それとも―――これは初雪のまぼろしなのかもしれない。

火で燃える部屋というのは、パーティでの爆発事件のことを想起させる。彼は、頼りない記憶をもとに、いろいろなことを再現しようとしているのかも。

または、火というのは「意味を焼き切る」ものなので、もうこの世にいる意味を見つけられなかったのかもなと。

  


「立派になりたかったよ」

「お前が願ってくれたように。立派に、なりたかったんだ」

―――初雪

 
この復讐で幕を下ろす結末は、初雪にとって「立派」ではなかったのか……。立派な人生、立派な生き様、立派な生き方ではなかったのか。

美しいゴールでは無かったと、初雪は思ったんだろうか。

 

 


そうだ。

誰も恨んでなどいなかった。

俺の中にあった復讐は、俺自身を焼きつくすことだけを、求めていた。

世界を焼き尽くすよりも……。

この身を焼き尽くせば、皆に会えるのだと信じて。

―――初雪

 

 "誰も恨んでなかった" という言葉がとても気になる。

ランを討った「コノハサクヤ」でさえも、初雪は恨んでなかったんだろうか?

恨みよりも、自分の身を焼きつくすことで、皆に会えるのだと……そう思っていた……?

……ん。そうか。初雪が願っていたのは誰かを害すことじゃない。ランやみんなと逢いたかっただけ。そうかそうか。

「ランや皆とただ逢いたかった」だけだったんだ。ランやゴーストは復讐を最終目的にしていたけれど、初雪は違う。そうじゃない。彼は「大切な人と逢うことを」目的にしていたんだ。

復讐は過程でゴールじゃない。
でも、そう思い込まされていた。そう思うように仕向けられていたせいで、うまく自分の気持ちに気づかなかった……のか……。


 

初雪の願いは、観念の世界で成就される

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「帰ろう」

 

「楽園へ」

 

「あぁ。やっと……」

「やっと帰ることが出来るんだな、ラン」

 

 

炎はやがてきらびやかな光へとかわっていく。

鮮やかな色彩の景色と、なごやかな人々のざわめきが、蘇ってくる。

賑わう大人達の足元を早足でめぐりながら、俺は探し続けていた。


探しもの……そうだ。

あの子を見つけないと……

 

「初雪。ほら、あの子ならあっちだよ」

「え……」

「はやく行ってあげなよ」

「ほらほら」

 

早く見つけてあげないと。遠いところへ行ってしまう

 

 

 


 ランが、父さんが……母さんが、微笑みながら見守っている。

 

「さぁ、王子様と王女様の婚礼を執り行おう」

「ゴーストプリンスと、ゴーストプリンセスの婚礼だ!」

 

 

 

 


ここからやり直そう。

もう決して、この手を離しはしない。

俺が守る。

だから、大丈夫だよ。

もう、誰も傷つかない。

 

帰ろう。楽園へ。

 

「病めるときも健やかなる時も、新郎を愛することを誓いますか」


「はい」


「永遠に、愛します」

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 火炎で包まれた部屋。初雪はそこでランと出逢う。そして彼は、遠い昔に交わした婚礼を思い出す。ランと同じくらいに大切に "するはず" だった女の子を思い出す。

―――ここからやり直そう。もう決して、この手は離しはしない。
―――だから大丈夫だよ。もう、誰も傷つかない。
―――帰ろう楽園へ。

そして、交わされることの "なかった" 婚礼を再びやり直す。桜との出会いをやりなおす。桜との誓いをやり直す。ランとの日常も、父親との思い出も、母親との逢瀬もすべてすべて……。

私は思ったんだよ。初雪がしているこれは、「自分を救うために行なった観念での昇華」だと。実在する現世では、初雪はとうとう立派になれなかった。ゴールを迎えられなかった。

ランにも会えなかったし、桜のことだって忘れてそのままだった。


でも「観念の世界」なら、「物語化した世界」なら、初雪の願いは成就する。大切だったランと女の子に逢いたい。あのパーティで怨嗟の声に塗れていって死んだ人を取り戻したい―――それがすべて叶う。


そして雪は降る。街に雪は降り続ける。


魂で覆い、すべてを喰らい尽くそうと。

 

 

初雪の願いは観念の世界によって成し遂げられた。
でもそれは、彼が「この世界を愛さなかった」ことと同じだ。
だから、桜は慟哭する。泣き叫ぶしかないんだ。

 


「あはははははは」

 

「雪をふれふれもっとふれ」

 

「全てを喰らい尽くしてしまえ」

 

「彼は世界を愛さなかった」

 

「彼は、生きる者を、誰をも愛さなかった」

 

 

「あなた達も彼を愛さなかった」

 

「だから、こんな街には、価値はない」

 

「彼が愛さないこんな世界に価値はなあああい!」

 

 

―――桜

 

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「桜ぁ……」

 

「やめて。それが、あなたの願いだったわけじゃないでしょ」

 

「私は桜じゃない」

 

「ゴーストチャイルドだ」

 

 

桜はこのあと審判を下すんだろう。
この街の生殺与奪権を握っているのは彼女だ。

初雪が(この世界で)救われなかったのなら、この世界に一体なんの価値があるんだろう? そう思って当然かもしれない。


雪は降る。降って降って降り続ける。 

 

 

<Prologue編 感想 終>

 



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『はつゆきさくら』_初雪が春へ至るためには何が必要だったのか? 死者は何をもって生者へと復活できるのかを考えてみた(21461文字)  


 

<参考>

 

 


はつゆきさくら 通常版
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