ゆのはな―ある冬の暖かい物語―(感想レビュー)

f:id:bern-kaste:20160716205425j:plain

 

ゆのはな(PULLTOP)

 

季節は冬。

外に出ればぶるぶると震えてしまう寒さが待っている。手はかじかみ、吐き出す息は白い。手のひらで溶け出す六花を見てはやっぱり冬なんだなあって実感する。すると「この気温は堪えるでしょ?」と声をかけてくれる人がいて「ほら、こっちきなよ」と家に誘われる。

そこはどこか賑やかで、暖かい。実際に部屋の隅々まで暖房が効いており、さらにこたつも完備。卓上にはどんと大きな鍋。見知らぬ人間とぬくぬくしながら(なぜか)わいわいと肉とかネギとか豆腐をつつきあい、酒を呑む。「至れり尽くせりだね」と見つめると「趣味なんだ」と返される。「赤の他人と食事をするのが?」「それも含めて」、とわけもわからない会話にお互いなんとなく笑ってしまう。

ゆのはな』は、そんな人との奇妙な縁に微笑んでしまうような、ある冬の暖かい物語であった。

続きを読む

物語における『世界観』は十全に使い切るべきか?と言われればそうではないが、そう思ってしまうのは何が原因なんだ(甲鉄城のカバネリ~こなたよりかなたまで)

f:id:bern-kaste:20160714222602j:plain

こなたよりかなたまで』『甲鉄城のカバネリ』ネタバレ注意

 

 

Q,「世界観が十全に使いきれていない」という不満はどこ?(こなかなからカバネリまで)

続きを読む

批評と創作はある一点において本質的に同じである。(1812文字)

f:id:bern-kaste:20160627170103j:plain

*内在的考察とは別領域のお話なので一緒くたにしないようにね。

    

 

 

批評=創作

 

印象批評からフォルマリズムまで、批評行為とはある対象が存在しその対象を語るもの」である。

視聴した作品が己の心を揺さぶったならばそれは如何なる場所で、如何なる高揚があったのかを書き綴り、文章外形に着目するならばそれはいかなるもので、いかなる効果を読者に与え、異化について考察したり、作家を接続し、社会を接続し、他作品を接続し、外部文献を接続して語ることもあるだろう。『魔法少女まどか☆マギカ』ならば虚淵玄東日本大震災ファウストをそれぞれ繋げていくように。

続きを読む

恋色空模様―神那島の空が緑茶色に染まる―感想レビュー④

f:id:bern-kaste:20160510020516j:plain

<恋色空模様・一連エントリー>

 

 

恋色空模様 感想

 

これまで『恋色空模様』へ3通りの記事を書いてきましたが――その内容は上記を見て頂くとして――では良いところはなかったのかと言うとそうではないと思います。私からすると「物語内容」はダメですが、しかし「作品外形」は良かった。

立ち絵演出による「拡大/縮小」「回転」「上下左右による細かな挙動」が際立ち、テキストによる情景描写がいらないくらいに常に画面が賑やかなのは評価していい部分でしょう。特に聖良VS佳代子戦などは立ち絵のみで戦闘を描写しよく動き*1、さらにテキストウィンドウの可変方式、複数人の吹き出し、SD絵でのアニメーション、かつワイプ描写も使いこなすため「ADV外形」の作り込み具合が半端ではなく見ていて楽しいゲームになっています。

立ち絵もロリ萌えっとしたイラストで、特にクセを感じるわけでもなく受け入れやすいのではないかなと。HITする人にはHITする愛らしさがあるでしょう。

あとは…1話1話区切っており――話数のはじまりに必ず次回予告と前回のあらすじがあるので――プレイに一段落つけやすく、読みやすいですね。アニメ的な構造をADVに取り込んでいるといえばいいのかな。

まとめると「立ち絵演出」「絵の可愛さ」「ADV外形の作り込み」「話数構造の導入」は評価できるということになります。

 

   ◆ ◆

 

しかし物語内容は言わずもがなので、この外形による楽しさは結果的に相殺されているのは残念。いくら立ち絵演出がすごかろうと話数単位に区切って読みやすさがUPしようとも、それらを魅せる物語自体が驚くほどつまらない茶番劇なのでどうしようもないです。

このブログはじまって以来の最低値を記録した作品であり、少なくとも私はこういう評価・感想であり、『恋色空模様』のいいところはこれ以上思いつきませんし、惹かれるヒロインが一人もいなかったのもストーリー・表現力の酷さによるものでしょう。

 

参照→恋色空模様のどこがダメで、どこを批判したいのか語る

 

あらゆる作品は好きな人と嫌いな人に分かれるものです。どんなにつまらなくても「私は嫌いだけど好きな人いそうだよね」と薄っすらとでも思えるものです。しかし『恋色空模様』に限っては「これ好きな人いるのかな……」と思うほどに個々人の相性の有無をぶっちぎりに超えた地獄がそこにはあり、私の許容値をはるかに超えた物語でした。

一言でいえば杜撰。二言でいえばとても杜撰。

この自己実感から逃れるために物語の価値観の方も探ってみましたが、そこを加味しても、本当に駄作中の駄作であり、愚作中の愚作であり、一欠片も肯定できない低レベルな作品です。

 

『恋色空模様』は論外レベルで表現力がない。控えめに見ても無理を押し通しすぎだし、納得感なにそれ?という具合に春樹がいきなり昏睡したり、かと思ったら都合よく目覚めたり、殺人人形(Killing Doll)を繰り出したり、学生から大人まで主人公を狂気的なまでに褒め称えたりと無茶苦茶だ。

 

――恋色空模様の表現力の低さは『失敗』にはならないのだろうか

 

私はこれ、すこしも評価できません。

 

 

私的満足度:★(1.5)
擬似客観視:★★(2.2)

 

  プレイ時間   50時間
  面白くなってくる時間   そんなものは存在しません
  退屈しましたか?   しました
  おかずにどうか?   使える人には使えるんじゃないでしょうか
  お気に入りキャラ   いるわけがありません

公式HP│http://www.studio-ryokucha.com/koisora/

 

 

  *以下、プレイ雑感。

*1:ただそれでも私はテキストに情景描写が欲しい人なので、あまりここが特化しすぎてもどうなのかなと想いはしました。

続きを読む