一ヶ月こつこつと書いてきた『SCE_2』の考察になります。3万文字と大分量があるのでまったりと読んでいたければ幸いです。
考察に進んでいく前に『SCE2』をクリアされたかどうかを判断できる記事があるのでまずそちらに飛んで下さい。
もし未クリアな場合は、この記事を読むことは避けてください。あなたのプレイの楽しみを奪うのは私の目的ではありません。
以下の記事でご判断を。
準備はいいですね? それではいきましょー
<ネタバレ注意>
SCE_2を考察する
1 )admin権限
SCE2でプレイする『スカイハイクロノスエンドレス』(以下、SCE)の開発室では重要なことが書かれている。
例えばウイング・希望の装備に関しては以下のとおり。
しかし皮肉なことに、幾らかのキャラクターは[誰かに縛られているわけでもなく]自らの意思でこの世界の成り立ちに叛逆し始めたのだ。これは私たちにとってはじめての危惧となる
(希望)
さらにここの文章と繋がりがありそうな所を追ってみよう。
また、サザンカには、この世界のadmin権限を譲渡した。神に漸近する権限を後じさせる事になるが、彼女は、理性と自我を持った強烈なキャラクタを保持しており、世界の安定と安宴の意味を誰よりも理解していたので、最初は心配していなかった。
「サザンカ」の母体に管理者の権限を与えた事は間違いだと後悔しているが、「クローバー」に同様のそれを与えてしまった事は幸とも不幸とも言える。誰にでも電源を入れられる核爆弾のような物だから
(エンドレスクロノ)
つまり『SCE』を作ったゲーム開発者は、強烈な自我を持つサザンカにadmin権限を与えても大丈夫だと判断した。
このadmin権限はいわば世界創造の力と言ってもいいはずの代物であり、エンドレスクロノの説明から察するにサザンカはそれを自分の欲求のために使っているんだろう。だから開発者は後悔しているという発言に繋がる。
私たちが作りたかったのはこんな世界や終末ではない。こうしてゲームのメッセージに滲ませて、約束通り事象の説明を送り続けているが、それもじきに気付かれるだろう。(文鎮)
これは「SCE」「SCE2」どちらの世界の事にも取れるが、この説明が「SCE」の内部でされていることから「SCE」についてこんな世界を作りたかったわけじゃないと言っている可能性が高い。
SCEを作った人は一体なにに後悔しているのか?
それはサザンカはadmin権限を使い「終わらない世界」を作ってしまったことだ。永久にフライトし続ける世界なんてゲーム開発者は望んでいなかった。
しかし何故サザンカはそんな世界を望んでしまったのか? その答えも装備欄にちゃんとあったりする。
物語の終わりは世界の終焉ではない。
物語が終わる事で世界も終わってしまうのならば最初から誰も物語を進めなければいいだけの話だ。決められたレールに沿うだけの人生と大差ない。彼らはそれを理解していた。(たんぽぽ)
物語も世界も終わる事を恐れるなら、幸せな場所に永久に居続ければいい。気持ちよい風が吹き、食べ物があって、休める家があれば、そこで死ぬまで暮らそう。それでいいじゃないか。本質はそれだけの事でしかない(釣竿)
物型を終えることは世界の終わりではない。
しかしそれはあくまで私たちの認識でしかない。その世界で生きているキャラクターからすれば物語が終わること、ゲームクリアされることはもしや世界の終わりなのではないか。
サザンカにとってSCEというゲームを「クリア」されることは世界の終わりでしかなかった。私たちにとってはそれは「ゲーム」でも彼女にとっては「世界そのもの」なわけだ。
世界が終わるということは、それは自分が死ぬことと同じで一切合切の全てが無へと消え去る。そんなのはその世界に生きている人間にとって忌避したいものだろう。
サザンカはそれを理解していた。だから繰り返し続ける毎日を選んだんだ。物語を進めることはせずに、ずーっと同じことの日々を決断した。
だが、サザンカが望む「世界の結末」は、物語の完結ではない。むしろその逆で、物語が永久に引き伸ばされる事こそが彼女の展望であり、彼女が望む世界の終焉である。彼女は世界が終わらない事が終わりだと信じている。
(グラビティ=ギア)
私は「SCE」をちょこっとしかプレイしていないが、あのゲームがループし続けるのはそういうことなんだろう。
同じ日々を繰り返すことはサザンカにとっては幸せな場所に永久に居続けることと同じ。気持ちよい風が吹き、食べ物があって、休める家があればそこで死ぬまで暮らそう。そう思ったに違いない。あーなんて可愛さなんだろうね。
しかしSCEがずっと繰り返されているのならば、今作の『SCE2』という世界があるのはおかしい。
結果だけを見るならばおそらくSCEはプレイヤーにクリアされてしまい終焉を迎えたのだろう。
もちろんサザンカはこの世界の終わりを拒んだ。神にも漸近する力・admin権限を用いて世界の維持を図った。
そうして出来上がった次のステージ『SCE2』という地下世界だと考えられる。
2)代わりの世界
『SCE2』ではやたら「母体」という単語が出てくる。クローバーに母体はないとかだと、リクケイの母体はサザンカだとかそんなふうに。母体とは「前作のキャラクター」のことだ。
「リアスはケヤキの役割を受け継ぐキャラ……と言ったかな」
「あれは半分は事実で、半分は私の願望だ」
「サザンカとリクケイが同じ役割を果たす程度には」
――女の子
サザンカはそのキャラクター設定としてケヤキに恋慕の情を抱くというデザインがあった。ただの設計案であり作中には生かされていないが、物語には大きく影響している。ケヤキの隣に最期まで居るのは、サザンカなのだから。
――SCE開発室・アミグダリン
エスチャリー「じゃあ今地上に行ってるアイリアとリクケイは誰よ」
ベーシン「リクケイはサザンカだろう」
――裏・ロビーでの会話
リクケイ=サザンカっていうのは確信していい。リクケイの母体はサザンカであり、強烈な自意識を持つサザンカそのものである。
前作にいたサザンカは、今作はリクケイというキャラクターに成り代わっているとみて間違いない。
そしてこの世界でもまたリクケイ(=サザンカ)は終わらない世界を望んでいるんだろう。クリアされることのない、閉幕しない、地下を掘るだけの世界を彼女は創造した。
ここで疑問がある。
なぜ地下の世界を作ったのか? 別にそこらへんの村でも街でも作ってふつーに暮らせばよかったじゃないか?
しかしそれではダメだ、何故ならリアスに空を見せてはいけない。ケヤキを模した彼に「空」を見せてしまったら最後絶対に上へ目指そうとしてしまう、人間は高みを目指す生き物だからだ。空を目指せば「SCE」の二の舞いである。
だからこそ「空が見えない、地下世界」を作ったんだろう。
「SCE2が地下の話なのは、空を見せない為だ」
「プレイヤーにじゃない。キャラクターにさ」
「人は生まれながらにして、上を目指す生き物なんだ」
(中略)
「だから……だから、モグラは空を見られない」
「彼らが空を見るときは、全てが終わる時だけ、だろう」
――女の子(notWorld)
ただ地下世界を作ったわけじゃない。
モグラという存在を生み出し、モグラの世界観を創造し、モグラの生き方を造りだし倫理観でさえもリアスを縛り上げた。私たちは監視され絶対に地上に行けなかった。
ま、だからこういう生き方が幸せなんだぜ、と言いたげに。
それは表ルートの社会の教科書でも十分見られる。
"我々は、モグラに生まれついた時から、その生涯の安寧が決定している。それをわざわざ捨て去るような真似を、どうして選ぶ必要がある?"
地下を掘り続けるだけの毎日がいいことであり、地上を目指すだなんてとんでもない。サザンカはそういう常識を作ってリアスを囲ったのである。
◆
そういえばエスチャリーやベーシンはこんなことを言っていたよね? 裏の6面を入ったあたりでの会話で。
「『世界そのもの』が死んだら 『世界の死後の世界』はあるの?」
――エスチャリー
そう質問したエスチャリーに対しベーシンはこう言う。
「代わりの世界を探せばいいだけだろう」
――ベーシン
あそこで彼らが言いたかったことは、何も一般的な答えを探していたのではなく、サザンカの行動について思索をめぐらしていたんだろう。
SCEのキャラクターであるサザンカにとって、その「代わりの世界」が今回のSCE2という話だったんではないか。
前作・SCEはプレイヤーによってクリア(=終わりに)されてしまった。サザンカは終った世界を後にし、今度はSCEから→SCE2という世界に居場所を移した。
エスチャリー達が言ったように「コミュニティ世界」が終ってもまた別の「コミュニティ世界」へと移動すればいいだけの話なんだ。
まとめよう。
つまりSCE2というゲームは、リクケイことサザンカの願い「終わらない世界」という意思によって創られたものである。いくら素材を集めて上級ドリルを作っても地下を掘り進めるだけのこの世界にゴールはないしクリアだってない。
例え「地上」を目指そうともモグラが作れる機械ではどう頑張っても地上到達できないときている。いや、サザンカはそういうふうに世界を作ったんだ。
これがSCE2という世界のルール。
絶対にクリアされないことを目的にした世界である、そこを念頭に置いておくといいと思う。
「無駄なんだよ、無駄 私たちの機械じゃ地上は目指せない」
「それでも無意味に対して挑戦したければ 私はその行為を止めたりはしないよ」
――リクケイ
彼女はすべて分かった上で言っていたんだろうな……。
3)主人公がいないと滅びる世界
サザンカはadmin権限を持つことで、自らの意思を世界に反映させた。
しかしいくら管理者権限があるからとはいっても、彼女にはいくらかの制約があったんじゃないかと思われる。
例えば『個々人が役割を持つ世界』を創造することはできなく、あくまでも『主人公を置くことではじまる世界』しか作れなかったんじゃないかと。
開発専門のエスチャリー、素材集めに精通しているラグーン、知識の象徴リクケイ、耐圧と耐熱に強い双子、倒錯野郎ベーシンをそれぞれ「手足のように使い協力させることのできる"主人公"」がいないとこの世界は回っていかない。
個人個人がこの物語を1人で進めるほどの力はなく、リアス・ケヤキという主人公がいて初めてこの物語は進んでいく。世界は回り始める
主人公というのは「社会の教科書」で書かれているとおり、物語を進める地獄の責務を持った存在のことである。ちなみにnotWorldの女の子はこう語っていた。
「SCEのケヤキや、SCE2のリアスは本質的には無能で、何の技術も持たない」
「『個々人が役割を持つ世界』とは大本の部分での前提が違う」
「また、他のメンバーも、能力こそあれ、一人では何の役にも立たない物だ」
「ケヤキ、リアスが動かしてこそ 初めてその意味が出てくる……」
「他の人と協力したりね」
「……」
――女の子
ここで言う『個々人が役割を持つ世界』とは、一人一人が、個人個人が力を持ち自分で物語を切り開いていける存在のことだろう。主人公に手足のように使われなくても個人個人が生きていける世界とでもいえばいいか。
またリクケイも主人公がいなければこの世界は終わると言っていた。
「違うんですけど?勘違いしてますけど?ケヤキが居ないと世界滅びますけど?」
――リクケイ(裏ルートの最後の最後クローバーとの会話)
これらを踏まえると、
前作『SCE』もケヤキという主人公がいなければ回らない世界だったのだろう。そこから地続きであるこの『SCE2』もまたリアスという主人公を置かないと"新しく"世界を始めらなかった。
サザンカに出来るのは「前作のゲームの枠組みに則った上での世界創造」だと考えることが出来る。
SCE2の在り方まとめ
さてここでSCE2という世界の在り方を再度まとめる。
- ゲームをクリアされることは、その世界が終わることと同じである。
- サザンカは世界が終わることなく幸せにずっと暮らしたかった。
- サザンカはadmin権限と呼ばれる神にも等しい力を有している。
- 次の世界であるSCE2はadmin権限の力によってサザンカの「終わらない世界」という意思が反映された地下世界。ゆえに物語はクリアされることなく永遠になる。
- ちなみに彼女が世界改変できるのはあくまで「世界の内実」だけであり「世界の枠組み」自体までは手を加えられない。その結果が『主人公を置くことで個々人が回る世界』だろう。
- 「終わらない世界を望む」ということは、サザンカが"プレイヤー"という存在を認識している可能性がある。
- SCE2のキャラの起源にはSCEのキャラか混じっている。エスチャリーの言葉を信じるならば全員来ているらしい。
以上がこの『SCE2』の在り方だと考えている。
4)メッセージの色の違い
SCE2裏ルートでリクケイとアイリアの会話時、メッセージウインドウの色が緑・紫へところころ変更していることに気づいた。
おそらく緑色は「ゲーム内のキャラクターの言葉」であり、紫色は「超外的な存在の言葉」だろう。
そう判断した理由は4つある。
■1つにリアスが喋るさい全て緑色のメッセージであることは外せない。リクケイとアイリアはメッセージが緑と紫と次々変動していくが、リアスだけはそれがない。
ここから考えられるのは以前[女の子]が言っていた「リアスは空っぽの器」ということである。彼女ら2人とリアスに違いがあるとすれば「キャラクターを操作している人物がいて」かつ「その操作人物がキャラクターへ干渉している」と考えられる。
私というプレイヤーもまたリアスを操作しているわけだが、リアスというキャラクターそのものに干渉はしていない。というかできない。リアスを通じてSCE2内で発言出来ないからこそ、リアスの言葉は「紫色のメッセージがない」理由になる。
■2つに[女の子]がリクケイになりきっていたことである。
[女の子]がリクケイというキャラクターを操作していることが分かった。このことで「操作しているプレイヤーの言葉」と、「キャラクター自身の言葉」の2つがあると想像できる。
■3つに紫色メッセージは「子供たち」「ゲーム」といったメタ的な発言が多々あるにも関わらず、緑色のときはそれが無い。
緑色メッセージがゲーム内キャラクターのものだとするならば、緑に「メタな発言がない」というのも納得できる。
(※しかし裏√最後のリクケイとクローバーでの会話では緑メッセージに関わらず彼女らはかなりメタ的なことを話していた。これはリクケイというキャラクターの背景に前作の「サザンカ」がいることがキモになる。サザンカはadmin権限を持って世界創造を図ったことは先にも言ったが、これの意味するところは「自分が生きている世界がゲームの中」だと理解していることに他ならない。だからこそリクケイ(=サザンカ)は緑メッセージでメタな発言できるキャラなのだ。またクローバーというキャラクターは「物語そのもの」「世界そのもの」に仮想人格を与えられた存在なので、この世界そのものについて言及できるキャラなのである。)
■4つ目はシステムメッセージは全て紫色であるということ。
例えばクローバーが拠点に入ったときにも「クローバーがPTに加わりました」という旨のメッセージは紫色だったし、また双子の神託で素材を手に入れる時も「◯◯が999個入ってた」というときも紫色である。
システムメッセージというのはその性質がそもそも「超外的な」性質を持つ。ゆえに、紫色のメッセージは全て「超外的なメッセージ」と判断できるんじゃないだろうか。
このメッセージの2色仮説が事実だとするならば、こういうことが考えられる。
リクケイというキャラクターを操作していたのは間違いなくnotWorldの女の子であり、アイリアというキャラクターを操作していたのもまたそういったプレイヤーだったということだ。
ゲームにとって超外的な存在であるプレイヤー。
そんなプレイヤーが2人もSCE2というゲームに干渉しているのが見て取られる。そして"私"自身もまたリアスというキャラクターを使って干渉していたんだ。
なにも"私"だけじゃなかった、このSCE2には複数のプレイヤーがいたと。
5)物語を強制終了させるアイリアとクローバー
アイリアは物語を終わらせる「大人」であることは、裏ルートでのイベントによって明示化された。
リクケイ「物語を終わらせるつもりでしょう ただ単に……」
アイリア「当たり前……」
「そうじゃなきゃ、『子供達』は救われない」
「そっちの都合も、プレイヤーの存在も、私達には無関係だからな」「世界を首尾良く終えなければならないのは身勝手な押し付けでしかない……」
「本来なら、いきなりゲームの電源を切っても何一つ許されない事は無いのだから」
「ただ私が担っているのは、ゲームに侵入するその機会だけ」
SCE2というゲームは 本来クリアできないことは先にも言った。
しかしだったらそこに迷い込んだ子供たち(プレイヤー)はどうなる? 一生そこで複雑で珍奇で難解なゲームをやってろとでも? このゲームに終わりがあるかもしれないと夢を見て無限のルーチンワークに没頭しろとでも言うのか?
ふざけんな! お前らはただ子供たちを誘拐したにすぎないんだ! だから私たちは物語を強制終了させる! いくら暴論だといわれてもそれでも子供たちを救いたいから!
というのがアイリアの主張になる。
アイリアはまず「クローバー」という構造の象徴をSCE2に介入させた。クローバーは物語を閉幕させる存在なので彼女にとっては強制終了の手段の一つなのだ。
この時のアイリアの目的は、「ドリルで地上へ到達」という方法を目指していた。この複雑な世界・SCE2を終わらせる為には、地下を掘り進めてはダメだと気づき、地上へ行いけばクリアになるんじゃないかと考えたんじゃないだろうか。
クローバーの力によって最上級削岩機のレシピを与えられたリアスは、次々にフラグシップ装備を開発することになる。あれは暗に地上へ迎えというアイリアたちの誘導。
(現にクローバーから頂いたレシピと素材を使い全ての装備を開発したでしょ?私たちことリアスはさ)
「私に会えた時点で、君の成すべき物語は終わっている」
「それは『攻略の終了』を意味する」
「そういう意味では物語は終わった。私は全てを台無しにするのが趣味なんだ」
「大丈夫。もう失敗なんかしない」
「安心して『私の力』を使うといい。今度は誰にも見つからないさ」
「気が済んだら地上を目指すといい。可能な限りの障害は取り除いた。」
――クローバー
しかしクローバーが与えたドリルでもっても、地上の到達は不可能だった。サザンカが作った世界はそんなにやわじゃない。
そこでアイリアは方法を変え、はしごで地上へいくことにした。物語を終わらせる為に。
物語を強制終了させる。
これは"女の子"の目的であったことも付け加えておこう。彼女もまた……いいや……彼女こそがアイリアを操作するプレイヤーだったのだから。
「彼女(注:クローバー)の存在が作中で確認される事は、物語の終焉を意味すると言ったかな?」
「私たちによる強制終了の手段の一種だよ 成功率は低いけどね……」
「とにかく、私たちの行動原理は『クローバーが物語に入れば勝ち』だ」
「そしてあいつらは、『クローバーを物語から排除』する」
「当然あいつらは、クローバーの存在を認めない」
「言葉巧みに彼女の立場を揺らがせ」
「主人公自身の意識に、クローバーは悪だとすり込ませる」
「クローバーが弾かれた世界は、物語の均衡を取り戻し正常に動く」
「それは私たちにとって、とても望ましくない結末だ」
「複雑で、珍奇で、不気味なゲームは、その出口探しは困窮を極める」
「本当にこのゲームは終わったのか?」
「もしかしたら隠しエンディングがあるかもしれない」
「プレイヤーは存在しない夢を見て、無限のルーチンワークに没頭する」
「そんな思い込みのスキマに、クローバーは差し込まれる」
「私たちはそうして救いたいんだ。暴論だと言われても」
――女の子(クローバーとの通信時)
この時の[女の子]が言っている「あいつら」とは、サザンカ達のことだ。
主人公にクローバーは悪だと刷り込ませようとしているのはサザンカ達であり、現にリアスがクローバーを思い出したのは最終局面の6章でだ。
本当はクローバーはずっと前からこの世界にいたのに……サザンカ達はリアスの認識をクローバーに向けないようにしていた。だがリアスは「空き部屋の数おかしくないか?」と疑問を持つことでようやくクローバーの存在を知覚したんだろう。
ちなみに "クローバーがいなくなればこの物語は均衡と正常を取り戻してしまう" というのは「SCE2が終わらない世界として機能を取り戻す」ということだ。
強制終了させたいアイリア側の女の子にとってそれは望ましくない事だろう。
またSCE2内に存在する「社会の教科書」>「『この世界』について」の部分はアイリアを操作している女の子が記述されたものだと推察できる。
以下の文章を読んでみれば分かるがゲーム自体に肯定的ではないし、逆に否定的だ。かつこのSCE2を外世界から観測できる者の言葉「子供たち(プレイヤー)」と「その家族の意思」について言及している。ちなみに「残業」とは子供たちを救い出す仕事のことだろう。
最初にその少女たちが見つかったのは、何十年も前の事だった。
死んだように何ヶ月も眠り続けた彼女達は、
ある日何の前触れも無く目覚めた時、
多くの研究所達を驚かせる一言を発した。
……
それから今日まで、何度も何度もこの歪な「ゲーム」との軋轢は続いたが、依然としての彼らの目的は判らないままでだし、逆に「ゲーム」を肯定する者すらこちらに増える始末。
本人の意思はどうなる?
家族の意思は?
つーか私らの残業も増えるんですけど?
マジいい加減にして欲しい!
というようなお話です。
?!
ちょっとまってよ、えじゃあ、リクケイになりすましていた女の子はどゆこと?!! あの女の子はアイリアと敵対していたよ? 対立していたよ? リクケイ=女の子じゃなくて、アイリア=女の子っていろいろ矛盾するような気が……。
そこで「女の子」は複数いるということ仮説を提示する。
女の子は一人だけではなかったんだ。女の子が「一人だけ」だと思い込むことはこのゲームの理解を著しく下げることになるかもしれない。
先にも言ったがSCE2に干渉していたプレイヤーは複数人いるんだ。
6)女の子が複数いる可能性の示唆
女の子が複数いる可能性について。
私たちプレイヤーは表ルートで[女の子]と会ったことを覚えているが、裏ルートの[女の子]は覚えていなかった。
なぜ記憶を持っていないのか? なぜ初対面のような対応なのか? それも[女の子]は複数存在すれば筋は通りそうだ。
なにより、表ルートの最後彼女はこう言った。
「……君にはすまなかったな。こんな事に巻き込んでしまって」
「ではまた、私の知らない私と出会うときには何卒、よろしく頼むよ」
――女の子(表ルート)
彼女がいう「私の知らない私」とは複数自分がいることの示唆であるんじゃないかと考えられる。
それに、下の発言も女の子が複数いることを伝えたかったんだとしたら
「私は君にリアスの事を尋ねたか?」
「私は君にリクケイの事を尋ねたか?」
「君は何時間このゲームを遊んだ?」
「私は今まで君と何回話した?」
「私は君に、ゲームの話をしたか? 特定のゲームの話の事だ」
「この世はいぬむごだと思うか?」
「私は君にアイリアの事を尋ねたか?」
「私は鍵を見つけたと聞いたか?」
「私は君に、何かを頼んだか?」
「君は何歳だ?」
「私は何人いる?」
「私は君に、『これからのこと』について聞いたか?」
「私は君にクローバーの事を尋ねたか?」
「私は君にこれで何個の質問をした?」
「私は、誰だ?」
「私は君に、名を名乗ったことはあるか?」
「私は君に、物語のヒントを与えたか?」
「私は君と、何か特別な……」
私はなんで女の子がこれを聞いてくるのか全く判らなかった。
何度も何度も会話しているのに「私は君にこういうことを話したっけ?」と聞かれるなんてあまりにもトンチンカン過ぎる。そして「私は何人いる?」という質問自体がはあ?という感じだ。だって君は一人だけじゃないのか?と。
さらに女の子は認識の誤りは自分の責任だとも言っている。
「人が変わった、とか そんな人じゃなかった、とか」
「よくあるけど……」
「そんな風に思ってなかった、私の思い上がりだった……」
「そういう自己の欺瞞に対する嫌悪が普通は先なんじゃないかな?」
――女の子
さらにはhtbr「このゲームについて」で、日本のゲームは海外ではナンバリングと内容は全然違く、マリオUSAは海外ではマリオ2で、FF4はFF2なんだ発言している。
これらは全て「見た目」と「内実」は一致しないことを言いたいんだとしたらどうだろう?……私たちには女の子を「女の子」としてしか認識できない、だって外見一緒なんだもんしょうがないじゃん。
でも出会った女の子の内面がそれぞれ違うんだとしたら?……。
――プレイヤーを幸福に導きたいと言っていた女の子と
――物語を強制終了させるのが目的だという女の子は
明らかに思想信念が違うはずだ。
さらにもうひと押ししよう
まず、私は……私さ
キミ、今見ている画面の中が何らかの形作られた世界だと思う?
悪趣味なゲームだよ……女の子のやってる事を覗き見するようなキミがリアスを操作するように、私だって『この子』を操れる
――女の子・裏√
この発言で、この[女の子]もまたゲームキャラクターのようなものだと判明した。この言い方からすると[女の子]を操作できるさらなる超外的な存在がいるのだろう。 なんてことだインフレバトルである。
つまりこうであったと考えられる構図が、
・[女の子]1(ゲーム世界に干渉できる超外的な存在)→サザンカ(SCEのキャラクターでリクケイの母体・強烈な自意識を持つ)→リクケイ(SCE2のキャラクター)
・[女の子]2(ゲーム世界に干渉できる超外的な存在)→アイリア(SCE2のキャラクター)
でも実はこういうことだったということになる。
・上位存在1→[女の子]1(〃)→サザンカ(〃)→リクケイ(〃)
・上位存在2→[女の子]2(〃)→アイリア(〃)
女の子の外見は一緒でも、中身は別の人間だったという先の仮説もこれで確定的だろうか。「大人」が女の子を操作していた場合もあったし、「ゲーム開発者」が女の子を操作していたこともあったんだろう。
ちなみに気づいている人もいるかもしれないが表√最後、女の子の言葉が黒ではなく「紫色」になる場面がある。
紫色のメッセージは全て「超外的な存在の言葉」だと私は言ってきた。 つまりこの場合もまた、[女の子]を操る上位存在がいると考えられる。
この場面、明らかに女の子の口調も違っていたしな……。[女の子]の発言が紫色になるのはここだけ。
ここから考えを発展すると、この[女の子]もまた強烈な自意識を備えたキャラクターであるということ。
サザンカやアザリアがそうであったように、[女の子]もまた誰かに操作させられなくても自分の意志で行動可能なんだろう。
すると裏√での「飲食」「仕事」「サクライさんの説得」という場面も、[女の子]がこの世界で"生きて"いるからこそ発生した状況だと見る。
上位存在が[女の子]を動かしてサクライさんと喋っていたのではなく、あれは[女の子]独自の思考ルーチンによる結果だ。
物語のキャラクターはちゃんと生きているんだよ。そこを肯定するか否かで大分見え方違うんじゃないかな。 サザンカもそうだけど、彼女たちはいくら超外的な存在に操られようとも、ちゃんと自分の意志を持っているはずなんだ。
7)リクケイを操作していた女の子[ゲーム開発者]
リクケイを操作している[女の子]は、アイリアを操作している[女の子]とは別の思想の持ち主だということが伺える。
「私たちはただゲームを進行させたいだけ。プレイヤーを幸福に導く義務がある」
「なのに、勝手に途中で止めさせて、プレイヤーを世界から置き去りにする…」
「『リアス』をどこへ連れて行くつもり?」
――リクケイ(紫色のメッセージ)
リクケイを操作している女の子は、物語を強制終了させるのではなく、ゲームを進行してプレイヤーを幸福に導きたいという。これはちゃんとした「物語の終わり」を見届けさせてあげたいという気持ちかもしれない。
この発言の時点でリクケイを操作している女の子は、アイリア側でもなければ、終わらない世界を望むサザンカ側でもないことが分かる。
かなり入り組んでいるが整理しよう。
このSCE2という世界には3者の思惑が蔓延っている。
- リクケイ(=母体・サザンカ)は終わらない世界を望んでいる
- アイリア(=超外的な存在・女の子)はゲームの世界から強制的にプレイヤーを剥がそうとしている
- リクケイ(=超外的な存在・女の子)はプレイヤーを物語の終わりまで導き幸福にしたいと望んでいる。
もっと厳密に言うなればリアスを操作している"私たち"プレイヤーもまた、ゲームをクリアしたいという思惑でこのSCE2世界に干渉しているとも言えるがここでは置いておく。
このリクケイになりすましていた[女の子]こそが、私たちプレイヤーが表ルートで出会った[女の子]だろう。
SCE2をクリアしてほしいと言い「プロテクトキー[F3]」のレシピをゲームフォルダに混入した者である。
ちなみに私はこの女の子を「ゲーム開発者」だと睨んでいる。
根拠の1つに表ルートで彼女はこう言っていたからだ。
(まるで人は、私を万能な世界の管理者かの様に言うが)
(私はあくまで線的な時間軸に沿ってゲームを昇華する事が出来るに過ぎない)
(SCEの時もそうだった)
(「物語を最初からやり直すことが出来る」という行為は、その裏を返せば)
(あくまで一次元的に物語の時間軸を追う行為でしかない)
(物語の流れの代弁者である私自身を物語構造の一部として見た場合に)
――女の子
ここでは『SCE』を作ったことを明言しているし、それに自分は万能な神ではなく物語しか作れないただのゲーム開発者だと言っているんじゃないか?(この私は万能な世界の管理者じゃなかったんだなという言葉の意味は、後述するhtbrの箇所を読むとここの言葉の意味が鮮明になるはずだから)
さらに[女の子]がプレイさせた『SCE』には、サザンカにadmin権限を譲渡したことや、それを脅威に思った「私」という存在がいることが書き記されていた。これは「ゲーム開発者」である女の子の記述だと考えるのが妥当。
つまり[表ルートの[女の子]=裏ルートでリクケイになりすました女の子]はSCEを作ったゲーム開発者だったと推察できる。
8)なぜ女の子はゲームをやらせたのか
なぜ私たちに「あんず大冒険」「サンザカ」「htbr」「SCE」を彼女はプレイさせたのか。
裏ルートで女の子はこう言っていた。
「ゲームに外部から探りを入れるには、ゲーム自身を知る必要がある」
「その為に従来のゲームを模して 『ゲームらしき何か』を作る必要があった」
「その結果出来た物があの2つだ。杏ちゃんとサンザカと呼んでいたか」
「もしかして、2つじゃなかった? だとしたら、それは……」
――女の子
ここで言いたかったのは『SCE2とは何かを知りたければこの4つのゲームやってよ』ということだったんじゃないだろうか。
- あんずちゃんの大冒険
- サンザカ
- htbr
- SCE
どうしてこの4つをプレイすることが「SCE2」を知ることになるのか? 一つ一つ見ていこうと思う。
■あんずちゃんの大冒険
スタート画面でお姫様はクレーンで連れていかるけれど、そのとき「HELP」「HELP」と文字の中に「SELP」という文字が紛れているんだよね。
SELPとは英語の Self-Help「自助自立」から作られた造語らしい。このあとお姫様は上空からすとんと戻ってくることを考えれば(いや考えなくても)お姫様に助けなんかいらなかったということ。
実はお姫様は攫われていないのに、攫われたと勘違いしたあんずちゃんはよく知らんおっさんに突っ込んで、頑張って、倒していった。というのがこのゲーム。
これを「SCE2」に当てはめると、サザンカは自分たちの幸せを求める為に主人公であるケヤキを模した人工的クローン的クローンであるリアスを作りSCE2を創造した。
サザンカ達の傍らには必ず「主人公」が必要なので、リアスが必要なのはあくまで「幸せに暮らすため」という理由付けである。
しかし本当は幸せに暮らすことよりも、世界を終わらせないことよりも、ただただ実はケヤキを好きで離れたくなかっただけだった。
幸せな日常よりもケヤキと一緒に居たかったからSCE2という世界を作った、んだけどサザンカはそのことをひた隠しにして嘘をついてきた。
そんな手段と目的の倒錯や自己欺瞞について「あんずちゃんの大冒険」は示しているのかも。
あんずちゃんも本当は「お姫様が攫われていないことを知っていたにも関わらず冒険しにいった」のかもしれない。そんな欺瞞の象徴があんずちゃんだとしたら……。
クローバー「じゃあ、一個聞けば十分だろう。リクケイの嘘って?」
エスチャリー「それね」
エスチャリー「別に僕らもケヤキやリアスに……母体の魂に依存してるわけじゃない」
エスチャリー「吸血鬼だって、血以外の食べ物を栄養価にする事もあるだろう」
クローバー「なら、なぜリクケイは……」
リクケイ「違うんですけど?勘違いしてますけど?ケヤキが居ないと世界滅びますけど?」
エスチャリー「別に大した事じゃない」
「ケヤキを好きになってしまったんだよ だから彼と離れたくないだけ」
「ただの独占欲……」
リクケイ「なっ……」
リクケイ「なによ!違うわよ!妄想よ! 勝手な言い草……違うわよ!」
傍目から見てて嘘をついているのがバレバレな関わらず、最後まで「ケヤキが好き」と言わなかったリクケイ(=サザンカ)。
■さんざか
むつみちゃんって一体?きろくの本当の名前は? という疑問に答えは出せていないほどに難しいさんざか。ただ大事な部分は案外少ないかもしれない。
例えば
- むつみはきろくに対して毎日を繰り返すように望んでいた。
- むつみはきろくと同じ時間を過ごしたかった
- むつみはきろくのことが好きだった
- そーこさんの発言で、むつみときろくは元は同じ存在である可能性
この4つを眺めているとなんだか、サザンカとケヤキの関係によく似ていることが分かる。
つまりサザンカは漠然とした毎日をただ繰り返すことを望んでいた。それはむつみちゃんがきろくに望んでいたように、サザンカもまたケヤキに対してそのことを願っていた。
ずっと繰り返される世界を―――。
なぜならサザンカはケヤキと同じ時間を過ごしたかったから。同じ毎日を一緒に居たかったからだ。
「俺には判りません」
「なにが?」
「……」
「あいつが望んだように、『きろく』として、毎日を漠然と繰り返すべきなのか……それとも、本当の自分に戻る必要があるのか」「さあねえ」
「でも、こう言えるんじゃない?」
「毎日を漠然と繰り返す中で、『正しい世界に戻る必要がある』と感じた」
「だから今、ここにこうして居るんでしょう」
――きろく、そうこ
「俺がやるべき事って何だったんでしょう」
「別に何も無いんじゃない?毎日がそんな風なように」
「あいつは……むつみは、何で俺に毎日を見せたんでしょう」
「理由……も、無いんじゃない?」
――きろく、そうこ
そうしてサザンカはSCE2という新しい舞台で、リクケイへとなり、ケヤキを模したリアスを作り自分の側に置いた。
リアスは何度も語られているがケヤキを模した人工的クローン的クローンであり、ケヤキの魂が入っているわけじゃない。ただの空っぽな器だ。
そんなリアスを作ったのはリクケイ(=サザンカ)であり、さらに言えばそんなリアスをリクケイは「好き」だと言っている。
ここはすごく倒錯的じゃないだろうか? だって自分が造り出した理想の言葉をいう存在を好きだと言うなんて、それじゃまるで、自分が作った木偶の人形を愛していると言うのと変わらない。
自分が生み出したものを好きというのは、自分のことが好きと言っているようにも聞こえてきて何だかおかしな気分になってしまう。
リクケイ「リアスが答えてくれたんだよ……」
リクケイ「俺は生まれた時からモグラだし……それが将来、変わる事も無いだろう」
リクケイ「俺たちは俺たちだって……ありのまま生きていこうって……」
(私も『あっちのクローバー』と話してみたかったんだけど……*1
ラグーン「それはそうだろう……」
ラグーン「どんな受け答えがあろうと、リアスはお前の理想の答えしか返さない」
ラグーン「当たり前の事じゃないか……」
そしてこれは『さんざか』でも見られる部分なのだ。
「大体私は、あなたとは別人なのよ あの子と違って……」
「だからあなたの事は私にはわからないし、もっと言えば、むつみちゃんの事なんて……」
――そうこ
きろくは問う。「むつみは何を想っていたんですかね?」とそうこさんに質問するが「わかるわけないじゃない。あの子とは違って、あなたとは別人なのよ」と言う。
最後の場面でそうこさんは「きろくとむつみは元は同じ存在」と言いたげな発言である。
きろくとむつみが元は同じ存在で、どこかの時点で「2つの名前」に分かれた。本質的にはきろくとむつみは同じ存在だが、ある時点で「きろく」「むつみ」として生まれたんじゃないかと私は考える。
その真偽は定かじゃないが、もしそうだとするならきろくとむつみの関係は、リクケイとリアスの関係に近い。
リクケイとリアスの元々の存在は「サザンカ」だ。サザンカ自身がSCE2という世界を作る際にリクケイとリアスというキャラクターを創造したのだから。ちなみにリアスはサザンカの「ケヤキ像」に基づいて創られたキャラだということも付け加えておこう。
サザンカはリクケイというキャラクターになり、また自分が生み出した創造物・リアスのことを好きだと言っている。
むつみがきろくのことを好きだと思っているように、リクケイもリアスのことが好きなのでである。
さらにまだ類似点はある。
裏ルート。地上の空を見上げながらリアスはこう言った。
リアス「……」
リアス「何か言いたそうだな……リクケイ」
リアス「俺は生まれた時からモグラだし……それが将来、変わる事もないだろう」
そしてこれもまた、『さんざか』最後、きろくの発言と酷似している。
「俺は……」
「俺は、きろくとして生きて行きますよ」
「あいつが……あるいは、俺自身がそれを望んでるんなら」
――きろく
リアスは「俺はモグラとして生きる」と言い、きろくもまた「きろくとして生きる」と言った。
今までを踏まえるとつまり
『さんざか』が示唆しているのは、サザンカという元の存在がリクケイとリアス2つに分かれた。そんな創造主と創造物の関係にも関わらず「創造主が創造物に好意」を抱いていることだと考えられる。
それと余談だがタイトル名の略称であるサンザカってサザンカにとてもよく似ているよね。どうでもいいけどさ。
■htbr
htbrの世界をまとめよう。
◆
「彼女」は物語という世界が神によって産み落とされた時に、生まれたキャラクターである。彼女の使命は舞台を整え、物語を監視し、正しい結末へと導かないことだ。
また彼女はこの物語世界を自分の思い通りに改変可能な力を持っている。自分が生み出す落書きは嘶きアニメキャラは轟きだす。彼女が造り出したものは本物だったが、それらと意思疎通することはなかった。根本的にいつも一人で、孤独に震えていた。
彼女はその存在の性質上「この世界の中核を担」い、この世界を定義している。ゆえにこの物語世界の不完全さを識っているし「ああ私はなんて不幸なんだろう」とさえ思っている。
けれども、それは、彼女の思考ルーチンをそう働くように作った「誰か」のせいにすぎない。やがて自分が不幸だという憤りは後に来るであろう世界の救世主である「来訪者」に向けられることになった。
彼女は自律的な思考を持ち、自分の意思で決断し行動しているのだろう。しかしそれすらも創造主が作ったレールの上を歩かされているだけだった。彼女は当然そのことを知らない。
来訪者を憎むものの、それは彼女の深層に刻まれた宿命によるものだった。彼女自身は来訪者と仲良くしたいと思っていたがそれは叶わなかった。
◆
上のまとめは(http://eroge-pc.hatenablog.jp/entry/2014/12/09/120000)この記事で引用したhtbr0層から100層の言葉から。流石に全部引用すると見づらいし分かり難いので私なりに再構成させてもらった。
ここから考えていくと、htbrの<彼女>とSCE2のリクケイ(=サザンカ)はやっぱり似ている。
まず一つに<彼女>とリクケイは自分達がいる世界(物語)を正しい結末へと導かないことを目的にし、また世界改変できる力admin権限を二人とも有している。
htbrの<彼女>は世界の中核を担う存在とのことだ。あの世界のラスボスとして存在していることと繋がりがあるのだろう。SCE2の世界ではリアス中心に世界は回っているが、世界の中核を担っているのはリクケイである。なぜなら「SCE2」という世界を定義したの彼女自身だからだ。
さらにhtbrで言っている「世界を救済する来訪者」とは、ゲームクリアする存在のことだろう。それは主人公という名前かもしれないし、あるいはプレイヤーという言い方かもしれない。
<彼女>はその来訪者を憎んでいた。リクケイもまたゲームをクリアしようとするプレイヤーを憎んで……いたかは定かじゃないが少なくとも忌避はしていただろう。アイリアの[女の子]など言語道断だ。
そして世界を救済する来訪者の存在を、<彼女>と同じく、リクケイもまた感じていたに違いない。必ずやつらはこの世界にやってくる―――と。というより子供たち(プレイヤー)がいないとゲーム世界は維持できないので当然やってくるのである。
あとリクケイと類似しそうな部分は。『彼女を模した彼女』という部分だろうか。htbrでは『彼女を模した彼女』に力添えすることが<彼女>がこの世界から抜け出す手段だと言っている。
あるいは… あるいは、『彼女を模した彼女』 に力添えすることが、 彼女がこの世界の枠組みを抜け出す、最期の手段なのかもしれなかった。
――htbr(ラスボスを倒した後セーブすると始まるイベント)
これをリクケイに当てはめてみよう。
『彼女を模した彼女』とは、SCE2ではリアスのことだろう。リアスはケヤキを模した存在ではあるが、そもそもそれを生み出そうと思ったのはリクケイだ。
『さんざか』の項でも言ったが、サザンカという元の存在がリクケイとリアス2つの存在に分かれたという見方が出来る。その意味では、リアスはサンザカが生み出したもう一人の自分という考え方は可能だ。
つまり「『彼女を模した彼女』に力添えすることが彼女がこの世界の枠組みを抜け出す最期の手段なのかもしれない」という部分は、
リクケイ(=サザンカ)が、
リアス(=プレイヤー)の目的である「ゲームクリア」に
力添えすることを意味しているのではないか。
これがサザンカがこの世界の枠組みから抜け出す最期の手段なのかもしれない。
以上を踏まえて、もう一度htbrの言葉を見よう。
あるいは… あるいは、『彼女を模した彼女』 に力添えすることが、 彼女がこの世界の枠組みを抜け出す、最期の手段なのかもしれなかった。
彼女自身が抜け出す訳ではないが、 自分がやった事をこの世に残すという… それこそ、意志と本能の境目にある、彼女らしい言い訳なのかもしれない。 うんと楽しいテーマパークにしよう。
ここには夢も希望も詰まっている。 ここでは思い描いた事は何でも出来る。 全てが彼女たちにチカラを与える夢の楽園! ああ、ああ! どうしてそんな事に気付かなかったのだ! 私は最初から、一人じゃなかった!
故に、彼女は不幸でしかない。
――htbr(ラスボスを倒した後セーブすると始まるイベント)
リアスという「世界を救済する来訪者」が行うはただひとつ、ゲームをクリアすることだ。すなわちそれは世界そのものを終わらせるということ。
もちろん世界がクリア(=終焉)すると同時に、その世界は消えてなくなるためサザンカはこの世界の枠組みから抜け出すわけではない。ただ消えてなくなるだけだ。
けれどもその時に自分が今までやったことはこの世に残せるかもしれない……、自分の願望によってこの『SCE2』は確かにあったんだよと………そんな「意思と本能の境目にある言い分」をサザンカは持っているんじゃないだろうか。
この「言い分」こそが、リクケイとクローバーの会話に繋がると踏んでいる。
「さっきから質問を答えるばかりだったな。次はこちらか聞いても良いだろうか」
「君らは『なぜ』『こんなこと』を繰り返す?」
「……質問の意味がわからないわ」
「『子供たち』が居なければ、世界の維持運営が出来ないのは建前だ」
「もはやこの世界は、そんな変革の種を撒く必要はないだろう」
「……?」
「? 何か私は変な事を言っただろうか」
「……『なぜ』っていう理由が必要なの?」
「私たちは……そうする事しか出来ないのに」
「違うわね」
「その質問を私にするという事は、あなたが『そうした』のよ……」
「でしょう……クローバー」
「……」
「やはりそうか……」
「私は世界の発展を望むばかりに、君たちの本能をそこに位置づけたのか」
「君たちには夢がない。それは『文字通りの意味で』」
「ずっと違和感は合った そこまで固執する理由が判らなかった」
「そうね」
「ならきっと、私たちは存在自体が許されないの」
「生まれ持った生存本能が、形成する性質そのものが間違いなら」
「それは、私たちが生きる事がこの『世界』を脅かす事実になるの……」
「だろうな」
「悪いことをした。気の毒だと思う」
「気の毒で済めば良いのに」
「ああ、そうなっているのなら、もはや猶予も無い」
「こんな間怠い手段を選ぶ必要も無かった。すぐに消してしまえばよかった」
「人が作るのは物語が限度だ……私たちは神にはなれなかったようだな」
「そう……」
「この世界の思いを抱いて消えられるなら、別に後悔も無いわ」
――クローバー、リクケイ
ここの会話は本当によく分からない。クローバーは何を言っているのか曖昧模糊だしそれに答えるリクケイの返答もちんぷんかんぷんだ。
しかしこれをhtbrの文脈で捉え直してみよう。
以下の文章は私が解釈した2人の会話だ。
♪♬♪
「君らは『なぜ』『こんなこと』を繰り返す? なぜ終わらない世界を継続させようとするんだ?」
「……質問の意味がわからないわ」
「『子供たち(プレイヤー)』がいなければ、この世界を維持することができなくなる。しかしそれは建前だ」
「もはやこの世界はクリアされてしまったのだから、プレイヤーによる変革の種を撒く必要もないだろう」
「……?」
「私は変なことをいったか?」
「『なぜ』っていう理由が必要なの? 私たちは"こういうふう"に決められたレールを歩かされているというだけなのに」
「ううん、そうじゃないわね」
「その質問を、私にするということはこの答えもまたクローバー。あなたが『そうした』のよ」
「でしょう……クローバー」
「やはりそうか……」
「私は世界の発展(物語の広がり)を望むばかりに、君たちの本能をそこに位置付けたのか」
「君たちには夢がない。それは『文字通りの意味』で"未来がない"」
「ずっと違和感はあった。どうしてここまで終わらない世界に固執するか判らなかった」
「そうね」
「ならきっと、私たちは存在自体が許されないの」
「生まれ持った生存本能が、形成する性質そのものが、私が私として物語のキャラクターとして生まれた落ちた事実が、間違いならば」
「それは、私たちが生きる事がこの『SCE2』という世界を脅かす事実になるの。だってそうでしょ? 終わらない世界を望むということは「ゲーム」としての存在を危なくしてしまうもの」
「だろうな」
「悪いことをした。気の毒だと思う」
「気の毒で済めばいいのに」
「ああ、そうなっているのなら、もはや猶予がない。」
「こんな間怠っこい手段を選ぶ必要もなかった。すぐに消してしまえば良かった」
「人が作るのは物語が限界だ。―――物語を物語として生み出したら最後、それは創造主の意思によって全てのレールが、道が、未来が定まってしまう。この『SCE2』というゲームもまたそうだし、君が今まで喋ってきたことも既に"決められた"ことだったか―――私たちは神にはなれなかったようだな」
「そう……」
「この世界の思いを抱いて消えられるのなら、別に後悔はないわ」
♪♬♪
クローバーは世界構造の象徴であると既に明言されている。つまり『物語』そのものが意思を持った存在だと私は見ている。物語そのもの、世界そのもの、ゲームそのものに仮想人格が与えらたのが「クローバー」だ。
だから「クローバーあなたが『そうした』のよ」というリクケイの言葉も、「『物語そのもの』であるあなたが私をこういう行動を取らせたのは当たり前なことでしょ」という意味である。
物語は物語として生まれた時点で規定通りに進むしかできないのだ……。
だから本当に……リクケイは…いやサザンカは気の毒なんだよ。htbrの<彼女>と同じく不幸でしかない。永遠に。
そして最後の「この世界の思いを抱いて消えられるのなら、別に後悔はないわ」というリクケイの言葉こそ、
htbrの<彼女>が思い描いたこの世界の枠組みから抜け出す最期の手段であり、でもその実状は抜け出すわけではないが、けれども今までやってきたことの意味は残るんじゃないかと思った「気持ち」そのものだと思う。
つまりhtbrが示していたのは、物語の中で物語の構造を理解し喘ぎ苦しみキャラクターがいるということだったんじゃないか。
リクケイ(=サザンカ)は理解している。いくら自立思考があろうが、自分で選んだ道は結局のところその全ては物語に沿って動いているんだということを……。
■スカイハイクロノスエンド
『SCE』を紐解かなければ、そもそも『SCE2』について理解が得られるわけがない。だからこそ女の子はこのゲームをやらせてくれたのだろう。……最後の一瞬だけだけどさ。
それでもサザンカはケヤキを想っていて、彼女たちは無限の空を目指していたという基本的な情報は掴めた。さらにadmin権限やサザンカの動機も記述されておりより『SCE2』がどういう在り方をしたゲームなのか分かる。
リクケイ(=サザンカ)がSCE2の中核にいることが分かれば、かなり思考を進められるからね。
それとSCEの最後のケヤキとサザンカの会話だけど、これは「夢」と「ルールに抑圧されたい」「おやすみ」という言葉がキーなんじゃないだろうか。
ねぇ、ケヤキ
どうした
私達が空を目指してたのってどうしてだったのかな
空を目指していた?
……ずっと空に居たのに?
うん……
最期なのに、なぞなぞか
……
そうだな
夢を見ていたのかもしれない
空はどこまでも広がるのに、おれたちは縛りつけられていた……自由になりたかったの?
自由?
少し違うな
抑圧されたかったんだ。ルールに
……そう
じゃあ、今度こそお別れね
おやすみ、ケヤキああ、
ケヤキは主人公キャラクターであり、リアスと同じく空っぽなキャラクターなんだと認識している。(ただサザンカと同じく強烈な自意識を持っているキャラクターでもある)
私たちプレイヤーがいてこそはじめて動きまわるような存在なんじゃないか? だからこそ「ルールに抑圧されたかった」という言葉が出てくる。
つまりケヤキである私たちプレイヤーは、夢を見ようとしていた。SCEというゲームで、ゲームの終わりを、ゲームクリアを夢見ていた。自由になりたかったわけじゃなく逆にルールに縛られることでその夢を叶えようとしていたんだ。
おそらくこれをサザンカは理解できない。何故なら彼女はゲームをしているわけじゃないからだ。
彼女はその世界で生きているからこそうまく理解できないと私は思う。ゲーム世界の重苦しいルールに縛られたいなんて思うはずもなく、やっぱりサザンカ自身「自由」になりたかったんじゃないかな。世界からさ。
そう考えると、もしかしたらこの時からもう……世界の枠組みから抜け出したいと思っていたのかも?
とまあSCEでは、前作のキャラクターが今作の世界に深く関わっていることを教えたかったものだと思う。
さて長くなってしまった。まとめよう。
まとめ・女の子はなぜ4つのゲームをプレイさせたのか
女の子がゲームをやらせたのは、「この4つのゲームをプレイすることで外側から『SCE2』というゲームの内実を教えるため」だった。
- 『あんずちゃんの大冒険』ではリクケイの自己欺瞞について
- 『さんざか』ではサザンカという元の存在がリクケイとリアス2つに分かれた創造主と創造物の関係にも関わらず片方が「好意」を抱いていることを示し
- 『htbr』では物語の中で物語の構造を理解し喘ぎ苦しみキャラクターがいることを
- 『SCE』では前作のキャラクターが今作の世界に深く関わっていることを教えたかった
と考えられる。
9)プレイヤーとは何か?
「SCE2」ではプレイヤーというものがどう定義されていくのか迫ってみる。
SCEにあった開発室の説明を見て欲しい。
要するに、触媒として彼らの言葉で『ハヒセ』等とも呼ばれるエネルギー体の一種が必要であり、それらは劣化が早く、世界バランスの維持の為には都度入れ替える必要がある。(オートパイロット)
「SCE」という世界バランスの維持の為にはハヒセ(=生命体/魂)の一種が必要であり、それらは劣化が早く、その都度入れ替える必要があった。
つまりここで言われていることは「プレイヤー」の存在だろう。
「劣化が早く、都度入れ替える」というのは、プレイヤーはゲームをクリアしてしまったらゲームから去ってしまう。その意味での魂の"劣化"であり、都度入れ替えるということ。
この存在がいなければそもそもゲームは始められないし、アザリアやアプリコを手足のように使うことのできる者がいなければ物語は進まないのである。
先にも語ったがSCEの世界もまたSCE2と同じく、『個々人が役割を持つ世界』ではなく『主人公を置くことではじまる世界』なのだ。もっと厳密にいえば【主人公キャラを操るプレイヤー】がいなければ、ゲームという世界は維持できないのである。
ここで、我々の世界では純粋なエネルギーを得る事が出来ないため、世界の維持が非常に難しいという極めて単純だがシリアスな問題に直面してしまう。解決は難航した。(桃缶)
この「プレイヤー」はいわば主人公キャラを駆動させるガソリンであり、またそれはゲームの中では手に入らない。当たり前だよね、プレイヤーはゲームの外の住人なのだから。
でも手に入らないとこの世界は維持出来なくなるぞ困った、さあどうしよう?
もちろん現実にいるプレイヤーを虚構であるゲームに誘導しなければいけない。プレイヤーがいてこそこの世界は始まるし、プレイヤーがいなければゲームという世界は観測する者がいなくなり死んでしまう。
維持できなくなる。
彼らは我々を重篤なレベルで敵視している。このシステムを維持し続けるのにも、もはや限界があるだろう。きっと過激な連中ならば「借りていただけ」「ちゃんと返した」などとのたまうかもしれない……(キャッツアイ)
ここでいう「彼ら」とは、アイリアを操作していた大人達のことだろう。大人はもちろんプレイヤー(子供たち)を誘拐するゲームを重篤なレベルで敵視している。ゆえにこの世界を維持し続けるのも限界だと言っているんだ。
そして過激な連中というのは、プレイヤーをゲームに先導する「ゲーム開発者」のことだろう。過激なゲーム開発者ならば「プレイヤーを借りていただけ」、あとで「ちゃんと返したよ」とのたまうのだ。
きっと彼らからの語りかけも何度もあったに違いない。その全てを無視してきたのは我々だ。自分の都合に他人を巻き込む事の愚かさなんて、ずっと昔から判りきっていたと思っていた(お弁当)
ゲームというのは、その構造上どうしてもプレイヤーが必要になる。それはゲーム開発者の立場からいえば「自分の都合に他人を巻き込む」こと。
そうして子供は誘拐され続けていく。
まとめよう。
- プレイヤーとは主人公を動かす魂/生命体/ガソリンのような物
- ゲーム世界を維持するためには「プレイヤー」が必要になるが劣化が早く、都度入れ替えなければいけない。
- そのためゲーム世界を維持するためには大量の「プレイヤー」が必要になる。
- 大人からすれば多くの子供たちをゲームへ誘拐する「ゲーム開発者」は憎き存在だ。
- ゲーム開発者は自分たちがプレイヤー(子供たち)を誘拐していることは理解している。
10)ケヤキとはなにか?
プレイヤーの定義を踏まえて今度は「ケヤキ」に迫る。
またもやSCEの開発室の説明を見て欲しい
もちろん、物語が終わらなければ役者は解放されない。もしかしたらひとつの物語にひとり以上の役者がいるかもしれない。ケヤキはそうだが、サザンカや、アザリアも……。(瓶詰め煮)
物語が終わらなければ役者は解放されない。逆にいえば、物語が終われば役者は解放されるということだ。
てかそもそも役者とは?
"もしかしたらひとつの物語にひとり以上の役者がいるかもしれない"
この言葉から役者とは「キャラクター」ではなく「プレイヤー」だと考えることができる。通常、物語というかゲームに介入できるのは1人だけであり、主人公キャラクターを演じるのは1人のプレイヤーだけだからだ。
もしこの役者がキャラクターを指し示すならば、「もしかしたら~ひとり以上いるかもしれない」なんて言い方はしないだろう。すでにケヤキやサザンカと何人もいるのだから。
「役者」という単語は、ロールプレイングゲームの"ロール"から来ているんだと思われる。ロールとは演じるという意味であるように、プレイヤーはゲームに介入すればそのキャラになりきるものである。
ここの「ケヤキはそうだが」という部分は「もちろんケヤキはそうだが」と言っているものだろう。
さらには、ケヤキ以外にも、サザンカやアザリアを操作するプレイヤーがいたことを示唆してる。(今ここは関係ないのでひとまず置いておく)
何が言いたいかというと、SCEのケヤキはプレイヤーによって操作させられていたと言いたい。
何を当たり前か?と思うだろうか。しかしここでいうプレイヤーとは、SCE2が定義するプレイヤーという意味なので収穫は大きいだろう。
整理する。
SCE2が定義する「プレイヤー」は、主人公キャラを動かす魂/生命体/ガソリンのような物であるが、劣化が早く、都度入れ替えなければいけない。
そしてプレイヤーがいなければこのゲーム・世界は維持できなくなる為、主人公を動かすガソリンを次々に投入する必要がある。様々なプレイヤーがSCEで遊ばなければいけないし、実際遊んでいたのだろう。
11)サザンカが好きなのは?
次。
彼女たちがケヤキに執心するのはケヤキとならば容易に心を通わす事ができるからである。ケヤキが居なくなったら、心を通わす誰かを見つける事が出来るのだろうか。(ハクタク)
もちろん彼女たちというのサザンカ達のこと。
サザンカがケヤキに執心するのは彼とならば容易に心を通わす事ができるかららしい。ここの「心を通わす」という言葉を素直に受け取るならば気のおける友人とか、相思相愛の関係だったんだろう。
簡単にいえば、SCEのキャラクターはみんなケヤキのことが好きだったに違いない。
しかしここの "ケヤキが居なくなったら、心を通わす誰かを見つける事が出来るのだろうか" という部分に疑問を持たないだろうか?
ケヤキはSCEのキャラクターでしかない。そんなキャラクターである彼がどこかに居なくなる? それはゲームの進行的にケヤキがいなくなるということ?
おそらく違う。
ここでいうケヤキとは……ゲームキャラクターのケヤキではなく、ケヤキというキャラクターを操作していたプレイヤーなのではないか。
ケヤキが居なくなったら心を通わす誰かを「見るける」事が出来るのか、という記述もそういう意味だとしたら合点がいく。
◆
サザンカは終わらない世界を望んだ。
その建前上の理由は「幸せな日々を過ごしたかった」からというものだが、だが本当の理由は「ケヤキと離れたくなかった」というのは後にエスチャリーが断言している。
サザンカは「【ケヤキを操作していたプレイヤー】と離れたくない為に終わらない世界を望んだ」と考えてみる。
ややこしくなるのでゲームキャラのケヤキは「ケヤキ」と表記し、SCEでケヤキを操作していたプレイヤーを「keyaki」と表記する。
つまりサザンカは「ケヤキ」が好きなんじゃなくて、「keyaki」が好きということ。プレイヤーである「keyaki」はSCEをクリアすればゲームから解放され二度と戻ってくることはないだろう。
(開発室の)テイシャンの説明にもあったが、同じ世界なんてないし、同じ時間なんてないし、同じプレイヤーに遭遇することはサザンカからすれば不可能なはずだ。(他にも社会の教科書の「泥の夢」でもまた「繰り返される世界」について言及がなされている)
繰り返す世界に一度幕を下ろす終焉の季節。世界は輪転するが、その度にに少しづつ壊れ、変容していく。同じ世界に二度到達する事は無い。今みているこの世界のように。(テイシャン)
だから「keyaki」と一緒にいるためには彼を解放しないような世界を望むしかない。クリアがない世界だ。ゆえに「スカイハイ・クロノス・エンドレス(無窮の空の時間を繰り返す)」は何度も同じ日々が繰り返される。ENDはこないし、ちゃんとした終わりをサザンカは精一杯阻止しようとする。
だがゲームはやっぱりゲーム。SCEも他の物語と同じく終わりを迎えてしまったんだろう。当然サザンカは拒んだ。
拒んだんだ。
ゲームが終ってしまったらkeyakiはこの世界から解放されてしまう、居なくなってしまう。だから彼女はkeyakiをゲームの世界に閉じ込めようとした。物語の終わりをねじ曲げてずっと一緒にいるために。
これはエスチャリー、[女の子]、スカイハイクロノスエンドレスの最後の部分で示されている。
「「ただまあ、何というか、僕から言わせてもらうなら……」
「いや、多分きっと、これだって『言わせられている』事には変わらないか」
「けどねえ、」「終わった物語は素直に終わるべきだし、それを捻じ曲げて続ける理由は無いよ」
――エスチャリー
(そう。それでいい。ゲームを遊んでて。そのまま私の話を聞いてくれ)
(君には、SCE_2をクリアして欲しい)
(彼、ケヤキの精神は、物語の完結を得られず)
(次回作へと謎を持ち越す形でゲームの結末を放棄させている)
(無論、当時を知る人によってはあれで完結したと言い切れるだろう)
――表√最後・女の子
ねぇ、ケヤキ
どうした
私達が空を目指してたのってどうしてだったのかな
空を目指していた?
……ずっと空に居たのに?
うん……
最期なのに、なぞなぞか
……
そうだな
夢を見ていたのかもしれない
空はどこまでも広がるのに、おれたちは縛りつけられていた
……自由になりたかったの?
自由?
少し違うな
抑圧されたかったんだ。ルールに
……そう
じゃあ、今度こそお別れね
おやすみ、ケヤキ
ああ、
――SCE・ラストフライトのイベント
どうしてサザンカは最後に「おやすみ」なんて言ったんだ? このままだとフライトは失敗し二人とも死ぬはずなのに、いいやもう飛行機は墜落している途中なのに。
ここにサザンカの行為を解くヒントがある。
―――ゲームは夢を見ることだ
これはリクケイとアイリアの論戦でも、女の子との会話でも幾度も繰り返されてきたものなので今更説明の必要なんてないだろう。ゲームは夢を見るためにある。
そしてサザンカはおやすみと言った。ケヤキにおやすみと言ったんだ。就寝時私たちは夢をみる。
―――すなわちサザンカはSCEの終わりの間際、物語の終末の間際、最後の最後に"それでもケヤキに夢を見続けさせ"ようとした。
ゲームは終わらない、SCEは終わらない、という暗示だろう。何度も繰り返すが彼女はプレイヤーである「keyaki」をゲームの世界に閉じ込めたんだ。
Q「なぜゲームキャラクターである『ケヤキ』ではなく、プレイヤーの『keyaki』が閉じ込められたと思うんだ? 逆の可能性は?」
これは「トレンチの母体はケヤキ」であることを証明できればいいと思う。
■トレンチの母体はゲームキャラの「ケヤキ」であること
エスチャリー曰く、前作・SCEのキャラはみんな来ているらしい。
べ「前に比べて、登場人物は倍近いわけだよな?」
べ「前の担当の引き継ぎとか、足りない分の補填とか、どうなってんの」
え「ん……知らんけど」
え「少なくとも前の人は全員来てるとか聞いたなあ」
サザンカ、アザリア、アプリコ、ウルシ、ケヤキの計5人は来ているらしい。そしてこの5人という数は、裏√の最後の最後のメンバーと同じ数である。
- リクケイ(サザンカ)
- エスチャリー
- ラグーン
- ベーシン(ウルシ)
- トレンチ
私が分かるのはリクケイがサザンカであることと、ベーシンがウルシであること。アザリアとアプリコはよーわからん。だが前作のキャラと今作のキャラの人数が一致しているということは、「ケヤキ」が母体となっているキャラクターもいるはずだ。
そしてこの中の一人、トレンチこそがケヤキだと確信している。
エスチャリが前の担当みんな来ているよ、と言ったあとにベーシンが「ケヤキ?」と発言する。この際トレンチの「ここに居ますよ」が意味深じゃないだろうか。
ベ「……ケヤキは?」
ト「ここに居ますよ」
エ「いや、そうじゃなくて。寝てるんじゃないかな……」
ベ「眠り姫か」
エ「リクケイがどっかに隠したらしい。それでリアスはアレなんだよ」――ベ=ベーシン、エ=エスチャリー、ト=トレンチ
このあとエスチャリーがすぐさま「いやそうじゃない」と切り返す。
つまりここで言っていることはこういうことでは。
ベーシン「ケヤキは?」
トレンチ「あ、私ならここに居ますよ」
エスチャリー「いや、母体のケヤキのことじゃなくて魂のケヤキのこと。寝てるんじゃないかな……」
と。
これだけじゃ根拠としては弱いか?
ふむ。ならまだまだ理由を出していく。
裏√のロビーでの会話。みんな自分の前世について少し語っているとき、トレンチもまたそういう存在だと明かされる。
え「ていうかさ……」
え「勝手な都合に巻き込まれてるんだよね。根本的に言えば」
ら「お。何の話だ」
え「いや?大した話ではないよ」
え「ただ、僕らも僕らの人生がある……って程度の話さ」
ら「それは『モグラ』としての話?」
え「いーや。存在としての僕らさ」ら「……そうだな。」
(中略)
え「あれ、トレンチ、居たんだ」
と「あ。お気になさらず。姉様は日課の礼拝中ですので……」
え「いや、まあ、そういう話じゃないんだけどね」
と「いえいえ。以前から懇意にさせて頂いてますゆえ……」え「え?」
と「あるいは『お久しぶりです』と声をかけるべきだったのかもですけど」
え「あ、トレンチって、そういう……んー……?」
ら「てか誰が誰だかわかんねーし」
べ「俺の前世はウミウシだった」
え「最後なのにこんなんでいいのかなあ」
と「同窓会みたいなものでは……」
次、裏√の会話でリクケイが何故かトレンチに「あなたならわかるはず」という趣旨の発言をする。
ここなぜトレンチ?って思わなかったかな。
トレンチ「まぁ、なんですか……リクケイさんの気持ちはよぉく判りました」
リクケイ「何だよ……知ったような顔して……」
トレンチ「ですから……」
トレンチ「さっきから話そうとしているのに、皆さん聞いてくれず……」
リクケイ「アンタに何の話す事があるのよ。私は疲れたわ……」
リクケイ「ケヤキは私と居る事が正しいのよ。そうでしょう……トレンチ」
リクケイ「あなたなら判ってくれるはず……」
トレンチ「……」
「私は……ケヤキはそうする事が正しいとはとても思えません」リクケイ「そう……あなたも」
トレンチ「ですが」
トレンチ「『リクケイさんは』ずっと、そうして来たんです」
トレンチ「そうして来た事で……何も間違っていないのなら」
トレンチ「ケヤキがそれで良いと思っている以上、『そうする事』は正しいんじゃないでしょうか」
リクケイ「そう……そうよね」
リクケイ「そうよ! やっぱりケヤキもそう思ってたよね!」
リクケイがトレンチに答えを求めたのは、プレイヤーであるkeyakiが操作していたキャラクターであるケヤキだったからこそと思えば腑に落ちないだろうか。
もちろん「ケヤキ」と「keyaki」は別の存在なので、トレンチは終始「そう思います」「~じゃないでしょうか」とkeyakiの気持ちを断言をすることはない。
けれど皆からフルボッコにされているリクケイからすれば、例え別存在だろうとkeyakiと深い繋がりがあるケヤキ……なるトレンチに「あなたは間違っていないです」と言われることはとても嬉しかったに違いない。
さらにひと押しして、トレンチとケヤキの髪の色は緑だということ。ま……これは根拠としては薄弱だよねだってサザンカの母体があるリクケイは金髪なわけだし。
整理しよう。
トレンチの母体がケヤキである根拠は4つ
- エスチャリー曰く、SCEのメンバーは全員来てる。計5人
- 裏√ラストのメンバーの人数と、前作SCEのメンバーの人数がぴったり
- トレンチはエスチャリーに『お久しぶりです』と言う
- ケヤキは?と聞かれすぐ返事するトレンチ。
- リクケイはトレンチにケヤキの気持ちについて尋ねた
ここで言いたかったのは、キャラクターである「ケヤキ」がこっちの世界にきていること。ケヤキの母体であるキャラクターがいること、この2つを明らかにしたかった。
トレンチではなく、エスチャリー、ラグーンの母体がケヤキでも私的には一向に構わない。とにかく「ケヤキが母体となっているキャラクター」を示すことができればそれで良い。
なぜか?
なぜなら最後の最後でリクケイ=サザンカは、ケヤキが母体となるトレンチではなく、リアスを好きだと言ったんだ。誰の魂も入っていないと言われる空っぽの器であるリアスのことをだ。
このことでサザンカが好きなのは、ゲームキャラクターのケヤキではないことは判断できる。
12)リクケイ(=サザンカ)はなぜリアスが好きなのか?
リアスにはケヤキの魂が受け継がれていない。
ここまではいいよね?
けれど、リクケイ(=サザンカ)はリアスが好きだということは裏√で明らかになった。
しかしこれってどう考えてもおかしいよね? 空っぽの器である、ケヤキの魂が入っていないリアスを好きになるって変じゃない?
リクケイが恋している相手が発覚するとしたら「ケヤキの魂」が入っているキャラクターが一番しっくりくるんだよ。なんでリアスなんだよ。彼は空っぽじゃないか。ゲームキャラ・ケヤキの母体であるトレンチを指名するならまだ納得できるのに。
しかしリクケイは、リアスが好きなんだって。
裏√のロビーでの会話でベーシンの発言が興味深い。
え「じゃあ今地上に行ってるアイリアとリクケイは誰よ」
べ「リクケイはサザンカだろう」
べ「あいつはリアスに……いや、ケヤキに執着しすぎだと思うが」
え「あ、それは言えてる」
え「世界を維持する為って、大義名分だけどそれなら別にケヤキじゃなくてもいいしね」
と「そうですね。私はこういう生活も気に入ってますよ」
ベーシン達の中ではリアス=ケヤキという認識になっているんだろうか。しかしリアスはあくまでも「ケヤキを模した存在」でしかない。
ただ結果としてリクケイ(=サザンカ)は、リアスに執着しているのは分かる。なぜだろう?
(ここでも「ケヤキ」という単語に即返答するトレンチさんはやっぱり母体はケヤキだと思うんだ)
あと裏√最後[女の子]の発言も興味深い
「じゃ、この場は私が収めようか……」
「とか言うても、もうゲーム終っちゃってるもんなぁ」「物語を終わらせるワケよ……」
「そらまぁ、ケヤキは救われました、この悪い世界は終わります
めでたしめでたし……みたいな話なんだけど」「君がキイを彼女らに渡したから 話がここまでこじれちゃってるわけで」
――女の子・裏
この発言は、リクケイとリアスが地上の空を見て「SCE2・END」というテロップが出た後のものだ。
何が言いたいかというと、あのEND時に「ケヤキは救われた」ということがここで判明してる。女の子の言葉が本当ならばだが。だが本当と見ていいだろう嘘をつく理由がない。
プレイヤーであるkeyakiがあの時救われたとするならば、どういうことなんだろう? リクケイは確か「ケヤキの魂」を隠したとかエスチャリーが言っていけど、どこに隠されてあって、どうしてそこから救われることができたのか。不思議じゃない?
◯リアスの存在を整理しよう。
- ケヤキを模されて作られた存在
- 中身は空っぽ。誰の魂も入っていないとされる
◯サザンカの状況を整理しよう
- サザンカはケヤキが好きと皆に思われている
- SCEラストフライトや今までの行動を見てもサザンカは間違いなくケヤキが好き
- しかしゲームキャラのケヤキではなくプレイヤーの「keyaki」が好きな可能性がある
- 空っぽの器であるリアスを好きなことが判明。
- 「ケヤキの魂」はどこかに隠してある模様
◯ケヤキの魂
- リクケイとリアスが空を見上げて『SCE2』というゲームは閉幕した。あの時点でもうケヤキの魂は救われたと女の子は語る。
ここの大事なポイントは……ゲームがクリアされて「ケヤキの魂」が救われたというところだろう。物語が終わればプレイヤーはこの世界から解放される。「ケヤキの魂」も例外ではなかった。
そしてリクケイはずっとリアスと共にいた。地下へ導き、地下で会話し、永遠に地下を掘り続ける毎日と共にいた。離れることはなかった。
リクケイはリアスのことが好きだという。
ここから導き出される答えはとてもシンプルなものなんじゃないか。
つまりリアスを操作していたのは誰だっけ?
え?
え?!
リアスを操作していたのは……私たちじゃないか……。私たちプレイヤーがもしかして「keyaki」ってこと?……
待てよ……それなら筋が通るぞ……。
「SCE」の時からゲームをプレイしていた人は、間違いないく今作の『SCE2』もプレイしているはず。いわば、ゲームにずっとのめり込んでいる人でもある。女の子風にいえばゲームに精神を囲われている子供たち。
そして今作『SCE2』で「END」という文字がやっと現れた。見ることができた。ゲームはクリアされた。ゲームは終わったらプレイヤーは解放されるんだよね。うん。
もちろん私たちもまた『SCE2』をクリアしたら、ゲームをやめて実生活に戻っていったはずだ。現実に、リアルに回帰した。
そゆことか……。
だからリクケイ(=サザンカ)は、本来空っぽであるリアスに好意を抱いていたのか。リアスの向こう側にいる私たちに向けて恋をしていた。執着してたのか。
そっか……。なるほどなー……。
何度も何度もケヤキの魂はリアスに受け継がれていないと語られるけれど、それって"ゲームキャラのケヤキ"だっただけってことか。ここ区別しないで皆語っているからすんごい紛らわしいな。
13)サクライさんについて
サクライさんについての情報はこんな感じか。
- [女の子]の同僚。同じ仕事をしている
- この仕事に絶望したため近々退職するらしい
- この仕事をやめて夢を叶えに行くらしい
- 昔ヤバメの病気に罹かったものの帰ってきた1人で世間では時の人と認識されている。
ここから考えを積んでいく。
サクライさんが「帰ってきた」という場所は現実世界のことで、今までいた世界はゲームの中のことだと見ている。つまりゲーム世界にずっと閉じ込められていた、あるいは閉じこもっていたんじゃないか?
「あの人らがさぁ、言ったんだよ」
「居心地がいい世界でも閉じた世界に居るのは楽しくないって」
「何でもいいから終わらしてしまえば その次の世界がやってくる……みたいな」「うろ覚えだけどね」
――[女の子]
サクライさんが言ったとされているこれは、「ゲーム」に置き換えてみれば納得できる。
「例え居心地がいいゲームでも閉じた世界に居るのは楽しくない、何でもいいからゲームクリアしてしまえば、また次のゲームがやってくる」そう言っているんじゃないかな。
ラストの[女の子]の発言から考えると、サクライさんが退職する理由は「あのゲーム世界に戻る」ためであり、ゲーム(この世界)から去ることが尊いことだ教えてくれたの本人である。
まだあのゲームの世界に夢を持っているんですか
この世界から去ることが尊いことだと、私たちに教えてくれたのはサクライさんなのに
私にとってまったく悪い夢です
わたしはそんなのあなたじゃない……なんて…
負け犬の言い訳をするつもりは、ないけど
私がやってきたことも間違っていたって………ってか…思ったり…(ここから2音ほど何か喋ってるが聞き取れない)
追加情報
- サクライさんが退職する理由は「あのゲーム世界に戻る」為だと推察
- サクライさんはこの世界から去ることが尊いことだと[女の子]に言ったことがある
さて以上を事実として、サクライさんの仕事はなんなのか?を考えていく。
まず1つ目の可能性は「ゲーム開発者」だという線か。ゲームを作って、子供たちに夢の発露する場所を与える仕事である。
そしてゲームはクリアされることを目的としている。この終わらなかった『SCE2』を進行させプレイヤーをクリアに導いた"リクケイ*2"のように本来ゲームは終わりがあるものなんだ。
つまりゲーム開発者は何度も何度もゲームを終わらせる為に作り続ける必要がでてくる。サクライんさんは一度「居心地がいい世界でも閉じた世界にいるのは楽しくない。何でもいいから終わらせてしまえば次の世界がやってくる」と言っていたらしいので、この動機が「終わりのあるゲームを作り続けること」となりゲーム開発者として仕事をしていたは可能性はある。
なのでサクライさんが「絶望」するとしたら、「終わりのあるゲームを作る」という部分だろうか。もっといえば表√のラスト[女の子]が憤ったように自分は万能な管理者でもなく、神にもなれなかったと気づいてしまったのかもしれない。
(まるで人は、私を万能な世界の管理者かの様に言うが)
(私はあくまで線的な時間軸に沿ってゲームを昇華する事が出来るに過ぎない)
(SCEの時もそうだった)
(「物語を最初からやり直すことが出来る」という行為は、その裏を返せば)
(あくまで一次元的に物語の時間軸を追う行為でしかない)
(物語の流れの代弁者である私自身を物語構造の一部として見た場合に)
(可逆的に過去に退行すればどうなる?)
(知恵を持ち越すか?)
(知恵を重ねるか?)
(過程を失うか?)
「ああ、まったく、平易な言葉で今の感情を語るならば」
「クソ食らえだ!」
ゲームは、ゲームとして産み落とされた瞬間、その結末は決まってしまう。観測するまでもなくその終末までレールは設定され、プレイヤーは一次元的に時間軸を追うしかない。
キャラクターは強烈な自意識を持っているにも関わらず、本当の意味で意志はなく、決断も行動もできない。
このことがサクライさんにとってとても嫌なことだったとしたら?
サクライさんはずっとゲームの中にいた人だと私は思っている。彼自身がゲームの世界の主人公でありあるいは何かのキャラクターとしてずっとその世界にいた。そこには自分の意志による決断も、本当の意味での選択もあった。
でも自分が作る「ゲームのキャラクター」にはそんなことは行えなかった。私たちは神になれなかったのだ。
だから彼彼女はこの仕事に絶望し、「またあのゲーム世界」に戻ろうとしているんだろう。
そして[女の子]は言う。
"私がやってきたことも間違っていたって……"
[女の子]もまたゲームを作っている仕事をしるのならば、プレイヤーが1つのゲームにずーーーーっと遊んでいる状況を好ましく思わないはずなんだ。
何度も勝たれているがゲーム開発者は別に子供たちを誘拐なんてしたくないんだよ……。1つのゲームに閉じ込めておきたいわけじゃない。だから「終わりのあるゲームを作り」続けている、そう思うんだ。
だとしたら[女の子]からすれば、そんな尊敬していたサクライさんが「あのゲームの世界に戻る」ということは、無限のルーチンワークに没頭するようなもので、1つのゲームに閉じ込められるということだ。
そんなの今まで自分がやってきたことは間違いなのかな……って思いたくもなるよ。今まで自分がゲームを作っていたのは、そういう事態を引き起こさない為だったのに、尊敬していた人が、ゲームに誘拐されちゃうなんてそんなの
そんなのって……あんまりじゃないですか
――女の子
それと最後に女の子はサクライさんに「昔の名前で呼んでくれてもいいんですよ?」ということから、
「あのゲーム世界」から帰ってきたというのはサクライさんと、この[女の子]のことだと思う。
◆
ちなみにサクライさんの仕事が「プレイヤーを強制的に退場させる」というアイリアのような「大人」の立場の仕事である可能性もある。
ま、こっちは簡単に思いつくので説明は割愛。いやごめん、ほんとは文字数の制限でもう記述できないんだわ……。文字制限あるとかほんとねこのブログサービスどうにかしてほしいねぇ。
さて私が考えられるのはこんなところかな……。
おわり
ここまで約1ヶ月かけて考察してきましたが、もう限界。私の能力の限界です。異論反論あると思うけどこれを叩き台にして誰か考えてくれると嬉しいです。あともうちょいな気がするんですよねー……。
htbrの元作品と、SCEを完全クリアしないと次の段階いけそうにないんでまずはこの作品プレイしてみます。前者はフリーではないけど。
ではでは。
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