ななついろ★ドロップス感想_砂糖菓子のように甘くやさしい物語(8979文字)

   ななついろ★ドロップス Memorial Edition

 満足度:★★★(3.4)

 

――――みんながくれたやさしい気持ちのこと、
ひとつも忘れないように

 

 

 

 



<!>恋愛初心者どきどき★ADV

  プレイ時間   22時間
  面白くなってくる時間   4時間
  退屈しましたか?   していないですね
  おかずにどうか?   使えないです
  お気に入りキャラ   八重野撫子

 

キャラデザ いとうのいぢ(伊東雑音)
原画 いとうのいぢ(伊東雑音) , ぺろ(Pero)
シナリオ 市川環 , @ピース , 風間ぼなんざ
音楽 水月陵(KIYO)
声優 安玖深音(ユキちゃん、秋姫 カリン) , 佐本二厘(秋姫 すもも) , 永杜紗枝(結城 ノナ) , 宗川梗(八重野 撫子)ありす(雨森 弥生) , 紫華薫(秋姫 正史郎) , 沖野靖広(アーサー 松田) , 野神奈々(野上奈々)(麻宮 夏樹、麻宮 秋乃、麻宮 冬亜) , 杉崎和哉(如月 ナツメ) , 小林康介(桜庭 圭介) , 本山美奈(小岩井 フローラ) , 笠原准(深道 信子)
歌手 AKIRA(声優)(主題歌「コイスル★フローライト」) , 水月陵(KIYO)(すももEDテーマ「虹色のルシア」)
その他 いとうのいぢ(伊東雑音) (企画・原案) ,どせい(ムービー)

公式HP│ ななついろ★ドロップス



 

 

 

 

ななついろ★ドロップスのポイント

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・女の子が可愛い! エ口いんじゃなくて可愛い!
・ 「初恋」「気持ち」という要素に惹かれる方は是非
・ 胸がきゅーっとなる


美少女ゲームはじめての方なんか、おすすめかもしれません。

 

 

<!>ここから本編に触れていきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

やさしい気持ちのカケラ

 

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でもねユキちゃん、ナコちゃんがお洋服を洗ってくれたことは消えちゃう。

そんなナコちゃんの優しい気持ち、消すことなんてできないよ、わたし……

――――秋姫すもも



ななついろ★ドロップス』は至るところで、「やさしい気持ち」が散らばっています。

すももがナコちゃんの優しい気持ちを消したくない、ユキちゃんをぬいぐるみの国に返す、友達は笑顔のほうがいいという八重野、悩みを打ち明けというすもも、クラスメイトの応援や励まし、如月先生が渡すお守り、秋姫カリンの助力、結城ノナの心配、マツダさんの気配り…………etc。

誰もが誰かを「やさしい気持ち」で包んでいます。そこには損得勘定、利益の追求といった考えが無いんですよね。自分の心から発露する「誰かがを喜ばせたい、嬉しいって思ってもらいたい」っていう気持ち一心です。

いちばんこれを象徴しているのが、「秋姫カリンの助力」のシーンです。

本当のぬいぐるみになったユキちゃんを助ける為、秋姫すももは、超・難易度の呪文を唱えることになります。呪文を成功させるために、毎日毎日すももは練習しましたがが____うまく行きません。

レードルは過負荷により暴走し、だんだんとすももの手に負えなくなるものになるんですけど、そこで「秋姫カリン」がいきなり現れて、レードルの暴走を抑えちゃうんですよね。

もし「ななついろ★ドロップス」が秋姫すももの成長だけに起点を置いているとすれば、すももは様々な困難を乗り越え、自立し、最終的には「一人で」障害を乗り越えるものだと思います。

けれどそうじゃない。


いつだって、秋姫すももの周りには誰かの「やさしい気持ち」で包まれています。挫けそうになったとき、悲しさを一人で抱えきれなくなった時、一人ではどうしようもないほどの困難に直面したとき



――――誰かのやさしさが、彼女を助けています。


それはなんというか、「優しい気持ちの循環」のように見えます。秋姫すももが手渡したやさしさが、巡り巡って、自分のもとへ返ってくる。誰かが誰かにあげたやさしい気持ちが、また誰かの元へ手渡される。

 

 

「誰かを喜ばせたり、嬉しいって思ってもらうこと……すごく好きだから、すもも」

――――八重野




八重野撫子があんなにも、すもものことを気にかけているのは、すももが八重野を同じくらいに気にかけているからです。また、敵対関係であった結城とすももが、最終的に仲良くなっていったのは、すももの優しい気持ちあってこそでしょう。

秋姫すももという女の子は、誰よりも、「やさしい気持ち」を大事にしているように見えるんですよね。あたかも「世界はこういったあったかいもので満ちているんだよ!」と言わんばかりに。

 

「ノナちゃんやナコちゃんや、みんながくれたやさしい気持ちのこと、ひとつも忘れないように」

――――秋姫すもも

 

 

 

 

またこの「やさしい気持ちを大事にする」というのは、石蕗の記憶損失の時でもあります。

 

 

 

 

「如月先生に相談して、すももの記憶から、俺を……俺とつきあってることを、消してもらう……こと」

「……それが一番すももが傷つかないこと……だと俺は思ったんだ」


「そんなの……できな……い、ハル君のこと……大好きなきもち……なくしちゃうなんて。できない……よ……やだよ……ふぇ……う」

「わたしは……ハル……くんのこと……忘れるなんてできな……いよ。ほんとに……好き……だから……ハル君……!」


――――石蕗、秋姫すもも

 

私にはここ、すももは自分だけの「大好きな気持ち」の為に記憶を消したくない! って言っているんじゃなくて、

ハル君がわたしにくれたやさしい気持ちを消したくなんてないんだよ……」と訴えているように見えます。



ナコちゃんの記憶を消したくない、と言っていた理由と同一だと思うのですね。

すももにとって自分や誰かの「やさしい気持ち」が無くなってしまうことに、とても拒絶感を感じられます。嫌だよそんなのは絶対に……と。

記憶が無くなってしまった石蕗に、惚れ薬を使わなかったのも「気持ち」というものをすごーく大事にしている、すももらしいです。

 

「いらないの。あの時、もう一度……って言ってくれたの信じてるから、これはいらない」

――――秋姫すもも

 

 

「惚れ薬」というのは、誰かの気持ちを強制的に自分を好きと「書き換える」ものです。

それは他者の聖域の侵害であり、冒涜です。境界線を踏み込んだあげく、土足で踏み荒らし、ぼろぼろにする。一体全体こんな酷い状況を作る惚れ薬を、秋姫すももが「是」なんてするわけないんですよ。


誰かの「気持ち」を書き換えちゃう、そんなひどく最低な物を受け入れるはずがない。だって彼女はやさしさ・感情というものをとても重要視しているのですから――――。


…………………………

…………

 

 

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ななついろ★ドロップス』――――それは誰かをたいせつに思う「やさしい気持ち」で溢れている物語。

 

 

 

 

――――――――――――

 

――――――

 

 

 

 

 

 

 

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はい感想です。

最初に思ったのが「うわなにこれ可愛い!」でした。秋姫すももと八重野撫子の見た目がもうふっわふっわしてて、可愛い……。


魔法少女モノ」かと思ってたんですけど、これ全然違いますね……。プリキュアとかおジャ魔女どれみとか、ああいった「ある日不思議な力を手に入れたさあどうする?!」的な物語と思っていただけにちょっとショック。

ななついろ★ドロップス』はどっちかっていうと、魔法少女モノにあまり焦点を当てていないんですよね。「初恋」と「やさしい気持ち」のほうが強いです。


そんなことはどうでもいいんです。話を次へ次へと。


もうなんかね、たまんないのが、「雰囲気」です。八重野との雨降りの帰り道、八重野との手を繋ぐ帰り道、八重野とのお風呂のときの気まずい空気――――そういったなんとも言えない「雰囲気」がとても良かったです。

……言葉で表現するのがめちゃくちゃ難しいんですが、お互いの心の距離を測っているような、じりじりと心の指先を伸ばしていくも、戸惑って止めてしまうような、このなんともいえない感じが大好きです。

または、すももと如月先生へに嫉妬する "ああいった” 胸がきゅーってなることが多々ありました。

 


というかなんだよ! 胸がきゅーって。どうしてこんな現象が起きるのよさ!

脳と心臓がリンクしている説は……信じてしまうぞ……。



恋愛絡みで、言葉では説明できないとても複雑な感情が渦巻くとき、この「胸がきゅーっ」ってなりますよね。
え? なりません? ……――――いやなるよ!!


相手の気持ちを手探っていく時に、起きるような気もするなあ……。まあいいのです。


とらドラ!』のスピンオフ3巻のある章、「ラーメン食いたい透明人間」のお話も胸がきゅーってしますので、読んでいない方は是非。 

とらドラ・スピンオフ!〈3〉―俺の弁当を見てくれ (電撃文庫)
 

 

 

というか、少女漫画ぽいんですよね。『ななついろ★ドロップス』。空気感もとい雰囲気がとても。



ちなみにここがこのシーンがとても好きです。

 

 

 

「今のハル君を、全部わたしにください」
「最後に……わたしの知ってるハル君を……ぜんぶ……ください」

――――秋姫すもも

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いや……もうほんと……すごいと思うもの。

「約束」が自分と相手に告げる、遂行宣言だとするなら、秋姫すももがしていることは、「今」を、「今現在」を"止めるよ”!!って 言っている気がするんです。

約束って、理想的な未来を「今」に書き換えようとする宣言じゃないですか。「俺すもものこと、もう一度好きになるから!」というのも、今ではない「未来」、あってほしい未来を「今の話」にしようとすることです。

でもすももは、「今のハルくんを全部ください」って言っているんですよね。今が欲しい! と。なんだか「世界は美しいか?」という問いに答えるような感じです、そんな感慨です。


「うん美しいよ」
「言ってしまったな」ってさ。


だから、「時を止めるほどに美しい今」っていう感じがとてもするんですよ。ここのすもものお願いは。

 

ちなみに「八重野撫子」がいちばん好きです。ああいう言葉数が少なくて、でも、誰かの気配りを忘れないやさしい子はとても魅力的ですもの!

 

 

今思い返すと、「ななついろ★ドロップス」って、甘いふわふわした砂糖菓子のような物語だなと。

 

 


<参考>

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八重野撫子 感想 (8305文字) -

 

 

 

 

 

 

 

 

 

心に残った言葉

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「私と石蕗を変えることはできないのですか?!

「私なら、半年間の記憶をなくしても構わないんです」
「すももとの思い出は、いっぱい……いっぱいあるから……」

「だけど……すももと石蕗は……半年前に戻っちゃったら……」


――――八重野

 

 

 

「僕だったら仕事だし、すももちゃんたちなら学業かな。いろいろあるよね、しなきゃいけないこと、たくさん」

「でもね時々……やらなきゃいけないこと全部放り出してでも、大事なものを守らないとって時があるんだよ、時々……ね」

「そういう時は、泣いたりわめいたりしても全然悪くないんだよ?」

――――如月先生

 

「ねえ、ハル君ならこのお話の続き……どういう風になると思う?」

「そうだな……ずっとずっと、泳ぎ続けるかな……何かを探して」

――――秋姫すもも、石蕗

 

 

「俺、すもものこと」
「記憶がなくなっても、もう一度、好きになるから」
「絶対もう一度、好きになるから……な」

――――石蕗

 

 

 

もう一度、好きになる約束

 

記憶を失った俺は、すもものことをどう思うのだろう。
そばにいたいと、すももに触れたい、守りたいという思いをどこへやってしまうのだろう?

何一つわからない。

だけど行くしかなかった。
何もかも失うとわかっていても。

――――石蕗

 

 

「記憶をなくしたハル君が……混乱しないために……だから……」
「――」
すももが、携帯を持つ俺の手をそっと握りしめた。
たった数回ボタンを押しただけで、携帯の中のメールは消えてなくなった。あっけなく消えたそれらは、もう戻ってくることはない。

――――秋姫すもも、石蕗

 

「今度は夜空、見ながら歩こう」
「ハル君……っ」
「……」
「うん、歩こうね。約束だよ」


――――秋姫すもも、石蕗

 

 

 

「記憶が戻るわけじゃないけど、この薬を飲めば石蕗君はすももちゃんの事を好きになる」
+++

「お守り、と思って受け取ってもらえたら嬉しいな」

 

――――如月先生

 

 

 

思い出の残滓、メール予測変換、バンソコ、園芸部、秘密の場所、

 

 

――――秋姫、秋姫、秋姫!
心の中で、何度もそう呼んだ。
――――違う。
頭の中でざわざわと何かが騒いでいる。

――――秋姫!

もう一度その名前を呼んでみる。

――――違う。

目の前に立つ、俺のことをみつめてるこのこのことを俺は――――……。

――――石蕗

 

 

「すもものこと、記憶を失う前と同じくらい好きになっているかなんて、わからないんだ」
+++
「だから、俺」
「もう一回、すもものこと、最初から好きになる」

 

――――石蕗

 

 

「わたしが、ハル君とこうしたいの。だから、そんな風に言わないで」

 

待雪草。希望・「初恋の、まなざし」

 

 

 

それでね、ほら、初恋は実らないって……よくいうでしょ?
でもハル君はわたしのこと好きになってくれた。
二回も、好きになってくれた

 

瞳を閉じて、すももの口元が優しい笑みを浮かべた。
俺が覚えていた、春のすもも。
言葉をすぐのみこんでしまう、内気な女の子だった。
俺が好きになっていった、夏のすもも。
少しだけ覚えてる姿は、頑張りやな笑顔だった。
それから、俺の隣を歩いてくれるようになった。


――――石蕗

 

 

 

 

 

 

 

 

雑感コーナー

 

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すももはごめんなさいばかり

 

「…………ぐす」
「…………」
「……ごめんね、石蕗くん。肝試し……途中で抜けちゃって……」
「いいよ、そんなの」
「ほんと……? でも……ごめんなさい」
秋姫は何度も小さくごめんなさい、と呟いた。

――――秋姫すもも、石蕗

「ごめんなさい」という言葉が癖になっている、というよりも多分彼女は、人の気持ちを読解することに長けているんだなあと思う。
石蕗くんはどう想っているのだろう? どう感じているのだろう? どういう気持で…………。っていう他者への共感性とでもいうべき力。

 

それに元からもっている感受性の高さもあわさって、どうも座りが悪い。もしくは居た堪れない気持ちになっちゃっているんだろうな……。

 

「あのお星様、もしかしたらもうお無いのかなって思ったら、寂しくなっちゃった……えへへ」

――――秋姫すもも

うさぎのカタチのお菓子は食べるのがもったいないとすももが言っていたので、結局最後まで残っていた。
食べる前にお菓子に向かって『ごめんね』と口にしていたすももが可愛らしかった。

――――石蕗

 

 

 

 

 

すももの勇気と自立

 

秋姫はキャンディーを手のひらに乗せて、しばらくじっと眺めていた。
食べるのかな、と思っていると、秋姫は結局またそれをポケットにしまいこむ。
「あれ? 食べないの?」
「うん」
「……勇気、自分で出さなきゃね」

――――ユキちゃん、秋姫すもも

 

今までナコちゃんや、ユキちゃんといった身近なものに支えられてきたすもも。

けれど成長(=苦手の克服)してくことで、なんか自立の一歩がいたるところで見受けられます。

このあめ玉を食べない、というのもそうです。

今までのすももなら、心がお地毛づいてしまうとき、「何かに頼る」、頼りそうな女の子でしたが、今回は「自分で頑張るよ」とそう言っている気がするよねー。

 

 

 

 

如月先生の恋愛価値観

 

「すももちゃん……よかったね、星のしずくを七つ集める前にもう、願いを自分の力でかなえたんだね」
「僕が余計なことをする必要も無くなったね」

――――如月先生

と、言いながら惚れ薬をちゃっかり製造していた如月先生。
ぶっちゃけ、この人の恋愛価値観はついていけないかもしれないぞ……。……この人は惚れ薬によって相手の心を操作することに抵抗ないのかな? って考えちゃます。
だとするなら、……ねー……。

 

 

 

八重野ちゃんはほんといいこ

 

石蕗、すもものこと……大事にしなかったら私が怒るからね」

――――八重野

 

うんうん。……もう八重野は素敵すぎる。

 

 

 

 

 

恋する力と感情の振り幅

 

「わたし、今ならなんでもできる気がするの!」

「なんでも! なんだかね、いつもより勇気がある気がするから」
「――ハル君が、くれたの!」
「ハル君が、わたしにいっぱい勇気をくれたんだよ!」

――――秋姫すもも

 

そうしてこのあと空をとぶ呪文が本に浮かび上がったり、時を止めることも出来るようになったすもも。

恋することは、劇的に心をも変えてしまう。

それは「見ている世界を書き換え」てしまうことと同じだと思う。
感情の振り幅によって、恋することで、世界が圧倒的に変わってしまう。

人は感情のいきものだものね。
どう"観”るかで、見え方が全然違うのよさ。

 

 

 

なんでもない出来事

 

「あはは、すももちゃんの産まれる数年前の話だよ。
でも、そういうなんでもないことって、何故かいつまでも覚えてるんだよね」

――――正史郎


うんうん。そういうなんでもない出来事って、たいてい「実利」が伴ってないものばかりだと思う。

バカみたいな話、ちょっと笑ってしまうような話。胸がふわっとするような思い出。

それって、その人たちのことを、「一個人」として大切にしているかの分水嶺だと思うのよさね。

 

 

一緒か試してみようか?

「ぜ、ぜんぶ一緒か……試してみよう……か?」

――――秋姫すもも


耳元でお互いにいっせーのせで、言う「キス」というのは、もう甘いあますぎる。酸っぱくない全然。

というかすももとは、そういう甘々なお話が多い気がする。
告白シーンとかとか。

 

 

 

できることとリスク

 

俺にできること。
俺にできることは何だろう?
言葉の力を使うこともできない。
もちろん杖なんて、俺には使えない。
たったひとつできることは……すももを強く抱きしめることだけだった。

――――石蕗

 

自分自身の損得を抜きにした「できることってなんだろう?」の行き着く先って、とても純度の高い感情だよね……。

 

 

 

やさしい気持ちの循環

 

「ノナちゃんやナコちゃんや、みんながくれたやさしい気持ちのこと、ひとつも忘れないように」

――――秋姫すもも

「こっちの手も……ほら、もう大丈夫でしょう?」
――――???(すももの母)

 

この「ユキちゃんの時間を過去へと戻す」難しい場面で、秋姫すももはみんなやさしい気持ちを受け取りながらも「一人」で、どうにかしちゃうのかな? と思ってたんですけど、

土壇場でお母さんに「助けられ」てしまいます。


そのとき、あーすももは自立するっていうことじゃなくて、互いに互いを「やさしい気持ち」で循環させていくものなんだなーと思いました。

余談ですが、なんですももは「母」の姿を見ても、「お母さん」と認識できなかったのか?

これは結城ノナが変身することで、髪の色から姿カタチを変えてしまうのと同じように、すもものお母さんも、すももが認識している「母の姿」とは異なっているんでしょうね。


(比べてみると、髪が若干長い?)

 

 

 

 

初恋シンドローム

「好きになった人が」
「……うん」
「好きになってくれるのってね」
「すごいことだと思うよ」
――――秋姫すもも

 

うんうん。

 

 

 

 

 

 

結城ノナに対する好意が無いのだけれど、どうしよう

 

腰が抜けて動けない結城にめいいっぱい近づくと、肩に手のひらが触れた。

――――石蕗

 

なんだろう……結城にたいする好意が無い。「友達未満」のままの好意しか持ちあわせていない。

だからおんぶとか抱っことかするこの行為というか、彼女と接触することにだいぶ抵抗があるなあ……。
好きじゃない子を好きになれというのは、もはや拷問にちかい。いえ拷問だよ!

そもそもメガネをかけている時点でだいぶ、悪印象なのよさね……。

 

 

 

短絡的行動

 

 

「何か、勘違いしているのかも知れませんけど……」
「さっきの皆さんとの会話、覚えてますか?」

――――結城ノナ


結城の行動はちゃんと理由があるものだけれど、(それも心配している)、もうちょっと関係性に配慮してほしいなと。

というより誤解されることに抵抗ないのかな? と思ったらそっか……惚れ薬かー……。

というかさ、「惚れ薬で人を好きになる」っていうのは、すんげー冒涜行為だよね。他者の聖域の侵害だし、なにより他者の自由を根こそぎから否定するそれは……正直許容できないよね。

好きになる側も、好きになってしまう側も、お互いに辛くない?

というよりこれも「本物/偽物」という価値観なんだろうなあ……。本物ではない感情だから、拒絶してしまう。惚れ薬によって誰かを好きになるのは「偽物」だから許容できない。

……ただ、最初は偽物でもなんでもいいと思うのだ。

互いが「本物」にしようという気持ちがあれば。そうここの感情だけは本物であってほしい。


「偽物を本物にする」って思った、その感情は。

 

「もし何だったら、如月先生に効果を消す薬を作ってもらったらどうかな」
「……」
「きっと、先生だったら作ってくれるよ」
そうすれば、結城も困らないだろうし。
その方がいいかも知れない気がする。
「……いい」
「え?」

――――ユキちゃん、結城ノナ

 

 

そうここだけは、きっと本当の気持ちなんだろうなとは思う。

 

 

 

 

 

 

 

大事にしてあげなよ

 

「結城さんの事、大事にしてあげなよ」

――――八重野

なぜか八重野とすももから、結城を大事にしろと言われる。
ほんとなんでこういう事を言われるようになったんだろうか。

好きでもなく、それほど好意的な感情を向けていない相手を「大事にして」と言われるのはなんか……抵抗あるなあ……。

それも好意を向けている相手(八重野)に言われるのは、だいぶきついなあ……。

 

 

「結城さん、石蕗くんと一緒だと……楽しそうだよ」
――――秋姫すもも

 

 

 

 

 

 

先天的素質との、努力の差

 

「……そんな」
まっすぐとレードルに引き寄せられた星のしずく。
その2つは逃げる事もスピードも戻す事もなく、素直にレードルの中にすくわれた。
「やった! やったよ、ユキちゃん!」

――――アスパラ、秋姫すもも

 

すももなんかよりも、数倍、努力してきたこれだものね……。先天的素質、つまり能力値が、努力なんてものをたやすくしのいだ瞬間だった。

……というか、上を見ればキリが無いんだよね……。比較されしていく競争の構図は、こういうことをたやすく引き起こす……。

結城ノナにとって、「負ける」ことはひどく少ない回数だったのかもしれない。だからこそこんなにも落ち込んだのかもしれないなと。

 

 

 

惚れ薬の効果

 

「惚れ薬のせいでこんな気持になるなら、もうこんなのはごめんよ!!」
――――結城ノナ

惚れ薬の力で誰かを好きになるのは、偽物の気持ちなんだろうか……。
結城は、俺の事が好きでずっと辛かったのかな。
もっと早く、薬の効果を消してくれって俺が言ったらよかったんだろうか……。
――――石蕗

 

ここらへんきゅーってなる。

 

 

 

 

秋姫すももの優しさ

「その人を助けるのに、星のしずくが必要だって」
「だから、わたしの持っている星のしずくを分けて欲しいって……」
「秋姫は、どうしたんだ?」
「少し迷ったけれど、ノナちゃんが真剣だったから」
「わたしの星のしずく、分けてあげたの」
――――秋姫すもも

ちょっとだけ「異常性」が滲むような気もする、秋姫すももの行動。

だってさ、すももはユキちゃんをぬいぐるみの国に帰したい一心だったのに、その為に、いろいろなことを頑張って乗り越えてきたのに、それをわりとあっさりと手放しちゃうのは、どうなのかなー?って思っちゃいますよ。


結城の星のしずくを合わせると、すももが彼女にあげたしずくの数は2,3個なのですかね?


すももはこのとき、結城ノナの熱意、必死さを鑑みて、自分の心にある「優しさ」によって、彼女に星のしずくをあげたんだと思いますが、じゃあユキちゃんへの優しさはどうなるんだろう?…

正義の味方が、正義の味方をした人だけの味方のように、
やさしさもまた、優しいとおもった人だけの優しさなんでしょうね……。


この場合のやさしさは、等分不能みたいな。限りがあるよと、そう見えます。

 

 

 

 

 

おわり

 

 

おわりです