【批判】Clover Day'sというセクハラゲームがほんとうに辛い(そこを抜きにしてもツラい)【レビュー】

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(1)クロデイに対するうんざり感はどこからくるのか

 

女の価値は胸!尻!外面!―――主人公はそれを事ある事に俎上にあげてはヒロインにセクハラをし(その時分に流行った面白くもなんともない)パロネタとホモフォビア(=同性愛者嫌悪)が蔓延しているのがギャルゲーである。

というのは言い過ぎにしてもこの傾向はこの媒体にあるし、特に「萌えゲー/キャラゲー」と分類されるジャンルにおいてよく見られるのも確かだ。しかしだからといって、“だからといって” (私は)それが悪いと思わない。作品の倫理観はそこに独立したものであって、その時代の読者と合うこともあれば合わないこともあるのだから。

その読者の倫理観に合わないからといって、イコールでその作品はダメとは限らない。

しかしそれでも程度問題はあるし、あるいは私が許容できないラインがあり、それを越せば「なんだこれ?」と思うのも必然である。本記事はそういった前提において、本稿管理人の許容できなかった部分が、どのようにして、許容できなかったのかを記していく。

 

a,数分に一度はレッツセクハラ!それがクロデイ流さ

 

日常パートでは必ずといってもいいほど――5分に一度は――セクシャルハラスメントが行われるのが本作である。おPIがどうの処☓がどうだのと実際に言葉に、行動に、移しているのは最早疑うまでもない。

 

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杏璃「優人さん、起きてますか?」

優人「はい。さっきから、おっきしてます!」

杏璃「は?」

優人「おわっ!? 違った!」

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優人「実は毎晩のように、杏鈴とプロレスごっこしてるんだ。性的な意味で」

 

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優人「ほら、恥ずかしがらずに杏鈴のすべてをお兄ちゃんに晒してごらん。優しくするから。はぁはぁ!」

――Clover Day's

 

 同様に、(声には出しておらずとも)思考においてもそれはたびたび見られる。

 

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――Clover Day's

 

驚くべきことにこれは主人公に限らず、女性陣もそうなのだ。むしろ率先してセクハラをし、かと思えば自らを性的対象としてアピールしまくるのはある意味必見である。

 

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「おお、さすがつばめちん。揉み応えのある■イ■ツね。本当にミルクが出そう」(引用者注:■は自主規制)

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「ユウ……お胸好きなの? なら、ワタシのを……」

 

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ヘキル「いい子いい子……」
と、突然俺の■間を撫で始めた。(引用者注:■は自主規制)

 

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 「夜這いなう」

 

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「兄の■■も妹のものだって法律で決まってるんです~~~!!」(引用者注:■は自主規制)

 

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「……まあ、相手がいないって言うなら産卵させてあげてもいいけど」

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 「ああっ、舌くちゅくちゅ絡めるとか絶対痺れちゃうからだめぇっ! ファーストキスどころか■ージンまで奪われちゃうっ!! 幸せにされちゃうっ!」(引用者注:■は自主規制)

――Clover Day's

 

見てわかるように、特にヘキルと泉は、、、脳神経が焼き切れてしまったのか下品なコミュニケーションがデフォルトだ。こんな女性に男性(=優人)は惹かれるんだろうか? ああそう……。

もちろん今取り上げたのは『Clover Day's』のほんの一部分で、本編ではこの数倍のセクハラが波のように押し寄せてくる。「ギャルゲーってそんなものだよね」と理解している私でも、さすがにこの物量は処理しきれなかったのか久々に嫌悪感がぶわっと出た。

ああ、この世界のヒロインとはつまり・・・(てんてんてん)なんだなと承知した。

 

 

b,他者がいない

他者とは、本質的に理解不能な者を指す。

我々のまわりにいる、我々以外の人間はすべからく他者であり、心を通わせた思うことはあっても往々にして一方の勘違いで、はたまた両方が幸せな幻想に浸っているに過ぎない。

しかしそれでも我々は(自己だけでは成立できないからこそ)他者を求め、その些細な勘違いを願うものだ。時としてそれは不快をもたらすが、同時に幸福もそこから導き出されていくのだから。

だが本作においてそんな「他者」はそもそも存在しないのである。

どのヒロインも優人すきー!状態であり、そこには互いの(ブラックボックスな)心を読み解こうとする努力なんてものはないし、例えあったとしても筒抜けで、表面上は嫌そうでも実は・・・という都合のいい女性ばかり。最初から好感度がMAXなので優人さえその気になればカップルは成立する。

セクハラをされても嬉々として受け入れる彼女らは一体何者なのか?・・・まるでヒロイン=主人公のような、相手と自分に差がないような、彼彼女らの自己が同一化している雰囲気すら覚えるものだ。

ギャルゲーの面白さに他者との交流が挙げられるのだとすれば、クロデイはそれを否定し、最初から最後までだれも優人を嫌いにならないやさしい世界を創り出したと言ってもいい。

 その代償として、深みのない、ガワだけの、空虚な登場人物が幅を利かせるのは仕方のないことなのかもしれない。

 

 

c,ワンパターンな会話

 

本作の会話は主に「ボケツッコミ」「パロネタ」「セクハラ」で展開されるものの、ノリツッコミは滑るわ、ボケはつまらないわで何も良いところがない。そして賞味期限が切れたパロネタと先述のセクハラが降り混ざられるとなれば地獄だ。

ここで私が問題視しているのは(それが致命的につまらないということもあるが)「同型の会話が繰り返される」ことである。同じよーな展開の、同じよーな題材で、同じよーな会話を30時間見せられるのは、心底きつい。

全くもってつまらないテーブルトークを壊れたラジオのように繰り返されるこのうんざり感をどのように表現すればいいのだろう。

あのね、これが豊穣なる日々(=Clover Day's)ってなわけ? 冗談でしょ。こういうのは"Texture Day's"っていうんじゃないの。

 

 

d,優人はなぜ約束に固執するのか描かれず

 

 ヘキルとの結婚話がどうもおかしい。

優人は結婚の証拠がでてくれば既成事実として、それを受け入れるかどうか決めなくてはいけないと悩む。

しかしそんなのがあろうがなかろうが、許容するかどうかなんて今決めればいいはずだ。証拠がなくても(今)結婚してもいいならば受け入れればいいし、出来ないならば「あれは子どもの頃のちょっとした口約束だったんだよ」と断ればいい。

なぜ証拠が出てこなければ悩もうとせず、出てきたら悩み始めるのか全くもって意味不明である。

どうも彼は「過去の約束」を私が思っているよりも重く感じている(=神聖視)ので、こういう判断になるのだと思う。そういうふうに解釈すれば、腑に落ちないこともない。

だが劇中ではその心理状況にディティール与えることなく、下記のみで証明終了してしまうので、なにがなんだかという感想を覚えてしまうのも確かだ。

 

ただ、あの約束は子供の頃のじゃれ合いみたいなものだった。

ふざけて婚姻届に名前を書いたのと変わらない。俺も真剣じゃなかった。だから――

だから、何だろう。

子供の戯言だから、なかったことにしてほしいって? そんなの都合が良すぎる。

――優人(Clover Day's)

 

「あの約束はじゃれあいだった」→「だからってなかったことにはできない!」

ここの論理が破綻しているため、彼の気持ちを納得できる人は少ないだろう。仮に「だからってなかったことにできない」と考えるのであれば証拠がなくても受け入れればいいだけの話では?

このように優人の心的状況は要を得ないので、結局は理屈ではなく、感情的な、つまりそういう物語を彼は信じていると考えればいいのかもしれない。

しかし本作において「ヘキルの約束」は今までの日々を変化させるターニングポイントなので、ここをしっかり描かないと後にヘキルと付き合ったり、あるいは断ることが何ら意味をなさなくなってしまう。

実際、この約束によって優人は「誰かを選ばなければならない」状況を本作は創り出したわけだけど、まるで役立ってはいないのだ。

泉の場合でも、つばめの場合でも、ヘキルとの約束はあっさりと流されて個別√に入るため作品全体を通しての「要点」にはなっておらず、単純な「序盤を盛り上げるだけの一発屋」にしかなっていない。つまり後のお話に生かされないのに、この約束はやたら重大な出来事のように描かれている

それに、そもそも優人は選ばないよね? 泉√もつばめ√も告白するのはヒロイン達だし、優人はただそれを首肯するだけである。少なくとも“能動的”な選択はされていない。

一体全体「ヘキルとの約束」は何だったのか――この序盤と中盤の接続がでたらめなため本作はなんだかちぐはぐなのである。

 

 

おわり

 

他にも最初から最後まで面白みがないとか、個別終了→ED→エピローグの後にさらにヒロインの独言を長々と聞かされる演出表現がくどいとか、無断で小学校に侵入したあげく在校生の体操着を(学園生)が勝手にはいてイ☓☓ラプレイとかバカなの?とかまだありますけどもういい加減語り終えたいのでその話はしません。

今まで触れた、

a,数分に一度はレッツセクハラ!それがクロデイ流さ
b,他者がいない
c,ワンパターンな会話
d,優人はなぜ約束に固執するのか描かれず

この4つでClover Day'sに対する私のうんざり感は十分表せたと思います。そういうことにします。*1

私的満足度:★★(2.0)
疑似客観視:★★(2.0)

 

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*1:強いて良い所をあげるならば個別√クリア後に、タイトル画面の風景とBGMがすこしづつ変化するところは好きです。それ以外は本当に駄作といって申し分ない品質でした。いやもう・・・これは(私は)ダメだと思うよ。ひどい。