彼と彼女と彼女の忠義の感想 ネコは綺麗好きにゃ!
ある日、助けてもいないネコが助けて頂きありがとうございましたと主人公のもとへやってくる。それも「女性」としてやってくる。やってくるというか既に六畳一間にちょんと居座っていた。
――誰だ! お前っ!
猫の恩返し風味ノベル,『彼と彼女と彼女の忠義』
ここに開幕。
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彼と彼女と彼女の忠義。感想
本作は短編モノであり1時間ほどで読み終わる。読むのが遅い私でこれなのだから早い人は30分とかで読んでしまうかもしれない。とはいえ短すぎるわけでもなく、これまた丁度いい長さである。
というのも、女体化したネコとほのぼの生活を送ることがメインの物語なので、これ以上その日々が続くと今度は却ってダレてしまうかもしれず、これくらいの長さが丁度よい塩梅だと感じるからだ。
ちょっと息抜きにノベルゲーやりたい人にはいいかもってくらいの長さであり、フリゲにしてはやや珍しいボイス付きなのでお得感もある。興味あればどうぞ。
ただ、めちゃんこおすすめって程ではない。
※ここからネタバレ注意
◆
しかしそのボイスを序盤で切ってしまった。聞くに耐えないものというわけではないのだけれど、声がいいか?魅力的か?聞きながらプレイしたいか? と問われればそうではなかった。
本作はテキストウィンドウ表示ではなく、一画面にずらっと並ぶテキスト形式だったことも関係してきたのかもしれない。いや関係ないか。単純に好みではなかったというだけだろうな。
なんにせよ、女体化したネコとすごす日常は淡々としたものであり、時折くすっと笑ってしまう場面もありながら正直特筆するべき点はない。でも "日常" ってこういうものだよねと言われたら頷いちゃう感じにさりげなく、なにもなく、ふつうな日々なのである。そういう空気感がでているところが本作のポイントといえばポイントなのかもしれない。
あと個人的にはラストの「貫太郎内部」のお話が一番好きだったりする。童心、性欲、誠実といった感情がそれぞれ自立し、話し合いを始める。そうして事態の収束に励もうとするものの貫太郎はネコの扉(隠語)をこじ開けてしまい・・・というなんともおかしい展開。それまでは貫太郎が「自分とは違うモノ」であるネコを受け入れるかどうかというシリアスな空気だったのに、いきなりコミカル調にお話が転がっていきあげくセッ久シーンを笑いで描いてしまうところは最高にグッドでしたよ(ヱリカ風)
そしてネコの扉(隠語)を開けた貫太郎は人間の言葉が話せなくなってしまう、というラストのオチはなんともいえない異類婚姻譚のニュアンスを感じ取れたりもした。そこに教訓的なものなんて微塵もないのだけれどさ。
私的満足度:★★★(3.4)
(了)
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*1:原画 七条貞之
シナリオ はと
音楽 はと
声優 雪白ゆり(ネコ)