誰かを好きになるってステキ!凍てつく恋愛ADV「天使のいない12月」を紹介
恋って
素敵だ。
誰かを好きになることは心が満たされるし、好きになってもらう事は自分がここにいてもいいんだって思わせてくれる。想い人との逢瀬は甘く、心地よく、こんなにも幸せでいいのかと桃色時空にて精神が溶解し始めたりもする。もちろん痛いこと、辛いこともあるけど、それらを帳消しにするほどに恋って素晴らしいものだよ。
――そんなふざけたことを素面で言ってしまえる程に「恋」っていう概念は高尚で崇高なものになってしまっている。
売れないミュージシャンは路上で恋の素晴らしさを叫び、大衆小説は恋がいかなるものかを語り、テレビドラマは人を好きになることが人生を豊かにするかアジテーションしている。そして恋愛脳であるあーちゃんはお外を走りながら結婚の申し込みをしていたんだ。私知ってる。
誰も、彼も、考えなしに恋愛の良い部分を抽出し、訴えかけ、あまつさえ誰かを好きになったことがないなんて可哀想! 恋を知らないなんて人間じゃない家具だ! と言われる始末。
でも、恋愛って、そんなにいいものだろうか?
お前らが声高に叫ぶ幻想はいつだって嘘で塗り固められたどうしようもないもののくせに、一体いつになったらその脳天気な頭は現実を見据えるのだろうか。そんな我々の怒りに応えてくれるのがADV『天使のいない12月』なのである。
パチパチパチ。
「天いな」は凍てつく恋愛物語
(天いなOPムービーを聞きながらどうぞ)
本作は世の中にあふれる「綺麗な恋愛像」を暴く作品だ。
そりゃ恋の多面性を描く作品は溢れているさ。甘いだけじゃなく辛い部分も描写される。でも最後には結局「恋ってそんな悪くないよね」なんてありきたりでお仕着せで誰もが笑って誰もが望む最高なハッピーエンドで幕を閉じる。おいおいもういい加減にしてくれよ、うんざりだ。
そんな感慨を覚える人に『天使のいない12月』はぴったりな内容になっている。
恋情を向ける相手は代替可能であり「こいつじゃなきゃ駄目だ」なんていう人間はいやしない。当たり前だ。たまたま好きになったのはあなただったけど、本当は誰でもよかった。あなたじゃなくても構わなかった。あなたの代わりはいくらでもいるもの――"運命の恋人"? んもんいるわけないだろ。ったりめーだっつの。
スキがなくても恋人になれるし、スキがなくてもセッ久はできる。重なる肉は好意感情の有無で行われはしないし、例えそこに欠片ぽっちの「好き」があったとしてもいつか儚く消え失せる曖昧なものでしかない。ずっとは続かない。永遠はない。
――そんなどうしようもない恋愛観を主人公とヒロインは見せつけてくる。何度も何度も何度も何重にわたって「そうさお前らが言う"恋愛"とはこんなにも安っぽい代物に過ぎない」のだと腰を振りながら突き付ける。
プレイ終了後。一体何人がシフォンケーキのように甘ったるい恋愛像を持ち続けてられるだろうか。一体何人が凍てつく恋愛観に書き換えられてしまうのか、見ものである。
天いなのキャラクターをご紹介
栗原透子
主人公のクラスメイト。自分に自信が持てないため、他者に依存することで自身の存在意義を見つけようとする。なりゆきで主人公と肉体関係と持ってしまい……。
榊しのぶ
まじめな委員長、栗原透子の幼なじみであり、彼女のことが好きで好きでたまらない。
麻生明日菜
バイト先の女子大生。包容力がある明るいお姉さん、でも心の内奥は冷えきっている。
須磨寺雪緒
死にたがりの女の子。
葉月真帆
友人の彼女。全ヒロインの中で唯一純真であるものの、それゆえに人を好きになることと肉の重ね合いの相関関係に戸惑ってしまう。
"スキだからセッ久するんですか???"
天使のいない12月をおすすめできる人
『天使のいない12月』はもちろん恋愛至上主義・恋愛脳の方には合わないだろうし、一度触れてしまえばそのピンク色の精神は立ちどころに蒸発してしまうに違いない。ああ、やんなるかな嘆きの恋愛工学。
これは恋愛の負の面に興味があったり、恋愛がいかに下らないものかを知っている、あるいはアンハッピーなラブストーリーを求めている人にお勧めしたい物語だ。
この冬。
なんともいえないアンニュイな恋物語を味わってみるのもいいかもしれない。
DMM
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