『るいは智を呼ぶ』は私がはじめてプレイした、男の娘ゲームである。
男が女の格好をすればただの女装だが、それが「女性のように可愛い」域に達していれば男の娘となる。先人は言う「可愛いは正義」だと。本当にその通りで可愛ければ、それが生物学的に男だとしてもヒロインのごとく好きになれるのである。ち■■?知ったことじゃないね。
つまり野郎が女の衣装を纏っただけの「女装」と、それを超越する「男の娘」は本来全然別物なのだ。
しかし当時の私はその違いが分からなかった。男の娘を題材としたノベルゲームなんて眼中になかったし、いくら萌えーなキャラクターデザインだろうと「でも男が女装してるんでしょ?それに萌える特殊の性的嗜好を持ち合わせなんかいないから」とちょっぴり抵抗していた。
でもやってよかった。
『るいは智を呼ぶ』の主人公・和久津智は「本当の性別を知られてはならない」という呪い持ち故に、イヤイヤながらも女装をしているんだけど、でもめっちゃくちゃ可愛いんだなこれが。
学園では憧れのお嬢様として注目を浴びるのも無理はないそのウィットの効いた言葉遣い、丁寧な仕草、気品、純潔な精神はどのヒロインよりもヒロインらしく女の子らしかった。声もまたキュートで心をメロメロにさせられちゃう。そんな彼?彼女?に触れていると「智が男だとかどうかなんて瑣末なことだよ」という想いが胸に去来し、そうか、これが男の娘の魅力だったのだなとなんか開眼した。
きっと私のようにこの作品で男の娘の良さに気付いた人も大勢いるんじゃないかな。ああ智はめっちゃ可愛いのだ。
ちなみに公式の人気投票はご覧の結果に。
主人公がヒロインを差し置き1位ってわりと珍しい。
via:http://www.akatsukiworks.com/product/ruitomo/sp06_01.html
「むしろ智は男じゃないとだめなんだ!」
このコメントは分かる気がする。
るいは智を呼ぶは「男の娘」だけが魅力ではない
本作は確かに「男の娘」を題材にしたものではあるけど、でもそれだけだったらこんなにも大好きにならなかったと思うんだよね。
というのも『るいは智を呼ぶ』の最大の魅力は―――呪いによる結びつき、だと感じるからだ。
主人公の他にも、行くさきざきで出会うヒロインもまた異なる「呪い」を持っている。明日の約束ができなかったり、人に助けを求められなかったり、そしてその制約を破れば死に至る。みんながみんな「呪い」という枷を嵌めている、でも、だからこそ、彼女達は互いを強く結びつけられる。
劇中でも何度も繰り返される「運命共同体」という言葉。恋でも愛でも家族でも友人でもないその関係性―――似たような人生、重なりあう運命線によって、るいと智たちは依り合わさっていく。
そうして6人が手を取り合ってこの世界で戦っていこうとする姿は、いつかに忘れてしまったどこかに落っことしてしまった大事なものを思い出せてくれた。
(ビルの屋上/朝焼け/熱線/突き刺す光/そして彼女は宣言する)
それはとてもまぶしかったんだ。だから惚れ込んでしまう。大好きになってしまう。自分には到底叶えられそうにないその透徹としたカタチ、それは笑ってしまうほどに手に入らなさそうだった。
「つまり、これは同盟だ。破られない契約、裏切られない誓約、あるいは互いを縛る制約でもある。僕たちは口約束をかわす、指切りをする、サインを交換し、血判状に徴を押して、黒い羊皮紙に血のインクでしたためる」
「一人で戦えないから力を合わせる。一本の矢が折れるなら五本六本と束ねてしまえばいい。利害の一致だ。利用の関係だ。気に入らないところに目をつぶり、相手の秀でている部分の力を借りる。誰かの失敗をフォローして、自分の勝ち得たものを分け与える」
「誰かのためじゃなく自分のために、自身のために」
「僕たちはひとつの "群れ" になる。群れはお互いを守るためのものなんだ。」
――和久津智(るいは智を呼ぶ公式HP)
そんな「呪いによる結びつき」がこれまたイイのである。
「るい智」はどんな人に勧められる?
この作品、「文体」が独特なので受けつける人受けつけない人分かれる印象がある。ちょっとクセがある感じ。
ここを気に入ることができれば――許容ではなく気に入ることが出来れば――物語の基礎力・キャラクターの魅力・情感に訴えかける力はどれも高めなので多くの人にオススメできるんじゃないかな。
逆に文体が鼻につくのであれば、手に取るのはやめたほうがよいのかもしれない。何故ならそれは最初から最後まで、プロローグからエンディングまで続くからだ。
それと、特に「男の娘」というジャンルに抵抗感を持っている人は是非やって欲しいなと思う。そして「どうして今まで食わず嫌いしていたのか!」とベッドの中でゴロゴロ悶えてくれれば幸いだ。にゃはは。
ちなみにOPはこんな感じ
これはPS3/PSVItaのOPムービーだけど、PC版もほぼ一緒。このボーカル曲もそうだけれど、動画内のスプレー缶持ちつつみんなが "にっ" って笑ってるシーンは癒やされますなあ。
さてさて、もしこの記事で『るい智』に興味が出てきてくれたのならば、筆者としては嬉しい限りである。やっぱり自分が好きな作品は有名ゲーだとしてもより広まって欲しいものなので余計にね。
この記事以外にもギャルゲーの紹介記事を書いているのでよければどうぞ。