カルタグラ 感想

*ネタバレ注意

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――それは、妄執と狂気に至る愛。

と劇中で言われるように、上月由良の狂いによって秋五のまわりは死体が積み上がり、やがてはその隣に居座ろうとするまでのお話。

子宮を喰らう、装飾死体―――それらの惨殺をきっちり描くのでインモラルな雰囲気が絶えず付きまとい、まるでグノーシス的価値観がセカイを覆うような・・・直視するのが痛かった作品だ。*1

しかし上月和菜の存在によって息苦しい程というわけではなくなっているのが面白い。「やかましい女」と秋五が評するように、確かにうるさいし、時にうっとうしいのだが、慣れてくると彼女の「朗らかさ」が癒やしになってくるものだ。

凍てついた世界観だからこそ、この呑気さは貴重であり、可愛く見えてくるのだろう。心のうちに濁ったものが無いというのはそれだけで魅力的であり、体の奥が悴んでいるのならば尚更に。

それは初音や楼子も同じで、彼女らの無垢さに度々救われていたなと思う。特に綾崎楼子は、秋五と思い出があるから愛着を覚えてしまうのだがどの√でも怪奇死体に成り果てるという……アアア!!

(そういえば彼女との過去は一切ディティールを与えられない所は面白い。“与えない”とその空白を私たちは埋めようとするのが+に働いている例かもしれない)

とはいえ、対極に位置する祠草時子さんも好きだったりする。あの病んだ感じがたまらず、ヤク中ってのもグッド。心と身体どちらもボロボロというのが良いんですよね。守ってあげたくなるので。(そして結局は……)

 

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――祠草時子/カルタグラ

 

カルタグラはCGを段階的に表示して、漫画のような時間感覚を表現し、かつ、それがシーンとちゃんと合致しているのが好印象であった。

全体的に演出面はしっかりしているし、間延びせず、きっちりと物語を纏め上げたのも良かったなと思う。人におすすめもできるサイコサスペンスだろうか。

私的満足度は★★★(3.9)で、疑似客観視は★★★★(4.0)は十分見込めるはず。

 

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お兄ちゃん劇love七七ちゃん? たこ焼きのおじさん? 彼らのこともなにか話したいと思っていたんだけど特に語りたいことはなかったのですはい。

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*1:ただ数年前に比べるとこの手の作品になれたのかそこまでキツイというわけでもなかったのは意外だった。