(1)内面類推と萌えの関係性
「萌え」とは明確な定義が決まっておらず、発言者によってゆらぎがある言葉だ。私自身は深い感情に出会った時に、それも可愛いの最上級として使っている。
今回はそんな萌えの発動条件・因子はどこにあるのか?と興味をもったのが本記事を書くきっかけになっており、考え途中だが、結論としては「キャラクターの内面を想像しえる」ことが一つのポイントかなと。
例えば『げんしけん』18巻アンジェラにめろってる斑目・・・を見てるスーと波戸がとっても不満げで、むー!、ってなる表情が大変に萌えである。
例えば『アオハライド』1話における田中洸が双葉を夏祭りに誘うシーン、彼は顔を真っ赤にさせながら、腕で口元を隠そうとする、ここが実に萌えである。
例えば、『いつか、届く、あの空に』の桜守姫此芽さんによる策くんloveモノローグ。彼女の心中を知るとき全プレイヤーは萌え死する。
例えば『本好きの図書館』で家族同然だと言うマインに、表情を見せないようにするフェルディナンド様。まさか自分を恨んでいるであろう少女に、わわ私が家族同然だと?馬鹿な!!っと混乱している(であろう)様子が大変よろしい。大変よろしい!
例えば、『恋×シンアイ彼女』ではじめてスタバ注文する(幼少時の)國見洸太郎。
洸太郎「これ、ください」
店員「サイズはどうされますか」
洸太郎「さ、サイズ???」
洸太郎「あの、普通ので」
店員「レギュラーですね」
洸太郎「は。はい。満タンでっ」
店員「くすくす」
洸太郎「~~~」
――共通√・幼少期(恋×シンアイ彼女)
ここ可愛すぎてほんとやばい……。
あるいは千年級のアイドル級の人物が今回のターゲットだと分かった時の洸太郎の反応。
洸太郎「ええ!?」
洸太郎「つまり……森田くんに告白するってのは、橋本かんにゃに告白するってことか?」
彩音「ま、まぁ、たとえると、そういうことね」
洸太郎「あわわわわわ」
洸太郎「これはすごいことだぞ。お前、どうするんだ。千年に一度のことだぞ、これは」――星奏√(恋×シンアイ彼女)
普段芸能ネタに興味なさそうなのに橋本かんにゃは知っていること、そしていつも落ち着いている彼が何故かこの時に限って(!)動揺しまくっているのが可愛すぎだと思います。
――とまあ、こういうケースにて私は「萌え」を感じるのね。あーもう!あーもうっ!って足ばたばたしちゃうし、物理的に出来ない時は仮想した足をばたつかせる。「満タンでっ」はもち高速アシバタ。
これは「キャラクターの内面が想像可能」な時に起こっていると見ていて、対象の表情・発言からどんなことを感じているのか、想っているのか――同時に言動と周囲の温度差――によってもたらされる人物の心情を類推する時に萌えは生まれるのだと考える。
逆に「キャラクターの内面が可視化」される場合、この手の感情は起こりにくくなる。要はモノローグが多い作品で、事細かに心情をさらけ出してしまえばプレイヤーの「想像」というファクターは鳴りを潜めざるを得ないからだ。
けれどこのモノローグが何らかの理由で「想像可能」になっていれば、この限りではない。
『いつ空』の此芽独白は、「なぜ“桜守姫此芽”がそんなことを言うのか?」という状況を構築するが故にこれを満たしているのである。だからプレイヤーはモノローグでありながら「疑問」の名の元にヒロインの胸中を類推し、結果萌えちゃう。
これ「言葉数が少ないキャラ」が可愛いのも同じ理屈だと思う。
kanonの舞とか、Angel Beats!の天使ちゃん、穢翼のユースティアのアイリス、ギャングスタ・リパブリカの凛堂禊、僕は友達が少ないの小鳩……etc
彼女たちはあんまり喋らないので、会話だけではどんな感情を有しているのか分かり難いのね。なので表情とか、行動を伺う必要性がではじめ、結果内面類推する頻度が然普通のキャラクターより多くなる。
ぷすーっとしてたら「この言い方は不味かったか?」とか、その後の行動で「ああ、お腹へってただけか」とかそういうね。
リースが可愛いのもそこらへん大きいと思ってる。
――リース/夜明け前より瑠璃色な/オーガスト
ぷすー。
(2)萌えは情動あってこそのもの
これはキャラクターに情動の揺れがあるいう前提に立ったものだ。逆にいえば情動の揺れがなければ(内面類推による)萌えも起こらなくなる。
男の子がひたすら散歩するシーンがあったとしよう。そこにはなんの出会いも、事件も起きない。なので彼が驚いたり、感心することもないし、心に波風立てないままひたすらに歩き続けるのである。
足を動かし、背景がゆるやかに変遷していくだけのシーン。
そんなシーンで萌えることは無い。のだとすれば、キャラクターの「情動の揺れ」こそが萌えにおける重要な視点であると言える。
同様にキャラクターの性質上「情動が起こり得ない」場合も上記のケースに当てはまる筈だ。
例えばDTBの黒<ヘイ>、最果てのイマの灰野、けものフレンズのセルリアン、Ruinaの空の巨人、Angel Beats!のNPC……etc
彼らは感情が希薄、あるいは完全に欠落しているので――その心的機構を精度高くエミュレートするほど――プレイヤー側も情動が沸き起こらない心情を味わうのである。
結果、内面を類推してもそこに感情は無いため、萌えが生まれない。
これが分かりやすいのが『DARKER THAN BLACK -流星の双子-』。主人公である蘇芳(すおう)は感情の起伏が激しい女の子で、ころころ変わる表情は見ていてとても可愛らしい。
1話~3話は特にそうで、彼女の怒り、悲しみ、喜びはダイレクトに視聴者に伝わるし、視聴者も彼女に換気され同種の情動を励起させていく。
けれど3話終盤で彼女は<契約者>になってしまうので――この世界では契約者になったものは感情が消えるとされる――蘇芳(すおう)の可愛さは陰りを見せ始め、今まで彼女に萌えていた人もここを境にその頻度ががくんと下がったのではないだろうか。
単一キャラクターの極端な「情動」の変化は、この物語とても分かりやすいので興味あったら見てはいかが?
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(3)外形による萌え
――内面類推。
これは作品のコンテキストに絡まってくるものなため、一部分切り取って見ても、よく分からないに違いない。
どうだろう? 先程私が例に上げた『恋カケ』のワンシーンを見て「ぐはっ」となった方はいただろうか。多分少ないと思う。
それは國見洸太郎という人物、それまでの流れを踏まえないといけないから。キャラの内面を類推するには、類推するだけの情報がないと、類推まで漕ぎ着けられないのである。
故にそこだけ見せられても萌えることは難しい。
ただ萌えは「内面類推」だけではなく、「外形」によってもたらされる事もある。
先程挙げた『けよりな』のリースの1カットだけで、「////」って人もいたんじゃないかと思う。そのカットに至るまでの流れが分からなくても、一定水準見た目がよければ、萌えることも可能かもしれない。
以下の梨花ちゃま絵(ひぐらしのなく頃に)も大変かわいらしいと思います。
더워~~~ pic.twitter.com/fr71eUJmTa
— 양38 (@38nyann) 2017年7月19日
内面を想像し得るからこそ・・・けれど・・・その外形的な可愛さからも「萌え」ることもあるんではなかろうか。
ただ私は「外形」だけでは萌え足り得ないと思っていて、「内面類推」と合わさってこそだとは思う。
外形は土台・因子にはなり得るけど、単体だけではなかなか"発芽"までは至らない。そう考えるのは私自身そういう経験があまり無いからである。
「絵」だけを見て、「声」だけを聞いて、萌えたことが少ない。(ないわけじゃないけど少ない。むしろ泣いたりすることのほうが多いかも)
でも内面類推はこれだけで「~~~っ」となること多いので――この記事における――萌えの重要なポイントだと考えるわけだ。
まとめるとこの3つが大切になってくる。
- 内面類推
- キャラクターの情動の揺れ
- 外形
ちなみにTwitterで定期的に流れてくる「萌えとは性欲だったのだ」なる意見はよく分からない人で、性欲と萌えは違うよね……え…一緒くたにしている人いるんだ? と思ったことがある。
この言葉って――冒頭で言ったように――なんでも包括出来ちゃうので、自分はこういう意味で使ってるよと明示していると、後々、人との認識ズレを事前に回避できていいのかもしれない。
そういう意味でこの記事は後々役立つ、かも。
てことで今回はこの辺で、あ待って。そういえばシチュエーション萌えって外形なんかね? それとも内面を想像してるからの萌えなんかね?
どっち。
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