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【感想】ピアニッシモ 操リ人形ノ輪舞 

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殺人犯として追われる主人公が真相を暴くミステリー作品。でありながら弱々しいタッチで『夢』を描こうとしたのがPP -ピアニッシモ- 操リ人形ノ輪舞である。

 

【総評】ピアニッシモ 操リ人形ノ輪舞(Innocent Grey

 

人を殺した記憶がないにも関わらず指名手配され、逃げ回る日々のなかで恋人を得る奏介。しかし朝起きたら彼女は動かなくなっていた。誰が綾音を殺した?俺か? 俺だ・・・部屋は密室であり、奏介が犯人だと考えると理解はカンタンに現実へと結びつく。

――しかし奏介は何のために彼女を殺したのか? ホワイダニットを満たすことが出来ないため、一見明瞭だったフーダニット、ハウダニットは揺らいでいく。けれどそこさえ目を瞑れば奏介を犯人だと思える。

 

華夏「奏介が殺すはずないじゃない!」

奏介「だけど俺は――」

華夏「私はっ……認めないからっ……誰がなんと言おうと、奏介が綾音さんを殺すはずない……」

――PP -ピアニッシモ- 操リ人形ノ輪舞

 

奏介も、そして彼を信じる者もこの不確定な現実に頭を悩ませつつ、どのように考えれば納得のいく答えになるか検討していくのはまさにミステリー作品であり、けれど情報が出揃った宣言がないまま(ぱっとしない)答えを言い渡されるので爽快さはない。

本作は「不確定な現実に悩む」ことに意義を見出すような物語なのでそれでいいのだろう。選択肢の「(俺は)殺した」「殺してない」はそこと連動し、自分を信じられなければ信じられなかった世界が確定し、信じれば信じた世界が確定する。

そうして御巫久遠に踊らされていた事実へ至るのである。

 

「言葉通りの意味です。私が奏介をこのような境遇に追いやりました」

――御巫久遠/PP -ピアニッシモ- 操リ人形ノ輪舞

 

これで終わりだったならば品のいいジャズが奏でるミステリー(?)作品であっただろう。だが「綾音√」が入り込むことで、その印象はすこし変化する。

当該√は「どうあっても」死ぬ運命にある綾音が「なぜか」生存するお話だ。

奏介を独占したい相馬葵は、彼の周りにいる女性は邪魔で邪魔で仕方がない。だからこそ彼女の名義の部屋に知らない女を連れ込まれれば、殺意へと転化し、結果綾音はどの√であっても死ぬ。

しかしなぜか今回は 

“余計な波風を立てる訳にはいなかったから――我慢したんだよ” 

――相馬葵/ピアニッシモ 操リ人形ノ輪舞(Innocent Grey

 

とのことで、葵は綾音を害しはしないし、また逢禅寺清正が奏介達を殺せる状況でありながら瞬く間に自殺するのは本当に、意味不明だろう。

 

何故死んだのか――

奴ほどの膂力なら、ここに居た者全てを切り伏せる事も容易かった筈だ。

だが、彼は、敢えてそうせず、自らの命を絶った。

――奏介/PP -ピアニッシモ- 操リ人形ノ輪舞 綾音√

 
誇りか、あるいは操られていたのかと奏介は理由を考えるものの納得いく答えは出ない。

それもそのはず、なんてたってこれは「夢」なのだから。都合のいい展開が幅を利かせるし、淡く、まどろむような白昼夢を見せてくれる。幸せなひとときを胸いっぱいに吸い込んで、あとはそれを甘受すればいい。

 

 ――例えこれが夢であったとしても、この世界でわたしは生きている

――綾音(綾音√)

 

操り人形という主旋律に、聞き取れるかどうかぎりぎりの“夢”という副旋律で奏でようとしたのが本作なのだろう。それはあまりにも弱々しいタッチの為、調和が取れず、何をしたかったのかよく分からないメロディとなってしまった。というのが『PP』に対する評価だ。

私的満足度:★★★(3.7)
疑似客観視:★★★(3.7)

 

 

以下、雑感。

 

演出面いいすなあ


本作は戦闘シーンの演出がよく「いくぞ」「――っ」という音声がテキストなし流れる。わざわざテキスト表示して音声流すのってちょっとテンポ悪くなるので、そこを省略するのはいいなと思う。

臨場感高まるので。

 

しっくりこない所


・そういえば綾音が奏介のピアノをはじめて聞いた時「悩み事」が解決されたと言っていたが、結局それはなんだったんだろう? またどうしてあの喫茶店に、未成年な綾音がいったのか? そして入店できたのか? 謎だ。

 

・あとなぜ奏介はマスターに殺されなくてはならないのだろう? 彼を組織側に囲いたかった理由は分かるけれど、それ以外マスターが彼に執着する理由はないし、もっと言えば殺す動機こそない。

けれど序盤BADENDのセイホウカイアジト抜け殻に行ったとき奏介を殺し、またわざわざ家まで出向き妹とセッ久時に殺すってマスターの動機・性格からして違和感しか覚えない。

――あのね、奏介が妹といちゃこらしてるからってそれがマスターとなんの関係があるの? 

彼はあのとき「亡き友を忘れて肉欲に溺れたか」と言ったのでそれが殺害動機ってこと? むかつくから殺したってこと? 

あるいは久遠に殺せとでも命令されたのだろうか? だとしてもそこには正当な理由がなければマスターも動かないはず。久遠が奏介を殺す理由か・・・

当該BADENDは用済みで口をふさぐためとか?・・・でも妹ENDにおける奏介ってもう久遠にとってもどうでもいい筈なので、それ以上接触しようとは思わないのだけどこれも口封じ的な?

久遠って対象者に価値を見いだせなくなったら自分にとって害にならない限り「放置」するような人だと思うんだけど、違うのかな。

それとも、なにか見落としているのか。

ちょっとここらへんしっくりこない。

 

conductor

END時、久遠は「奏介は赦してくれるでしょうか?」と投げかけている事から、許して欲しい心情が伺える。研究対象でしかなかった彼になにかしら思うことがあるような感じでさえある。

あの自分以外興味なさげでどうでもよさそうにしている久遠が、「赦して欲しい」のだとしたら意外であり・・・けれど人ってそういうものなのかもしれない。意識している人間には自分をよく思ってもらいたい、そんな気持ちがなければ「赦して欲しい」といった気持ちも出にくいのではないか。

 

 

BGMよい

BGMが全体的によく、ピアノの旋律で彩られる本作はプレイしていて心地よい。璃宝の歌もプロレベルというか、実際彼女はプロでしたねとても聴き応えがありました。


 

久遠は天才のように描かれるが

pianissimo』は御巫久遠を天才として描こうとする。常人が理解できない思考回路の持ち主で、人間性が欠けた存在として。

けれど彼女の思考/性格って別に突飛でもないし、苦なく追いつけるので、天才と見ることはやや難しかった。どちらかというとちょっと風変わりな女の子くらいかな。もちろん物語がそう描こうとするのならば合わせるが、一度俯瞰高度を上げるとそんな印象かなと。

 

 

感想

総評で言った点と不可解な謎を除けば、全体的に悪くない読後感だし、ほどよく満足できたなと思う。ただ明確な面白みに欠けるので人にはすすめづらいのが難点か。

 

 

メモ言葉

「……人の気持ちなんて特にわからない」

「他人を理解できる人間はいません」

「そうかもしれないけど……」

「理解できてしまえば――とても、つまらなくなります」

――久遠、綾音

 

綾音「事実は小説より奇なりともいうよ?」

久遠「それは、世界に筋書きがないからです」

――ピアニッシモ

 

あの時、俺は綾音を――

・殺した

・殺してない

 

――ピアニッシモ

 

 

彼女に踊らされているような気もするが、それでも俺は彼女に依存して生きていくしかないのかもしれない。

 

――奏介/久遠√終盤

 (彼女=久遠)

久遠「……貴方の調べは哀しく、弱々しい――今の私も正にそんな気分です」

奏介「……済まねえな」

久遠「謝られる事ではありません。弱い事は決して罪ではありませんから」

久遠「極めて弱い音<ピアニッシモ>の調べは――優しさの表れでもありますから」

 

――久遠√終盤

 

海の向こう、東京の街の方を仰ぎ見る。

彼に伝えていない事がある。

結局言えなかった、最後の真実。

「全ての真実を明かしても、彼は私の事を赦してくれるでしょうか――」

貴方の大切な人を死に至らしめた私を。

 

貴方は赦してくれますか――?

 

願わくば、あの人が居る世界の夢を、貴方が観られますように――

 

――久遠/ピアニッシモ CONDUCTOR

 

「――本来有り得ない未来です」

彼女は小声で漏らした。

 

――発言者明記されず/綾音√/ピアニッシモ

 

 (了)

 

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