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猫箱ただひとつ

物語追求blog。アニメ、マンガ、ギャルゲーを取り扱ってるよ

世界は私達を愛してくれないし、私達は世界を愛すわけじゃない。(明日の君と逢うために~ざくざくアクターズ感想②)

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明日の君と逢うために』『ざくざくアクターズ』ネタバレ注意

 

 

 

1)世界は私を愛さない(ざくアク)

 

 『ざくざくアクターズ』は「ハグレ」と呼ばれる異世界召喚された者たちが跋扈する世界だ。牛男に鳥女、悪魔から七福神まで様々におり、彼らはその強い力を目当てに元世界から強引に――拉致監禁されるかのごとく――こちらの世界に呼び出されてしまった。

そしてそんな「ハグレ」は元世界に帰りたいと願う者も多くいた。当然だと思う。

物語中盤では「大型相互ゲート」の発明により(一時的にではあるが)「ハグレ」に元世界へ帰れるチャンスが与えられた。そしてデーリッチ率いるハグレ王国のメンバーでもある雪乃もまた帰りたいと願う「ハグレ」であり、その願いを実行に移す。

参照→あの世界は、決して現実の代替物なんかじゃない。(ざくざくアクターズ感想①)

しかし雪乃は元世界へ戻ったにも関わらず、最終的にはこちらの世界を選ぶのであった。それはひとえにデーリッチ達が好きであり、デーリッチ達が築く王国の行く末を見てみたいという気持ちから。

そんな雪乃に、多くのハグレを元世界へ送還した「大型相互ゲート」発明者・シノブは問いかける。

なぜ、愛せるんですか、と。

 

 

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<シノブ>

何故愛せるんです……。
こんな無理矢理連れて来られた世界を。
自分が産まれてもいない世界を……。

 

<シノブ>

どう考えたって……。
こちらの世界がイレギュラーでしょうに……。

 

 

<雪乃>

シノブさん……。
ううん、それは違う。
私もみんなも、
世界を愛してるわけではないよ?

 

<雪乃>

愛は世界が生んでくれるもんじゃないもの。

 

<雪乃>

人と人との間に生まれるものだから。

 

 

――ざくざくアクターズ

 

雪乃の言葉にぐっときた。

私達はついつい自分の生活の中で出会う人々、社会、環境、文化をひっくるめて「世界」と言いあらわし、ここはいい世界だねとか、この世界が悪いんだとか、世界は私を愛してくれないと言ってしまいがちだ。

けれど、雪乃のいうように実際は「人」によってその世界の心地よさが決まるのだと思う。道を歩けば肌が黄色だからと石を投げつける「民」、「友達」がいない学校、独善的な政治を行う「権力者」――そんな人々が構築する場所にこそ人は絶望するのだ。

逆に好きな人がいるならば元世界よりもハグレ世界を選択することだってあるし、好きな人がいるなら辛い環境でも一緒に生活していきたいなと思えるものだ。

世界が人に幸せをもたらすのではなく、人と人の間で生まれる幸せによって私達は(その人々を含めた)世界を愛せるだけだったのである。

――世界は私達を愛さないが、私達も世界を愛すわけじゃない――

そしてもしも世界から離脱をはかる時、そこには「愛すべき人」がいなかったからだと推論できるかもしれない。帝都戦争のときに敗走した戦士たちがまっしぐらに相互ゲートを使ったのもそういうことのように思える。

大事な人がいないから、この世界から消えされる。

 

 

 

2)そして私は世界を愛さなかった(明日君)

 

明日の君と逢うために』の泉水咲は、自分の意志で『向こうの世界』へ飛び立った女の子だ。『向こうの世界』とは『こちらの世界』ではないどこかの世界、神々がいる世界、そういう意味で使われる曖昧模糊な別世界という意味。

咲は親友にも恵まれ、家庭環境もよく、不満がなさそうな女の子だったが、ある日を堺にふらっとこの世界から去ってしまった。まるで未練なんてないと言わんばかりにあっさりと。

その理由は、妹・小夜と対面することで明かされるものの

 

「どうしてかしらね」

「深い理由なんて一つもなかったのかも」

「すぐそばに、見たことのない別の世界があって、そこに行けるとしたら――」

「そう考えたら、自然と森に向かってた……」

 

――泉水咲/『明日の君と逢うために』(小夜√)

 

 

しかしこの事実は、「咲は『こちらの世界』へ留まろうと思うほどに大事だった人はいなかったのかも」と……ふと…………私は時々考えてしまうのだ。彼女と同型の行為を見るといつだって彼女を思い出してしまう。泉水咲を思い出してしまう。

確かに咲の行動理由は別軸でも考えられる。例えば『丘の向こう側』を見てみたいという動機が強い人物だったのかもしれない。それは最果ての海を目指した王のように未知への憧れであり、また好奇心の賜物に他ならない。見たことのない世界があるなら行きたい。それをごく自然に行動に移せるタイプ。

しかしそれは「こちらの世界」に戻れなくなると知ってでも望むものなのか? 大事な人と二度と会えなくなっても望むものなのか? 問うとどうだろうか。 

りんはこう言った。妹・小夜が、姉・咲に会うために「行けるのか、わたしも。『向こう』に」とあちらの世界へ行くか悩んでいると、こう言った。

 

りん「そんなことは考えていなかった。あの二人は、この泉まで来て、そのまま――消えていった」

 

――小夜√・『明日の君と逢うために

 

そうつまり、咲は悩むことなく『向こう』へ行ったのだ。こちらの世界にそれを留めさせようするものはなく、妹である小夜も、親友である里佳姉さえもその役割には満たなかったのである。

これは「泉水咲にとってこの世界にいる人間は取るに足らなかった」という事実を突きつけることと同義だ。咲にとってここには愛すべき人はいなかった。だから『向こうの世界』へ気軽に行ってしまったと。

妹・小夜が十数年もの間、失踪した姉に引っ張られてしまったのもここが深く関係しているだろう。辛いよ。残された側が残されるだけの理由を垣間見てしまうのは…。ただ救いがあるとすれば……咲は何かに絶望して「逃げた」わけではないことだろうか。

……

世界とはすなわち居場所だ。居場所がなければそこに留まろうとは思わない。だから人は自分が受け入れてくれる、そこではない、違う居場所へと旅立っていく。

これをはっきりと描いたのは月野舞√だ。

若宮明日香は修司に会いたくて『向こう』から『こっち』に戻ってきた。記憶の全損失に耐えながらも彼を求めて、願って、やってきた。修司も同様だ。7年前に『向こう』へ行ってしまったあーちゃんに会いたくて一度は立ち去った御風島の土を踏みしめた。

でもその修司は舞と付き合うことになり、明日香の居場所になれた修司は舞が取り去ってしまう。明日香の居場所は修司だったのに、そこのことに修司は気付けなかった。

 

バイバイ、シュウ君」

 

――若宮明日香/『明日の君と逢うために』(舞√)

 

そうして明日香は消えた。

あの日の形式的な別れ言葉は、実は彼女がこの世界から立ち去ろうと決意した瞬間だったと気付けた者はどれくらいいただろう。それくらい二人が交わした最後の言葉はあっさりとしたものだった。

7年前をなぞるように明日香は森の奥へと走り、またもや残されてしまう修司。この世界で自分の居場所を見つけられなかった明日香と、彼女の居場所を見つけさせることができなかった修司。

 

明日香『前に話したよね。あたしがこっちに戻ってきた理由』

明日香『シュウ君に会いたい、ただそれだけだったんだと思う』

修司「俺も、明日香に会いたい、ただそれだけだったよ」

明日香『だけど――』

明日香『会って、話をして、でも、それからどうしていいのかわからなかった』

明日香『でも、気づいたんだよ』

明日香『あたしは、あたしの居場所を見つけていないことに』

きっと、明日香と俺はよく似ていた。

お互いを求め、お互いに居場所を失い、探していた。

明日香『シュウ君に会いたかったけど、その隣があたしのいたい場所なのかわからなかった』

明日香『ねえ、シュウ君。シュウ君は、自分の居場所を見つけたんだよね?』

修司「…………」

そう、俺は自分のいるべき場所を見つけた。

 

 

――『明日の君と逢うために』(舞√)

 

明日香は、修司が誰かと恋仲になるとイコールで『向こう』へ行ってしまうわけじゃない。修司だけが居場所になれるわけでもない。

けれど修司の存在はやはり大きいのだ。修司の隣に明日香はいることができない(=誰かがその場所に収まってしまう)と確定されるまでに、明日香が修司以外の居場所をこの世界で見つけていないと、ふらっと『向こう』へ行ってしまう。

この世界に自分がいるべき居場所がないなら、『向こうの世界』に行けばいい、それはきっとそこにある―――そう信じているからこそ明日香はこういう行動を取ってしまうし、これが顕著になったのが舞√なのだとも思う。

……だからこの物語はやるせないのだろう。できることはあったはずなのに、できなかった結果だけが道端に転がる。本当に願いたいことがあったのに、願わずにいてしまうことを自覚してしまうから。

 

 

修司「舞……俺は……」

舞「うん……」

修司「本当は、明日香を追いかけたかったんだ」

零れ落ちて行く涙をそのままに、俺は行った。

修司「世界のすべてを捨てても、それでも明日香と一緒に行きたかった」

舞「うん……」

修司「でも……俺には、大切な人がいるから……舞と一緒にいるために、できなかった」

修司「それは、今までの俺への裏切りだと、信じてくれた明日香への拒絶だと思ってたんだ」

 

――『明日の君と逢うために』(舞√)

 

月野舞√は過去にとらわれていた明日香と修司がそれを乗り越えるお話になっているが、それは裏を返せば損失だらけということだ。失うことをよしとするから、過去を乗り越えられる。あーちゃんを取り戻そうとしないから、明日香の離別をよしとできる。

そういう痛くて、悲しいお話だ。

 

   ◆

 

『ざくざくアクターズ』の雪乃がデーリッチ達が好きでハグレ世界に戻ってきたように、『明日の君と逢うために』の泉水咲・若宮明日香はこの世界に寄る辺たるものが無かったからこそ『向こうの世界』へ行ってしまった。

私達が愛しているのは広大な「世界」ではなく、その集合体である「人」だ。「人」をもってしてその「世界」の価値を決定づける。ならば大事なのはそこに愛すべき人がいるかどうかなのではないだろうか。

 

 

 

Q:この世界は生きるに値するか?

 

だからこの疑問に私はこう答えよう。

この世界が生きるに値するかは、その世界にいる人間によって決まる』のだと。それは自身の周りを構築する人々によって生まれた世界(=居場所)に限らず、人間が関与できない世界の構造――グランドルール――もまた含まれる。

有り体にいえばそれは「時間」になる。

時間はどうしたって止めることはできないし、壊すことも折り曲げることもできない絶対的なルールだ。人はそのルールに組み敷かれて生きることになる。

けれどそんなグランドルールが例え嫌悪すべきものだったとしても、そこにいる人々を愛せるならばそんな世界でも愛せるものさ。生きようと思うものさ。

 

そしてもしも、「世界」から離脱を願う人がいたならば――それは有り体にいえば■■となる――離脱を留められるだけの「人」がいなかったということだ。彼彼女の周りにいなかったということだ。

当たり前なことゆえに、当たり前だからこそ、しっかり把握しておきたい事柄である。

 

 

 

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