『Rotation Girl』やりました。感想もレビューも私達は望んでいないって?まあまあそう言わずに

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(1)Rotation Girl 紹介

 

本作は「放置型RPG」である。

つまり最初に「行動ロジック」と呼ばれるコマンドを設定してから、主人公をダンジョンに潜らせると、自動的に戦闘を処理するゲームデザインになっているのだ。戦闘の際プレイヤーはいちいち技コマンドを選択しなくていいのでそういう意味では楽だ。

けれどぬるいわけでもない。

ダンジョンから帰ってくる条件付け(=帰還条件)をミスれば容易に死ぬし、敵がタメ攻撃をしてくる際にむやみやたら攻撃コマンドばかり選択されるようになってたらHPガリガリ減ってこれまた死ぬ。戦闘は自動で行われるため楽だが、ダンジョンから無事に帰ってくるためにはすこし頭を使わなければいけない。

ここの難易度バランスがよい。

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――行動セット一覧/Rotation girl

 

↑こんな感じに自分のHP・MPによって繰り出す技を変えたり、敵の行動によってどう行動するかを最初に決めておくわけだ。

ただし、「放置型RPG」だからといって楽に勝てるダンジョンで1時間2時間3時間放ったからしにすると……めちゃくちゃLevelが上がるわけで…………そしたらもう後のダンジョンはただ殴り続けるだけで勝ててしまう。過剰なレベリングは後の「行動セットを考える楽しみ」を奪ってしまうので注意して欲しい。

これ私自身やってしまって失敗したなあ……って思った。

Lv99で魔王に勝てても全然嬉しくないんだよね。自分と同等の条件でもって手に汗握る強敵をぶっ潰すバトルが楽しいわけで、一方的な戦闘なんて詰まらないわけさ。『.hack//G.U.』でカイトに勝てねー強えーってなって必死でレベリングして再度挑んだらあっさり勝ててしまったあの虚しさ、わかるでしょ? 

そしてそんなダンジョンで登場する敵キャラはかくも愉快である。

誰とは言わない。
何とも言わない。
そういうことだ。

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――敵キャラクター/Rotation girl

 

Rotation girl 

興味あればやってみてはいかが。

 

  プレイ時間   2時間-3時間(※放置時間は省いてる)
  面白くなってくる時間   10分
  退屈しましたか?   していない
  私的満足度/擬似客観視   ★★★(3.6)/★★★(3.5)
  お気に入りキャラ   なし

フリゲ配布先→http://madeinroom.web.fc2.com/rotation/rotation.html

 

ここから先は『Rotation girl』の感想になるが、もちろんネタバレなので注意。未プレイ者は閲覧非推奨。

 

 

 

 

(2)Rotation Girl 感想・レビュー

 

起動したら「この物語は、フィクションです」と文字が描かれすぐにノイズがザーッと鳴り響く。よく見たら「この物語よ、フィクションであれ」と書き換わってる。細かい。セーブすると「セーブしました」というボイスが鳴るのも細かい。

冒頭演出やバトルシーンなどいろいろ見聞きしていたら全体的に既視感がありなるほど『SCE_2』かと妙に納得した。衒学的な<私>と<彼女>のお喋りも、ゲーム自体をメタ的に俯瞰する超外的なメッセージも、作品を彩るBGMも、手抜きなイラストもその説明文のケレン味も全てが『SCE_2』のニュアンスが強い

 

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――Rotation Girl/めいどいんるーむ

 

まるでSCE_2のエッセンス・ニュアンスを反映し、別の物語を起動させたような、、、『Rotation Girl』が『SCE_2』のある種の批評行為を行っているとすら感じられた。劇中の<彼女>とかもろhtbrの<彼女>をダブらせたそれは「物語=<彼女>」という図式であり、物語が死ねば<彼女>もまた死ぬし、物語があるということは<彼女>がいるということでもある。

(それにしても「◯◯に似ている」といった主旨の感想はあまりよくないのだけれど、『Rotation Girl』はもろに『SCE_2』内のhtbr・SCEのテキストを引用しているわけで指摘してしまいたくなる。ごめんね)

SCE_2に限らず、『うみねこのなく頃に』『まりあ†ほりっく』『荒川アンダー ザ ブリッジ』『ハヤテのごとく!』『艦隊これくしょん』『新世紀レッド手ぬぐいマフラー』『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い』『スターバックス』『ワンピース』『このライトノベルがすごい!』『初音ミク』『ラブライブ』『リング(映画)』『Serial experiments lain』『魔法使いの夜』『空の境界』『Fate/stay night』『Fate/hollow ataraxia』……

と、私が確認できるだけでも19コンテンツがごちゃ混ぜになっているし、オリジナルキャラもいてある意味圧巻である。("ノストラダムス"が何の作品かわからなくて『.hack/Roots』の志乃かなと思うものの違うしなーなんだろなー見覚えはあるんだけど)

 

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(しかしほんとアタラクシアの引用文は胸熱よね……)

様々な作品を引用し多重文脈で紡がれるているかと思いきや、その気配はない。どちらかというと作品を「アイコン」あるいは「シンボル」として抽出し使っているだけの印象が強く、コンテキストは省かれている感じだ。

記号的な表現。wxzで女性を、ペールオレンジと紺色のみで宮藤芳佳スク水を、4色で四角い初音ミクを表してしまうのと同じで、それはそれを簡略的に"表す"ためだけのもので、それがそこにある理由みたいなものは特に無い。(装備品・テキストの引用された作品はコンテキストは少からず反映されているけれどそれ以外はこの傾向が顕著)

本作はそんな多作品を積み上げること(=パロディ)が目的なのではなく、積み上げた上で「作品と私はどう接してばいけばいいんだろうね?」を描くことこそが本意だと思えた。

end1・naverでは<私>と<彼女>の終わらない遊びが永遠と繰り返される「逃避」を、end2・everでは[破壊の剣]を装備し物語を引き裂き強制終了させ「現実に帰ること」を、end3・for everでは[破壊の剣][アイ]を装備し愛で持って物語を終わらせ「夢から醒めるフィクションの肯定」を―――それぞれ作品の距離を描いた。

様々な葛藤を抱えた<私>が到達するのは「ただ物語を愛していたいだけ」という素朴なきもち。それが例え噓になろうとも、例えいつか覚める夢だとしても、例え朽ち果てる幻想だとしても―――今感じているこのきもちだけは本物なのだから。

だから、

きっと

 

思うに。

いつか私は・・・

忘れてしまうんだろう。

あるいは、忘れずとも・・・

記憶の中で、意味はどんどん変質していく。

味気ない針山のような日々で
私に救いを与えた物語たちは・・・

あるいはいつか、その針山と
リンクされるだけの記憶に成り下がって・・・

「あの頃は辛かった」

「物語に傾倒するしかなかった」

「でも、もう成長しきった私には必要ない」

・・・そんな風に、
自分の現在を肯定するためだけの
道具になってしまうのかもしれない。

あるいは、過度に神格化されて・・・

けれど経験を繰り返すことは出来ず・・・

ただただ、自分の過ごす日々を
灰色と否定するだけの記憶に成り下がる。

でも、それは、なんていうか・・・

しょうがない事なんじゃないかと思う。

終わらないなんてのはやっぱり噓で。

そして私たちは忘れる事が出来る。

・・・でも、まあ、いまは。

ここにいる彼女を見据えているあいだ。

そうした「現実」だとか・・・

それと対比されることで現れる「空想」だとか

そうした全てを投げ捨てて

わけ隔てる「/」をぶち破るような方法で

愛していたいのだ。

それがその「/」を打ち砕くとかいうお話ごと、
いつか噓になると決まっている愛だとしても。

だから・・・


――Rotation Girl

 

このゲームは生まれたのだろう

<私>が<彼女>を肯定するために

あるいはその距離感を見誤らないように。

 

『Rotation Girl』――フィクションとの接し方に葛藤する<私>の物語

 

 

 

 

 

 

 

 

(3)おわり

 

『Rotation girl』は物語強度が高いわけではないし、そこまでオススメするほどのゲームでもない。けれど私はこれプレイして無性に「ゲーム作りたいな」って思ってしまった。

私にだって創りたい世界、語りたい物語、観てみたい可能性のひとつやふたつあるのだ。創作側に回るのなんて絶対に嫌だけれど、消費者のままがいいのだけれど、それでも具象化させたい「なにか」はある。心象世界に手を突っ込んで引っ張りだしたいものがある。

――そういう創作意欲を喚起させる作品に出会ったことが今まで一度もなかったので、『ろてが』はそういう意味で私的に稀有な作品だった。今まで一度もないって、今思えば不思議だと思うのだけれど本当に一度も無かったんだよね不思議。とかく

ゲーム作りたいな! 

絵と音楽はどうにかできるけど問題はプログラミング。

  ◆

そういえば劇中で「作中作」とその「外」についての言及があったけれど、あれは二人とも理解して言っているのかな? どうも本人たちさえよくわかっていなくある実感を頼りに言語化を必死に頑張っている感じに見える。

だから私はあまりそこらへん考えなかったけれど――本人たちさえ分からないものが分かるはずがないので――結局なにが言いたかったのだろう?

でもふんわりといいたいことは分かるような……気はする。けれど私も言語化するまでには理解できていないそんな曖昧模糊さ。ここらへんは2周すると手応えを感じられるのかもしれないけれど、ファーストインプレッションはこんな感じで書き残しておこうかなと思う。

(了)

 

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