私的満足度:★★★★(4.3)
擬似客観視:★★★★(4.3)
『Ruina 廃都の物語』(以下Ruina)はフリゲ名作という評価は伊達ではなく、とても楽しく遊ばせてもらった。
初プレイ6時間でクリアできる短編RPGだけど、完成度高く、満足度高く、結局4周・4主人公のお話を見届けてしまった。周回するうちに無駄な動きがなくなっていくのかクリア時間がどんどん短縮していくのも面白く、4周目は2時間少しで走り抜けるなど。
ただ最後のほうは同じことの繰り返しでやや気怠げ感あったのだけれど、それでもプレイさせてしまう魔力はすごい。
――ではその魔力の根源はどこにあるのか?
ずばり「探索の駆け引き」だと思う。
1)『Ruina~廃都の物語~』から引き出されるプレイヤーの欲
――ダンジョン内/『Ruina 廃都の物語』
本作はセーブ&ロードのごり押しが出来ない。街、もしくは一日一回どこでもセーブできるアイテムを使わないとセーブが出来ず、リセットの繰り返しによる攻略は否定されている。
セーブがしにくいということはイコールで全滅の可能性が格段に上がるし、また「大胆な行動」も取りずらい。間近に控えた強敵との戦い、ダンジョン探索の更なる進行、罠かもしれない宝箱を開けるかどうか………そんな「死ぬかもしれないシーン」でHPギリギリだったり回復アイテムが底をつこうとしていたらリスクある一手を打とうとは中々思わなくなる。
だから臆病者は「街⇔ダンジョン」の往復で安全安心に冒険することになるだろう。2つの区間を往復する煩わしさはあるが、常にセーブし続ければリスクは極限まで抑えられるからだ。
しかし『Ruina』では「TTEXP」なるシステムが導入されている。
これはダンジョンで得た経験値の「通算量」を表したものであり、規定された数値を超えるとボーナスとして「SP」が貰える。
この「SP」は称号――いわばジョブ――Lvを上げるために必要なもので、称号Lvがればキャラステータスは上昇しかつ多彩なスキルを憶えられる大変貴重なものになっている。
例えば「TTEXP」のノルマ値が200だとしよう。ダンジョンでモンスターを倒したり、イベントで得た経験値が200ポイントを超えるとSP1ポイントがもらえるという仕組みだ。そしてここがキモだが、一度でも街に戻れば溜まっていたTTEXPは0に戻る。経験値は減らないが、通算量はリセットされてしまうのである。
このシステムによって街に戻るのが躊躇うように設計されており、SPをゲットしたい!というプレイヤーの「欲」をうまく引き出しつつ探索は可能なかぎり探索し続けよう!という行動を取らせてしまう。
- ①セーブのしにくさ
- ②TTEPシステムの導入
この2つによって「安全」は剥ぎ取られ、探索は「リスクある探索」と生まれ変わり、冒険が文字通りの「冒険」として機能しはじめる。ダンジョンに潜れば常にHP/MPの残量を確認し「このまま進むべきか?それとも街へ戻って一度体制を立て直すべきか?」と判断をしつづけ、それが違えれば仲間の命を危険に晒しつぎ込んだプレイ時間をドブに捨てることもある。あるいは臆病風に吹かれて街に戻ってみるものの、実際は戻らないほうがよりTTEXPをタメられたなんてこともざらだ。
この手に汗握る緊張感、探索による駆け引きが『Ruina』の醍醐味であり、また何度もプレイしてしまう魔力の根源だと思う。
例え2周目でどう進めばいいか、選択肢はどれを選べばいいか分かっていても、TTEXPは一体どこまで貯められるのか挑戦してみたくなるし、回復アイテムが底をついた状態でもっと通算量を貯められるのではないかと欲をかいてパーティー壊滅ということもある。ダンジョンが既知でも壊滅の危機にプレイヤー自ら向かってしまうこのsystemは本当面白い。
これに加え、本作はサーガ的世界観・キャラ毎のイベント・ゲームブック風の作品外形も魅力的でありそれは実際にプレイして味わって欲しい。
興味あればどーぞ。
※ここからは本作の感想。ネタバレ気にする人は見ないほうがいい
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