*前半は作品紹介、後半は感想。
1)可憐でお淑やかなヒロインなんてものは存在しない
あなたはゴキブリを庇い立てるヒロインに出会ったことはあるだろうか? 私は『つよきす』をプレイするまでただの一度もお目にかかったことはなかったし、これからも出会うことはないと思う。
だって、あの、黒光りする生物だぞ?
見つけたら即刻悲鳴を上げながら殺虫スプレーを撒き散らし残骸をゴミ箱にいれるのすら嫌悪を催す存在を、例え、一時でも守りぬいたヒロインなんてそうそうお目にかかれるものではない。物語至上、一体何人の女の子がゴキブリを庇い立てる暴挙に走っただろうか。(もちろん相応の理由はあるのだけど)
そんな「ヒロイン」という像からどこまでも掛け離れたヒロインが登場するのが本作であり、強気で勝ち気でわがままで――一筋縄ではいかない――女性陣が待ち構えているのも『つよきす』の醍醐味である。
可憐でおしとやかなヒロインなんてものは存在しないのだ。存在するのは何かにつけて主人公をしごく上級生(体育会系)、主人公を手駒として扱う生徒会長、滅茶苦茶口が悪い幼なじみ、ガンをつけてくる後輩などなど。
彼女たちによって男性主導の男女関係は終焉を迎え、女性主導の男女関係がはじまっていく……というと大げさだけど女性の立場が強い作品である。
――http://www.candysoft.jp/ohp/01_products/tuyokiss/chara/character.html#nagomi
一見すれば、癖の強そうな女性ばかりなのでストレスのかかる物語なのかな?と疑心暗鬼になってしまいそうだが、これが最高なのである。
女性に主導権を握られるというのは尻に敷かれるのと同義ではあるが、合意の上ならば安心感に変わる。気軽に甘えられるということでもある。まるで「姉と弟」のような、その延長線上のような恋愛。案外これはこれでいいものだなと気付かされた。
男性が男性としてのプライドを傷つけずに甘えるには、それ以上の「強い」存在が恋人であればいい。それは腕っ節の強さかもしれないし、カリスマという人間強度、精神的成熟度が自分より「上」だと認めざるを得なくなったとき安心して隣人に寄りかかれるのではないだろうか。
最近は男が弱くなった、と言われる。
俺は別に、そうは思っていなかった。
思っていなかったんだけど……。
地面にヘタりこんだ俺を見下ろす瞳。
その眼差しは研ぎ澄まされた刃のように。
俺を叩き伏せた張本人である彼女はネクタイの3本ラインから見るに、年上の3年生。
春の陽光をその背に受けながら
上級生「だらしがないぞ、お前」
上級生「根性無しが」
(中略)……俺は "この事件" をきっかけに痛感したね。
最近は男が弱くなったっていうよりさ。
女のコが強くなったんじゃない?
――プロローグ/『つよきす Full Edition』
そういう土壌が『つよきす』にはあるものの、かといって全ての√が「女性主導の恋愛」というわけではない。最終的には対等関係に落ち着いたり、最初の関係とは逆に主人公がヒロインを引っ張っていくこともある多彩な恋愛を描いている。
ただ基本線としては女性の方が男性よりも立場が「上」と思ってくれればいい。(少なくとも「下」、つまり庇護下におかれることはない。妹萌えーな属性持ちは厳しいかも?)
2)テンポがよいテキスト
また、つよきすのテキストは「冗長さが省かれている」のも必見だ。
小説ならばディティールを加える部分が――ディティールを加えなければ話が繋がらないものが――つよきすに至ってはどこまでも削られ朝の登下校、一日の過ごし方、制裁シーンはあっという間に終わりサクサク進んでいく。
例えばそれは、鉄乙女に休日を支配されるシーンで見て取れるだろう。
――『つよきす Full Edition』
この一連の画像はなにも重要な部分だけを切り出しているのではなく、1セリフ毎の画像になっている。つまりレオの休日は1セリフ毎に数時間経過し、あっ!というまに終わっているのがお分かり頂けると思う。
また、霧夜エリカとのデート時。
9時じゃまだ開いていない店だって多いのに。
…………さて、姫を待つか。
レオ「約束の時間3分前」
まだ来ない。
――『つよきす Full Edition』
レオが20分早めに待ち合わせ場所に来てしまい約束の時間まで霧夜エリカ(通称:姫)を待っているのだが、「…………さて、姫を待つか」といった次の瞬間「約束の時間3分前」と前触れなく時間が経過している。レオが待つ様子は丁寧に描かれず、一瞬で3分前に飛ばされ、このあと一瞬でヒロインがやってくるのだ。
他にも"ノベルゲーム"ならではの立ち絵切り替え、場面転換、サウンドを支えとして一日が3クリックで流されたり、一瞬でレオ視点からカニ視点に切り替わることもあるように本作はあらゆる冗長さを刈り取っていく。
テキストは「A→B→C→D」と順番に進むのではなく、「A→B→G→K」のごとくぽんぽん飛ぶような感じと言えば分かりやすいかもしれない。
ただこの「冗長さを省く」という在り方は、お話の流れが掴めず読者は戸惑うだけになりがちだ。細部を描かないことに苛立つことだってあるかもしれない。
しかし本作に至ってはディティールを与える部分には与えて、必要ないところはばっさり削る差別化が行われているため苦ではない。テキストの疾走感はラブコメ特有のドタバタ感にマッチしているし、むしろ小気味よく進んでいくお話に快感すら覚えはじめるだろう。
この絶妙さがたまらないのだ。
そんなテンポがよいテキスト*1で「日常」と「ギャグ」は高いレベルで纏め上げられておりバカゲーとしても、また先述したように多彩な恋愛模様も描くため萌えゲーとしても楽しい作品となっている。
特にあるヒロインがゴキブリを庇うシーンは大声で笑い転げるほどに破壊力があるので是非体験して欲しいと思う。
…とはいえ、強気で勝ち気で口が悪いヒロインが多いためここを受け入れられないとイヤーになってしまうかもしれない。無視、嘲笑、からかいは当たり前、時には問答無用で乙女姉さんにしごかれるし、姫にいたっては下僕のように扱われてプライドがろぼろにされることもある。
だがこういった女性が立場上「上」の関係を受け入れられるならば、私は全力でおすすめしたい作品だ。きっと笑って萌える、充実したゲームライフ間違い無しだと思う。
▼OPムービー 歌KOTOKO
(OPで大まかな本作の雰囲気を把握できたりする)
ちなみに本記事で取り扱った『つよきす Full Edition』は、無印版『つよきす』に「新規CG」「近衛素奈緒√(H有)」「姉、しよっ!VSつよきす(みにきす内のシナリオ)」を追加したもので、今プレイするならこちらがお得になっている。
近衛素奈緒√は、なぜ対馬レオは「テンション理論」を生み出すことになったのか?についてディティールを与える存在だ。無印版だとここは掘り下げられないので、詳しく知りたい人は手を出して損はない。
それになにより楽しい。楽しいは大事。楽しさは全てに勝るスパイスだ。近衛素奈緒がテンション理論を採用するレオを毛嫌いしている状況も、嫌われていることを分かりつつも距離を置こうとするレオにあのヘタレ野郎ー!と切れる素奈緒の様子にもにやにやしっぱなしである。彼女の√だけでもFull Edition版は買う価値がある。
そんな感じで、もしまだ『つよきす』に触れたことがない方がいれば――そしてすこしでも面白そうと思ってくれたならば――プレイをおすすめしたい。

7,344円
――作品紹介おわり――
※ここから先は本作の感想と総評。未プレイ者の人はネタバレ注意。
3)つよきす Full Edition感想
佐藤良美について
佐藤良美が他者を信じられなくなる背景は、ごくごくありふれた経緯だった。彼女自身言っているとおり「お涙頂戴」のエピソードなんてものではなく、母親と父親の不信、その余波に巻き込まれただけだった。
こんなことは現実にはありふれていて、けれどそうして人は親から「心の様式」とでも呼ぶべきものを与えたれていくのだ。佐藤良美の場合だったら人間不信、人は誰でも噓をつくという在り方に他ならない。
それは彼女自身、気付いててもやめられないもので、気付いているからこそ傷ついていく。どうして自分はみんなのように誰かを信じることが出来ないのだろう……どうして皆は容易く人を信じられるのだろう……人との距離感が分からないよ……と。
けれどそれをよしとしてしまえば、彼女はずっとそういう状態だ。それが嫌ならば心の様式を編み変えなければならないと私は思う。親は選べないし、環境だって子供には選べない。だから幼少期に組み込まれたされたOSはいつの日か削除しなければいけないし、そうして今度は自分が自分の思い通りになれる別のOSを持ってきてセットアップしなければいけない。だってアダルトチルドレンなんてまっぴらでしょ?……いつまで誰かのせいで自分が苦しんでいるのなんて御免でしょ?……。
だが実際そう簡単なことではない。でもね……誰かが……自分が……編み変えなければならないのもまた事実だ。その現状を嫌悪するならば尚更に。
「もういいんだよ、レオ君……私、他人との距離が分からないんだ……」
「一定の距離なら、得意だけど……少しでも、近すぎちゃうと……自分のものにしたくて……何がなんだか」
「みんな、よく出来てるなぁ……すごいよ」
「オレだって出来てないって、そんなもの……」
「なんかもう、私は……どうでもいいんだよ」
「ふざけんな。お前、オレを好きにさせといてもういい、なんて勝手すぎるだろ!」
「でも私が、行動全て計算で動いて……笑顔作って……いわゆる悪い女なんだよ。そんなのヤでしょ」
「お前は悪くもなんとも無いね。ただの気が小さい人間だ!」
「それぐらいで悪女を語るな。世の中の悪女もきっと怒るぜ?」
「エリーを裏切ろうとしたのに」
「だってお前はそれが間違ってるって言われて気付いて反省した。充分じゃん」
「でも、さっきの私観たでしょ……あんなに汚いんだよ……」
「バカお前、目の前で放尿なんか人によっちゃ大サービスなだけだぜ?」
「ちなみに、汚いところを見せたくてあれが限度なお前はむしろ可愛いと思った」
「……噓だ、噓だよ……嘘だよぉ」
「噓だったらこんな雨の中追ってくるかよ……」
「7月とはいえめちゃ冷たい雨じゃんよこれ」
「もういいから嫌いになって……」
「やだ。ふざけんな、あれだけ人を束縛しといて」
(中略)
「残念だったな、嫌われようたって無駄だぜ」
「1度幸せにしてやる、と誓った以上、絶対幸せにしてやる!」
――良美、レオ/『つよきす Full Edition』良美√
こういうレオの熱さにぐっとくる。
きっと彼は、よっぴーに寄り添ってすこしづつ彼女の在り方を変えていくのだと思う。あるいはラストシーンはそういった兆候なのだろう。すこしづつ彼女の心を編み変えていっているのだ。
あるいはよっぴーに必要だったのは、「可能性」を絶えず提示し続けることだったのかもしれない。今のままなんてありえないよ。きっと大丈夫だよ。なんとかなるよ。と。希望を語り、それが自分にも到達可能なのだと訴えかけることだけが、絶望した人を唯一救済できる方法なのかもしれない。
あのオーロラシーンが幸福に見えるのは、ひとえに「人は生まれに逆らえる」ことを示してくれているからに違いない。幼少期に嵌めこまれた思考の枠組みや心の反射は、後天的に自分が望むものに書き換えられるのだと。編み変えていけるのだと。
だとしたらそれはとても救いのあることではないだろうか。
幸せにしてくださいじゃなくて、なるんだよ
プロポーズで「君のことを幸せにする」みたいなセリフあるじゃない。そして相手が「……はい」みたいな。ああいうの私はふざけんなと思っちゃってあんまり好きじゃなかったりする。(レオがよっぴーにするのは好きだけどさ)
「お前が私を幸せにするんじゃなくて、お前と私が一緒に幸せになるんでしょうが」という気持ちが強い。つまり庇護下対象に置かれるのが嫌なんだと思う。対等なんだから対等に行こうよとなる。それに片方だけ頑張ってもそのうち無理がでてくるし、片方だけ受動的ってそのうちダメになるパターンだよねえ……。なぜ一人だけ頑張るんだよ……ふざけんなよ……。
スバルかわええ……
レオを見守るスバルの温かさがすんごい じん とくる。テンション理論を採用するレオに恋人を作ってみたら?と提案してみるのも、スバルなりに色々考えていてるんだなこいつー!ってなる。何事も冷静でニュートラルにいようとする彼に、「恋」という理屈ではどうにもできない感情の衝動でもって"バカ"になってみたらどうかね坊主って言っているようでさえある。
そういうとこ、正直にいってヤツは可愛すぎると思う。
以下、"じん"と来たシーン。
「恋人、こん中なら出来るんじゃねーの?」
――スバル/『つよきす Full Edition』共通√
「あんまイジメんなよ、レオ繊細なんだから」
――スバル/『つよきす Full Edition』なごみ√
「何、それでオレが親善大使なの?」
「カニが怒っちまって、こっちの話を聞こうともしねぇ」
「お前の言う事なら聞くかなーって」
「オマエのためなら何でもするが。嫌な役回りだな」
――スバル、レオ/『つよきす Full Edition』なごみ√
「椰子とオレのメシ、どっちが美味い?」
「あ……いや、そりゃあ……なごみ、かな?」
「ち、そうかよ」
「いや、でもそれは、どっちも美味いという前提でだぜ? オマエの料理だって充分……」
「もう1度オレがメシを作る。比べてみろ」
――スバル、レオ/『つよきす Full Edition』なごみ√
//////
(ジタバタ)
「オマエがそう言うならいいけどよ
……オマエがバカにされると、
どうしようもなくムカツクんだよ」――スバル/『つよきす Full Edition』エリカ√
「カニ、レオ」
「!」
「……オメーらも頼むから……
こういうのはマジやめてくれよ」「あ……あぁ……」
――スバル、カニ、レオ/『つよきす Full Edition』
なにかにつけてレオの傍にいようとするのも、なにかにつけてレオの味方をするのもうるうるしてくる。あまりここは行き過ぎると都合のいい友人になってしまいがちだし、レオはレオでスバルにべた甘えしている感じなんだけど、それを踏まえてでもあの二人の関係性はいいよね……。
乙女さん、なごみ、エリカとそれぞれ魅力的なヒロインはいるものの、もしかしたら『つよきす』内で一番のヒロインはスバルじゃないのかと思うほどにレオのパートナーとして良き存在だなとしみじみ。叶うならばレオとスバルの友情ENDが欲しかったな言っておきたい。
実質カニ√が近いかもしれないけど、そうじゃない。カニとの恋愛沙汰ぬきでレオとスバルがメインで、カニとフカヒレも巻き込んだ友情ENDが欲しいわけよ。
あとあれよ。カニに
フカヒレ「意外なのはお前がカニを好きだったって事」
スバル「それレオから言われ飽きたぜ」
フカヒレ「もっといい女いるんじゃねーの?」
スバル「いや、あいつが最高なんだわ」
――『つよきす Full Edition』カニ√
とか
カニ「正直さ、よーく考えると分からないんだよね」
カニ「やっぱ、ボクの身体とかフェロモン?」
スバル「はっ、それはねえ」
カニ「うぐっ、なんだこいつ。なんかムカツクな」
スバル「レオに好きになった理由をもう一度聞いてみな。それと同じさ」
スバル「オマエ以外の女なんぞ、虚しいだけだったぜ」
――『つよきす Full Edition』カニ√
とか言ってもらえるの、カニまじ幸せすぎるでしょ。畜生。こんなこと言ってもらえるなんて果報者すぎるよ。シラフで「いや、あいつが最高なんだわ」とか「オマエ以外の女なんぞ虚しいだけだったぜ」とか
~~~~っ!!!
ああもう!本当に最高だと思う。こっちまでニヤニヤしてしまう。そしてこういうのをさらっと言えるスバルのカッコよさ。ただカニは「でもボクは今はレオのものだからね///」とか思ってそうな気はするがさて。
おそらく私は『つよきす』で誰が一番好きか?と問われたらスバルだよと答えてしまうほどに彼のこと好きだったりする。こういう男の子めちゃいいよね……。
なごみの髪の毛ぼさぼさ
椰子なごみの髪ってやたら「ぼさぼさ」してる。あまり手入れされてないような、ばさばさ感。普段のシーンもそうだけど、フォークダンスの時はより顕著。これはもしかしたら彼女は美容院ではなく、床屋……あるいは自分で切っているのではないか?……という可能性が浮かび上がる。
どこかの誰かさんのようにナイフでざっくり切るなんてことはしてはいないだろうけど、例えハサミで切っていても「椰子なごみならありうる」と思えるくらいに意外ではない。ヤツならむしろやっていそうでさえある。
散髪系女子、イイ。
乙女さんの塞がった右手
乙女さん「右手」で地獄蝶々(刀)を持っているから最初は「左利き」なのかなと思っていた。でもあれは抜かない意なんだろう。右利であるにも関わらず右手で刀を持ち歩く。
地獄蝶々はその存在自体代々風紀委員から受け継がれているものということもあるし、乙女さん程の手練ならば殆どのシーンは刀を抜くまでもないだろう。(ラストで抜刀許可を館長にもらうところからも伺える)せめて鞘で峰打ちする程度くらいではないか。
だからあれはポーズの役割もあるし、地獄蝶々を手にぶら下げることで自らが風紀委員だと明示化する目的もあるのかなと思う。
近衛素奈緒の「畜生」がたまらない
エリカ√。
レオは姫に思いの丈をぶつけ復縁を迫る。その告白はマイクを通じて校内に放送されてしまったのだが、それを聞いていた近衛素奈緒。
「……こんな熱い心がまだあるなら」
「なんであの時に……畜生」
――近衛素奈緒/『つよきす Full Edition』霧夜エリカ√
彼女がまだレオに想いを寄せていること、そして過去に決別した出来事を思い返している複雑な心境が「……畜生」の一言で表れているのがたまらない。なんかもうね、ぐっときた。泣いちゃいそうになるし、きゅんきゅんするし、切なくなる。
なんか、そう、最高だ。
ここには尊さすらある。尊い。
Full Edition版では「2学期」のチュートリアルが存在する
立ち絵だけグラフィックが一新されている。
――つよきす Full Edition
全ての√をクリアすると、チュートリアルに「???」が追加される。これ無印版ではなくて、Full Editionのみ搭載されているものだろう。内容は『つよきす2学期』なる次作品の導入になっていて、気になったら買ってねみたいな感じだ。
驚いたのは『2学期』はFDや後日談のお話になっているかと思えば、なぜか、2学期までずるずる恋愛関係に発展しなかった場合のIF√を描いているようだった。
ん?……
無印版ですでに姫や乙女さんと恋仲になったのに、なぜわざわざ「2学期」という舞台で同じことを繰り返さなければいけないのだろう……という疑問がまず真っ先に思い浮かぶ。これはやってみないと分からないが、あまりにも2学期の評判が悪すぎて手が出しづらいのが現状だ。
『つよきす CHRONICLE』 に2学期は同梱されておらず3学期があるのも、ここらへんが理由なのかなと思う。ただ3学期も無印版の個別√をなかったことにして3学期から各個人の恋愛模様を描くようで「なんだそれ」って今になって驚いている。
これ、ある種の作品批評だよね。それはそれで面白いし興味を掻き立てられるのだけど。
きっとなんだかんだ言いながらプレイするしかないのでしてみようとは思う。
昔の感想記事と比べて
昔にかいたつよきす記事と比べると、当時の自分がどう考えていたかが分かるのは面白い。というよりこの時の私はやたらテンション高かったなって思う。(環境変わると次第に性格変化していっちゃうよね……)
▼
ブログ(=記録媒体)の利点はこういう時に発揮され、今と昔を比較できることに価値がある気がする。例えば作品紹介の段と今と昔ではどちらがよいか?とか。
あとエ口ゲーマーでつよきすやっていない人はいないだろうが、この市場に新しく参入する人は「名前は知っているけどやったことはない」って人はいると思うので、そういう人がこの記事読んで興味をもってくれたなら嬉しい。と思うのだがそういう方がこのブログの読者層なのかはわからない。
逆に「感想の項目」では今でもやり方は変わっていなく、あくまでも自分の思考整理の役割が大きいためこういう形式を撮り続けているのだろう。ただ注目する点、見ている場所はすこしづつ変遷しているのは面白い。とおもったらそこまで変化はないかも。
総評
2014年に『つよきす』をプレイしてから2年後、ようやく『つよきすFull Edition』をプレイ。
いつかやろうやろうと思っていたものの「無印版やったしなあ…」という根性なし的言い訳でずるずると来てしまったが、先日『つよきすCHRONICLE』*2――つよきす4作品パック――が発売されタイミング的にも丁度よかったので購入。
本作は「近衛素奈緒」という人物要素を除けば、実質2周目のプレイになるものの私自身一周目で味わったあの楽しい印象は色褪せることなくプレイできた。物語は既知なはずなのにギャグは笑え、時折泣いては、恋愛ではにやにやが止まらない。発売から10年経っても錆びつかないこの楽しさに感服してしまったし、20年後の2025年にプレイしたら今度はどんな感想を抱くのか(今から)わくわくもしていたりする。
作品紹介の項でも言ったが、Full Editionで追加された近衛素奈緒√はレオの過去が照らしだされ、彼がどのような経緯でテンション理論を採用するに至ったかを知れたのは中々に乙だった。現実と理想のギャップに折れたレオと、貫き通した素奈緒。そんな心のすれ違いが高校生になっても続く「切なさ」は本作中一番描けていたのではないだろうか。乙女、エリカ、カニ、なごみ、よっぴー、祈――既存の√とはどれも違う切ない恋物語。やはり私こういうのも好きだなあって再確認。
あと『つよきす』のいいところは「気軽」ところだなと思う。上手い具合に冗長さが省かれた(=テンポがよい)テキスト、それによって生み出されるギャグと青春、また鬱屈シーンやシリアスシーンが極端に少ないことが「気軽にプレイ」できる作品になっている。
例えば霧夜エリカにフラれる後、別の物語ならきのこが生えるくらいにじめじめし始めたりもするのだがレオの場合はやけくそ気味に特攻する。
例えば祈先生の心の穴は塞ぐことは難しい。だからといってそれを埋めるためになにかするわけでもなく、レオは一緒に寄り添っていくことを選んだ。こういう「どうしようもない」ことをどうにかしようとするのではなく、受けて流す感じ。ここが「からり」とした読後感を覚えるのかもしれない。
こんなふうに鬱屈する所でも決して心がどんよりするほどのものではないし、わりとあっさり終わる。解決できない問題をうじうじ悩まず行動したり、または受けて流す受け身の強さが光る作品だなあと感じるのだ。
これはレオのニュートラル⇔熱血体質もあるが、そういえばBGMも心が墜ちこんでいく種類のものがないなと把握。普段BGM方面に注意が向かない人だが、つよきすは「ドタバタ」「ニュートラル」の印象が強いサウンドが多く、逆にダウナー系は少ない気がする。
重くないんだよね。どこまでも気軽にプレイできて、手軽さみたいなものがある。
強引にまとめると「良い作品」だったに尽きる。「強気女子の学園アドベンチャー」を求めるならばこれ以上のものは中々見つからないだろう。
私的満足度:★★★★(4.1)
擬似客観視:★★★★(4.1)

13,900円

7,344円
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