先日、こんな記事を書きました。
▼
親指シフト(=NICOLA配列)は指運びの悪さを感じる。八日目感想
意訳すれば「NICOLA配列は打鍵していて楽しいものの、どうも指がもたつく印象があり、また拗音+長音記号が打ちにくい」といったものです。
不満があるならば新しい配列に挑戦すればいい――、ですが一から配列を覚え直す徒労感に足が竦みます。まともに「文字入力出来ない期間」があるというのは、環境的に辛いのです。
しかし「悩んでるってことは本当はやりたいわけでやってダメならダメでいいじゃない」と思い立ち、上の記事を書いた翌日には『飛鳥配列』に乗り換えました。
配列は、案外覚えられる
NICOLA配列を覚えるのに私は(ひいひい言いながら)3日かかったんですが、飛鳥配列は2日で終わりました。
思ったよりも簡単に覚えられたので、おそらくNICOLAを覚えた時の経験値が役立ったのでしょう。もしも最初から飛鳥配列を選択していたら、もっと掛かっていたかもしれません。
ここで理解したのは、配列に習熟するのは相応の時間が必要になるでしょうが、配列「だけ」を覚えるならそこまで尻込みしなくていいということ。
なので「どの配列をずっと使っていきたいか・習熟させたいか」を見定めたくて、中指シフトを採用した『新下駄配列』に手を出してみたり、前置シフトを採用した『月配列』を弄ってみたりしました。
いまだ『飛鳥配列』か『新下駄配列』か悩んでいるんですが、どちらも捨てがたいです。
飛鳥配列の打鍵は気持ちよい
飛鳥配列の特徴はこんな感じです。
- 有志による千回以上の配列替え+膨大な量の評価打鍵の末に生まれた親指シフト配列
- 清濁別置――つまり清音(=か)と濁音(=が)のキー位置をバラバラに配置できるため運指の高効率化を図れる。逆にいえば規則性がないので覚えづらい。ちなみにNICOLAは清濁"同"置。
- 文字キー内に「Enter」「Delete」機能キーを配置。
- ホームポジションでの使用率が高く、人差し指側を極力使わない配列になっているが、代わりに外側(=小指側)と下段の使用率が高めの印象。
- 2010/07/13に最終版を発表。
飛鳥配列に乗り換えると、まず驚くのは「運指の気持ちよさ」です。
とにかくスムーズに指は動き、引っかかる所は少なく、パチパチと打鍵できます。おそらくこれに貢献しているのは「クロスシフト入力」が大きいと思っています。
(1)クロスシフト入力
例えば右手薬指にあたる「>」キーは右親指シフトを押しながらでは打ちにくいですが、左親指シフトを押しながら「>」キーを打鍵するのは容易いのです。
これは、同手シフトだとシフトキーと四指の位置が近くなってしまうため――どうしても下段は――やや窮屈になってしまう。
しかし左シフトを押している時はその問題は発生しないので、指の移動が緩和され、結果として打鍵しやすかのかなと思います。
飛鳥配列はこのクロスシフト入力を多用し、打ちにくい下段を打ちやすく、打鍵しやすいホーム段に頻出頻度の高い文字+繋がりやすい文字を効率的に並べることに成功している。気がします。
*繋がりやすい文字とは「です」「ます」等
(2)人差し指・上段
また「人差し指・上段」をほぼ使わないせいか、次動作がもたつくことがないのにも気づきます。私だけかもしれませんが[R][T][Y][U]を打鍵したあとに同手側の次キーを打鍵するのは、他の指とくらべ半テンポ遅れるような体感があるのですね。
手が浮くというか。遠すぎて使いにくいというか。(慣れの問題なのかもしれませんが)
『飛鳥配列』は人差し指をなるべく上段に動かさないことで、運指のよさを上げているのかも?(実際どうか分かりませんが重心が低い――ホーム&下段の使用率が高い――のは確かです)
(3)長音と拗音の配置
飛鳥配列では「ー」は[W]の場所に、拗音「ゃょゅ」は右手下段の単打面(=一発で打てる)に配置されています。
NICOLAでは難しかったカタカナ語もスムーズに打てますし、促音である「っ」も右手下段単打面にあるので「言って」とか「かって」なんかも打ちやすいです。
(4)連手率が高め
交互打鍵が低めで、同じ手で――特に右手で――キーを打つ連手性のある配列の印象です。
それも移動量の少ない動きで打鍵できるので、こういうのをアルペジオが良いと言うのでしょう。不快感はなく楽しい。
(この「ふかいかんはなくたのしい」の12文字中左手を使うのはなんと2文字。*左親指は数えない)
ただ右手を使い過ぎな気もするので、もう少し交互打鍵率が高いと私は好きかもしれません。
(5)機能キーの有効性
『飛鳥配列』の大きな特徴として、Enterキーが特等席の[E]に配置。最初この意味が分からなくて戸惑ったのですが、実際使ってみるとホムポジから指を動かさず確定・改行出来る素晴らしさに気づきます。
Enterってともすれば「い」や「ん」よりも使うものなので、この配置の合理性に唸りました。同様に人差し指上段「U」にESCキーを割り当てていると思うのですが、使わない人からすれば別の機能キーや記号キーに振ればいいかなと。
あれ?
となると
右親指シフトキーに当てている「変換」をkeyswapでEnterに書き換えて、やまぶきRの設定で「右親指シフトの割り当てを変換からEnterにし単独打鍵を有効」にすればもっと効率化できるのでは?
改行も確定も、右シフトで行える!
*keyswap キーの入れ替え・無効を行うフリーソフト(KeySwap for XPの詳細情報)
*やまぶきR 既存キーボードで親指シフトを導入できるエミュレーターソフト(やまぶきR 親指シフトインストーラー)
これに気づいた後は、機能キーが最小限に抑えられた旧版を見比べながらちょこちょこ弄りました。
(6)「」が打ちやすい
飛鳥配列では物理位置[Q]に片側括弧(=「)、「@」で括弧閉じ(=」)を出せます。また同位置のクロスシフトで () をそれぞれ表示可能。
つまり 「」() を多用する創作向きの配列と言っていいと思いますし、辺境の地である小指上段をうまく使っていると思います。
しかし括弧記号を多用する人は、小指の使用頻度が高まり痛みを覚えるかもしれません。
私は(左小指が)痛くなってきたので、新下駄配列で採用されている「JH」同時押しで 「」 が出せるアイディアを導入しました。同時押しした瞬間、カーソルが真ん中に移動するのは快適です。
(同様に =()〈〉『』”” 計6つの記号も同時押しにしました)
余談ですが、飛鳥配列は[P]を[薬指]で打鍵推奨みたいです。通りで右手小指の使用率が高いなと思ったら、強い薬指で負担率を下げてあげるみたいです。
(7)不満点
『飛鳥配列』は完成度が高いと思います。
十年以上掛けて編み出されたというのも納得のデキで、運指は気持ちよく、打鍵していて楽しい。それは配列を覚えて間もない私にもわかります。
むしろNICOLA配列とは何だったのか……と思うくらいに、不満は少なめです。
でも強いてあげるなら
- 配列を覚えるのがやや大変
- 「かな/ひらがなキー」をBackSpaceキーに入れ替え推奨のため小指に後退キーはなし
- 「せ」「を」「つ」「も」が下段同手シフトで出すため、やや打鍵しにくい
- 交互打鍵が低め
の四つでしょうか。
これは清濁別置を採用してるので、「か」と「が」が同キーに位置しない→混乱する、というケースが頻発します。ただ慣れの問題だと思うので、習熟するにつれ気にならなっていくと見積もっています。
それに――この打鍵のしやすさを目の当たりにすれば、清濁同置がいかに制限あるものか理解できますし、清濁同置の利点が「覚え易い」といっても単打面・シフト面の無秩序な配置を覚えるのは一緒です。
クロスシフト面だけ規則性があっても……だから何?……それって「やや」「ほんの少し」覚えやすいくらいで習熟した頃には清音のクロスシフトが濁音なんてどうでもいいしその微妙な規則性のせいで運指が悪くなるのは耐えられない!
――って人には問題ないかなと思います。
いやでも!! クロスシフト面に規則性があるってことはそれだけ「習熟が早く」なるってことじゃん*1。習熟したらそりゃ規則性なんてどうでもいいけど、その習熟をいかに早く終えるかが大切なんじゃん!! 三面の内一面だけだとしても私は少しでも楽な方がいいよ。
――って人には『小梅配列』が評判いいのでおすすめかもしれません。私は試していませんが、清濁同置+交互打鍵率が高い、素直な配列だと聞きます。
▼
(↑では、『小梅配列』のコンセプトを書かれているので興味あれば)
次。
別エミュレーターでは可能みたいですが、やまぶきでRは文字キーを変更することは出来ても「Alt」といった機能キーは弄れません。
なので当該エミュレーターを使用する場合、かな/ひらがなキーをBackSpaceキー入れ替えは外部ソフトを使わなければならず、これを推奨(前提?)の飛鳥配列はすこし取っ付きづらいかもしれません。
次……と言いたい所ですが、あとは説明する必要はないと思うので省略。
◆
もちろんこれは配列を覚えて間もない「暫定的な」評価にすぎませんし、より手に馴染んできたらまた違う答えを出すかもしれません。
それでも現時点では結構満足してるのは、確かです。
今まで行ってきた親指シフトの拡張
- やまぶきRの「拡張親指シフト」にてダイヤモンドカーソルとhomeとendを「A,S,D,F,E,X」に追加。キーは無変換キー(押しっぱのみで機能)
- 無変換キーをGoogleIMEで「確定取り消し」に変更(文字を確定後でも変換をやり直せる)
- かなキーをバックスペースキーに
- 左ALTとWindowsキーを「←→」に(Shiftキー文節調節変換がやりやすい)
- 「」()を同時押しにしたため[Q]は裏の「ぃ」を、同様に[@]は「ご」を単打面に持ってくる。
ちなみに現在の『タイプウェル国語K/基本常用語』の成績はLv.H(分速106文字)です。本当はイータイピングで習熟度をはかりたかったんですが、私の環境では上手く行かなかったのでやむを得ず。
*タイプウェル フリーのタイピングソフト。ある界隈ではタイプ速度の基準になっている(?)
次回は親指シフトで「手指が痛くなる人」の共通点にあたりを付けたので、それについて語りたいです。多分。
親指シフトの記事
『親指シフト』、はじめました。/チンパンジー並の打鍵速度から早四日目
親指シフト(=NICOLA配列)は指運びの悪さを感じる。八日目感想
*1:思うに清濁同置配列の良さって「覚えやすさ」ではなく「音の一致性の気持ちよさ」なんじゃないでしょうか。だってクロスシフト面だけ規則性があるのが、覚えやすい?って話です。私からすれば親指シフトの清濁同置・別置、どちらも学習コストは高めだし(この意味で)五十歩百歩にしか思えない。けれど――清音と濁音が同キー内で包括されている、一致している、耳に聞こえる『音』が同じ場所にある、というのが気持ちいい人に は同置配列は好まれますし、逆にあっちにいったりしている別置配列は ”気持ちよくない” から採用したくないという感覚の指向性に帰結するように思いま す。認知優位が『聴覚優位』だと清濁同置を好みそうな気がしますが、根拠は特にありません。でもそう考えると、効率的な意味でメリットが少ない(と思える)清濁同置配列を好むことを私は納得できそうです。「運指が気持ち良い」から私が清濁別置を選択したように、「音の一致が気持ちいいから」清濁同置を採用するのではないかと