*5話まで見たぞい
学戦都市アスタリスク×作品外形
『学戦都市アスタリスク』はどこかで見知ったストーリー、キャラクター、舞台設定をこれでもかとふんだんに使った作品である。
「テンプレートをなぞった作品」と言っても差し支えなく、多くの人がそのことを言及し、多くの人が見飽きた感覚を拭えないのも無理はないだろう。
でも面白い。
確かに作品内容は既知の集まりかもしれないが、しかし本作は「作品外形」が優れているため視聴に十分耐えられるし面白いと思わせてくれる。
作品外形とは、アニメであれば「アニメーション(動き)」「音」「色彩設計」「キャラクターデザイン」「間」であり、それらを束ねる「演出」のことである。文字通り "外形" を指し示すものであれば全て作品外形と包括し呼んでいる。
私たち――いや、私がか?――が求めているのは、なにも物語展開といった「内容」だけではなく「外形」もまた求めているのであり、それらがもたらす「直接性/投射」は得難い快楽体験なのである。
◆
例えば「主人公VSユリス」決闘シーン(一話)で、ユリスという少女が "右手に持った剣を前方に一振り、返してもう一振り" に生じる炎エフェクトがこれまたかっこいい。
流体のような炎が空間を燃やしていき、散っていく。それは火炎そのものの「生々しさ」が微かに現れているようでさえあった。
(ユリス戦闘シーン.学戦都市アスタリスク1話)
そして少女の攻撃に応対する、主人公の剣捌き・回避運動も見ていて楽しい。
彼の運動は派手さなんてない単純な「守り」だが、しかし地味な動きだからこそ、そこを楽しめるというのは中々にすごいことではないだろうか。
私が惹かれたのは、炎の槍が身体を突き刺す・一瞬・にて躱すカットとカットの時間の流れである。こう思わず自分自身の身体も動いてしまいたくなる緊張感を生み出すシーンというのはワクワクするものだ。
(天霧綾斗.学戦都市アスタリスク1話)
さらに『学戦都市アスタリスク』はOPアニメーションを見れば分かるように、「他作品とは違う感」が漂っている。一言でいえばセンスがある。
ここは言語化するのが非常に難しく諦めたいのだが、努力して語ってみよう。
まず黒い背景に青白いホログラムが次々に生み出されていき、それが「学戦都市アスタリスク」の形を取ろうとしたところでくるんと反転。OP曲『Brand-new World』のリズムと合わさりながら「6つの校章」をアップにしていく。
冒頭から「映像と音楽の疾走感」がよい。
(OP冒頭/学戦都市アスタリスク)
そこから登場人物を直線上に並べ立てながら画面がどんどん奥へ進んでいくシーンがあるのだが、ここで立っているキャラクター達はどことなく「アニメっぽく」ないのだ。
アニメーションというよりは、ギャルゲーの立ち絵じみた様相であり、立ち絵をそのまま置いている感じがする。
ラストで「にっ」と笑う范星露(ファン・シンルー)の口の動きは、まさに立ち絵を動かした感じであり、「本編では立体的なキャラクターが、表現手法により立体感をなくした」感覚を味わえる。見ていてへーと思った。
本作は次回予告で『Live2D』を使用していることからも、そこに注目している場面だと推察できるかもしれない。
*Live2D:2D独特の形状や画風を保ったまま、立体的に動かすことのできる独自の表現手法。この場面を見るとアニメの立体感と、立ち絵をLive2Dで動かす立体感は別物だなと分かる。
そしてこのOPの一番華やかな戦闘バトルは、何度見ても見飽きない楽しさがある。
直線上に並ぶ敵をばっさばっさと切り裂いていく主人公、《疾風迅雷》の異名を持つ銀髪ヒロインが一瞬で距離を詰め敵を一刀両断していく神速感、右手を掲げ "かくん" と下ろしながら魔法詠唱するユリス達はひたすらにカッコイイのである!!
(OP中盤・サビの部分/学戦都市アスタリスク)
私は↑のユリスの「右手を一瞬かくんと下におろす仕草」がひじょーにたまらなくて身悶えた。やばい。やばいぞ。なんてカッコイイ詠唱動作なんだっ!! 私もやるっっ!!
そして主人公が地面に剣を打ち付け、OPムービーは幕を閉じる。楽曲のVocalの叫びと地面がえぐれる破壊の絵面のシンクロ・そこから遠ざかっていくカメラが合わさって最初から最後まで疾走感をキーにしたようなOPだったと私は感じている。やっぱり見ていて楽しい。
…こんな感じでOPを言語化してみた。ほんの少しでもカッコよさ・楽しさが伝わっていればいれば幸いだがどうだっただろう。(いやー難しい)
もちろんOPに限らず、EDも凝っており上質なジュエリーなアニメーションに仕上がっている。「宝石のきらめき」(のようなもの)を描いている部分が私は好きで、中毒になるくらいに見ているもののまだ飽きはこない。
なのでこのOPEDを見ていない人は是非見よう。
◆
そんなふうに、例え型通りの物語だろうとOP・EDから本編まで「良質なアニメーション」「エフェクトのカッコよさ」「演出のセンス」が際立っていれば、「作品の内容」なんてものに意識は向かわなくなっていく。
むしろ作品外形が十二分に機能した時、見飽きたテンプレートストーリーは息を吹き返すんだなと私は思ったものだ。これが外形の威力であり、直接性の快楽なのだとも。
こういった「外形」に目を向けてみると、『学戦都市アスタリスク』が凡庸な作品にも関わらず視聴が楽しい理由の一端を垣間見えるのではないだろうか。
こう感じているのは私だけじゃないと思うが、今まで語ってきた主張が一般化できるかどうかは読者に任せて終わろうと思う。(了)
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