『ひとりぼっちの地球侵略』(以下ぼっち侵略)の魅力は、物語展開ではなく「物語体感力」だと宣言してみます。
「物語体験力」とは、ページを捲る手が止まらないような血沸き肉踊るような展開が次々と押し寄せるものではなく、読者が物語へと没入しその世界で実際になにかを体感しているかのような力のことです。
例えば、『惡の華』では主人公がひょんな事から女子の体操服を盗むという背徳的行為から始まり終盤までかけて思わぬ展開の連続で読者をガンガン殴りつけてくる作品ですので、(物語体験力も高いですが)物語展開力が際立っている漫画だと言えます。
対して『ぼっち侵略』は、(序盤の)物語展開力が高いとは言い辛いです。
と言うのも1-3巻までは、宇宙人・大鳥希、地球人・広瀬岬一の2人が出会い、話し、打ち解けるまでしか描いていないので、これは!!!というあっと驚く展開はありません。
おそらく割と溢れているボーイ・ミーツ・ガールの作品に感じられるのではないかと思います。
特に1巻は物語が加速する前ですし、私たちがこの世界観を理解する前なので、"ペダル"が重く読み進めるのがすこし大変。それは2巻まで続き、3巻でようやくぼっち侵略ワールドに慣れてくる頃なのかペダルが「ふっ」と軽くなっていきます。
つまり『ぼっち侵略』の序盤は"めっちゃ魅力的!"とは言えないと個人的に感じます―――誤解しないで欲しいのは「面白くない」と言っているわけじゃないです。
ただ「是非この作品を読んで欲しい!」と紹介しあなたが1巻を読んでみたとします、けれど予想外の展開がないので「言うほどの作品ではないな」と呟きぼっち侵略の購読を止めてしまう…そんな要因になるのではないかと考えます。
と言うのも、私自身2巻までの感想はイマイチピンとこなかったなからです。
【参照記事】
しかし、ぼっち侵略は「4巻」からすごいです。
これは今まで1-3巻で描いてこなかった核心的要素が4巻にてようやく展開してきた―――という事も大きいのですが、その展開を支える1つ1つのコマ割りの過程自体も素晴らしいのです。
『ぼっち侵略』は1巻から、大鳥先輩の笑った表情、泣き顔、むすっとした目といった表情表現が細かく、さらには歩く、話す、走る、戦うといった流れるような動作の画力もまた際立っていますが、4巻ではそれらの画力を総括したもう一次元高い芸術表現にまで昇華されています。
例えば、本巻でのちび岬一の喋り方、ちび大鳥希に邪険にされながらもいまいち状況がわかっていない無邪気な様子、脅されてびくっ!とおびえてる一連のシーンがいちいち可愛くて仕方なかったりするのです。
そしてラストの大鳥希の"立ち振舞い"は、ぼっち侵略ワールドが一気にぶわっと膨み、その空気感、皮膚感覚、この世界で実際になにかを"体感"している――物語体感力――が飛躍的に高まっていきます。
言葉では説明しづらいのですが、ここは物語の展開力が素晴らしいからではなく、物語の「過程」「引き込む力」それ自体が素晴らしいこそでしょう。
もしかしたらここは専門的に言えば「視線誘導力」のお話になるのかもしれませんが、私は専門外なのでうまく説明できません。
ただこの巻では何気ないシー ンから重要なシーン全ての起点と終点に至るまでの流れる経過が楽しく、まるで私自身がぼっち侵略の世界に実際に降り立っていて喜び、怯え、笑い合っている感慨があるのです。
そんな「物語体験力」が高いのが『ぼっち侵略』の魅力だと思うのです。
なのでもしもあなたがこの作品を手にとって1巻・2巻・3巻で脱落してしまいそうになったら、4巻すごいよ!という情報を糧にしてここまで来て欲しいなと思います。
私自身、2巻で脱落してたらすっごいもったいなかったな!って感じるので是非是非4巻までどうぞ。そして5巻からはさらにさらに(ごくりごくり)
(ちなみに本作は2015/08/21の時点では8巻まで発売されている完結していない連載作品です。筆者は5巻まで読んでいて順次買う予定です)
ノシ
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