半年前に『水月』をプレイした。
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記事中でも語っているとおり、この物語には一貫性なんてものはなく全ての要素が"かちり"と嵌る瞬間みたいなものはなかった。一ヶ月間ひたすら読解をしてもその片鱗すらも見えなく、謎は謎のままにそっと置かれた。
那波の父親の目的は分かってもなぜ彼が廃校舎裏に出向いていたのか、雪さんを幻想と捉えるならば無縁墓地や透矢が思い出す過去は一体なんなのか? 逆に雪さんが実在すると仮定するのならば通常じゃ起こりえない事が起こりえるのは何でなのか? そういう疑問に「これだ」という明確な答えは無かった。
私の読解不足かもしれない。もしかしたらこれら全ての要素が一直線上に繋ぎ合うピースが存在していたのかもしれない。単純に見つけられなかった、そういう結末で件の感想は幕を閉じた。
▼水月の不可思議な要素。謎。
・透矢が持つマヨイガの写真
・道祖神をやたら気にする透矢(餅つき=性交?)
・病院で昏睡している父親を一度も見舞わない透矢
・少年透矢とナナミが交わしたあの日の約束
・雪と那波は「あの日の約束」によって生まれた存在
・突然増えるぬいぐるみ部屋
・那波を勉強会に呼ぶことを忘れてた4人。(那波をうまく認識できていにない可能性)
・雪の包帯手さばきが異常に上手いため、大勢の負傷者を手当していた可能性
・雪の身体性の異常について(赤い目、薬が効かない、知能が飛び抜けてるなど)
・透矢と雪が共有している過去記憶(小さいころの雪と透矢の思い出)と、雪さんの生まれた経緯との矛盾
・無縁墓地
・風船ウサギ
・怪 (脳では認識でない「なにか」、存在を定義できないものの総称)
・山ノ民
・涙石(=想いの具象化)
・涙石の半減期と水
・無限退行
・常世の門
・水月(=すべてのものごとには形がない)
・マヨイガは"世界が生まれる場所"と牧野健司は言った
・ナナミの存在を否定することで、今現実は「夢」となる
・岩で塞がったり塞がっていなかったりする鍾乳洞の入り口
・魔法とは信じること、魔力とは受け入れること。魔女とはこれを方法論として確率している行使者の名前。
・アリスの問いをはね除けてしまうと、翌日アリスとマリアがこの世界には存在しなくなってしまうことについて。
・海底にある神殿と大量の涙石
・廃校舎(戦後すぐに廃校にしたりと不自然な点が多い)
・牧野健司は防空壕をシャベルで掘り返し、宮代神社の裏門に度々足を運んでいた。
・牧野健司の母親は父親に売り飛ばされた。(彼はそのことを殺されたと表現)
・牧野健司の目的は母親の体内にて魂となり同化すること
・牧野健司の母親は山ノ民であり、牧野那波もまた山ノ民である
・大和神社のご神体が「梓弓」
・2週目で"現れる"大和鈴蘭は、透矢が創造した?
・夏休みがあけた途端に目を覚ます透矢父
しかしふと最近考え方を変えてみたらいいんじゃないかと思った。
つまり「水月には実際に一貫性なんてものがない」ということだ。
そもそも全ての謎を繋ぎ合わせる「なにか」なんてものはこれには存在しない。これならば全て納得がいく。
―――水月は夢なんだ。
この答えこそが『水月』にかちりとはまるピースに違いない。夢だからこそ、一貫性がなく全ては途切れ途切れなのだ。原因があるから結果があるという現実世界のルールは夢では通用しない。だって夢ではなんでもありなのだ。いきなり雪さんが消えようと、突然アリスとマリアが消え失せようと、唐突に新世界が始まろうとも構いやしない。
あるのは結果という"今"だけだ。
"今"の連続体こそが『水月』なのだ。
だから、過去から未来へと繋がっていく流れで事象を見ていくと意味が分からなくなる。それは意味を求める行為なんだ。
けれど夢は"今"しかない。過去も未来も存在しないからこそ、全てが唐突なんだ。
『水月』に意味なんか求めちゃいけない。夢に意味を見出そうとしてはいけないように。
→『水月』感想_すべては【現在】から始まりゆくということ(11173文字
<参考>