猫箱ただひとつ

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【ゆきうた】起こらないから奇跡って、え、起こるんですか【感想・レビュー】

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 ――もみの木に願えば願いは叶う

しかしそれはやっぱりただの御伽噺で、飼っていたうさぎは生き返らなかったし、奇跡は起きなかったのだと、主人公は語る。

ゆきうた総評

 

しかし人の手ではどうにも成らないことが起これば、彼は(あるいは他の人も)そんな古ぼけた樹に祈らずにはいられないし、【心の底から願えば奇跡は起きる】という結末を与えるのが本作の特色でもある。

おもしろいのは、劇中内で【祈った人間が大切にしている何かと引き換えに奇跡は成る】と語られるのだが、菜乃・摩尋ルートの2つめだけはそのルールは無視され、奇跡は起こるものの支払う代償は無かったことだ。

(あるいは可視化されていない)

これらのENDは誰もが幸せな終わりと言ってもよく、その代わり「代償がない奇跡」について考えさせられたりもする。つまりここで描かれる『奇跡』とは人生の欠損をすべて元通りにしてくれる願望機であり、祈るだけであらゆるものは修復される。ノーリスク・ハイリターンってなわけ。

――でも……それってどうなんだろう? 

支払うものがないっていうだけで得たものも無価値なような気がしてくるし、その結末はかけがえの無い大切なものという感覚からは程遠くなってしまう。

例えば摩尋生存ENDは、摩尋別離ENDより美しくないし、近所のスーパーで買うお刺身のように安っぽい。正直言ってチープだ。これは無リスクで得た結末だったからこそ、そのように感じてしまうのかもしれない。

同様に奇跡が無リスクで叶うのならば、困った事があればほいほいと頼ってしまいかねない。そうなればその人――秋臣――は自身の足で立って生きるようになるのだろうか?……もみの木に寄りかかりっぱなしになるのではないか?……奇跡は人が発達していく為にむしろ邪魔なものではないか。そういことを考えざるを得なくなっていく。

もちろん神に願わなければならない状況を否定するわけじゃない、が、何の代償もなく願いが叶うというのは、どうにも座りが悪いのである。

とはいえ人の世がそういう "イージーモード" であるならば、それはそれでいいんだろうなと心の底から思うよ。まあ、そうしたらこの世に物語が生まれる理由は半分ほどなくなるだろうけど。

逆にその他のENDはきっちり「秋臣にとって大切なもの」を奪っていくので、心がさめざめとするものの心地よかったりもする。得たものと失ったものが公平なのは気持ちいいし、例えそれが後味の悪いENDだったとしてもちゃんと「生きてる」って想える。

(ああ……そうか。もしかしたら失う事こそが生への実感を促すという仮説もありえるのか)

特に、雪那√は狂おしいほどに好きだ。

 秋臣は(紆余曲折あって)「俺の記憶を雪那から消してくれ」と願い、その通りに彼女の記憶は失われていく。実際奇跡が起これば、その現実は辛くて「忘れてしまったのならまたここから始めればいいじゃないか」と最後に――もう何も思い出せない恋人に向かって――呟くのが堪らない。(=√1つ目)

それは秋臣の願いが最初と後では否定される関係となっているのが、ぐっとくるからだ。ひいては奇跡ってなんだろうね?必要なものなのかな? と自問するような雰囲気が(うっすらと)でてるのも趣があったりね。

また秋臣は起こった奇跡を諾々と受け入れるところも好きだ。確かに、奇跡が成った世界は耐え難いものだけど、その失われるものに対し「そうだよな。おれ願ったもんな」と彼は肯定的なのである。

ただただ目の前にある現実を許容し、では俺はどうすればいいか、そんな姿勢と言えばいいか。

雪那が幼児化し、子供も生まれる世界で、彼がその世界を受け入れて微笑む姿は……なんか……もうねいいなあ……ってなる。

彼の世界の肯定感が好きなんだな。きっと私は。

 

我が子よ、生まれてきて、おめでとう。

これから始まる君の人生が、とても楽しい物であるように、頑張って生きてくれ。

ふと立ち止まって、ふと振り返った時

「あー、生まれてきて良かったぜ」、それは大成功だと言える。

そして俺達は、キミがそう思えるように、惜しみない努力をしようじゃないか。

ちょっとキザっぽいけど、なんか、そんな感じだよ。

――秋臣/雪那√2/ゆきうた

 

客観的にみればこのENDはとても辛い。

想い人は自分のことを忘れ、症状がすすみ幼児化する。赤ちゃんも生まれる。この二つは秋臣の責任であるものの、まだ学生である彼がこれらを一手に引き受けるのは大変な事だろう。

しかし悲壮さは感じられない。むしろこういう人生もありだよと言うような、この、「悲」と「喜」が溶け合ったラストシーンが奇妙で、歪で、素晴らしいのである。

 

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――ゆきうた/雪那√2

 

ゆきうたは「奇跡を願う意志」と「願った責任」を描く作品であり、雪那√はこの両方を端的に示した物語だったなと思う。

 

それは摩尋、菜乃√1も同様で、奇跡が起きる世界で奇跡は起きて、代償はきっちり支払うよと結構蛋白な感じ。

ただ弘美・由紀√ではその後の対応が変わってきて、「なぜ奇跡は起きてしまったんだ!」とか「一番大切なものを失うならどうして奇跡なんてものがある?」といった奇跡追求に重きを置いている。

このため雪那、菜乃、摩尋の3つの√と、弘美、由紀の2つの√では奇跡に対する重み付けが極端になっており、作品「全体」でなにかを描くのではなく、「二つのグールプ」それぞれ単独で成り立っている印象が本作は強い。

ここは、ややまとまりが悪いと言ってもいいと思う。

個人的には、奇跡は起こった。そうだね。くらいの距離感を描く『ゆきうた』が好きなので、全ルートこのテイストだったら満足度は星4は固かったかもしれない。

もちろんこの「奇跡の在りかを√毎に極端に問う」テイストも悪くはないけど、先述したようにその2つのグループが(うまく)接続していないので総合的に見るとちぐはぐな感じを覚えてしまうのである。(それでも、それはそれで悪くはないのだけどね)

全体的な満足度は★★★(3.9)で、雪那√は★★★★(4.0)。

以下雑感。

 

 

過去のディティール

ゆきうたはどうも過去のディティールを与えないというか、表現しないまま「彼と彼女は関わりがあった」という描き方が多い。

雪那しかり。菜乃ちゃんしかり。あんまり過去エピソードを挟まないで、もうすでに「そういうことだ」という結論をぽんと置かれる感じだ。

下手すると文句が出そうな所だが、これ物語の描き方がいいのか、全く気にならない。

 

 

奇跡のディティール

奇跡については「昔々の恋人がね・・・」とディティールを与える。なんというかファンタジーの要素を「論理的な説明」を加え始めるとどんどん科学的になってSF染みたことになるのだなあと理解した。

本作はそこまでいってはいないけど、モミの木伝説にあのようにディティールを与えるかは賛否両論な気がする。単純に弘美さんの√が(私には)魅力的じゃなかったからそう思ってしまっただけかもしれないが。

 

 

秋臣がお兄ちゃんしてる所、好き

 

 こんなお兄ちゃん、中々いないからね……。菜乃ちゃん本当幸せものだよこのやろー!

 

菜乃「…お兄ちゃんって、いっつもわたしにチャンネル譲ってくれるよね…。このこと友達に言うと、みんな変だっていうよ?」


――ゆきうた

 

千歳「ん? なにこれ? 預金通帳…?」

秋臣「菜乃の名義で、少しずつ貯金していたんだ…アイツが結婚したりするときのためにさ」

千歳「いいの?」

秋臣「うん…少ないけど…何かに使ってよ」

――ゆきうた

 

BADENDまで秋臣お兄ちゃんしてて、なんか泣けてしまう。いつも妹の幸せを願ってるとか……いい兄だなあ……と。

 

菜乃「‥もしかしてわたし‥ウザい‥?」

 

――ゆきうた/菜乃√

 

菜乃「知らない人だけど‥わたし、結構お兄ちゃんに我がまま言うし‥いっつもベタベタつきまとううし‥もしかして‥ウザいのかなって‥そう思って‥」

 

――ゆきうた/菜乃√

 

秋臣「よし! じゃあ、茶でも飲みに行くぞ!」

菜乃「う、うん! 行くっ!」

秋臣「うむ、ではアホっ子の貴様の為に、俺様から手を繋いでやろう」

菜乃「いいの!?」

 

――ゆきうた/菜乃√

自分がうざい可能性に思い当たり落ち込む妹に、普段しない「手をつなぐ」(=こうすれば菜乃喜ぶ)ことを提案する秋臣最高です。菜乃の喜びが伝わってくる……。

 

菜乃「そんで、その子のお母さんに、ビリビリになった教科書を突きつけて」

菜乃「「こんなことを平気でする子は恐いから、俺の妹に近づけないでくれ」ってゆったんだって」

菜乃「イジメについては文句は言わない、苛められる菜乃にも問題はある‥

菜乃「だけど、こんな真似を平気でする子が、妹と同じクラスにいるって思っただけでゾッとするって‥」

菜乃「わたし、もう‥ビックリしちゃって‥ただボーっとしてたら、お兄ちゃんに急にほぺた思いっきりウギューって引っぱられて‥」

菜乃「オマエは本当に大馬鹿だな、自分が苛められていることに、半年も気がつかなかったのか? って‥」

菜乃「俺、バカだから、オマエが言ってくれなきゃ、気付かねぇだろ‥って‥」

菜乃「ニコニコ笑いながらそんなんゆわれて‥わたし‥気がついたらボロボロ涙が出て‥止まらなくって‥」

 

――ゆきうた

 うるうる。

 

 

菜乃「もちっとオッパイ育てて出直して来い」

菜乃「うー‥オッパイはダメかも知んないけど、下はちゃんと女の子だもん、肉付き良いもんプニプニだもん」

秋臣「ただのデブだ」

菜乃「デブ違うもん! プニ系だもん!」

――ゆきうた

 笑ってしまったw

 

 

BADENDの直結

 

ちょっと選択肢を誤ると、一瞬でBADに直行してしまう。

雪那は転校し、摩尋は姿を見せなくなり、菜乃は元母のところに。弘美も転属。たった一日を境に秋臣と縁があった人々は離れていくのは――これ全くどういう因果関係があるのか分からないのだけど、――諸行無常な感じがでてお好み。

 

何かが、間違っている…?


いや…何を間違えたんだ…?


こんなはずじゃなかった。


今更、そう思ったところで、俺には何も出来ない


結局俺は、一人で生きているつもりで、それでも一人では生きて行けない…。


自分で思っているより、ずっと甘えた生き方をしていたのかもしれない。


自分のことで手一杯の俺が、他人に何かをしてあげることなんて無理だったと言うことか。

 

――秋臣/ゆきうたBADEND

 

 

 

菜乃ちゃんは家にいちゃだめ!

 

菜乃以外の√にいくと、すぐさま彼女は戦力外通告され退場してしまう。

菜乃「そいじゃお兄ちゃん、私、今日から学校休んじゃうけど、お兄ちゃんはちゃんと学校行くんだよ?」

 

――ゆきうた 

 ジーズ……。

 基本的にゆきうたはヒロイン同士の絡み、ほんと少ないのよね……。

 

 

一対一の世界

ゆきうた』は各キャラクターの絡みがほとんど無い。

90%、九割九分、秋臣-ヒロインの一対一の世界観で進んでいくこのあまりの箱庭感は、まるで主観が全てを成り立たせるような錯覚さえ呼び起こす。

ここまでの閉鎖感を出す作品って、中々無い気がする。

 

 

摩尋のファッション

 

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――ゆきうた

 多くは言いませんがこの服装はないという判断が私の脳内で満場一致だそうです。以上、現場からお伝えしました。

 

 

このポーズは好き

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――ゆきうた

 

このバカっぽい、ほのぼのとしたポーズ好き。見てるとついつい微笑んでしまう。特に淳一と並んで行うときはよいいですよね。

 

 

ちょっとした登場人物にも立ち絵があるゆきうた

 

メタっぽい話題だけど、本作はあまり出番がない人たちにもしっかり立ち絵があるのは「おお」と思ってしまった。

不良三人組、由紀のお父さん、病院の先生、ヤクザ……などなど。

 

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――ゆきうた

 

私は必ずしも「立ち絵があるほうがいい」わけじゃないと思っていて、ないほうが良い時もあるんだよね派。

つまり大事なのは表現方法であって、表現要素ではない。同じ要素を同じ風に見せられても飽きちゃう。同じ要素を違ったふうに見せられれば飽きない。新鮮さを感じることだってある。

重要なのは『異化』なのね。だから「立ち絵があるキャラ」と「立ち絵がないキャラ」の差が大事で、ともすれば立ち絵がない方がキャラクターとして存在感が出るときもある。Rewriteの新聞部の井上さんとかまさに。

なので立ち絵があるからってイコールで良い、とはならない。のだけど、ここまで登場回数が少ないキャラクターにも立ち絵を与えるのは、あんまり見かけない気がした。

 

 

菜乃ちゃんの出番

 

 ちゅーか、菜乃ちゃんめっちゃ出番多いよね。一日の終わりには彼女のショートストーリー(コント?)が挟まるので、どのヒロインよりも接している時間が多い。必然。「一緒にいる」感覚が強くなっていく。素敵。

でも一番好きなのは雪那で(ここまでふっておいてそれですか)

いやあのね;頭の中でサイコロ蹴ってるんですの発言が強烈すぎて、惹かれてしまうしかないんですよ。この奇天烈さ。

 

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――ゆきうた

 

雪那「そのうち頭の中で想像したサイコロを振って歩くようになったんです。頭の中で乱数を発生させている訳ですね」

 ――ゆきうた

 

ここでノックアウトされてしまった私がいる。これ反則。なに頭の中でサイコロ振り続けるって、あまりの意味不明さに萌えてしまった。これも一種のギャップ萌えなのかな。

 

 

 

心に残った言葉

 

秋臣「じゃあ。「現在」が「思い出」に勝てる確立は?」

雪那「ほぼゼロ」

秋臣「うっわぁ‥‥」

雪那「だって、そうじゃありませんか? 現実は見ているうちに、色あせていくものです」

雪那「それに引きかえ、想い出はどんどん美しくなる。勝てる道理がありません」

――ゆきうた/弘美√

 

秋臣「一瞬前まで真面目にルールを守っていた連中が、一人の反逆者を目にした瞬間に「じゃあ俺も」って、それが気に入らない」

秋臣「ルールを守る気がないなら、最初から無視すればいい。一人の時は臆病なくせに、皆がやってるなら俺も、とか…その発想がムカつく」


――摩尋と食堂/ゆきうた

 

雪那「はい、今回お手紙をくれた方の中で…10年経って、それでも私を好きだと言ってくれる人が居たら、そのお気持ちを本物と認めて差し上げます」


秋臣「気の長い話だな」


雪那「…結構、あっという間ですよ? たかが10年…そっと息をひそめている一瞬です…」


雪那「明日は会えるかもしれないって、毎日信じれていれば、それほどつらくもないですよ?」


――ゆきうた

 

雪那「私を、愛していますか…?」

秋臣「うん」

雪那「ちゃんと、言葉にしてください」

秋臣「愛してる」

雪那「だったら、何を躊躇うというのです…?」

秋臣「おれに、このまま一生、オマエを愛して行けと?」

雪那「嫌なのですか?」


――ゆきうた/雪那√

  こういうことを言えちゃうから秋臣のこと好き。雪那のことは好きだけど「そこまで」は言えない。言いたくない。熱いようで醒めてる感じがね。うんうん。