猫箱ただひとつ

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「true tears」 11・12・13話__感想(11058文字)

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TVアニメ true tears 5周年記念CD-BOX

 

言うまでもなく、珠宝の作品でした。

 

 

 

 

乃絵との思い出、彼女の名残

 

 

踊りの稽古は完璧?

んー、まあなんとか
――――

「雷轟丸みたいだった!」
「え?」
「凛々しくて大きくて光っていて」 
――――

眞一郎くんの晴れ姿
え……うん
おじさんも昔、花型やってたっておばさんが
……うん
なんだ知ってたんだ

――――

「私一番前で眞一郎を見るわね」
――――


――――比呂美、眞一郎、(乃絵)

 

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比呂美と会話をしているさなか、ふと乃絵との会話を思い出してしまう眞一郎。

たぶんさ、眞一郎にとって、比呂美は「好き」の対象だけれど、乃絵は「大事」な人のように思います。

この「好き」と「大事」な両者に明確な順位付けなんてものはなくて、どっちも大切なんだろうと。比呂美が好きだとしても、乃絵のこともある意味好きといってもいいし、どちらとも大切なのだから、一つとして選ぶことに躊躇が出てしまうのは当然のことのように思えます。

全部大事なものだから、全部手放したくないのですね

――――ef


乃絵が目の前からいなくなっても、彼女と積み重ねてきた思い出はそう簡単に消えるわけじゃないし、あらゆる物にその名残がある……だから……うんだから……。

 

 

やり直しと

「元気のいい女友だち欲しくない?」

「っ……」
「その子と友だちになれば、もれなくコーラと今川焼きがついてくるけど」
「おれ」
「もう一度友だちから、やってみよ」

「最初からセーターは無理だったんだよ。もっと簡単なやつからはじめなきゃダメだったんだよ私達」

(扉が開く音)

「でも、いつかセーターを編んで貰えるように俺頑張るよ」
「私も、それまでに編み物の腕磨いとく」

――――愛子、三代吉

 

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愛ちゃんのこの「三代吉との繋がりをやり直す」ところが、いいなと感じる。

失敗して失敗して転んでも、また立って歩けるんだと、一度潰えてしまったものでも、また新たに結び直すことが可能なのかもしれないと思わせてくれますから。


一見、愛っちゃんは眞一郎との関係が壊れたから、三代吉との縁を戻そうとしたようには見えなくもないですが、やっぱり全然違うよねと。

愛ちゃんにとっては眞一郎は「一番好き」な人だったとしても、三代吉も彼女にとって「好き」な人。

眞一郎にキスを迫り好意を伝えるも拒絶。三代吉との恋人関係をちぎり、いろいろなものを一旦真っさらに。「眞一郎から卒業する」という言葉は、そういったリセットの意味を強く感じます。

すべて、すべての重たい関係をいったん終わらせることで、自分は本当は何がしたかったのか? なにをもって満足できるのか? そういうことが分かってくると思います。

そしてその上で、「三代吉とまた関係を結び直す」っていうのが愛ちゃんのしたかったこと、満足できる結末なんだとしたら、素敵だなって。


いろいろなことがあって、いろいろなものが終わってしまっても、「やり直せる」。このことが。

 

 

 

雷轟丸とじべたの物語

 

次の日は雨でした。
横でじべたがしきりにばたばたと羽を羽ばたかせてましたが、雷轟丸は悠然としていました。

じべたの影は丘の上を離れます。そして、失速したじべたは、急速に地面へと落ちていったのです。その一部始終を雷轟丸は見ました。

ニワトリとしての最初の飛翔。そして、その失敗による栄光はジベタのものでした。雷轟丸はただ臆病なニワトリ達の中の、ただの1羽にしかすぎませんでした。

終わり

(こんなBADEND誰が読むんだよ 乃絵が見たらなんて言うか)

――――眞一郎


眞一郎が『雷轟丸とじべたの物語』という絵本を描き上げたのは、麦端祭りの前日の夜だった。(もしくは0時を過ぎた当日だろうか)

眞一郎は自分を雷轟丸に見立てていているなら、「ただ臆病なニワトリ達の中の、ただの1羽にしかすぎませんでした」というのは彼自身の胸中なんだろう。

自分はどこにでもいて交換可能なalternative。決して乃絵がいうところの「飛べる」人間なんかじゃなくて、むしろ「飛べない」者で「飛んでいく」者をただただ仰ぎ見るそれだけの存在なんじゃないかと、そう思っているように見える。

雷轟丸はじべたの飛翔をその目で見た。飛べないと思っていた存在が、じつは飛べたのだ。自分よりも気高く凛々しくすべてを決めて、飛んだのだ。

乃絵とじべたと飛翔

 

「やっぱり私、お前の気持ちは、分からないわ」

(じべたに赤い実を放る)

「この地上には苦しいことが辛いことがたくさんあるわ。 飛びたい、全てから逃れて、自由に羽ばたきたい――――そう願ったほうがきっと楽なのよじべた。

じべた、私が飛ばせてあげる」

――――乃絵

 

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乃絵が「じべたの気持ち」っていうのは、「飛ぶことを選ばないで、飛ばないことを選んだ」っということなんだと思う。

もしくは、地べたに這いつくばって生きる生き方そのもの。

でも、乃絵はその考え方が理解できない。なぜなら彼女は、地上から逃れて、全てのことから自由に羽ばたきたいと思っているから。

この「逃れて」「自由に羽ばたく」っていうのは、どうも「死」をイメージしてしまう。……現に雷轟丸は、"死んで" ようやく飛ぶことができたからだ。乃絵風にいうなら「地上にあるすべての悲しい事から、逃れて自由に羽ばたき飛ぶことができた」。


EDで、雷轟丸、じべた、乃絵、比呂美、愛子、眞一郎……といったぐあいに様々な人間たちが一方向に向かって歩く。その終わり際、雷轟丸は天使の輪っかを頭にぶらさげ、乃絵や眞一郎が歩いている方向とは逆向きに飛行する。

乃絵がいう「地上から羽ばたきたい」と、雷轟丸が死んでから飛ぶことができた。というこの2点。この2点はもしかして関係しているのかもしれない。

乃絵は「飛ぶ」ことを、全面的な逃げといったネガティブなものだけに捉えているわではない、とは思う。けれどそういう一面もあるんじゃないか?

+++


あれ、そういえば乃絵は、じべたに「赤い実」をやるのってこれがはじめてだっけ? どうだったっけ……。

もしはじめてだとするなら、それは「乃絵がじべたのことを認めた」ことに繋がる。天空の食事は、「飛べる者」のみがついばめるものだったのだから。

 

 

 

あぶらむし

 

 

しんいちろ~うの足の裏にもアブラムシ~♪
しんいちろ~うの帽子の中にもアブラムシ~♪
しんいちろ~うのおしりの底にアブラムシ~♪

しんいちろ~うの…………。

…しんいちろ~うの心の底に、湯浅比呂美。

――――乃絵

 

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乃絵はたびたび「あぶらむし」の歌を歌う。でもあぶらむしってどういうことなんだろう。小さく弱く集団で行動し、爆発的な生殖能力を持つアブラムシ。

そういった意味で使われいるわけじゃないなだろうね。

乃絵の歌では、「アブラムシ」はどこにでもいるみたいだ。足の裏にも頭の上にも帽子の中にもおしりの底にだって。

どこにでもいる存在?……。なんだろう。

 

 

 

 

tt 12話「何も見てない私の瞳から…」

 

 

 

 

 

じべたの非飛翔

 

 

 

じべたを両手に抱え、飛翔することを望む乃絵。
けれど、じべたは一向に飛ばない。

そんなじべたを見て、

 

「飛びなさい

飛びなさい、ほら

やっぱり、
やっぱり駄目なの

自分で決めなきゃ楽しくないの
嬉しくないの
笑えないのね」



「やっぱり自分で決めなきゃ、泣けないのね」

――――乃絵

 

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と乃絵は言う。

これはじべたに向けた言葉ではなく、全て自身に向かって言ったものだと思う。

そしてこっからの乃絵の言葉は、正直なところ全然分からない。「自分で決めなきゃ」というのは、何に対しての「決め」なんだろう……。

乃絵は自分である何かを「決め」ないと、楽しくないし、嬉しくないし、笑えない。そして泣けないとも言う。

眞一郎のことについてなのか? とも思ったが、どうも違う気がする。乃絵はもうすでに「眞一郎に別れの言葉を告げ」たし、彼女の中では決めた後のことのように思える。じゃあなんだ?

もしかして「飛ぶか/飛ばないか」っていうことか?!

「飛べないあなたを軽蔑してたわ、飛べない私と同じだと思ったから。でも違った。
あなたは飛ばないことを選んでたの。胸を張ってまっすぐ前を向いて、それは飛ぶことと同じ」

――――乃絵

 

それなら、後のこの乃絵の言葉が繋がってくる。じべたは飛ばないことを「決めた」。乃絵は自分を飛べないと評価しているけど、それは「飛ばないことを決めた」わけじゃない。

乃絵のなかでは「飛ぶこと」「飛ばないこと」どちらかを、「決断」するというのがとても大事なことなんだと思う。(眞一郎も「決断」することに対して何度も繰り返している)←もしかしたらいろいろと符号するところかもしれない。

 

 

眞一郎とじべた

 

(あいつは何を言ってたんだ
じべたと自分を重ねあわせてたのは俺だ。じべたの凄さに気付かなかったのは俺だ。全てのことに避けてきたのは、俺だ)

――――眞一郎

 

眞一郎は、「飛べないことを知るのが怖い」ことを雷轟丸と重ねあわせていた。けれど彼はいう「じべたと自分を重ねあわせていたのは俺だ」「じべたの凄さに気づかなかったのは俺だ」と。

眞一郎がじべたに重ねあわせていたのは、「飛べない存在」ということ。そしてじべたの凄さというのは「飛べないことを決断した存在」だということ。

だから彼は、最後に、じべたに栄光という称号を与えてあげたんじゃないかと思う。

そして、眞一郎はこのあと押入れの中に入る。

 

(じべたは飛ばないことを選択した。俺は何一つ自分で選んじゃいない。踊りだって絵本だって乃絵だって比呂美だって)

(踊りたくなかったのは、上手く踊れなかったからじゃありません。父親と比べられたくなかったからです。絵本が描けないのは気分が乗らないからじゃありません。自分の限界を知るのが怖かったからです)

――――眞一郎


自分でなにひとつ決めていないと分かっているからこそ、じべたの凄さに気づけたのかもしれない。けど……うん……。雷轟丸がじべたを墜落を見てもなお、飛ばないままで幕を閉じてしまったのは「自分の限界を知るのが怖い=飛べないと分かってしまうのが怖い」ということなんだと。

 

眞一郎は押入れから出てき、こう呟きはじめる。

「おぎゃー」

「おぎゃー、おぎゃー、おぎゃー、おぎゃー、おぎゃー」

――――眞一郎

 

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すんごい象徴的な場面だというのに、これを私は忘れていた。え、うそ、なんで忘れていたんだろう……。

押入れを「胎内」とするなら、押入れから出る行為「生まれ落ちる」という意味だろう。

「おぎゃー」

その呟きは、今までの自分とは違う。そんな意味にも聞き取れる。


眞一郎が、新たに生まれた後、以下の映像が流れる。

+++
比呂美キス、乃絵じべたを飛ばせようと、愛ちゃんキス
じべた海に向かって飛んだ。

+++


比呂美とキスしたこと、乃絵がじべたを無理やり飛ばせようとしたこと、愛ちゃんが無理やりキスを迫ってきたところ。

そして、じべたが海の地平線にむかって、たどたどしくも飛翔した姿。

でも実際のじべたは、ニワトリ小屋の中にいる。これは何を示しているんだろうか?

眞一郎は新しく生まれた、つまり今までなにも決めてこなかったという道ではなく「全部ちゃんとする」道を選ぼうということの決意だと思う。
ゆえに、じべたは弱々しく、たどたどしくも羽根を羽ばたかせ飛んでいった。あれは眞一郎が「飛ぶ者(=決断する者)」となった示唆なんじゃないだろうか。

比呂美、乃絵(ではなくじべた?)、愛ちゃんは、1人である何かを決めた人たち。だから彼女たち(乃絵はまだですが)との、記憶がぱらぱらと蘇ったんじゃないだろうか?

 

 

 

おかえり、ただいま、ありがとう

 

「おかえりー、乃絵」
「ただいま」
「ほら手洗って、もうすぐできるからな。腹減っただろ。一晩中、……おいそんなにくっつくなよ飯が」

「ありがと。
   ありがと
   ありがと」

――――兄、乃絵

 

10話の最後、乃絵は暗い部屋の中、おばあちゃんの写真をじっと見つめていた。

そして12話、彼女は、じべたがいるニワトリ小屋にいた。毛布を身体にくるんで、じべたとなにかしら話をして、じべたを飛ばせようと思ったものの、じべたの凄さに気づいて、自分の砥部なさ加減に気づいて、家に帰った。

家で待っていたのは、大好きなお兄ちゃん。夜遅くに帰ってきたにも関わらず、怒りもしないし、むしろこんなのなんともないよという声で「おかえり」と言ってくれる。

暖かいご飯を作ってくれて、自分を気にかけてくれる大切な家族。寒く心も身体も冷え冷えとしてしまう雪空の中から、こんな温かい家に帰ってこれたこと、維持し続けてくれる人がいることに思わず「ありがとう」と感謝の言葉を口に出してしまうのは分かる……うんわかるよ……。

 

 

 

何処が見やすい?

 

 

「どこが見やすいかなあ」
「ぇ」

「メインの奉納踊。眞一郎くんをいちばん近いところで見たいなって、やっぱり社務所のあたりかしら」

―――お祭りの時は、私いちばん前で眞一郎を見るわね


「そうだな……」
「はいできた」
「ありがと」

「すごいごった返しているし、無理して見ることないよ」

――――比呂美、眞一郎

 

「全部ちゃんとする」と決意しても、そう簡単にハッキリと行動に出せるものじゃないのかもしれない。眞一郎が比呂美と一緒にいることを「決めた」のなら、こんな遠ざけるような言い方はしない。

あるいは、比呂美に知られることなく、乃絵と自分の中にある乃絵との気持ちに決着をつけたいのかもしれないと、そう思った。

 

自分で決めたこと

 

お祭り、見に行かない
ちゃんと自分で決めたこと
(抱いているのはじべたのティッシュケース)

――――乃絵

 

あんなにも楽しみにしていたお祭りを、乃絵は見に行かないと言う。家にこもり、眞一郎が作ってくれたニワトリの形をしたティッシュケースをぎゅっと抱きしめながら。

乃絵は自分から眞一郎に別れを切り出した。その理由がどうあれ、彼女は眞一郎の傍にいないことを自分で決めた、……でも、やっぱり……でも……っていう気持ちが渦巻いているんだと思う。

うるさい!眞一郎~~っ!!
眞一郎のおしりの底にもあぶらむし~~!

――――乃絵

 

 

「お祭りを見に行かない」と呟くも、最後には眞一郎の踊りを見に行く乃絵。もし乃絵が「本当の本当の本当に眞一郎と別れる」と自分の中で決めてしまえば、彼を全て遠ざけあたかも拒絶の意志を示しているような態度をとる……のかなとも思う。

この「別れる」というの恋愛関係での意味ではなく、人として、人間関係として縁を断ち切るという意味である。

 

 

 

 

あなたの涙、、

 

「眞一郎くん言ってくれたの、全部、全部ちゃんとするからって」

「私はずっと眞一郎くんのことが好きだった、きっと眞一郎くんも私のこと……ごめんなさい。
自分勝手なこと言っているのわかってる。でも、やっと私達わかりあえたの。やっと私達素直になれたの。もう、ごめんなさいそっとしておいて私達……」


「綺麗よ。あなたの涙」

――――比呂美、乃絵

  

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乃絵は以前、眞一郎の涙をヘボ涙と言い表した。彼女にとって「涙」とは、とっても思いれ深いものである。

私には使命があるの。涙を取り戻さなくちゃいけないのそのためには選ばれし者の涙が必要なの


乃絵はむかし、おばあちゃんから涙を持って行ってしまわれた。そして今は、涙を取り戻すために、選ばれし者の涙が必要だとのこと。それは「飛べる」といわれる、雷轟丸や眞一郎、そしてじべたもその類だろう。

そろそろ整理してもいいのかもしれない。いや…ちょっと保留…。

「いつしか私も泣きたいって思うようになったの。その為には、誰かから涙を貰わなくちゃ。でも」

「――――誰でもってわけじゃない」

「そう、私が大切だと思える選ばれし者の涙でなくちゃ。気高く、いつも上を見上げて、おばあちゃんにいる天空に近い存在の涙でなくちゃ」

 

 

 

こういうキス

俺のしたいキスはたぶん、こういうキスだったんだ。
いろんなこと勝手に決めたけど、お前の傍にいることがもう辛いんだ。

(一筋の涙)

――――兄

 

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気づかないこと

「眞一郎の心の底に……私の心の底に………………お兄ちゃんの気持ちにも気づかない。湯浅比呂美の気持ちにも気づかない。眞一郎の本当の気持ちにも気づかない」

「何も見てない私の瞳から、ほんとうに涙なんて流れるのかしら」

――――乃絵

 

 

 

眞一郎が乃絵をみていること、踊りのときの合図

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気がつくと雷轟丸は赤い実にさそわれて、あの丘の上に立っていました。飛びたい。あの赤い実を食べたせいでしょうか。それともこの白い雪のせいでしょうか。それは分かりません。

でも雷轟丸はこころの底から、そう思ったのです。

(そうだ俺が絵本を描こうと思ったのは、あの目が、俺が、飛べるって信じてくれていたから君が)

空を飛びたい 誰の為でなく 栄光や記録の為でなく 雷轟丸は飛び立ちました。

―――眞一郎

 

比呂美は乃絵を見続ける。踊りが終わる。乃絵いなくなる。乃絵をさがす眞一郎。

眞一郎は踊っているとき、「石動乃絵」のことしか考えていなかったと思う。乃絵が自分にとってなにをしてくれたか、何を思ってくれていたか。背中を押し、あなたは飛べると奮い立たせてくれていたことを。

眞一郎の目には、乃絵しか写っていなかった。そして、たぶんだけどね、乃絵にだけわかる「合図」を送ったんだと思う。以前、乃絵はこう言っていた、眞一郎が私を見つけたらなにか合図をして、と。

しかし、そんな映像はどこにもない。でも映像がないから、「眞一郎が合図をしなかった」という理由にはならないと思う。なぜそう考えるのか?

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1つに、あのとき、眞一郎が踊っているところでは、常に「湯浅比呂美の視点」で描かれていた。比呂美が眞一郎の踊りを見れば、彼の踊っている映像が流れ、比呂美が乃絵を見れば、乃絵だけが映る。

比呂美が乃絵を見ていたその空白の時間、眞一郎が「どんな踊り」をしていたのか映っていない。比呂美には分からなくて、眞一郎と乃絵だけがなにかしらの疎通をしていたと考えられる、と私は思うんだよ。

2つには、眞一郎の踊りをみたあとの、「石動乃絵の行動」だ。彼女は、眞一郎の踊りが終わったすぐさま、学校に行き、天空の赤い実がなっている高い木に登る。登って、そこから"飛翔"した。

そのあと病院のベッドで乃絵は、「眞一郎の踊りに感化された」と言っている。ただたんに踊りに魅了され、"飛翔"しようと思ったのかもしれない。でも、踊りの最中、ずっーと乃絵のことを考えて、そして観客席に乃絵がいることを知っていた眞一郎が、「合図」を送らなかった、とはどうも思いにくい。

むしろ、乃絵だけにわかる合図を送って、それを受け取った乃絵が「私も飛べるかな」と奮い立ったと見るほうが自然かなと思う。

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空からの眺めはどうだった

空から見下ろしたら、私にも見えるようになる?

――――乃絵

 

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高い木から飛び立つ乃絵。ニワトリを連想させる飛翔

 

乃絵のこの問いかけるような言葉は、眞一郎にむけてのものなんだろうか。
眞一郎が飛んだ(=踊りを成功させた)ことで、飛んだ景色は、空からの眺めはどうだった?と。

―――空から見下ろしたら、私にも見えるようになる?

私は乃絵は「飛べる者」だと思っていたんだけど、どうも彼女的には違うらしい。乃絵は自分自身のことを「飛べない」といい、「じべた」と同じだという。

飛べないからこそ、じべたみたく飛べないままでい続けるのか、それとも眞一郎のように飛ぼうとするかを決めなくてはならないと、そう言う。

決めないと楽しくないし嬉しくないし、泣けないんだとも。

となると乃絵は、「決断」したんだ。自分で決めたんだ。「飛ぶ」ことを。その決意のしるしが、高い木の上から飛んだことだったんだと思う

 

(絵本、描き上げたんだ)
(お前に見て欲しくて、感想欲しくてさ)

 

 

 

乃絵が泣けない理由

「あいつが泣けないのはどうしてだ?」
「自己…暗示……」
「それだけか」
「…………」
「帰ってくれ。俺はお前を許せないんだ」

 

乃絵が泣けない理由って、自己暗示以外にもある、のだろうか?……。
兄ちゃんは、それが眞一郎だとも言わんばかりな態度だけだけどどうなんだろう。んー……よくわからないぞ。

乃絵が泣けくなった理由は、おばあちゃんに涙を持って行かれたから。これは間違いない。そして乃絵は、大切な人の涙を集めなければいけない。そうすることで、涙が出るようになると本人はいう。

大切な人……か。
眞一郎は乃絵にとって大切な人。大事な存在。……。眞一郎の行動や決意によって、乃絵が再び「泣けるかどうか」が関わってくると、お兄ちゃんはいいたいのか?……。それなら理解できると思う。

 

 

兄妹の言葉の前提

 「ごめんなさい」

「眞一郎の踊り見てたら、私にも出来るかなって」

「またお兄ちゃんに心配かけて……傷つけた」

「お前は何も悪くない。俺が勝手にやったことだ。お前は何も知らなかった」

「何も知らないことって悪いこと。私はなにも知らないから傷つけてた。知ってれば、お兄ちゃんを傷つけずに済んだ」

―――乃絵、兄

 乃絵と兄ちゃんが交わす言葉に「言葉を飛ばしている」部分がみられる。なにを話している?

乃絵は、木から落ちて骨折。おそらく救急車で病院に行き、治療を受け、ベッドで休んでいる。そして部屋に入ってきた兄に、ごめんなさいと謝った。

「またお兄ちゃんに心配かけて……傷つけた」

ここまでは分かる。自分のことで心配をかけさせるのは心苦しいものね。

「お前は何も悪くない。俺が勝手にやったことだ。お前は何も知らなかった」

んー……。なんだこれは。お前華にも悪くはない、←これは乃絵が飛んだことに対してじゃないんだろうね。乃絵がその前にいった「傷つけて」の部分に対する言葉か。

つまり、「お兄ちゃんが乃絵のことを好きだった。そのことを乃絵は忍びなく思っている。兄はそれはお前のせいではないという。俺が勝手にやったことだし、お前はなにも知らないかった、だからあの件は、乃絵が悪いだななてことはない」

ということだろうか。すると最後の乃絵の言葉が、繋がると思う。

「何も知らないことって悪いこと。私はなにも知らないから傷つけてた。知ってれば、お兄ちゃんを傷つけずに済んだ」

お兄ちゃんの気持ちを知らなかったことについて、自分を責めているんだと。

 

 

嘘と切り返すこと

「いいよ」
「いいって……な、なにがだよ……」

「どうしたんだよお前少し変だぞ」 
「嫌いにならないで 」
「なってないよ! 」
「うそ 」

「……比呂美」 
「ごめんなさい。私おかしい、帰って。ごめん」

(私の涙が綺麗だなんて、嘘。どんどん、どんどん、嫌な子になってく)

―――比呂美、眞一郎

 

比呂美は相手の言葉を「嘘」と切り返すのが、なかばくせになっているような気がする。……いや癖というか、いろいろなことを信じきれなくなっている状態が多いというだけかもしれないけど。

 

 

バスケナイシュー、見えてますよ

 

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一人でバスケの練習をする比呂美。何か焦っているようにも見えるし、淡々とこなしているだけのようにも見える。バスケの練習……?……。

 

 

親父ってさ、どういう時に泣く?
………心が震えたとき……かな

 

 

ふむ。

 

みっともないなって
こんな自分、嫌なの。だから
ううん
ずっとあなたが好きだったから諦めたりしたくないから
その代わり邪魔するのも嫌だから、ちゃんと。ちゃんと向き合ってほしいの。私とも。石動さんとも。
向き合って、その上で眞一郎くんが出した答えなら、私。ちゃんと受け入れる。

あのさ、比呂美はかっこ悪くなんてない。かっこ良いよ。
スポーツマンですから

 

 

 

見て欲しい
見ない
乃絵がいたから描けたんだ
気のせいよ。眞一郎は私がいなくても大丈夫。私がいなくてもきっと描けた。

だったら、言い方変える。お前に見てもらいたくて描いたんだ。

見ない
見てもらえないなら捨てるかな
そうしたいならそうすれば。
捨てに行く
いちいち確認するの

どこに捨てに行くの
じべたが飛ばないことを選んだ海に

見てたの
見てた

 

 

一枚一枚折って紙飛行機にして、飛ばす眞一郎
ベアと魔法 確率とリスク
乃絵、地面に落ちている絵をひろおうとする
天空を目指していたものが、地上

ストレッチ開脚180度出来た。比呂美

 

どうだ
最後の一枚がない
いいの
飛ぶことの出来た雷轟丸が、そのあとどうなったのか。自分で考えてみる

俺さ
うん
俺。比呂美が好きだ。
わかってるわ
でも、絵本が描けたのは乃絵がいたからだ。踊ることができたのは乃絵がいたから。

眞一郎は私が飛べるって
信じてる

俺は……俺は……比呂美が好きだ。でもお前を見ていると心が震える。

眞一郎が私が飛べるって信じてくれる。それが私の翼。

病院まで送るよ
ううん

そんな脚だって心配だし
だから、信じていて欲しいの
大変だけど、まだちょっと痛むけど、私はまだ飛べないから。歩いてく。

~♪あぶらむし

眞一郎の靴の底にもあぶらむし
眞一郎の心の底にも湯浅比呂美っ!!
すぐそこのおなべの底にあぶらむし
眞一郎の……くつ……のそ……こにもあぶらむしっ……

 

歩く歩く乃絵

 

 

さっきね、足開けたの180度。あんなのはじめて。
絵本石動さんに見てもらえて
うん
私も見たかったなあ

付きあおう
いや
付きあおう
いや
お前はいつでも見てもらえる
これからはずっと隣にいるんだし
ずっと、隣にって、なにそれプロポーズみたい
まだ付き合うのおっけしたわけでもないのに

(君の涙を僕は拭いたいと思う。
今の僕にはそれが出来る )

 

あ、雪

 

 

あ、おはようー
おはようー乃絵
おはよう!

 

人は本当に大切な人の涙を貰ってあげることができる。うん

きっと、おばあちゃんはこう言いたかったんだ
本当に大切な人を想うと、涙は勝手にあふれてくる。
その本当の涙を知ることができることは、

 


もう開店時間すぎてっぞ
三代吉! たまにそっちが早かったからって!
入ろ

 

 

じべた 微笑む乃絵 「のえがすきだ」 がばらばら。

 

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