猫箱ただひとつ

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皇 天音 感想(11353文字)

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「……何だかね、そんなのっていいなって、思うんだ……

私も……そんなだったらよかったな……」

 

 

 

 

 

 

昔にこだわるっていうこと

 

「いつまでも昔のことにこだわってるのって、やっぱりよくないのかな……」

――天音

 

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過去を振り返ることは、いけないとか。それじゃ前に進めないよとか、そういう言葉は多いけれど、別にいいんじゃないのかなとも思う。

過去にこわだって、昔を見つめ続けることも、愛着があるのなら、それはそれでいいんじゃないかなってぬ。

 

 

鳳繚乱学園は優秀な人材が集まる

 

「そういえばここって、優秀なトコなんだよな。稲葉はよく中途入学してくる気になったな」

「えっと、それは……しょ、しょく……食堂が……なんて……」

――晶、結衣

 

あ、そういえばこの学園はそうだったのだ。「優秀」で「特別」な人間が入ることを許される学園だったのだ。

晶は特別な遺伝子という貴重なサンプルとして、ならば、結衣もまた特別な遺伝子の持ち主としてここに来たんだろうか?

それとも他になにか?

 

 

 

言わないけどさ

 

「私がここでピアノを弾いてたの、誰にも黙ってて!」

「別に、言わないけど」

「良かった……。ありがとう」

「うん」

「……理由とか、聞かないんだね」
「聞いて教えてくれるの?」
「…………言わないけどさ」

――天音、晶

 

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この「教えてくれるの?」「言わないけどさ」のやりとりが、とーっても好き。言わないけどさって!なにそれ!//////

こういう会話とてつもなくビビッとくるんですよね。なんでだろうぬるぬる。

 

 

 

知らなくても分かること

 

やっぱり、うまいなあ。

もしも俺がもうちょっとピアノを事を知っていたら、もっと上手にこの音色のことを褒められたかな

――晶

 

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天音のピアノの音色を聞いて、晶は「うまい」と思います。

でこの「音楽的知識がなくても、うまいと分かる」、これとても大事なことなんですよね。

知識があったり経験したから「分かる」ことじゃなくて、直感的に肌感覚として知らなくても「分かる」こと。こういう感性を基板とした評価って軽視されがちですけど、とーっても大事だと思います。


ほらアニメとかでも、「これは◯◯のオマージュで、☓☓を前提とした上で組まれているから素晴らしいんだ!」という、

「知っているから(=知識があるから)面白い」より

「知らなくても(=無知)面白い」と思えるほうが素晴らしいですよ。

だって、知らなくても! 面白いんですよ?! すごくないですか!!

 

 

 

 

 

素直な気持ちを伝えるっていうこと

 

「葛木くん、あなたに聞きたいことがあります」

「どうして天音とお付き合いしようと思ったの? 天音の、どこが好きになったのか聞かせてもらえる?」+++

「何ていうのかな、いつも周りの事で一生懸命で、面倒見がよくって、ちょっと口がきついとこもあるけど、人のこといつも考えてて」

「いい子だなあ、ってずっと思ってました」

「…………っ!」

「でも、ときどき普通の女の子っぽい振る舞うこともあって、そういう所が、すごく可愛いと気づいて

それで、好きになりました」

「……~~っ」

――ちはや、天音、晶

 

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天音の恋人のフリをする晶。そんな彼女たちに、ちはや先生は「どこが好きなの?」と問うてくる。

こういう時の晶の判断能力は正しいよねと。嘘やブラフを通せるほどの力が無い場合は、こういう大事な場面では、素直でストレートな気持ちを綴ったほうが場は好転しやすいので。

そして、別に恋人でもなんでもない人に「好き」とか「可愛い」とかいうのは、照れ度がやばい。にやにや(照

 

逆に

「だいたい葛木くんがモテモテっていう現象が、ありえないでしょ」

「え? あ……そうかな?」
「うわ、ちょっと今なにげにヒドイ事言ってないか?」

「私とのことも、お芝居なんだからね」

――天音、結衣、晶

 

天音はほんと損してるよ……、これを晶が真に受けたら大変なことになるのに、素直さは人との関係を円滑にし、齟齬を削ぐことができるので、あまり偽らないほうがいいよね、

といいつつ、あまりにもあっぴろげだと利用されたり、集団排斥にあうので難しいところだけど、ここではそんな構えなくてもと。

+++

あれちょっとまてよ。こういったある程度の信頼している人の前で、自分の気持ちを偽ってしまうのって、一体どんな要因で・だ?

恥ずかしい、というより、「自分の本当の気持ちを知られたくない」という要素が強い気がする。なぜだ?いや愚問だった。そうか内蔵を晒すことに繋がるもんね……にゃるほど……。

 

 

 

 

 

くるりの優先順位について

 

「いいの、話を合わせてくれるだけで充分よ」

「はい。わかりました」

くるりも! 余計な事は言わないでね」

「……了解」

一応、九条の方も納得してくれたみたいだ。どこまで納得してくれてるのかはわからないけど……。

――天音、桜子、くるり

 

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くるりが、ちはや先生に対して恩義を感じ、めちゃめちゃ尊敬している。そんなくるりが、ちはや先生を「裏切る」ような行為を、天音は強いる。

つまり、ちはや先生に葛木晶は天音の恋人じゃない。と言えなくなるわけだ。

くるり的には、それは「嘘をつく」という行為に至ってしまうんじゃないか?と思えるほどに、彼女はちはや先生ラブだ。

け・れ・ど。

くるりは、そんな天音のお願い(=口裏を合わせて)を不承不承ながら受諾する。このとき「ほう」と私は思った。

くるりは「……嫌……そんなのちはや先生を騙しているみたい」と言うかもしれないと思っていたからだ。となると彼女的には、極端な優先順位、振り切れた価値観を持っていないということになる。…………ふむふむー。

いくらちはや先生が好きだとしても、友だちである天音の「これくらい」のお願いならば、ちはや先生の意に沿わないことでも、彼女は実行するんだなと。これは結構面白い事実な気がする。

 

 

晶と結衣を見ているとお腹減る

 

「お誕生日会って言ったら、なんとなく洋風のイメージだけど。ハンバーグとか……うーんでもせっかく作るなら変わり種の方がいいのかな」

「ぱえりあ~」

「ああ、パエリアいいな! パエリア作ろうか!」

「わぁーい、ぱえりあー。えび入れようえび~!かにいれようか~!」

――晶、結衣

 

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ご飯を美味しく食べられるって、もうどんだけ幸福なんだろ! そう思わずにはいられない二人の会話。ぱえりあーおいしそう……。(お腹鳴りそうできゅるきゅる)

 

 

 

無闇やたらに謝ること

 

「お父さんとお母さんは再婚なんだ。だからお父さんとは血が繋がってないのね」

「……ごめん」

――結衣、蒼龍

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会長が、結衣の父親になにげなく質問したところ、「実は再婚なんだー」という答えが返ってくる。そして、会長は謝るのだった。

でもさ、こんなこと謝る必要なんか全然ないよ。なんで謝るのさ? 結衣は父親のことを聞かれ、自分の意志で「自分と親の関係はこうなんだよ」と自分から曝け出したのだから。

それは結衣にとって「負い目」でもなんでもないことに繋がる。気にしていない人に、気にするような言葉をかけなくてもいいんじゃないのかなって思うのです。

更にいうとね、結衣が「親」について気にしていようと、気にしていなかろうと、「親について(結果的に)聞いてしまった」この状況に謝る要素なんてカケラぽっちもないよ。

こういった、他者のプライベートな事情、それも悲劇性を感じる要素(別れた、亡くなった)等に、謝る人が多すぎる気がするんだよ。それも定型句のように、決まりきった言葉を紡ぐように。

親が再婚だろうと、亡くなっていようと、それは事実だし、傷つけるために質問したのではないのだから、むやみやたらに謝らなくてもいいのだと思うのだよ。

なんかこれはもう倫理観の類な気がするんですよね。無意識に刷り込まれた価値観。他者の家族関係とかで、誤って、言いたくもないような(=主観的に)ことを相手に言わせてしまったとき。謝る"べき"だみたいなね。

「私の家再婚なんだ」

「そっか」とか「そうなんだ」

っていう返しでいいと思うのよ。

 

 

 

『いけない』ってないっていうこと

 

「大事な友だちが辛くなる…しれないの…そんなのダメだよね……好きになっちゃ、ダメだよね」

「どんな結果になっても、ひとを好きになる気持ちに『いけない』ってないと思うの。決して」

「だけど、だからこそきちんと向き合って、その気持ちに責任をとってあげなくちゃ……ね?」

――結衣、桜子

 

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桜子の「『いけない』なんてことはないよ」とことを聞いていると、「生きたい」と思うことは罪ではないよ、という言葉がふと浮かんだ。

人間は、様々なものを壊し汚し、結局のところ世界からみれば「邪魔」で「異物」でしかない。それでも人が「生きたい」と思う気持ちは、否定されるものではないと。その類のものと似ている気がした。

それと、桜子の「だからこそきちんと向き合って、その気持ちに責任をとってあげなくちゃ」という『責任』という言葉に多少ひっかかりもしたものの、言っていることはとても分かる……気がする。

これはようするに「心のままに」という意味を言っているんだと思うからだ。

 

 

「虹の彼方」

 

 

英語だと『Over the Rainbow』。『オズの魔法使い』で使われていた楽曲なんでしたっけ。りりっくを検索してみたら、なんか心温まるような言葉が多かった。

"虹の向こうの空は青く
信じた夢はすべて現実のものとなる"

目覚めると僕は雲を見下ろし
すべての悩みはレモンの雫となって
屋根の上へ溶け落ちていく

 

晶の「世界飛翔」は、まさしくこの小節ぴったりだよねと。

 

+++

「この曲は、晶くんに……弾いてたの」

――天音

 

 

天音は、『虹の彼方に』を晶のために弾いたという。「信じた夢はすべて現実のものとなった」っていう、天音の嬉しさがこみ上げたもののように感じ取れます。


んにゃ、そういえば、天音のお母さん、つまりちはや先生が嫌っていた曲って「虹の彼方に」だっけ? じゃなくてべつの?……やばい混乱してきたぞ…。それとも「夢」という曲のほうだっけ?…うに…。

 

 

 

 

 

 

 

どうして?

 

「え? もう? ど、どうして?」

「いや、あの……」

「もしかして、嫌だった? 無理やり、あーんとかさせたから…」

「そ、そうじゃないんだけど」

「じゃあ、どうして?」

「いや、それはあの……」

――天音、晶


晶が急に自分の部屋に戻ると言い出し、なぜ今来たばかりなのに帰ってしまうのか不思議がる天音。

このとき、すぐ「ど、どうして?」と言えるところに「あーだよねー」と思った。むやみやたらに深読みしたら、考えすぎたり、察しすぎるんじゃなくて、「なんでなの?どういうことなの?」と相手に問いただすことは重要なことだよねと。

相手の気持ちを読み解いたり、察するのはとても大事なことだけれど、察し過ぎたり、深読みしすぎると、逆に気持ちの齟齬が生まれがちなのでやっぱりここはバランスに中庸に中庸に調整するべきなんだとも思います。

 

 

 

ホワイトアウト

 

「だから別に、わだかまりがあろうがなかろうが、どっちでもいいって事だ」

――蒼龍

 

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……いいね……いいよ……お前は最高だ。

いつもバカっぽく振る舞っていたり、バカっぽい仕草をしていたりしていたのも、全部見せかけにすぎなかったというわけだった。

皇蒼龍は、なにも考えていないちゃらんぽらんな男ではなく、何を考えているから分からない人間だった。

彼がそういった側面を見せたとき、私は「あーこいつの心の中は真っ白なんだな」とそう思った。そう見えた。強い憎しみや恨み、痛み、許せないこと、赦されなかったこと、生きていることに血を流し続けている人間に対して、私は「真っ黒い」イメージを想起させるのだけれど、

彼は違う。皇蒼龍はそうじゃない。彼は、初期化前領域(ホワイトドメイン)のような、真っ白い心象風景にぽつんと、1人で立っているそんなふうなのだ。

 

「今まであんなに……あんなに天音のことかまってて、好きだって言ってたのに、なのにどっちでもいいっておかしいだろ!」

「言葉なんて、なんとでも言えるだろう?」

「――は?」

「頭ん中と、口に出す言葉が一緒じゃなきゃダメなわけ?」

――晶、蒼龍

 


全てがどうでもよく、全てに関心をよせていない。会長は妹を愛しているんだろうなと見えていたとしても、そんなものは、全部どうでもよかった――――そんなふうに彼の言葉は聞こえる。

 

「好きなふりなんて簡単じゃないか」

「な、な……」

「そのほうが、何かと都合いいだろ?」

――――蒼龍、晶



「仲良く見えただろ? 現に天音だって信じてただろ?」

「なに!?」

「さっき言っただろ、俺のためにって。俺を喜ばせるためにって」

全部俺が『そんなふり』してるんだよ、なかなか上手だろ?

「一生それでいいじゃないか? 何熱くなってるの?」

――――蒼龍、晶

 

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いやー……痺れる。シビレルネー。

こういった心象領域が、無機質な白さっていう人は、周りになかなかにいないから、なんかつい嬉しくなってしまった。うんうん。

会長の価値観がまったくもって不明。私の価値観と大きく離れているにも関わらず、共有できないなんてことはきっとない。知りたいとさえ思う。いったいどうして、そんな考えに至ったのか。あるいは、その考えを実行しているのかと。

 

 

「じゃあ天音のこと、本当になんとも思ってないのかよ」

「だから言ってるだろ! 大事にしているふりは、充分にしてるつもりだ」

「そんなので、いいわけないだろ!!」

「それで何の不都合があるっていうの?」

「まさか本当に心と心で通じあってないといけないわけか! そんなの俺はごめんだね!」

――――晶、蒼龍

 

「理解できない」ことって、嬉しいときもあるんだなーと実感した日だった。

 

無様に倒れた俺を、無感情な瞳が見下ろす。
そう、何もなかった。

例えば憎しみとか、軽蔑とか、そういったもの。
何かを否定する時にはきっと、そんなものがあるはずなのに――。

会長には、何もなかった。

 

 

 

 

 

正当性と感情論

 

「私のこと、どう思ってようとそっちの勝手だけど……でも、晶くんに乱暴した事は謝りなさいよ!」

「最初に手を出したのはそっちでしょ。正当防衛だよ」

「恥ずかしくないの! 何も出来ない晶くんに、あんなに一方的に暴力ふるっておいて! 謝りもしないなんて最低よ!」

「――――天音。お前が約束を破ったからだろ」
「誰にも言うなっていっただろう、俺は。なのに他人に話したりするから、こんなことになるんだよ」

「それを捨て置いて、人には謝らせようっていうのか? それなら先にお前が頭を下げろよ」

――――天音、蒼龍

 

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あるある……こういう会話あるあるよね……。

今回の件でいえば、皇蒼龍はまったくもって「悪くない」と断じることが出来る。まず最初に暴力を振るってきたのは晶の方だし、なにより蒼龍の聖域に踏み込んできたのも晶だ。

そして、天音のいう「人として恥ずかしくないの?」論調でいえば、晶はいきなり他者に殴りかかり、あまつさえ蒼龍の聖域を侵害したことは「人として恥ずかしくないの?」という部分にあたる。

もし誰が悪いのか? といえばそれは蒼龍ではなく「葛木晶」だ。

ってことを蒼龍は、「最初に手を出したのはそっちでしょ」のあたりに込めていると思う。でも実際ほんとそうだよ。会長悪くないよ。

で・も。天音は納得できないから、あとは感情論のみで押し切ろうとしているのが見えるんだよねえ……。自分から「正当性の如何」を示したにも関わらず、今度は話がずれ「一方的に暴力をふるったあなたが悪い」「謝らないあなたが悪い」となってきて、んー……という感じである。

これは、天音は蒼龍のことを「一方的な悪者」として定め、前提として会話しているから、話の流れがおかしくなるんだよ。そもそもこれじゃあ「話し合い」なんかじゃなくて、一方的な意見の押し付けでしかない。「もう壁に喋っていれば?」と言いたくなる感じの、空転ぷり。

「話し合い」というのは、相手がなにを考えているか、どういう気持ちでその行為に至ったのかを互いに歩み寄らないと、こういっためちゃくちゃな押し付け合う言葉の応酬からはじまり、めちゃめちゃなまま終わってしまう。

天音はただ「会長を謝らせたい」だけなんだよ。晶が悪いとも思っていないところが視野狭窄だよねと思わずにはいられない。

ただ、理屈では分かってても、心で納得できないものはしょうがない行動を取ってしまうものだよなーとも。

 

 

 

 

 

すずのの行方

 

「すずのは? 見つかったのか?」

――結局、俺は教室の片付けに手間取って、すずの探しを手伝うことが出来なかった。

一人で探していたらしい結衣には申し訳ない。

「ううん、いなかったけど……多分先に帰っちゃったんだと思う。スペアの鍵も渡してあるから」

――晶、結衣

 

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すずのの行方を追ってみよう。

まず晶は茉百合さんから、大道具の片付けを頼まれる。その片付けのさい、すずのは晶を手伝うことになる。すずのと晶は、二人仲良く大道具を、収納される教室に持っていく。

このとき、すずのはそこの教室にあった他道具に足をひっかけさせ、転倒し、記憶が蘇ってしまう。記憶? それは今まで散々自分自身に問うてきた「自分は何者であるか」ということを。

すずのは思い出す。自分が未来からやってきた人間で、葛木晶を助ける任務を命じられていることを。

そして、晶と結衣の前に姿を現さないのは、「葛木晶を助ける機会を伺っている」のかな?と思う。世界飛翔の準備とかもあるかもしれない。もしくは気持ちを整理しているのかもしれない。

 

 

 

くるりんの犯行?

 

「どうも作為を感じるな。誤作動というよりは、誰かが故意にやったとしか思えない」+++

「…………九条か。しかし、何故だ」

「天音とちょっともめたから、それで怒らせたんだと思う……あの子、昔から俺のこと嫌ってたし…」

――八重野、蒼龍

 

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システムの誤作動、防災シャッターの突然の起動。閉鎖される学園。それらはすべて九条くるりが起こしたものと、生徒会メンバーは推測する。

そして、学校を閉じ、中に残っていた生徒をまるまる足止めしたのは「生徒会会長・皇蒼龍が憎からんとしてやったことと」と、動機を見出さだめる。

このあと、八重野か茉百合さんが「九条はもっと冷静なやつだと思っていたが」という言葉にたいし、蒼龍は「人間そんなもんでしょ。頭に血が上ればなにをするかわからない」と返す。

しかし……本当にくるりんが行なったことなんだろうか?……。たしかに晶、結衣、天音との帰り際、不自然に学校に戻っていたし、今なお学校にいるはずなのに、姿を現さないとすれば、「九条くるりの犯行」という線が最も高くなる。

でも、あの、くるりが? こんなだいそれたことを、それも大規模の人間に多大な迷惑をかけることをするんだろうか?……。いやなんだろ。なんて私はこんなにくるりんのことを信頼しているのかという疑問に繋がってくるような気もする。……うーむ。

 

 

 

相手と価値観を共有できないっていうこと

 

「この間から晶くんのこととか、私の……こととか、なんでなの? 勝手なことばっかり!!」

「何か理由があるの? それともただの気まぐれ?」+++
「じゃあ何なの? 私や皆を困らせようとしてるの?」

「はは、そんなんだったら、いいよな」
「お前と俺は違う……」
「違うんだ、天音。俺はお前みたいに良心的じゃないし、誠実でもない
。お前が当たり前みたいに持っているもの全て、俺にはないんだよ

――天音、蒼龍

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――――共有できるのは、気持ちだけ。

相手がどんな気持ちなのか、嬉しい悲しいうっとうしい怒り、辛さ、そういった原点となるべき感情は、人は誰でも共有できる。母国語が違う人と話していても、「相手の気持ちだけは分かる」そういう経験はあると思う。

言葉が違って、9割以上の意味をぼろぼろ零しながらでも、相手が喜んでいるのか、怒っているのか、悲しんでいるのか、そういった「気持ち」だけは共有できる。

けれど、そこから先の「思想」や「価値観」といったものは、一気に共有の難度が跳ね上がる。そんなとき、「こいつと私は違う生き物なんだな」と強く実感するわけなんだけれども。

蒼龍が天音に対して言っているのも同じことだろう。「俺とお前は違う」と。その後に続く言葉を言っても、おそらく天音は理解できていない。

蒼龍が天音が当たり前に持っているものを、持っていないと言われても、「え?どうして?」とか「どこが?」と疑うのみだろう。「他者の価値観」を共有するというのは、とてつもなく難易度が高く、かつコミュニケーションコストが高いんだなと実感してしまう。

いくつもの言葉を投げかけても、伝わったのはほんの一部分、「気持ち」だけという手応えだったら、会話することに失望してしまうものなのかもしれない。

 

「もうわけがわかんないわ!! お兄ちゃんが何を考えてるのか全然わかんない!」

――天音

 

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「だからいい加減分かれよ! 俺にいちいち説明させるな!」

「何も言ってくれないのに、分かるわけないじゃないの! ちゃんと言ってよ! お兄ちゃんは何を考えてるの!」

「どうでもいいだろそんな事! 俺が何を考えてようが、お前には関係ない!」

「なんで、なんで関係ないのよ! なんでそんなひどいこと、平気で言えるの?!」

「どうして私の気持ち、わかってくれないの!!」

「そうやって自分の気持ちばかり、俺に押し付けるな! 俺はお前とは違うって言ったはずだ!」

「もうわからないよ!!」

――――蒼龍、天音

 

 

 

 

すずのちゃん、問う

 

今更どれだけ後悔したって、あのときには戻れない。

それはよくわかっている。それでも、俺は頭の中で、難度も難度も、あのとき、あのときと繰り返してしまう。

…………。

――もう一度、やりなおしたい……?

ふと、後ろから誰かの声が聞こえたような気がした。

「出来る事なら、やりなおしたい! 俺は、みんなを助けたいよ!」

「やりなおせますよ?」

――晶、すずの

 

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天音のときも、すずのちゃん「やり直したい?」と晶に聞いていたのか。てっきり、くるりと結衣だけだと思っていたのよさ。

すずのちゃんが、晶に「やり直したい?」「どちらを選びますか?」と聞いてくる場合とこない場合があるんだけど、この差って一体なんなんだろう。全部書いてから考えてみよう。


そして晶が、世界間を飛んだ繚乱祭の片付けの日。晶が大道具を収納教室に運ぶ際、通常ならすずのちゃんが手を貸してくれる。けれど、もう晶が「元の世界に戻った」こと「すずのちゃんが自身の仕事を果たし終えた」ことなのか、その世界にすずのちゃんはいなかった。

すずのちゃんの物語で、晶が20代後半くらいの容姿になっていたことを見ると、もっともっとずっと先の未来にすずのちゃんはいるのか……ふむ。いや当たり前か……。

 

 

皇蒼龍のしたいこと、させたくないこと

 

「あの曲を皇が弾くと、母親を深く傷つけてしまうそうだ。あいつは、妹と不仲であることが母親の為になると思っている」

――八重野

 

「皇は、昔あいつにピアノの演奏を咎められた事に、ずいぶんこだわっていたのではないか?

妹がその溝にこだわっていることが、あいつにとって唯一の免罪符だった。だから、妹の方から溝を埋めようとすれば、拒否せざるを得ない。そういうことだ」

――八重野

 

 

…………昔、母親の大事にしていたものを壊してしまって以来、ずっとそうらしい

罪悪感で、頭があがらんそうだ

――八重野


 

 

「俺と天音が仲良くし過ぎると、母さんが苦しむからさ」
「俺は、父さんが他所で作ってきた子どもだから」

――蒼龍

 

「俺が壊した母さんの大事なものって、晶くんは何だと思ってたの? お高い壷や花瓶ってわけじゃないよ?」

「愛する夫との関係、幸せな結婚生活、夫婦としての絆、そういう類の『大事なもの』だ」

――蒼龍

 

 

「夫の愛情を失った苦しみも悲しみも、原因である俺にぶつけようともせずにひた隠しにしていた」

「だから俺は……これ以上母さんから大事なものを取り上げる事なんて出来ないんだよ」

「大事なものって……」

「だから天音でしょ。たった一人の娘だからね。夫を失えば、後は娘しか残ってないだろ」

――蒼龍、晶

 

 

「何も知らない。だからね、これをいちいち説明するんですかって話ですよ」
+++

「だから根本はそこじゃない。結局のところ、二人の幸せを考えれば、俺はもうあの母娘に近づくべきじゃないんだ」
――蒼龍

 

「あるよ。どう考えたって、俺抜きでやるのがいちばんうまく行くんだよ」

――蒼龍

 

「どんなに愛おしく思ったって……いつも自分自身が拒否をする。もう引き裂かれそうだよ」+++

「それに……天音を疎ましく思うのがまったくの偽りってわけでもない。俺は多分心のどこかで天音に嫉妬しているから……」

 
会長も案外、というとなんだけど、自身の内側で苦しんでいる様子がある。だけど、どうも暗さや、憎しみとかそういうどろどろした感じを受けない。真っ白な空間というイメージはやっぱり今なおあるよねん。

 

 

「天音が弾こうとしていたあのピアノ曲……あれは、俺の本当の母親がよく弾いていた曲だったんだよ。母さんにとっては、悲しみに暮れた思い出しか蘇らない、忌まわしい曲だ。

だから、あれだけは。天音に彈かせないでほしい」

――蒼龍

 

天音と蒼龍の距離が縮まらないのは、「蒼龍の拒絶」の部分だなと。お互いの気持ちを素直にぶつけあった後の「価値観の非共有」が起きるのは仕方ないとは思うのだけれど、

その前段階にある、お互いの気持ちを素直にぶつけあう、という部分を通過しない限り、こういう変なわだかまりを抱えて過ごしていくことになるんだろうなと思ってしまう。

だから、晶がしたこと「気持ちを素直にぶつけられる場を作る」という手は、最善手だよねーと。

+++

俺が嫌いなのは、俺だ。

何の関係もなかったお前にひどい事をして、それからはもう二度と手を伸ばしたりしないって思ってたのに

いざお前がこの学園に入ってくると、その気持ちが緩んで……惜しくなって

 

「…晶くんも、ごめん」

「いいよ。俺……なんだかんだ言って、あんたのこと結構好きだし……」

「…………あ、そ、そうなんだ」

 

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ここの「晶君もごめん」「いいよ別に俺あんたのこと好きだし」「……そうなんだ」という会話は、ニヤニヤが止まらなかった。

人間同士の想いの確認、互いの気持ちの共有は、胸がほっこりするんですよね。

 

 

 

 

 

ほんとうはね、自分の中にちゃんとあったんだよ

 


オズの魔法使い』の物語をたんたんと語る、天音。

「途中で、それぞれ勇気と、知恵と、心を欲しがっている仲間に出逢うの」

「でも、いろいろな冒険の間にみんなそれぞれ成長していってね、最後にわかるの」

「ほんとうはわかってないだけで、勇気も知恵も心も、自分の心の中にちゃんとあったのよ……」

「…………」

「……何だかね、そんなのっていいなって、思うんだ……私も……そんなだったらよかったな……

――天音

 

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ほんと、そうだよね。そういうのってとても素敵なことだと思います。あ、これは「青い鳥」の寓話と少しにているかもしれない。

ある大事なものを必死に探し続けて、でもそれはもうすでに自分が手にしていたという。様々な苦難の果てに、幾多の冒険をしたからこそ、自分の手中にあったと"気づけた"。

うんやっぱりすてきだなーって。

 

 

 

皇蒼龍とピアノ

 

――もともとピアノを教えてくれたのは僕の本当の母じゃなくて、今の母さんだった。

――蒼龍

 
……となると、ちはや先生は、「蒼龍がピアノを弾くことを嫌ってはいなかった」んじゃないだろうか。

ただ、思ってはいなかっただけで、蒼龍のピアノの音色、または弾いた曲によって、ちはや先生の苦々しい過去を開いてしまっただけ。それを蒼龍が、重く受け取ってしまったんじゃないだろうか。

ちはや先生は、今でも、香奈さんのこと引きずっているのかな? と思ったけれど、やっぱりキリキリするような過去のような気がする……なあとか。

 

 

――結局ピアノを捨てられないってことは、家族を捨てられなかったってことなのかな

+++

あぁ……無様にもがいたあげく、とうとう捨てきれなかったんだよ。ピアノは……。ピアノは、俺にとっての家族との思い出だから


ピアノ……ピアノか。ふむー。

 

 

 

 

葛木晶の元の世界

「晶くんってうちのお母さんも助けてくれたんだよね」

「覚えてないのー? ここに来る前、引ったくりにあいそうになったのを助けてもらったって、お母さん言ってたよ」

+++

――あれ?

じゃあもしかして、この学校に来れたのはやっぱり理事長のおかげなのだろうか?


 

ちはや先生が、「晶が引ったくりから助けてくれたこと」、「父親が生きていること」の2点で、今晶がいる世界は、「元の世界」なんだなーと。それだけですねはい。

 

 

 

言葉メモ

 

 

「近寄らないで……来ないで……! いや!」

「お母さん、大丈夫? どうしたの?」

「いや、もういや……見たくない! あんたなんか見たくない!!」

「……え?」

「いや、いや……いや、いやよ……ねえ、香奈さん、知ってるんでしょ」

 

 

たとえ何年聞かされなくても、忘れることなんてないその名前。

本当のお母さんの名前だった。

「ねえ、あの曲、あの人が好きだもの。ねっ? 香奈さん、そうなんでしょ?」

「知ってるんでしょ? 香奈さん……本当はずっと、ずっとあなたのこと……あのひと、愛してる……」

「ご、ごめんなさい……ごめんなさい……!」


――――ちはや、蒼龍(少年期)

 

 

 

「葛木の恋人の名前は?」

「は? え?」

「いいから」

「天音だけど……九条も知ってるだろ?」

「……そう。そうなのか」
「それなら問題ない……今のところは」

 

 

 

「晶くんって、魔法使いみたいだよね」

 

おわり!

 

<参考>

 

Flyable Heart オリジナルサウンドトラック Flyable Sound!

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水月陵 ボーカルコレクション1

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