猫箱ただひとつ

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東雲希 感想(18500文字)

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私。スペシャルミー

 


▼ あとこれは「はつゆきさくら」の感想を詰め込んだ考察記事です。

『はつゆきさくら』_初雪が春へ至るためには何が必要だったのか? 死者は何をもって生者へと復活できるのかを考えてみた(21461文字)  

 

 

 

 

希ちゃんの正義魂燃える

 

 

「男がいつまで、ぐじぐじと、人のせいにしてるんだっ」

「なお悪いぜ! 自分で起こした事故の責任も取れず、それをあろうことか、女の子の力に頼って、うやむやにしようとして」

 

「責任が問われだしたら、ふらふら逃げ回って、自分の身を守ることに必死で。そんなのかっこわるすぎる」 

―――希

 

 

希ちゃんは社会で「正しい」とされていることを、とてつもなく大事にしているように見える。犯罪はだめ、違法はだめ、男はこうあるべきそういったものを。

大事にするだけなら多くの人がそうだとは思うんだけど、それを行動に出してしまうあたりが凄いけれど危なっかしく感じる。

 

例えば、竹田が白崎学園の制服を渡していた不良グループ。彼らに向かって「これは立派な恐喝ですっ」と希は叫びはじめるが、しかし怖くないのだろうか?

 

希は剣道の有段者であり実力を伴う人間だが、それでも気性の荒い男性にむかって叫ぶということは、自身を害する可能性が高まるものだ。そんな未来を見据えつつも、リスクのある行動を取れるものだろうか。

 

ちなみに私はできないだろう。けれども、それをあっさりとやってのけてしまう希はけっこう凄いと思う。

 

ていうか、なんだろう……。

 

彼女の行動の基板にあるのは、「間違っている」「悪い」「そんなの嫌だ」「おかしい」という感情なんだと思うんだけど、それで刃向かっていけるんだなとか。

 

「そういう話だぜっ。かっこいいとか、かっこわるいとか、それが大事じゃないのか」 

「男の子なんだから!」 

―――希

 

男の子に憧れているんだっけ?……。

 

 

 

 

 

来栖の忠言・だれかを導くこと

 

「進路指導委員だからって、ゆめゆめ、誰かを導いてやっているなどと思わないことだ」 

「せいぜい、軽く背中を押してやること。
私らに出来るのは、それくらいだ」

―――来栖

 
これは「人は人を助けられない」という言葉と似ているなと思った。誰かを助けよう、救うなんて出来ない。私達ができるのは、その"きっかけ"づくりだけだと。

あとは本人がどうにかするさ。みたいなね。

ちょっと冷たい言い方に聞こえるかもしれないけれど、これは自分の分を弁えろという戒めに近いと思う。誰かを救えるとそう思い上がったら最後、お前自身が転ぶぞと。

 

 

 

 

希の真面目さ

 

「すごく真面目に聞いてくれて、真面目に応援してくれる感じが、好評なんだと思うよ」

 

―――女子生徒

 

ストレスを溜め込んだ受験生の相談にのっている希。彼女は持ち前の真面目さから、多くの受験生に好かれているらしい。

たしかに「相談者」に興味がなく義務感のようなお役所仕事で話しを聞かれても、嫌だよね。真摯に親身に相談にのってくれる人が好かれるのは、なるほど。

希は……なんでこんなにいつも真面目なんだろう。手を抜くこととかしなさそうだし……ってあそうか……「卒業」させる為にか……。


普段の希がどういう性格の奴かは分からないけれど、こと「進路指導委員」としての彼女はとても真面目である。それは自分自身が入学式のときに感じた「3年間がんばろう、卒業しよう」という気持ちを、他のみんなも感じているだろうという前提のもと行動している。

今の3年の卒業生が、「卒業までがんばろう」と思ったのなら、その後押しをしたいと。

それが東雲希のホワイトグラデュエーションとしての最大の動機か……にゃるほど。

 

 

 

 

与えられなかったものとを、仮初で叶えること

 

未来の無い俺が、人の進路の世話を焼くというのも、おかしな話だ。 

そうやって、俺は自分に与えられなかった何かを、仮初にかなえようとしているんだろうか

 

―――初雪

 

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「はつゆきさくら」はこの現実ではなく、「仮初で叶える」というのが多い。
Prologueの初雪しかり、Graduationの綾しかり、Graduationのランとの再会しかり。といっても3つだけかな……。

幻影の果ての向こうに。叶えられるものがある。


そういう見方もありだとは思う。現実ですべてを叶えることができなくてもいい、幻想のほうで叶えられることもあるのだと知ることはきっと大切なことだと思うから。

 

 

 

 

来栖・不機嫌・ガキの態度について

「なんで、お前らガキって、セックスだとかおま◯こだとか、ラクガキしたりしたがるんだろうな?」

いつでも涼しげな顔で毒づいている来栖にしては、ちょっと珍しい表情だった。

 

―――来栖

 

これはちっちゃい子も同じように連呼するのと似ているかも。ただただその単語が気色いいんだよきっと

 

 

 

 

「交渉」なぞするな

 

「いいだろう。今回は、不問ということにしようじゃないか」

「しかし心からの忠告で言っておこう。
交渉なんて、これきりにしておくんだな」

「交渉なんて、やったところで、勝ったところで、いいことなんてない」


何かを人質に取っているんだ。卑怯なことなんだよ。相手はその悔しさを、覚えているぞ」

 

―――来栖

 

交渉。来栖が言っているのは交渉する上で「取引」をすることなんだろう。

なにかと引き換えに、自分の言い分を相手に飲んでもらうこと。それは相手の大事なものを人質にしていることに他ならない。その時の悔しさを相手は覚えている……か。うん道理だと思う。

来栖のこの言葉はなにか重みを感じる。彼女自身もそういう目に合ってきたんだろうか。それとも今現在(ファントムによって)そういう状況にいるからこそかも。

 

 

 

 

希がのぞむ進路指導委員のしごと

「満ち足りて卒業していける人なんて、少ないのかもしれない」

 

「無事卒業できるだけじゃない。どれだけ、満足して卒業していただけるか。それをお手伝いできるか」

 

「それが、進路指導委員の仕事かもしれない。そんなことを、考えてしまった」

 

―――希

 

今まで希は進路指導委員として3年を「無事卒業させる」ことだけを目標にしていた。けれど金崎の事件を経て+「満足して卒業して欲しい」という想いが加わった。

いろいろなもやもやを抱えている3年生に「満足」して「卒業」していって欲しいと。

だからって希の行動が大きく変化したわけではないけど、それでもここは重要な気がするのだ。誰かの心を満たして、どこかに導くことを目指している少女がいるということが

 

 

 

 

復讐の演舞

 

あの仮面、服装、剣。

 

宮棟が従えている連中。アキラがよこした不良ども、この冬の東雲の事件。

 

みんなこの服装。

理由?わけ?

 

 

 

誰かを尊敬するということ

 「でも、きっと大した奴なんだと思うぞ」 

「……え?」 

「俺を尊敬してるとか言ってるが、俺ごときを尊敬できるのが、ひるがえってお前の器の大きさなんだよ」 

「俺や来栖をみてみろ。人間がちっさいから、誰かを尊敬するとか、殊勝な心がけなんてもてっこないんだ」

 

―――初雪、希 

 誰かを尊いと想い、敬うことは……大事なことなのかもしれない。そういえば私は今まで生きてきた中で1人くらいしかそういう人物に会ったことがない。いや会ったことがないというか、尊敬するというのは自分自身の問題なのだろう。ゆえに器は大きくなどないと痛感する。


希はぽわぽわして口からヨダレを垂らしているような、そんな抜けた子だけど、実際は誰よりも大きい存在なのかもしれない。(とても実感しにくいが!)

 

 

 

 

男の子的ななにか

 

「辛いことがあてもぐっとこらえてるような感じが、男の子だと思った」

 

―――希

 

軟弱でへなへなしていてへっぽこの男は男などではない。希が憧れる男とは、忍耐という性質に溢れている人物。

希のこれは、男性側が女性側に求めるいわば理想像なのかなと思った。実際女性・男性の理想像を体現している人なんて少ない。だからこそそんな人に出会ったらびびっとくるよねと。

 

 

 

 

雪解けの死別

 

「俺は、冬が終わる頃……」

「この街を去ることになるだろう」

「…………え」

「留学、とか?」

「そういうのじゃない。
何て言うか、もっとどうしようもなく遠くへ」

 

「もっと、遠く。この冬が終わる頃に、やらなければいけないことがあって。行かなければならないところがあるんだ」 

「ほとんど死別するようなもんだ」 

口にしてみて、それは……たとえでも何でもなく、そういうことかもしれないと思い直し、我ながら少し、しんみりとしてしまう。

 

―――初雪、希

 

そう……だよね。初雪はどこか遠いところに行くというが、「戻って」くる気がないのだったら死別に近い。というか、実際に死んでしまう可能性だってある。

というか死ぬことを目指している?

……。

今までその可能性を考慮したことがなかった。つまり、初雪が言っている「懐かしい人たちに会う」っていうのは、死ぬことで達成できるということ?……。


「復讐」の果てに、ランにも桜にも会えるわけがない。でも、死ぬことで彼女たちに会える(=観念の世界ですべてを満たす)ということなら…………初雪がここまで極端な行動をおこそうとしているのは納得が行く気もする。

初雪は現世だろうとあの世だろうと、ランや桜に会えるのならどこだっていいのか……。そうだよね……。

 

 

 

 

好きってこと、選択肢がないってこと

 

「だから、もし俺がいなくなった時、未練残してぷぎゃーっとなるくらいなら、最初から深入りするな」

「だって、選択肢がないじゃないか」

「いなくなったとしても。好きは好きなんだから」

「好きって気持ちまで、消したいと思って消せるわけじゃないんだから。選び用がないじゃないか」

 

―――初雪、希

 

希の言葉はごもっとも。人は理屈で論理ですべての行動を決められるわけじゃない。

心という曖昧なものから湧き出る「感情」が行動の基板にあると思うのだ。ゆえに、好きとか憎いとかそういった感情で突き進んでしまうことがある。消したくても消せない。したくてもしたくない。

そういうことが起こりえる。人間は感情の生き物だから。

 

 

 

 

 

初雪の気持ち。溶けたくない

「でも、初雪は死人でも雪でもないぜ」

なんでだろう。

さして、深く考えなかった。当たり前のように訪れるだろうとぼんやりと思っていた運命を、見つめずにはいられない

俺は溶けない。溶けたくない。

死人なんかじゃない

こうして、今、確かに肉を持ち、温度を持っているのに。

なぜ……春に、至れない……

 

―――初雪

 

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希に「死別」を告げた初雪。冬が終わるころに自分はいなくなるからなとそう言う。

そして初雪は考えるのだ。

自分が行く先の明日を、未来を、運命を。希に自分の到達してしまうだろう運命を話すことで、それは初雪自身を「見つめなおす」ことに繋がっている。

自分のルーツや、なぜ死別することになるのか? なぜ復讐をしなければいけないのか?とか。


これって彼にとってとても大事なこと。初雪は自分が「なぜ」そうするのかを考えていない。だからこそゴーストたちの言葉を鵜呑みにし、復讐の行動の是非について検討もしない。

盲目的に行動しているからこそ、今の初雪がいて、そして「Prologue」で訪れた初雪がいる。


初雪に大事なのは、考えること。見つめなおすこと。それがきっと重要なことなんだと思う。自分を捉え直すことが出来れば、彼は春に至れるのだから。


初雪が誰かを愛さなければ、この「なぜ」という問いは生まれない。自分を見つめなおそうとしない。だからこそ、世界を愛すことが必要なのか……。

 

 

 

玉樹桜の承認力

 

「……」

「まぁ」

「悪かったな」

「……」

「いいってことよ」

「じゃぁね」

「あぁ」

 

―――初雪、桜

 

 桜の承認力にうなってしまった。

初雪は新学期になると(たしか)桜を無視するようになった。そして少し時間が経ち桜は聞く。「あのとき私を無視してたのって、希ちゃんがいたから?」と。

初雪が桜を無視していたのは、初雪自身の心的な問題だった。大雑把にいえばもやもやしていたと。自分でもよく分からないが喋りたくなかったようなことを言っていたはず。


初雪はなぜ無視していたかという理由を話さないまま、桜に謝罪する。「悪かったな」と。

桜はすこしくらい怒ってもいいと私は思うんだ。ある日突然無視され、理由を話してくれない人なんか。


でも玉樹桜という女の子は、そういうのを一発で許しちゃうんだよなあ……とか。そういうのってすごいよねと。初雪だからこそ、というより彼女は誰にたいしても許容値が高い。

 

 

 

 

 

 肉が欲しいですか? どういう意味

「ゴーストチャイルド」

肉が欲しいですか

「……あ?」

「ずっとこの世界にとどまりたいと、思いますか」

 

―――初雪、ゴースト

 
綾の物語を経て、私は「肉」とは実在する生者のことを示していると思っていた。つまり「肉が欲しい」とは、生者の身体を乗っ取るという意味だと。

でも、初雪に問うたゴーストからはそういう意味を感じ取れない。だって初雪は生きている人間だからだ。現世に実在する存在だ。



だからこの「肉が欲しいか」という問いは、生者の身体を乗っ取るという意味ではない別の答えがあるのだろう。

(というかねはつゆきさくらは、言葉の定義があまり明確になっていない気がする。言葉に内包されている『意味』がその時々によって変わっていく気がするのよ)


私は「肉」という言葉に目線が行き過ぎて、見落としがちだったが今気づいた。その次の言葉「ずっとこの世界に留まりたいと想いますか?」という意味でいいのか……(なんで気づかない私……)。



→つまり「肉が欲しい」という言葉は

 

1、現世に実在する人間の身体が欲しいという意味(cf.アキラ)
2、この世界に留まろうと思いますかという意味

 

 

初雪はそう質問されこう答える

 

「ずっと、その辺が、俺には良く分からないんだ」

―――初雪

 

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にゃーるほどねー……。そうか、いろいろ合点が言ったきがする。


初雪は最初から「生きるか死ぬか」「この世界に留まるか留まるか留まらないか」という問いに、答えを出していない。答えを出した上で生きてはいない。

初雪には「生者か死者」かを選ぶことが出来て(その機会があらゆるところにあって)、生者を選べば冬が終わり春に至れたその時に「待っている人の元へ帰ってくる」ことができるのだと思う。

逆に死者を選べば復讐を終えるまで止まらない概念と化す。復讐が終われば、そのまま死に至るということか。


生者を選んだ「あずま」「希」では、最後の最後に初雪は彼女たちの元へ"帰って"きてる。

死者を選んだ「Prologue」では、復讐を果たしそのまま焼け死んだ。

「シロクマ」編では死者を選び復讐を繰り返すことになるが、最後の最後で「生者」になることを望んだ。(←シロクマを助けるところ)

しかし生きることを望むのが遅すぎた。だから初雪は、「あずま」や「希」のラストとは違い最後には現れなかった。


いやでもシロクマの近くには桜の精としては存在していると思うんですが、人間として生者としては存在することは出来なかったと思っています。

 

 

 

 ばかっぷる

 

「うん。えへへ、ありがとう。なーご」

「わおーんっ」

「なーごっ」

「わおーんっ」

「なーごっ」

 

―――初雪、希

 

 まさか……まさかここまで発展するとはわおーんっ!!

 

 

 

 

 世界の終わりを実感したとき人は狂ってしまうのかも

「その人がいなくなったとき、それこそ世界は終わったような気持ちで、それから先も時が続いていくってことが、信じられなくて」

 

「わけが分からなくて。狂いそうになった」

 

―――希

 
希が抱える気持ちは、ランを失ったときの初雪の気持ちと同じだよね……。

「世界」とは人口60億人超の5億1,006万5,600kmという地球面積を指すのではなく、自分が見ている景色の総体を「世界」と人は呼ぶ。

日々生活する風景とか、歩く道とか、話す誰かとかそういった小さな小さな主観的世界なのだ。


ゆえに、その世界の根幹である「なにか」が欠けてしまうと「世界」そのものが破綻する。「世界」が壊れたらどうなるか? 心象風景に亀裂が入ったらどうなるか? ―――人は狂うのかもしれない。


それは現実を拒絶する行為なんだと思う。

そして
そんな
壊れた世界で
狂った自分が
生き続けなければいけないとしたら?

 ……。

初雪は狂ってはいない、狂おうとしているのかもしれないが。そして狂おうとする気持ちはすこしだけ分かる気がした。

 

 

 

初雪の気持ちをぶっ壊すにはどうしたらいいんだろう 

 

ふと、振り返る。

「ぁ……」

彼女の気配を感じたような気がした。

なぜだろう。

とても寂しそうに、俺を見ていたような、気がした。

 

「ラン……

分かってるよ。どうなったって、変わりはしない。

お前や、皆のもとに帰る。

それだけが、俺の最後の望みだ。

そりゃぁ、出来たらこの学園を卒業したかった。

あるいは、誰かと未来を歩みたかった。

けど分かってる。そんな希望は、俺は持っちゃいけないんだよな。

―――初雪

 

 初雪のこの気持ちをぶっ壊すには、一体なにが必要なんだろう。なにが鍵なんだろう。

 

 

 

 

誰なのかと求めたとき、本質を見誤る

 

「河野。相手が見えない時こそ、それが誰かなんて、突き詰めるものじゃぁない

 

「それが何なのかではなく、誰なのかを追求しようとした途端、見えなくなるものがある。本質を見失う

 

「ファントムはファントムさ。幻だ」

 

―――来栖

 

 来栖の言葉はいちいち刺さる。たしかにその通りなのかもしれない。ただうまく実感できないので考えてみる。


それが何かではなく、「誰か」を求めたとき、本質を見失う。


私はさいしょこれ「物語」と一緒かもねと思った。物語は物語である、そこに誰がを求めてしまったとき見えるものが見えない、本質を見失うと。これはまさしくそのとおりで、だからこそ私は監督主義者を好ましく思っていないのだが……(話しがずれました)


んー……つまり来栖はこう言いたいのかも。あるがままを受け入れてみないとバイアス(偏向)がかかるよと。確証バイアスとかそういった類の話しをしているような気もする。

例えば。

幽霊をじっさいに見たときに、幽霊だけについて考えたほうがいいのかもしれない。そういう存在を受け入れ肯定し捉えるということ。それが基本的な段階。

そこから「なぜここにいるのか?」「なぜ現れたのか?」という疑問が実を結ぶのかも。

しかしそこに「これは誰の仕業だ?」という思考に持っていってしまえば、「人間の仕業」だという方向に思考が偏ってしまう。するとほんとうに幽霊が現れてきてた場合、とんでもないミスに陥るよと。

ただ実際に「幽霊を見たときは」、どちらの可能性も考慮した上で思考を走らせるのが最良でしょうか。バランスですか。


他になにかよい例えないかなあ……。


「神」とかいい題材かもですね?

神とはなにかという「神の『意味』としての存在」を捉えるのと
神とは誰が作ったものなのかという目線で捉えるのと違いなのかも。


後者の目線でいくら考えたって、「神という『意味』」については到底辿りつけないでしょう。神という歴史の成り立ちや人間の本能、精神的構造には到達できるかもしれませんが。

ふむふむ。こういうことなら少し理解できたかも。


―――そのものの『意味』を求めろ。それ以外を求めるな。追求しようとしたら本質を見失うぞ

にゃるほど。

 

 

 

 

 ゴーストパレードの言い伝え

「この街、内田川邊ではな。春分の日……冬と春の境には、この世とあの世が交錯し、死者が蘇るという言い伝えがある」

 

「ゴーストパレードが開かれるのは、一時街に現れる精霊たち……ゴーストを盛大にもてなし、満足して冥界に帰っていただこうという、式典でもある」

 

「冬の終わりに悲しき魂は浄化され、生命に溢れた素晴らしき春が訪れるということさ」

 

―――妻

 

 ゴーストパレード。この世とあの世が交錯する日、霊魂を満たす日。冬の終わりに悲しき魂は浄化され、生命に満ちた春へと至るための日。


「ゴーストパレード」

この日が、河野初雪の生者と死者の分水嶺というわけか。この日に全ての決断がなされているというわけか。この日に初雪が生きるか死ぬか、冬にい続けるか春に至るかを選んだ日というわけか。

 

 

 

 

 

 

 

 ゴーストの意識と醒めること

 

「醒めてきてる」

「これで本当に、ゴースト達を率いることが出来るのか」

……

「……ん?」

「ぐ、ぁ……。なんだ、これは。ごほ、ごほ」

「げほ。何を、した」

「もはや。現世とのつながりは、ここまでにいたしましょう

 

―――ゴースト、初雪

 

 ゴーストが言うには、初雪が「醒めて」は数多のゴーストを導けないらしい。
この「醒める」とは、あずま編でサクヤが口にしていた言葉と同一のものだろうか。

つまり「ランの真実を知りはじめた」、、、けれど希編ではそういった機会はなかった。

とするならこの「醒める」とは、「現世への執着を持ち始め夢から醒めてきた」という意味かもしれない。

初雪が希のことを好きになり、ゴーストという存在から生者へと移行したがっていることを、ゴーストの群衆は嗅ぎとったんだじゃないか。

 

「さぁ、おいでなさいませ。ゴーストチャイルド様」
「てめぇら……」
「くっそ」

―――初雪、ゴースト

 
おそらくゴースト達は反魂香の効果を強めたんじゃないだろうか。初雪がごほごほとむせていたのは反魂香の煙だろう。

ゴーストは「Graduation」のときのように、初雪を「ゴーストチャイルド」として移行させるために濃度を強めた。


で「Graduation」と違うのは、初雪は理性を失ってはいないということ。ただ、どうしても「姿」を見せたがらないのが不可解だが。

 

「いてっ。……石?」
「……?」
「いて」
「……希」
「え、初雪なのか?」

「ど、どこ?」

 「悪い。もうお前と会うことは出来ないんだ
「はは、初雪、何を言ってるんだぜっ。姿を見せてよっ」

―――希、初雪

 
時系列でいえば。

ゴーストになにやらされる(推測反魂香)→初雪学校に出てこなくなる→ある日希に声をかける(でも姿をみせない)

という状況だ。

希のこの「姿を見せない」状況は、シロクマとの一度目の別れを彷彿とさせる。シロクマのときも初雪は、姿ではないけれど顔を見せず去っていった。


反魂香の効果によって、姿(または顔)を見せられない状況になった。あるいは "その段階" にきてしまった初雪の心情というところだろうか? 

この地点(復讐を是認)まで来てしまった故に、好きな人に姿顔を現したくないのかも?……。

 

 

 

 

 

 

初雪の心変わりと、希の功績

 

「お前に関わったおかげで、卒業出来る連中が、きっと何人かいると思うよ」 

「そんなに大げさじゃなくても、お前のおかげで、マシな卒業を迎えられる奴らがけっこういると思うんだ」

 「それは誇っていいんじゃないか」


「俺もそういう活動に参加出来たことが、なんだかんだで、うれしかったよ」

―――初雪

 

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東雲希が活動する委員は、進路指導委員。通称ホワイトグラデュエーション。活動内容は卒業を控えた3年生を無事卒業させること。また満ち足りた想いで卒業させることに尽力するものとなっている。


簡単にいえば誰かを応援すること。これに尽きる。

 

 応援って言葉では簡単そうで楽ちんに見えるけど、実際「誰かを精一杯に応援」ってしたことってどれだけの人がいるんだろうか。

ちなみに私は数えるほどにしかない。少ないほどに少なかった。真摯に真剣に真面目に誠実に。誰かを応援したことってあんまり無い。


自分にとって大切な人といった狭い範囲ではなく、誰も彼もを「3年生全員」を精一杯応援できる希はほんとうにすごい。


応援の難しいとこころは、偽った気持ちで励ましたり声をかけたりしても無駄だということ。なぜかというと、その偽った気持ちが滲みでてしまうからだ。

応援したくないのに応援しているとか。
別にあなたが卒業しようが関係ないよとか。
いやいや励ましていますとか。


そんな気持ちって、簡単に出ちゃうし伝わっちゃうものだと思う。そしてそれはもう応援でもなんでもないのだ。ただの機会的な仕草でしかない。


真心をこめて誰かを応援する。がんばってとか言って励ます。その人をちゃんと良く見て、その人を心からそうなって欲しいと想っていないと出来ない。

正直想像するだけで、これがいかに難しいことか分かる。白崎学園の3年生が総勢何人いて、その内の幾人が卒業で難儀しているのか分からないが、それでも困っている人は50人くらいはいたんじゃないだろうか。

見ず知らずの50人。赤の他人の50人。話したこともない人を「応援」するということ。


……。希、ほんとすごいよ。初雪が「そういう活動に参加出来たことが、なんだかんだで、うれしかったよ」って言うのってすごいことだもん。以前ならバカにしていたのに。

 

 

「お前は強いよ、希」

「俺が知っている中じゃ、一番、強い奴だ。だから、大丈夫だよ」

 

「初雪っ」

―――初雪、希 

 

 初雪は希を強いと言う。強い。強いね。


たぶん私が今まで感じている「強さ」とは別軸の強さの話しをしているんだと思う。なんだろう……うまく言葉にできないな。

希の「他者を応援」するという力が、どういった資質の強さに繋がるのかよく分からない。でもたしかにそういった強度を持っているのは分かる。

実際に、彼女は多くの人を心から応援しているから。


強さ……か。

応援ってなんだろーなーと考えてしまう。言葉の意味ではなく、その本質というかミームというか。

 

そんなのを。

 

 

 

 

 このまま終わらせてはいけない。だから復讐を

「このまま、終わらせちゃいけないんだよ」

「卒業を迎える前に……復活させなければならない人がいる」 

―――妻

 
東雲の想いはよく分かる。これはただ「許せない」っていう感情なだけだ。

先生の名誉が墜落したままだなんて許せない。彼を勘違いしている人がいることを許せない。彼がこのまま報われないまま忘れていくことが許せない許せない許せない。

そういったいっぱいの「許せない」は、憎しみへと最終的には復讐へと段階を登り詰めてしまうんだろう。


許せないことなんていっぱいあるし、それをそのままにしていけるほど私達は賢くない……。復讐なんて実利的に考えればなんの良いこともない。

 

でもやらずにはいられない。成さずに入られない。

 


それは初雪のいうところの「狂気」なのかもしれない。狂っているのかもしれない。

でもそんなもんだよ。

 

 

 

 

 

 誰も喜ばない戦い

 

「裏切りだ」

「なに?」

「犠牲だとかかっこいいこと言って、やぶれかぶれになっているだけだっ。そんなことしたって誰も喜ばないのに」 

「喜ぶとか喜ばないじゃない。そんな次元の話じゃないんだよ」

 

誰かが喜ぶとか喜ばないより大切なことなんてあるのか

 

誰も喜ばない戦いなんて、独りよがりな、裏切りじゃないか

 

―――希、妻

 

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妻の行動は独りよがりな復讐だよ。でもそれのなにが悪いんだろう。なにがいけないんだろう。

 

「喜ぶとか喜ばないじゃない。そんな次元の話じゃないんだよ」

そうそんな次元の話じゃない。これはただ「やりたいから」やっているだけだ、そういう次元の話だよ。

先生の名誉を復活させるためにやっているだけ。その行為の果てに誰もが喜ばなくたって、自分自身が喜ぶのならそれでもいいんじゃないか? それだけでも十分に救われるじゃないか。

妻と妻率いる剣道部員だけだが。だめなんだろうか。


……というかなぜ妻は「自分たちだけは報われるじゃないか」と言わなかったんだろう。希の言葉に「誰か」を「自分たち」に持ってくればよかったではないか。



―――ああでもそうか。

 

希の「誰かが喜ぶとか喜ばないより大切なことなんてあるのか」 という言葉に、妻すらも入っていないんだとしたら。

つまり先生の名誉を復活させるという行為に、妻ひきいる剣道部員自身が喜びを得ない行為だった。

そういう事だと東雲妻は気づいてしまった。だからこそ希の言葉にうまく返せなかったんだとしたら。そんな想像がよぎる。


誰も喜ばない復讐。自分さえも喜ばない行為。


確かにそれは……。

……。


 そして気づく、東雲希がもっとも大切にしていることは「誰かが喜ぶ」ことなんだと。なるほどね……進路指導委員という立場は、彼女の適正にぴったりと合っていたということか。 

 

「皆の大事な卒業式を人質にとった人間に、許されることなんてなにもないっ」 

―――希

 

「許さない」と「許せない」がぶつかり合う。 

 

 

 

 叫び続けるしかない

 

「それを、私の兄が責任をひっかぶることによって、手打ちとしたんだ」 

「無駄にすることになるぞ。彼の意志を」

「死者を冒涜しているのは、誰だ」 
―――来栖

 

「どちらにせよ、叫んでどうする東雲。彼はもう死んだ。今更、彼の名誉を君が叫んで、誰が救われる」

 

「分からない。分からないが、叫ぶことしか出来ないじゃないかっ」 

「どんなに叫んでも、死者には届かないけれど……それでも俺達は、慟哭することしか出来ないんだよ」

「あなたは正しかったと」

―――来栖、妻

 

 叫び続ける……。叫ぶことね。叫ぶ。

来栖兄の名誉を復活させようとしても、それを喜んでもらいたい人に喜んでもらえない。だって来栖兄はもう死んでいるのだから。

でも叫ばずにはいられない。彼は不良教師でもなんでもないと。正しかったと。

死者には届かないその言葉を。それでも叫ぶこと。届かないのに知りながらも、届けようとするその気持ち。

叫び続けること……。うまく思考がまとまらない。

 

 

 

 

 

 死者がとりつくっていうこと 内側に復活させること

 

「私にも分からないさ。もう、誰にも分からないんだよ。彼が何を望んでいるのかなんて。あの世で、無念に捕らわれているのか、晴れ晴れとしているかなんて」

―――来栖

 
死者の声を代弁することは不可能。なぜなら死者の気持ちをもう誰も聞くことができないから。

それでも代弁すると言い張るのなら、それはもう死者に取り憑かれてることを自覚したほうがいいのだろう。 

 

「だから、死者はしばしば生者にとりつくんだよ。ものを言うことはないから。その妄念は無限に広がり、からみつく」

 

「お前は、彼にとりつかれてしまっていたんだね」 

「でも、ちゃんと考えてみるんだ。世間ではなく、お前の中にこそ、彼を復活させ。想像力を働かせろ」 

―――来栖 

 
世間という外界に死者を復活させるのではなく、内界に復活させろか。

いやけどまて。これはどういう意味だ……。


東雲の心の中に「来栖兄」という存在が復活したからこそ、東雲は復讐に取り憑かれていたのではないか? 世間に彼の名誉を復活させたいと想ったのではないか?

順番の話をしている。自分という内側に死者が蘇ったからこそ。外部にまで復活させようとしたと言いたい。

となると来栖のこの言葉は「内側でだけで留めておけ」とそういうことだろうか。


自分の中にだけ、自分の心の中にだけ死んだ者たちを蘇らせればいいと。希も似たようなことを言う。 

 

「その先生のことも、自分のことも、正しかったと信じられるのなら」

「それでいいと……思うけど」

他人が何て言おうと

「それじゃぁ、だめだったの?」 

―――希

 

 希の言葉は刺さる。的確だなとさえ思う。

たしかに……なんで私達は内側に存在するものを、外側にまで発展させてしまうんだろう。誰かに認めて、他者に肯定してもらわないと気が済まないんだろうか。

答えは「自意識」だと思う。自分が考えようと想って考えることではなく、何も考えたくないのにぷわぷわと思考が浮かんでくるあれを自意識と呼ぶ。

なぜ自動的な思考が起きるのか。それは自分という存在を確立させるため常に、誰かと自分を比較する状況に陥られている。


あいつは俺より下だ。あの子は俺より優れているとかね。


その延長線上に、認められたい、肯定してもらいたい。外側に世間に世界に評価してもらいたいとそう望んでしまう。


けど! けどね!

よくよく考えてみると、外側の評価と内側の評価は直結しない。相反しない。

例えば、「来栖兄」の名誉をこれでもかと東雲は信じているとする。彼がどういう指導者でどう優れ良き人だったのかを彼は知っているしそれを尊いと思っている。

そしてそのことを、外側なる世間がどう評価しようと、東雲が想ったその「気持ち」が変化することにはならない。

だって世間がどう言おうと、「そんなんじゃない!あの人はこういう人だったんだ!」と東雲は思うからだ。だったら世間の評価と自分の評価に、関係性などない。


自分の気持ちを、自分じゃない誰かがなんと言おうとも変わることなんてない。だったらそれで良かったんじゃないの? と。


でも叫ばずにいられないという東雲の気持ちもよく分かる。これは理屈ではなくこれもまた感情なのだ。

……。

……答えなんてないと思う。でも外部評価と内部評価の線引を持つという考えたはあって損はないと考えます。

  

 

 

 

 

卒業して欲しい  

  

「卒業して欲しい」

―――希

 

 希も初雪も言う。東雲に卒業して欲しいと。

 

 

「なぜ、俺に卒業しろと言う」

「さぁな。……理由があるとすれば」

「お前が大将だから、じゃないのか」

「元生徒会長、東雲妻」

「今の3年は、皆、お前に付いてきたんだろう。それが、最後におっちんでどうするってんだ」

 

「大将が討ち死にそうになったら、誰かがかばって果てるものだ。そういうもんだ」 

「独りよがりでも、バランスを欠いていても……お前は、大将だよ、東雲妻」

―――初雪、妻

 

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 希がお兄ちゃんに卒業して欲しいのは分かる。希は今まで三年生に無事卒業してもらいたいと尽力してきたからだ。もっちも近いしい東雲妻にも、無事送り届けたいと思ってしまうだろう。

でも初雪がよくわからない。

東雲が「大将」だからといった理由で、なぜ卒業しろと言う。大将……?

……。

大将、王、首領、ボス、統率者。

 


初雪的にはどちらかというと、次の言葉が大事なのかもしれん。

 

 「今の3年は、皆、お前に付いてきたんだろう。それが、最後におっちんでどうするってんだ」

 
王と民。民の想いを束ね紡ぐために王は必要となる。その王がどこにも辿りつかなかったら、彼に託した民の想いはどうなる? ……そんな意志が伝わってくる。*1


初雪は自分の立場と、東雲妻の立場をダブらせているように思える。ゴーストチャイルドとしてゴーストたちの様々の想いを導こうとしている者として、元生徒会長兼剣道部主将として師の無念を晴らそうとした者と似ているのかもしれない。

……そこがどう「東雲に卒業して欲しい」に繋がるんだろう。うーむ。

ただ少なくとも、初雪は「東雲を応援した」ということは言えると思う。


+++

 

初雪が体育館に現れる前の動向を追ってみる。


→ある日希に別れを告げる初雪
→卒業式前日。ゴーストパレードに向かう前に学園に行く初雪

→体育館に乗り込み東雲の問題を処理。このあと「本来の用事に戻るだけだ」と言い捨て場を去っていくことから、次に向かったのは佐々木のところだろう。


つまり、「復讐前」の初雪という状況を加味すると、東雲に「大将だから死ぬんじゃねえよ」と言ったことの真意が見えてくる気がする。


「なぜ、俺に卒業しろと言う」

「さぁな。……理由があるとすれば」

「お前が大将だから、じゃないのか」

「元生徒会長、東雲妻」

「今の3年は、皆、お前に付いてきたんだろう。それが、最後におっちんでどうするってんだ」

 

「大将が討ち死にそうになったら、誰かがかばって果てるものだ。そういうもんだ」 

「独りよがりでも、バランスを欠いていても……お前は、大将だよ、東雲妻」

 

―――初雪、妻

 

「大将だから」「誰かがかばって果てるもの」「最後におっちぬな」


初雪はいったいどんな想いでこの言葉を、東雲にかけたのだろう。(ここ何回も何回もループするなあ……)

+++

 


佐々木を殺す前に、復讐前に、希を助け東雲の復讐をくじく。それはすなわち「彼らを卒業させる」という初雪の意志に他ならない。

初雪は見てみぬふりすることもできた。剣道部員の企みに気づいていても、卒業しない初雪にはなんら関係ない。

けれども希を想うとそうもいかないだろう。やっぱり好きな人が成し遂げたいと思っていることは協力したいと思うからだ。


それに自分と同じ境遇の東雲妻を放っておけなかったのかもしれない。「大将だから」「誰かがかばって果てるもの」「最後におっちぬな」。


それは初雪自身に向けた言葉でもあるように思える。……初雪は自分の「卒業したい」という想いを東雲にあげたのかなー……なんて思った。

私がこう思う答えを羅列する。


Q、初雪はなぜ東雲に卒業しろと言ったのか?

A.
1希という想い人の使命を全うさせてあげたいから
2初雪が抱いていた「卒業したい」という気持ちを、東雲に託した。
3東雲妻が「大将」であるがゆえに、率いてきた部員をどこかの場所へ到達させろよと思ったがゆえに。

 

こういった気持ちが、初雪のなかで織り交ぜっているのかもなとそう思った。



「初雪は一体何をしようとしているんだ。これから、どこへ行こうとしているんだ」

「教えてよ……」
「……」
「終わったよ」

「俺の卒業式は、もう終わった」

 

―――希

 

 こことか初雪のことばを聞いていると、そんな感じがするのよね。

 

 

 

 

 

 

ファントムの衣装を剥ぎ取るということ

 

 「お前、一体何者だったんだ。その格好は……」
「初雪、何をしようとしている」

「何って、俺はこの体育館でウダウダやっていたゴーストどもを連れに来たんだ」
俺は失神している剣道部の連中がつけたファントムの衣装を、はぎ取り、まとめて肩にかける。

「くく。うちの連中が、迷惑をかけたな」

 

―――初雪、希、妻

 
初雪がいうここでの「ゴースト」とは、東雲率いる剣道部員の復讐の心だろうか。それを「連れに来たんだ」というのを、彼らの衣装を"剥ぎ取る"ことで消し去ったということなんだろう。


 

メモ

 

 「立派になれよ」
「え……?」
「お前は立派になれる人間だ」
「そうして、人に勇気を与えることが出来る人間だ」

 「俺にも……」

―――初雪、希 

 

 

男子生徒「お前等が、河野を追い出してくれたんじゃないのか」
妻「……」
来栖「……」

希「……」

妻「あぁ……」

「そう、だ」

「俺達が……奴を……」

 

 

 

 

 

 

希とのお別れ

 

「あとは、本来の用事に戻るだけだ」

「本来の用事?」
「希」
「さようならだ」

―――初雪、希

 

 希が大事にしていた卒業式も決行されることになることを知り、初雪は立ち去る。本来の用事とは、佐々木を殺すことに他ならない。

復讐を果たすために、ゴーストパレードに向かおうとしているのだろう。そしてそれは希との死別を意味する。


以前にも初雪は自分で言っていたが、この死別とは、本当に死ぬことで別れる未来を描いているんだろうと思う。希にいう「さよなら」とは、もう会うこともないという意味。 

 


 そして初雪は思うのだった。希との未来を。


妻と渡り合う希を見て、正直、俺だって驚いた。

一瞬、数年後の希の姿を垣間見たような気がした。

それは、むかつくくらい、まぶしい姿に見えた。

こいつは、きっとどんどん成長していくんだろう。 

その隣にいたいと思ってしまった自分を、そっと、哀れもう。

 

時はせわしくめぐる季節の中で、花ビラのように、飛び去っていく。立ち止まり、ひとかけらの非日常を追いかける暇もない。 

こいつには……無限の未来が開けているのだから。

 

その一瞬に関われたことを、俺は、幸福と思おう。

 

―――初雪

 

ここがすっごーーーく重要だと思います。初雪が復讐をしなくなる為に、なにが必要かというと

「現実を実感すること」「この場所にいたいと思うこと」「きらきらした未来を感じる」ことが必要だと私は思うからです。


初雪に大事なのは、この世界にいたい!!って思わないと、復讐という死にいく行為を是認してしまう。

だから初雪が希をみて「こいつとずっと一緒にいたい。」と思ったからこそ、最初の「さようならだ」が「また会おう」に変わるんです。

 

 

「あの世で見ていよう。お前の勇姿を」

「そうして、お前に会いたいと思うからこそ、地獄の底から俺は再び這い上がって見せよう」

また会おう
「また……」
「あ、あぁ!」
「待ってるぜ!! 初雪」

―――初雪、希

 

 

 

 

シロクマ編と違うのは、佐々木を殺すために一年後の冬にも死者として現れた初雪が希編では、佐々木に復讐を企てた後、生者として復活したということです。

 

また希から卒業証書を貰ったことで、初雪は卒業することができた。

 

「卒業おめでとうございます」

「……」

「あぁ」 

「ありがとう」

―――希、初雪

 

 卒業をするということは、=で「春に至れた」と見ていいのかなー?なんて思います。

ただ春に至れたとしても、復讐は復讐としてきっちり果たそうとするのが「Graduation」とはまた別の道といった感じでしょうか。(保留)

 

+++

 

そして初雪が佐々木を殺したのかどうかは分かりませんが、復讐を「果たそう」としたのは確実です。

 

 次の日の学生生徒の会話ではっきりします。

 

 

「何か、街の方が、慌ただしいね」
「爆発があったとか。旧市街の方で」
「ええ? 誰か死んだの?」
「いや、まだ分からないけど」
「あの辺誰も住んでないから、大丈夫じゃないの」
「じゃあなんで爆発なんてあったの」

……

―――女子生徒2人

 

旧市街での爆発のせいで、街が慌ただしくなっている。

「Prologue編」では廃ホテルが焼け「Graduation編」の綾√を見ると、初雪が爆発によって宮棟達を駆逐廃ホテルを二次被害によって焼け壊します。

シロクマ編では、初雪は体中に爆弾を巻き付けていたことが言及されているので、なんらかの形で「初雪が爆発をおこした」と見ていいでしょう。


ここまでで「初雪が復讐を果たしに行った」というのは確定でもいいかもなーと。

で次はこれです。

「あ、雪」
「雪の卒業式かぁ」
「ま、桜にはまだ早いよね」

―――女子生徒2人

 

今まで気づかなかったけれど、卒業式の日に、桜か雪かで初雪の行動が分かるのでは?と思いました。

ちなみにGraduation(玉樹桜)では桜。

あずまは卒業式当日の情報なし(あずま編では初雪は復讐する気がなくなったと明言)

シロクマは卒業式当日の情報なし。
綾は一年前なので除外。
希は雪。
Prologue編は初雪が復讐を果たしたあと雪が振る。



初雪は「雪」を魂と表現することが多々あります。魂。魂が降り積もり街を覆い尽くすと。彼が復讐を果たしとき、まとわりついていたゴーストどもが報われ雪となりえるのかも。


つまり雪が振った卒業式は、初雪の復讐が成就した日かもしれません。
そして彼が生者として復活する卒業式は、全部桜です。


シロクマが3年になり行われる卒業式は桜。
東雲希が3年になり行われる卒業式も桜。
Graduationも桜。


「桜……満開だ」

―――希

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外を歩いている生徒の姿は見えない。
ただ、無数の桜の花だけが静かな賑を見せていた。絶え間なく。

その中を歩きながら、少女は無意識に、舞い散る花びらにかすむ景色の向こうに、捜してしまう。

今日にかぎらず、あれから……夏も秋も冬も……

死んだはずの少年の影を求め続けた。
そうしてこの春に、少女は不思議な確信で待ち望んでいた。

―――希

 

え?うそ! 

 

初雪は世間で死んだこと判定されているのか。気づかなかかったぞここ。

じゃあシロクマ編と同じように、検死解剖の結果・自殺しとして処理されている。あるいは行方不明として世間では死んだとされているのかも。


シロクマ編では、最後には初雪は姿を現さなかった。このことから私は、初雪は「桜の精(=ゴーストプリンセスと同じように接触することはできないけど応援する存在)」としてシロクマの傍にいることにしたと思っている。


けれど希のラストでは、初雪は人の姿を保ったまま存在し会話している。


この差はなんだ?

 

 

振り返ると、一本の桜の樹にけだるそうにもたれかかる、一人の少年の姿があった。

 

少女は立ち止まる。ぼんやりと、顔をあげる。 

わずか数メートルの距離の間には、2年間という月日。それに、互いの知らない運命が横たわる。 

けれども少年の口から約束の言葉が発せられた時、時間も秘密も一瞬にして氷解し、2人の間には目に見えない橋がかけられた。

 

「よう、希」 

「立派になったじゃないか」

 

「あ……」

 「卒業おめでとう」

 

今こそ少女はありったけの涙と笑顔を浮かべ、2人の間にかけられた橋を駆けていく。

 

「ありがとう」

 

―――初雪、希

 

 シロクマ編でも初雪は人間として、戻れることが可能だった。と見てもいい。けれど……けどなあ……やっぱり最後の「卒業おめでとう」とシロクマを応援するところなんて桜と一緒だからさ、「桜の精」としてシロクマとずっと一緒にいる風景のほうがぴったりだと思うのだ。

ということで考えてみる。

Q、シロクマ編と希編のラストの「初雪が人として帰ってくる/こない」の差はどこにあるのか?

1、初雪が生者になると決断した時期の差で、彼が「人」か「霊」かの分水嶺が生じる。

シロクマ編では初雪が生者になろうと思ったのは、シロクマを火の海から助けたあとだった。この時「こんな終わり方しか用意されていなかったのか」と初雪は呟くほどに"遅すぎた"んだと思う。

対して希編では、初雪が生者になると決断したのは、ゴーストパレードに向かう前である。希との「また会おう」の言葉がその証左である。さよならではなく、再会の言葉を口にしたということは、また戻ってくるという意志を感じるからだ。

 

→A。初雪が「人」か「霊」になるかの分水嶺は、生者になるかどうかを決めた「時期」と言ってはいいんじゃないだろうか。

 

 

 

 <終> 

 

 

「3年間、お疲れ様でした」

 

「皆さんの踏み出していく姿は、背中は、私のような弱い生徒への、何よりの勇気となるでしょう」

「どうか、胸を張って行ってください。送り出す私達に、先輩達の背中を押して、美しい未来を垣間見せてください」

「勇気をください」 

「卒業おめでとうございます。送辞。在校生代表、東雲希」

 

―――希

 

 



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Prologue編 感想(26452文字)

あずま夜 感想(25326文字)

シロクマ 感想 (26088文字)

小坂井綾 感想 (29804文字)

東雲希 感想(18500文字)

玉樹桜 前編 (31892文字) 

玉樹桜 後編(37254文字)

 



 <参考>

*1:「王」をゴーストチャイルドに。「民」をあのパーティーで焼け死んだゴーストの群れに当てはめる。