猫箱ただひとつ

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稲葉結衣+α 感想(11569文字)

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えび入れようえび~!

かにいれようかに~!

 

 

 

 

 

 

天音の失恋と涙

 

「私、昨日あれから泣いたし、悲しかったし、辛かったよ……」

「でもね、いーーーっぱい、それこそ涙が出なくなるくらい、いっぱい泣いたら、なんだかすーっとして……それからまた、ふたりの事考えてた」

――天音

 

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「涙がでる」、このことがなんだか綺麗で良いなと思える。童話かなにかで、涙を流したらその涙が宝石になるお話があったと思うんだけど、そういうのを思い出してしまう。

ぽろぽろと零した粒が、きらきらと輝く石に変わっていく。

泣ける、泣くってことはなにかを変換していく行為なのかもしれないと。
(つーかね! 天音ちゃんの自身の気持ちの開示レベルが高いから、いざこざ起きないんだよ! 何この人強い)

 

 

 

 

稲葉結衣と葛木晶

 

 

「なんだか、すごく長い間、晶くんとずーっと一緒にいるみたい」

「恋人同士になったのは、この間なのにね……でも、なんだかそんな気がするんだ」

「一緒にいると落ち着くし、ずっと一緒にいるみたいな安心感があるし……不思議だよね」

――結衣

 

 

 

「DNA……一致しちまったよ……」

「ふたりには、たぶん血縁関係が……ある」

 

 

 

「晶くんがわたしのお兄ちゃんだとしても、それでもわたし……」

「――晶くんの事がやっぱり好き」

 

――結衣

 

「双子だった場合、母親の胎内でお互いの細胞が交じり合って、一人で異なった遺伝子を同時に持つという現象がときたま起きるらしい」

「結衣ちゃんは確かに双子だったんだけど、妊娠早期に結衣ちゃんの兄弟はなにかの原因で死んでしまって、その遺伝子を吸収して生まれたのが結衣ちゃんなんだ」

「だから結衣ちゃんは、二人分の遺伝子を持っている。結衣ちゃんのお兄さんは、今でも結衣ちゃんの中にいるんだよ」

――八重野、蒼龍

 

 

 

稲葉結衣の許容度

 

「つまり、葛木晶という人間は、この世界のどこにも存在した痕跡がないんだよ」
+++

「晶くん……! わ、わたし晶くんは嘘をついてないと思います! どうしてこんなに話が食い違うのか、よくわからないけど、晶くんは……!」

――八重野、結衣

 

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葛木晶の生きてきた痕跡が、どこにもない。それ以上に、彼の発言には矛盾ばかりである。

――父親が生きていた
――前学校の出来事
――住んでいた場所

彼の言うことは、この世界で事実を積み重ねればなるほどに、「嘘」だという疑惑がどんどん膨れ上がってくる。けれど晶は嘘をついている様子がない。どういうこと……?

そんなよく分からない、けれど、晶という人物が怪しいのにも関わらず「晶くんは嘘をついていないとおもいます!」と断言しちゃう結衣はすごいなと思った。

つまりこれってさ、「互いに矛盾する"真実"を受け止められる」人間だから。

結衣が知っている真実では、葛木茂は死んで、母親は生きている。茂氏の通夜にもいったし、母親は現に生きているところ見ている。稲葉結衣は「実体験として、真実だという実感」を持っている。

この経験によっての事実判断は、「100%絶対」という認識を強くさせる。だってそこに"あった"のだから。疑う余地がない。そしてそれを証明するかのように、会長の手によって多くの事実を積層させていく。

けれど。そんな実体験による絶対的な真なる事実を、覆す証拠も事実もなにもない「反論」を彼女はよしとしたのだ。

このときに私が大事だなと思ったのは、「よく分からないことを猫箱に押し込んでしまう決断能力」の有無です。

自分が理解できないことが起きている、二つの真実が互いに矛盾している。そんなとき

どちらの真実も、"あって" いいよ!」と、猫箱の領域にシフトさせるかどうか? してもいいのか? したほうがよりよくなるか? そういうことを決断基準として知っておくのも良いと思うのです。

 

 

 

 

 

 

いつでもお家に帰れる

 

「銀の靴を使えば、最初からずっと、いつでもお家に帰れたんですね」

「そうだよー。でもそれだったらかかしさんや、ブリキの木こりや、ライオンさんと仲良くなる事もなかったんだよ

「みんな願いを叶えたんですね」


―――すずの、結衣

 

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すずのちゃんと結衣の会話が、心に染みる……。

もし晶が花火の事故によって、別世界へ飛ぶことがなかったら?
もしすずのちゃんが記憶に障害を持たなかったら?

そうなっていたら、晶は結衣に会うことも桜子に会うこともすずのに会うことも無かった。思い出を作ることも仲良くすることも出来なかったんだとすれば、それはそれは悲しいことのように思える。

 

 

 

九条くるりの問いかけ

 

「結衣だけど……九条も知ってるだろ?」

「……そう。そうなのか」

「……やるせないな」

―――くるり、晶

 

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くるりはたぶん「未来を知っている」んじゃなくて、ちょっと先の明日を予測しているだけなんだなーと思う。

雪代すずのの仕事、葛木晶の存在、あとは関わる人間の未来と過去。それらを加味しての「恋人は誰だ?」「そうか……」と。

たぶん……、晶がこっちの世界に残るだなんて知らなかったと思うんですよね。くるりの「やるせないな」という言葉からは、そういう響きをまったく感じ取れませんし。

 

 

 

 

雪代すずのの過干渉

 

「ふたりは、お互いのこと、どれくらい好きですか……?」

―――すずの

 

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すずのちゃんが、もっとも、晶という人間に干渉してきたのは結衣の物語。

「晶さんと結衣さんはお互いのこと、どれくらい好きですか?」と聞いてくる。二人の返事を聞いて、すずのちゃんは、自分の役割を超えた以上の判断をしたように見えた。

 

「よく、わかりました……」

はっきりとした、すずのの声。

それはいつものすずのの声に違いなかった。それなのに、どうして、いつものすずのの声と違うように聞こえたんだろう。

思わずそっと、手をつないだすずのの顔を覗き込む。そこにいるのは、間違いなく俺たちの知っているすずの。

 

その後、彼女は一度姿を消し、晶に手紙という形で自分の意志を伝えにかかる。

 

『晶さんへ』

『このお手紙を読んでいる頃、私は晶さんの前から姿を消していると思います。でも私はこの世界にいない存在だから、それは仕方のないことです。

晶さんは、私を探すかもしれません。
さがさないでください。』


『そしてもうすこし、自分の事を考えてみて下さい。残された時間、これからどうしたらいいのか、どうしたいのかよく考えてみてください。

晶さんも、私と同じ、この世界にはいない存在なのですから。』

―――すずの

 

……すずのちゃんは一度「未来」に帰った際、くるりに相談したんじゃないのかなと思う。自分の役割を超える判断にたいして、どうすればいいのか? どうすれば自分が納得いく形にできるのかと。

そして、こちら側に帰ってくるまでの間(とはいっても時間なんてものはタイムマシンには関係ないかもしれないけど)、晶に「どういう形があなたは満足できるのかちゃんと考えてね」と彼の不安をつつく。

んで、すずのちゃんはこの世界に再び戻ってくる。晶ひとりを屋上に呼び出し「二つのうちどちらかの世界」を選ばせる……と。

 

 

 

 

「心のままに」

 

「今のあなたは、夢の中にいるみたいなものです」

「だから目を覚ませばすぐに、あなたにとって元通りの世界になります」

「お父さんがいらっしゃって、お友達がいらっしゃって、ちゃんとあなたの足跡が残っている世界に」

 

 

「でも……」

「でも、結衣さんとは二度と会えなくなります」

「…―――え……っ……」

「結衣さんと、お別れをしなければならないという事です」

「な、なんで?」

「どちらも選べはしないからです」

―――晶、すずの

 

本当は、無理やりにでもあなたを連れて行くべきなのです

「そうしたら、誰も悲しむことなんてなくなるのです」

「こうやってあなたを迷わせる事もありません」

「でも…………結衣さんと、晶さんが…あんまり、仲が良さそうだから、私……」

「……私、二人が好きだから」

―――すずの

 

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この「無理矢理にでもあなたを連れていくべきなのです」ところに、ぬ?となにかしらの齟齬を感じてしまった。

すずのちゃんは、一度帰ったといった。(おそらく彼女の世界である未来世界へ)けれどそこで、くるりんや他の人たちに相談なんてことはしなかったのかな?

別に相談しようとしなくても大きな問題はないのですが、じゃあそうすると「すずのはどうして未来に一度帰ったんだろう」という疑問がむくむくとわきあがってくるんですね。

未来に帰って誰かに「相談した」「相談してない」とどちらともとれる「無理やりにでも~~」という言葉……むむ。

けれどどちらにしても、雪代すずのという女の子は、自分の意志で、自分の気持ちで「選択肢を用意した」ところに胸きゅんです。誰かの為に、晶のために、結衣のために、最良の道をどうか選んでくださいと。

+++

 

 

偽物が本物へと移り変わる瞬間

 

すずのは、その後はもう何も言うことは無かった。

あとは俺に、選べという事なんだろう。目の前のふたつのドアのどちらかを。

あの懐かしい扉をくぐれば、結衣にもう二度と会えない。もうひとつの扉をくぐれば、親父はもういなくなっていて、俺は『幽霊』になる。

―――両手に抱えられるものは、案外少ないんだよ。

夢でそう言った親父の顔が思い浮かぶ。
どれだけ少なかったとしても、だからと言ってどちらか片方を捨てるなんて俺には出来ない。

出来ないよ……。

「……すずの、俺は……」

―――晶

 

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本物……。

晶でいうところの「今まで自分が生きてきた世界」。そんな本物の世界と、「夢」なる偽物の世界。この二つどちらかを選んでください。選んだ世界が、あなたが生きていく場所になります。と問いかけられる。選択を迫られる。

けれど、晶は「結衣がいる世界(=夢)も大事だよ」と言う。

本物と偽物は両義的な関係だとは思うのだけれど、それでも、「偽物が本物と同等になる瞬間」というものがある。そして、その瞬間は一体どうして、どういう気持ちで起るのか?

自我が拡大され、その偽物を、自分自身と同じものの思えるようになる。人間は「自我(=自分)を、異なった存在まで拡大できる」と私は思う。

例えば、ピグマリオン伝説なんかはその類で、ただの無機物な土塊に、人間ちゃんはそこに「命」を見いだせる。魂を込め、人格を与え、自分と同じものとして扱うことができる。

大事な人が泣いていたら、自分自身もそれと同じ痛みを覚え泣いてしまうそういった力が、私達にはあるから。そういった現象がたびたび起る。

自分という範囲が拡大され、モノにまで自分を付加するその行為。晶が行なったのもそういうものだろう。結衣が、結衣がいる世界が、もう「自分」と同じくらいのものとして見ている。

だから偽物と本物の価値の逆転が起きるんだろう。

 
そして、とてもっても大事な選択の前では、「心の赴くままに」という決断基準がいちばん大事だよね、と思うのです。

「だって、結衣は、俺がどこの誰でも、どんな存在でも、好きだって言ってくれた」

「それなら俺も……自分がどんな存在になっても、結衣のことを選ぶ」

―――晶

 

 

 

 

オズの魔法使いと絵本

 

「晶さん。あなたが結衣さんと……そのまま、結衣さんとの絆を強く保っていれば

やがてあなたはこの世界に、いなくてはならない人になります」

「だから……」

すずのはそこで辛そうに声を詰まらせたが、俺には理解できた。だから……この先、結衣としっかり幸せになってほしい、と言いたいんだろう。

―――すずの、晶

 

「一緒に絵本、読みましたよね」

 

「あの絵本の最後、主人公の女の子はお家に帰りましたけど……」

「銀の靴を脱ぎ捨てて、そのまま大好きな仲間と魔法の国で楽しく暮らす……」

「私、そんなハッピーエンドが、あってもいいと思うのです」

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なんていうかさ、晶が本来の世界に戻るのって、=晶が幸せみたいになんとなく思える。そういう図式が私の価値観にはめ込まれてしまっている、

「本当の世界」に戻れることが、最良なんじゃないの? と。無意識に。

なんだろうね?

どうも「最初にあったもの」に価値を置いてしまうものだけれど、別にそんなことなくて、「後から」のものがそれ以上の価値を持ってしまうことって結構ある。

晶が「夢の世界」を選んだことも、本当の「お家」に帰らなくたっとしても、それはおかしな事でもなんでもないよ、と。

+++

 

「なんで、最後……絵本の話したのかな……すずのちゃん」

「あぁ……」

―――あぁ。わかっている。
たとえお家に帰れなくても……。
これはハッピーエンドなんですよって。
すずのはそう言いたかったんだよな。

 

 

 

 

 

 

誰かに赦されたい?

 

『両手に抱えられるものって、案外少ないんだよ。だから…

大事な人の全部を、ぎゅっと抱きしめてあげなさい』

―――でも、それが許されないことだったら?

『誰かに赦されたい?』

―――……。

『違うんだよ。自分を許してあげるんだよ』

『精一杯、大事な人から離れないように。ぎゅっとしてあげられるように』


―――葛木茂、晶

 

これはよく分かる。誰かに謝りたい時、誰に許してほしいとき、それは自分を許せなくなっているからなんだろうと。

どうしてそれを謝りたいの?
どうしてその人に赦されたいの?

そういった疑問を自身に投げかけ、答えていくということを繰り返していくと、最後には、「その事について許されないと、自分のある領域について許せないから」というものが私は多い気がする。

この「ある領域」というのは、心の仲で絶対的に決めている価値観だったり、自尊心の類だったり、無意識の価値観だったりそういった、 "捻じ曲げちゃいけない" なにかである。

それを "捻じ曲げる" ということは、簡単だし楽ちんだ。もう何にも縛られることはなくなり、罪悪感や痛みはとても薄くなる。代わりに自分が自分だという一貫性を保てなくなり、「自分」というものがよくわからなくなってしまう。

「自分」というものに愛着があればあるほど、"捻じ曲げる" ことにたいしてすごい拒絶感がある……ということだろうか。

そしてこの、"捻じ曲げ" てはいけない領域に対して、自分の言動が矛盾してしまったとき、自分を罰するという意識がはたらくのかもしれないなんて思った。

晶のお父さんが言っているのは、自分の大事な価値観を捻じ曲げるってことじゃなくて、受け流す。そういった「許す」という意味に感じ取れる。

大事なものを大事なままに、大切だと思うことを大切だと思ったままに。

 

 

 

家族

 

「晶くんは自分のおうちみたいに、わたしのところへ帰ってきてくれていいんだよ

―――結衣

 

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結衣の実家に、電車でむかう途中、結衣が呟くようにして出た言葉。

晶は、「結衣がいる世界」を選んでしまったとき、父親という家族を失くしてしまった。つまり、彼は「父親が死んだ世界」を選んだといってもいい。

母親もすでに他界し、父親もいなくなってしまったこの世界で、彼には「家族」と呼べるものいない。でも、でもさ! そういうのってはじめからあったわけじゃなくて、みんな自分で自分たちで作りたい作ろうと思ったから出来るものでさ! だから、結衣と結衣の家族と繋がるっていうことは、それを晶と結衣が望むのならまた別の「家族」ができるってことでさ……。それはとっても微笑ましいことだなと思うのです。

帰れる家って、ただいまが言えるお家があるのって、いいよね。

 

 

 これで結衣は終わりです。次はすずのちゃんの物語に行きますー。(タイトルで「雪代すずの」の名前を扱ってしまうと、ネタバレ全開だったので、結衣の記事と合体させちゃいました)

 

 

 

すずのちゃん―Die zukunft hat schon begonnen」―

 

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が、その瞬間、茉百合さんのスカートが思い切り捲り上がる。+++

すずのはいつのまにか交差の影に隠れてて、小さなガッツポーズで俺を祝福してくれていた。

―――晶

 

すずのちゃんの絶妙な支援が、可愛すぎる……。そのあとのガッツポーズも可愛すぎる! なにこの可愛い魔神は!!

 

「わ……わたしも、晶さんと同じチームですから」

 

ねー!

 

 

 

水が危険ってなに?

 

「幽霊って、雨が振ると見えやすくなるもんなのかな?」

「そう、なのでしょうか……?」

「わかんないか」


「あって、でも! あの、なんとなくなんですけど……」

「何?」

とにかく水は危険だと何度も教えられた気がします!」

―――すずの

水に近寄ってはいけない、雨の日に外に出てはいけないって……」

 

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さいしょ、すずのちゃんのことを「くるりんが開発した超ウルトラ高性能ロボットタイムマシン?」なんて思ってたんですけど、たぶんすずのちゃんは「人間」でしょう。

エピローグでマックスが、「睡眠の有無」について語っていました、おそらく人間……かな?

もしロボットだとするなら、水が危険!っていうのは水に機会がふれたらショートしてしまうのかなっと思ったんですけど、そうじゃなくてこれは

水(=液状)のものに、すずのちゃんが触れると、「すずのの存在がバレる」といったものでしょう。タイムマシン・フライアに、ステルス機能がついていても、この点だけは防ぐことができないのでしょうね。

 

 

 

 

人と違うってこと

 

「だって……私、幽霊で…。女の子じゃないと思うので」+++

だから昨日、一緒にお風呂入っても平気だったし、今こうして俺が話をしてもきょとんとしてたんだ。なんか、ちょっと納得した。

―――すずの、晶

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すずのちゃんが言っていることを、私の体感レベルで持ってこようとすると、「私は日本人だけど、ドイツ人ではないよ」みたいな感じなんだろうか。

え、なにを当たり前な? 私は幽霊ですけど、女の子じゃないですよ? みたいな。

けれど、晶から見ると

 

「俺から見れば、すずのは普通の女の子となにも変わらないんだよ」


となる。

すずのちゃんからすると、「え?え?!」みたいな心境のような気はする。「あれ私ってじつは女の子だったんですね……」と。でもこういった意識って、すぐ刷新されるわけじゃないくて、そう思うにはそう思うだけの理由や事実があるからなんですよね。

そういう「実体験」のレベルにまで引き上げられた、事実は、否応もなく「あー自分はやっぱり女の子じゃないんですよね……」と思ってしまうんじゃないのかなって思います。

 

賑やかな廊下で、自分ひとりが取り残されているような感覚に陥ってしまう。+++

それからすずのは、浮かべていた笑顔を消した。

結衣はこうやって手を引いてくれるけれど……。他の人、例えば天音や桜子には、やっぱり自分の姿は見えないままだ。どれだけ一緒に楽しみたいと思っても、お祭りには決して参加はできない。

―――そうだ。私はここにいるべき人間じゃない。

―――すずの

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すずのちゃんが見えるのが、現段階では、晶・結衣・マックスの三人。けれど、すずのちゃんの周りにはそれ以上の人間がいる。でも、誰も彼女のことを気にも留めない。存在していないかのように扱う、事実が、すずのちゃんの不安を増大させていく。

この「自分は周りの人とは違う」っていう感覚は、なんだろ……なんだろうね……。自分の「存在理由」とでもいうべきものが、瓦解していく感覚を覚えてしまうものなので、これを味わってしまうと、不安でいっぱいになるのは無理もないよねと。

おそらくこれも「共有」という概念で言い表せる感情です。誰も彼もが「自分」という単位を共有できない(=知覚できない)。このことが、他者と繋がっていない感覚、閉ざされた心的世界の気持ちで断絶されちゃうんだろうなー……と。

 

+++

「私……考えました…

それで、思ったんです。私、幽霊なんです。普通の女の子じゃなくて、人間でもなくて

だから、あなたの気持ちを受け入れる事はできないです……」

―――すずの

 

「私は、他の人と違います。晶さんとは絶対に結ばれない、と思います

今は一緒にいると楽しくて夢みたいな気持ちだけど、いつか絶対に後悔する時がやってくるから……

近づきすぎて、幸せすぎたら、きっと後悔するって思ったから」

―――すずの

 

 

 

「自分」と「他者」は"違う"。

そう思ってしまうことは、限りない不幸です。たとえそれが事実だろうと真実であろうと関係なくて、そういう思考に至ってしまったことが、もうどうしようもないんですよね……。

「自分」という単位は、それほどまでに大きく重い。自分と相手は同じ、自分の気持ちは誰かと共有できるって思えると心が楽になるのは、そこらへん関係していると思うのです。

 

 

「幽霊だという事はつまり、この世界にいちゃいけない存在だって事だから、だから本当は、こんな風に関わっちゃいけなかったんです」


「恋なんてもってのほかです。もうすぐお別れなんです……! 私は消えなきゃいけないんです!」

 

 

 

 

大事なになればなるほど?

 

 

「晶くんが言ってた事。

大事になればなるほど、別れが辛くなるって。一緒にいるのが辛いって。そんなのおかしいよ

それだったら、最初から大事なものを何も作れないよ。本当に大切なものって、たとえ離れてもなくならいものじゃないの?

大事なものって、そばになくてもいつでも心の中にあるものじゃないの? そういう気持ちを恋って呼ぶんじゃないの?」

―――結衣

 

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結衣の言葉を聞いてて、「信じること」について、ふと思い出してしまった。

誰かを「信じる」ことって、ときにとても強い傷を伴う。傷口に触れると、あまりの痛さに泣いてしまうことだってある。そんなふうに。その考えを突き詰めていくと、「痛い思いをするくらいなら、誰か信じないほうがいい」となってしまう。

うんうん、分かる分かるのよさ。それはとっても楽ちんな生き方だからね。「誰かを信じる」ってことは、その誰かに心的リソースを奪われることに等しい。そのことを、誰かさんは人間強度が下がるといい、またある誰かさんは縁を鎖に見立て、身動きが取れないと言った。

けれど、楽だからといった楽しいわけじゃない。痛くないからといって、嬉しさにかわるわけじゃない。結衣がいうように、そんなんじゃ「最初から大事なもの作る」、なんてこと出来ない。

何か大事なものが欲しいとき、そこで尻込みしてちゃダメで、リスクを賭けて、痛みを投げ打たないと手に入れるなんてことは出来ないのかもしれない。どっちにしても痛みを追うことだってあるし辛さを感じることだってある。……そういうものなんだなあと実感してしまう。

+++

「確かにあれから色々考えて、結衣が言ったように思った事もあるよ……幽霊だとか、別れるのが辛くなるとか、そんなのは関係ないって。
でも多分、すずのは違う。違う考えだから拒んでるのに、俺の気持ちを押し付けちゃっていいのか……?」

違うよ晶くん! そうじゃないよ!

「そうじゃない?」

「晶くんは自分の気持ち、すずのちゃんにちゃんと伝えた?あれから、すずのちゃんとお話した?」

―――結衣

 

結衣はこうも続ける。「だったら、ちゃんと伝えなきゃ。ちゃんと伝える前から尻込みしてちゃだめだよ!」と。

内蔵をかっさばくリスクを、対立する可能性を、衝突する痛みを全部全部覚悟しろと。

 

 

 

 

 

記憶の全消去というお願い

 

「お願い……神さまに、お願いしてたから」+++

「…私がいつか消えてしまう日が来た時、晶さんを傷つけないでいられたいいのにって

私がいなくなってしまった後、私の事を全部忘れさせてあげたらいいのに」

―――すずの

 

「忘れた方がいいなんて、そんなことはないよ」

「自分にとって、本当に大切なものは、いつまでも心の奥からなくならないと思うから」

「……それを、思い出に縛り付けてしまうなんて、思わないで」

―――晶

 

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すずのちゃんのお願い、「雪代すずのが消えたあと、彼女の存在に関する記憶を忘れる」というものは一見やさしそうに見える。けれど、"される側" からするとそんなことないんですよね……。

だって、それは今まで積み重ねてきた思い出とか、日常とかを全部否定しちゃうものだから。晶がいうように「忘れたほうがいいなんて、そんなことはない」。

 

 

 

 

 

 

未来のくるりんの年齢

 

「葛木」

「なに?」

「お前はすさまじい苦労性」

「な、なんだそれ」

「でも報われるときは来る。やがて」

―――くるり、晶

 

「エクストラ」にある「プロフィールデータ」を見ると、どうもすずのちゃんがいる世界は、九条くるりが高校生から見て「20年後」の世界らしい。

えけどちょっとまってよ?……

容姿が変わらないのはいいとして、するとくるりんは35、6才になっているということ? な、なんなんたるじーや!!!

なんかもうそれはそれは、すごい事実のような気がするんですけど、どうなんですかね?!!!!

 

 

 

 

 

さようならっていうお別れ

 

「私は、もう未来に帰らなければ…いけません」

「とても楽しかったです。何気ない毎日が、きらきら輝いててて……かけがえのない時間でした……」


「私はとても、幸せでした。ありがとうございました。

晶さんのことが……とてもとても好きでした」

―――すずの

 

「……最後に言う言葉は、はじめから、決めてました……晶さん。さようなら。どうか幸せになってください……」

 

 

そして、すずのもいなくなってしまった。

いや、違うんだ。

いなくなったんじゃなく『いなかった』んだ。寂しいと思うことすら、できないんだ。そうか。

俺が今から生きていく時間は、そういう時間なんだ。

―――晶

 

もし晶が生きている時間が線上じゃなかったら、すっごーく苦しかっただろうなって思う。

つまり、今晶が生きている時間が、すずのちゃんがいる時間に繋がっていなかったらと。違う電車にのっていて、別々の路線を走っているんだとしたらと。

でも、そんなことはなくて、晶が今から生きていく時間は、すずのちゃんがいる時間に向かっているんですよね。

そうです。「もう未来ははじまっている」のです。この言葉の響きがとてもいいですよ……うんうん。

 

 

「その、タイムマシンの事とかさ……俺もなにか手伝いたいんだけど、ダメかな?」


「え……」+++

「なに? どうしたの?」

「その……何か、残したいなって思ったから……未来に」

俺が少しでも手伝ったものを、未来ですずのが使うのかもしれないって―――そう思ったから。

どんなに先になるかもわからないのに。何か残せるかなんて、わからないのに、だけど俺はそうするんだって決めた。

―――晶、くるり、天音

 

 

いま俺が囁いたこの言葉が、いつか、どこかですずのの声で、音になって。いつになるかはわからないけど、繋がるんだ

 

 

―――すずの。

いつかきっと。

未来にいるすずのに、何かを残したいんだ。

どんな形であっても、未来で君を探せるかな。

すずのが探してくれるかな。

いつかきっと繋がるから

―――晶

 

 

 

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時間はいつだって流れていって、

そこで何かを見つけて、

何かを落っことして、

また探して、

そうして、変わっていく。

どこにいても、どんな場所でだって、いつだって、見つけるよ。

普通で、なにげなくて、あたりまえの

特別なもの。

 

 

終わりです。(例のごとく言葉メモで終わるという)

 

 

 

言葉メモ

 

 

 

「うんうん。ご飯とかおやつとか、素敵だよな。いいよな!」

ご飯やおやつは俺に幸せを運んでくれる一番の素敵アイテムだった。今までは。でも、今は少し違うと思っている。

「でもさ、こうして一緒に食べるのが、一番なのかなって思う」

「うん! 大好きな人たちと一緒なのはね、一番だと思う。私も」


―――晶、結衣

 

今頃、あの扉の向こうの親父は何をしているんだろう。元気でいるのかな。

夢のような出来事だったけど、あの時のことは今でも忘れない。

きっと夢ではなかったのだと信じている。

 

「好きなのに。好きなのに。どうしたらいいのかな……」

「運命とか、そういうの……そういうの」

「そういうものの前じゃ、好きになっちゃいけないのかな……」

―――結衣

 

 

俺たちの真ん中で、手をつないでいたすずのの姿はない。それはまるで、最初から俺と結衣だけが手をつないでいたようで、すずのの感触もぬくもりも、どこにもない。

 

 

「しばらくは多少の睡眠障害が発生するかもしれない。夢を見ているような感覚……白昼夢のような現象」

 

「どうしても、一度……帰りたかったのです」

―――すずの



 

「私が……見えるのです、か?」 

「何を言ってる雪代、ワタシは開発者なのだから当たり前」 

「……え…」 

「連絡もよこさないし、こっちからの電話もとらないし、……何が合ったの?」 

「どうして、お前と葛木はまだこんなところにいるの?」

 

 

「こんな事なら、ワタシが来るんだった。いくらテストケースだからと言って、こんなにハプニングが重なるとは……」

 

 

 

「晶さんに私の姿を見えなくなったのは、私のお役目が終わったからです 

あなたがもう要救助者ではなくなったので、システムの可視対象から外れたんです

 

 

「私は……未来から来た人間です。晶さんのことを助けるために、来ました」 

「はい。フライアといいます。プロとタイプはこの学園で作られたものです。晶さんも一度見たはずです」

 

 

「覚えていますか。この学校に初めて来たとき、花火の爆発に巻き込まれたこと――― 

あのときの爆発で、あなたは違う世界に飛ばされてしまったんです」 

「私、晶さんを助けようとしたのですが……一緒に爆発に巻き込まれてしまって……そのショックで、記憶を失ってしまって」



「私があの時記憶を失ったりしなければ……こんなに長い間、晶さんを違う世界で一人ぼっちにしなくてもすんだのに」

 

「世界を飛び越えたときに、時間のずれが出来てしまって……時間が少し戻ってしまったので、晶さんには二度もお掃除をさせてしまいました。ごめんなさい」

「世界を飛び越えたとき、晶さんは私の事はすべて忘れてしまうはずだったんです」

 

「こちらの世界にありえないことは、記憶から消えてしまうのです。私は、それを防ぐ装置を身につけているので、大丈夫なのですけれど……晶さんは、何も持っていないから」

 

 

「晶さんは健忘現象に耐性のある遺伝子を持っていたので……きっかけがあれば、もしかしたら…とは思っていましたけれど」

 

「フライアは、ごく近い世界の間でなら、逆転制御現象を引き起こすことが出来るんです 

えっと、つまり……私と一緒にフライアで世界を飛び越えた時、晶さんの存在や、今までやってきたことはきちんとこの世界にも反映されたんです」

 

終わり。

 

<参考>

 

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