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猫箱ただひとつ

物語追求blog。アニメ、マンガ、ギャルゲーを取り扱ってるよ

『大図書館の羊飼い』感想_人生はその人のものだから(6335文字)

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大図書館の羊飼い 初回限定スタンダードパック[アダルト]

満足度:★★★+(3.8) 


「人生は、その人のものだから」


  プレイ時間   41時間
  面白くなってくる時間  1時間
  退屈しましたか?   していない
  おかずにどうか?   使えるんじゃないかな
  お気に入りキャラ   小太刀凪

公式HP│ 大図書館の羊飼い Official Web

 

 

「羊飼い」のポイント

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・学園ADV 
・「羊飼い」という学園の七不思議的噂がある

おすすめしたい人は、「学園物が好きな人」でしょうか。退屈はしないと思うので、特に不安なくオススメできるような気がします。

私は4月16日にプレイ開始して、5月10日にプレイ終了したんですが、このとおりプレイ時間は「長め」です。購入する時は、一ヶ月かかるレベルの作品ってことを考慮すると良いかもしれません。

<!>ここから本編に触れていきます。

 

 

 

 

 

羊飼い――寄り添うこと――

f:id:bern-kaste:20140605030600j:plain♪[Waving Water]


世界にはケダモノしかいない。他者の肉に噛み付き、千切り、奪い取ることだけにしか興味がない下等生物。ああ醜い。人の尊厳を剥奪することでしか、己の欲望を満たせないクズで溢れかえっている。

真綿で首をゆっくり絞めるように。
ナイフで全身の皮膚を剥いでいくように。

そいつらはどこにでもいるし、むしろいないことがないくらいにたくさんたくさん分布している。世界中のあらゆるところに、大地の広域をカバーするほどに存在しているケダモノ(人間)

―――世界に興味がなかったんじゃない、
―――世界が無意味化したわけでもない、
―――ただ自分を喰い殺そうとする環境に耐え切れなくなっただけだった。

この世界にはあまりにも自分と違う存在が――ケダモノ――が多すぎて、ふと思ってしまう。生まれてきた世界を間違えてしまった? そう。生まれてきた世界を間違えてしまったんだ。

私が生きるべき場所はこんなトコロじゃなくて、私が居るべき世界はもっとチガウはずなんだよ。人間の魂に抵触してくるような、聖域を笑いながら踏みにじるそんな存在がいないセカイ。

生まれてきた世界を間違えたんだから、しゃーない。

しゃーない、しゃーない。

――小太刀凪 

小太刀凪は一体どんな風景を見ていたんだろう? 幼少期に虐待され、両親から愛を貰えず施設に放り込まれ、里親が見つかったと思ったら人間をペットか何かだと思っている奴ら。

そんな…――……―……―――現実に一体なにを期待して、夢みて、希望を抱けることが出来るんだろうか。

彼女が言う"ケダモノ"とは=人間だ。自分以外の人間をケダモノだと言うのなら、それは誰一人として信じないことと同じであり、誰とも深い距離になれない事と等しい。周りは全て敵で、味方なんて誰一人いない。その認識が例え間違っていたとしても彼女には"そうとしか"見えないのだ。


それはなんてシジフォス的人生なんだろうか。

他者と深いコミットができないってことは、ひとりぼっちの世界を生きるということになる。会う人会う人全員が敵でしかないという認識の元、真っ暗な世界を歩き続けるそんな人生。

いったいそんなものに、どれほどの歓びがあるのか……もう考えるだけで最悪だ。

だから彼女が「羊飼い」という別世界に憧れるのも無理はない。
 

帰るべき世界なんてどこにもないのだ。
でもさ、逃げたっていいじゃない。

もし、人間を辞められるなら、辞めたいと思うじゃない。
こんなにもどうしようもない世界から、抜け出したいと思うじゃない。

でなきゃ、自分が消えるしかなかったのだから。

――凪

「羊飼い」という存在は小太刀凪にとって、どれだけ心の拠り所になったか計り知れない。

こんなクソッタレな世界からおさらばできるということの他にも、羊飼いの活動によって誰かを幸せに導くことが出来た"実感"を得られ、そして同じ目的意識を持った仲間という他者との"活動"の2つを得られる。

人間が生きていく為に必要な「世界への手応え」と「他者との活動」が、羊飼いという役割を通して与えられているということに感涙しても不思議じゃない。

この羊飼い世界には。今まで凪を苦しめてきた"ケダモノ"は存在しない。何故なら羊飼いは皆、誰よりも人の幸福を願っている連中ばかりで、誰かに危害を加えるなんて真似はしないのだから。

しかし「羊飼い」になるためには、2つの条件がある。それは「誰にでも平等であること」「人間の幸福を祈れる」ことである。この内の1つ、つまり誰かの幸せを祈れない為、小太刀凪は羊飼いへの採用を見送られた。

彼女の在り方はいつだって、羊飼いとは人間上位の存在で「羊を導く先導者」という位置づけだった。けれども違うんだよね。羊飼いとは、人間を導くのではなく、人間に"寄り添う"だけの存在でしかない。そうでなくてはならない。

このことは生徒会選挙・白崎VS多岐川で何度も繰り返されてきた。

 

「一生懸命とか全力とか、みんなでとか……ばっかみたい」
(中略)
「生徒会長なら、多少厳してくても、みんなプラスになる道を探すべきじゃない?」

「白崎もそうするだろうよ」

「白崎と多岐川さんで違うのは、白崎はその厳しい道を一緒に歩いてくれるってことだ

――筧、凪

 

「しかし、従であった結果として、人が誤った方向に進んだらどうする?」

(中略)

「それは、羊飼いが実力不足だったという……諦めるしかないでしょうね」

(中略)

「そこで手を出してしまうなら、結局、羊飼いは自分のエゴで動いたってことになるでしょ」

――小太刀、黒山羊

 つまり、人類が「主」であり、羊飼いは「従」という体を取るのならば。人間が滅ぶことになった場合それを善しとし、羊飼いもまた一緒に共倒れになってもいいと考えることに他ならない。

そしてこれは何も羊飼いだけじゃなく、人類全体にも言えることだ。

人は人を自在に変えられないように、人の自由を奪ってはいけないように、他者の行動にあれこれ抑制したり制限したりしてはいけないということだ。言っている意味が分かるか? 桜庭のように"交渉"をして相手の弱みにつけこんだり、桜庭のように自分の意見をさも正しいことのように"押し付けたり"することをやめろっつてんだよ。

もう一度繰り返す。

人は人を自在には変えられない、他者をどうにかしよう、ああしよう、自分の思い通りにしよう、自分の価値観に沿わせようと思うこと自体が間違っている。そいつの人生はそいつのものなんだよ、間違える権利も、失敗する権利も持っている。

何度でも繰り返す。


人は誰かを"導く"ことなんて出来ない。


「大切なのは、願わず、見捨てず、ただ寄り添う……そういうことだと思う」

――ナナイ

 
白崎がミナフェスで大観衆の前でスピーチをしようと思ったのは何故だ?
桜庭が絵の道に進もうと思ったのは何故だ?
佳奈すけが自分の内蔵を曝け出してもいいって思えたのは何故だ?
御園がコンクールで楽しみながら歌うことが出来たのは何故だ?


―――みんなみんな誰かが"寄り添って"くれていたからなんだよ。筧が、白崎が、佳奈が、御園が、高峰がみんなが、だよ。

ミナフェスの時、筧が白崎に"期待"をしていたら彼女はスピーチをしようだなんて思わなかっただろう。失敗してしまう恐怖を持っているからこそ、白崎は大観衆の前で話すことを躊躇ったのだから。しかし筧が取った行動は"応援"だった。応援とは結果を望まず、ただ相手の感情に寄り添うこと。その前提に基づく言葉を(「ガツンと失敗してこい。そしたら、また練習しよう」)白崎にぶつけたからこそ、彼女の心は動いたんじゃないか?

そして筧が悩んでいる時も、誰かがまた「アドバイス」するわけでもなく、「無理やり行動させる」わけでもなく、ただ支えて寄り添ってくれていた。

 

「これ、学食の半額券なんです」

「1枚しかないんで、みんなには内緒ですよ」

オールメニュー半額、と書かれたチケットを握らされた。

「いいのか?」

「おいしいもの食べて、元気出してくださいよ。朝なら私もいますし」

――佳奈、筧

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大切なのは誰かを導くことでも、誰かに助言を与えることでもなくて、ただ一緒に"寄り添って"あげるだけでいい。

こいつの笑顔がみたいなとか、幸せになってほしいなと願う気持ちがあればそれでいい。あとは自分が出来る範囲でそいつに寄り添ってあげるだけでいい。

だからこそ、その「祈り」に人は心を揺さぶられるんだよ。  

小太刀に幸せになってほしい。
同情でも哀れみでもない。
ただ、あいつの笑顔が見たいと思う。

――筧

もし筧にこんな気持がなければ、凪に何を言ったって無意味でしかない。第三者からの傍観者目線の言葉が__いったい__どこのだれに__届くっていうんだよ? 

 

「小太刀のお陰で、俺は毎日が楽しくなった」

「世の中、そんな捨てたもんじゃないって思えるようになった」

「だから……だからこそ、お前に伝えたいんだ」

「……一緒にやってこう」

――筧

 だからこそ、

だからこそ、筧が凪の幸福を願っているからこそ、この真摯な言葉は小太刀凪の心に届く。

 

そして「寄り添う」ということを、『大図書館の羊飼い』は幾度も映しだしてきた。

白崎が結末を望まないで、"手段"に拘ったこと。
御園が"勝ち"ではなく"楽しさ"に拘ったこと。
桜庭が誰にも役に立たないであろう"趣味"に没頭したこと。
佳奈が嫌われるかもしれない未来を恐れず、"今"に賭けたこと。

そして、筧が父親に言った言葉。 

俺達は、親父がその能力で予見した『幸せな結末』がほしかったんじゃない。 

ただ、幸せを目指して一緒に歩きたかっただけなのだ。

――筧

 
そう寄り添うということは、結果がどうだとか、評価がどうだとか、未来がどうなるとかそういうことを勘案しない。

ただ一緒に歩いて、一緒に、今、を楽しんでいくことを「寄り添う」ということ。そして誰かに寄り添うことができれば、それはもう立派な「羊飼い」って言ってもいいんじゃないか。

「あんたは、私にとっての羊飼いだってこと」

「だって、ずっとずっと前から、私が幸せになる道を教えてくれてたんだから」

――凪

 
そんな誰かと生きる世界は、もうめちゃくちゃキラキラしているんだよねっ。


だって、俺たちはもう知っているじゃないか。

誰かと生きる世界は、そう捨てたもんじゃないってことを。

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大図書館の羊飼い』――――誰かを導くのではなく、誰かと寄り添う物語。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――


―――――――


 

 

 

   すべてを叩き壊す、暴力的な雨。

 

   生きている限り、それぞれの上に、それぞれの雨が振る。

 

   でも、もし誰かと手をつなぐことができたら、

 

   もし、誰かと抱き合うことができたら、

 

 

 

   どんなに悲しい雨の中でも歌えるかもしれない

 

 


 

f:id:bern-kaste:20140605031738j:plain♪[ストレイトシープ]


はいということで感想です。

今回もいつもどおりだらーっと語っていきます。(そろそろここのテンプレ考えようかしら? なんというか何を語るかいつも躓くんですよ)

まず上述した「雨」の言葉が、結構好きかも?しれないなと。

桜庭ちゃん呆れたり怒ったりしてきたわけなんですが(個別感想でもこの記事でも)、実際のところ別に嫌いじゃないんですよね。ただ私にとって許容できない考え方と価値観持っているだけだなーという印象です。

面白いのがたまもっちゃんの「人間性」とでも呼ぶべき「倫理観」「価値観」の半分くらいカチンときているんですが(←才能と自己欺瞞のお話)、とはいっても別に「あーもうふぁっくなの!」っていう感じにはならない。

ここらへん、自分でも不思議で一体何が原因して「マイナス部分」を帳消しにしているんだろうか? あるいはマイナスはマイナスのままで、プラスと区別して俯瞰できているってことなんだろうか? (まさかそんな達観してないしな……)

多分考えられるのは、桜庭ちゃんのプラスの部分である、「人が言えないこっ恥ずかしいことを発言」できるのと、「リーダシップ」さがマイナス部分を帳消しにしている気がするような? ふむ。

大図書館の羊飼い』_体験版で面白い!これは期待できそう!と思ったんですが、終わってみると(決して悪くないんだけど)、まあまあみたいな感想で着地した感じでしょうか。

私的には、今はもっと心を抉る感じのがやりたいのかもしれない。心臓にナイフでグサグサ突き刺さって血どばどば流れるやつですね。


あとはなんだろうなあ……。

そうですね、ナナイさんが筧の言葉で自分の生き方を変えないところはグッときました。筧がいかに父親の生き方を間違っているように見えても、私にはそう見えない。

ナナイさんが頑張って頑張って頑張り続けた人生を、否定することなんて誰にもできないもの。彼は彼なりに苦悩を抱えて、痛みに耐えながら歩いてきた道を、"間違っていた"なんて言いたくないよね人情的にさ。

それは今まで言った通り「結果的」にじゃなくてその「過程」を見たいってことですね。



そういえばこの記事だけではなく、『大図書館の羊飼い』の感想を他にも5つ書いたんですが、楽しく書くことが出来たのでほくほくです。共通√~個別√の感想を「楽しく」書けるかどうかで、その作品の満足度って変わってくる気がします。

プレイ中ではなく、プレイ後でも楽しいっていうのはいいね!(とはいっても満足は★★★★に行ってないんですけどね)

前回『水月』の感想ではへとへとだったので、面白く楽しく書けたのはいい対比だったかもですね。

…………もう水月みたいなああいうドギツイのは嫌なのよ……。



大図書館の羊飼い」の記事

共通~個別の計5記事です。

え、白崎がいないですって?(白目)


てことで終わりです。

また何かしらの縁があればどこかで会いましょう。

またね。

 

 

心に残った言葉

 

 

「人生は、その人のものだから」


――小太刀凪 

  

「大好きな人と朝の時間を過ごすことが夢だった」

――桜庭

 

 

【ユニーク】

 

「プライバシーとかないのな」

あるあるある。あると信じればきっとある

――筧、凪

 

「けっこう前から自炊ゼロ運動中なんだ。エコだろ?」

――筧

 

「割とつまらない目標ですね」

「ストレートすぎるわ」


――御園、筧

 

「嬉野さんは、ああいう友達はいないの?」

「筧君と同じですよ」


――筧、嬉野

 

「仲間のために羊飼いになるってのは悪いことなのか?」

「胡散臭~」

「私は『人のため』なんて一番信用できないけど」

「お前はそうかもな」

「俺様ちゃんは違いますか。まーいーですけどね」

――凪、筧

 

凪「そんなに思い入れがあるように見える?」

筧「ああ、メジャーデビューを夢見てる駆け出しアーティスト的な感じだ」

凪「お先真っ暗っぽくない?」

筧「みんなそこから始まるんだ。俺だってそうだった」

凪「あんた誰よ? 意味わかんないし」

 

「かつての鈴木ファンとしては残念ですが、少しだけ羨ましいような気もするんですよね」

2ドットくらいですけど

――嬉野

 

 


<参考>