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真剣で私に恋しなさいにおけるADVのテキストテンポ 感想#5

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 『真剣で私に恋しなさい』のテキストが読みやすい。あまりにも読みやすいので"サクサク"という音がするくらい。

一体全体どんな理由でこれは成り立っているのだろう? 多分

  • 地の文が圧倒的少ない。
  • ワンフレーズ
  • 情報密度

 この3つが要因かもしれない。

 

 (1)地の文が圧倒的に少ない

 

見てもらえれば分かるように、

 

百代「これが川神魂だ」

岳人「あえて荒野を行かんとする男の詩だぜ」

一子「女の子のアタシだってわかるけど長いわ」

翔一「勇往邁進。一言で言えばそういう事だな」

クリス「勇往、邁進」

由紀江「困難をものともせずに、突き進む事ですね」

クリス「いい言葉だな。前に進む意志が溢れている」

百代「辛いときは口にするがいい」

百代「同じ旅を行く仲間がいる。力が出るぞ」

 

――真剣で私に恋しなさい!(みなとそふと)

 

本作は極めて地の文が削らていて、そのかわりセリフは異常に多い。体感的には1:9って感じで、会話劇をメインにした読みものといっていいと思う。

ADVは小説とちがって「画」と「音」で魅せることができるので、背景にセピアをかければ昔話、色を反転させればショッキングな出来事、着メロが流れれば電話!とプレイヤーに促せる。

つまり情景・状況をテキストで描写する必要性は下がるわけだ。ならば委託できるものは委託し、地の文をしぼりにしぼり、会話の速度で物語の進行と任せられない描写を行えばテキストテンポはより速くなる。

もちろん必要性は下がるからと言って地の文が悪者になるわけではないが、画面を見て理解できることを、わざわざテキストで二重に表現すればクドいと感じることのほうが多いだろう。

 

 

(2)ワンフレーズ

 

さきの "勇往邁進" もそうだが、まじこいは一つ一つのセリフは短い。ほとんどワンフレーズで3行続くことは稀だ。

 

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――真剣で私に恋しなさい!(みなとそふと)

 

これによりテキストボックス内の可読性を高めつつ、お話のスピード感も増す。

なによりADVは1クリックごとに次テキストを表示する媒体なので、1クリックが読みやすいことはタン・タン・タタンとリズムを取るようにクリックが続くことになる。案外、こういう身体性による楽しさが「読む」ことの楽しさにも繋がっていると考える。

 

 

 (3)セリフの情報密度

 

地の文の役割に「情景・状況・心理描写」がある。そこになにがあり、どんな状態で、いかなる内面を有しているかを描き出すわけだ。

本作はそれを「セリフ」に任せることが多い。

 

状況説明

大和 「ゲンさん(源だから)は朝から元気だね」

――真剣で私に恋しなさい!(みなとそふと)

源忠勝(みなもと ただかつ)のあだ名がゲン。けれど名前よみに関連するものがないので当然プレイヤーは「なぜゲン?」という疑問をもつだろう。

それを大和は先回りして「源だからゲンさんなんだ」と一つのセリフで説明しているのが↑の引用文である。

もしもこれが一般的な(?)作品ならば

 

大和「ゲンさんは朝から元気だね」

源忠勝なのになぜ「ゲンさん」なのかというと・・・

 といったようにセリフ+地の文によって状況を説明することになるかもしれない。あるいは『Routes』*1のように鬼のような量の地の文でキャラ一人一人を説明することもあるだろう。

 

 状況説明2

店長「よぉ、仲良しグループ。今日も元気そうだな」

岳人「オス(キャップがバイトしている本屋の店長か)」

――真剣で私に恋しなさい!(みなとそふと)

 店長初登場シーン。ここでもプレイヤーは「誰この人?」なわけだが、それを岳人は1つのセリフで答えてくれる。そう、翔一のバイト先の店長である。

 

心理描写

翔一「じゃ、クリスには声かけるぜ」

翔一「まとめると、京なんかは不満そうだし……」

翔一「空気悪くなりそうだったら遠慮なく切るって事で」

大和「(京のために、切ると厳しい言葉言ってるな……)」

――真剣で私に恋しなさい!(みなとそふと)

 

大和「ゲンさんの1個ちょーだいな」

忠勝「ざけんな、なんだってこの俺がテメェなんかに物をたんなくちゃいけねぇ? イライラさせるな」

1年女子「(ハラハラ)」

忠勝「チッ……。仕方ねぇ。ほらよ。やるよ」


――真剣で私に恋しなさい!(みなとそふと)

 

 () による心理吐露は、キャラの内面を考えることを省く効果がある。ちょっとした仕草や言葉で「こいつは内心怒っている?」といった推測を行う必要性は減じ、結果、即座にキャラの心理を把握できるだろう。

興味深いのは視点者(≒主人公)である大和の内命は地の文で表現可能なのに、あくまでもセリフの中で心理描写を行うところ。

とはいえ地の文で表現することもあるものの、まじこいが () による心理描写に重きをおいているのは伺えよう。

 

動作

京「……はい私の分をあげるのさ」

京「好感度アップ」

大和「京カスタムされたきゅうりなぞいらぬわ(返却)」

返却した。

京「ぬぬ」


――真剣で私に恋しなさい!(みなとそふと

 
このシーンをざっくり説明すると、京は辛党なため料理にタバスコかけるのがデフォ、だが一般人たる大和はそんなもの食えるわけねーというもの。

このように動作描写をいれることで、1セリフの情報密度が高まり、展開のさくさく感をあげているのが分かる。次につづく地の文「返却した」はくどく見えるかもしれないが、いわゆる"強調"の役割を果たしているのであまり気にはならない。

京カスタムされた料理は食えぬ!――そんな大和の意志が強く感じられるのを2回の「返却」で表現しているというように。

 ―――といったようにまじこいはセリフ毎の情報密度が高いくせに、セリフはワンフレーズに収められ、セリフによって物語が進んでいくのでこんなにも読みやすいのだろう。

 

  • 地の文が圧倒的に少ない。
  • ワンフレーズ
  • 情報密度

 てな感じでいかがか。

(了) 

 

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*1:Leaf.2003年