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猫箱ただひとつ

物語追求blog。アニメ、マンガ、ギャルゲーを取り扱ってるよ

作者が作品の解説を躊躇うのは、それだけ読者は信頼されていないのでは

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以下のツイートが話題になっていた。

 

 (※引用者注:画像内のテキストを文章に起こした)

<水野しず>
説明じゃなくてもいい?
じゃあ見て何を思いましたか?

<ディレクター>
説明じゃなくてもいいんですけど

 

<水野しず>
だってさ 作者がさ 説明したらさ
全部それになっちゃうからさ

あんま言いたくないんだよね

せっかく頑張って描いたのに
みんなの勝手でいいよ

 

<ディレクター>
こういうの見ると 説明を聞くことで
なるほどって思いたい気持ちってある
メイキングを知りたいっていう気持ち

<水野しず>
いや自分で考えろよ
サボんなよって思いますけどね
「考えてからせめて聞けよ」って思いますけどね

 

 

これは『熱中女子』という番組の一部シーンを切り取ったもので、その番組を見ていない私はどういう流れの水野しずさんの発言かは分からないのだけど――それを踏まえて――この画像だけで判断すると、

彼女の発言は以下の2つに分解できると思う。

・「作者が作品を説明すれば、その説明が全てになってしまう」
・「それでも作者に説明を求めるならば『考えてからせめて聞けよ』となる」

また読者が考えた上で作品の説明を求めてきたとしても、水野しずさんは「積極的」に作品の説明をしたくはないとも推測できる。

こういうエッジの効いた発言って敵をつくるだけなのに、テレビで言ってしまえる水野さんかっこいいなあって思いました。はい。

(私から言わせれば)作者に作品の説明を求める時点でその読者は三流だし、ボンクラだ。作品批評の初期にすでに作家・作品は切り分けられて論じられていたのに、一体いつまでこんなバカげたことをする人が出てくるのだろうと怒りも湧いてくる。味噌汁屋にも当然唾を吐きかける。

でも私は「作者が作品の解説をしてもいい」とは思っているのね。そこだけは水野さんとは意見が違う。

というのも作者の意見なんて所詮ひとつの意見に過ぎないから。彼らの発言は絶対的な意見でもなければ、真実でも、優れた解釈でもなんでもない。参考にできるかもわからないのに「作者」というだけで鵜呑みにするなんて事はありえない。絶対に。*1

だからこそ作者が作品の解説をすることに対して私はなんら異を唱えないし勝手にすればいいと思っている。それにそういう初期の解釈を蹴り飛ばすために、数多の読者がいるのだしね。気にしなくていいんです。

でももし「作者が作品の解説をすることに躊躇う」のであれば、おそらく(その作者にとって想定された)読者は信用されていない。

これは裏を返せば読者は作者の説明(=解釈)が絶対だと思っているし、作者の言い分はイコールで「その作品のたった一つの見方」だと受け取られると、読者はそう看做されていることに他ならない。

そして作者が発話すればするほど、読者によって切り開かれるはずだった作品の様々な見方は存在しなくなり、あるいは許容されなくなるのであれば、それは作品を尊ぶ作者にとって口を閉ざす理由になるだろう。

なぜなら作者の説明はそのまま作品の多様性を奪っていくからだ。一元的な見方しか許されない作品に一体どれだけの価値がある?

そしてもしも読者が解釈の多様性を知っており、作者の解説なんて一つの解釈に過ぎないのだと、解釈に優劣はあっても真偽はないのだと理解しているならば――作者が読者を「そう見做す」のであれば――作品を解説することに躊躇うことなどないのではないか。

 

「だってさ 作者がさ 説明したらさ 全部それになっちゃうからさ」

 

 水野さんがこう発言したのも、私はそういう流れなのかなと思っている

もちろんそうじゃない可能性もあると前置きしつつ「考えてからせめて聞けよ」というのも「自身の解釈を示してから作者の解釈を求めるべき」というスタンスを促しているようであり

そして自分の力でその作品に切り込んでいけるのならば、尚更、作者に説明なんて求めなくていいでしょ?――と遠回しに言われている気さえしたものだ。

 

    ◆

 

当該ツイートのコメントを漁ってみると「この方は絵に思い入れがないからこんなことを言えるんだ」とか「ちゃんと作ってないから説明できないんでしょ」といった否定的な意見もあったが、「その通り」とか「わかる」という肯定的意見のほうが圧倒的に多かったのは嬉しい事実だと思う。

味噌汁記事でも思ったが、案外、世間は「解釈の多様性」について理解があるのかもしれないなあと思うこの頃である。(ただこれは「発言」している人だけ確認したものなので、「発言していない」つまりサイレントマジョリティの可能性も考えなくてはいけないのかもしれないが)

そして同時にもういい加減「作者の解説」とか「制作者のインタビュー」を一つの意見と捉える分にはもちろんいいがそれを絶対視するのは終わりにして欲しいと思う今日であった。

 

ちなみにこの2つも大変興味深い内容になっているので、どうぞ。

togetter.com

togetter.com

 

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*1:もちろんその解釈が作品のファクトの上に成り立っており、かつ優れていれば取り入れてもいい