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猫箱ただひとつ

物語追求blog。アニメ、マンガ、ギャルゲーを取り扱ってるよ

幼年期のコミュニケーションとペルソナスバル/Reゼロ13.14話感想

アニメレビュー アニメレビュー-Re:ゼロから始める異世界生活
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(1)英雄譚・否

 

倫理を踏み越える行動は時として勇猛果敢に映る。なぜなら人々の意向を無視し、無視した上で、自身の意志を貫き通すからだ。「凡人では絶対に成そうとは思わない行為」を実行に移すからこそ憧憬を集めることができ、畏敬を持って扱われることになる。

そして己の意志を実際に貫き通した時、そいつは勇気ある者として認められるだろう。

『Reゼロ』の菜月昴は『死に戻り』というアドバンテージで、「ただの少年」が殺人鬼に立ち向かったり、一矢報いたり、屋敷での悲惨な事件を解決に導いたりと度重なる無茶をしてきた。それが結果を伴わないものならば「蛮勇」だと揶揄されただろう。しかし彼は、それを上回るだけの結果を残してきた。だからこそエミリアや(最初は信頼されていなかった)レムの信頼を勝ち取ることができたのだ。

この道程は昴に「死ねばやり直しがきく」といった考えを定着させ、無茶を加速させていくことになる。

そして迎える13話。やはりここでも彼は厳粛な議会で喚き散らしたり、騎士に物申したり、ユリウスの決闘を受け入れてしまう。それまで人々の意向を無視したな行動が最善手だったけれど、ここにきてそれらは全て最悪手となってしまう。

ハーフエルフの偏見をあの場で諌めることはエミリアに寄与したかと言われれば頷けず、騎士に物申すことはスバル自身の品位を落としめ、ユリウスとの決闘は敗北の味を舐めただけ。これがきっかけになったエミリアとの会話では、いかに昴が未熟で稚拙で幼年期のコミュニケーションしか取ることしかできず、最低で最悪で百年の恋もさめる痴態をさらけ出した。

 

最高だった。

こういう人間の汚さを描いてくるとは思いもしなかった。

 

Re:ゼロから始める異世界生活』はきっと英雄譚ではない。ただの無知蒙昧な引きこもり少年が絶対的な力を過信し、時には成果を残し、時にはそれが裏目に出る、凡夫の物語ではないだろうか。

――泥臭いほどの衆生の物語。

だから彼は失敗して失敗して失敗し続ける。13話であれほどにも悲惨な失敗を犯したにも関わらず、同じ過ちを14話で繰り返してしまうのだ。エミリアの気持ちを全く分かっていないし分かろうともしない。

 

 

 

 

(2)幼年期のコミュニケーション+ペルソナスバル

 

 

13話のなにが素晴らしいかって、「己と他者の区別がつかず、他者の願いを自己の願いだと勘違いしてしまう」幼年期独特のコミュニケーションが描けていることに尽きる。

昴は最後までエミリアが何を怒っているのか気付けず、自分の「願い」をエミリアの「願い」だと勘違いさせたままだった。

昴は「エミリアの為に」というけれど、エミリアは一度だってそんなことを望んでいない。エミリアが望んだのは昴の安全と療養、だったにも関わらず昴はそれを無視し「エミリアの為」にと言い続けてエミリアの気持ちを無視し続ける。こんなことを繰り返されれば彼女は怒っても不思議ではないし、二人の間に築きあげられた信頼関係が終わって当然だと思う。

むしろ、二人で交わした約束(=昴はレムと宿で待っている/無茶をしない)ことを簡単に破り捨て、王戦議会で弁えない行動の数々を行った昴に

「スバル 話をしましょう」

と話し合いの場を儲けるエミリアは本当に本当に素敵な女の子だよ。ここ、怒鳴られて当然だったし、ヒステリーで怒りをぶつけられても当然の報いだったと私は思う。

でもエミリアは

「スバルにもいろいろ理由があったんだよね」

「スバルはどうしてユリウスと戦うことになったの」

とちゃんと昴の気持ちを聞いてくれる。相手の心を自分勝手に想像したり、忖度したり、決めつけないで、相手の口から相手の考えを聞こうとしている。ここまで信頼関係にヒビが入った状態でも――自分の気持ちをまず置いて――相手のことを考えられるって中々出来るものではない。というかエミリアだからこそできるものだとも思う。

 

 

エミリア「スバル」

昴「王戦候補の話って」

エミリア「スバル」

昴「とにかくすぐに戻ろう 王戦の今後の方策も練らなきゃ」

エミリア「スバル」

エミリア「話をしましょう」

エミリア「いろいろと聞きたいことがあるの ほんとに たくさん」

 


昴「……そうだろうね」

エミリア「どうして、ユリウスとその戦うことになったの。なにかきっと理由があったんでしょ。スバルのことだからきっと大事な」

昴「一矢報いてやりたかったんだよ」

エミリア「え」

昴「意地だったんだよ 俺は無様だ無力だ相応しくないって、俺を君から遠ざけようとするあいつが憎たらしくて、だから挑んだ」


エミリア「そんな、ことの、ために」

昴「…っ」

昴「エミリアたんには、……エミリアには分からねえよ」

エミリア「…そ」

 

 

 

――『Re:ゼロから始める異世界生活』13話

 

 

でも昴は「エミリアには分からない」と殻に閉じこもり、自分の気持ちをこれ以上語らない。この後も「エミリアは俺を信じてくれないのか?」とコミュニケーションを拒絶する。

……いつだって昴が見ているのは「昴の中にいるエミリア」であって、「目の前にいるエミリア」ではない。自己内で描く理想の女の子。彼女が何を思い、何を願い、何を求めているのかを決めるのは「昴の中にいるエミリア」であって、「目の前にいるエミリア」ではない。

だからこそ、エミリアの気持ちに気付けず、自分が思い描く「願い」と彼女の「願い」を勘違いしてしまう。区別できないのである。傍から見れば昴はエミリアの願いを無視しているのだが、昴にとっては自分の中にいるエミリアこそが本物なので、そのズレに気付けない構図がここにある。

そして実際に面と向かってその相手と会話すると、もちろん「自分の中にいるエミリア」と「目の前にいるエミリア」は別物なので、齟齬が生まれるし、共通理解が得られず困惑してしまうわけだ。

「なんでエミリアは俺のことを分かってくれないんだ」

「なんでエミリアは信じてくれないんだ」

「なんでなんでなんで……理解してくれないんだ」

と。

 

 

エミリア「私とロズワールは明日にでも屋敷に戻ることになるわ スバルには王都に残って治療に専念してもらいます」


昴「は?」

エミリア「元々その約束だったでしょう」

昴「だから待ってって」

エミリア「スバルは王都に来たのは、疲弊したゲートをフェリスに治療してもらうため」

昴「いやちょっとまて どうしてそんな急に 俺は」

エミリア「だって」 

エミリア「スバルは私がいるとそうやって無理をするんでしょう」



昴「俺が言いたいのはそういうんじゃないんだよ」

昴「俺はただ」

エミリア「ただ?」

昴「俺はただ 君の為になにかしてあげたいってそうやって」

エミリア「私の為に…」

昴「…うん」



――自分の、為でしょ



昴「……違う 俺はただ君の為に」



エミリア「そうやって何もかも 私の為だって噓をつくのはやめてよ!!」

エミリア「お城に来たのも、ユリウスと戦ったのも、魔法を使ったのも、全部が私の為だって言うの?! 私はそんなこと一度だってお願いしていない!!」


エミリア「ねえ覚えてる?」

エミリア「私がスバルにお願いしたこと」

昴「おれは」

エミリア「私はスバルにレムと一緒に宿で待っててってお願いしたの これ以上魔法を使ったら大変なことになるから魔法を使わないでってお願いしたの」

昴「言うことを聞かなかったのは悪かったと思う。でも違う 違うんだよ 俺は俺の為になんかじゃなくて」

 

昴「……」

 

昴「エミリアは俺を信じてくれないのか…」

エミリア「信じたいよ」

エミリア「私はスバルを信じたい」

 


エミリア「信じたいのに 信じさせてくれなかったのはスバルのほうじゃない!!

エミリア「……約束したのに それを全部簡単に破り捨ててこんな所まで来ちゃったのはスバルじゃない!! 私との約束は守ってくれないのに それでも自分のことは信じて欲しいってそんな事言われたって出来ない

エミリア「出来ないよ!!

 

……

エミリア「ねえスバル どうしてスバルはそんなに私を助けてくれようとするの」

昴「…君が俺を助けてくれたからだ」

エミリア「私が…? スバルを?」

昴「そうだよ」

昴「君が俺にしてくれたことが どれだけ俺の救いになってくれたか分からない?」

 

エミリア「分からないよ、スバル」


昴「分からないのも仕方ない でも本当だ 俺は君に救われた だから俺がしている事は救われたことの恩返しで」

エミリア「わからないって言っているの!!」

昴「わからないかもしれないけど それでも聞いてくれ 本当の話なんだよ」


昴「俺は君にこの世界に来てはじめて君に、――ッ」

……

エミリア「また何も言ってくれないのね…」

昴「どうしてわかってくれないんだよ」

昴「俺はエミリアなら 君なら分かってくれるって 思って」

エミリア「スバルの中の 私はすごいね 何もかも 全部全て 聞かされなくても分かってあげられる。スバルの苦しみも 悲しみも 怒りも、自分の事みたいに思ってあげられる」

エミリア「言ってくれなきゃ分からないよ スバル」

昴「俺の」

エミリア「?」


昴「これまで全部 俺のおかげでどうにかなってきただろお!! 徽章が盗られた盗品蔵でだって クソ危ねえ殺人鬼から助けた!身体張った!全部君が大事だったからだ!屋敷でのことだってそうだ!俺がいたからどうにかなった!俺がいなけりゃもっと酷い事になってた! 全部全部全部みんな俺が!!俺がいたおかげだ!!俺はお前に返しきれないだけの借りがあるはずだ!!!

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……

エミリア「そう、よね 私はスバルにすごい いっぱい たくさんの借りがあるから」

昴「ああそうだよ だから俺は」


エミリア「だからそれを全部返して」

 

エミリア「終わりにしましょう」





――Re:ゼロから始める異世界生活(13話)

 

 

そして状況が思い通りにいかないと、キレて、相手を隷属させようとしてしまうこの人間の汚さが私は好きだ。

昴だって別にこういうことを本気で思って、本気で言いたかったわけではないと思う。でも、彼自身の未熟なコミュニケーションが行き着くのはこういう事なのだとも思う。自己と他者が区別できないっていうのは、そういうこと。

これは昴が現世で社会的交流を断っていた(=引きこもり)が要因なのかもしれない。いつも全力全開のペルソナスマイル、元気溌剌な自分を演出する彼は、道化であり、他人との交流に慣れていない印象を抱かせる。対人と接してこなかったツケが13話なのかもしれない。

そしてそれと同じくらいに『死に戻り』という現象を人に話せないことも大きく関係しているだろう。自分が今までしてきたことの "実感" を他者と共有できないというのはそれだけでコミュニケーションに枷がはめられてしまうのだから。ゆえに今回のような事態が発生しても無理もないと思うのだ。

 

 

 

おわり

 

ちなみに私は昴のこと苦手です。彼のペルソナスマイル、道化の様が本当にイヤで、こういう男の子苦手だ。

嫌いではないけどさ。

そしてこれに惚れてしまったレムさんを考えると辛いといいますか。。。昴の想い人はエミリアなので尚更レムさんの懸想は届かないことも辛さしかないです。辛い!辛いぞー!これはー!

 

 

 

 

 

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