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猫箱ただひとつ

物語追求blog。アニメ、マンガ、ギャルゲーを取り扱ってるよ

あの世界は、決して現実の代替物なんかじゃない。(ざくざくアクターズ感想①)

フリゲレビュー フリゲレビュー-ざくざくアクターズ
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あの日が、夢になってしまう。(ざくざくアクターズ感想)

 

シノブの『大規模相互ゲート設置』によって、ハグレに「元の世界へ戻れる」という選択肢が与えられた。

拉致監禁されるかのごとく裏世界に無理矢理連れてこられた『ハグレ』にはきっと多くの裏世界を愛せない者、失望している者、望郷の念を感じている者がいたに違いない。

それはハグレ王国メンバーである雪乃も例外ではなく、故郷の想いを募らせていた彼女は相互ゲートを利用し始めた。

――そうして帰った世界は、とてもあたたかく、雪乃をめちゃめちゃに大事にしてくれる両親がいた。失踪した姉を待ちわびていた弟もいた。友達もいた。そこで雪乃は裏世界であるデーリッチ達のことを幸せそうに語るのだけど、、、

 

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<雪乃>
ハグレ王国っていうね、
私みたいな裏世界に飛ばされた子達が
集まって創った王国の王様で――。

デーリッチっていう小さな子供なんだけど、
その王国では何故か王様をやっているの。
おかしいよね。
子供なのに。

 

<雪花>

あー、うん……。

 

<雪乃>

あ、ごめん、つまらなかった?

 

<雪花>

いや、そういうわけじゃないんだな。
なんていうか。
夢の中の話を聞いてる感じ?

ふんわりとしていて現実感がないから、
どう、返していいのかな……。

 

<雪乃>

ああ、そっか、そうだね。
そうだった。

私も違う世界だなんて信じられなくて、
雪だるま蹴っ飛ばし続けて、
同じ世界の人を探していたんだっけ……。

 

<雪花>

ゆきのんは信じてるけど、
その話はニワカには信じられないなぁ……。

 

<雪乃>

ぷっ……!


<雪花>

な、なに?

 

<雪乃>

ううん、ちょっと拠点の人の顔が
唐突に浮かんだだけ。

 

<雪花>

ふーん……。

 

 

――ざくざくアクターズ

 

 

雪花が言ったように、それはどこか「夢」のようだった。

この世界以外の世界があって、そこに友達が召喚され、長い間居なくなっていたと聞かされてもすぐには頷けないし、あまつさえその世界での活動を聞かせられてもどこか遠いお話のようにしか感じられないだろう。

雪乃が元世界に帰ってきてしまえば、デーリッチ達のことは「夢」のようになってしまうのだ。誰にも理解されず、誰にも共有されない、泡沫の思い出に。

――雪山でデーリッチが掛けてくれた言葉。拠点でのせわしなくも愛すべき日々。愛すべき仲間たち。シノブさんの暗躍……妖精王国との戦争……宇宙からやってきたお姫様……命懸けの戦い……、、、

雪乃だって最初は覚えているだろう。でもこれからの怒涛のような毎日に追われて、やがてあの王国での事は忘れちゃうかもしれない。勉強をして、就職をして、恋をしたりして。見果てぬ夢を追いかけたりなんかするかもしれない。辛いこともいっぱいあって、泣きそうになって、そして数十年後に「そういえばあんな事もあったっけ……」とデーリッチ達を思い出しながら笑ってお酒を飲む日がくるかもしれない。

 

でも

そしたら

デーリッチ達なんて元世界の代替物になっちゃうじゃないか。元世界へ帰るためのつなぎに過ぎなかったってことじゃないか。

 

あの日々は、本物だったはずなのに!

あの世界は、本当にあったのに!

それでも、雪乃の求めた「現実」には到底叶わなかったんだ。

……

…きっとシノブさんなら「これが本来の姿なんですよ」「今までがおかしかったのです」と言うかもしれない。その通りだよ。本人の同意なく強制召喚するほうがイレギュラーで歪なことだったのだ。雪乃だって裏世界に行きたいなんて思っていなかったし、召喚士のせいで彼女の人生は滅茶苦茶になった。家族から引き離され、よく分からない世界でぽつんと一人で生き抜くしかなかったその責任は誰も取ってくれなかった。

いくらデーリッチ達に救われ、王国という居場所が出来ても、それが現実でのオルタナティブに過ぎなかったとしても誰に咎められようというのか。

――これが「元の世界」へ帰るってことで、「元の世界」を求めるってことで、「現実」だと定められているものを生きるってことなのだ。あの日を夢にしてしまう。それが日常への帰還。

 

 

風太
姉ちゃんっ……!

 

<雪乃>
風太

 

風太

はぁはぁ……。
あのなぁ……!
急にいなくなるなよ!? 心配するだろ!?

 

<雪乃>
え?でも、散歩に行くって書置きを……。

 

風太
自覚持てよな……!
どういう立場だと思ってんだよ……!
またか!?って思うだろ……!?

 

<雪乃>
はぁ……。
ごめんね、お姉ちゃんが悪かった。
気をつけるよ。

 

風太
……で?
こんな所で何してんだ?

 

<雪乃>

うん、花火を見てたの。

 

風太

花火?

 

風太

へぇ……。
隣町のだろ?あれ。
見えるもんなんだなぁ……!

でも、何もこんな小さいのを見なくても、
うちらの村でも今度やるじゃん。
わざわざ見に来るもんでもないだろ?

 

<雪乃>

……お姉ちゃん。

こっちの世界に戻って来る前にも、
丘の上から花火を眺めてたんだ。

不思議だよね。
全く違う世界の花火なのに、
同じ物を見ている気がする……。

あの花火の下にまで行ったら、
みんなに会えるような気さえするんだ。

 

風太

……おかしいぞ、姉ちゃん。

 

<雪乃>

へ?

 

風太

みんななら、ここにいるじゃんか……!
姉ちゃんのみんなは誰だよ!?
俺達だろ!?

 

そんなわけの分からない世界のことばっか言うなよ!
辛かったんだろう!?
苦しかったんだろう!?

 

じゃあ、もういいじゃんか……!
もう戻れないし、戻る気はないんだろう!?

 

 

何で返事をしてくれないんだよ……。

 

 

 

――ざくざくアクターズ

 

 

でも、それでも人は「夢」を見る。

友達のちょっとした言葉にニワカマッスルを思い浮かべたり、隣町の花火を見てハグレ王国のお祭りに思いを馳せたりもする。雪乃はまだ迷っているようだったけど、元世界を選んでデーリッチ達が夢になったとしても、彼女の中でずっとずっと憶えてくれたら嬉しいなと願っていた。

夢ができる事はきっとそれくらいなのだから。それくらいだけ叶ってくれればよかった。

 

そして迎える、相互ゲート利用・最終日。

雪乃は選択する。

 

 

<雪乃>

私……。
最初は、ただ、生き残るためだけに、
王国のみんなと合流したの。

王国の人達が拾ってくれなかったら、
私はここには帰って来られなかった。
ううん、もう死んでたかもしれない……。

それなのに、
まだ、向こうの世界のみんなに
私は何も返せていないの。

みんなお店だって、
頑張ってやっていたのに。
私は意識してそういうのを避けてた。

いつだって帰って来られるようにと、z
深入りするのを避けていた……。

……そんな私を、
何も言わずにみんなは送り出してくれた。

それどころか、
批難を受けるのを覚悟で、
私を見送りに来てくれた人もいた。

一番大事なところで、
正念場のところで、
私は自分を優先して離脱して来たんだ。

物凄く中途半端だよね?

 

 

<母>

雪乃……。
もう、いいじゃないの……?
戻って来られたのよ?

あなた、最初から、そんな所に
行きたかったわけじゃないんでしょう?
だったらそのことは忘れて――。

 

<雪乃>

忘れられない。
だって、私、
王国のことが好きになっちゃったんだもの。

生き残るために合流したけど、
いつしか、あの王国は、
私の夢にもなっていたんだ……!

どこまで大きくなるか見てみたいし……!

大きくすることに賛歌してみたいっ……!
負い目のない自分で、
もう一度、王国を盛り立ててみたい!

お父さん、お母さん、風大、
この世界にいる限り、
王国は私が見た幻になってしまうの……!

 

 

――ざくざくアクターズ

 

 

雪乃が取った行動は、夢を夢で終わらせないというものだった。その在り方が大好きだった。「あの世界は、ううんデーリッチ達は決して現実の代替物なんかじゃないよ」って言ってるような気さえして涙がとまらなかった。

こういうの私弱くて、この記事書いているときもぐずぐずしてるので本当に弱い。もちろん、雪乃んがあのまま元世界で暮らし続けるのもアリアリだったと思う。けど私はこのENDがとても好き。大好きなのだ。

 

(了)

 

 

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