猫箱ただひとつ

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読者と作品の関係は、アーチャーと衛宮士郎の剣戟と、どこか似ている。

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あらゆる読解を試みて作品の最奥に到達せんとするプレイヤーと、そんなプレイヤーを嗤うかのように屈服させんとする作品達。

この2つの関係は『Fate/stay night』における衛宮士郎とアーチャーの剣戟とどこか似ていると思うのだ。作品の基本骨子の想定が甘ければ、当然プレイヤーの剣戟によってその作品は容易く壊れていように。

「秋空に舞うコンフェティ―――お前はまだまだ基本骨子の想定が甘い!! いかに大衆に好まれる外見、グラフィック、音楽を保とうが構造に理がなければ崩れるのは当然!!(ガキンガキンキンキン!!!)展開に筋が通っていなければ瓦解する!!!」


「にゃろめんこんちくっしょおおお!!!(ガッシャーン)」

 

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プレイヤーの読解力が高度化すればするほど、その力に耐え切れず低度な作品は砕けてしまう。

構造に欠陥があるもの、因果律を無視したもの、矛盾点を劇中内で解消しきれず投げ出してしまったもの。そういった作品は子供ならまだしも高度化されたプレイヤーには太刀打ちできないのだ。

さらに叙述トリック、お約束展開、萌えヒロインといったオーソドックスな要素も当てはまる。それらは最初のうちは新鮮で楽しめただろうが、何度も見てしまえば飽きがくるし慣れてくる。新鮮さは退屈へと変わり、謎は予測できるものとなり果ててしまう。当然。「見飽きた」「何週目の作品だよ」「二番煎じ」と言い放つプレイヤーがでてきたり、序盤で結末を見抜いてしまったり、隠喩と暗喩でこしらえても容易に解き明かされてしまうのである。

それはさながら、アーチャーが士郎の投影した剣に「採点」をしているかのようではないか。

"お前はまだまだ基本骨子の想定が甘い" 

と、ね。

 

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逆に作品が高度化するほど、読者は苦戦を強いられる。

時間軸がぶった切られ千切れたピースの配列を要求する最果てのイマ、多重メタ構造の権化であるSCE_2、ナラティブ経験値が低いと紐解けないForest、シンボルを羅列する輪るピングドラム、異化効果を最大にまで高めた去人たち。

作品は突きつけてこう言う「お前じゃ物語の最奥まで辿りつけない」と。

もちろん読者はこう返す。

 

士郎「余裕ぶってろ すぐにお前に追いついてやる」

アーチャー「俺に追いつく? ひどい勘違いだ。やはりお前は何も分かっていない」

士郎「勘違い?」

アーチャー「貴様に勝算など一部足りとも無かったということだ!!」


あらゆる読解を試しさまざまなcodeで解析しようとしても、結局理解できかったとき、プレイヤーは屈服する。負けを認める。"時間が足りない" "物語が難しすぎる" "そこまでリソース割けないから"  いろいろな言い訳をしてさまざまな解釈を諦めた。最後に残ったのは「わからない」という言葉の残滓のみ。

けれど―――例え手に余る物語だろうとも、1ミリも理解できなくとも、できるかぎりの読解をし続けていく者も中にはいるだろう。諦めない者も必ずいるのだ。

この時、ようやく読者は「入り口」に立つのである。

 

アーチャー「ようやく入り口に至ったか」

アーチャー「だがそれでどうなる。実力差は歴然だと、骨の髄まで理解できたはずだが」

士郎「手も足もまだ動く、負けていたのは俺の心だ」

士郎「お前を正しいと受け入れていた、俺の心が弱かった」

士郎「お前の正しさは、ただ正しいだけのものだ」

士郎「そんなものはいらない」

士郎「お前が俺を否定するように

 俺も死力を尽くして

  お前という自分を打ち負かす!!

 

 

そうして戦いは、作品VS読者から→「自分VS自分」という構図に変わっていく経験をした人も多かったと思う。

負けられないのは作品に対してではなく、弱音を吐いている甘ったれた自分だったと、勝たなきゃいけないのは己の心だったんだと。


――お前には負けられない

自分自身を鼓舞し自分自身を切り伏せる。信じていくもののために剣をふるい、何度砕かれようとも、新たな剣(=仮説)を生み出し立ち向かっていく。強度が足りなければ瓦解し、仮説同士がかち合えば瓦解し、しかし何度だって干将莫耶を握り締めて立ち向かっていくのだ。

そうして最後には"答え"を得るのかもしれない*1。息を絶え絶えにしながら手のひらに何かを握りしめているかもしれない、

作品読解の意義がここにある。

 

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そして、これこそが物語と読者の関係だろう。

剣戟による闘争である。

 

 

「誰かに負けるのはいい でも自分にだけは負けられない」

 

――衛宮士郎.Fate/stay night

 

(了)

 

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↑の秋空コンフェティはいつかまた再プレイします。……嫌いじゃないんですけどね、ただまあ(ごにょごにょ)、でもやるですよ。いつかいつか

*1:もちろん答えを得られない時もある、むしろそのほうが多いかもしれない