猫箱ただひとつ

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ED1~11までの天城蒲乃菜ほかすべて(16964文字)

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 ADV『好き好き大好き!』を、プレイした流れにそって感想書いた記事になってます。特別書きたいと思わなかったEDは省いていますが、だいたいは書いたつもりです。

きょーみあればどーぞ。

(そういえば主人公の名前を変更するのって特別魅力的ではない気がするんだけどどうなんじゃろ) 

 

こっちは持てる限りを尽くして批評したもの↓

 

eroge-pc.hatenablog.jp

 

 

 

 

 趣味とか嗜好とか

 

瑠香ちゃん…

可哀想な瑠香ちゃん…

男の子に生まれそこなっちゃったんだね…… 

そんな自分が嫌いだったから、駆けっこでも泳ぐのでも、男の子なんかに負けないように、一生懸命がんばっていた。

 

趣味とか思想とか信念とか嗜好とかって自分で選べるものじゃない。大抵は気づいていたら"そうなっていた"もので、選んで決断したというフェーズは無い場合が多い。

性の在り方――からだ、ではなくこころの性――もまた同じで自分の肉体的性別に依存することはなく「男性」か「女性」かで悩むこともある。でもそれってちょっと考えてみるとまるで「呪い」だなとすら思える。

自分で決めたものではなく、自分で選んだものでもないけれど、自分という存在に組み込まれているファクター。これが自分と適応しているならば問題はないが、瑠香のように身体の性と心の性が衝突している場合ただただ苦しい。つらい。

いわゆる「ギフト」もまた、自分と合っている場合は名前の通り"贈り物"となるけれど、拒絶してしまう場合は才能でもなんでもなくただの呪いだろうか。

 

 

地下世界のみ 

 

うっとりと空を見上げながら、莉果がニコリと微笑んだ。

ねえ、渡君。今でも屋上、上がれるの?

屋上? 屋上って何の事だい?

いやだ…覚えてないの…………?

このお家、屋上あったじゃない……

そんなの知らないよ。ボクは空なんか見なかった。いつだってボクは床を見て……その下にいる蒲乃菜だけを見つめていたんだ。

屋上なんか、知らない。
空なんか知らない。

 いい対比だなとすら思う。屋上を目指す莉果と、地下世界にこだわりつづける渡。彼が安住できる場所は、空とか、そういう解放された領域ではなくて自己内の領域が安心できる場所であり楽園なんだよね。だからこそ、その"観念"である場所に蒲乃菜を固定し、現実を理想に重ね合わせようとする。

それが例え、齟齬がうまれようとも。重ねあわせ続ける。

↑が外界で、↓が内界という感じなのかもしれない。屋上なんて知らなかった、という言葉も、外界(社会)なんかどうでもいいと呟いているようである。渡にとって大事なのは自己が編纂した理想なのだから……。

裸の莉果が、ボクの手を取る。ずっと涙を拭ってばかりの濡れた手を、柔らかくて小さな手が握り締める。

ねえ、行きましょうよ……屋上……

いやだよ。ボクはそんな所行きたくないよ。ボクは地中にもぐるんだ。土龍みたいに、地蟲みたいに、土の中に潜るんだ。

コンクリートに覆われた、日の射さない地下のお部屋の、ボクの大好きなラバー少女の所に行きたいんだ。

 

なんていうと悲しくなってくるのだけれど、彼が救われるとしたら内的領域に全身ずぶずぶに漬け込むか、内的領域をぶっ壊すしかない。

でもまあ……なんだろうね。なんだろうなあ……。

 

 

屋上から転落

 

うっとりと、夢見るような眼差しで、莉果は全てを見守っていた。

ずるいんだ……渡君……
あたしには、キスなんかしてくれなかった…………
瑠香ちゃんにだったらキスするんだ…………

瑠香ちゃんだって、ずるいわ……
あたしに黙って……
渡君と仲良くなんかなっちゃって…………

 

――莉果

 ああ……莉果ちゃんさえも現実と理想がズレれば、へいきで現実を殺しにかかる人だったか……涙。それも渡と共通しているのが「思い込み」でそのすべてが真実だと思い、真実とみなした上で行動してしまう。

思い違いかも?という自己批判精神はほとんどなくて、あっても自分の思い込みを優先してしまうのならそんなものは無いと断じてもよいもの。

多分……莉果ちゃんは渡のことが好きで、けれど瑠香ちゃんと交じっていた事実が許せなかったようにさえ思える。もう瑠香ちゃんはいないけれど、死んでしまったけれど、それでもなお「渡くんが自分よりも瑠香を選んだ」ことが我慢ならなかったんじゃないか。もしくは「瑠香が自分よりも渡を選んだ」こと、あるいはどちらとも。

そして渡を屋上から突き落とした莉果ちゃんは、その後、自分も身を投げ出す。 

・エンディング7『渡、瑠香、莉果死亡』

 

 

フェチ

学校で歴史か何かの授業の際、呪物崇拝について学んだ事があった。若い男の教師は気さくな性格で、女子校だった蒲乃菜の学校では、学生たちの人気者だった。

その時彼が、冗談交じりに話してくれた。
呪物崇拝――英語ではfetishism。

 フェティシズムの由来って、呪術崇拝だったのか。ほー。

 

 

 

 理想は溺死したあとで

 

ごめんよ、蒲乃菜。

だけどボクは、君をここから出したくない。

君を誰にも触れさせたくない。

君を誰かに見られるのだって、ボクにひあもう耐えられないんだ。

だから…

だからボクは…

ボクは君を…………………………。

 これの何が恐ろしいかというと、蒲乃菜の意志はまったくもって無視されているということ。蒲乃菜は家に帰りたいとなんども口にするけれど、渡にとってその願いは、自分があの時設定した「蒲乃菜がおもう願い」より優先度が低い。だから家に帰りたいという彼女の願いは否決されるのだ。

 渡るが思う蒲乃菜の願い―――というよりは、渡自身のわがままの先行にも思えるけれど、やっぱり↑の部分はすくなからずあると思う。

 

ボクには耐えられなかったんだ。

君がこの薄汚い世界の只中に、その身を晒しているなんて……。

ボクは絶対に忘れないよ。

あの日の苦痛を。

君の涙を。

(中略)

あの日、蒲乃菜は泣いていた。怯え切った顔をして、誰かに救いを求める事も出来ずに。鞄の取ってを握り締めて震えながら俯いて、恐ろしさと恥ずかしさに、ただぼろぼろと泣いていた。

ボクは蒲乃菜を、二度とあんな目に会わせたくはない。

電車の中は蒲乃菜一人じゃなかったのに、誰も進んで彼女を助けようとはしなかった。

 

これは渡自身の理想。願い。電車でダレも蒲乃菜をたすけなかったという体験が、彼女を閉じ込める動機へとなっている。

わかるけどね……わかると思う。好きな子を守りたいという願いと本質的にこれは一緒だもの。ただひどく歪んでいる。もし正常な好きな子を守りたいという願いがあるのならば、それはその子の意図や気持ちをちゃんと汲んでいるかどうかだと思う。

渡の場合は、まったく、汲んでいない。だから蒲乃菜を地下室に閉じ込めているわけで。

 

だったらボクが、蒲乃菜をボクだけの蒲乃菜にしたっていいじゃないか。

ボク以外の人間達には、ボクも蒲乃菜も、どうでもいい存在なのだ。

ボクだけが、蒲乃菜を大切に思うんだ。

他の誰も介在しない、ボクだけの世界の中で。

 もっすごい短絡的なのよね。そして地下室は渡の心象風景と言っても過言じゃない。

それはとても理想的で、甘美なまでにここちよい世界だとも言える。"自分"だけであれば……。そう自分一人だけであれば「ボクだけの世界の中」は成立するんだけど、そこに自分とは別の人間が入り交じる中でその理想を貫き通すのは難しい。

 

ボクは蒲乃菜を大切にする。

ボクだけがを見つめて
ボクだけが触れて
ボクだけが蒲乃菜の事を大切に大切にしてあげる。


――他の誰にも、ボクの大切な蒲乃菜に触れさせたりなんかするものか。

外界と接触を断ち切っている、地下室は、もう渡の心も同じく外界とのつながりを切っているのかもしれない。 

もしそうならば、「内在的な孤人」という考え方も出来るのだろうか。隠者は隠者たりえるのは他者と交流をもたないからこそだ。それはもう現代では難しいけれど、精神的な意味でならだれでもその方向性へと振りきれるのかも? それが渡のような、完全に外界と接触を断ち切ろうとしている状態だと。

スタンドアロン

でも通常といっていいのかあれだけど、そこらへんにいる人間はそんなことムリ。というのも自分以外の存在が「内在化」しており、やはりそれは批判的精神を育んでいたり、倫理そのものになっているから。

それさえも剥ぎ取るというのならば、たしかに、こういうこと(=地下室にカンキン)というのも……分かる気はする。自分だけの欲望のまま動いて、自分の願いごとだけを叶えようとするのは、心象領域内に"他者"がいないことを指し示すのかもしれない。

 

 

けれどその理想は現実には反映されない

 

それがボクの、望みなんだ。

蒲乃菜をさらい、閉じ込めた。彼女の自由を奪ったボクだから、ボクは蒲乃菜を大切にしてあげる。

だけどそんなボクの気持ちを、蒲乃菜はいったいいつになったら理解してくれるのだろう……。

 
渡の内的領域に他者がいない、内在化された他者がいないんだとすれば、こういう考え方も結構理解可能になる。

彼がやっていることは一般的に見て、誘拐、監禁とされる犯罪であり、被害者たる蒲乃菜が一連の行為を是とできるかといわれれば無理だ。けれど渡はそういった考えが表層的にでることは少なく(でなくはないが)、自分の気持ちがなぜ通じないのだろう?と首を傾げることが多い。

これは「蒲乃菜の視点」を汲めてないから。蒲乃菜からすればとても怖いし、はやく家へ帰りたい。ラバースーツに身を委ねるのももう嫌だし、狭い部屋でなにもすることがない地下室で無為な時間をすごすことがストレスになっている。

でも渡は、蒲乃菜の視点が分からないこそ、そういう気持ちをうまく理解できない。理解できないから、自分の視点でしか事象を捉えられない。いちおうそういった視点が"完全に"できてないとは言わないけど、しかしこの状態で「蒲乃菜はどうしてわかってくれないんだろう」という疑問を生じさせるのはもう出来てないって言っていいレベルだと思う。

渡の想い描く理想は、どこまでいっても、「現実」では達成不可能。それは確かにホンモノなのかもしれない。追い求めることに意味があるのかもしれない。

けれど、どうなんだ。こういうタイプの本物希求は、おそらく全てのタイプと中身は一緒なはずなんだ。けれどこれは、もう絶対的に無意味な行為ですらあr……いやそんなことないそんなことないのだ。意味はある。でもそれは「あらゆる他者と外界を断絶した上で」の意味だ。

 

ボクは蒲乃菜を渡したくない。誰にだって、絶対に渡したくなんかないから、可哀想な蒲乃菜をがんじ搦めにしてしまうんだ。

 おそらくこれもひとつの純愛の形。

純粋だけれど歪んでいる。

しかしその歪みを歪みと感じるのは、社会的通念に縛られているからと言えてしまったりするんだろうか。

でも一方通行な純愛だよなあとも。

 

つーかあれだ。ここまで渡がコミュニケーションを蒲乃菜ととらないのは「彼女は全部自分のことをわかってくれている」という考えがあるからか。

コミュニケーション不全、それは本来の意味ではなく「コミュニケーションがいらない世界」の中に渡はいまいるんだ。すくなくとも彼だけはその感覚を知っている。

けれど蒲乃菜からすれば、渡のことをなんにもしらない。だから言葉をはなし、なにかしら会話を紡ごうとする。最初は無意味な時間に耐えられなくて、最後は彼のことを知りたくて。

心的領域内に他者がいなくなった上で、新しい他者(蒲乃菜)を取り込むということは蒲乃菜はもう自分のものなのか。所有というか、自分の世界のなかにいるんだから、分かって当然、通じあって当然という意識なのか……。

 

 

みるくという存在

 

何か言ってるけど……ボクにはよく解らないよ。警察……病院……何のことだい? みるく……逮捕……ボクにはさっぱり解らないよ。

ボクをどこかに連れて行くって? ……困ったな……ボクは、蒲乃菜といっしょじゃないと……………………………………………………

 みるくもねー、莉果と渡とおなじく自分の理想と現実に齟齬がきたしはじめると、書き換えるか、無かったことにするか、壊しはじめるんだよなあ……って。

あとみるくは渡と同じく純粋な愛情なんだよなあ……もちろん歪んでいるのだけど……。

みるく→渡→蒲乃菜。

相手を自分のものにしたい!自分のものにされたい! でも叶わない!ならどうするか。たいていの人は諦める。諦めてひきずる。けれど彼らは違う。現実を毀そうとしはじめる。まさに"人間"である。動物ではなく人だ。

 

 

そうして理想は理想のなかで生きはじめる・すきすきだいすき

 

そんなボクの言葉に、ゆかりは怪訝な顔をする。
ボクが蒲乃菜を失くしてしまっただなんて、そんな事あるはずないじゃないか。

蒲乃菜はちゃんとここにいるよ。

ボクの大好きな蒲乃菜。ラバースーツはみるくに破られて無くしてしまったけれど、彼女はボクの大切なラバー人形なんだ。

そんな蒲乃菜を、ボクが失くしてしまうはずが無い。確かに彼女は一度バラバラになってしまったけれど、そんな蒲乃菜も誰かが修理してくれて、ちゃんとボクの所に届けてくれたんだ。

 
蒲乃菜はみるくに殺されてしまった。これが現実。けれど渡はその事実をみとめず、ううんそもそも認知すらしていないようである。

彼のこころの中では、蒲乃菜はちゃんと生きていることになっている。あの日バラバラになったはずの蒲乃菜は修理され部屋の片隅に存在するようになる。

 

ボクが暮らすこの部屋で、ボクの大好きな女の子が静かに微笑みながらボクの事を見つめている。

蒲乃菜は何も言わないけれど、ボクと彼女の間に、言葉なんかいらないんだ。

蒲乃菜はじっと、ボクを見ている。

ボクのミルクを飲み干して、ボクの体液を飲み下して、新たな命を得た蒲乃菜が、静かにボクを見つめている。

この蒲乃菜は、もう壊れてしまうような事はないんだ。みるくだろうが誰だろうが、もう誰にも彼女を傷つける事なんて出来ないんだ。

だってこの蒲乃菜は、ボクにしか見えないみたいなんだから。

可愛い蒲乃菜。
君はボクだけの物だよ。
誰にも見えない。誰にも触れられない。空気にだって触れられる事の無いボクの蒲乃菜。

恐ろしい死神から守り抜く事が出来た、ボクの蒲乃菜。

君は、ボクだけの物なんだ。

ボクと君は、この密閉された空間の中で、御伽話の王子とお姫様のように、いつまでもいつまでも幸せに暮らしていけるんだよっ……。

 

 

渡はきっと幸せだと。幸いを得られた。蒲乃菜は完全無欠の存在となり、彼のもとへずっと居続け、彼の命令に従いつづけ、死ぬ時までずーっと側にいるだろう。それは渡の理想が叶ったということ。現実の中ではなかったけど、理想のなかで理想が叶ったということ。

観念のなかでなら、人は楽園へと至れる。

おぞましく不気味なENDINGだろう。でも私はこういうの好きだったりする。私はそうはなりたくないが、そういうのもありだよねと、それくらいには認められる。いや好きなんだろう。そういう、永遠の在り方が。

・エンディング3『蒲乃菜、死亡』

 

 

 

 

 少女は青年のなかへ

 

渡に外に出たいかと聞かれ躊躇ってしまった蒲乃菜。むしろ「出たくない」と思考し、けれど理性は「そんなこと思うわけがない」と訴え始める。やがてその2つは拮抗していくものの、最終的には素直な気持ちが勝つ。

渡とのささやかな交流が、少女にラバーフェチを芽生えさせ、さらにはこの地下室そのものを心地よいものと思わせるようになってしまった。外界へのおそれも同時に生まれる。

 

「私……ここで待ってちゃダメ?」

ボクは蒲乃菜に尋ねた。外に、出たくないのと。

蒲乃菜は少し考えて、小さな声で、でもはっきりと、恐いから、と呟いた。

外は恐いから、ここから私出たくないと。

 

話はかわるが、ED1の渡はちゃんと「他者がどう思っているか?」という考えを持っている。だからこそ自分ラバーフェチが気持ち悪いものであると再認識し蒲乃菜もまた自分と同じく心地よい着衣だとは感じないと考えていく。さらに蒲乃菜にたいし監禁を解こうとまで思うのは……やはりみるくの一言によってだろう。

 

「もう……キツすぎますってばぁ。先輩がラバーフェチって……気持ち悪ぅいっ!」

 

――みるく

地下室"以外"の場所で、自分ではない他者から、自分のもの、自分の好きなものを真正面から否定されることこそが、他者視点を物事を捉えられる契機になったと思う。

逆にいえば、この時のみるくは渡にとって"自分のもの"ではなかったと言うことなんだろう。歴然とした外界の存在だった。だからその一言は切り裂かれるほどの痛みを伴った。

ひとつ予想外だったのは、蒲乃菜がラバーフェチに目覚め渡とともに過ごすことを望んだこと。ストックホルムとはまた違っていて、渡に同情しているのではなく渡に感化された。感染されたようにすら感じる。

人の濃密な心象風景に長時間いると、こういうこともありえるのかもしれない。

 

蒲乃菜がここに入り込んだのは、いったい何度目の事だろう。家を抜け出し、施設を抜け出し、病院を抜け出し、蒲乃菜はこの薄暗い地下室に、もう何度も忍び込んでいた。

その度に、それだけは絶対に手放さない―――取り上げられそうになる度に狂ったように暴れ回って守り続けたラバースーツを持ちだして来て身に纏い、ずっとそうしていたようにまだ据え付けられたままの簡易ベッドの上で膝を抱えて座り込む。

まるで、忘れられない夢を現実の物にしようとするように。

 もう蒲乃菜にとっては外界/世間は自分がいるべき場所ではなくなり、反対に渡と過ごした地下室こそが安堵できる空間になっていったんだろうなあ。反転してしまったせかい認識が。

 

だけど蒲乃菜は部屋から出ない。座り込んだ簡易ベッドの上から、立ち上がろうとさえしない。

ここにいれば……ここでいい子にして待っていれば……。

「きっと、帰ってくる…………。

あの人……きっと帰ってくるわ……。」

ゴムのマスクのその下で、大きな目を呆然と見開きながら、蒲乃菜はただ一人の男を待ち続ける。

 
ここすごく面白くて、みるく・莉果・渡は自分の理想と現実がズレたとき、現実を理想側に染めようとする。その過程として人を殺したり、自分を殺したり、人をさらってきたりしている。

でも蒲乃菜のばあいは「寄り添う」ような感じにすら思える。まだこの地下室が現存しているから、まだこういう行動に留まっているのかもしれないけれども。けれどもそれは彼ら3人より一線を越えないレベルなのかなって。

エンディング1『蒲乃菜、ラバーフェチに』

 

 

 

 みるくをボクのものにしたい

 

でも……、でも、ボクは本当に満足したんだろうか……。

みるくの身体の中に射精し、子宮の奥底に白濁を放った時、ボクは本当に満足したんだろうか?

彼女との交わりの後に、乱暴にその身体をなぶった時、ぼくはみるくの兄さんの事を考えていた。

みるくが、ボクと兄さんを重ねあわせていた事。そして、みるくが兄さんという一枚のフィルターを通して、ボクを見ていたって事に、ボクは我慢できなかったんだ。本当には、ボクのものになったわけじゃなかったみるくに、ボクは憎しみにも似た思いを抱いたんだ……。

  

再び、ずっしりとのし掛かってくる思い……。心への荷重……。しつこく身体にまとわりついてくる倦怠感……。

未だにボクに心を開いてはくれない蒲乃菜……。

抱いた後でさえ、その全てがボクのものにならないみるく……。

みるくをボクのものにしたい……。

 

独占欲―――とは相手を自分の"なか"に取り組みたいという欲望なのかもしれない。比喩的表現として「おんなのこを食べる」という使い方があるけれど、実際にあれはそういう意図としてのものではないか?と思うことがある。相手を食べて、自分の内蔵にとりこみ内奥にいれてしまう。

それこそ「好き」の追求した形かもね。

相手を自分のものにしたかったら、相手を食べればいい。それを実現したのが蒲乃菜を地下室へと閉じ込めたことであり、みくるもまたその地下室(渡の心のなか)に招かれる要因なのだろう。

  

これは↓渡がみくると重なりあったときに夢見た想像した世界。彼はやはり……そういう世界をお望みか。

 暗い地下室の中に二人並べて繋がれた蒲乃菜とみるく……。

ボクのものになった二人の女の子……

もちろんその女の子たちは、お揃いのラバースーツを着け、いつもボクが地下室に下りてくるのを待っているんだ……。

そして、この二人の女の子たちは、その心も身体も全部全部ボクのものなんだ……。

他の誰にも……、どんな奴……にも、その目に……さえ触れ……させない……、ボ……ク……だけの……おんな……の子。

 

しかしー、今回はみくるに逆監禁されてしまい、みくるの「部屋」へに取り込まれてしまう渡だった。

・ENDING8「みるくに監禁される」

 

 

 

 

 

 

 内在的な声の在処

 

お前にとって、中身なんてどうでもいいんだろう、ただ、それがラバーを着けた女の子でありさえすれば……。

違う。それは違うんだ。
ボクは、囁きかけてくる声に必死になって抵抗する。

ボクは、ボクだけを見てくれて、ボクの事を全部受け入れてくれる女の子が欲しいんだ。

ラバーの事も、全部受け入れてくれる女の子が……。

――渡

 お、一応「ラバー」の話にならば批判精神は働いているのね。ふむふむ。渡にとってラバー要素は大切だからこそ、その「好き」の在処について敏感になるし矛盾していれば正そうとする。ということなのかもしれない。

それにしても、「ボクだけを見てくれる女の子」なんてものはもう絶対に手に入らない部類のものだよね。それも自分が行動を起こさず、相手をその気にさせることをしないのであれば――受動的であればよけいに――そんなものは叶わない理想にすぎない。

でもその理想を「叶う理想」だと思ってしまうのが、全ての過ちに繋がると思うとだいぶやるせない。理想は夢見なければしょうがないのだけれど、人が叶えられる理想とそうでない理想の「区別」は失敗しないとつけられないとは思うんだよね……。

叶えられる理想は、人間ができる範疇のことでありそれ以外の理想は追いかけてはいけない。だって確実に叶わないのだから。時間の無駄。人生の無駄。現実の損失だよ。

 

 そうして蒲乃菜は事故死し、"もう誰も手出しできなく"なってしまった。それは渡の本位の結果ではないにせいよ、この一点において彼は許容しそうな気はする。薄汚いこの世界から蒲乃菜はもう傷つくことはないのだから。

……ああ。

これはもうあれな、テロリストの思想と大分違いはないのだけれどね。自分の理想のために誰かを害すことを厭わない。そしてその害すことさえ、健全だとさえ思っているし、その人のためになっていると思うことがもうある意味の他社性廃絶か。

クククッ……。たとえそんな事を彼女が望んでいなかったとしても、か・

まぁ、そんな事は今となってはどうでもいい事だ。もう彼女は、お前の事なんて考えてやしないだろうからな。

でも、お前の淫らな欲望だけは叶えられたわけだ……。

もう、彼女に手出しできる奴はいなくなったんだからな。

クククッ……もちろん、それはお前にも言える事だよな……。

 

 

 

相手を信じられない

 

そうなんだよな……。あらゆる遠因は渡の「誰も信じられないこと」だとは思う。誰も信じられないからこそ、内的世界にこもり、その世界が具象化された地下室に好きな人さえ閉じ込める。

蒲乃菜のためとか、薄汚い世界から守りたくてという理由もあるとは思うけれど、こっちの理由も大分あるのではないか。自分の内的世界に置かないと、相手との結びつきを意地できないようにさえ。

 

求める相手を誘拐して、地下室の中に閉じ込めてしまう事。 それはある一点において同じ事だ、求める相手をどんな形にせよ、傷つけ、責め嬲り、ギリギリにまで追い詰めなくては、そこで語られる言葉を、ボクは信用できないんだ。

そして、『何か』とは、そんなボクの弱い心なんだ。人を信じ、求める相手を理解する事に臆病な、ボクの弱い心のことなんだ。いくら狂暴にふるまったとしても、その奥底に秘められた核の部分では、泣き叫び必死になって、求める相手を捜しつづけている心。

それがボクの中の『何か』なんだ。

蒲乃菜は死んだ。ボクの『何か』に耐えられなくなって死んだ。

 疑心暗鬼、自尊心の欠落、自分さえもうまく信じられないから他者のことも信じられない。どこかで疑ってしまう、言葉を探ってしまう。深い関係を築けないのは相手のせいなのか? 渡はたびたび「◯◯がボクのことを好きだったら」という仮定を繰り返すが本当にそれだけなのか。違うんじゃないか。渡の内的世界こそが原因なんだよ。

 

まだだ、まだみるくは、まだ本心を言ってはいない。嘘だ、そんな事、こんなにされてまでボクの事をまだ好きだなんて、そんな事、信用するなんてできないよっ! できないんだよっ!!

 

 エンディング9は、「誰が一番悪いのか?」を更に浮き彫りにしたENDだったのかもしれない。もちろん渡なのだけど、渡るの"どこが"という部分。

 

そして、ボクもいつか破滅する。

全てが終わってしまう時が必ずやってくる……。

その時までボクは、ボクの心の中の『何か』は嗜虐の糧を貪欲に求めつづけるだろう……。

ボクの蒲乃菜……。もうボクの前から消えてしまった蒲乃菜……。

みるく……。今、ボクで泣き叫び、そして悦びに打ち震えているみるく……。

そして次は……?

 

 

ENDING9「みるくを飼う」

 

 

 

 みるくは歩道橋から転落する

 

みるくは死んだ。もういない。

そして警察がやってきて、渡はなにを思うかというと……。

たいほ……?
たいほっ……?
どうしてボクが逮捕されなきゃういけないんだろう……。

蒲乃菜の事かな……? でもボクはただ、ボクの好きな女の子を手に入れたかっただけなんだよ……。そりゃ、女の子は死んじゃったけど、ボクのせいなんかじゃないよ……。


 蒲乃菜のことじゃないよ……みるくのことだよ……。

どちらにしても内的世界に他者性が0に近づいていくと、法も倫理も融解していくんだなってことが解った。これはいい収穫だったよ。

他者廃絶性はいいもの、ばかりとは思っていないかったけれど、いいものという傾向で捉えていた。でもそうであるとは限らないんだなあ……。いや……うーん。そうだな。

倫理を意図的に融解させるにはとても良い手法なんだよ。たしゃを廃絶するのは。けれども、無意図的に融解させてしまうと、そこには自己の「信念」がないから容易く社会からはじき出され異常者になってしまう。

・信念を獲得してから→倫理を融解させる(=倫理を見直すことも含まれる)

 という手順でなければ他者廃絶は危険な行為と言ってもいいんだろう。

なるほどねー。渡の場合は自分の哲学さえもなければ人生の行動基板も、決断基準もない。だから、倫理が溶けたあと何するかといえば「欲望のままに動く」だけなのだ。融解はするし監禁もする。これは社会で生きてくならば行為としては下策か。

みるく、ボクと君は永遠のこの狂った世界の中で、一緒に暮らしつづけるんだよ。

 だからこそ、社会で生きられないからこそ、生きられなくなったからこそ、渡は観念の世界へと旅立つ。地下室においでませ。だってもう行くところないものね……。

 そして、その観念的地下室のなかで、何度もみるくと重なりあい、子どもまで"想像上"のなかで授かることになる。

多分、このお腹の中にいるのは、蒲乃菜そっくりの女の子だろうね……。

そう、彼女の生まれ変わりなんだ……。

その児が生まれて、今の君ぐらいに成長したら、ボクはまたその女の子を縛り上げて、この地下室で飼う事にするよ……。

――渡

 実際、子どもをみるくのお腹に宿すのも渡次第であり、自由自在に行えることだとは思うので、渡は「新しいペットが欲しい」という欲望の現れなのかなと思う。みるくも必要なのかもしれないが、みるく以外もまた欲しいと。

この狂った世界に。

 

ああっ……みるくの事だね、警官のオジサン……。

彼女なら大丈夫だよ……、そこの救急車の人が修理してくれたから……。

ウフフッ……。ねぇ、オジサン、本当の事を教えてあげようか……あそこの担架の上にいるの、みるくじゃないんだよ……。

みるくはね、本当のみるくはね、蒲乃菜と一緒にボクといるんだよ……。

ボクの工場の地下室の中で、一緒に暮らしているんだよ……。

これからもずっと、永遠にね……。

ボクが、開けられたパトカーのドアを潜ると、すぐに車はエンジンを吹かして走り出した。

だけど、窓の外を流れていく夜の街を眺めているボクの目には、別の光景が映し出されている。

もっと楽しもう……。

ボクは、地下室の中でもっと楽しむんだ……。

みるくのお尻の穴は、彼女のオ☓☓コよりも、ずっとずっと気持ち良かったな……。

 

ENDING1の違いがあるとすれば、ENDING1は現実世界を土台にしてそこに蒲乃菜を具象化させていたけれど、今回のENDING4は現実は現実、地下室は地下室というふうに「現世⇔観念」がちゃんと分断されている。

その分断された上で、渡は地下室の世界でめくるめく享楽に打ち震えようとしている。それはいわばENDING1より現実を省いた結果……といえるのかもしれない。

もうほんと、渡からすると「現実」なんてもの要らないのかもね……。現実が外界がいかに彼のためになったかといえば、なっていない。ラバースーツが好きなことも許容されない社会だし、好きな子に好きになってもらえなかったので。

そんな世界こっちからお断り、という雰囲気さえある。 

・ENDING4「みるく死亡」

 

 

 

 だれが、なにを、決めたの

 

 「本当はボクもこんな事はしたくないんだよ……。でもね、ボクと君は一つにならなくっちゃいけないんだ。もう、それは決められている事なんだ……。」

 渡の中でもうそれは真理であり、納得のいくものであり、実現するのが当然のものなんだろう。

ただその真理は蒲乃菜と共有されておらず、もちろん困惑するしかない。正直、自分の人生をめちゃめちゃにされるのを許容なんて出来ない。すきすきだいすき。

そしてそれはみるくから→渡に対しても行なわれる。自分の決断が真理で、相手の気持ちなんて関係ないのだ。 

だから、だからあたしは、あなたをあの子に渡さない、絶対に、あの子には渡さない、あなたの愛したあの子には、絶対にあなたを渡さない……。

  

これからもあたしはあなたを護ってあげる……。
誰にも邪魔はさせないわ。
絶対に、邪魔はさせないわ……。

みるくの手が、これ以上ないほどの優しさで長瀬渡の頭に触れ、血にまみれた冷たい身体を抱き起こしていく。

あなたは、もうあたしのもの……。
あたしだけのもの……。
そしてここは、あなたとあたしだけの世界……。

 
もう相手が「生きているか」どうかさえ関係ないのかもなあ……。相手の生死すら勘案される、気持ちも無碍にしてしまえる。なぜなら自分の理想ことが正しいのだから。 

・ENDING6「みるくに殺される」

 

 

 

蒲乃菜をさらった動機

 

 

 一日、二日、三日とボクは続けて電車に乗り込み、その度に蒲乃菜に会えずに落胆の日を送り続けた。その頃だ。ボクの祖父が急死したのは。そしてボクは、決心したんだ。

蒲乃菜を――ボクの大切な蒲乃菜を、この薄汚い世界から、救いだしてあげようと。


――渡

 繰り返しになっているけど、渡はどうして、蒲乃菜に対してそのことを問いたださなかったのだろう。ううん答えはもう分かりきっているのだけれど、やはり何度も思ってしまう。

彼女が薄汚い世界から解放されたがっているかの口頭確認を行わなかったのかと。誰も救済なんて望んでいないかもしれないじゃないか―――けれどあの電車での事件はそんな反論を起こさないほどに渡に「納得感」を与えてしまったんだろうなとも思う。

前から思っていたけど、「正しさ/法/倫理」って自分が感じる「納得感」に比べれば劣ってしまう。自分が感じたことが全て―――という話ではないと思うのだけれど、とかくこの納得感さえ相手に与えたり、自分が感じてしまったら理性も知性も論理もすべて亀裂が走り砕け散る。

もちろん正常な人間はそれでも、「これは世間的には正しくない」という意識を持てるのだとは思うが……。

 

 

 

 

 

 相手に代価を求めることを前提にした行為の是非

 

信じないっ! そんなの絶対、信じられないっ!! あなたの言葉なんか…絶対に信じないっ!! 私を見ようともしないクセにっ!!

そんな狂ったような蒲乃菜の叫びに、ボクの胸は締め付けられる。
ボクはあんなに蒲乃菜を大切にしてきたのに、蒲乃菜の心が欲しくって、あんなに優しくしてきたのに、それは全て無駄な行為でしかなかったのか?

ボクの気持ちは、蒲乃菜にはこれっぽちも届いていなかったのか?

 

 
好きな人には自分を好きになってもらいたい。だからその人に対して有益なことをする。代価を前提にした言動を取る。優しい言葉だってかけるし、相手が望むものを与えたりもする。

それは最終的に自分に有益なことを相手にもしてほしいから。

そういった考えでの行動で例え無意識でも多くの人がやっているし私だって例外じゃない。だからそれを否定できるといえば……難しい。みんながやっているからという理由よりは、もうそれ以外の方法を取るのは現実的に難しいからという理由で。

だってそうじゃない行動って「慈善的行為」しかないわけで、そんなの聖者だけしかできない。だから特別渡るの「自分の為に蒲乃菜に尽くしてきた」というのは(ここの狭い一部分でのみ)肯定されるものだとは思う。

ただその事をストレートに言われると、ドキッとするんだろうなあ。ああそうか私も含めてみんなこんな醜い感情を持って人と接しているんだなって。

これを醜いとするかは私の価値観だけれどもね。

 

 

蒲乃菜の素顔

 

マスクの下から現れた蒲乃菜の顔は涙に濡れ、どこか虚ろな瞳をボクに向けている。


ここのCGの素敵さ。

少女のぷっくらとした赤みがかった頬に白いものがかかっているというなんともいえない背徳感。良い!

 

 

 

叶わぬ理想を捨て去り、現実と向き合う

 

ボクがどうして、蒲乃菜をここに連れて来たのか。蒲乃菜はそれを、知りたがっている。

ボクが蒲乃菜をここに連れてきた訳。それはボク自身の中では、はっきりとした理由があった。


たった一人の少女を講習の面前でよってたかって嬲るような、そんな輩がいる世界。目の前でか弱い少女がいたぶられているのに助けようともせず、挙げ句の果てには弄ばれる少女の淫靡なショーを、傍観者を装いながら、好奇の目で見る。そんな奴等しかいない世界。

そんな薄汚い世界から、ボクの大切な蒲乃菜を助けだしてあげたかったから。

 

少女は対話を求め、少年はようやくそれに応じる。 

 

ボクは、なんて馬鹿だったんだろう…。こんな事をしでかして、それで少女の心を得ようとするなんて…。ボクがした事なんて、ただ蒲乃菜を傷つけてしまう様な事ばかりなのに。

ボクはいったい、どうしたらいい?

いったい、どうすれば…どうすれば、ボクは…ボクはいったい、どうしたらいいって言うんだ……

 もう"ここ"を気づけただけで凄いとすら感じてしまう。他者性が融解した後、もう一度復活するには他者との会話の応酬しかないのかもなあと思う。

要するに蒲乃菜は何を求めていて、何が好きで嫌いかを時間をかけて話すことで、再び彼の世界に蒲乃菜自身の視点が生成されるのかなって。

 

ボクが嘘をつき続けていた事。ボクが蒲乃菜に嘘の生い立ちを教えて、彼女の同情を得ていた事。そんな事全部を蒲乃菜にちゃんと正直に言うんだ。

こんな事を言ってしまえば、ボクはまた蒲乃菜に嫌われてしまうだろう。いくら穏やかな蒲乃菜だって、今度こそボクを軽蔑してしまうかもしれない。それでもどうせ、ボクが蒲乃菜に好かれるなんて事は、ボクの都合の良い幻想だって解ったんだ。それならば、これ以上蒲乃菜に嘘をつき続けて、その事でいつまでも後ろめたい思いを続ける必要もない。

 渡が蒲乃菜の視点を獲得したことで、今まで自分が行ってきたことを「蒲乃菜の感情で捉えることが出来る」ようになった。だからこそこんなことをしてきて!ばかか!という思うし、彼女に好かれるはずもない!という至極一般的な見解もはじき出せるようになってきはじめいる。

 

このままボクが何も言わなければ――蒲乃菜に余計なうち明け話なんかしなければ、蒲乃菜は電車の中でのボクの姿なんか思い出したりする事もなく、ボクは蒲乃菜に『嘘つき』だなんて思われないですむかもしれない。

だけど、ボクは決めたんだ。蒲乃菜に本当の事を打ち明けようって。 

 もうあとは他者視点を汲めることでうまれる「罪悪感」と「責任感」が後押しをしてくれているようでさえある。 それは今までの不義理を挽回する意思。

 

 

 

正常な保護心の芽生え

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ボクはそんな、美しい少女の姿を見つめ、身体の奥底から湧き出してくるような、感動にも似た衝動を感じていた。

この少女を、蒲乃菜を守ってあげたい。彼女をボクの腕に抱き、他の全てから、彼女を苦しめ、傷つけようとする全てのものから、保護してあげたい……。

それは、ボクが蒲乃菜を捕らえ、この地下室に閉じ込めた時に感じていた衝動とは、似て非なるものだった。

 少し前に「正常な好きな子を守ってあげたいとするものがあれば」という話をしたけど、お、なんかこのときにそれが芽生えてきているんだなーとわかる。大事なのは蒲乃菜の視点を汲めているかどうかだろうか。やはり。

蒲乃菜じしんその容姿の可愛さもあり、性格もよく、お互い両思いならばそういった保護心が芽生えるのも時間の問題っていう気もするよねん。可愛いは正義なのだ。

しかしその時間は長くは続かないのだけれど、渡は自身の内的世界からもう抜けだしていてちゃんと蒲乃菜という外界の人間と繋がろうとして、繋がっている感覚がありありとわかるものだと思う。↓

 

ボクが捕まっちゃったのは、結局ボクが悪い事をしたせいだからってボクもちゃんと解ってるけど。

それでも蒲乃菜…………
もしも君が良いというなら、ボクが罪の償いを終えるその日まで、ボクの事を待ってて欲しい。

こんな事をしでかしたボクで、長い時間会えなくて、誰もがボク達を引き離そうとするだろうけど……。

それでも君が良いというのなら。


どうか、ボクが罪の償いを終える日まで…………。

 

 この"それでも君が良いというのなら"という部分が特に、そう感じる。自分だけの世界に耽溺し堕落しているのであれば、そんな言い方も、気持ちも持てないものなので。

 

ENDING2「蒲乃菜、帰宅」

 

 

 

 ENDING10もだいぶつらい

 

どうして……こんな事になってしまったのかしら…
この人にって私は何だったのかしら…………?
私…………
私はいったい…………
私は…………いったい………………………………

――蒲乃菜

渡が死に、地下室のなかへと置き去りにされる蒲乃菜。いやもう……ほんと、私ってなんだったんだろう……彼にとって……って思いたくなるよね……。

ここまでくると、監禁される"意味"とか、ここまで従ってきた"意味"が脱色されていっちゃうので、ぽっきりと自我が折れそうな音が聞こえてくる。

イメージするのは、無空間で猿がひたすらタイプライターを弄っているの。あまりの無意味さに死にたくなるという意味で。

ENDING5「渡、事故死」

 

 

 

こんにちはっ!!!

 

こんにちはっ! あたし、みるくよっ!!
蒲乃菜、だっけ!?
あたしのセンパイって訳よねっ!
これからあなたと一緒に住むのっ!!
どうか仲良くしてちょうだいねっ!!

 いやーもうやめてー。

もうみるくのこの異常性は、声を聞いているだけでこっちも精神おかしくなってきそうなんだよ。ほんと、つらい。こんにちは!!! 

 

密閉された部屋の中に、少女達の声が響いている。手が掛かるだけで、ボクの事なんかちっとも見てくれない少女達が。

可哀想な蒲乃菜。
可哀想なみるく。
そして、可哀想なボク……。

ボクはボクを見てくれもしない、ただ手が掛かるだけの女の子達を二人も相手に、今日も独楽鼠みたいに忙しく彼女らの世話をし続ける。

 
このENDはだれひとり幸せに……いやみるくだけは幸せなのかな……。

 

ENDING10「蒲乃菜とみるくを飼う」

 

 

 

 

 trueだとは流石に思えないけど

 ED10まで見ると、タイトル画面に新しい√(でいいかな)が現れる。

それは、あの蒲乃菜が遭遇した電車の事件、ボタンの掛け違いがなかった別世界のお話であった。

これをtrue(真実)とは思えなくて、もしも、もしかしたら、という渡や蒲乃菜が「夢見る」お話のように捉えてしまう。本当にあったもの、あったかもしれない√ではなく、「そうあったらいいなと思う人間が夢見るお話」ということだ。

仮にもしそうであれば、渡に「あのとき助けてくれた人ですか?」「ううん違うよ」と否定されたときの余白のさいに夢見た、お話だと私は感じる。

そうしてED11は誰もが幸せに、綺麗に、終わる。 

 

もちろん今でも、ボクはゴムが好きだ。

だけどその事は、まだ蒲乃菜に打ち明けてはいない。いつか――いつかもっと、ボクと蒲乃菜が今よりももっとお互いの事を知りたいと思った時、ボクは彼女のいその事を打ち明けるかも知れない。

だけど今は、まだまだそんな時じゃない。

だからボクは優しい蒲乃菜と機会を作って語り合い、いつかその日が――ボクがボクの秘密を打ち明けるその日が来るまで、ボクはボクの蒲乃菜と過ごす時間を、思い切り大切にしようと思っている。

 

しかし、私はこれでは満たされないなって思う。やはり渡が自身の鬱屈と懊悩と超えた先にある、「他者性の復活」こそが綺麗に思えるなあって。なのでED2が好きなのである。一番好きってわけじゃないけど、一番綺麗なEDはどれ?って言われたらED2と言いたい。一番好きなのはED1で。

 

ENDING11「あの時をもう一度」

 

 

 

 <参考>

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↑はもうプレミアなので購入は難しいけど、メガストア版ならお手頃なので

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