猫箱ただひとつ

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ノベルゲームのレビューサイトの需要って?(5028文字)

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1)レビューサイトを求めている読者

 

レビュー(review)の語源的な意味は「再び見る」「再検討」「点検」だが、日本では「批評」「意見」「報告」を指す言葉だそうだ。これも作品を再び見ることから繋がった意味合いかなと思う。

ergレビューでは更に「評価付け」も加わる気がする。作品を論じやすい項目に分解して、並べて、評価を付けていく。グラフィック、音楽、シナリオ、システムとその項目ごとに10点、3点といったふうに。

項目ごとに分けた方が論じやすいということもあるが、私からすると「評価をくだす」という行為に価値を置いているとも思う。書き手の主観的な評価を付けること、それを外部に示すことが重要になっているのではないかと。

 

私がergレビューに求めているのは感想で批評で意見あり、「評価付け」はあまり求めてはいない。評価付けはあればあれでいいと思うけど欲しい情報のメインではない。というのも、ergレビューを見るタイミングがその作品プレイ終了後だから、というのもある。

最近ふと感じるのがこの「評価付け」の部分を求めている人が案外多いのかもしれない、ということ。

つまり、ergレビューに求められているのって「感想」というよりは「ergキュレーション」なんじゃないのだろうか。そうでもない?

↓ 

ちゃんとしたエ口ゲ批評サイトさがしてます。
批評空間等のレビューサイトは評価基準が個人裁量ですが、ああいうのではなくて何かしらの評価基準が定めてあるサイトはないでしょうか?
どこを探しても、「このシーン最高」とか「CG神」とかただの感想やん!?ってのが多すぎて…。

――ちゃんとしたエロゲ批評サイトさがしてます。批評空間等のレビューサイト... - Yahoo!知恵袋


この質問者は「作品を印象で評価付け」するのではなく、ちゃんとした評価基準を打ち立てた「厳密に評価付け」しているサイトを探しているのだけれど、これを見て「評価付けそのものをメインに捉えている人がいるのね」と感慨深かった。そういう発想がなかったのでね。

あとergレビューサイトをレビューするスレ*1を覗くと「新作を早めにレビューするとお客さん増えるよ」「情報として使えるレビューサイトがいい」という趣旨の書き込みがある。

これら2つは「面白い作品を紹介して欲しい」という動機でレビューサイトに通う人たちがいるということを示している。だからこそ「面白い作品を見つける為に」きっちりとした評価付けをしているサイトは作品購入の参考になるため有益になるということなんだろう。

何を当たり前なって感じだけど、私は「そういう動機の人もいるんだな」と分かって新鮮だった。繰り返すがあまりそういう動機でレビューサイト行かないから余計にね。

もしかしたらergレビューサイトに読者が求められているのは、記事の内容というより(もちろんこれも質が高ければいいとは思うが)「自分がまだやっていない自分に合う面白い作品を見出すサイト」「それを紹介するサイト」なのかもしれない。 

これを仮定とし良いレビューサイトを「評価精度の高い作品キュレーションサイト」として考えてみる。

 

 

 

2)ergキュレーション活動

 

先の仮定を踏まえると、良いレビューサイトを目指すならば

  1. 膨大な数のergをプレイしてる
  2. 客観的な評価ができる

の2点があるといい。

 

 

1、ergを膨大にプレイする環境


(この記事で言う)良いレビューサイトを目指すのであれば、多くの作品をプレイすることは必須だろう。

なぜなら読者が求めているのは「自分がまだやっていない自分に合う面白い作品を見出すサイト」であり、自分が知っている作品ばかりレビューされても情報として価値のあるサイトにはならない。

多くの作品をプレイしなければ「あまり知られてないけど実は面白い作品」を発掘できないし、また「大衆向けではないけどニッチな趣味の人にハマる作品」も見出すことも出来ない。

過去作・新作・フリーゲーム・同人・CS版のergを網羅しプレイし紹介すればするほどそのサイトは良質な場所になる。(CS版はergではないって?細かいこと気にしちゃだめ)


しかし、ergでキュレーション活動は敷居が高すぎる。まずerg1作品にかかる時間が約10-20時間程だし、大作ならば40-100時間と膨らみ続けることになる。

小説はいくら長編でも20時間はかからないしアニメは全50話でも25時間程である。映画は2時間で終わることを考えればいかにergが1作品にかかる時間が大きいか分かるだろう。

次にergをプレイできる場所が限られてくるということ。基本的にergはPCでプレイするので、気軽に外で読んだり喫茶店で読書するようにはいかない。もちろんノーパソやタブレットを駆使し外でもergをする人はいるだろう。電車の中、喫茶店、オフィス、公園、学校でやる人はいるのかもしれない。

けれど抜きゲーは尚の事、シナリオゲーでも必ずある「H,シーン」のことを考慮して、あるいは「美少女ゲー」ということを勘案し外ではうまく没頭できないのではないか? 人の目を意識してしまい集中できないのではないか? 

「ergを多くプレイ」することと「楽しく読む」ことは両立が難しい。前者を優先するならば、映画を2倍速で見る人のようにergもまた倍速・スキップ・拾い読みを駆使してプレイすればいい。

けれど趣味を効率化してしまったら、それはもう楽しめなくなってしまうものなので「レビュー」という活動すら危うくなる。「楽しむ*2」ことは出来なくなるが「作品を多く読む」ことは出来る……。

こういったerg媒体の性質が多くプレイする事への障害になる。「1作品にかかる時間」「プレイできる場所」の2点で、本を多読するようにergを多読することは難しいと考える。 

 

まじこれイノベーターの領域だからね……。

 

 

 

2、客観的な評価ができる

 

「完全な客観」なんてものはないけど、それでも自分の主観を敷衍して客観的に物事を見ようとすることは出来る。

自分が面白いと思った作品を「自分以外の他者にとっても面白いかどうか」を判断できるかどうか。これを正確に評価出来るかで大勢の読者にとって有益な情報を提供できるかの分水嶺になる。

この客観的評価の力が極まると「有益なサイト」「良いレビューサイト」という評価を得られるんじゃないかな。

さらに下記事で取り上げた「アジテーション」を練り上げた記事を書くことができれば重畳だと思う。

関連→エ口ゲを効果的に「アジテーション」するにはどうすればいいのか? その3つの方法

 

以上を踏まえて理想のergレビューサイトを妄想する。↓

 

 

 

3)理想のれびゅーさいとー

 

月に10本程度の作品レビューが投稿される。取り上げられる作品は新作はもちろんのこと過去作、同人、海外、CS、フリゲーと個々東西のノベルゲームを幅広く扱っている。もちろんergもある。

そのアンテナの広さとプレイの早さを駆使し、世間的に有名な作品ではない知る人ぞ知る、あるいは知る人が誰もいない「実は面白い作品」を発掘するサイトになっている。

このサイトでは、評価付けが厳密なため「☓☓の作品が72点だから○○作品は85点なら○○は期待できそう」というジャッジを簡単に下せることもポイントだ。

さらに「この作品を好む読者層」を記事内できちっと指定していることで、公式サイトでは判別しにくいその作品に合う人を絞り込み購入の参考になることにも成功している。読んだ人を魅了するアジテーション力の高い文章が並んでいることも魅力の一つだろうか。


「レビューの早さ・豊富さ」「厳密な評価付け」「読者層の指定」を行っていることで、読者が寄せる作品への期待を外れることは少なく、個人の嗜好はあるものの購入したergはおおむねレビューの評価通りであると評判である。

……

………………


+++++


……こんなところ?

実際これくらいなら実現可能だよね。ただ運営者一人ではおそらく無理……なので、無理ではないがちょっと難しすぎるかな。

運営者を10人くらいの体勢で回せばいい感じのレビューサイトになりそうだよね。

ただ、これを既にもっと大きな規模で体現しているのが批評空間なわけであり不正票などはあるかもしれないけど集合知としての点数はわりとアテになると思うしPOVを絞込んでは「自分に合った」作品を探すこともできる個人では捌き切れない作品数を大勢が捌いて表舞台へと上げている。クラウズ型。個人のサイトでは太刀打ちできないほどのデーターベースとして完成されている。

 

ergレビューサイト―――厳密には「個人で運営する情報として価値のあるレビューサイト」ってもういらないのかもね。大きな規模で有益なサイトがあるならば余計に。

ってこんなこと前々から言われていたとは思うけれど。

じゃあ個人サイトで有益なサイトはどういうものか?と問われると、私的にはやはり「作品の新しい視点を開拓してくれる」ところだと思う。

厳密な評価付け、客観的評価、多数のレビュー記事を投下する、のではなく「感想」「意見」「主張」「考察」といった主観的な側面があるものが個人のレビューサイトとして色を出す。

「感想」というのはもろにその管理人しか出せない「見方」を他人にも見せてくれるものなわけで、それがデータベースではない魅力に繋がるのではないか。

その作品を、どう見て、どう感じて、どういうふうに切り取るか。再錬し再構成し再構築するかどうかが有益か否かを分ける、と。



【関連記事】


作品批評は誰のために、そして何の為に(18205文字)



そういった力ある人――独特の視点――を持っている人の記事はついつい読んでしまう魅力があるよね。例えその作品をプレイしていなくても、ネタバレだと分かっていても読んでしまう引力がある。

自分も数年前にある方のブログを貪るように読んでいたこともあるんだけど、未読なのに、未読でも、ネタバレあるよと言われても「読んでみようかな?」と思ったり。そして読んでしまったり。

未読作品のネタバレに抵抗があるのは、読んでしまったらその作品を楽しめなくなるからで、その「楽しみ」を引き換えにしても「その記事」を読むことが上位にくるってのは中々無い。

今じゃそのサイトの記事は未読では読まないようにしているんだけど、こんなふうに「ネタバレでも読んでみようかな?」と思わせ読ませることが出来ればもう勝ちな気がする。レビューサイトとして。

 

このブログも、そういうベクトルでゆるく目指していければいいかなと思う。(いきなり〆たぞ)

 

 

 

――次回予告(今日17時)

「いつか、届く、あの空に」

 

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*1:これは最新でいいのかな?……もう大分古いスレをあげたけどこのスレを指しているというよりは、この「一連のスレの過去ログ」を指してる

*2:ここで言う楽しむとは、作品の構造・記号・流れ・外部文献で味わう「興味関心/知的欲求」によるものではなく、「没頭/感情移入」による感情で楽しむスタイルのこと