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白兵討論までの論戦をまとめる『ギャングスタ・アルカディア』より(24391文字)

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前回の記事ではアタック・カウンター・カウンターときて白兵討論で強制終了しました。1記事4万5000文字の文字制限のせいですね。ああ憎たらしい。

今回はその続きである「白兵討論」を追いかけて、最後にこの議題「天使と☓☓すべきか」の論戦内容をひとまとめにして終わります。


100%自分の為だけに書いたこの記事を細部まで熟読してくれる人がいたら本当に感謝です! ありがとう!

 

 

 

こおり< 悪じゃなくて善になりたい

「ゆとりさんが言うように、あたしは悪よ」

「でも、そうじゃなくなりたいって思ってる。悪から脱却したいって思ってる」

「人を変えるときには、率直に接して、理解してもらってからにしたいと思ってる」

「それができずに悪に頼るのは……、あたしが未熟だから」

「未熟なあたしが、姑息になってるから」 

――こおり

 うーん面白いなあ……。こおりは自分が悪だと認識している、そういう行動を取ってしまうことを理解している。それを踏まえて自分は「善」になりたいっていう。

他人の意向に沿って他人の為になることをしたいと。それが出来ないの自分が未熟だから、姑息だから。

   「でもほんとは、あたしは悪じゃないものになりたい。今は悪だけど、悪じゃないものになりたい

 

「照れ隠しせずに言うと―――あたしは『善』になりたい」

「『人がそうしたいと思うやり方で、人がそうなりたいと思うことを実現すること』」

……うわ、ギャングのスローガンを完全否定された。

「あたしは、今のところは善じゃない。でも、善になりたいと願ってる」

「あたし自身が弱く未熟だから、今は善じゃないかもしれないけど」

「今は悪かもしれないけど」

「でも、今は悪でも、あたしは善になりたい」

「現時点で悪だってことは、悪であるべきってことを意味してるわけじゃない」

「だから、あたしは悪だけど、悪の側には立たない」

――こおり、叶

あたしは悪だけど、悪の側には立たない。

これは違うものに置き換えてみると、自分は万引きをしたことがあるけれど、万引きが良いなんて思わない。私は人を殺したことがあるけれど、殺人を是とする立場には立たない。

一見これってダブスタなのかなと思ったんだけど(もしかしたら厳密にはそうかも)、なんだかちょっと違う気もする。

「自分はこういう立場だけど、本当はそっちのほうが良いと思ってる」

だからそのそっちの立場を選ぶよと。それはまるで現実的意見と理想論のぶつかりあいのような感じでもある。"ほんとうは"こっちがいいけど、"今"の自分はこうだみたいな。

むー。

 

 

 禊<それは滅びの選択

「人の意向を無視して『救済』を行う側には立たない」

「天使とは相対すべき―――そう思う」

「……それで、人類が滅びるのだとしても?

「滅びるべきだなんて言ってない」

「でも、救うにしても、その人の意向を無視したらダメって言ってるだけ」

「同じこと。それは滅びの肯定」

「同じじゃないでしょ。人の話、聞いてるの?」

「聞いている。聞いているからこそ、言っている」

「むしろ、こおりこそ、自分の言葉の意味を理解していない」

「どういうことよ」

「理想はけっこう。けれど、現実はそう簡単じゃない」

「時間は有限だし、人の思考も簡単には変えられない」

本人の意向と幸福。いずれからを優先しなければならないときはくる

「それに、衆生は重すぎる現実に耐えられない。知る必要のないことを知ることは、不幸を招く」

「よって現実的に判断する必要がある」

「それをせずに理想を述べることは、たんなる滅びの美学」

――禊、こおり

 禊の主張はこうだ。「天使による救済を是認しないというのならば、それは滅ぶことと同じ。本人の意向を無視して幸福を取るか、意向に沿い不幸なるかのどちらかだ」。

でもこれは「天使による救済が=幸福」という前提があるからこその主張だ。天使の救済が=幸福にならないのならば、禊は天使の側には立たないだろう。いや誰もアマネの側に立つわけなどない。

そして「天使の救済=幸福」という前提は、実は間違ってないか?とシャールカ介入。

 

 

シャールカ<天使の救済なんて良い結果にならない

 「いや天使の介入がダメだっていうのは、別に理想論じゃないぞ」

原理主義で机上の空論を振り回してるわけじゃないんだ」

「理想とか原理原則とか、そんなものはシャールカはどうでもいい」

シャールカには、ぜったいに護らなきゃいけない理念なんてない

「理想なんかもたずに、その場その場を何となく切り抜けたらいいって思ってる」

「場当たり的に、そのとき必要なことをやったらいい。それで、最終的にそこそこいい結果になればいい」

「そう、シャールカは思ってる。理想よりも結果のほうが大事だって」

「もしもいい結果になるなら、他人が介入したっていいと思ってる」

――シャールカ

 それは……なんていうか……叶と同じ……じゃないのか? 叶と同じマインドに近いんじゃないのか? 全部が全部じゃないけど、特に「シャールカには守るべき理念なんてない」っていう点が叶と同じなような気がしてならない。

2人とも禊や希やゆとりのように「これだけは死守する」っていう思想とか無い。そう見える。禊ならば救世主という考え方、希ちゃんなら個人の自由と誇り、ゆとりなら仲間という単位……そういう絶対的な理念なんて叶とシャールカにはない。

ただ叶は理想は持っていると思う。……いやどうなんだろ? 私は叶の理想って『悪』の実現なんだと思ってたけど、ゆとりちゃんが言うように「悪って思想じゃないんだよ絆だよ」って言われたら悪は理想ではなくなってしまう。

それなら叶には理想―こうしたいっていう考え―ってあるのかな? 考えてみると悪以外には思いつかないな……。

まあ保留

 ◆

シャールカ先輩は、理念を持たず思想を持たず、場当たり的に行動してそこそこの結果を出せればいい。理想なんかより結果のほうが大事、そう言っちゃうのが怠惰な住人である先輩。

「場当たり的に行動して」っていうのは叶に似ているよなー。叶もその場その場の楽しいことに釣られて紙飛行機飛ばしたりスーパーボールで遊んだりするもの。

ただ叶は「結果が重要だ」なんていう考えはおそらく持っていない。シャールカほどその想いを重要視していない。そう見える。近いけど違う。似ているけど似ていない。

てことでそろそろ話戻す。 

「あれ?それじゃあ……シャルちゃんはアマネちゃんがしたことに賛成ってこと?」

「とんでもない。そんなもの断固として反対だ。天使が介入したって、ろくなことにならないからだ」

「これは、原理原則の話じゃない」

「現実的にいい結果にならないから勘弁してくれって言ってるんだ」

――ゆとり、シャールカ

 

 

シャールカ<いい結果が欲しいあまり、因果関係をひっくりかえしてしまう

「アマネは人類を救うために、ディスサイクリアを流行らせようとした」

「あえて非情に徹したってとこだろうな」

「けど、非情に徹したら結果がよくなるってるのは、ロマンチックな思いこみだ」

いい結果を生むために、場合によっては非情に徹する必要があるってだけのことだ

その逆が成り立つわけじゃない

「でも、人間にしても天使にしても、ちょくちょくそこのところを間違える」

「いい結果が欲しいあまり、因果関係をひっくりかえしてしまうんだ」

「いい奴こそ、そういう倒錯にはまる」

――シャールカ

 いい結果を生むために、場合によっては非情に徹する必要がある。その逆はない。非情に徹したからっていい結果が生まれるわけじゃない。論理や原則を無視して、考えないで、ただ「非情に徹すればいい」だなんて考え方は間違っている。

非情に徹すればいい結果は生まれるのか? 違うだろ? 行為による効果に「非情になる」だなんてどうでもいいことなんだよ。それを勘違いして倒錯するのはいい迷惑だ。って感じかな。

それはきっと「努力と結果」の話でも一緒。徹夜してレポート作ってましたーとかいって「私これだけ頑張ってきたんだから評価してよ」みたいな顔してもダメ。そんなの全然関係ない。評価されるべきところはレポートの内容なんだ。どれくらい努力したかなんて意味がない。

それと似ている。

非情かどうかなんて、行為の有効性と何の関係もない

 

「もちろん、アマネがそんなロマンチックな思い込みだけで動いてるとは思わない」

「ただ、あいつはそもそも間違えやすい場所に立ってるってことを、まずは言っておきたい」

――シャールカ

 間違えやすい場所? ふむん。

今までのシャールカの主張を見ると「上から目線」の立場ってことなんだろうか。

 

 

 

シャールカ<世の中を良くしようっていう考え方は無駄

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「はっきり言うけど、世の中をよくしようと考えたって無駄だ」

むしろ、世の中をよくしようなんて発想こそが不幸を生む

「ほう……」

「人間の歴史は、そのくりかえしだっただろ?」

「理想郷にたどり着こうとするチャレンジは、ぜんぶ無残に失敗してきた」

世の中をよくすることなんか、そもそもできないんだ

「よくなっていなかったら、私たちは今も原始人のままのはず」

「もちろんそうだ」

「けどそれは、よくしようとしてよくなったんじゃない」

「結果的によくなっただけだ」

「世の中をよくしようとしたって、よくなんかならない」

――シャールカ、禊

 シャールカ先輩のこの意見、私の思想とは真反対なんだけれど、やばい受け入れちゃいそうになっている。納得しそうになちゃってる。やっぱり好きな人の意見は心に入り込みやすい持論。

たしかに……シャールカがいうように「世の中を良くすることなんか出来ない。たまたまよくなっただけ、結果的によくなっただけなんだ。そしてそんな発想こそがちがうべつの不幸を生む」ってのはそうなかもしれない。誰かの善意によって善意の押し付けによって不幸になる人っていうのはやっぱりいるから。

でもそれでも「進んで欲しい」っていう考えが私にはある。たとえ無駄でもダメでも間違っていても「いい結果」のために「歩みを止めないで欲しい」って。そう願ってしまう私がいる。

それは絶対の意志だから。それは誰かの願いだから。それを間違っているなんて言いたいくない。思いたくない。

でもシャールカの言い分も分かってしまう。きっと「世の中をいいふうにしようという行為は不幸のもとを生む」側面があるんだ。側面だけど……一側面にしか過ぎないとは思うけど、きっとそう。 

「どんな想いも、しょせんは個人のものか、せいぜいひとりにぎりの人間のものだからだ」

「結局は個人の都合でしかないんだよ」

よくしようって想い自体が、可能性を刈りこんじゃうんだ

世の中をよくしようなんて思っちゃいけない。なるようになる、それだけのことだ

「やるべきことといったら、せいぜいよくないことを消極的に排除するくらいかな」

「そうしてたら、結果的に世の中はよくなってる」

――シャールカ

「 世の中をよくしようなんて思っちゃいけない」

それはなんだろ。そう「未来」がない生き方なんだ。逆にいえば世の中をよくしようっていう発想は未来という概念がその人の中にあるということ。シャールカにはきっと「未来」という実感がない。あるいはその概念はとても希薄なんだ。

だから今現実に起こっているマイナスを排除するだけが出来ることと言っているんじゃないかな。なるようになる、っていう考え方も「今」にフォーカスしているからこその生き方のような気がする。

なんくるないなんくるないのよさー。

いやでも、きっと彼女はそれが「いい結果を生む」って信じてるしそうだと思っているからそう言っているんだろう。思想とか考え方だから優先しているわけじゃなくて、結果的に正しいから、そう言っている。

じゃあ考えてみよう。

全人類が「世の中を良くしようと思わない世界」を。そして今に起きているマイナスの出来事を排除して、なんとかなるさと暮らしている世界を……。

―――例えば、小学生のクラスを。(彼岸花の咲く夜にの影響で想像しやすいので)

いろんな人間がいてひしめきあっている30人の教室。

そこの先生と子供たちは自分たちの学校生活をよりよくしようとしない考え方だった―――

ってあれ。ちょっとまてよ。シャールカが言ったのは「世の中をよくしようだなんてむyだ」っていう意見だ。自分たちの周りの生活環境だとかQOLだとかはそれに含まれないんじゃないか?

つまりシャールカが言っているのは「Macro視点に立った救済」を批判しているのか。ミクロな視点ではなくマクロな視点を、ね。ふむふむ。

"世の中"を良くしようだなんて考え、それは戦争根絶だとか、飢餓問題だとか、水資源、砂漠化、貧困……まあそういった世界各地に点在する不幸をどうにかしようと試みること。

大きな力によって大きな問題の解決を試みようとすること。それが世の中をよくしようとするってことだと思う。

それが無い世界。

つまり誰も世の中をよくしようだなんて思わない人類がいる世界。飢餓問題や、ワクチン譲渡や、戦争やめるよう働きかける団体もいなければ行動する人もいない。みんな自分たちの周りだけでミクロな視点だけで生きているそんな世界。

それは……どうなんだ? これはまさしく「患者と医者」の問題だよね。自分たちでどうにもできない問題ってのはある。それを自分達で解決しようとしても"どうにもできない"からこそどうにもならない状態が続いていく。

飢餓、病気、戦争、……そういうのはもうその国や地域ではどうにもできない。そう人たちを例え「当事者意識のない上から目線」だとしても適切な行動をすれば助けられることだってあるのに、それがない世界。

それは本当に理想論じゃないと言い切れるんだろうか? むしろ禊んの意見はとても現実的だ。

どちらが良いか悪いか、理想が悪いなんて言いたくないけど、上述した問題に限っていえば私は「現実的な意見」を採用したいかな。つまり上から目線で助けられる人は助けたい。

「一発逆転を狙ったって、結局は悲劇しか生まないんだ」

「困難を解決しようと戦争に訴えたところで、破滅を招くだけだ」

「意図的によくしようだなんて思いついた時点でダメなんだ」

「だから、アマネの考えは根本的に間違ってるんだ」

――シャールカ

 

「必要なのは、いいことをしようなんて意思じゃない。フィードバックだけ」

「やったことの結果をつねに確認して、問題がないかどうかをチェックすること、それだけだ」

――シャールカ

 そうシャールカがいう世界は「誰も間違えないようにする世界」だけれど、もう既に間違ってしまったどうしようもないほどに失われてしまった世界では、「放置」することを選ぶんだよね。

意図的な介入はしないで、意図的によくしようだなんて思わないで、流れのまにまに「いつか」良くなっていることを願ってそれで終わり。それは……。

 ◆

それは置いておくとして、結局個人の考え、個人の都合でしかないのに「世の中」にまで波及するなってことなんだろうかシャールカの懸念は。

自分の周りの人間の問題を、世界にまで拡張してんじゃねーよ。そんなことするから可能性を刈りこんじゃうんだろっ。と。

それとやったことの結果を常にチェックして間違っていないか、問題がないかをチェックする、か。これも「今」的思考な気がするな。現状を良くしようとするけれど、あんまり未来の予測は含まれていないから。

 

 

 シャールカ<天使は人間と前提を共有していない

 「……いや、当事者意識って言い方はヌルすぎるのかもしれないな」

「そもそも、考え方や自覚ってレベルの問題じゃないんだから」

「いくら頭がよくても、いくら能力があってもアマネは人間と前提を共有してない」

「人間同士の場合なら、まあ価値観とか利害関係とか文化とか歴史とか、そういうことになるだろうな」

「だけど、天使の場合は、もっと根本的なところで前提を共有してない

「天使は、肉体的な存在じゃないから」

「天使は死なない。すくなくとも、人間と同じような意味じゃあな」

「天使は、物理的な制約を無視することができる」

「今は仮に人間の姿をしてるけど、あんなの、しょせんは着ぐるみみたいなものだ」

「そんな相手と、判断の前提条件を共有できると思うか?」

――シャールカ

天使と人間は「患者と医者」の関係にはなれないっていう主張だと思う。患者と医者は「人間としての前提」を共有できているが人と天使じゃ根本的な"価値観"を共有できない。だからいいアマネの判断にいい結果なんて起こらない。

そうこれはループしたのだ。ゆとりは「アマネちゃんが正しい保証はないし間違っている保証もない。ならどっちかに賭けなきゃ」といい、春日は「天使と人間は違うのは分かります。でも話し合ってよりよい方向へ進むことは可能です。だって意思疎通できているんだから」の堂々巡りになりそうだ。

シャールカは「判断」にこだわってる。判断……判断かー。

 「シャールカたち人間が、天使の問題に介入して解決することも、やっぱりできない」

「人間の倫理とか価値観を下から目線でもちこんだって、肉体をもってない天使の役には立たない」

「結局それは、偏見を根拠にした差別主義にしかならないんだ」

「勝手な押し付けだよ」

 ――シャールカ

 文化、歴史、価値観、それらを共有していないと「良い結果」なんて生まれない。それはシャールカ自身の経験によって導きされた考えなんだろう。

そしてそれらが共有されていないってことは、偏見が起き、偏見を持ったまま介入されても差別にしかならない……ってことかな。勝手な押し付けだよ。たしかに勝手な押し付けかもしれない。

人間同士でも根っこの共有ができていないと、偏見を根拠にした差別というのは起こりえる。起こった。人間でも起きるのに、それより"違う"天使の判断が正しいと思えるのか? 

……思えないな……天使は完璧ってわけじゃないみたいだから余計に、その偏見を根拠にした、人間の実態を知らないで勝手な美意識を持っている天使の判断が間違うっていうことも十分にありえることはわかる。

ただあとはもう、そうなると―――結局はアマネを信じるかYesorNOにしかならない。最後に行き着くところは信じるかどうか。信じれないか否かだ。

 

 

 シャールカ<天使がやろうとしていることは人類救済ではない

 「きっと、天使の定義するところの人間は救われる」

「けど、天使が介入した時点で、それは世界をよくしたとも未来を変えたともいわない」

世界がよくなったんじゃない。天使に世界を奪われただけのことだ

未来が変わったんじゃない。天使が未来を作っただけのことだ

「もしも天使の力で人間が生き延びたところで、そのとき生きてるのは、人間じゃないものだ」

「それは、地べたを這いずりまわる虫じゃない。崇高な理念に生きる天使だ」

「天使のやろうとしてることは、結果的には人間って存在の書きかえだ」

「そんなの、人類を救済したなんていわない」

――シャールカ

 上から目線……ではなく上位存在からの介入というのは、その種族の「書き換え」が行われてしまうんだろう。天使が定義するところの人間が救われて、人間が人間だと思う人間は救済されない。

未来が変わったんじゃない天使が作っただけなんだ。上位存在が作っただけなんだ。

それは人から猫にするように。きっと猫という意味を人の手によって書き換えてしまっている。猫だったものが猫じゃなくなってしまっている。野生の力を失い牙を失い餌を与えられ寝床を与えられ安全と安心を手に入れてしまった猫。

彼らは今までの猫とは違う存在だ。人によって猫の世界が奪われた。

猫からすると「自分たち」という考えさえ浮かばないかもしれない、自分たちが猫だとかどうでもいいよみたいな、そんな主観世界を生きているのかもしれない。それならその意味では問題ないと思う。

ただ人間の場合は、自分達が世界を書き換えるのは好き勝手やるくせに自分が誰かに書き換えられちゃうのはひどく怖がる。それは「自分」というものを持っているからだ。「自我」というものに価値をめちゃくちゃ置いているからだ。

だから自分が自分でなくなってしまう行為は嫌いなんだ。許せないといってもいい。

でも幸福希求の立場に立つのなら、それはそれでいいことなのかもしれない。自分たちの存在を書き換えられてでも幸せを求めるのならば、天使の意向に従うのだってアリだとすら思う。

 

 

禊<衆生にとってはそれでいいかも 

「……衆生にとっては、それでいいかもしれない」

「人間が人間じゃないものになることがか?」

「それが幸福かもしれない」

「人としての責務を負うこと。衆生にとって、それは苦しみの原因となりうる」

「ならば、人でなくなることは、むしろ救済でありうる

――シャールカ、禊

 人でなくなる――つまり人格や自我を失う――ことは救済になる。という禊んの意見は納得してしまう。そう人は「感じる機能」があるから不幸になる。いろいろなことを考えて、余計なことに思い悩んで後悔して、辛さや苦悩を"感じる"心があるから不幸になる。よけい辛くなる。

もし人間が虫のようにカブトムシのように、蜜を舐め交接をし食べて寝てを繰り返す存在だったならばきっと今よりも幸福だったんだ。

そんな考え。そう人間は人間であるから辛い。高度な判断能力と思考と演算、テレパシーのような他者読解能力、ミラーニューロン、そういうのを保有しているから生きることは苦しい。

ならば、そんな苦しみから解放されることは救済たりえる。


とはいうもののアマネの意向に従うとしても、自我とかそういう能力は保有しつづけるわけで、たとえ天使に想う崇高な理念に生きる人間になったとしても、それはあくまで「理念」の中での話であり、実際の生活し日常を続けるとなったら短期的な視点でいえば「無変化」といってもいいんじゃないのかな。

 

 

 シャールカ<みそぎんはそれでいいの?

「……みそぎんはそれでいいのか?」

「衆生はそれで幸福と、私は判断する」

「衆生じゃない、みそぎん自身だ。みそぎんは、人じゃないものになってもいいのか?」

「衆生と統治者はまた別」

「統治者はすべてを背負う者。人でありつづけなければならない」

「統治者は、背負えない重荷を背負いつづける者でなければならない」

「おいおい、そんなのってないだろ。自分と一般人は違うなんて」

「実際、違うのだから仕方がない」

「統治者の立場とか、今はいい。みそぎん個人はどうなんだって聞いてるんだ」

――シャールカ、禊

 禊は天使によって人が人じゃないものに変わることを是とした。しかしそれを「自分」に当てはめて答えることはしなかった。

もちろんシャールカは「そんなのってないだろ」って言う。天使に従った結果、衆生は人じゃないものに変わるけど、自分はそうじゃないって言いたいのかよ。なんだよそれそんなのってない。

禊んだって一般人だろ。天使に変えられちゃう存在だろ。なのに自分だけ違うなんてなしだ。 

「……仕方ない。個人的な話をする」

「私はこの奥遷宮で凜堂家に生まれ、統治者となるべく育った」

「かならずしも、自分で決めた生き方じゃない」

「けれど、ここで統治者として扱われたきたことが、自分を形成している

「それが自分の成り立ちである以上、そこから逃れることはできない」

「こんなの、こおりが言いそうなこと。だからとても不本意」

「けれど、ここでの家族や村人からの処遇が私を形成していることは事実」

統治者としての自分と個人としての自分を分けることなどできない

「……衆生は救済されるべき。それが人でないものへの道だとしても」

「しかし、私は違う。人でありつづける」

「答えは同じ。個人としての私も統治者としての私も同じことだから」

――禊

 ほんと、これこおりが言いそうなこと。以前に禊が否定したことでもある。だからとても不本意っていうのは分かる。

 

「そんなどっちつかずはないだろ。肯定するのか否定するのか、どっちかだけだ」

「みそぎんは、天使と敵対すべきじゃないって立場なんだろ?」

「けど、みそぎん自身は天使と敵対すべきって立場になってる」

「そんな二枚舌って卑怯だぞ」

「卑怯じゃない。私が卑怯に見える話の展開自体がおかしい」

「……何だよそれ」

「今は、天使の話をしているわけじゃない」

「話をひっくり返すなよな。天使と敵対すべきかどうかって話だろ」

「表面上のテーマはそう。けれど、言葉の意味を取り違えている感がある」

「問題は、『なるべきかどうか』であるはず。『誰がやるか』は二義的な問題」

「……んん?」

「―――天使と敵対すべきか否か」

「この問いの意味は、天使と仲良くするか否かとは異なる」

真の意味は、天使が行おうとしていることを肯定するか否か

「天使は衆生を救済しようとしている。そのことを、私は肯定する」

「衆生は救済されるべきであるし、幸福になるべき」

「それを行う天使のことは、問題としては二義的。救済など、誰が行ってもいい」

「もしも、天使が救世主としてふさわしくないなら、みずからが取って代わればいい」

「天使から救世主としての立場を奪い、なすべきことをなせばいい。それだけのこと」

「人間がやれば、もろもろの懸念は解消されるはず」

「そうすれば、結局は、人間が人間をどうするかという問題に帰着する」

「二枚舌でも卑怯でもない。医師と患者の話になるだけ」

「同じ前提をもった人類のなかでの役割の違いになるだけ」

――禊、シャールカ

 

「誰がなすかという議論は不要」

「なすべきことが救済であるなら、そのために必要なのはアマネを従わせること」

「……そんなの、どうやってやる気だ」

「……どうにかする」

「何だよそれ」

「どうにかすればいい、それだけ。話し合いでもいいし、力ずくでもいい」

 

「それって、自たちが天使になるってことだろ?」

「けど、シャールカはそもそも、そういうことを否定してきたんだ」

「天使の立場に身を置くなんて、天使に乗っ取られるようなものだ」

「ミイラ取りがミイラになるってことだ」

 

「―――結局、話は戻ってくる。天使と敵対すべきか否かに」

「それにシャールカは、天使と敵対すべきだって答える」

「天使のもくろみを肯定するか否かって言いかえてもべつにいい」

「それにしても、結論は同じだ。天使の目論見を否定すべきだって答える」

ここまでのシャールカと禊の意見の流れをまとめると 

 

 

→「天使がすることは人類救済ではなくて、人間の書き換えだ。そんなの天使が世界を奪っただけだし、未来を作っただけのこと。人間が変わってしまうってことだ」

シャールカは天使の目論見を否定、

→「衆生にとってそれでいいのかもしれない。決定と責任を背負わないことは幸福だから」

対して禊はそれを肯定する。

→「みそぎんはそれでいいの? 自分が人間じゃない何かになってもいいの?」

シャールカは問う。おそらく禊の真意が掴めなかったらから

→「私は一般人じゃない統治者。統治者だから衆生じゃない。私は書き換えられないし私のままで人でありつづける」

?禊の意見はダブルスタンダードじゃないか? 

→「そんなのっておかしいだろ。自分は例外だなんてそんなのなしだ肯定するのか否定するのかどっちかだ」

やはりシャールカもそこを突く。禊の意見は「天使の救済はされるべき」「でもその救済は自分自身は適用されない」というものだ。

→「おかしくない。誰が行おうと関係ない。救済はされるべき。それを行うのは天使でも人間でもいい。誰が行うかという議論は不要」

結局禊はダブスタで貫き通すっていうことなんだと思うんだけど……うーん私の認識が違うのかな。禊のこの主張は論理的に通る? 
これって違う見方で見ると禊の意見を理解できそうに見えるんだよなあ……例えば「10日後に隕石が地球に衝突します。結果全人類死にます。あなたはそれでいいですか?」「いいよ。わたしはシェルター持ってるから(=私だけ隕石の被害に逢いません)

みたいな発言に聞こえるんだよな。つまり自分だけは適用外になる自信があるかないかって話だと思うんだけど、どう?この例え。


→「それって結局自分は天使になるってことだろ? シャールカはそもそもそれを否定してきたんだ。天使になるっていう行為を否定してるから、天使と敵対すべきっていう立場にいるんだ」

つまりシャールカは「天使の目的である人類人感損失の阻止」と「天使という立場」その2つを否定しているってこと。

 

 

 ストナジョフと空爆と、普遍的価値

空爆なんて意味がなかった。空爆が住民を守ってくれるわけじゃないからな」

「それに、空爆がストナジョフの態度を硬化させた」

「ストナジョフは追いつめられて、マヤーク人への弾圧を強化した」

「……それが、空爆の効果だ」

――シャールカ

 

「連合軍は、たかをくくってたんだ。ストナジョフがすぐに音を上げるって」

「戦力差は圧倒的だったからな」

「それに、スミチュカってとりたてて豊かな土地じゃない」

「そんな場所にこだわることはないはずだって判断したんだ」

「だけど、外国の奴らはイェドニアのことをわかってなかった

「スミチュカは、イェドニア人にとって聖地なんだ」

「イェドニア人のストナジョフが、簡単に手放すはずがない」

――シャールカ

 当事者意識の欠けた善意の介入は―――とても醜いものなんだろう。現地の人の生活環境、経済、民族への価値観、文化、宗教……そういうものを知ろうともせず知りたいとも思わずただただ「自分たちにとってよかれと思うことをする」だけだ。

そんな善意の押し付けは、ひどいときはほんとうにむごたらしく悲惨な結果を突きつけてくるんだろう。

「あの……どうして空爆なんかしたの?」

「たんに安全だからさ

空爆なんて手段を採用した理由は、べつにそれが効果的だからじゃない」

「地上軍を出して戦うより、空から爆弾を落とした方が楽だからだ」

「自分の安全だけを考えて、地元の人間を危険にさらすなんて本末転倒もいいとこだ」

「なにが『普遍的価値のための介入』だ」

「外国の奴らは、真面目にイェドニアのことなんか考えてなかったってわけだ」

助ける気なんか、最初からなかったんだ

――シャールカ、こおり

 相手のことを助ける気なんてさらさらなかった。正義を訴えるものも善意を叫ぶものも平和を謳うものもすべてきっと自分たちの為だった。なんだそれ。ふざけんな。

誰かの為に―――そしてそれが相手の為になると盲目的に信じていることは本当に劣悪なことだと肝に銘じるべきだ。私はこれを覚えておくことにしよう。

 

「それに、そもそもフェアじゃない」

「あいつらは、相手がストナジョフだから介入したんだ」

「ようは、弱っちい相手だったからってこと」

「もしも、同じようなことがもっと大国で起こってたらどうなったか」

「もっとやり手の政治家が起こしてたらどうなってたか」

「……そんなの、スルーにしてるに決まってる」

「同じように人が死んでても、『普遍的価値のための介入』なんてしなかっただろうな」

「けど、『普遍的価値』のためなら、相手が誰であってもやらなくちゃいけないはずだ」

「普遍的なら、そもそも差別しちゃいけないからな」

「やりやすいからとか、好きだからとか、そんなことは関係ない」

――シャールカ

 

「平和的な紫煙ってやつも、ろくなもんじゃなかったな」

「えっ?」

「あいつらは、いろんな慈善事業をやっていった。けど、どれも今イチだった―――」

……いろんなことがあった。

工場にやって来た最新型の機械は、マニュアルが読めず使い方がわからないので放置された。

どんな材料が使われているかわからない食料は、宗教的タブーに触れるのを恐れて破棄された。

子供たちのためとして送られてきた文房具は、監禁されて食料に化けた。そして、無償の援助物資が出回ったせいで、地元の企業が煽りを受けて潰れたなんてこともあった。

――シャールカ

 

……それでも、物資が私たちのところにまで下りてくればいい方だ。

あらゆるレベルでぴんはね、政府が腐敗している私情に投資を行う物好き、経済が停滞。空爆の前からイェドニアの経済は援助のせいで行き詰まっていた。

 

私の家を荒らして火を付けた奴らが、善意の人道団体のせいで野放しになったというわけだ。

 

 

 

 

 

 シャールカ<人が死ぬよりぜんぜんいい

「そんなおせっかいは、もちろんごめんだ」

「だけど、問題はそこから先なんだ」

「そいつらは、善意で介入してきた」

善意でやってるってことは、間違いがあれば次からは改善されるってことだ

「2回目以降は、それまでよりましになる」

「実際、その後イェドニアはすごい勢いで復興した。東欧の奇跡なんていわれるくらいに」

中略

「けど、それってどうなんだ?」

「いいことだ。人が死ぬよりぜんぜんいい。それはもちろんだ」

「だけど、シャールカは信用できないんだ」

「失敗したら、次は改善する……そんなプロセスが」

「信用できない……耐えられないって言ってもいい」

――シャールカ

 善意でやっているからこそ反省し改善される。けれどシャールカはそのことを「信用できない」という。失敗したらよくなるっていうプロセスが、信用できない、耐えられない、あるいは嫌っているのかもしれない。

世界の在り方を、「失敗したら→改善して→良くなる」っていう過程が。ただたんに「→良くなる」っていうことじゃない、結果的によくなるのともまた違う。 

「……よくしようとすること自体が間違いって話か?」

「半分はそうかもしれない」

「世界をよくしようとしても無駄。世界はただよくなる。それだけ」

「でももう半分は、この世界のあり方そのものに関係する話かもしれない」

「シャールカは、未来なんか信じてない」

「……まあ、そう言うと語弊があるかもしれない」

「シャールカは、今現在がハッピーなのと同じように、未来もハッピーになると思ってる」

「そういう意味では、未来を信じてる」

だけど、現在と未来が地続きだってことは信じてない

「未来が、今よりよくなるとする」

「すると未来のシャールカは、今のシャールカとは違う考えをもつようになる」

「そんなシャールカは、今のシャールカをふりかえって、反省するかもしれない」

「……そんなの、シャールカは受け入れない」

「未来のシャールカは、今のシャールカとは別人なんだから」

「他人の言うことなんか、知ったことじゃない」

「シャールカたちが生きてるのは、この現在でしかないんだ」

「それこそが、シャールカたちが……みんなが大切にしてきた価値だろ?」

――シャールカ、希

 先輩は「現在」と「未来」は決して地続きではないという。それはきっと"繋がって"ないってことを意味してる。今と一年後は繋がっていない。地続きじゃないから。

それにおそらく先輩は「今の自分」を「よりよくなっている明日の自分」に否定されるのがとても嫌なんだと思う。だってそれじゃまるで今の自分はダメなやつみたいじゃんか。

10年前の今日を思いだして、あの時は未熟だったなとか若かったなとか、考えなしでいつも失敗ばかりして恥かいていたなとかそう思いだして微笑むのは多数派だからこそだ。とても当たり雨で、そんな行為に疑問すら思いつかない。

でもシャールカは違う。彼女はそんな行為を耐えられないという。未来の自分が過去を振り返って、「昔の私はダメだめだったなー」なんて言われるのがとても嫌なんだ。繰り返すけどきっと"今"の自分を根こそぎ否定されることだから。

―――今を必死で生きているのに、どうして否定されなきゃいけないんだよ。

そんな気持ち。

だからシャールカは「未来のシャールカは、今のシャールカとは別人なんだから。他人の言うことなんか、知ったことじゃない」って言うんだ。

なんで別人に今の自分を否定されなくちゃいけないんだよ。今を生きているのは私だ。お前の戯言なんか聞きたくないよって。

つまりシャールカは「未来」と「過去」を否定する考え方っていうことになる。「今」だけを生きているってことになる。あるいは「今」だけを大切にしているってことなんじゃないかな。 

時間に意味をみいだすような価値観は、シャールカにとっては敵だ

「過去から、現在を経て、未来へと流れていく時間。そのなかで変わっていく自分」

「そんなの、シャールカたちの世界にないものだろ? 結局はそこなんだ」

――シャールカ

 この世界は線上世界じゃないんだ。ってことはキリスト教なんかも存在しない世界かもしれない。ここは点上世界なんだ。

 

 

先輩がイェドニアを逃げた出した理由

「世の中がよくなって、自分が変わってしまうのが嫌だった」

「いいことのはずなのに、なぜか無性に嫌だった」

「それがなぜなのか、しばらくして気づいた」

変わってしまった自分は、過去の自分を憐れむかもしれない。そのことが、嫌だったんだ

「自分は、今の自分だけで十分。未来の自分なんか必要ない―――そう思った」

 自分は今の自分だけで十分。未来の自分なんか必要ない……か。

……シャールカは変わりたくなかった

「べつに、過去のひどい経験を美化したいわけじゃない」

「ひどい経験に、過度に適応しちゃったわけでもないと思う」

「ただ、シャールカには今しかないだけなんだ。未来なんかない。過去もない」

「未来も過去も、シャールカは欲しくない」

「シャールカはずっと、今でありたい」

「世界はつねに現在じゃないといけない」

「だからシャールカは未来を捨てて、現在しかないこの国へと逃げてきたんだ」

――シャールカ

 変わりたくない。変化したくない。欲しいのは今だけで、過去も未来も必要なんかなかった。それでも、いやだからこそ今だけで十分だ。今さえあればいい、今さえあれば生きていける。未来を捨てて過去を薙ぎ払って、眼中に入れもせずに生きていきたい。成長?なんだよそれそんなもんいらないよ。言ってるだろ変わりたくなんかないって。

きっとシャールカは未来とかいう概念すらも、感じたくないような気がする。それが"あ"るってこと自体がもうたまらなく嫌な気がする。そんなの知りたくもなかったし聞きたくもなかったよって、言いそうな気がする。

「なのに、シャールカの前に天使が現れて、未来を作ろうとしてる」

「シャールカたちに、輝かしい未来をプレゼントしようとしてる」

「そんなの、それこそ世界の終わりだろ?人類の滅亡だろ?」

「すくなくとも、シャールカは確実に終わる」

――シャールカ

 確実に終わる、その言葉は何を指し示しているんだろうか。

簡単に考えると、シャールカのアイデンティティとか、最も大事にしているものが壊れたり失われたりするってこと。それで自分という存在が終わるっていうこと。

"未来を作ろう"としているっていう言い方気になる。やっぱり彼女は、「未来を作って」欲しくないのか。未来を存在させてほしくない。だから未来を作ろうとする、未来という概念を認識させようとする天使のことがいけ好かないのかもしれない。

「みなさんこのままじゃ人格が失ってしまいますよ!」

その言葉は、確実に先輩に未来というものを突きつける。

 

 

 みんな、ループのない世界に行きたいか?

 「だったら、選択とか人格とか、そんなものがなくなった方がましだ」

「……みんな、ループのない世界に行きたいか?重い過去と輝かしい未来の世界に」

「シャールカは、ぜったいに嫌だ。過去も未来もいらない」

「ループのない世界こそ、災厄そのものだ」

シャールカは、今のシャールカと今の世界を大事にしたい

シャールカにとっての唯一の世界を守りたい

「みんなもそうじゃないか?」

「シャールカはみんなといっしょに生きてきたから……だから、みんなもそうだと嬉しい」

「みんなといっしょに生きてるこの世界を大事にしたい」

「この世界がどんな世界なのか、思いだしてほしいんだ―――」

 

 

この世界がどんな世界なのか。

先輩の問いかけは、核心を突いている気がする。

俺たちはこの世界に生きている。

他のどの世界でもなく、この世界に生きている。

どれだけいびつで、どれだけ偏っていても、俺たちが生きている世界はここにしかない。

そのことを忘れてはいけないんじゃないか。

そのことをもう一度思い出すべきなんじゃないか。

一見正しいそうな言葉も、よく考えてみればこの世界のものじゃなくて、別の世界のものじゃないのか。

どれだけ間違ってるように聞こえる言葉でも、それはこの世界そのものを表す言葉じゃないのか。

そんな想いが、おそらくは俺たち全員のなかに去来した。

――叶、シャールカ

 全員が納得する言葉をシャールカは投げかけることができた。

みんなが納得するためのキーは「自分たちが生きてきた世界を守る」ということだったんじゃないか。叶が言うようにどれだけ間違っていると聞かされ、歪だと言われても、今まで自分たちはそういうふうに生きてきて、そんな世界について不平不満があるわけでも不足があるわけでもないんだ。

私はさ、これをどことなく、メキシコの漁師のコピペを思い出したよ。あれもまた「一見正しい」言葉の数々で、今の自分たちの生活より質がよくなるかもしれない。美味しい食べ物をもっとたくさん食べれるかもしれない、

でももっとも大事なのは「自分たちが生きてきた世界をどう思っているか」どうかなんじゃないかな。そこに憎しみや苦しみがないのならば、今まで生きてきた世界を優先するべきなのかもしれない。

「べき」というよりは、自分はほんとうのところ何を大事にしたいの?っていうことを見極めることが出来るっていうのがいいかもね、みたいなお話。

大事なのは、自分のルーツ……なのかも……なあ。っていうと過去じゃん?ってなるけどそういうことではなくて、自分を形作ったものっていえばいいのか。今の自分を形作るもの。

ちなみに漁師のコピペは以下のとおり

 

メキシコの田舎町。海岸に小さなボートが停泊していた。
メキシコ人の漁師が小さな網に魚をとってきた。
その魚はなんとも生きがいい。それを見たアメリカ人旅行者は、

「すばらしい魚だね。どれくらいの時間、漁をしていたの」 と尋ねた。

すると漁師は

「そんなに長い時間じゃないよ」
と答えた。旅行者が

「もっと漁をしていたら、もっと魚が獲れたんだろうね。おしいなあ」
と言うと、
漁師は、自分と自分の家族が食べるにはこれで十分だと言った。

「それじゃあ、あまった時間でいったい何をするの」
と旅行者が聞くと、漁師は、

「日が高くなるまでゆっくり寝て、それから漁に出る。戻ってきたら子どもと遊んで、女房とシエスタして。 夜になったら友達と一杯やって、ギターを弾いて、歌をうたって…ああ、これでもう一日終わりだね」


すると旅行者はまじめな顔で漁師に向かってこう言った。


「ハーバード・ビジネス・スクールでMBAを取得した人間として、
きみにアドバイスしよう。
いいかい、きみは毎日、もっと長い時間、漁をするべきだ。
それであまった魚は売る。
お金が貯まったら大きな漁船を買う。そうすると漁獲高は上がり、儲けも増える。
その儲けで漁船を2隻、3隻と増やしていくんだ。
やがて大漁船団ができるまでね。
そうしたら仲介人に魚を売るのはやめだ。
自前の水産品加工工場を建てて、そこに魚を入れる。
その頃にはきみはこのちっぽけな村を出てメキソコシティに引っ越し、
ロサンゼルス、ニューヨークへと進出していくだろう。
きみはマンハッタンのオフィスビルから企業の指揮をとるんだ」

漁師は尋ねた。

「そうなるまでにどれくらいかかるのかね」

「二〇年、いやおそらく二五年でそこまでいくね」

「それからどうなるの」

「それから? そのときは本当にすごいことになるよ」
と旅行者はにんまりと笑い、

「今度は株を売却して、きみは億万長者になるのさ」

「それで?」

「そうしたら引退して、海岸近くの小さな村に住んで、
日が高くなるまでゆっくり寝て、 日中は釣りをしたり、
子どもと遊んだり、奥さんとシエスタして過ごして、
夜になったら友達と一杯やって、ギターを弾いて、
歌をうたって過ごすんだ。 どうだい。すばらしいだろう」

 

 

 納得するってこと

 

ゆとり「考えてみたら、天使と敵対するっていうのもいいよね」

ゆとり「だって、時守くん助けに行ったとき、楽しかったもん」

ゆとり「アマネちゃんと敵対したら、またあんなふうにかっこよく登場できるかな」 

 

こおり「……やっぱりアマネに協力しちゃいけないと思う。ここは、あたしたちの世界だから」

こおり「どれだけあたしたちの力が小さくても、自分たちの世界は自分たちで護らないといけない」

  

春日「僕は……皆さんに従います」

春日「悪の理念がギャング部を支えています。皆さんの気持ちは、悪の理念そのものだから」

 

禊「……持論を撤回するわけではない」

禊「けれど、アマネと敵対するという部分では共通している」

禊「よって、現段階では共闘は可能」

 

「俺は―――」

俺の意志。

俺の意志なんて、みんなとともにあるに決まっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 白兵討論までのまとめると

 

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1)攻撃側の主張

『アマネが提示する「人類人格損失未来」は信じるに足る根拠がある。ならば犠牲を伴ってでもアマネの目的に協力すべき』

「そして彼女の行動は私たちの思想と同じ『悪』だから味方になってもいいと思う」

(この主張の前提として、人格損失が不幸、あるいはネガティブなものになっている)

 

 

2)防御側の反論

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まずオフェンス側の主張を分解して個別にする。

(1)、アマネが提示する「人類人格損失未来」は信じるに足る根拠がある
(2)。ならば犠牲を伴ってでも
(3)、アマネの目的に協力すべき
(4)、そして彼女の行動はギャング部の思想と同じものだから尚更味方になってもいいと思う

そして「天使と敵対すべき」側の反論は以下の通り。


(1)アマネが提示する「人類人格損失未来」は信じるに足る根拠があるに対して、

・「そもそも『人類人格損失』という未来の出来事を支える根拠となっているのは、アマネ自らが提示した『ループのない世界』という情報を推論した結果だ。それを信用していいのか?」

→相手の根拠である情報そのものを疑う。


・「(1)に隠されている前提として『アマネは良い奴だから嘘は吐かない』ってなってる。ゆとり達はアマネが持ってきた情報を無条件に信じるかもしれない。でも私はアマネを信用していない。なぜなら一度は私たちを騙したからだ。なら今後も騙される可能性がる。

それにあいつが良い奴だとしても天使だ。天使と人間、存在の在り方が違いすぎる奴は根本的なところでこっちを理解していない。当事者意識もない。当事者意識がない奴は使命感が空回りするから危ないんだ」

アマネだから信じる攻撃側に対し、「アマネ」だからこそ信用できないと反論。

 


(2)ならば犠牲を伴ってでもに対して、

・「人類救済の為に個人を犠牲にするのは間違っている。もしその例外的判断が上手くいってしまえば今後『最適解』だと社会に受け入れられてしまうから。大きな目的の為なら個人を蔑ろにしてもいいそういう価値観を作っていくことになるよね。

それに天使は人類から尊敬される立場にある。そんな天使が私たちを救ってしまったらより先述した問題が強固なものとなっていく。自分達を救ってくれた命の恩人が「間違いを犯す」なんてこと、人間は受け入れ難いから。これは人間の限界だよ」

人類が幸せになる為なら犠牲は仕方ないという攻撃側に対し、人類救済後に大きな目的のためなら個人は犠牲にしても仕方ないという風潮が出来上がってしまう。それは不幸なことなんじゃないかなという反論。

 


(3)アマネの目的に協力すべきに対して、

・「人間のことは人間たちでどうにかするし人間は人間が救済する。だってこれはこれは天使の問題じゃないから。人間の問題だ」

天使は「救済」という目的の為に個人の自由に介入してきている。でもこれは私たちの問題から手出しをするなという個人主義の表明?

・ 「アマネは当事者意識が欠けている。事情の知らない上から目線の行為は、いい結果にならないことが多い。なぜなら結局は他人事で自分のことじゃないからだ。自分のことじゃないから反省はできない。反省が出来ないなら間違いを見つけて修正することもできない。そんな奴についていこうと思うか?」

天使という立場(=当事者意識が欠けた上から目線)は、間違いを修正しただすことができない。それはいい結果を生まないと推測できる。つまり結果的によくならない方法を採用するわけにはいかないという反論


(4)そしてアマネの行動はギャング部の思想と同じもの。だから尚更味方になってもいいと思うに対して

・「私たちは悪だけれど、悪だから一緒にいるわけじゃない。みんながいるから私はここにいる。だからアマネを否定して悪を否定することになっても、私たちが今までしてきたことは否定されないんじゃないかな。いつだって人が先でしょ。人より思想を優先するのは不健全だよ」

→『悪』だからみんなと一緒にいるわけではない以上、"悪だからアマネの行動を是"とする理由にはならないという反論


●そしてオフェンス側の主張に対する反論とは別の、「天使と敵対すべき」主張

・「奥遷宮に来たってことはもう既に天使と敵対するって私たちは決めてしまったんだ。そういう直感的行動は経験・知識・価値観によって裏打ちされたものだから正しい事が多い」

→そもそも「天使と敵対すべき」かどうかなんて最初から決まってたんだというそもそも論

 

 

 

 3)攻撃側の反論

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◆(1)こおり「私たちは悪だけれど、悪だから一緒にいるわけじゃない。みんながいるから私はここにいる。思想を優先するのは不健全」

ゆとり反論「思想はその人の一部で完全に分けることが出来ない。なら思想を優先することだってあるんじゃないかな。それに『悪』は思想なんかじゃなくて、私たちの心のいちばん底にある想いで、運命の絆だよ」

こおりが人から→思想が生まれるとい意見に対し、いいえ分けることなんて出来ませんとするゆとり。さらに彼女は「悪」は思想ではなく、「運命の絆」という言葉に置き換えた。つまり「悪=自分、悪=私たち」という考え方を提示した。

この主張を受け入れるのなら、「アマネは悪で私たちも悪だから彼女を肯定すべき」という言葉をこおりは肯定しなくてはいけなくなる。



(2)こおり「人類救済の為に個人を蔑ろにするのは間違っている」

ゆとり反論「こおりちゃんはアマネのやり方が間違っているって言うけど、でもこおりちゃんだって他人の意向を無視して良かれと思ってしたことあるんじゃなぁい? 自分は『悪』なことしてるのにアマネちゃんはしちゃダメなの?」 

→あなたはアマネと同じことしているのに、どうしてアマネはしちゃダメなの?という素朴な疑問。ダブスタじゃないの?という指摘でもある。



(3)シャールカ「アマネは信用ならない。だって一度私たちを騙したからだ」

・ゆとり「アマネちゃんはわざと騙したわけでもないよね? 騙されたっていうのは私たちがそう解釈しているだけだよ。アマネちゃんは間違えただけ」

シャールカは客観的な事実でアマネを信用するかどうかを考えるべきと言い、ゆとりはあくまでもアマネの意見「騙そうとは思っていません」という主観的な言葉を信じたいと主張する。

ここまでいくと、あとは2人のスタンスの違いになるので意見は平行線になる。



(4)希 「これは天使の問題じゃない。人間の問題だ。人間のことは人間たちでどうにかする」

◆(4)シャールカ「アマネは当事者意識が欠けている。事情の知らない上から目線の行為は、いい結果にならないことが多い」

・春日「患者のことを患者が決めるのなら医者は必要ありません。勝手な思い込みや不十分な知識に従って行動しても患者は助からないです。同様に人間のことを人間が救おうとしても良い結果に結びつかないんじゃないでしょうか。 人間の為になるのならば当人に抵抗があっても天使の意向に従うべきです。 それに僕たちはギャング部なんですから」

→希ちゃんの主張は個人の自由に介入するな。春日の主張はでもそれだと不幸になってしまいますよね?素人が素人の考えで行動しても幸せになんてなりませんというカウンターである。

ただ春日の主張に隠されている前提は「天使の救済は人間の為になる」というもの。「人格損失を防ぐ」ことが幸福ではなく、不幸であると訴えることができれば春日の主張は退けられる。

・禊「自分のことは自分で決める、そんなの衆生には荷が重い。自分で決めることの責任・そして個人では背負いきれない責任に耐えられる者ばかりではない。そこで決定と責任を肩代わりする超越者の存在は必要になる。弱い個人を救うために」

→禊の意見はシャールカが否定する「当事者意識の欠けた上から目線」という立場を肯定するものだ。天使という立場こそ、衆生を救うのに相応しいそう言っている。禊の意見もまた「天使という立場が、人類を幸福にする」という前提がある。

・ゆとり「自分ことは自分で決めるのって無責任だったりしない? 私が死んだらリツコが悲しむように、私の命は私だけのものじゃない。自分のことでも自分だけで決めちゃいけないことってあるんじゃないかな」

ここは希とゆとりの互いの根底にある思想のぶつかり合いと言ってもいい。希は個人の自由を最大に肯定する人間であり、ゆとりは他者の繋がりを<仲間>を最大に肯定する人間だからここの意見は平行線へと突入する。

『リパブリカ』での希VSゆとりのときとすごい似ている。あのときは希ちゃんは『妹』として叶に求愛し、ゆとりは『仲間』としてそしてみんなでハーレムになることを望んでいた。その違い。その違いはきっとずっと平行線。



(5)シャールカ「アマネは人間じゃない、天使だ。存在の在り方が違い過ぎるやつを信じるのはリスクが大きい」

春日「たしかに天使と人間は違う存在です。しかし意思疎通は出来ます。考え方が違っても論理的な議論は可能なんです。なら同じ目的の為に進むことができるんじゃないでしょうか」

春日は一旦シャールカの主張「天使と人間は違う」ことを受けとめ、そこから「患者と医者」の関係を天使と人間で築けるのではないかという主張した。「患者と医者」の関係が築けるのならば、天使⇔人間ではなく、人間⇔人間の構図になるからだ。

ちなみに春日の主張には「天使は医者である」という前提が含まれている。


(6)希「奥遷宮に来たってことはもう既に天使と敵対するって私たちは決めてしまったんだ。それが例え直感であったとしても、直感はだいたいの場合正しいことが多い」

 ゆとり「直感は正しいと思うよ。でもあの時逃げたのは離れる必要があったからだよ。離れてみんなで相談して今後のこと考えるために。例え直感が正しいんだとしても、アマネちゃんとの関係は慎重に判断すべきだと思うな~。だってアマネちゃんは友達だもん」

ゆとりは希の根拠である「直感は正しい」ことを肯定した。そうなると主張である「アマネから逃げたことは正しい」つまり「アマネと敵対すべき」という結論を肯定するものとなる。

でもゆとりは「アマネは友達から敵対すべきかどうかは慎重に判断すべき」と回答した。ちなみにゆとりの主張にはそれを支える根拠がないので、どうしても「なぜ?」と思ってしまう。

 

(7)シャールカ「アマネの『人類人格損失未来』は果たして本当に起こるのか? だってそれを持ちだしてきたのはアマネだぞ? 推論する情報をくれたのもアマネだ」

ゆとり「仮にアマネちゃんは正しくないんだとしても、今の段階でははっきりとはわからないことでしょ? アマネちゃんが正しい保証はない。だけど、間違ってる保証もない。ならどっちかに賭けるしかない。賭けるなら私はアマネちゃんが正しいほうに賭けたい」

→最終的に「アマネへの正しさの保証はないし間違っている保証もない」という結論に至る。こうなったらもう論理の出番は終わりだ、次は「信じる」か否かの話になる!

 

 

攻撃側と防御側のぶつかり合い<アーギュメント>

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こおり 「私は悪だけど、悪じゃなくて善になりたい。現時点で悪だってことは、悪であるべきってことを肯定しているわけじゃない。だからあたしは悪だけど悪の側には立たない」

→つまりこおりは「天使の立場で人類救済」を否定した。

禊「天使による救済を否定するのならば、それは滅ぶことと同じ。こおりは滅びの肯定ではないというけれど、本人の意向を無視して幸福を取るか、意向に沿い不幸になるか現実的に判断するときが必ずやってくる」

→禊は天使の救済が=人類の幸福だという前提を持っている


シャールカ「天使の介入はいい結果に繋がらない。現実的にいい結果にならないから勘弁してほしいんだよ」

→彼女は人類救済=幸福ではないと主張し、根拠を提示した。以下4つ

1、アマネは「行為の有効性と非情かどうかを取り違え」やすい立場にいる
2、アマネは「世の中をよくしよう」としているけど、そんな考えは可能性を刈りこみ悲劇を生む
3、天使と人間は文化、価値観、といった本当に根本的なところを共有できないある以上、それを元にした行為は偏見を根拠にした差別主義にしかならない。
4、天使がすることは人類救済ではなくて、人間の書き換えだ。そんなの天使が世界を奪っただけだし、未来を作っただけのこと。そんなの誰も救われていない。

→シャールカは天使の目的と立場を否定した


禊「衆生にとってそれでいいのかもしれない。決定と責任を背負わないことは幸福だから」

→禊はそれを肯定する。


シャールカ「みそぎんはそれでいいの? 自分が人間じゃない何かになってもいいの」

→シャールカは問う。おそらく禊の真意が掴めなかったらから

禊「私は一般人じゃない統治者。統治者だから衆生じゃない。私は書き換えられないし私のままで人でありつづける」

→なんだこれ?禊の意見はダブルスタンダードじゃないか? 


シャールカ「そんなのっておかしいだろ。自分は例外だなんてそんなのなしだ肯定するのか否定するのかどっちかだ」

→やはりシャールカもそこを突く。禊の意見は「天使の救済はされるべき」「でもその救済は自分自身は適用されない」というものだ。


禊「おかしくない。誰が行おうと関係ない。救済はされるべき。それを行うのは天使でも人間でもいい。誰が行うかという議論は不要」

→結局禊はダブスタで貫き通すっていうことなんだと思うんだけど……うーん私の認識が違うのかな。禊のこの主張は論理的に通る? 

これって違う見方で見ると禊の意見を理解できそうに見えるんだよなあ……例えば「10日後に隕石が地球に衝突します。結果全人類死にます。あなたはそれでいいですか?」「いいよ。わたしはシェルター持ってるから(=私だけ隕石の被害に逢いません)」
みたいな発言に聞こえるんだよな。つまり自分だけは適用外になる自信があるかないかって話だと思うんだけど、どう?この例え。

シャールカ「それって結局自分は天使になるってことだろ? シャールカはそもそもそれを否定してきたんだ。天使になるっていう行為を否定してるから、天使と敵対すべきっていう立場にいるんだ」

→つまりシャールカは「天使の目的である人類人感損失の阻止」と「天使という立場」その2つを否定しているってこと。

 

◆ここでシャールカは自分の過去を語る。

 

「失敗したら次は改善するという、世界の在り方に耐えられない」

過去と未来があるということ、そして時間の流れに価値を見出すこと、未来の自分が今の自分を反省することにシャールカは耐えられない。

ループのない世界こそ間違いで災厄だという彼女。

シャールカが最後に語ったのは「自分たちの生きている世界を守りたい」「自分たちが生きてきたのはこの世界だ」ということ。

自分たちの世界を【自分たちの世界】と認識できることに、この論戦には意味があった。いいや……シャールカがそれをみんなに認識させたからこそ、「天使の味方をしてはいけない」という納得が生まれたんだ。

ループ世界がいくら歪で間違いでこのままだとみんなおかしくなると言われても【自分たちの世界】を【自分達の世界】ままにしたい、生きたいと。

 

終