猫箱ただひとつ

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『3月のライオン』人の想いは思わぬ方向からキミを救ってくれることがある(2628文字)

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3月のライオン』5巻ラストで起きたひなと零のやり取りについて考えていきます。ちなみにまだ5巻までしか読んでいません。

ここからはもちろんネタバレなので未読の人は注意。

 

 

 

 

3月のライオン・5巻

 

5巻の終盤、ひなちゃんは学校でいじめられていることが発覚した。靴を隠され、片方が上履きかなにかの状態でお家に帰ってきて、お姉さんとももちゃんに学校の状況をわんわんと泣いて話した。

学校でクラスメイトがいじめられていたこと、その子のことを親身になって接していたこと、でもいじめはエスカレートしていって結局その子は不登校になって学校を転校していちゃったこと。その事が悔しくていじめていた連中にひなちゃんが掴みかかって、今度は自分がいじめの標的になってしまったこと。

―――明日から学校に行くのが辛い。

そんなことを言いながらも、でも、だけど、決して「私がやったことは間違いなんかじゃない」って目に涙を浮かべて、鼻水垂らして、顔を赤くしてひなちゃんは言った。

虐められていたクラスメイトの子をかばったこと、そしてその子のことを馬鹿にした虐めたことを悪びれしなかった加害者に啖呵を切ったこと。それはすべて間違いなんかじゃないって。

そして零くんは言う。

―――ありがとう 君は ぼくの恩人だ

―――約束する 僕がついてる

―――一生かかってでも 僕は 君に 恩を返すよ

と。

3月のライオン 5 (ジェッツコミックス)
 

零くんもまた小学生の頃、いじめられていた。ロボットだメガネだのなんだと言われ囃し立てられ、空き缶の中に石を詰めたものを投げつけられたり、黒板に悪意のない悪意を書きつけられたりもした。

でも、それは過去のことだ。現在の零くんは虐められているわけじゃない。誰かに虐められているわけじゃない。

でも彼は言うのだ。

ひなちゃん、ありがとうと。君は僕の恩人だと。


これはきっと、ひなちゃんの「私がしたことは間違いなんかじゃない」という言葉が、"幼い日の零くん"を救ったってことなんだと思う。

このことを、こういう言葉で語られていたと思う。人とは不思議なものだ。思わぬ方向から救われることがある、と。そんな趣旨のことを。

 

 

間接的に、思わぬ方向から、迂遠に救われることがあるってこと

 

このひなちゃんと零くんに起きた出来事は、どういうことなんだろう?

客観的な事実からみれば、ひなちゃんの強い感情が込められた言葉が、過去の零くんの救われぬ想いを救ったと見ていいと思う。

でもそれってなんだかとても不思議なことじゃないかな。現在のひなちゃん、そしてひなちゃんが起きたことは直接的に零くんに関わりがない。なのに現在のひなちゃんの言動は、過去の零くんを救った。

それも零くん自身が「恩人」とでも呼ぶほどに、一生かけてでもこの恩を返すと言ってしまうほどに、深く、強く、救われている。

そしてこのことはこう言えると思う。

自分になんの関わりのないことでも、その人の一挙手一投足は誰かを救うことがあると。

想像してもいない予想外の方向から、救われることがある。


私がこれを面白いと思うのは以下の2つから。

1、当事者同士何らかのやり取りはされていないのに、2人は全くもって無関係なのに、片方を強く深く救ってしまう事象が起こり得た。

2、現在の行動が→変えられない過去を"書き換え"てしまうことがある。


これ何かに似てるなって思ったらもうまんま「物語」そのものじゃん!

自分の現実となんら関わりのないある物語が、現実の自分を深く強く救ってしまうことがある。涙を流して、「恩」を感じて、感謝して、ひれ伏してしまうことがある。

そして自分の救われない過去を、時に、"書き換えて"別の過去にしてしまうことがある。物語にはそんな力があることをこないだ無茶苦茶に語った。
↓ 

物語は人生をぶっ壊し、修復し、オーバーライドする力がある

 

確かに「物語」に似ている。でもひなと零くんの間に起きたこれは別物だと思ったほうがいいと思う。そんな直感がある。これは違うんだと。

そもそもひなちゃんは「物語」を提示していないんだよね。ひなちゃんのいじめを許さないとした一連の行動も自己物語といわれれば確かにそうなんだけれど、正直、でもあれは零くんを救ってしまう"そこまで"の強度があるわけじゃないと思う。

これは私の印象ね。

でも零くんも、ひなちゃんのいじめでの出来事を聞いて、雷が落ちたような衝撃を受けたわけじゃない。そこで彼は救われたわけじゃない。彼が救われたのは、ひなちゃんの「私がしてきたことは間違ってなんかない」っていう言葉を聞いた後なんだから。

だから、ここで考えられることは「ひなちゃんの強い意志」こそが、零くんの過去を救ったんじゃないのかな。彼女の純粋で真っ直ぐな想いが。

 ◇

ちょっと話ずれるけど、零くんはあかりさん達にいろいろ良くしてもらっている。ご飯を食べさせてもらったり、心配してくれたり、一緒にお話をしたり、それは彼にとってとても大切でもう失いたくないと思わせるほどの価値あるものになっていると思う。あたたかい空間、やさしい人たち。

このことに零くんは「恩を返す」と思えるほどに恩を感じているわけじゃないとは思う。いろいろ良くしてもらっているのは確かだけれど、あかりさんの家族に癒やされているけれど、精神的にも身体的にもお世話になっているけれど、でもそこまでじゃない。

でもでも、今回のひなちゃんの「言葉」は、零くんに「一生の恩」を感じさせてしまうほどの強い感謝を覚えさせてしまっている。

これって実はすごいことなんじゃないのかなーと思うわけですよ。

んとね、つまり

人は自分の"奥深く"にある心象風景を救ってくれる人には、めちゃくちゃ感謝するわけだけれど、日常的なレベルで助けてくれる範囲ではそこまでの感謝の気持ちにしかならないんだなーと。

 

てこととで、今日はここまで。またね。

ちなみに『3月のライオン』は将棋のマンガです。ひなちゃんとももちゃん、あかりさんの家族がもうほんっとーーーに優しくて癒やされて、ちょいちょい泣けてきちゃって心が充実するの!