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猫箱ただひとつ

物語追求blog。アニメ、マンガ、ギャルゲーを取り扱ってるよ

『君の名残は静かに揺れて』の感想をさくさくっと書いた(5906文字)

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 君の名残は静かに揺れて 限定のいコレパック版[アダルト]

 満足度:★★★(3.5) 


――あの時の傷は、私は一生忘れない。

けれど、それを恨む事も憎む事ももうないわ。

私の中の階段の一つにしたから


  プレイ時間   14時間ほど
  面白くなってくる時間  ど、どうだろ
  退屈しましたか?   していない
  おかずにどうか?   使えないんじゃないかな…
  お気に入りキャラ   茉百合

公式HP│君の名残は静かに揺れて

 

 

「君の名残は静かに揺れて」のポイント

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・『Flyable Heart』に登場する白鷺茉百合のifストーリー。

(プレイする順番としてはFlyable Heart」→「君の名残」が自然です。ただ最初に「君の名残は静かに揺れて」をプレイしても楽しめるものとなっています。あーでも……「君の名残」の後に『Flyable Heart』をやったら『Flyable Heart』の驚きが薄れてしまうのでやっぱりFlyable Heartからやったほうが良さ気?……) 

・茉百合さんがスキーなら買いですが、『Flyable Heart』の終わりで十分いいよ!って思っている私がいます。『君の名残』は悪くないんですが、そこまでして観る必要性も?…と。

<!>ここから本編に触れていきます。

圧縮行程は今回はちょいと無しで。

では雑感感想どうぞ。

 

 

 

 

茉百合さんの動作


茉百合さんの一動作一動作には華がある。手が動く度に、髪が風でゆらめく毎に、どことなく薔薇エフェクトならぬ華エフェクトが展開されるかのように。

足を踏み出せばしゃららんと、にっこり微笑めばぽわんぽわんと"華"が背景として浮かび上がるようなそんな感じ。

そんな感じがどうしようもなく「女子力高っ!」と思わずにはいられなかった。身のこなしや声の調子、そこらへんが行き届いている感じがとてもする。

 

 

ご飯を食べると幸せ

茉百合「ふふ、晶くんは幸せそうにものを食べるのね」

晶「は、はい……よく、言われてる…かもしれません」

茉百合さんは俺が食事している間、なんだかおかしそうに笑ってた。俺ってご飯食べてると、幸せそうなんだ。

ご飯を食べるときって、ただひたすら無表情の場合が多い。ような気がする。というのもご飯を食べるっていうのは本能的な行動だからだ。お腹が空いたという欲求の為に、その欲望の為に「食べる」という行為をしているだけだから、「幸せそう」に見えるのってあまり無い気がする。

お腹いっぱいになったら多幸感に包まれて、幸せな雰囲気が出る気がするので、「お腹いっぱい食べて幸せそう」と感じるときはある。

けれども「食べてる時に」、幸せそうに見えるのめちゃきちゃ稀有だ。

どうなっている? 晶の食べ方が彼自身のアピールじゃないんだとすれば、……感情表現に優れているってことなのかな。食べているときの舌の乗った味が、そのまま感情に直接繋がれているみたいな。


 

血族という価値

巴「茉百合。お前には半分は白鷺家の血が入っていますが、半分は使用人の娘という事を自覚しなさい」


巴さんは白鷺家の「血」についてやたらこだわる。そこに価値を見出して、大事にしている様子がありありとしている。私にとってはくだらない価値観でも、彼女にとってはそれは尊むべきものであり、極大の価値があるものなんだろう。

そこを起点にして思考をスタートしないと、この人の気持ちには絶対に辿りつけない。突破口を見いだせない。

いくら「血で人を区別するのはおかしい」「白鷺家の娘だからってなんだ」と言っても、断絶しかうまない。しかしそれも一つの手ではあるが……あまり有効ではないよね。

それと「伝統」というものに、最近害悪だと思えてきてならないのだけれど、なんなのだろう。たしかに過去成功したものは、その事実ゆえに一定の保証がなされる。

しかし刻々と移り変わるこの世の中じゃ、伝統、などというものは殆どは形骸化し無価値になっているものが多い。大事なのは昔あったものを守ることではなく、昔あったものをどうすれば今に適合できるかを考えることなのではないか?




茉百合と笑顔

「笑顔を、作るの。あの日お祖さまに教えてもらったでしょう?」

鏡の中で微笑んでいるのは、茉百合だ。
優雅で、おしとやかで、誰にでも優しく微笑んでいる茉百合の笑顔がそこにある。

「大丈夫よ、ほら、うまくいったわ」

――茉百合


あの完璧の笑顔を作れるかどうかって、茉百合さんの精神状態の安定を推し量るのに有効になっているのかもしれない。つまり笑顔を作れるかどうかが、彼女が自分自身をチェックできる要素になっているということ。

針の穴に糸を通すのがいつもより遅かったり、失敗するんだとしたら、今の自分はちょっと疲れているんだなと分かる感じでさ。

 

 

今の自分と違ったら? そんなルート分岐

 

(例えば、私が――)
(もしも私が、普通の、あたりまえのものに包まれて育ってきたなら、何かが変わった……?)

あの時、もっと違うことを言えた?
もっと手を伸ばすことができた?
――いいえ。
{いいえ、それは違う)


――茉百合

 
もしもあの時、もしかしたら私が、という「別世界の可能性」に思いを馳せてしまったら何が怖いのかというと「今ここにいる自分を否定してしまう」ってことが何よりも恐怖でしかない。

自分の選択分岐やある特別なルートを考えるってことは、そしてそれが最善手だったと思ってしまうのなら、今の自分自身はどうなる?  今のここにいる自分は失敗したルートだと思えてしまうんじゃないか?

失敗した人生を歩んでいると思えてしまったなら、それは悲劇の始まりにすぎない。だんだんと無気力で停滞感でいっぱいになってくるはずだから。

だから「たられば」というものは、出来るなら、出来るだけしないほうがいいんだとは思う。意味がない、ということではなく、害になる可能性が高いという意味でさ。


 

仲良くする意志

茉百合「そういう呼び方、やめてほしいんです。困りますから」

茂樹「あ、そっか……そうだよね。来たばかりなのにそういうのはダメだな。うん。じゃあこれからもっと仲良くなろう

茉百合「えっ……?」

茂樹「そうしたら、僕がまゆちゃんって呼んでも困らない?」

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茂樹さんはおそらく「誰かと仲良くなる」ということがとても当たり前になっているんだ。誰かと仲良くなることに抵抗なんてないし、躊躇なんてない。だからここまで自然に「仲良くなろっか」なんて言えてしまう。

人間みんななかよく……か。

「仲良く」という概念って、今思えば難しいというか、いろいろ複雑な要因が絡んでいるような気がしてならない。私と隣の人。攻撃せず嘲弄せずただ仲良くする。

仲良くする?……。仲良くってなんだ? 相手を尊重するってことか? そういう面もあるだろう。でもそれは仲良くの1部分にすぎない。相手を好きになること? いやどうもそれも違う。

辞書を引いてみても「いがみあったりせず協力する」という言葉しか載ってなくて、違うんだよそれじゃない。

友好的な関係になりたいって言葉がしっくりくるような気がする。相手と友好的な関係になりたい。ふむふむ。

これは線の内側と外側の概念からすると、真っ向から対立する概念だと思う>「仲良く」。線の内側とか外側をまず設定するんじゃなくて、まず相手と仲良くなろうとする。そしてダメだったらダメのままでいいし、仲良くなったら仲良くなったままだと。


ここにいてもいいって想えること

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「たとえ何の役にもたたなくたって、君はここにいていいんだよ」

「……?」

「役に立つとか、そういうんじゃないんだよ……家族ってのは」

――茂樹、茉百合

 なんの役に立たなくてもいい、って言ってくれる人がいることが大事なんだよね。そういう接し方の人って中々いない。それはつまるところ人間というものに「益」で理解しようとするんじゃなく、「人格」といったその人の精神性を愛することに近い。

なにかが出来るから、その人をよしとするんではなく、その人の内面性が好きだからよしとするみたいな。

 

 

運命っていう感覚

「もし運命なんてものがあるのなら、感謝している」

――茉百合


「運命」にひたる感覚は、大きな流れや大きな物語感覚と同種のものだと思う。ようは「なにか大きな流れに自分が乗っている」という状態、そしてそれに浸っていると「壮大で意義あるもの」として感じられるような認識になってくる。

運命と流れ。

「わたしたちはただ一人の女ではありません。白鷺の家の人間なのです」

――小百合

それはきっと自分と「個」を失わせる要因にもなりえるんだろう。行き過ぎれば、だけれども。行き過ぎれば大きな流れとでもいうべきものに飲み込まれていく。

「個」を重視した現在の価値観だと、そんな「群」とでも呼ぶべきものに今さら戻ろうっていうのはちょっと精神的にき ついよね。という戻れないと思うんだよなあ……。

 

 

 ひとの器と愛情

「人の中には器があってね……そこに水のように愛情が注がれてゆく話だったわ」

「俺、初めて聞くかも。どんな話なんですか?」

「とても簡単よ。生まれてから出会った人たち……両親や友人や、いろんな人たちから愛情を注がれていって――」

茉百合さんの話を、俺は頷きながら聞き続けた。

「器がいっぱいになったら、水が溢れるでしょう? そうしたら、今度は自分が他の人の器にそれを注いであげられるようになるっていうお話」

――茉百合、晶

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愛されたことがないものは誰かを愛することが出来ない、そういうお話だと思う。
愛されたことがないものは「愛」という感情がどんなものか分からない。そして愛を受け取った絶対量が少ないと、自分の愛をまた相手にあげることができない。おそらく自分を愛することだけの量しか残っていないのだから。

自分を肯定できる量、自分が誰かに愛されているんだなって分かる多幸感。そういう経緯を経て相手もまた愛することが出来る。器……器ね。

 

 

真っ暗な世界と鏡面世界

 

「晶くん、真っ暗闇の中にいたら……自分が人なのか、もっと別の恐ろしいものなのか、わからなくなるの……」

――茉百合

真っ暗闇な世界は、自分の手足さえ判別できない。そこに生まれるのは「自分は何者なのか?」という問いに繋がり、恐怖という感情に変わっていく。

本当に本当に真っ暗な世界は、おそらく精神が狂う。

そしてこれの対をなすのがもしかしたら「鏡面世界」なのかな?と思った。鏡面世界とは地面が鏡になっている世界のこと。あそこでは自分の隅々まで映るし見える。

自分が「自分」であることが明確に分かってしまう。わかりすぎてしまう世界なのかもしれない。いつも自分の姿が必ず見える。それもそれできっついことだとは思うけれどね。


 

大事なことも大切だったことも移り変わってゆく

――あの時の傷は、私は一生忘れない。けれど、それを恨む事も憎む事ももうないわ。私の中の階段の一つにしたから

――霞織

あんなにも大切だったものを、階段の一つにしたという霞織さん。それはきっと苦渋の末に導いた結果だったのかもしれない。けれども例えそうだとしても「所詮人の想いなんてこうも移ろってゆくものか」という気がしてならない。

それは誰かが悪い、貫き通しきれない霞織さんが悪いという話じゃない。だってそれやってみると実際とんでもなく痛いことだもの。じゃなくてそうじゃなくて、「過去を階段の1つにでもしなければ」いけない"ここが"どうしようもなくどうしようもないところだったんだねと言いたい。


三次元の物語化

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これなんて云うんだっけ?スノー……スノー……まあいい。

とにかくこの球体にお城があり、その中で雪が降っているという状況が「物語化」そのものだと思った。観念上にあるものではなく、実体をともなった、それも触れることの出来る三次元の観念の昇華そのもの。

凄いと思わずにはいられなかった。そうかあっちの世界は、こっちの世界で復元できるものもあるのかと。それに気づけたことがとても嬉しい。

 

 

家と

 

「運命の波に翻弄されていても、時に特別な出会いが……」

「どんなに頼りない小舟に見えても、そこあkら救いだしてくれる時があるのですね」

――巴

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なんだろ……よく分かんないけど、ここのイメージがとても焼きついた。それも縁側で茉百合さんを見送る巴さんの"後ろ姿"が。そしてその光景から光が滲み出しオーバーレイしていくふわふわしていく感じが。

そしてそんな様が涙腺にくる。理由もなくぽろぽろ泣いてしまってすこしだけ困惑した。なんで私は泣いているのかなって。問うても答えなんか出ないのだけれど……それでも問わずにはいられない。

こんなとき、自分の内面にあるイメージを描き出す為に、人は筆をとるのかなって思った。あっちではなく"こっち"の世界に、その映像を持ってくるために。じゃないとそのヴィジュアルは誰とも共有できないものね。

 

でも、本当は素敵な言葉なのね……ただいま

――茉百合 

 
帰れる家があるのってそれだけでとても恵まれている。
自分がここにいてもいいんだ、と思える家があるってことは気づいてないだけでとても幸いなこと。

 

だたいま。
その言葉を好きになってくれたら、嬉しい。

どこへ行っても、どこまで行っても、その言葉はきっと必要なんだ。

ここにいてもいいよと、誰かに思われるために。
ここにいてもいいんだと、自分で思えるために。

――晶


ね、ほんとうにそう。

ただいまが言える家は、幸せの前提なんだと思うよ。

 

 

 

心に残った言葉

 

「ふふふ、嘘ね。だってこんなに顔が楽しそうな色してる」

――茉百合 

 

好きだ好きだと―――どうしてそればかりなのだろう。
そんな理由ばかりで、人は動くわけではないのに。

――奏龍

 

――あの時の傷は、私は一生忘れない。けれど、それを恨む事も憎む事ももうないわ。私の中の階段の一つにしたから

――霞織

 

 

終わり。

 


<参考>