猫箱ただひとつ

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アリス・マリア_感想(11843文字)

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 アリスはめっちゃ可愛いと思うんですよ。

 

 

 

 

 

アリスとマリアは雪さんと同じく

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僕の過去と接点を持たない双子の姉妹とのやりとりは、僕が、確実に僕でいられる事でもあり居心地がいい。

――透矢

"過去の"透矢を観ている人間より、今の透矢を観ている人のほうがやっぱり居心地がいいよね。

今の、透矢にとって最初の友達が、アリスとマリア。やっぱり「今の自分」を見てくれる人はいいなって思う。

このふたりは、過去にとらわれず、記憶を無くした今の僕と対等につき合ってくれる。そういう意味では、この双子の姉妹だけが、僕の友達なのかもしれない
――透矢

 

 

過去に規定されてしまうってこと

もう少しの間だけ、僕が僕のままでいても、いいよな―――?
(透矢)

周囲の人間から「昔はキミとこういうことがあったんだよ」「透矢はそんな人間じゃない」と言われ続けると、『今の透矢』が過去によって改ざんされてしまうことに繋がるのではないか?

過去の事実によって、今の自分が書き換えられるというか、規定されてしまうというかそんな感じ。

過去遡及という言葉があるが(これは今の状態から過去が生み出されるという意味)、この場合は将来効みたいな。過去が未来にむかって影響を与えすぎると。

ふむふむ。

 

 

妖怪とあやかしについて

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「妖怪は、怪に妖しい『姿』を与えたものなの」
何が違うのか、よくわからない。

「あなた、妖怪って言われて何か思い浮かぶ?」
「んー、天狗とかかっぱが妖怪ならね」
~~
「ほら、あなたもマリアも『知っている』じゃない。妖怪っていう種族に属する天狗っていう生き物を、姿形まで」
「ああ……」
「妖怪は人から生まれたモノ。怪は、人の力の及ばない所に存在する『はず』の何か。それを垣間見てしまう人間が時々いて……そういう人たちが、妖怪を生んだ」

――アリス、透矢

 

アリス頭いいなあ……。というかなるほどねーと。

つまり怪っていうのは、認識できない「なにか」ということなんだろう。存在しているけどそれが何なのかは知覚できないし分からない。ただそういうものがある。
そしてその<核>とでも呼べる存在に、人が意味を肉付けした結果「妖怪」という存在になってしまう。ふむ。

「存在を定義できないもの―――アリスの言う怪って、そういうものだよね?」

――透矢

うんやっぱりそうか。なんというか、言葉にできない存在ってやつだよね。概念の概念みたいな。原子核みたいな。言葉にできないからこそ、それを理解するのはとてもむずかしい。

透矢はこの「怪」の存在を、今の自分の記憶喪失の状態と関連付けようとしているが……確かに似ているのかもしれない。

確かに、このまま記憶が戻らなければ、瀬能透矢は消えてしまう。代わりに、今の僕が残る。だけど、僕は違う、別の人間だ。この世界に、本来は存在しないはずの、別の何か―――。
(透矢)

『瀬能透矢という肉体』に『今の僕』が入ることで→記憶喪失の瀬能透矢が生まれる。

けれどもその『今の僕』は決して、皆が知っている『瀬能透矢』ではない。ただの『今の僕』であり、それはアリスがいうように「怪」という定義できない存在そのものに近い。

……だから七夕のとき、アリスは透矢を怪(あやかし)と呼び捨てたのか。


 

 

マヨイガにある大木って?

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アリスとマリアと鈴蘭ちゃんが木下でお昼寝しているときの様子。

そういえば、あの写真にも、僕の夢にもこんな大木が出てきていたっけ。開けた場所にある大木、そういえば、夢には洞窟も出てきたな。
――透矢

そういえばマヨイガにある「大木」ってなんなんだろう?

みたところあの場所には、木といえばあの大きなもの1つしかない。何か重要な役割や意味がある大木の可能性が高いが……果たして?


 

マリアは、アリスにとってもう1つの可能性

「アリスは、本当にマリアちゃんが好きなんだね」
「うん。マリアは私の半分。もうひとつの可能性だもん。この子が幸せなら……私はそれでいいよ」

僕には決して真似できないだろう、妹を想う優しさ。それは、キラキラ、まぶしいほど輝いているのに―――なのに、どうして彼女は、悲しそうな顔をするんだろう。
――透矢、アリス


アリスにとって、マリアは自分のもう1つの可能性だという。もう1つの可能性?

どうもアリスが言っているのは、マリアが幸せなら自分はどうなってもいいみたいな言葉のようにも聞こえる。自分を犠牲にしてマリアを幸せにしてもいい、マリアが幸せなら、それはマリアという「自分」もまた幸せだということなのだから―――そんなふうに聞こえる。

相手がもう丸々完全に自分なのか……。すごい……。

……そういえば現代の人間は自我が発達して、「個人」という考えが生まれたと聞く。そしてそれより昔は自我が薄く、個体・個人という考えがなく「みんな/共同体」みたいな体感覚にいたみたいな話を聞いたことがある。それの真偽がどうであれ、アリス=マリアという図式はそういうの近いのかもしれない。

つまり、お互いに自我を薄くして薄くしてい共同体の感覚を上げていけば、「相手が自分で、私があなた」という実感を本気で持てる可能性が出てくるんじゃないの?っていうこと。

アリスは別に自我が薄いわけじゃないけどね。ただそういう方法論があるのかもしれない。

 

 

トランス状態と夢の関係性

アリス「……あなたも、私たちと同類みたいだから見に覚えあるんじゃない? 誰かに肩を叩かれた、誰かが物音を立てた―――そのショックで我に返る。わかりづらければ、夢から覚めるところを想像して

確かに、きのう宮代神社で見た幻が、そんな感じだった。あの時は、砂利を踏む音で我に返ったんだよな……。

確かに、ああいう状態から戻る時には、何か、自分以外の人間の力が関与している場合が多い。あのとき、砂利を踏む音がしなかったらどうなっていたんだろう。

彼女は、僕以外の誰かが来ると消えてしまう。逆を言えば、彼女といる間は誰もいなくなる。戻るきっかけをつかめなければ、一生、彼女とふたりきりってことか?

透矢が神社でナナミ様を観ているときって、一種の「夢」の世界に入っているってことなのかな?

マリアの状態と透矢の状態は似ているらしい。マリアちゃんの状態というのは、感情移入を突き詰めたトレースによる、トランス状態【憑依】。

でも透矢のは?……。


 

 

 

 

 

 

 

廃校舎の裏にある防空壕?とはなにか

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とりあえず事実を蒐集するのよさ。

「これ、たぶん防空壕の跡よ。授業の時とかに空襲されてもいいように、っていうところでしょう。こういう場所は、緊急の時の避難所になっていたりもするし」
――アリス

 

それにしても、こっちはやたらと厳重に封鎖されてるね。校舎のほうは放置されてる感じなのに
――透矢

 

「そうだね。どうして壊さないのか不思議なんだけど。まあ、ただでさえむやみに土地が余ってる場b書だから、壊すのにお金をかけたくないのかな……」

「かもね。でも、防空壕の入り口の鍵とか割と新しいんだよね。校舎の中も、そんなに経っていると思えないくらい綺麗だし」

「昔からそうあんだよ。どう考えても誰かの手が入ってる。町で意地してるってことかなぁ……」

―――花梨、透矢

 

「あの奥で、誰かが死んだわ……複数ね。戦争のせいかもしれない。それで、たぶんあの男はそれを掘り返そうとしてる。また新しいシャベルが置いてあったわ」 
――アリス

 

「……そして、これはごく一部で聞いた噂に過ぎないが、あの防空壕で犠牲者が出たという話も聞く。だが、戦争中、この町に被害が出たという話は聞かないし、デタラメなのかもしれない。

しかしながら筆者が子どもの頃には、確かに、あの防空壕の前に花が供えられている事があったことを、ここに書き加えておきたい―――これでおしまいね」

――アリス(音読) 

 

加えて、話を聞くに、彼女が観たのは複数名の人物が、あの奥に連れ込まれ、窒息死させられたというものだ。

実際にあった出来事なのか?
――透矢


 この事実を要点だけまとめて、個別に考えてみよう。


+++
・廃校舎の裏には防空壕がある(鍵は新しい)。そして昔そこで複数の人間が死んだとアリスは語る。 

・廃校舎は放置されている様子。しかし中は割と綺麗

・牧野の父は防空壕に入り浸っている。シャベルを使用していることから何かを掘り返そうとしているらしい。アリスが言うには死体。

・廃校舎・防空壕は町で維持されている可能性。どうも戦時中に小学校として使用されていたらしい。しかし戦争終了の直後に突然閉鎖。現在は有事の際の避難場所として役割を与えられているらしい。

 ・廃校舎は戦争の直前に建造されたものの、戦後廃校になることは奇妙だとアリスは指摘する。

 
・戦時中この町で犠牲者が出ていないにも関わらず、防空壕で死体がある可能性大。なぜに?

 +++

 

 廃校舎は町で維持されているとするのなら、教室などが綺麗だったのも頷ける。しかしなぜ維持する必要があるのだろう? 維持するということはその廃校舎に価値があると見ていい。

建造物に価値があるのか、それとも建造物の中に価値あるものがあるのか、あるいは土地自体に価値があるのか。

そして気になるのは、戦争前に校舎を建造するも、戦後廃校になったということ。戦争前に小学校を立てたことは……特におかしくはないと思うが……問題は戦争直後に「なぜ」廃校にしたのか?だと思う。

なぜ廃校にしたんだろう? 事実上として経営が立ちゆかなかったからとかじゃなくて、おそらく「廃校にする理由があった」と見ていいと思う。

「その校舎を小学校として機能させるわけにはいかなかった」
「その校舎/あるいは土地に人を近づけたくなかった」

今考えられるのはこの2つだろうか。

可能性が高いのは2つめだと思う。つまり校舎か、あるいは校舎裏にある防空壕に人を近づけさせたくなかったと見たい。

そして防空壕がとても怪しい。戦争中町に被害がなかったにも関わらず、防空壕の中で「何故人が死ぬ」のか?それも複数人もだ。

どう考えればいいんだろうか。

防空壕で人が死ぬ……。いや違うな、殺されたのか。防空壕複数人が殺さなければいけない事情……山ノ民?。

山ノ民か? 山ノ民が平地の民に差別されていて、(あるいは2者同士の抗争があった)防空壕でのリンチがあったということなのかもしれない。穿ち過ぎかもしれないがそういう推測も留意しておこう。

山ノ民・防空壕での複数の死体―――ここから見えてくるのは、雪さんの両親という可能性?(いやまてよ雪さんは透矢が書き換えた存在だから両親は実際はいないよね?どうなのここ)

うーん、雪さんの両親っていう可能性は省こう。ただの山ノ民が殺されたという目線を持つことにする。

次に、その死体を(おそらく)掘り返そうとしている那波父について。彼はなんでそんな死体なんてものをシャベルで掘っているんだ?死体に何がある?遺骨? それとも遺品の類か?

遺品か遺体か。しかし……那波父の至上目的って、「那波」を復活させることだよね確か。マヨイガにいくことも、その過程だったはず。

それがなぜ、防空壕の中を掘り返すことに繋がるんだ? もしかしためちゃくちゃ純度の高い涙石がそこに眠ってるのか? 

わからない!

 


狐憑きと可能性

 「この子がキツネ憑きっていう言葉を知らなければ、こんなふうにはならなかったかも」

「?」

知っているっていうことはね、もう、それを可能性として認めているって事

――アリス、透矢 


ある何かを知ってしまうことで、「そういうことが起こる」という事を認めてしまうって感じなんだろう。

肩こりを知らなかった欧米人が「肩こり」という概念を知ってしまったら、途端に肩が凝るように。

これは水月世界ぜんたいに言えることなんだとも思う。

つまり、「ある可能性を想像できるのなら、その可能性は現実になるっていうこと

雪さんが何故ここにいて、姿形を持っているのか? ということもまたその一つ。

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「だから、それが本当にあり得ない現象なら、理解することも記憶することも出来ないのよ。私たちが見ているものも聞いているものも、感じていることはぜんぶ脳が処理した情報なの、わかる?」

――アリス 

 脳で処理できない、『何故』を赦さない存在が『怪』。怪という言葉を与えてみても、それが"なん"なのか? どういうものか?は分からない。

何故なら脳で理解できない存在そのものだから。"存在"という存在すら知覚できないみたいな。

言い換えれば私に理解できるものは、想像することができる。例えば現実に存在しないピンク色のライオンや、ユニコーンも認識できる。それはつまり脳で"わかる"領域にある概念だということになる。存在といってもいい。

「つまり脳が知らないものは認識できないし、私たちに理解することはできないわけ。逆もまた同じ。……空気って見えないけど確かに存在してるし、理解もできるでしょう?

「それはまあ……」

「じゃあ、魔法があってもいいじゃない」

――アリス、透矢

 空気でたとえられるとすごくよく分かる。空気って掴むことも触れることもできないわけだけれど
(実際常に空気には触れているわけなのだけれど、触れている実感がないのでそこに空気があるのかうまく体験できない)

でも確かに「空気」という概念を理解できるからこそ、上のように解釈することが可能なんだろう。

で、その理屈でいうなら「魔法があってもいい」ってことになる。つまり、魔法という概念を理解し認識できるのなら、この世界に魔法が存在したとしても不思議じゃないってことだよね。うん。

私は魔法はどうでもいいから、上位概念の世界を人間として知覚してみたいなあ……(神経が焼き切れて廃人にならない程度に)


 

 この世界の可能性

 
「目に見えなくたって存在しているものはたくさんあるの。ねえ、知ってる? 人間が壁に突っ込んで、すり抜けちゃう可能性が、現実に存在しているってこと」
(中略)
「とにかくそういう可能性があるの。この世界、あなたが思っている以上になんでもアリなのよ

――アリス

 

 アリスがいっているのは「トンネル効果」というものらしい。私もこれなんか聞いたことあるなあ。

しかし量子力学の世界においては、ボールを壁の高さまで投げることができないのに、ボールを壁の向うに投げる事ができてしまう。あたかも壁にトンネルが存在し、ボールが壁をすり抜けるように見えるため、この現象はトンネル効果と呼ばれている。
――トンネル効果 - Wikipedia

 

 そんなことよりも、続くアリスの言葉「この世界、あなたが思っている以上になんでもアリなのよ」は心踊る! インビジブルユニコーン(IPU)もいるのかなわくわく()

冗談はともかく、「なんでもアリ」っていうのはいいよねー。楽しい秘密であふれているのって、それだけでこの世界に期待できますもの。



 

 

雪さんの存在のアンサー

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透矢 「…そもそも、幽霊だって気づかないってこと?」

アリス「だって、気づきようがないじゃない。というより幽霊じゃないのよ。それはもう人間」

透矢「周りの人の反応でわからないかな?」

アリス「それを現実として受け入れられればね。たとえば、自分の大切な人がそういう存在だったとしたら、あなたは受け入れられる?」

僕に優しくしてくれる人たちが――僕の寂しさが創りだした現像だったら、夢だったら?


うーん面白い。なるほどねー。

マリアが見ているお母さん、透矢が見ている雪さん、神社出会うナナミ様。

これは全て、脳がその概念を理解できるがゆえに「可能性として存在」してしまった結果なんだろう。

人が想像できるものは、たとえ現実で死んでいたとしても最初から生まれていなかったとしても、"作り出せ"るってことか。

この理屈に沿うなら、瀬能透矢が見ていた雪さんもまた、透矢だけにしか見えていなかった可能性がでてくる。しかし透矢はそれを受け入れることは出来ないから、周囲の人間の言葉を無意識に書き換え、あたかも「雪という人間がいるかのように」世界を見ているってこと。

だから、花梨や庄一からしたら、「こいつ誰と喋ってるんだ?」「雪さんってだれだ?」「狂ってしまったのか透矢」と思っていたのかもしれない。

ただこの水月世界は、可能性ならばすべてが実体を伴って存在できるので、雪さんもまた花梨たちに見えていた可能性は十分にあるけど。
 

 

 それは屁理屈だよ、という人間にはなりたくない

 

 アリス「どうして人間は神様を信じられなくなるかしら? どうしてサンタクロースがいたらいけないの?」(中略)

アリス「いないほうが、より自然だから。あなたがさっき言ったように、何億もの人間が生きているのに、神様を観たなんて人はほんのひとにぎり。サンタは親の変装。 だからって、いないことの証明にならないわ。たまたま本物に会えなかっただけかもしれない」

透矢「…アリスが言っているのは、へりくつだよ」

アリス「そうね。でも、確かに天動説はひっくり返ったのよ。反論できなくなるほどのへりくつを積み重ねた結果ね」

 あーもうカッコイイなあ!
アリスかっこいいよほんと。

「―――でも、確かに天動説はひっくり返ったのよ」

ぴゃー!(>△<桜)三 

これをキラリンっていう効果音とともに言い放ちたい欲求。(やったらホワイトアイを食らうことになるんですけどねでもまそれも一興です)

とりあえず「屁理屈」って言葉を相手の主張の返しとして使うのは、思考停止している人だけです。これ反論でもなんでもないですからね。ただ「それは僕にはよく分からないけど」て言っているようなものですから。

屁な理屈だというのなら、ちゃんとキッカリと論破してくださいよと言いたい。



透矢がマリアの死んだ母親を見れること

「だとしたら、どうして僕に見えるの?」

「才能と偶然。あなたはどうして幽霊がいないと思うの?」
(中略)
「あなたは過去を持たない。それを証明する手段なんてないはず。なんにも知らないし、わからないことだらけだから見えたのよ

「わからないから、見えた?」

「マリアの意識に同調したの。記憶を持たないってことは、それだけ、存在が不確かなのよ。これはわかるでしょう?」

「そういう人間は他人の意識とか想いを受信しやすいの。マリアはアンテナみたいなものね。想いを何らかの形で放出したり吸収したりできるの」

――アリス、透矢

 
透矢は過去を持たない人間。つまりある事象にたいして否定する材料も乏しいし、なにより記憶を持たないからこそ自分という存在がとても曖昧ゆえに、何でも受け入れてしまう。そういう性質があるってことね。

ある"想い"を、透矢はもしかしたら"映像"として出力できるのかもしれない。アリスがいうマリアのアンテナの話の理屈で言うならば。

つまり透矢が願う「雪さんへの想い」が、現実に雪さんを出力している。ナナミ様は……透矢の夢に出てくる前世記憶、あるいは牧野那波の前世記憶、あるいはこの町に漂っている想いをナナミ様という映像に出力していると考えるといいのかも。

「神隠しにあったり、お化けに遭ったりも子どものほうが断然多いのよね。あれと同じかな……何も知らないから、見えちゃうのよ。否定する材料がないし、自分の世界が確立してないから」

――アリス

 

 ふむふむ。

 

 

魔女にできること

 「信じること、受け入れること。魔女っていうのは、それを方法論として確立していて、実践できるの。前者が魔法で、後者を可能にする力が魔力ってところね。

儀式や道具を使うことで、そういう現象を起こす側にも回れる。受け入れているってことは理解しているって事だから、それを現象として再現できるってわけ」

――アリス

 
信じることが魔法で、受け入れることが魔力。でいいのかな。

儀式や道具を使うことで、魔法を起こしたり、魔力を起こしたりすることも出来ると。そして魔女はこの2つを方法論として確立していて、いつでも再現できることができると。


風船ウサギの話もここに絡めると面白いかもしれない。

風船ウサギのお話を受け入れること(ここで魔力発生)
そしてこのお話を信じることができれば(魔法)へと昇華することになる。
つまり風船ウサギは嘘ではなく"真実"となるってこと!

透矢の中で風船ウサギが本当の出来事、ありえる真実となったからこそ、雪さんという存在が彼の前に現れることができるのか。


 

死ぬことと生きること

「死んだらおしまいなんだ。生きているから出来ることがあるんだ。この子は生きているのよ。だから、それだけは忘れちゃいけない。自分にも等しく振りかかる死から、目を背けちゃいけないの。

それは自分の生を否定することだから」

――アリス

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アリスの言葉はきっついなあと思う。

「死」を認めろ、あることを受け入れろ、ちゃんと熟考しろ。死はいつだって誰のもとにだって振りかかる。生の延長線上に死はあるんだよ。誰にも必ず訪れる現実、それが死ぬこと。だから考えろ、思考停止してちゃだめだ。考えろ、受容しろ、肯定しろ。

じゃないと自分の生を否定してしまうぞと。

つまりアリスが考える「死」というものは「生」と強く接続していることになる。コインの裏表のように、切り離して考えることができない概念みたいなね。


 

 

概念の書き換え

 

「でも、あなたは違う。ママの死を否定するために死を肯定した」

「アリス…それは、矛盾していない?」

「言い方が悪かったわ。この子が肯定したのは、死じゃなくて…自分で作った死の概念

――アリス、透矢


死の概念って、単一のものだと思っていたけど、そうじゃないんだなーって気づいた。いや、「違う概念に書き換えてもいい」っていうことに気づいたというか。

お金とか、愛とかそういった普遍的?なものって結構頻繁に意味がアップデートされていく。生きていればいろいろな解釈を覚えたり、いろいろ考えたりして、ある概念が違う概念に変質していくもの。

でもなんだろうなあ……「死」ていうのは、解釈の幅が少ないと思うんですよね。これは死にたいする経験が圧倒的に私には足りないからだろうけど。(死ってものを意識したのは4才くらいだったろうか?でもそこから途端に薄れていって、今ではうまく認識できない。これは生活のレベルとかそういうのもあるのかもしれないけれど)

マリアが書き換えた死の概念は、「死んでもまた会えるってこと」とのこと。私が思っている死「もう二度と会うことが出来ない絶対の別れ」とは全然違う代物になっている。

おもしろい。

 

 

アリスとマリアが持っていた涙石

 

「この意志はそういう人の想いを具象化する力を持っている……要するに、願いを叶えてくれるんだって」

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涙石があるからマリア達の力がよけいに高まっていたのかな。

 

マリアちゃんがいうには、この涙石の指輪はお母さんがくれたらしい。この涙石ってこの町だけのもの……だよね? なんで異国の女性がそんなものを持っているんだ?

涙石ってけっこうありふれているものなの?
それともマリアのお母さんは涙石との何らかの繋がりがあるの?

マリアとアリスは、異国人。ジプシーと自分たちを呼んでいたっけ。
ナナミ様も異国人……ここらへん繋がりそうか?


 

 

 透矢とマリアちゃんは似ているのか

アリス「ママはもう、あなたに優しくしてあげる事ができません。頭を撫でてあげる事もできません」

マリア「…やだよぅ……」

アリス「だから強くなりなさい。泣かなくてもいいくらいに、強く。そうしていつか、誰かの頭を撫でてあげられるようになりなさい―――あなたは、マリアなんだから。誰よりも優しい、マリア」

 

 マリアちゃんの状況って、死んでしまったお母さんを思い続けた結果、現実世界でお母さんの幽霊と居続けることが可能になってしまったということ。

それは彼女にとっては幸せなことなんだけれども……お母さんの遺志に反している行動でもある。お母さんはマリアちゃんには強く生き、誰かの頭を撫でてあげられるような人間になってほしいと願っていたのだから。

そのことをアリスは姉として、マリアに告げる。痛々しい現実を叩きつけ、「目を覚ましなよ」と詰める。

透矢の状況もまた同じなんですよね特に雪さんの物語は。あれは透矢が自分の最大幸福を求めた結果、雪さんという都合の良い存在によっていつまえも甘えられる世界にい続けられますから。

私はそういう世界を望むことを否定しないですし、ありだとは思う。でも、やっぱり「強くなれ」「強くあるべし」という考え方の人はいるんだよなーと。(マリアのお母さんのように)

別にこれは間違っているとか悪い考え方って言いたいわけじゃない。弱いより強いほうがいい、そのほうが生存競争に勝ち残れるし、富も多く取得できる。でも弱くてもいいじゃん、弱いままでもいいじゃんっていう価値観もときには必要だと思うのだ。

強さを求めすぎると、心は摩耗するし、個人の適正に合わなかった場合ぽきりと折れることだってある。折れた後は修復はできても、完治は難しい。だから……(だから?)

「おねえちゃんみたいに強い人には、わかんないよぅ…私にはママがいないと、駄目なんだもん。おねえちゃんが大丈夫だからってなんで私まで巻き込むの?」
――マリア 

 そうなんだよなあ……。これあれだよ。強い人は、自分が強いことに気づかないってやつだよ。自分が出来ることは、他人にも出来ると思っている勘違いしている。実際そんなことありえないのにも関わらず"当たり前"という幻想を手放さい。

でもね!アリスはね!こういうこと言っちゃうんですよ!

「マリア……私じゃ駄目なの?」

――アリス

つまり、死んだお母さんじゃなくて、私がいるよってことです。私があなたを支えるよと、力を貸すよと……。

誰かの拠り所を奪うのなら、説教をするのなら、導こうと思うのなら、その人の為に全力を尽くさなくちゃ駄目なんだと思う。ただの言葉だけでは人は絶対に動かないから。

恐怖でもって行動を支配することも可能だけど、それって自発的な行動じゃないから、長期的にみれば意味ないんだよねえ……。

 

 

アリスとマリアがいない世界。これはいったい?


アリスは問う。「これ以上聞く勇気はある?聞いたら最後あなたは元の世界には戻れない」と。

そして透矢は聞かないことを選んだ。

その翌日、教会にはアリスもマリアもいなくなっていた。あのあとどこかに旅立ったとかではなく、そもそも存在していなかったようにふっと消えていた。教会のベンチ、庭を見ると、長い間掃除されていないような汚さであった。

そして不安になった透矢は雪さんに聞く。
「アリスを知らない?」と。

「…? この教会には、昔から、シスターがおひとりで住んでいただけですよ」

――雪

もうこの世界では、透矢しからアリス達のことを覚えていないのだ。

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巻き込まないで済んで良かった。ねえ、私たちのこと友達だと思うなら……せめて忘れないでよね』 

彼女たちは、魔女か何かだったのかもしれない。

人としての生活を捨てられなかった僕に彼女たちと共に歩む資格はなかった。

――透矢・アリス(回想)


なんでこんなことが起きてしまった?!

透矢がアリスたちが消え去る"可能性" を思い浮かべてしまったからか? そのせいで、翌日の世界では二人が消失してしまったのか?


 

 

 

 

居場所を探しにいこう

「…私たちの、居場所になってくれないかなぁ……とか」

「居場所?」

「私たちのご先祖様ね、ロマ続とかいう、移住民らしいの。ジプシーって呼ばれてたりもしたけど…まあ、旅をしながら生きていくわけよね」

――アリス、透矢

 

「でもまあ、定住しないってことは国民であることの否定になるから、色々な国を追い出されたみたい」
(中略)

やっぱり、自分で居場所を探さなくちゃいけない宿命みたい」

――アリス

 

「儀式みたいなものなの。自下に触れて温もりを感じることで居場所を感じるのよ。……これは私たちの中に流れてる血が要求するんだから、仕方ないの。」

――アリス

 

アリスとマリアちゃんは、自我が薄く主体性が乏しいからこそ、自分を支えるための拠り所が必要なんだろう。

そしてそれは<場所>に求められるのではなく、人に居場所を求めるというもの。誰かとの繋がりを重視する……みたいな感じなのかな。どうだろ。


 

おわり

アリスちゃんかっこいいし、ロリーでツインテでピンクで強気でめっちゃ可愛い!

って感じでした。マリアちゃんに魅力が沸かないのは、やっぱり私にはおとなしい子より元気はっちゃけってる感じの子が好きなんだなーと実感。

 

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