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琴乃宮 雪_感想(22775文字)

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f:id:bern-kaste:20140508221535j:plain 雪さんの感想をぐだっと語っていきます。

彼女を観ていると奉仕精神について喋ってみたくなるよね。(いわゆる一つのメイド魂)

 

 

メイド魂

「雪は、透矢さんによろこんでいただきたいだけなんです。労働というよりもご奉仕になりますね」

雪さんは、なぜか誇らしげだった。

――雪、透矢


雪さん曰く、家政婦との違いはここにあるらしい。家政婦は賃金を得るための労働でしかなく、メイドは奉仕で駆動しつづけるものだと。

誰かに尽くす、奉仕するってこと。それが雪さんの本質……か。


鈴蘭ちゃんの癒やしパワー

この子の場合、抱きついているというより、しがみついているっていう表現のほうが、しっくりくるか?

――透矢

「ばいばーい、透矢ちゃーん!」
――鈴蘭

f:id:bern-kaste:20140506170825j:plain わはーわはー? ふふ。

もう可愛い。可愛すぎる。思わず頬がにやけてしまう。すりすり。わはー

花梨「あんたね、普段は、透矢ちゃん大好きのくせに、どうしていきなりそういうことするわけ?」

鈴蘭「だってぇ、那波ちゃんばっか見てるんだもん。透矢ちゃんのエ口ー」
花梨「エ口ってあんた、いっちょまえに嫉妬ですか」

小さいからって嫉妬しないなんて、そんなことないんだよ! あー鈴蘭ちゃん可愛い。

 

 

雪さんへの疑惑

歩きながら、さっきの光景を思い返す。
機械のように動く、雪さんの手。
いくら得意だとはいえ、あそこまで正確な動きが出来るものか? そもそも、雪さんはどうしてあんなことが得意なんだ? 野戦病院にいたわけでもあるまいし。
――透矢

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透矢は雪さんの包帯の巻き方をかなり気にしている。正直そこまで異常なことだとは思わないけれど……でもまあ異常と考えてみよう。

雪さんの包帯手さばきが手慣れすぎている。この事実から浮かび上がるものはいったいなんだ?

→他人を治療することが多い環境にいた。
負傷者が多い地域? あるいは透矢が言うように野戦病院のような施設? 

……しかしたとえそれが真実だとしても、どう繋がるのか分からない。雪さんがそういう環境にいたからといって、何に繋がってくるんだ? 雪=山ノ民と仮定しても、うーん。
あとついでに ・雪さんの発情。異常? ということも留めておく。

さらに追加。「雪の身体性」

「雪、わがままなんです。お薬が駄目、お医者様は駄目、冷やされるのも駄目……とにかく、普通の人が病気になった時にするべきことが、すべて駄目なんです。気分が悪くなったり、悪化してしまったりで」

そういえば、小さな頃は、体が弱かったと言っていったけ。口ぶりからすると、かなり、ひどかったかもしれない。
――雪、透矢

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雪さんが「山ノ民」だからと、納得してしまっていいんだろうか?
彼女が私達違う人種で、違う源流の人間だからこそ、薬が効かないと決めつけてしまっていいんだろうか? 分からない。

ただ何かがひっかかる。

薬が駄目というのは、薬が全般的に合わないということだろう。私は薬学に詳しいわけじゃないが、市販されている薬というのは、殆どの人類に効くという前提があるはず。傾向として、あるいは統計として、安全性を認可されて売られている。

しかしそれが効かない―――上に"悪化"するんだとすれば、雪さんはその対象から外れることになる。つまり、私達と人体構造が大きく違う可能性がある。

原始の人間だから? やっぱり山ノ民だから? ……分からない。分からないことだらけだ。


 

雪さんは何を望んでいるの?

雪さんは、感謝の気持ちを表したいからと、僕のメイドになるっていう選択肢を選んでくれた。

この人にとって、それが幸せな選択だったのかどうか、僕にはわからない。でも、だからこそ僕たちは今、肩を並べて勉強することができる。玄関を開けた時、笑顔で出迎えてくれる、僕が苦しんでいる時に優しく手を撫でてくれる―――
ぜんぶ、メイドの雪さんがしてくれた。

――透矢


透矢はのちに雪さんの為に「記憶を取り戻そう」と思い始める。彼女の大好きなご主人様を取り戻して返してあげることが自分にとって雪さんに出来ることだと。

でも、おそらく雪さんはそんなことどうだっていいんだろうとも思う。
「今」このとき、この瞬間にいる【瀬能透矢】という人物に尽くすこと―――それこそが雪さんの本望なんじゃないだろうか。

その考え方は記憶の有無(=歴史)ではなく、存在の有無の価値の置き方に近い。人間で「他者の本質」を観ることが出来る人ってそう多くない、(というか殆どいない気がする)。

その人、"そのもの"を見れるのって、それだけでもう一種の能力に近い。記憶があるとか、そいつの性能とか、そういうことじゃなくて「本質」。

 

 

 

透矢の過去記憶

「雪ちゃん、大丈夫?」
「怖い……」
「寝ないと、治らないよ」

――透矢、雪?

雪さんは本当に実在するの? 過去に存在するの? 透矢の過去が「本当」だってどうやって証明するの?




ほっぺたにキス、あるいはおまじない

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「おでこにキスするのは、その人に優しくしたい時。ほっぺたにする時は、その人を愛している時。お口にするのは、お互い愛し合っている時……わかる?」

「ママは、いつも優しいよ?」
「ふふ、ありがとう。いつか、してあげなくちゃいけない女の子に出逢えば、わかるようになるわね、きっと」

――少年透矢、ナナミ

「おやすみなさい……透矢、ちゃん」
彼女は、僕のほっぺたにキスをした
――雪

小さい頃にナナミから教えてもらった「おまじない」。ほっぺたにキスはその人を愛している時。

雪さんは「その人を愛している」という意味で、透矢にほっぺたにキスをしたと仮定。すると、なぜ、雪さんは、ほっぺたにキスすることの意味を知っているのかという疑問にぶち当たる。

このおまじないは、ナナミと透矢しか知り得ない……はず。あるいはナナミの関係者にしか知り得ないはず……だと思う。(このおまじないが地域的に普及していない限りにおいて)

雪さんは、ナナミの関係者と観るべきだろうか?
だからこそ、ほっぺたのおまじないを知っていたと取ることができる。ナナミから直接聞いたとなれば納得できる。

 

 

遠い過去、遠い記憶

「透矢さん、透矢さん…」
ああ…夢が、覚めたか……?

『透矢、雪は…』

いや、まだだ…
何度も聞かされたセリフ。

『雪は、おまえが守れ』
『うん……』
――(おそらく)父親、少年透矢

いつからだろう。
僕が、あなたに守られるばかりになってしまったのは



思えば、僕はあの日、あなたの何を守ろうとしていたんだ…
ねえ、雪さん?
――透矢

透矢の父親は、雪を守れという。そういう記憶を透矢は持っている。(ただこれは【今】現時点から創りだされた過去かもしれない可能性もある)

そして透矢は、昔は雪さんを守っていた。けれど今は守られている現状にすこし疑問を持ち始めている。

雪さんの何を守ろうとしていたのか?
彼女の安全? あるいは平穏? あるいは存在そのもの?……

「ごめん。ちょっと嫌になったんだ。きっと昔の僕のほうが、雪さんのこと笑わせてあげられたから」
「そんなことありません……ありませんからね?」

また、悲しそうな顔をさせた。
僕が守るべきだったもの。
それは、彼女の笑顔だったのかもしれない。
根拠もなく、そんなことを考えた。

笑顔……かー。


 

 

だぶる雪

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にこり、と少女が笑う。
誰かの笑顔に、似ている気がした―――

「雪さん…」
どうしてか、消えゆく彼女が、雪さんとダブって見えた。
「……雪さん」
いや…違う?
僕が放った矢の先には、雪さんが立っていた。

「雪さん!」
実際には、声になっていなかったのかもしれない。
体も、まったく動かなかった。
「さようなら」
ほほえんで、雪さんは僕に背を向けると光の向こうに消えた。
もう、会えない。
僕は泣いた。

――透矢、雪?

たしかここって、夢のナナミに矢をいってしまうシーンだったはず。これはなにを示唆している?

 

 

 

今、この瞬間の自分を受け止めきること

もし弓を引かないと記憶が戻らないと言うのであれば、僕は、このままでいることを望んじゃいけないだろうか。僕は、このまま瀬能透矢の体の中で生きていたい。

弓道ができなくてもいいから、この人と一緒にいる、この時間を守りたい。僕に向けられた、この笑顔を……。

考えちゃいけないはずの言葉が、僕の頭の中を支配していた。
記憶なんか、もう、どうだっていいじゃないか――

記憶なんて、過去なんて、どうだったいい。
未来も過去も切り取って「今」だけを直視し続けること。これかなり大事なこと。

ある人は言った。希望的観測は人間の生きる知恵だと。けれども希望的観測も悲観的観測も取り外せて生けるのならば、それも決して悪くない。

 

 

笑顔でなにかを変えられるってこと

雪「自分は人と違う。なんにもできない。そんなことばかり、おふとんの中で考えていました。泣いてばかりだったんです」

透矢「ちょっと、信じられないな……」

雪「それを、透矢さんが変えてくださったんですよ」

透矢「雪さんをどうこうできるほど、大層な人間じゃないよ、僕は」

雪「笑ってくださいました。雪が元気になった時、何かができた時―――世界中から見放された雪のために、透矢さんだけが笑いかけてくれたんです」

誰かからの肯定(=自分を受け入れてもらうこと)によって、人間は自尊感情が強まっていく。これはもうグランドルールな気がする。

他者への貢献・感覚共有・自尊の向上。
透矢笑う・雪さんと感覚を共有・受け入れる。

 

 

花梨と雪の差異

花梨「ねえキミ、このままでいいの? 記憶を取り戻したいんでしょう。忘れて、できなくなったからってやめちゃったら、キミがキミじゃなくなっちゃうよ」

透矢「僕は、僕だ……」

花梨「…違うよ! 透矢は、そんなふうに逃げたりする人じゃなかった。弓道だってすごく真剣に取り組んでいて、途中で投げ出したりしなかったんだから」

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花梨の自己欺瞞、そしてそこから生まれ出る言葉はナイフのように鋭い。過去の記憶・幼なじみとしての透矢が戻ってきてほしいのは、透矢の願いじゃない。花梨の願いだ。

それを「キミがキミじゃなくなっちゃうよ」と、いかにも透矢自身が困るような調子で、そしてあたかも私はキミのことを心配して言っているんだよ?な口調で言っているところが卑怯だ。

雪:「…お引取りください」
花梨:「ゆ、雪…?」

雪:「花梨さんの知っている透矢さんという方がここにいないのなら、今すぐ、お引取りください。この方は、雪の大事な透矢さんなんですから

なんなんだ……これ?
ただ、試合があるだけの朝なのに…なのに、雪さんが、花梨をひっぱたいて花梨は泣きそうな顔をしていて、ふたりの前なのに、雪さんが、僕のこと抱きしめてくれて……


花梨と雪さんの大きな違いはここだ。花梨は今の透矢を受け入れきれない。出来るのなら元の、昔の記憶がある透矢に戻ってほしい。

でも雪さんはそんなことを露ほども願っていない。今、この瞬間にいる、透矢でいいと言っている。

それは昔、雪さんが透矢に笑いかけてもらって元気を取り戻したように。今度は世界から見放されてしまった透矢を、雪さんが受け止めている

 

 

 

いっその事自分の為にやってると言ってくれた方がどんなに楽か

「いいんだぜ、前みたいに弓道ができる必要はないし、無理に続ける必要もない。ただなぁ……」

「ただ、なんだい?」
「俺は花梨がおまえと親友でいられるのは弓道があったからなんだ。それまで否定しちまわないように、気をつけろよ。悲しいだろ、そういうのって…」

――庄一、透矢

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庄一はいう「弓道という繋がりがあったからこそ、俺とお前たちは親友でいられた」と。

なんて脆いものなんだろう。三人を結びつけていた「弓道」という結び目が解けてしまえば、彼らは友達になりえないのだ。透矢が弓道をやめてしまえば、三人は自然に仲が疎遠になっていき、前みたく親密な関係になることはないと言っていることと同じだ。

所詮こんなものか。人間関係の重要なファクターに、場の強度の他にこういった要素の強度というものがある。これは「場の強度」よりも強い、強度体系なのだけれども、それ一つに頼っている場合はこうなる。大事なのはリスクの分散と多要素の管理と維持か。

場、要素ときて、思想強度というのもある。これも絶対じゃない。だからこそ、要素と思想の共有をいくつも繋いでおくのが大事。

それと庄一の言葉は、結局のところ透矢のことなんて考えてない。ただ自分の都合で、自分の想いをぶつけているだけ。もちろんこれが悪いとはいわない。さっきの花梨の自己欺瞞よりはかなりマシだ。

でもこれは一種の脅迫に近い。「俺とお前たちの関係は弓道だったんだ。だからお前が弓道をやめるということは俺達の仲はそれまでだ」こんなことを言われて、「じゃあ僕弓道またやるよ」なんて言うやつがどこにいるのか?いないだろ。

透矢が生きている世界は、周囲から「前あったものを取り戻せ」と執拗に言われつづける。しつこくしつこく何度も「記憶戻った?」「取り戻さないと駄目だよ」と言われる。

こんなの全く透矢のことを考えてない。結局みんな自分のことばかりだ。透矢と付き合いづらいのは彼に記憶が戻っていないから。だから記憶を取り戻してほしい。そういうのばっかりだ。 f:id:bern-kaste:20140506195605j:plain たいして雪さんは違う。彼女は「そのままでいい」と言っている。変わることを望んでいないし、記憶を取り戻すことも願ってはいない。透矢にとってどちらが―花梨庄一/雪――安寧する場所かと聞かれたら、そりゃ雪さんのほうに決まっている。

透矢が自分の"あったかもしれない"よくわからない過去を求め続け限り、彼はいつか必ず破綻する。壊れるんだよ。

「透矢さんがしっかりしていないと、誰が困るんですか?」

――雪

そしてそう願う(透矢が記憶を戻らなくてもいい)ことや、雪さんを拠り所にしてしまうのは甘えでもなんでもない。あるいは甘えだとしても、それでいいんだよ。強くなくていい、弱くていい。「今」を全部背負って辛いなら、誰かとはんぶんこしてもいいんだよ。一体誰がそれを咎められるのか。

「花梨さんのことはわかります。ですけど無理をしてはいけませんよ。いま頑張らなければいけないのは、これまで透矢さんに頼り続けてきた他の方たちなんですもの。花梨さんだって、それについては同じですよ」

「でも、それじゃあ!」

「それじゃあ、なんですか?」
雪さんの手が、僕の頭をぎゅっと抑え込んだ。顔をうずめた彼女の胸は、柔らかくて、あったかくて、

「それじゃあ、僕がなんのためにいるのかわからないよ……

――雪、透矢


透矢の嘆きは心地いい。
そしてその後に続く雪さんの言葉は、彼女がいかに透矢を大切にしているから分かる。

「幸せであるためにですよ。ね? 雪と一緒に考えましょう。透矢さんが、そんな顔をしなくて済む方法を」
――雪

幸せ希求の為だけに生きていい―――その答えはどれほどに痛快で、あったかいものなんだろう。世界から阻害されても、見放されても、自分が無知で無能だと実感しても尚、その言葉を言ってくれる人がいるかで世界の見方は全然違うものになる。

「雪さん、僕は……僕はもう、幸せなんだ。なんにもできなくても、雪さんがいて、友達がいて、そんな生活が続いてくれれば……でも、それじゃあ、駄目で……」

「でしたら笑ってください。駄目なことなんてありませんよ。雪は、ずっと透矢さんの側にいますから

――雪、透矢

秋子さんの一秒了承。雪さんの全肯定。たぶん全てはここからはじまる。

他者をまるごと受け入れること。それは…――……―…―――……。

世界に敵がいないこと?
好きだから?
それが篤志だから?
■■■?
異物である他者、阻害するべき他者を受容し許容する。



透矢の記憶と、雪の存在

「だって…記憶のある僕は、別人みたいなんだ。そいつが戻ってきたら、今の世界が壊れちゃう気がする。だから、怖いんだ。今の僕の気持ちなんか、いずれ、消えちゃうんじゃないかって…」
――透矢

透矢の記憶がまっさらだから、雪さんが今ここに存在できているかもしれない。そんな可能性。

記憶がないっていうことは、「常識」というものが薄くなり、超常の現象を認識しやすくなるかもしれない。とはいっても透矢の記憶喪失はエピソード記憶の損失だしなあ……みたいなね。


 

幸せにしてあげたいなあ

僕は勉強をして、雪さんが家事をしてくれて、いつかは、ちゃんと僕がかせいだお金で、この人と暮らせるのかな?

僕が立派になれば、この人をもっと幸せにしてあげられるのかな?
……僕が、幸せにしてあげたいな。
――透矢

幸せにされるより幸せにしてあげたいし、守られるより守りたいし、愛されるより愛したい。受動的より能動的に。

何かを求めるのではなく、何かを与えよ。

求めよ、さらば与えられん。探せ、さらば見いだすであ ろう。門をたたけ、たたくものはあけてもらえるだろう。

「ねだるな、勝ち取れ、さすれば与えられん」


別になんだっていう感じだが、◯◯してあげたいという気持ちを大事に。ね。

 

 

夢の中のぼく

……僕が、幸せにしてあげたいな。

そんな、子供のころは気にもとめなかった、無数の夢の、ちっぽけなひとかけら。それが魂の抜け落ちた体を見つけ、ひととき、いたずらに足を止めてみた……僕は、そういうものなのかもしれない。

透矢が観ている世界は「可能性世界」なのか。(いや何度も繰り返してきたことなんだけど一応ね)

けどそれにしても「大枠」に沿っているのは、どういうことなんだろうか。「グランドルール+病院で目覚めた日」からの可能性世界と言うと納得できそうだ。

夢=覚えられない世界
現実=覚えている世界

透矢が何度も何度も、無数の夢を繰り返し、いたずらに足を止めたのが、この世界なのか。花梨・和泉・ナナミ・雪・鈴蘭・アリス/マリア―――達の世界然り。

ある大枠の中でしか可能性は変動しないし、決定づけられることもないが。

夢の中の僕は、消え行くまぎわに、いつもこんな気持を味わっていたのかもしれない。僕を夢から覚ますために、あの少女を射抜き、消えていかなければならない運命を呪って。

だから、僕に夢をつないだ。牧野さんへの想いを。
彼女がこの町を訪れたことも、僕らが友達になれたことも、僕が、彼女に気に入られ、彼女に強く引きつけられたのも、

すべての夢が、未来へつながっているからなのかもしれない。
――透矢


透矢がいう"彼女がこの町を訪れたこと"ってなんだ? 彼女って話の流れからして牧野那波なんだけれど、ん? 那波さんってこの町を訪れたって感じなんだっけ? 病気の療養の居場所としてこの土地を選んだんだっけ? どうだっけ。

夢をつなぐ……か。

 

 

 

無縁墓地

んー……無縁墓地。弔うものがいないくて、墓石すらない土地。そこに雪さんの両親が眠っている。

そしてそこにある何かしらの事実を透矢の父親は知っている。
ここどういうことなんだ?

 

 

 

山ノ民:記述

一般に、山ノ民の男性は体躯が大きく毛むくじゃら、女性はすらりと背が高く、見目がうるわしいと言われた。

これは、日本人と、西欧、及び欧米人の間に生じる差異と酷似している。山ノ民は同じ人間ではあるが、異なった文化を有した同種族ではなく、地続きの土地に住む異種族なのである。

オーストラリアにおけるアボリジニ、アメリカにおけるインディオと同等の存在と考えればわかりやすい。

平地ノ民にとって、山ノ民は、まさに異種族――あやかし――であった。ここで言うあやかしとは、正体のわからないモノのことである。山ノ民は、どうやら平地ノ民をさらい、子をなす、食すなどといった事を行っていたようである。

しかし、同じ人であるならば、なぜ彼らは、時として、あたかも化け物の類であるような扱いを受けるのであろう。

生活環境の違いによる変化、特化、それだけでつめいがつくものだろうか? もし、山ノ民と呼ばれる存在が、ニ種類いたとしたならば……

山ノ民の女性は、すらりと背が高く美しいという特徴を持つ。
→この知識が「雪さんの姿を作った」原型か? 透矢の知識によって雪さんの姿が当たられたという可能性

平地の民にとって、山ノ民はあやかしである。
これはアリス達がいう「怪(あやかし)」と同じ意味なんだろうか?ちょっと違う気がするな。もし違わないなら、那波は山ノ民ということになるが。

山ノ民とよばれる存在が2種類いる可能性
これはどういう可能性の示唆なんだ?……


 * 異文化交流怖いね! 人さらい文化で

【衝撃映像】泣き叫ぶ女性を無理やり・・・キルギスタンの「誘拐婚」が恐ろしすぎる

中央アジアキルギスタン。この地には、日本人女性はおろか、誰も想像できないような恐ろしい伝統が、今もなお実在する。 「誘拐婚」 文字通り、少女を誘拐してそのまま婚礼を強制的にする、というなんとも酷な伝統である。

これを思い出した。

 

 

 

透矢とその父親が同じ体験をしているっってこと

透矢のお父さんも以前、ナナミらしき人物に会ったことがあるという。

少女は、モノを言わなかった。
今にして思えば、見ること、話すことができなかったフシも感じられるのだが、なにぶん、ずいぶん昔のことで確証はない。
――父

息子は…母親が会いに来てくれたのだと思ったようだ。私は、息子の見た少女が幻だとは思っていない。物心つく前に母を亡くし、愛情に飢えた少年は、マヨイガに迷い込みやすいのだ。私がそうであったように。
――父


透矢父がみた人物が「喋れない/目が見えない」人物だとするのなら、本当のナナミ様って感じがするなあ……。

透矢が見た人物は、牧野那波の母だと私は思っているのだけれども。ここらへんなんかおかしい。どうなっている?

それと

"愛情に飢えた少年は、マヨイガに迷い込みやすいのだ"

この一文はどれくらい信頼していいのか。透矢父がそう思っているだけで(というかサンプルが2つしかないじゃないか)、完全信頼していいのか分からない。 

ただ…そうだなそう仮定しよう。マヨイガに迷い込みやすいのは「少年」/「愛情に飢えた」ていう条件が合致するとなせると。

少年というのは=子ども/小さい頃という意味合いだろう。年齢が幼ければ幼いほど、世間の常識を受けないからそういった超常の現象に当てられやすいのは皮膚感覚として分かる。

次に「愛情に飢えた」という点。愛情に満足していないと…ああそうか。愛情に満足していないっていうのは、「理想」を求めやすい精神状況になってしまうのか。

母親がいなければ、母親がいる理想を求めてしまう。
もし母親がいればそういった理想を求めないだろう。
だからこそ「愛情に飢えた」ことが、マヨイガに行くには重要なのか。

つまり、マヨイガに行くためにはある種の「理想」を求めている人物が適合者というわけね。
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那波父、舞を失敗した花梨、雪さんを追ってきた透矢……なるほど。これ合致思想なきがするな。

「ええっと…マヨイガ? 雪さん、マヨイガって、なんのことかわかる?」

「山の中に存在する特別な空間――異世界のような場所でしょうか。選ばれた人にしか見えないものらしいですけど」

「選ばれた者にしか見えない、異世界」

――透矢、雪

さっきの仮説が正しいのであれば、おそらく「現状に満足している」人間はマヨイガに行けないはず。他にもなんらかの条件があるのかもしれないが、これは最初の前提なんじゃないだろうか。 話しかわるけど、雪さんという存在はもうそれだけで「理想の体現」なんだよなあ…。

 

 

記憶がない雪さん

僕の手を引いている間、雪さんには、記憶がなかった。正確には、川に到着した直後から、という感じらしい。

マヨイガに近くなると、記憶がなくなるってことでいいのかな? ここ気になるので留意。

 

 

 

岩でふさがっている洞窟

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ここも、夢で見たんだ。
ただ、あんな岩はなかったけど…。
岩の裏には、洞窟がある。
そこで、僕は彼女に追いかけれた。
向こう側は、そう、暗い死者の国だ。

――透矢

花梨のときは岩がなかった。雪さんのときは岩があった。これはどういうことだ? どういう条件で岩で洞窟が塞がる?

岩が、僕らを退けるのは当たり前だ。
この岩は、この場所を誰にも行き来出来ぬよう、封印しているんだから。マヨイガ―――少なくとも、この向こう側には、それがあるような気がした。

――透矢


んー…作為的な気がするな。つまり誰かの「意志」によって、この岩があったり無かったりするんじゃないかってこと。

簡単に考えれば、中にいるであろうナナミ様のしわざか。

今はまだそういう時じゃないのかもしれない。透矢がまだマヨイガに来るべき時期ではないそういうこと。

…ん? そうか今の透矢は「現状で満足している」もんね。そかそか。これは理想を追い求めている人にしか開かない仕組みなんじゃないか?おおお。

 

 

 

宮代×舞

この神楽は、神社に奉納するための神聖な舞で、代々、宮代のみこにだけ受け継がれていると彼女は言った。

神様に奉納する演舞…か。

 




 

常世の門

常世への者、開かれた…その先にある、美しい世界。あの大岩が常世への門で、その先にあるのが、あの美しい光景だとしたらどうだろう。
その先に、あの美しい少女が、はるかな昔に存在したはずのナナミ様の存在する世界があるのだとすれば?

――透矢


透矢の言っていることを真実だと仮定。つまりナナミ父が鍾乳洞の大岩を外してしまったからこそ、常世への門が開かれてしまったと。そしてそのなんらかの影響で、花梨のトランスが断ってしまったのだと。

 

 

風船ウサギと、透矢の母親

 

「うん。私さ、これくらいしか覚えてないくせに図々しいんだけど、ああいう人になれたらいいなって思うよ。ひとりの女として」
「ありがとう、花梨」

たとえ覚えていなくても、母さんの優しさは僕に、そして花梨にも伝わった。風船ウサギの話と共に。
――花梨、透矢

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花梨はいう。風船ウサギのお話は、透矢の母親から聞いたものだと。そしてあんな素敵な人に私はなりたいなと。

あれちょっとまてよ…。記憶喪失後の透矢が、風船ウサギの話しを聞いたのは「雪さん」からだ。これは一体どうなっているのか?

1)透矢が小さいころに飛ばした風船が、=雪さん
2)透矢の母親=雪さん

たぶん…1の透矢が小さいころに思い描いた「幻想」が、この可能性世界では「雪」という肉体を与えられたように私には見える。


 

 

世界と世界がいったりきたり

前にも、こんな事があった。
それにしても、今回のは違和感がなさすぎる。あれは夢というよりも、ごく近くに存在している別の可能性―――並列世界とか言ったか?―――のように感じられた。

――透矢

 

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透矢祭りの後家に戻る→雪さんを認知できないまま就寝→別世界で目が覚める→その世界で就寝→今度は"祭りが始まる前"の雪さんがいる世界で目が覚める。

これは一体なんなんだ?
この世界では日常的に、A世界B世界X世界といった具合に、眠るたび、目が覚める度にころころと世界が変わっている。透矢が「前の世界を記憶」していたから、その差異に気付き、違和感を覚え始めて事態がおかしいことに気づき始める。

しかしもし、透矢が前の世界のことを記憶していなければ、今観ている世界こそが本当の世界になり、違和感なんて感じることなんてないのだ。

疑問
1)水月世界は、別世界の跳躍が何度も起きる世界なのか? つまり雪√以外の別√でもこういった事態が起きつつも、それを"私達は"認識できていない可能性の指摘である。

2)なぜ別世界を「寝て→覚める」のサイクルで繰り返すのか? 何かが原因となって跳躍している可能性? もしそうならその原因はなんだ?


 

雪さんの部屋=母さんの部屋

その日は、母さんの部屋で寝ることにした。
やけに人恋しくて。こうすることで、何かが解決するわけでもないけど…心なし背中が温かいような気はした。


雪さんがいない世界で、雪さんのあった部屋は、透矢の「母親の部屋」となっているのか。

これはどう考えればいいんだろうか?…

1)雪さんと透矢母になんらかの繋がりがある。(雪=母という見方も有)
2)透矢が雪さんを母親に見た立ている為、母の部屋が、雪さんの部屋になっている。

どっちもありそう。

 

 

言葉を、名前を持つこと―――

透矢さん、透矢さん―――
彼女は何かあるたび、おまじないのように、そんな言葉を繰り返す。言葉を持つこと、それは自分以外の人をあなたと呼べること。名前を持つこと、それは、あなたを他の誰でもない『雪さん』と呼べること―――

雪さんに、『透矢さん』って呼んでもらえること。

(透矢)

言葉?…。
ん…いやそういうことなのか?

「自分の名前を呼んでくれる存在」「相手の名前を呼べる存在」この2つを透矢は大事だといいたいんじゃないか。

つまり、風船ウサギに「名前を与えた」のは誰か? そしてその目的は?
風船ウサギが透矢の「名前を呼ぶ」にはどうすればいいか?

ってことなんじゃないの。

透矢はむかし風船に雪という名前を与えた。なぜ名前を与えたのか? 名前を呼べる存在にまで昇華したかったから。ただの風船ではなく、"雪ちゃん"という存在にしてあげたかった。子どもの頃はこういうことがよくある。いろいろなものに価値を見出し、それを自分と同じに扱うことができる力がある。

そしてさらに、その"雪ちゃん"が自分の名前も呼んでくれる――双方向性のコミュニケーション――がとれる存在(=人間)になったと願ったとすれば?

ナナミに願った少年透矢の願いが、まさしく雪さんという存在を生み出した可能性。お母さんのように見守ってくれる形として、母親の記憶と根深い「風船ウサギ」をよりしろにしたんだとしたら?

死去した母親――母親との思い出――風船ウサギ――雪ちゃん

この直線上に並べると、見えてくるものがある気がする。

 

 

雪さんの発情

「雪、病気なんです。月にいちどくらいのペースで、どうしても我慢できない時期みたいなものが来てしまって…その時になると、もう…透矢さんの匂いをかぐだけでも…」

――雪

月に一度発情期(それもとんでもない性衝動)が起こるらしい雪さん。これは……山ノ民だから?…。

というか私の今の仮説(=透矢の願いから雪さんが生まれた)のだとしたら、どうして「山ノ民」という属性が入り込んでいるんだ?……。

これはあれか? もしかしたら雪さんは存在事態が一種の"民族伝承"なんじゃないか?

ほらあれだよ。人々のいろいろ思考、思想、思惑、価値観、そういったものが玉石混交となってぐちゃぐちゃに交じり合って、妖怪話とか怪談とか伝奇とか生まれるわけじゃん?

だったら透矢の記憶から、あるいは思い出をベースに、雪さん形作られても不思議じゃない。

「母親」「母親との思い出風船ウサギ」「ナナミ交わした約束」「父親という民俗学者」「山ノ民の特徴」……。

山ノ民という設定は、透矢からしたらすごく都合のいいものなのかもしれない。今、現在、文明的社会で「山ノ民」という存在がなお生きていたら? その子が何かしらの事情で、自分の元に居座ることになったら?一緒にいてくれることになったら?……。

そんなふうに。(ちょっと穿ちかもしれないが)

 

 

ナナミと那波の選択

 

髪の長い、はかなげな――毎夜、僕の夢に現れる少女――
あなたは…

・ナナミ
・那波

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この選択肢はいったいなんなのか。どっちを選ぶとどうなるとか忘れちゃってまあ…もう…。

推測すると、ナナミを選ぶとマヨイガに行っちゃうんじゃないか。那波を選ぶとこの現実世界で生きようとするんじゃないか。どうだ。



出入り禁止・鳥居

 

「出入り禁止って、どういうこと?」

「あーなんだっけ?」

「花梨ちゃんが私に教えてくれたのに…鳥居門は、異世界に通じる門なんだよ。だから神社は日常の中にぽっかり空いた異世界なのね。人の世と神の世をつなぐ門。だから、この門の向こうは…」

「人の世じゃない?」

――透矢、花梨、和泉

 

裏の鳥居門は、神の世界に通じている門らしい。ふむふむ。那波父はここをどうにかしたんだろうな。門を壊すか?それともこじ開けたのか?どっちだろうか。



風船ウサギ・母 パート2

 

透矢「でも、風船は帰ってこない…」

花梨「そうだね。でも、月でお餅をついてくれるよ。そうやって、いつまでも夢をつないでくれる。月にウサギがいるっていう物語を」

透矢「…それでも、今、目の前のウサギを失いたくなかったら?」
花梨「透矢…」
透矢「あ…ごめん」
わずかに、記憶の断片をつかんだような気がする。


透矢もまた「夢をつなぐ」ということを繰り返していたっけ。自分の夢を。

でもその夢をつなぐってことは、目の前の大事なものを失うことを意味する。それを失いたくないなら? という疑問。これは簡単、手放さなければいいのだ。

花梨「ううん。昔と同じだね。私はそれで泣きやんだけど、キミは泣き止まなかったんだよ。名前までつけてたし…キミには、ただの風船じゃなくて友達だったんだろうね」

透矢「風船に、名前…」

白い、
真白な風船、
真夏の日差しを受け白く輝くその姿に僕は、そう――
「ゆき」
ふわふわと空を舞う、あの雪のひとひらを、見ていた。

 

「思い出してきたじゃない…。そう、ゆきだよ。キミは雪って名前をつけて…だからずっと、泣きっぱなしだった」

「…」
なんでだろう。なんで、何念も前のことで泣いてるんだろう、僕は。

――花梨、透矢

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花梨「風船ウサギの物語」を聞いて、悲しい現実(=風船が飛ぶ)を幸せなものとして受け止めることができた。でも透矢は違うようだった。

彼は風船に"名前を付けていた"からこそ、泣き続けてしまう。花梨が手放した風船はただの風船で、透矢の風船は「友達」だった。友達が月にいくんだもの、そりゃ悲しいよね、もう会えなくてなってしまうのだから。


 

風船ウサギと私達は、住む世界が違う

 

「悲しいけどね、風船ウサギとは住む世界が違う。あの子たちは、月の生き物で、人の世界では生きていけないの

「でも、人の世界で生まれる」

「あの子たちは、子どもの夢で大きくなるんだよ。だから子どもの手から飛びだっていくんだって。それで、大人は魔法の力で後押しする。そうやって風船は月まで昇るのね」

「…それって、ちょっとひどい話だよ」

風船ウサギは常世世界の住人で、絶対にこちらの世界と交わることがない。だって風船ウサギの物語そのものが"理想郷"なのだから。理想に絶対的に到達できない現実世界では相容れない。

だから透矢と雪さん。この二人が一緒にいるためには、透矢が常世世界――観念の世界――へとシフトを上げるしかないんだ。

「ひどいね。透矢は、あんなに大切にしてたのに、雪はいなくなっちゃった。でも、あのままキミが雪を手放さなければどうなっていたかな?」

決まってる…いつか、しぼんで無くなるんだ。
――透矢、花梨

雪さんが祭りの後、消えてなくなってしまうのは、そういう「本質」だからだか…。もしかしたら祭りの後消える、っていうのは大して問題じゃないのかもしれない。

いつか消えるのが、たまたま祭りの後だった、そういうことなのかもしれない。風船ウサギはいつか、必ず消える。

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「あのとき、キミがたくさん夢をあげて手を離したから、今でも雪は月にいられるんだよ。ただ消えずに済んだ」

「うん…」

わかってる。この話しが意味するところも、漠然とはわかるんだ。でも、わかってたって、悲しいものは悲しい。

――花梨、透矢

 

 

 

夢をみた

夢を見た。
子どもの頃の夢。
母さんと、花梨と、僕と…三人でお買い物。僕は、もらった風船ウサギに、雪って名前をつけた。これからお別れだってわかってるのに、どうにもならなかった。

花梨の手からウサギが離れた。母さんが、僕の風船に手をかける。僕は、その手を離さなかった。ふわふわ――だけど、僕の体ごと風船は舞い上がっていく。

「透矢くん」
幼い花梨の手が伸びた。風船じゃなくて、僕に。涙を流しながら、必死に伸ばされた彼女の手に、僕は…

<手を握り返すことで応えた>
<手を振ることで答えた>

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この透矢の夢って、睡眠時の夢ではなくて、過去を書き換えるような夢なような気もする。

例えそうじゃなくても、この夢で花梨か雪かを選ぶことはとても重要。なぜなら花梨の手をとるということは、雪さんを見ないということであるから。

僕は、彼女に手を振り、応えた。キミの手を取れば、僕は、いつまでも夢という世界の中にいられただろうか? 母親の温もりってやつに包まれることができただろうか? 僕はまた、大切なものを手放した。
――透矢

この透矢の "キミの手を取れば僕はいつまでも夢という世界の中にいられただろうか?" という一言がすごすぎる!!

つまり彼の中では、花梨と一緒にいる世界、母親のいた世界は「夢」という認識になっているのか!!

現実か夢かを決めるのはあくまで私達次第。どう見て、どう観測するかで夢は現実に、現実は夢に移り変わっていく。

 

 

赤い目

「もし本当に山ノ民という民族…というより種族が、私達にないような人間離れした力を持つ存在だったら? おまえは思い当たるフシもあるんじゃないか?」
「…」
そうだ、だからこそ、ここまで問い詰めている。
例えば、僕らの使っている薬に拒絶反応を見せること。例えば、知能指数の高さが、恐らく僕らとは比べものにならないほど高いこと。身体能力が異常に高いこと―――。なによりあの…

あの、赤い目

――透矢、父

少年透矢と、父親の会話。

そこで雪さんと透矢達の違いを列挙するが…「赤い目」?…。待てまて雪さん以外にも、那波も赤い目を所有している人物…。

これはどういうことなんだろう。那波と雪さんの共通点?

・二人とも恐らくアヤカシと呼ばれる、人であって人でないもの。

これくらい?

那波も山ノ民というのなら、薬に拒絶反応を起こしたりしているんだろうか、分からない。


父親の机の引き出し

「雪の両親は殺されていた」
「…なんだって?」
「信じるも信じないも自由だが…雪は、お前が守れ」
「…うん」

「もし万が一、私に何かがあったら、この引き出しの中のものを読め。鍵はそうだな…
――父親、透矢

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結局、透矢はその引き出しをあけなかったわけなのだけれども、じゃあその中身はなんだってたんだ?

大事なのは、透矢が「引き出しを開けなかったこと」なのか?

 

 

 

自己防衛

美人で優しい専属のメイドさん。そんな都合のいいものが、こんな田舎町の、こんな家の…こんな僕なんかのために存在していること自体、おかしいんだ。

どこかのゲームで見たような設定。現実には、ありえない。そして、風船ウサギにつけた、雪という名前。

あの日、大切なもの――ゆき――を手放したという損失感が、僕にそうさせているんじゃないか? 記憶は無くしたけど、彼女は戻ってきてくれた。ずっと僕の側にいてくれる。

そんな自己防衛のために。
(透矢)


透矢の手によって、「雪さん」という存在を過去から、過去の記憶までをも創りだしたというのなら彼女の存在はすごく納得できる。

山ノ民だという雪、赤い目、薬に拒絶反応、高い知能指数、両親殺害、風船ウサギの物語を知っている、ナナミと交わした約束、ずっと見守って欲しい……

『あなたが願う事を忘れなければ、いつかあなたの頭を撫でてくれる、優しい人が現れますわ』

そういうの全て縫合した結果

背がすらりと高く、いつも透矢を気にかけて見守ってくれるメイドという雪さんが出来上がったと。


そんな世界いらない

これが夢じゃなくて、雪さんが夢だったなら、どうしてずっと寝かせておいてくれないんだ。

いらない……
雪さんのいない世界なんて、僕は欲しくないんだ。
――透矢


透矢にとって、生きることで最も大事なのが「雪さん」という存在がいるかいないか。だとするのなら、その雪さんがいない世界に残り続けよう、頑張ってみようと思うのはとてもむずかしい。

エウレカセブンAO21話_自分のいるべき世界はここじゃないという問いかけ(1005文字)
ただこの「こんな世界なんていらない」という言葉は、危険だよなあ……と思いつつ、でもしょうがないよねとも思うのだ。

高齢者の自殺「ゴールテープ問題」にどう対処すればいいのか?【自殺者1万人を救う戦い】を観て(3661文字) あんまり関係ないんだけど、思いついたことをメモしておく。

実存退廃者になってしまうのって、いくつかのルートを経てなってしまうんだけども、「全てを満たした故に実存が欠ける」という場合もあることに思い当たる。 

「これ以上ないくらい大きな課題を達成したから」実存を失ってしまうのではなく、「全てを満たした」からもう人生これでいいやって思えちゃう精神状態。

これは当然のような気もする。生涯においてやりたいことをやり尽くしたんだとすれば、もう生きている意味が希薄になってしまう。

死ぬまでにやりたい77とかあるじゃない。あれって全部叶えっこないから機能するんだよね。もしその全てを無してしまったら、もう死んでもいいと同義だもの。

ただ人間はそう簡単に無欲にはならない。死ぬまでにやりたかった77が生きている内に81、102と増えていくのが自然だと思う。でももし、そうならなかったら? ある種の無欲で、自分が欲しかったものを全て手に入れ、満たしたかった事全てを満たしたなら―――。

それは……。幸せなことのように見えるし、ちょっと不幸なようにも見える。

つーかこれあれだ。「Aletheia」そのものだと言ってもいい。生涯必ず叶えたい願いごとがある、その願いを叶える為の力を貰い、実際に叶えることができた。

でもそのあとは? 生涯で最も叶えたい願いを叶えてしまったら、次はどうすればいいんだろう? 今までその願いを叶えるために走ってきて頑張ってきたわけなのだけれども、じゃあ次は? その叶えた願いを維持でもすればいいのだろうか?

そしてこの問題は「凪」へと繋がる。維持をするってことは幸せそのものだけれども、それは凪である。落ち着き平穏な海。荒波などおこらない安定した水面。

こういう世界わりと好き。
ゴールテープ問題/Aletheia→凪


雪さんは自分がどういう存在であるかを知っているのかな

雪さんは透矢に語る。「常識なんて大衆の総意」「真実に到達できるのは選ばれた者だけ」と。そんなマヨイガのお話を。

『…はは、なんか、雪さんはどうしても僕に、その事を信じさせたいみたいだ』

『だって、今ここに雪がいるのは、その方のおかげでもあると思うんです』

『そうかな?』
『雪の両親が、お父様の研究と関係しているわけですから』

――雪、透矢

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ここの場面では、雪さんは「自分が幻のようだ」という意味で「だって今ここに雪がいるのは~」と言っているわけじゃない。

言っているわけじゃないが、もしかしたら雪さんが自分自身の存在にうすうす気づいている可能性もあるんじゃないかと、ふと思った。

 

 

観測世界と庄一

庄一「ともかく、人の感じているものは他人にはわからん。五感から入った情報って、最後には脳で処理されるだろう? 逆言うと脳で処理できないものは、なんだかわからない。たとえ、視界に入っている情報でも、脳が見落とせば……像としては反映されない。網膜は物質に反射した光っていうものを捉える器官だ。何かを見る器官じゃない」

f:id:bern-kaste:20140508144727j:plain 脳の処理の仕方によって、見えるものは個人個人によって変わってくる。そしてもし脳に処理できないものがあったとしたら「よくわからないもの」として出力されるのかもしれない。

幽霊や、アヤカシや妖怪など。あるいは全然見えない場合だってある。処理できなかったからだ。

「その人に見えるなら……きっと見える。だからマヨイガはあってもいいと思うんだ」

――庄一

「わりぃ……最初は、おまえの見方するつもりだったんだ。でも、話を聞いてると、こいつにとっちゃ、雪さんって真実だと思うんだわ。否定できねーよ……。だってある日、こいつがいなくなって、夢でしたって言われた時に、おまえなら納得できるか?」
――庄一


庄一はたまーに感情的になったり、透矢のことを全然考えてないときもあるけれども、やっぱりこういう「視点」を持った人間は好きだ。

"相手の立場になって考えてみる"

これが出来る人間は優しいよ。そして強い。

しかし……この「相手の立場になって考える」って一体どういうことなんだろうか。私達は他者と違う。絶対的に、本質的に、完全にマッチすることなんてありえない。

それでも相手の立場になって考えることが出来るのだとしたら(正確にいうなら相手の立場になって考えようとする気持ち)

他者読解能力のさきにある、「あいつはこう考えているんだろうな」という一種のテレパシーのような曖昧とした結果を取得し、それを自分の経験と知識によって、限りなく、思考を模倣すること。それが相手の立場になって考えるってことじゃないだろうか?

いいかな。目的もなく、自分ではない他人の生い立ち、人格を真剣にイメージする事は。それ自体は苦痛に近い作業だ。

すれ違った他人を観察し、それを元にどれだけ想像力を広げられるか。まっとうに自分がある人間なら、そんなものは五分と続かない。模倣というのは、本来それぐらい燃費が悪いコトなんだ。

――D.D.D. 迦遼海江

DDD 1 (講談社BOX)

DDD 1 (講談社BOX)

 

海江が言うように(海江の場合は赤の他人の模倣という意味だけれども)、他者の模倣はすごく疲れる。だって自分じゃないから、他人の思考の枠組みを生成し、それにそって思考を走らせるなんてことは滅茶苦茶難しいうえに、苦しい作業なんだよね。(DDDははやく3巻だしましょうね!)
だから「相手の立場になって考えろ」っていうのは、親しい間柄という条件付きのようなものでもある。

ただ「真心の想像力」を持つ人間にとって、それが親しい/親しくないにかからず、ほぼどんな人間にも相手の立場になって考えることが可能。こういう人中々いないけども。

なぜかというと、心のキャパが大きくなければいけない。他者という異物を、そして密度のある物体を自分に取り入れようとするのだから、それくらい無ければできない。うん……どう考えても、真心の想像力を持っている人はほんとうにやさしいんだなあ……と思う。


庄一のお願い

「だから……お願いだけするよ。花梨や俺と生きていこう。おまえの辛さ、少しはわかるつもりだよ。十分の一くらいは、肩代わりしてやれないか? 花梨じゃ……雪さんの代わりはできないか? こいつ、乱暴だけど、いい女だぜ」

――庄一

この庄一の言葉って、相当な覚悟がないと言い切れないもの。透矢が辛いときには、手を差し伸べるし、困っていたら肩を貸す。辛いなら相談にのる。だから俺たちと一緒に ここで 生きてくれないか。そういう言葉。

f:id:bern-kaste:20140508144903j:plain 利他的な行動はなぜこうも「美しい」と思ってしまうんだろうか。きっとそれはとてもむずかしいことだからだ。人は利己的に生きる動物だし、それは当然だし楽だ。だからこそ多くの人が利己的に生きている。利他的に生きている人はそれよりずっと少ない。

"自分"をもう1人つくるというのは、なにが必要なのかなーと思ったが、結局いつも結論は同じで「好き」という感情でしかありえないのだろう(Cf.自己拡大化)

花梨じゃ……雪さんの代わりはできないか?

花梨√では、花梨という存在がいたからこそ、透矢にとって雪さん(=見守ってくれる人)は必要なくなってしまった。

それは好きを絶対視する考え方だと、とても居心地が悪いんだけど、こういうのってもう仕方ないような気もする。運命の絶対性、あるいは初恋の唯一性とか、そういうのに拘れば拘るほど人生は破綻していく。

でもそれを大事にしたい気持ちもよくよく理解できるし、それゆえに、プライドをはって意地になってしまうこともある。花梨が雪さんの代わりになるんだとしても、花梨を選ばないことで雪さんが"本当に好きだ"という感情の証明になる。そういう気持ち。

「行っちゃ、駄目だよ…本当になんでもしてあげるから……駄目。キミが望むなら、えっちな事だって、なんだってしてあげるから」

「ひどいよ。お願いだから……そんなこと言わないで?」

「だって! だって……好きなの」

――花梨

花梨は、子どもみたいに、わんわんと泣きだしてしまった。この子は…たぶん、本当に僕の事を愛してくれている。
――透矢


恋に "だれでもよかった" という思考が流れると、そこで一気にその人への唯一性はぶち壊れる。愛を感じていたのはあなたという個人ではなく、あなたを通してイデアに手を突っ込んでいただけ。そんなことは聞きたくもないし、思いたくもない。

何度も繰り返しているけど、「運命」という言葉は、信じられるなら信じ切ったほうがいい。信じられる人間ならばそれは最高に幸福だからだ。逆に運命なんてないという思考は、この世に唯一なものなんてないってことを認めたのも同じで、"なんでもよかった" "代わりなんていくらでもある"という思考になってしまう。

これが良いか悪いかではなく、世界をきらきらさせたいなら、前者のほうがいいよねーと毎回思う。

その夜、僕は花梨を抱いた。
彼女の胸に顔をうずめ、唇を貪り、何度も、彼女の中に精を出した。
――透矢

雪さんではなく、花梨を選んだ一ヶ月後。

あのあと、どうしてもついて来るという花梨を連れて、夢の場所を探したけど、たどりつくことができなかった。

雪さんには……当然、会えない。
今度、こっそり1人で行ってみようとは思っているけど、なんとなく、もうあの場所にたどり着けないような気がした。
――透矢

おそらく透矢は、もう雪さんを希求していない。切実に求めてはいない。花梨が隣にいるから……。

つまり自分を 今 ここに錨のように繋いでくれるものがないと透矢は駄目なのか。そんな気がする。雪さんしかり、花梨しかり。

当然といえば当然かもしれない。だって透矢には記憶喪失という、世界にたいする寄辺になるものを失っているのだから。

今でも、彼女を求める心はある。もし現れたら……僕は、花梨を捨ててでも、雪さんを追いかけてしまうかもしれない。ただ、それと同時に、彼女はもうお現れないだろうという予感もあった。

彼女は確かに、僕の世界にだけ存在した幻だった。僕がここにいる異常、そういうことなんだと思う。

――透矢

うぬ。一応透矢はまだ雪さんを求めているのか。

私は雪さんを求める気持ちが、マヨイガの門を開く鍵だと思っている。もしこれに添って考えるなら、透矢の希求力が足りないと見てもいい。

あるいは、理想を追い求めること(=雪さんを希求)が、マヨイガを開くとは限らないのかもしれない。

 

 

 

ばいばい雪さん

「あ…」

風船ウサギだった。どこかの子どもが手放したのか、ふわふわと気持ち良さそうに、空を漂っている。

――透矢

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花梨を選んで、雪さんを手放した世界。その世界で、青空に漂う風船ウサギを透矢は見かける。

 

ねえ、雪さん――僕はこんなに幸せだから。
だから、どこかにいるあたなも、幸せでありますように。
今までありがとう。
そして、さようなら。

――透矢

窓枠に区切られた狭い世界――切り抜かれた青空を、見上げる。
僕に手を振るように、ふらふらと身を揺らしながら、風船ウサギは切り抜かれた世界の外へと姿を消していった。

――透矢

 

 

 

雪END

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「僕の所に戻ってきて……ゆき……」

――透矢

 

「おはようごうざいます」

――雪

 

「泣かないでください。透矢さんには雪がついていますから。ね?」

「うん…ぅ…」

いい子、いい子――
雪さんの手は、とても温かくて、優しくて…なのに、僕の涙はどうしても止まらなくて…

――雪、透矢

 

透矢は鍾乳洞で願い、マヨイガに導かれる。そこは白い花があたり一面を埋め尽されていた。雪さんがいた。

「っ…ごめん…ね…みっともなくて」
「いいえ。雪も、ずっと夢を見ていましたよ」
「え?」

「透矢さんと、お別れしなければいけない夢でしたね」

――雪、透矢

雪さんは、透矢の世界を観測できるのかー……と思ったけど、そういえば雪さんは透矢には見えないだけで、いつもすぐ側にいたんだっけな。


 

雪の花

 

「ユキノハナ」
「それが、この花の名前?」
「ええ。スノードロップとも言います」
「はは…雪さんの花だ」

なんだか、懐かしかった。幼い頃、この風景を誰かと見たっけ…

――雪、透矢

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春を告げる花。清める/その色から「死」を連想させるため市の象徴として嫌われることもある。また希望、慰め、恋の最初の眼差し、あなたの死を望む…などいろいろな意味を持っている花。

それがスノードロップ

恋のまなざし/希望/死→ たしかにここらへん「雪さん」って感じがする。

 *

というか透矢が小さいころ、このスノードロップが一面に咲く風景を、一体誰と見たんだろう?

透矢にポケットにあったスノードロップの写真。病院で花梨たちに見せるも、誰もピンときた様子がなかったことから、透矢の母親か? あるいはナナミちゃん?

 

透矢が、雪と母親をつなげる解釈

 

「透矢さんのお母様が、おっしゃったんだそうですよ。命は繋がっていくものだから。ママが死ぬのは新しい命のためだと…。いつかママみたいに頭を撫でてくれる人が現れるから…ママにあげるはずだった優しさを、他の方にわけてあげなさい、と」
――雪

 

「だって、あの頃の、透矢さんにとって、急に現れた雪は、お母様の言う新しい命だったんですもの」

「ああ…」

…雪さんのために死んだって、解釈したのか。

 

雪と透矢母になにかしらの繋がりがあるんじゃないのか?と前述したが、これか。小さいころの透矢は「母親が死んだからこそ、雪という少女が現れた」と解釈したという。

おそらくこれが、母親の部屋=雪さんの部屋を結びつけるものなんじゃないだろうか。

んー…でもこれを許すと、透矢の雪さん絡みの過去記憶は「本当にあったこと」となってしまうんだけど、どうするよ?(私は透矢の雪さん絡みの過去記憶は嘘で、創りだしたものだと観ている)

 

 

雪さんが消える理由

 

「ごめん…本当にごめん」

「いいんですよ。ただ、あのときからずっと夢を見ていたような気がします。本当に必要とされているのか、いつまでここにいていいのか。なんのためにいるのかと…ずっと」

「答えは?」

「わかりません。ただ…大きくなるにつれて、雪は住む世界が違うんだと、漠然と理解するようにはなりました」

 

「いつか、ふわっと、雪だけが別の世界に連れていかれるんじゃないかって…」

存在してはいけない者―――山ノ民。
そして『雪さんなんかいなくなっちゃえばいいのに』という言葉。お互い、そんなささいなことを、心のどこかで認めてしまったから、離ればなれになってしまったのかもしれない。

みんなに雪さんが見えなくなってしまったように、僕の世界から、雪さんは、いてはいけないものになってしまった。

――透矢、雪


透矢曰く、雪さんは自分自身に疑問を持ってしまったこと(いてはいけない存在だとか、ここにいる意味など)、そして透矢もまた「雪さんが消えてしまう存在」なんじゃないかってことを心に留めておいたせいで、

雪さんがいない世界、あるいは雪さんが見えない世界になってしまったんだと。
ふーむ。

僕の頭を撫でてくれる人、雪さん。
ママの代わりに現れた人。
僕たちの出会いは、あの日の僕の願いの結果なのかもしれない。だから、本当はありえないはずの雪さんが、僕の前に現れたのかもしれない。

ゆき――
夢が、魔法の力で、現実になった。

――透矢

やっぱり雪さんは透矢が願った結果として、生まれた存在―――と見るほうがいいのかしらん。というか私はそう見たい。

 

 

WORLD END

「じゃあ…僕と結婚しよう、雪さん。一生僕のものになって」
「…謹んでお受けします」
「誓いの口づけ…したいな」
「はい……あら?」

空から、白いものが、ふわり、ふわり。

 

「ぁ…」
「んぅ…」
唇を離す。僕たちのほほを、雫がつたい、こぼれ落ちる。
新しい命が生まれる。
新しい夢が

――雪、透矢

 世界の終わり。雪と雫。ふたりを祝福するように雪は降り積もる。ふわり、ふわりと。



<終>

 

水月 ~Portable~ ベスト版

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