猫箱ただひとつ

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「true tears」 9・10話__バイクは暖機ではない。あれは大地を駈ける馬であり脚力をエンハンスメントする道具なんだよ決して手を暖める為じゃないいぃぃいっ!!(10266文字)

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「バイク燃えちゃったね」


 

 

true tears9話 「なかなか飛べないね…」

 

 

 

バイクという暖機

 

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「バイク燃えちゃったね」
「ああ……どうしよう、まだローンがいっぱい残ってたんだぜ」

「なんか、綺麗」

「ママチャリでも買って、バイトして……っ、まいったなあ」

「ガソリンって引火しても爆発しないのね」

「当たり前だろ。そんなの映画の中だけだよ、燃えるだけ。……いっそドーカンとなると諦めがつくのになあ」

――――比呂美、乃絵の兄

 

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このことごとく会話が噛み合っていない感じ。コピペでよく男と女の車修理を彷彿とします。

バイクが燃えたことをとっても、比呂美は「燃えている」ことに注目し、乃絵のお兄ちゃんは、「お金」について思考しています。

うーむw

 

「大丈夫、怪我してないみたい」
「わたし――――」

「良かった」

……ごめん

――――比呂美、眞一郎

 

暖機となったバイク。その横にいる比呂美に、つかつかと歩いて行く眞一郎。

私は眞一郎怒っているのかなあ?……と思ってたんですけど、どうも違くて、ただ心配していたのねfmfm。比呂美が「雪が降っいない町」に行きたかったのは、自分は"ここ"にはいてはいけない――――そんな気持ちがあったのかもねと。

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眞一郎の「良かった」と心からの安堵は、「ここにいてもいいんだよ」ってことを強く強く言っている気がして、うるうるする。

 

 

 

  親友と口にするということ

 

「ありがとな」
「俺たち親友だろ」

――――眞一郎、三代吉

 

自分と相手の関係を「言葉」にするときってどんなときだろう。



1、自分と相手の感情の齟齬をなくそうとする時。(←一緒の気持ちを共有したい)

2、自分自身がその関係を強く維持したいとき(もしくはしなきゃと思う時)

3、不安なとき


もっとあるかもしれないけど、もう思いつかないですね。愛ちゃん、三代吉、眞一郎の関係をみると、どれも当てはまってそうな気はする……かな。

三代吉は眞一郎のことを「親友」だと思いたいのかなとそう思った。このままだと眞一郎を妬んだり、逆恨みのような感情に行き着いてしまうことへの危惧を感じるな……と。

「俺たち親友だろ――――」

なんだろ、すごいきりきりする言葉だよ……。

 

 

 

好きの証明

 

「乃絵が好きだってここに書いてくれたのに……」

――――乃絵


雪の中、必死に探す。「のえがすきだ」と地面に眞一郎と一緒にかいたあの文面を。

好きな人の自分に対する「好き」が移ろっていくのが手に取るように感じてしまった不安になってしまって。必死にひすたらに「証明」できるなにかを、好きというカタチを探している乃絵がもう……もうね……見ているだけで辛すぎるよ無理だよこれは……orz

手を真っ赤にしてまで雪を掻いて掻いて、指から流れ出したは涙を連想させます。

好きっていう感情は、どこにも無いっていうね……。いやなんだろ「カタチ」として残せないもの、好きを証明できるものって何も何一つとして無いから、、、きっつい……。

 

 

なかなか飛べないね

 

「――――さあ飛ぶぞ
雷轟丸はそう思いましたが、その時おなかがぐーっと鳴ります。今日はやめておくことにしました。明日おなかいっぱいエサを食べたあと、空を飛ぶことにしました」

「俺やっぱり飛べそうにない」

――――眞一郎

 

 

「雷轟丸、なかなか飛べないね」
「うん」
「雷轟丸はうすうす感じているんだよ。ほんとは十メートルの土手から飛んだってどこにも行けないこと、でも知らないふりをしている」

「どうして、雷轟丸はほんとのことを見ないの」
「きっと怖いんだよ」
「怖い?」

「自分がただのニワトリだって分かってしまうのが怖いんだ。雷轟丸は、ほんとは最初から自分は飛べないって知っているんだよ

「それ眞一郎のこと?」
……

「なにすんだよ痛いだろっ」
……ぃっ

 

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「眞一郎あなたは飛べるの

自分で分かってないだけ

でもそうね

あなたが飛ぶところはここじゃない」

「あのおい、乃絵 」

――――乃絵、眞一郎

 

乃絵がこの時、「あなたが飛ぶところはここじゃない」って言って、走り去ったのは


眞一郎から身を引いたんじゃなくて、眞一郎という人間の本質を全うさせようと思ったがゆえの行動なんじゃないだろうか?

石動乃絵という女の子は、「飛べる/飛べない」ことにすごく拘っていて、飛べる者を見つけたら全力で飛ばさせようとするそんな子です。

雷轟丸のときは、天空の食事をせっせと運び、いつか飛び立てる日まで見守っていたように見えます。そして眞一郎の場合は、「大丈夫!あなたなら飛べるわ!」となんども言い続けます。

眞一郎は自分に自信がないので、「飛べる」なんて最初は思っていないのですね。けれど、乃絵の言葉によって徐々に「俺って飛べるかもしれない」と自信がついてきます。

乃絵がもっとも大事にしたいことが「飛べる者を飛ばせる」ことだとしたら。そして、「自分の傍にいたら眞一郎が飛べなくなってしまう」と気づいてしまったら

彼女は、眞一郎のことが好きでも大好きでも、傍から離れちゃうんじゃないですかね……。眞一郎が比呂美のことを心配しているからって、もしかしたら眞一郎が比呂美のことを好きかもしれないと思っても、

そんな簡単に身を引くことができるのか? なんて思えません。せめて眞一郎の気持ちを聞いてからでもいいんじゃないのかなって思います。

「ねえ、眞一郎は私のこと本当に好きなの?」とか
「湯浅比呂美のことのほうが好きなんじゃないの?」って聞くと思いますし、なによりそうだったとしても、必死に縋り付いて、自分の好きを眞一郎にぶつけるような気がするんですよね……。

乃絵のこんな「あっさり」別れるのが、うまく理解できない。

けれど、「眞一郎の本質を全うさせる」。つまり好きな人のことを全力で想った結果だったら、この走り去った行動に、私は腑に落ちます。


――――ただ。

なぜ「自分の傍にいたら眞一郎が飛べなくなってしまう」と想ったのか? バイクが暖機になったあの日、比呂美を心から心配している眞一郎を見て?…………。(保留)

 

 

 

「……乃絵」

「よう。さっきは驚いたよ」

「お兄ちゃん停学一週間だって」
「当然。あんな事故を起こしたんだからな」
「ごめんなさい」
「お前が謝ることないよ」

「痛い?」
「湯浅比呂美の為に喧嘩したの?」
「ああ」

――――眞一郎、乃絵

 

 

 

お父さんの言葉

 

「比呂美は私達の子どもです。私達が責任を持って育てます」
「分かりました」

――――眞一郎の母、校長

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「お前、立派だったよ」

――――眞一郎の父

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眞一郎のお父さんすごい。妻が比呂美にしてきたことを全部聞いて、知った上で、詰りもせず、当然だとも思わず 


「お前、立派だったよ」

と肯定してあげられるその器のでかさに。

 

 

 

 

 

 

「あの話は嘘だったんですか」
「ごめんなさい。みっともないところ見せたわ」

「あの話は嘘だったんですか」
…………
……
「あなたには辛く当たったわ」

「元々、おばさんが私のこと好きじゃないのは知ってます」

「そう。人には相性ってものがあるから。でもそれとこれとは別。今までのことみんな忘れてっていうのは虫がよすぎるわよね」

――――比呂美、眞一郎の母

 

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眞一郎の母親が、「虫がよすぎるわよね」と言ったあと、まっすぐな瞳を向ける比呂美が気になった。

あの目はどういった意味……だったんだろう。
どういった意味を込めていたんだろうか。

そうです?
当たり前です?
いやなんか違う気がする。でもなんなのか分からない。

ただただ、彼女のことを、まっすぐ、なにも見落とさないように見つめていただけなのかもしれない。

でもそれってどういうことなんだろう。ふーむ

 

 

 

10話「全部ちゃんとするから」

 

 

 

 

 

缶コーヒーの放り投げ

 

「ほい」
「すいません」

 

――――4番、バイトのおじさん

缶コーヒーの放るのって、実際にやってみると投手・捕球係の技術がある程度無いと怪我をしてしまう。あるいは投げた缶が受け損なって、地面に落ちてしまうことも。投げた缶が頭にぶつかったら大惨事なることも。

一度やってみてから「これは危ない」と思い、それ以降缶の放り投げを私的に禁止にした。

 

 

 

乃絵が呟く「会いたい」

 

「どんどん埋もれていく……どんどん……どんどん……私に捧げてくれた眞一郎の好きが……
…会いたい、会いたいわ」
――――乃絵

 

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乃絵は「会いたい」と言う。乃絵は眞一郎に会いたいはずなのに、自分から会いに行こうとしない。

これはやっぱり、以前「あなたが飛ぶ所はここじゃない」と眞一郎に言ったことの線上にある気持ちだと思う。あのとき、「乃絵は眞一郎の本分(=飛ぶ)ことを全うさせたくて、彼から身を引いた」と私は言ったんだけど、これが合っているなら……乃絵のこの「会いたいけど会いに行かない」っていうのはしっくり来るような気がする。

眞一郎に会いたいけれど、眞一郎が飛ぶところはここ(=私と一緒)じゃない。乃絵はそう思っているように見える。

でもやっぱり疑問なのは、どうして乃絵は自分の所にいたら、眞一郎は「飛べない」と思ったんだろう?……。

眞一郎の心が、乃絵の気持ちと離れていったとしても、彼が「飛ぶ」こととはまた無関係のように思える。眞一郎が乃絵のことを好きじゃなくても、飛ぶこととリンクしていないように見える。

もしかして……繋がっているんだろうか……。 

いやそもそも、乃絵が言う「飛ぶ」「飛べない」の意味がいまいちまだ分からない。……。

 

 

俺に呪いをかけてくれないかな

 

「石動乃絵、俺に呪いかけてくれねーか
 誰も好きにならない呪い」
――――
(私、三代吉にひどいことをした。ほんとうにひどいこと)
(別れよう)
(やだ)
(え)
(俺ぜったいやだかんな)
――――
「誰にも心を動かされないクールな男って、かっこよくね
 俺そんな男になりたくて」

――――三代吉

 

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このあと乃絵は、三代吉の手をぎゅっと握る。そして思う、この子はなんてやさしい人間なんだと。知りもしない(たぶん眞一郎の友だちとも認識していない)三代吉に対して、まごころを持って彼の思いに応えてあげようとする行動に、胸がじーんとする。

乃絵の魅力ってやっぱりこの「他者との接し方」なんだよなあと実感する。人の心に踏み込むのがうまくて、その精一杯の行動が胸をぽかぽかにする。

 

 

 

放課後と乃絵

 

……っ!!(眞一郎を見つけて喜ぶ)
…………
………………

――――乃絵

 

 

放課後、帰宅途中の眞一郎を見つけて、喜びを顔いっぱいで表現する乃絵。彼に一歩二歩と走り寄っていくも、ふとなにかに気づいたみたく足を止めてしまう。表情が読めない、無機質な瞳で眞一郎をじっと見つめる乃絵。

ここを見ていると、乃絵はまだやっぱり眞一郎のことが好きで、でも彼女なりに「眞一郎に会えない理由」があるんだろうなって分かります。

手を伸ばしたいけど、その肩に触れることは、自分の大事な願いを壊してしまう……そんなふうに。

 

 

 

呪い

「もう一度、ちゃんと話さなきゃって思って」

「俺、もー大丈夫だよ!石動乃絵に誰も好きにならない呪いかけて貰ったんだっ。俺 愛子に笑っててもらいたいからさ」

愛子は笑顔が一番だからな、じゃ! 」
「……」

――――愛子、三代吉

 

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気持ちがどこまでもすれ違って、自分の気持ちと相手の気持ちに齟齬が生まれはじめて、その断絶が大きくなっていったとき、果たして、自分は当初の気持ちを未だに持ち続けていられるだろうか?

正直私は無理なような気がする。自分の気持ちと相手の気持ちの差異が理解すればするほどに、気持ちが冷めていってしまうんじゃないかなと思う。

でもさ、三代吉のすげーって思うところって、この「相手を未だに好きなのに」、自分の心にナイフを刺してまで執着を断ち切ろうとしているところが、もうね……もうなんだかとてもくる。ぐさぐさと。

 

 

 

 

汚いってこと

 

「汚い字……。」

――――比呂美

 

眞一郎の字を見て、汚いと言いつつも微笑む比呂美。愛おしげに彼が書いた文字に触れる様子は、「好きってうい気持ちは相手の醜さ汚い部分を許容できるようになるよね」とそう実感させてくれる。

普段なら、何だろうこの汚くも女々しい人間……と思ってしまうような人でも、一度好きっていう感情が生まれ始めると、その汚さを受け止められるようになる。しかしこれはいったいなんなんだろう。なんで「好き」っていう感情は、「嫌い」になる要素さえも包み込めてしまうんだろうか。

 

 

 

乃絵のもう一度

 

「赤い実やってたのか 」
「うん」

「どうか、した」
「いやちょっといろいろあって 」「どうして私のところにくるの 」

「え」 
「ううんなんでも」

……
「これから踊りの稽古なんだけどくるか 」
…… ……

「…今日は私のために踊ってくれる?! 」
「ああいいよ」

(おばあちゃんもう一度だけ、これが最後にするから)

――――眞一郎、乃絵 

 

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 乃絵は眞一郎に「あなたが飛ぶところはここじゃないわ」と言ったきり、一度も彼と会っていなかった。そして今日このとき、「もう一度だけ」と眞一郎の踊りの稽古を見に行った。

これは一体なんなんだろう? よく分からない。
+++
昔、乃絵はとても泣き虫だった。大好きなおばあちゃんが死ぬ間際、泣いて泣いて泣き散らしていた。そんな乃絵におばあちゃんはこう言う。

 乃絵の涙を持って行ってあげようねえ。 

そうそしたら、泣き虫乃絵は泣かないで済むよ。誰でもってわけじゃない。とってもとっても大切な人の涙だけ貰ってあげることができるんだ

 

そして乃絵は「涙を失くして」しまった。泣けなくなってしまった。だから彼女は大切な人の涙を探しているという。誰でもってわけじゃない、特別な人の涙を。

乃絵が言う特別というのは、「飛べる」人間ということになるのだろうか。それとも単純に好きな人が、選ばれた人なんだろうか。たぶん同一のもののように見える。飛べる者が好きな人であり、飛べる側の眞一郎、好きな人である眞一郎は、

 

石動乃絵にとって特別であり、大切な大切な人間。だからもし、彼女が誰かの涙を貰うとするなら、眞一郎以外にいないのではないか? 


なのに。なのにである。

乃絵は、眞一郎から身を引く。お別れを告げてしまう。その原因は、比呂美がバイクの事故を起こしたあの日だと思う。比呂美を心配した眞一郎が、なんの迷いもなく、自分ではない彼女でもなんでもない人にぎゅっと抱きしめたあの日。

あの日、乃絵は、眞一郎が比呂美のことを大事にしていると気づいてしまった。だから不安でたまらなくなった彼女は、校庭に書いた「のえがすきだ」という「眞一郎の好き」を必死になって探す。手がかじかんでも、痛みで訴えてこようとも、血が流れ落ちても、探し続ける。


それからだ。いきなり乃絵は眞一郎に

「あなたが飛ぶところはここじゃないわ」と言う。

乃絵の気持ちは正直に言ってよく分からない。いろいろな部分が飛びすぎていて、理解が追いつかない。でも、それでもいいから考えてみると、乃絵は「まごころの想像力」を持って、もしくは彼女の本質的な資質である「他人の心の読解力」の果てに、

眞一郎が飛べるのは、比呂美の傍だから

と見極めてしまったんじゃないだろうか。自分の隣ではなく、湯浅比呂美の傍が最も「眞一郎が飛べる」場所だということを理解してしまったんじゃないだろうか。

乃絵は度々「飛べる者」「飛べない者」という価値判断を他人に決め付ける。それは彼女にとって、とても大事な指標であるんだと思う。飛べる者を自分のせいで、飛べなくさせてしまうのは、乃絵にとってとても許せないことの1つのように私には見える。

それならば、乃絵が眞一郎の元から身を引いたことも、なんとなく納得がいくかなと思う。

そして、眞一郎のことがいまだに好きで好きたまらないからこそ、「もう一度だけ」と彼の傍に居続けたい。飛べる眞一郎の邪魔になるかもしれないけれど、それでも……と。そんな乙女心のような気がする。

それと、ここで「おばあちゃんもう一度だけ、これが最後にするから」と言葉は………………。。。。んー……後回し。

 




 乃絵の心情

 

こちらは……俺のっ…えっと
知ってる、石動乃絵ちゃん眞一郎のはじめての彼女

(はむはむはむ)

――――眞一郎、愛子

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(このあと、乃絵はもぐもぐしています)

愛ちゃんに「眞一郎の彼女なんだよね知っているよ」と言われているにも関わらず、乃絵はなんの反応も示さない。ただただおにぎりをはむはむと頬張り続けていた。

これはもう、乃絵にとって「彼氏彼女」という関係性に、なんの意味も無くなっているように見える。自分はもうお眞一郎の彼女でもなんでもない、もしくは、そういう「くくり」以上のものを大事にしようとしている、そんな気がする。

この「くくり」以上というのは、「飛べるもの」という価値観を重視しているっていうことです。

 

 

 

ありがとう?っていうべきなの?

「ありがとう、っていうべきかな」
「あなたの呪いのおかげで、三代吉が私を解放してくれたから」
「私、眞一郎が好きだった――――な、何言っているんだろうっ私!」

呪いなんてあるわけないわ、そんなものがあったら私がっ…

――――愛子、乃絵

 

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三代吉が求めた呪いは「誰も好きにならない呪い」だ。
そして乃絵は「そんなものがあったら私がっ」という。

私が? この先に続く言葉はなんだろう。
そんなものがあったら私がとっくに自分にかけている?……とか。そういう意味の言葉を吐き出しそうな気がする。

乃絵にとって、眞一郎は好きで好きで仕方ないけれど、それを願うことも叶えることもできない側にいるんだとしたら、

きっとその気持ちは、とっても辛いものなんだと思う。誰かを「好き」って気持ちが、届けられなかったり、伝えられなかったり、共有できなかったりするのは、悲しいことだし寂しいことなんだよね……。

(しかし、あいちゃんの「解放」という言葉は彼女の汚さを垣間見えてくる)

 

 


パチパチパチ

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パチパチパチパチパチッ

眞一郎の踊りを見て、乃絵は盛大に拍手する。場の空気を顧みず、ただただ精一杯の歓びを伝えるように。

なんというか、乃絵のひたむきな気持ちがまっすぐすぎて、辛い……。

 

 

さようなら

 

先に帰る、お兄ちゃんにも何も言ってないし

さよなら

――――乃絵

 
盛大な拍手をしたあと、乃絵はそそくさと帰ってしまう。このときに別れの言葉が、なんだかもう最後の言葉のようにも聞こえてくる……。。。


「さよなら」と言ったあと、乃絵は階段を降り、数秒立ち止まる。立ち止まるも、やっぱり玄関のほうに向かい帰ってしまう。このときに数瞬「逡巡」が、気になる。あの一瞬、乃絵はなにかを伝えようとしていたんじゃないか?と。

もしかしたら、今の自分のありのままの気持ちを、最後だからと、伝えようとしていたんじゃないかと、そんな気もしてくる。

 

 

もしかしてさ

 

「もしかして自分のせいと思っている? 」
「ぃ、いや…… 」
「ほんとその通りだよ。全部眞一郎のせいなんだから」

「荷物重いだろ持つよ」

「もう眞一郎の手は借りない。
 あたし眞一郎を卒業する」

――――愛子、眞一郎

 

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三代吉と確実に分かれてから、愛ちゃんが取った行動は「眞一郎から卒業する」。眞一郎に好意を迫るのでもなく、執着するのでもなく、それをキッパリスッパリ断ち切るよと。旅立つんだっていう意志がひしひしと伝わってきます。

愛ちゃんはいったいどんな懊悩の末に、この結末を選んだんだろうか。恋焦がれた相手に、自分の素直な好きを伝えられる絶好のチャンスだというのに。……いやでも一度、彼女は眞一郎に「好き」を拒絶されているのか…。

一度すべての関係をリセットして、自分を見つめなおしたいっていう気持ちなのかもしれない。

 

 

 

 素直な気持ちを伝えるのって

「私この家、出ることに決めたわ 」

「この家に来るときにも言われたの。他人の家で暮らすのが辛ければ、知り合いのアパートにって。でも私この家に来たかったから」

だったら今更引越さなくても、一人暮らしなんて物騒だし…… 」

+++

やっぱりよくないよ、一人暮らしなんて

「私、同じ家にいて、ぜんぜん眞一郎君のこと知らなかったのかもしれない」

「考えなおすことできないのか 」

「決めたの。そうするって」

――――比呂美、眞一郎

 
眞一郎はどうして比呂美を、一人暮らしさせたいのか、素直な気持ちを伝えられていない。一人暮らしが(世間的)にどうの、物騒だのそういった外的要因でしか、比呂美のことを引き止めていない。

この様子を見ていると、「自分のありのままの気持ちを曝け出すのって難しいよね…」と思わずにはいられない。だって、それはいつだって痛みを、リスクを伴うものだから。下手をすればそれは激痛と変わる行為を、やすやすと出来ないんだと思う。

自分の本当の素直な気持ち――――。嬉しい、悲しい、寂しい、怒っている……そういった自分の内蔵を曝け出すのってとても勇気がいるもの。

いつだって遠回りな言い回しや、曖昧模糊な表現で交わそうとしてしまって、ぜんぜんなにもまったく伝えられていないことに気づいて愕然とする。そんなふうに見える。

 

 

 

素直な気持ち

「小さいころ、お祭り行ったよね 」
「……ぇ」 
「私下駄なくしたの見て、眞一郎君も下駄片方だけで歩いて」

「覚えてないって、この間覚えて無いって行ってた 」

「忘れるわけないじゃない、あんな思い出」

「お祭りが楽しくて、はぐれて悲しくて寂しくて見つけてくれて一緒に片足だけで歩いてくれて嬉しくて――――だから私この家に来たの

「両親なくして、一人ぼっちで、でもここに来れば、きっと眞一郎が見つけてくれる。きっと明るい場所に戻っていけるって。でも今はもうそれは望んじゃいけないことだから…」

――――比呂美、俺 

 

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比呂美の気持ちを聞いているだけで、心が澄んでくる。そんな気がした。こんなにもありのままの自分を、自分の素直な気持ちを、大事な人に伝えられるって、とってもとっても綺麗なことのように見える。

私はいつだっていろいろなことを誤魔化して、回りくどくって、幾重にも膜をはった言葉でしか伝えることをしないから、余計に心に響きます。

「きっと眞一郎くんが見つけてくれる。きっと明るい場所に戻っていけるって」


これってもう「助けて」って言葉そのものだよ…。引っ越しトラックの中で人知れず泣いている比呂美が、もう…もう……さ、もうだめだよこんなのってないよ。

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声を殺して泣いているわけでも、顔をぐちゃぐちゃにして慟哭しているわけでもない。でも、でもさ、静かに零れ落ちていく涙が、ほんとうに胸に突き刺さる。こんなにも静かな波なのに、熱い感情が湧き出ているようにさえ見えてくる。 

 

僕の中の君はいつも泣いていて、君の涙を僕はぬぐいたいと思う。君の涙を拭いたいと。

 

――――おまえがあっ!!

 

俺、全部ちゃんとするから
全部……ちゃんと

 

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トラックの後を必死に追いかけてくる、眞一郎。雪道のなか自転車を漕いで、比呂美の後に迫っていく。けれど車輪が滑って、転んで、道路に身体は投げ出される。

それを見た比呂美が、車の荷台から降りて、眞一郎のもとへ走ってくる。

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もう涙でいっぱいでした。もう……なんだろうね、ほんと。ずっと泣いていますこれ。今この分を書いている時でさえ、うるうるしている始末。なんだろうおかしい、おかしい……。

走って行く比呂美が、私にはもうとても綺麗で美して輝いているように見えました。大事なものを、大切で、大好きな人を、両手でぎゅっと掴むために、その為に走って走って走り続ける姿に、涙が出ないわけがないんです。

今まで彼女は、自己欺瞞を繰り返して、嘘ばっかり自分について、でもそれでもやっと素直な気持ちを眞一郎に伝えて、だからこそこうもなりふりかまわず、恥も外聞もかなぐり捨てて、必死で無我夢中に――――両手で大事なものを掴めるはずなんですよ。

 

僕たちの両手は


目元に溜めた涙を、落としながら、走って行く彼女を見ていると、さっきトラックの中で泣いていた「涙」と、走っている今の「涙」の意味は全然違んだなと。悲しさや寂しさでいっぱいだった涙が、嬉しさと歓びの意味に変化していくってすごいなって。とんでもなくすごいなって素敵だなってそう思います。


 

 

乃絵とおばあちゃんの写真

 

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眞一郎が「全部ちゃんとするから」と比呂美に言ったあと、

乃絵は、真っ暗な部屋の中で、死んだおばあちゃんの写真を見ている場面に変わります。乃絵はいったい……なにを思っているんだろう。

おばあちゃんが持っていった涙について、考えているんだろうか。

 

 

言葉メモ

 

いろんなことがあって、いろいろなことを想って、一度全部から離れて自分の気持ち整理しようと思って

――――比呂美

 

 

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