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猫箱ただひとつ

物語追求blog。アニメ、マンガ、ギャルゲーを取り扱ってるよ

「運命が君の親を選ぶ 君の友人は君が選ぶ」_感想。運命とは一体なんなの? (11849文字)

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 運命が君の親を選ぶ 君の友人は君が選ぶ

評価:★★★(3.4)

 

人は――

運命を避けようとして選んだ道で運命と出逢うのです。




<!>占いADV

  プレイ時間   20時間
  面白くなってくる時間 ないかなあ……
  退屈しましたか?   していない
  おかずにどうか?   使えない
  お気に入りキャラ   御桜枢

+++


・シナリオ__藤木隻(西連寺十郎、祝十郎)
・原画__月音 , T-RAy
・音楽__I’ve , 藤田淳平 , Jumble Records

・声優__涼森ちさと(御桜 枢、御桜 揺) , 杏子御津(雪都 梨鈴) , shizuku(道明寺 えこ) , 美空なつひ(真白 未来) 吉野裕夏(高嶋 薫衣)

・歌手__Lily-an(TrueEDテーマ『運命の星図盤』) , Pixy Lab.(OPテーマ『Dual Force』) , 大島はるな(EDテーマ『運命の扉』)

・その他__松島詩史(ディレクション)

 

公式HP│ 運命が君の親を選ぶ 君の友人は君が選ぶ

 

 

 

 

『運命が君の親を選ぶ』のポイント

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・ 「運命」とはなにか? 「占い」とはなにかを? 模索します。

 

 

 

がぶがぶOP





OPはほんとうにいいなあ……。かっこいい。

 

 

 

 

運君キャラへの好感度




好き!御桜枢

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枢は存在が神秘的です。
こっちの世界に重きを置いていなく、反対にあっち側の、「星」の世界に価値を置いている人間。そんなミステリアスな彼女の雰囲気は、ただただ心地よいです。

 




ふつうです 

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とくになにか言うことはないですね……。

運命が君の親を選ぶ 君の友人は君が選ぶ
ホワイトソフト (2013-03-29)

 



<!>ここから本編に触れていきます。

 

 

 

 

 

 

 

運命へと抗う


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高嶋運命は、『a-YOU』という女の子に遭うため「新宿区塔ノ山町」にやってきた。“彼女を助けに来た”とそう嘯いて。


この折、この土地で、彼は「運命(fate)」に囚われてしまった人、既に囚われている人間を救っていった。


「陰」という観念側の世界に行き過ぎた人間を――。
「陽」という実体側の世界に囚われてしまった人間を――。

助けだす。
もっというなら、彼女たちの「陰と陽のバランス」を正しく元に戻した。


例えば雪都梨鈴。

 

 

 

雪都梨鈴

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■ 雪都梨鈴は、大事に大切に育ててきたラベンダー畑を、工事によってぐちゃぐちゃに壊されてしまう。近代化工事という大きな「運命」の流れに逆らえなかった。

しかし、彼女が大切にしていたラベンダー畑もとい、高嶋運命との思い出(観念)は彼女たちの手によって再生する。学校の花壇に、梨鈴の思い出は再び根を下ろすことが出来た。

そして、彼女の一つの”思い込み"も少し修正された。雪都梨鈴は自分がこの塔ノ山から絶対に外に出られないと____そう思っている。この土地以外では(=情報量が少ない場所)やっていけないと。

 

どこにも行くことはないんだろうな。
どこにも……もう……。
ここではない、どこか遠くの場所に。
もし行けたとしても。
その時はもう……
わたしは……。

(梨鈴)



これは事実でもある。彼女は、観ているものを言語に置き換えないで世界を観ている。世界をありのままに、全てを直視して、イメージによって観るタイプの人間なんだ。

だから、情報量が多い都会だと脳がパンクしショートしてしまう。熱が出て、体の調子が悪くなってしまう。これが雪都梨鈴が「ドコニモイケナイ」という思いの原因である。


しかし。

 


だからといって、絶対にどこにも行けないというわけじゃない。それはただの思い込みと言ってもいい。現に彼女は、運命とともに新宿の町に”自分"から繰り出した。

高嶋運命の存在によって。
高嶋運命という人間によって、
彼女は自分が外界に出ようと試みるようになる。


彼の存在は、「雪都梨鈴」の「実体」と「観念」のバランスが正しく調えたんだろう。『陽』と『陰』。そのバランスが。

 

 

 

真白未来

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■ 真白未来は、幻想(=観念)側に行き過ぎてしまったせいで、不幸になりつつあった。

見えるはずのない蝶々を見て、会話し、存在するとそう認識していた。更に「運命」という概念によって、自分の未来が”確実"に決まってしまうとそう思っていた。


幻想の世界、観念の世界、見えない世界、陰という世界に彼女は”行き過ぎ"ていた。「両義」の陰と陽のバランスが崩れかけていた。

そんな真白未来に、高嶋運命が介入する。


お前が観ていた蝶々はただの錯覚で、思い違いで、思い込みだったんだよ―――と。そうやって淡々と彼女の観ている世界を壊していく。崩していき、真白未来の「両義」を正常に戻した。


故に彼女は、「未来」を見据えられる。夢ではなく幻想ではなく、現実に確固として存在する未来を。

「秋休になったら遊びに行くよ、約束!」
「うん、楽しみにしてる! 一緒に海を見に行こう?」

あの二人はもう未来を奪い合うことはない。
夢か現実か分からない場所にいた二人は、今、共に一つの未来を見つめているのだから。

(未来、友人、運命)

 

 

 

 

 

道明寺えこ

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■ 道明寺えこもまた、近代化工事という大きな「運命」によって未来が阻まれた。

彼女が最も大切にしている神道という思想、それに付随する『森』と『神社』。その2つが壊されようとしていた。もし近代化工事が行われていた場合、えこが信じている『世界』はあっけなく壊れていただろう。

この木にも、あの石にも、みんな神様が宿っていると教えてくれたんだ。

万物にはすべて神様が宿る。わしやえこ、お前にもな

うちの身体にも、この森の木や石にもすべて神様が宿っている。この地に住む者、在る物はみんな、同じ神様を宿す家族なんだ。

[えこ]



―――彼女が信じていた、観念側の世界が壊れていただろうか。
実体側の世界を見つめすぎて、工事という否応のない破壊を見続けてしまって、やりきれなくなっていただろう。

それを高嶋運命が阻止する。

奇策を用い、秘策を弄し、近代化工事という「運命」の流れを変えた。道明寺えこの大事にしていた『世界』を守ることができたんだ。

 

 

御桜枢

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■ 御桜枢は、星の塔で暮らしている。

枢にとって星の塔とは、亡き母との思い出の場所であり、星たちとの団欒の場所でもあった。彼女にとってそこは、現実がどうでもよくなるくらいに居心地が良いところだったんだ

「私はただの『墓守り』として一生を終えてもいい」
「私は星と共にいられればいいのです」

「理事長がわざわざこの塔をブッ壊そうとしている理由は、先輩をここから引き離すためなんじゃないか?」

(枢、運命)


御桜枢という女の子は、観念側の世界、見えない世界、幻想の世界、陰の世界に”行き過ぎて"いた。


両義の陰と陽のバランスが崩れていた。
そのバランスを、高嶋運命は戻そうとする。

「ここで一生を終えるとか言ってたけど、それじゃ先輩まで人柱になるようなもんだ。そんなの、今どき流行らない!」

「フフッ、運命さんまで古いって言うんですね」

違う! そうじゃなくて、その……、何て言ったらいいんだ……。ああもう! 実際に見せてやるよ! オレと一緒に来てくれ!」

「一緒に? どちらへ?」
「『世界』だよ!運命は『世界』を観た時から始まるんだろ? だったらオレが観せてやるよ!

(運命、枢)

 

 

高嶋運命は枢を外に連れ出し、
山頂に連れていき、
夜に広がる人工の星々を――『世界』を――枢に見せつけた。


その後、彼女の部屋に行くことで「御桜枢」は、塔の外へ出て、”世界を歩く"ことを覚え始める。

 

 

よく分かんないけどさ、『世界』ってのは、歩いて行ける場所のことじゃないのかな?

行けるのなら行きたいよ、オレは。 そう思ってここに来たし、これからも好きなところに行く。
先輩だってそうなんだぜ?
オレたち、どこにでも行けるんだよ。
(運命)


実体の世界とは____見て、触れて、聞いて、歩ける場所。こうして、彼女の中の両義のバランスが整った。

 

 

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高嶋運命は、塔ノ山にやってきて、彼女たち4人をなんの因縁果か助けてしまう。

おそらく彼は無意識だろう。両義のバランスがどうだとか、そういうのは一切考えていないように見える。

ただ結果として彼が行ってきたのは____個人の内部にある陰と陽のバランスが崩れていたり、外部の力で崩れそうになったとき、咄嗟にどちらを傾けるかを判断し、行動していただけなんだろう

ただそれだけなんだと思う。

さらに言えば、高嶋運命が行ってきたことの構図は「太極の両義」のメタファーだ。

 

 

 

 

太極の両義

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『運命が君の親を選ぶ 君が君の友人を選ぶ』というこの作品は、この物語自体が「太極図」みたいになっている。

黒い魚と白い魚という2つの存在が、一対のモノとなっている太極図。どちらの魚にも白い点、黒い点が備わっている。「陰の中に陽」があり、「陽の中に陰」がある。

そんな概念が、「運命が君の親を選ぶ」でも内包されている。

 

 

まず1つ、4人の女の子のENDについて。

 

 

4人のヒロインのENDを観てみるとこうなっている。


雪都梨鈴→(陰)ラベンダーの思い出を守る。
真白未来→(陽)運命に囚われていた思い込みを正す。
道明寺えこ→(陰)神さまの存在を守る。
御桜枢→(陽) 現実世界と直視させる。



梨鈴とえこは、実体と言われる見える世界ではなく「見えない世界」を大事にする終わり方だったのに対し、

未来と枢は「見える世界」を大事にし、見えない世界(=観念)の執着を取り払ったものだった。

見えない世界とはすなわち「陰」であり、 見える世界とは「陽」である。

こんなふうにして、陰と陽の物語が交互に繰り返されていた。


もっとよく見ると、物語の流れはこうなっている。

 

梨鈴→未来→くのえ→えこ→枢→高嶋運命

 


これを「両義」の視点で見てみるとこうなるんじゃないか?

梨鈴(陰)→未来(陽)→くのえ(陽中の陰)→えこ(陰)→枢(陽)→高嶋運命(陰中の陽)


ヒロイン4人は「陰」か「陽」に分けられていた。ならば、”点"を意味するのは高嶋兄妹なんじゃないだろうか。

 

くのえと運命は兄妹で、男と女である。そんな二人は白い点と黒い点のぽっちの役割を果たしている。「陰」と「陽」の均衡が壊れたとき、その”点"の勢力が大きくなり再び均衡を保とうとする存在。

そう均衡を整える者、調整者―――二人はそういう存在になっていたんじゃないだろうか?(奇しくも)



くのえがいなければカリヨンは鳴ることはなかった。
カリヨンが鳴らなければ、星の塔が破壊されていた。
星の塔が破壊されていれば、御桜枢の「陰」のバランスが崩れていた。

更に高嶋運命が塔ノ山に来なければ、近代化工事は着々と進み、梨鈴・未来・えこの両義のバランスが一気に崩れ、苦渋の日常を送っていたに違いない。

―――運命に囚われいていたに違いない。
運命という”思い込み"によって、日常を送り続けていたかもしれない。

 

4つのヒロインのEpisodeと、高嶋兄妹のEpisodeを追ってみると、陰と陽が繰り返されていた。それはまるで、二つの魚がぐるぐると互いを追いかけあうようにして―――。

 



 

次に2つ目、

 

4人の女の子のENDの最後、高嶋運命は自身がいるべき場所、残りたい場所を選ぶ。

 

雪都梨鈴→ 塔ノ山で暮らす。
真白未来→ 江ノ島に戻る。
道明寺えこ→ 塔ノ山で暮らす。
御桜枢→ 塔ノ山を出る計画を立てる。(外界で暮らす)



高嶋運命が塔ノ山に残る選択をすることは、すなわち易、神道といった「観念側」の世界を観るという決断である。

反対に、塔ノ山を出る選択をすることは、現実といった「実体側」の世界を観るという決断なのだ。占いとか、そういった幻想・観念側に執着しない。

これも太極の両儀そのものだ。

 

 

3つ目。ラストにでてきたanimaなる永遠の女性の存在

 


高嶋運命は、誰とも付き合わず誰とも恋仲にならなかった場合、自身の内側にいる「もう1人」の自分と対面することになる


運命がまだ世界に産声をあげる前、彼は二人だったのだ。双子だったのだ。

しかし、自分とは違うもう1人は成熟する前に子宮から消えた。「バニシング・ツイン」という現象だそうだ。

双胎妊娠が分かった後、一方が流産となり母体に胚(胎児)が吸収されてしまうことを言うんだそうだ。


そんなもう1人の自分と、高嶋運命は塔ノ山の山頂で会談する。『陽中の陰』とよばれるその場所で。世界のバランスが崩れたとき、世界が生まれるその場所で、彼女と出逢う―――。


高嶋運命は、永遠の女性なるものと出会った。


『ボクに会うために、ここに来たんでしょ?』
『この世界とそっくりな向こう側には―――』
『キミとそっくりなキミがいると思わないかい?』

『キミの半分はボクで、ボクの半分はキミだ』
『分かれてしまったんだよ、ボクたちは―――』


「それが本当なら……」
「消えてしまった半分は、向こう側に……?」

『ボクが観てる世界では、キミが"消えた半分”だよ』
「裏返しの世界……そういうことか」

(anima、運命)

 

自身が男(陽)ならば、その内側に女(陰)が宿っていた。

 

 

 

 

 

そう、

こうなふうにして―――。


この物語は「太極の両義」という因子がそこら中に散らばっている。微視的から巨視的までどこまでも「太極の両義」が内包している。

 

 

 

私達は、もうはんぶんを見つけることで完成する

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高嶋運命は、どのルートを行っても、どのENDを見ても、最終的には「1つ」から「2つ」になっている。


高嶋運命は物語の終わり、必ず『女性』と一対になった。梨鈴、未来、えこ、枢―――彼女達と二つで一つとなる関係になった。

自分という一つと、相手という一つとが合わさり、二つになった。自分という「陽」と、相手という「陰」。男と女。そんな自分の”もうはんぶん"を、彼は見つけた。

 


これは『太極の両義』に似ている。


陽と陰は1つ1つと数えられるけど、あれは表と裏、光と闇というように表裏一体の関係。だから1つで2つ、2つで1つなんだ。


梨鈴、未来、えこ、枢、―――この4人と恋仲になることで、高嶋運命は”自分がここにいること"を気づけた。

自分がこの世界にいるっていうことを、自身が世界を観ることでfortuneが紡ぎだされていくことを識った。 

自分の”もうはんぶん"を見つけることで、自己が完成される。自身の存在がより輪郭を強くすることができるんだ。

 

なぜそう思うのか?

 


まず1つに、真白未来がタロットカード「THE WORLD」というカードについて件で、高嶋運命はこう言っている。

 

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このカードのデザインは、月桂樹で作られた輪の中に両性具有の人物が配置され―――。
+++
中央の両性具有は陰陽が一体となった『完全な存在』――。すなわち神と人が合体したものだ。

 

……と、ここまで聞いて思い浮かんだのは、らおしのジジィに聞いた『太極図』のことだ。

あのシンボルもまた、完全な存在(=太極)から陰と陽が(=両義)が分かれて、永遠に廻り続ける宇宙を表している。

(運命)



人として完全な存在に、完成された存在になるには、陰と陽の要素が”合わさる"ことが必要不可欠なんだろう。

自分が「陰陽」どちから1つの要素を最初から持っているとするならば、つまり陰と陽どちらかの属性に振り分けられているのだとしたら―――

”もうはんぶん"を見つけることで、自分という存在がより強固になるんじゃないか?

 

 

それを示唆する言葉は、次の道明寺えことの触れ合いにある。

えこが、笑顔で手を振っている。

その姿を見て、オレはすぐに、足りなかったパズルの1ピースが、見つかったことに気づいた。

「ああ……そうか……」
あの笑顔だ……。
彼女の笑顔の1ピースがはまって、オレの人生のパズルは完成するんだ。(運命)

 

 

高嶋運命は、道明寺えこという「女」の子を得ることで、自分の人生は完成するんだと思えるようになっている。

えこ以外の梨鈴・未来・枢でも、「これからずっと二人で歩む」という意志を何度も繰り返し呟いている。


自分ともう1人の存在、いうなれば『永遠の女性』を見つけることで人は人として完成するんじゃないだろうか。

片方の両義を探し、見つけることで、人として完成するんじゃないか?



この「人として」という言葉は、なんだか誤解されそうである。これは社会的にとか、道徳的に、倫理的に完成するという意味じゃない

立派だとか、成長だとかそういう意味すらも含まれていない。なんていうんだろ……これ以上の言葉が私には見つけられないのだけれど、「自己の存在を強くする」という言葉が適切なんじゃないだろうか。



「私」が「私」としてここにいるっていうこと―――。
こうして今『考えて』いるわたしが、わたしだと気がつくこと。
わたしは『わたし』という存在に気がつくということ。
わたしと、それ以外のモノを区別することを識るということ。


そういうことだ。

 

 

 

更にいえば、自分と”もうはんぶん"は外側にいるとは限らない、ううん内側にいるものなのかもしれない。

なぜなら、最後の章『五蘊~anima mundi~』では、高嶋運命は「自身の内側にいる女性」と出逢うからだ。この章では、彼は誰とも恋仲にならない未来でもある。

 

そんな物語の終わりで、高嶋運命は”もう1人の自分"と対面する。

 

『キミはボクを見つけることで―――』
『ようやく自分が一つのものだと気がついた』

『キミは今―――』
『本当に生まれたんだ―――』

(anima)

 

彼は彼の中にいる「anima」を観ることで、自分が自分であること、ここで生きていいんだということ、ここに”在る"ということを実感する。

(animaとは、男性の無意識人格の女性的な側面を元型とされる概念)

 

 

(ちえっ、行っちまったか……)
ま、それでもいいさ。あの子にはいつだって会える。

オレがここに在ることを忘れない限り。
何を観ていても―――。
何を想っていても―――。

 

「今日は暑くなりそうだな」 

山頂の芝生の丘の森のざわめきが戻ってきた。


「じゃあ、そろそろ……」
「オレたちも帰ろうか?」


この町で暮らしてゆく――。
この世界で生きてゆく――。
遠い風の声を聴きながら――。
(運命)

 

最後の風景には、高嶋運命ともう1人「女の子」らしき人影が映って幕を引く。


麗南学院の制服を着ていることから、梨鈴・未来・えこ・枢の誰かと思ってしまいがちだが、実際にはこれは違う。

おそらくあれは高嶋運命が『アニマ』だ。彼の”裏側"なのだから、「麗南学院の女の制服」を着ているのは当たり前なのだ。

そして、「オレたちも帰ろうか?」と問いかけているのは、彼の内側にいるanimaなる永遠なる女性との対話だろう。



高嶋運命は、animaと対面し、animaが去った後でも、animaを『観る』ことが可能になってしまったんじゃないだろうか。

彼女の存在をより実感でき、より体感でき、皮膚感覚として痛感できるようになってしまったんように思える。

真白未来が幻想の蝶々を見れたように、雪都梨鈴が「風」を観れるように―――高嶋運命は、永遠の女性を観れるようになってしまった。

 

現実の世界で。実体の世界で観念の世界を見る────それが最後の会話、最後の映像の示唆なんじゃないだろうか。

 

 

 

私達はもともと2人だった

 

 

高嶋運命は、元は双子だったから「anima」との邂逅することができた―――というわけじゃないんだとは思う。

私たちはみな、だれでも、自分の内側にいるもう1人の自分を抱え持っているんじゃない? そう思って仕方がない。

―――バニシング・ツイン (Vanishing Twins)という現象について、調べていたらこういう記述を発見した。

 

研究者の中には実はほとんどの妊娠のごく早期は多胎受精なのだが、妊娠が確認される頃に単胎になっているのではないか(バニシング・ツインを経た後に妊娠が判明しているだけなのではないか)と仮説を立てている者もいる(双生児 - Wikipedia

 

これはつまり、一般的にいわれる「バニシング・ツイン」の現象に遭遇していなくても、単胎として産まれてきたんだとしても、最初から、元から、わたしたちは”二人"だったんじゃないか? ということ。

私達は、だれでも、元は二人。けれども、それがいつの間にか「1つ」消えて「片方」が残ってしまった。片方だけの自分しか、自分を知らないから、人は自分を「1つ」だと勘違いしてしまいがちかもなと。

 

自分は自分で、自分の中にもう1人いるとか思わないもんね。


そんな1つな自分を、「2つ」だったと、「2つ」なんだと認識できる、皮膚感覚として体感できる―――それこそが「anima」「animus」との邂逅なんだろう。

自分の内側には、陰陽の「両義」がすでに在るという概念。それを観つけることで、「自己が完成」する―――それはすてきすぎる概念。

 

 

 

天と地を同じ世界に繋ぎ止め、
過去と未来を現在に結びつけるもの



AXIS(枢軸)』

 

 


実体と観念を、幻想と現実を、陰と陽を、過去と未来を、天と地をより強く結び付けられる――枢軸――になれるのかもしれない。

 

 

 

 

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『運命は君の親が選ぶ 君は君の友人を選ぶ』――――この世界に決められた運命なんてものはない。自分が世界を観測したとき、『運命』は様々なカタチに変わりゆき、やがてfortuneが紡ぎだされてゆく。

それを識るには、世界を観るには、自分が”在る"ということを実感しなければいけない。その為には、『永遠の女性』との邂逅を経なければいけない。

animaとの出会い、対面。この過程を踏まえるからこそ、私は私と認識し、私が”い"ることを識ることができるようになる。完全な存在へと昇華することが可能になる____そんな物語。

 

 

 

 

――――――――――――

―――――――

 

『それならキミは、向こう側でボクに会ったか?』
「え?」

『ボクに会うために、ここに来たんでしょ?』
『この世界とそっくりな向こう側には―――』
『キミとそっくりなキミがいると思わないかい?』

『キミの半分はボクで、ボクの半分はキミだ』
『分かれてしまったんだよ、ボクたちは―――』


「それが本当なら……」
「消えてしまった半分は、向こう側に……?」

『ボクが観てる世界では、キミが"消えた半分”だよ』
「裏返しの世界……そういうことか」


『そう、ここは陽中の陰―――』
『キミが観ている世界こそが"裏側”だ』



「ははっ……、そりゃいいや……」

(そんなことを言われても、オレにはここが表か裏かなんて関係ない。オレはここにいる。―――それだけだ)


『うん、それでいい』
『キミはちゃんと答えが出せたじゃないか
「答え?」



『ボクに会いたいというキミの願いは、自分に会いたいということだ』『そしてキミは、自分がここにいることを見つけた



『キミは生きている』
『この世界に確かに存在している』

『ボクのように消えてしまうことはない』
『安心していいよ』

『キミの世界はここだ―――』


(耳元で囁く風に、フッと甘い香りが混ざった。それは確かに遠い昔―――。この世界を観る前に感じた匂いだった)



「そうか、そっち側のオレは……」
「女の子だったんだな」

(陰と陽、光と闇、男と女―――。
考えてみれば、最初から分かってることだった)

 

 

『キミはボクを見つけることで―――』
『ようやく自分が一つのものだと気がついた』

『キミは今―――』
『本当に生まれたんだ―――』


永遠に流れ続ける風の中で。


体が在る―――。
感じているモノが在る―――。
想像するモノが在る―――。
決意するものが在る―――。
識るモノが在る―――。
それらが合わさって。
オレが在る―――。


ここに。曖昧で不確定なこの世界に。

 

なんてイイカゲンでメチャクチャなんだろう……。
ここには何も決まってない。でも、決まってないから面白い。ラプラスの魔のいる世界では運命さえも存在できない。それはただの一本道。全てが決まっているのなら、そこには『オレ』も無い。そう思っていた。


オレだけが残って、オレだけがいる意味が分からなかった。だったら最初から全ては無意味と思っていた。

 


だけど違った。

 


世界は観るたびにカタチを変える。
ここにいるオレがそれを観る。
そうして運命(fortune)が紡ぎだされてゆく。

 

fate chooses your relations. you choose your friends』

 

 

『今なら分かるよね?』

「分かるよ。オレには分かる……。
オレの中にいるあの子が。」

『ボクの中にいるキミが』

 

ここに導いて、気付かせてくれた。
永遠に女性的なるものが―――。
囁き続けてくれた。ずっと聴こえていた。あの子の―――。

(――声?)

 

(ちえっ、行っちまったか……)


ま、それでもいいさ。あの子にはいつだって会える。

オレがここに在ることを忘れない限り。
何を観ていても―――。
何を想っていても―――。

 

「今日は暑くなりそうだな」

 

山頂の芝生の丘の森のざわめきが戻ってきた。


「じゃあ、そろそろ……」
「オレたちも帰ろうか?」


この町で暮らしてゆく――。
この世界で生きてゆく――。
遠い風の声を聴きながら――。

 

 

 

―――――――――

―――――

 

 

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ということで、『運命が君の親を選ぶ 君の友人は君が選ぶ』終わりましたー!

しかしこれぶっちゃけ……なんなんでしょうね? プレイ中「面白い!」と素直に思えませんでしたよ。運命とはなにか? 枢軸とは? 言葉とは? 両義とは?―――。そういうことばかりで、ワクワクドキドキできなかったなあ……。

つまんないと言えば、やっぱりつまんないと首肯してしまうようなそんな物語。面白くないといえば、やっぱり面白くないと頷いてしまうそんな作品です。

…………しかし……ですね。良かったこともあります。



高嶋運命がanimaと遭遇するシーン、あそこをずーっとずーっと考えているとなんだか変な体験に一度落ちることがありました。

自分の内部にもう1人の自分がいる。裏返しの自分が、裏返しの世界がそこには存在する―――”それ"を見続けていると、ふと自分の意識が「内側」にあり、自分の体内を「内側」から観測する体験をしました。

「自分」という体という殻。そんな中に閉じ込められている自我―――内側から自分の体の輪郭線をなぞってみると、黒く硬い。押してもちょっとやそっとじゃ動かないそんな気配を感じます。

この感覚(?)は今まで味わったことがなかったので、いい塩梅で意識が”ずれ"た感じがして良かったです。


他にも「anima」「太極の両義」「運命」の概念を得ることができたのでそこまで評価は低くなかったりします。

…………ただ、この作品、他の人にお奨めする感じじゃないです……ええまったくもう。自分で探して探して探して、なにか大事なモノを見つけることができないと―――酷評されちゃうなあと。

 

 

 

 

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雪都梨鈴・未来・えこEP。プレイ中の雑感コーナー (11090文字)





御桜 枢。 感想TIPS (10313文字)

 

 

 

 

 

 

心に残った言葉


 

 

そういえば高嶋運命は、a-YOUを助ける為に塔ノ山町に来た。

『a-YOU』って名前を知りませんか?
オレ、そいつを助けるためにここに来たんで……

(運命)


a-YOUの日記に綴られたものが、実は御桜揺だったとしても、コメントの返信をしていたのが御桜枢だったとしても―――おそらく高嶋運命が『観』たa-YOUは、観念的なものだったんだろう。

だからこの場合、”a-YOUを助ける"とは自分を助けたいと同義になるはず。だってa-YOUとは自分の内側にいる存在なのだから。

 

+++

 

太極図には、白い部分の中に『黒い点』、黒い部分の中に『白い点』が描かれています。
これらはそれぞれ、『陽中の陰』『陰中の陽』という、重要な概念を現している。すなわち、陰陽どちらかの勢力が増して、一方を完全に飲み込んでしまった時―――。
その内部に存在する『点』が大きくなって、再び陰陽の均衡が保たれるという考え方です。
(理事長)

 

 

 

私達はこの宇宙を―――、世界を観ることで、ここに存在しています


逆に言えば、あなたがこの世界を観ていなければ、ホロスコープは全てが無効です。
+++

あなたの出生図は宇宙に一つ。あなたの観ている宇宙だけのものです。つまり―――。
あなたが『世界』を観測した時から、運命(ホロスコープ)は回り始めるのです。
(枢)

 

 

 

 

 

 

 

 
<参考>

運命が君の親を選ぶ 君の友人は君が選ぶ
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