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猫箱ただひとつ

物語追求blog。アニメ、マンガ、ギャルゲーを取り扱ってるよ

『明日の七海と逢うために』 感想レビュー__神さまのいなくなったこの世界で、前を向いて歩いていく (6455文字)

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明日の七海と逢うために

評価:★★★+(3.7)


「自分が選んだ道が、目的地にたどり着くかどうかわからない」 

 

はい、わかりません……少しも、わからない。 

 

「想像するしかないんだ。道を進んでいる自分を。そのときの自分がなにを思っているか」

 





<!> 願いと決断のADV

  プレイ時間   12時間
  面白くなってくる時間  2時間から
  おかずにどうか?   とても使える
  お気に入りキャラ   若宮 明日香

+++

原画 倉嶋丈康(まっぴーらっく.)
シナリオ 鏡遊
音楽 yan(鳥煮亭)
声優 風音(七海 美菜) , 夏野こおり(七海 真奈美)
歌手 橋本みゆき(OPテーマ「ever」)
その他 鏡遊(企画・原案) , 松根マサト(matsuNe)(デモムービー)

公式HP│ 明日の七海と逢うために

 

 

このゲームのポイント

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OP






OPの「扉」の演出がとっても良い感じです。ふにゃふにゃー

 



<!>ここから本編に触れていきます。

 

 

 

 

 

 

 

願いと決断の物語

 

 

 

 

願い―――

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真奈美のことは七海が1番わかってあげられると思う。

だから、七海と真奈美が一緒なら、今のメインテーマだって完成させられる。きっと、できる

真奈美は今、ピアノが弾けないけど……あの子に教えてもらって、七海が弾くんだ。

曲を完成させて―――あさひ先輩や3年生のみなさんとの最後の舞台を最高のものにしたい。

 

――――――

――

七海は祈った。森の奥深くで、泉の前でひたすらに祈った。

真奈美が右上を負傷し、ピアノ生命が絶たれるかもしれないと知ったとき、それが彼女に唯一出来る方法だと思っていた。


祈ることは間違いじゃない。でもそれじゃまだ足りない。祈りじゃ足りない。未来を、明日を、「願わ」なくちゃいけないんだ。


神さまは言った。

あなたの望みを聞かせて。自分で願わなければ叶えられない



漠然とした未来じゃなくて、明確に輪郭を強く保っている「明日」を願わなければいけない。

まっすぐな強い意志が無ければ、どれだけ願っても、なにを差し出しても叶わない

 

そしてそこに強い意志がないと、願いは成就されない。

 

りんは何度もこのことを言っている。代価を貰うのは、その意志を強くするための心理的手続きを踏むためのものだと私は思う。

だって無償で叶えられる願いになんて、人は価値を置かないでしょ? 自身の大事なものを差し出すから、叶えられる願いも意味を持つ。

りんという神さまが行なっていたのは、私たちの覚悟を試し、自分の足で願いを成就するための意志を強固にするためのお膳立てのように思える。

 

みんなで頑張っていきたいんだ。いっぱい迷惑かけた後で図々しいけど……お願いします!!

 

七海美奈は願う。明確な明日を、現状で最善の未来を、そこにきっとある幸せを望んで願った。


でももう神さまはいない。りんはこの世界から消失してしまった。

 

だから、願いを引き受けるのは、人に代行される。

わたしは……そのお願い、聞きましょう


神さまのいなくなったこの世界で、願いを引き受けるのは人でしかないのだろう。

もう奇跡は起こらない。でもそれでいいんだ。

奇跡が起こるから、人は前へと進むわけじゃない。
進もうと思うわけじゃない。

自分の気持ちを「願って」、明日を「選べ」ば、前を向いて走っていける―――

 

 

 

選ぶ―――

 

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「自分が選んだ道が、目的地にたどり着くかどうかわからない」

はい、わかりません……少しも、わからない。

「想像するしかないんだ。道を進んでいる自分を。そのときの自分がなにを思っているか」

転校してピアニストを目指している自分。このまま島で毎日を過ごす自分。

「決めないと前には進めないんだよ」

 
真奈美の物語では「選ぶ」ということが強く出ていた。

明日の君と逢うために』でも嫌というくらいに、全面にでていたテーマ。
りんは何度も修司たちに選択しを突きつけて、彼ら自身の意志で未来を選ばせてきた。

修司も彼女たちも『選ばない』なんて選択肢は一度たりとも取っていない。泉水小夜も「選ばない、なんて選択肢はないからな」と修司を焚きつけていた。

 

すぐ目の前に選択を突きつけられている。
なのに君は、『選ばない』という選択肢に向かっている。

でも、俺に逃げこんじゃダメだ。そしたら、君はなにも選べなくなるかもしれない。

 

自分の明日は、他の誰かが決めてはいけない。決めてもらったら、だんだんと自分の人生が希薄になっていく。

甘えて、甘えて甘えて。そうして自分の明日をないがしろにしていく。でもそうじゃない。

自分の明日は、自分の手で、意志で、選ぶべきなんだ。選択し決断すること。それが自分の足で前へと進むことになる。

走れなくなったら、後ばかり見てしまうから。過去に記憶に囚われてしまうから。だから、


だから、自分の明日は自分で決めるんだ。

 

わたしにとって大切なこと―――それはなにを置いてもピアノです

 

真奈美はピアノが大事で、修司も大事だから、「島」に残ると決めた。自分で自分の明日を選んだ。

 

明日の七海と逢うために』は、「願う」ことと「選ぶ」ことを二つの物語に宿した。七海と真奈美の物語に。

奇跡に頼らず、人の力で前へ進んでいく。過去に囚われずに生きていくには、この二つはとても大事なことなんだよと。

 

 

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明日の七海と逢うために』―――神さまのいないこの世界で、私たちは前を向いて走っていく。それには、願いと選ぶことがとても大事だよと教えてくれた物語。

 

 

―――――――――

―――

 

 

 

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はいー。ということで明日七海終わりです。

七海のことがそれほど好き、じゃない私でも楽しめました。なにより「明日君」での分岐テーマをここまで押し出してくれたのは、すごい嬉しかった。

FDってぼやけたものになる印象があったので、余計にです。ここまで輪郭を強く保ちつつ、うるうるさせてくれなんて!

七海ルートに入っても、明日香や舞、小夜の会話が面白かったのはもうなんというかなんでしょうね、あははは(震え声)

 

しかし、真奈美ちゃんの暴力性は人によってはイラっとする気がします。理由がなく殴られるのって、もうとんでもない理不尽ですからね!w

 

おーわり!

 

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明日の七海と逢うために_雑感コーナー

 

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七海が苗字で自分を呼ぶ理由

 

七海は、七海家を背負って立つ女だからだ

 

そうなのかー(ルーミア

 

 

 

 

真奈美ちゃんの暴力行為は酷い

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わたしに近づかないでください!


ピアノを演奏しているところを覗いただけで、警棒を殴られるってなんていうか酷すぎやしませんか? いやひどいよこれ!

ガンガン系(逢坂大河みたいな暴力性を秘めている子)は好きだとは言ったけれど、さすがにここまで理由がなく殴られるのは困惑以外の何者でもない。

 

 

小夜のやさしさ

 

あなたの存在がわたしを狂わせるんです!

(中略)

まったく、どんな状況だ、これは

なにを言ってる。おまえを助けたわけじゃないぞ

助けたんじゃなくて……ただ……

おまえを倒すのはわたしだからだ!

 

下校のさい、またしても真奈美ちゃんに殴られる、寸前で小夜がそれを阻止。この時に私は「え?! なにこんなにやさしい子だっけ?!」と素直に感動した。

後の、次に続く言葉に吹いた。いいなあこういうの。

 

 

 

男嫌いの原因

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助かった―――と思ったら、男の子は『俺も迷っているから!』とか偉そうにおしゃってくれまして。

それから、その人は道もわかってないくせに、散々わたしを引きずり回してくれたんですよ。

挙句の果てに、『友達と待ち合わせてたんだった!』って、一人でどこかに行っちゃったんですよ。

人を置き去りにしてどこか行っちゃうなんて、酷すぎますよね……

うん、間違いなく真奈美ちゃんが会った男の子は俺だよ。

いやあ、男嫌いの原因は意外なところにあったなあ。

 

真奈美ちゃんの男嫌いの原因ってこれだけなんだろうか。にしても軽すぎるような。発端として? にしても修司もいろいろと酷かったのである。

 

 

うまうまーっ!!

 

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「うまうまーっ!!」
「今日は叫びが出たか……」
オムレツを食べながら雄叫びを上げる明日香を、俺は暖かい目で見つめる。


いつもは「うまうま♪」と呟いている明日香が、この日は叫びだした。あまりにもテンションの差に吹いてしまった。

 

 

 

観光客?

 

でも島で観光客なんて、見たことないぞ

不思議と、島まで足を運ぶ人って少ないらしいわね
島を眺めるだけで満足するみたい。こっちの港とか、ヨットで海からとか

へえ、なんでだろうね。

神秘の島、なら直接見に行きたいと思うのが常だというのに、どうして眺めるだけで安心してしまうんだろうか。りんの力が働いている?

 

 

 

 

お代

 

本当はなにもお代をもらわずに情報をあげるのは、ダメなんだけど……


りんはいつも"お代”のことを話してくる。

前から思っていたんだけど、りんの等価交換は自分での決め事なんだろうか。それとも奇跡の行使として、必要不可欠なものなのだろうか。


前者なら、奇跡への代償で「お代」は発生しない。りんがそう"決め”ているからお代を貰っているだけということ。

私的には前者なような気もする。根拠なし。りんの人柄を見て(ああ殴られそうだ)

 

 

 

 

でも七海は間違ってたな。そういうのは、全然七海らしくなかった。

困ったときは、ちゃんと自分で解決しないとな!

 

 

 

 

りんと願いと修司

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よかった。今日会えて、本当によかった……

修司のまっすぐな瞳が、りんをみてくれるのが嬉しかった


この日、この時間、この場所でりんと修司はさよならをした。

りんの万感の思いが伝わってくるようで、本当によかった。りんはちゃんと自分で決断している。寂しさに負けず、ちゃんと修司との約束をして、それを守っている。

だから最後に「ばいばい」を言いに来た。神さまはやっぱり神さまなんだろう。人間に指し示す手段をちゃんと自分でも行なっている。「願い」と「選ぶ」。


そして、

りんもやっぱりも女の子なんだね、と。

 

 

諦めることの強さ

 

 

いやあ、才能の違いを感じたね。だから、七海は真奈美には勝てないと思って、すぐにやめちゃった。

……なにも、七海がやめなくてもよかったんじゃないか?

 

七海のこういう切り替えの早さが、彼女自身の強みになっているのはたぶん間違いない。

七海は妹のために、ピアノをやめたと言っていたけれど、それは一要因に過ぎない。悔しさや、嫉妬、羨望、そんな気持ちもあったように思える。

そして「あーこれは勝てないなぁ」って思ったらすぐ辞めてしまう。これはかなり大事なことだよね。

自分が勝てる場所で、部分で、「戦う」。わざわざ勝てない場所で、部分で戦う必要はない。

思うに、七海は妹の姿をみて
「自分にもどこかにそういった強みがあるんじゃないか?」
「誰かと張り合える武器(表現方法)があるんじゃないか?」と考えたんじゃないだろうか。

それがもしかしたら「演劇部」入部に繋がったのかもしれない。諦めることって難しいよね。今まで積み上げてきたものを、手放すのはそう簡単にできない。

今まで積み上げてきたもの―――それは記憶にもつながる。

 

 

 

 

 

気にするな

 

気にするな。おまえが笑顔の裏で考えてることのほうが、よっぽど失礼だ

 

思ったことをそのままに。言葉を躊躇いもなくいいはなつ。対人の倫理を超えての表現方法。

フィルターをかけず、ストレートに。ああもうほんと小夜は素敵すぎる。

 

 

職場恋愛

 

職場恋愛禁止なんて、建前に決まってるでしょ。

あたしだって、もし好きな男ができたら、ソッコーで付き合うわよ。相手が同じ店員でもね

 

うむあるある。

「おめでとう、七海、シュージ。まあ、仲良くやんなさい」


舞はひねくれてて、素直じゃなくて、陰険で、悪魔みたいな女の子だけど、こういうところはしっかりしている。ちゃんとおめでとうを言える人は良い人だ。

逆にいろいろなバイアスがかかり、照れとか無関心とかそういうので「おめでとう」の一言も言えない、もしくは言っても興味のない感情をのせてしまうのは良くないなと自戒。

おめでとうと思ったら、おめでとうと言おう。

 

 

 

 

 

 

才能は贈り物であり、呪い

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動かないんです。

ピアノは毎日毎日弾き続けないといけないんです。でないと、すぐにダメになっちゃう

 

小さい頃はこう思っていた「なんらかの特異な才能が欲しい」。そんなことを切に願っていた。「何者に」なりたいと本気でそう思っていた。

でもある時から気づき始める。「才能」を与えられた人は、それに人生をずっと束縛される。絵、音楽、プログラム―――ずっと研磨し練度を上げ走っていかなきゃなくなる。

本人の意志とは無関係でだ。だってそれは「先天的」なものなのだから。最初から最後まで道筋が示されているといってもいい。

だから。

だから。その道が何かで閉ざされてしまったとき、その人の生きる動力が枯渇する。消えてなくなってしまうんだ。

七海真奈美もそれと同じことが起きている、ように私には見える。彼女も小さいころからピアノを弾き続け、才能を認められ、人生を謳歌していた。

けれど、右手を負傷したことで、"決まっていた”道が消えてしまう。今まで「ピアノだけ」に生きていた彼女にこれほど残酷なことはない。

ピアノだけに依存してきた。その依存先がなくなった。ピアノから離れなくてはいけなくなったら、心に亀裂が入る。

才能があるっていうことは、必ずしもいい事ばかりじゃない。凡人凡俗平凡で普通な人間は、そういうものがないからフレキシブルに対応できる。そんな気さえしてくる。

 

 

 

解任

 

ああ、七海ちゃん? ずーっと無断欠席が続いているね

だから、部長代理はもう解任だよ。演出も降りてもらうことにしたから

しょうがないよ。リーダーがなんの断りもなく、休んでるんだもん


情や義理やそういうのを取っ払っている、あさひ先輩の決断はとても好感的だ。

甘えさせるでもなく、怒るでもなく、ただ淡々とでもやさしさを伴っての行動はなんだかいいよね。

 

 

 

 

なんでもしてあげる覚悟

 

 

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シュウ君ってば、あたしにはなにもさせてくれないよね……

あたしは、なんでもしてあげる覚悟があるのに!


シュウの右足を負傷したことで、明日香は「おぶっていこうか?」と提案した。

明日香のすごいところはここなんだよね。利害を求めず、益を望まず、打診さえもしないその心のあり方。

年齢を積み重ねるごとにそれは難しくなっていくように思える。そしてその感情が湧き出るときって、子どもとか大事な人とかの場合が多い。

明日香が持っているのは、愛情に近いなにかなんだとそう思う。愛情に利もなにもない。なんでもしてあげたいから、してあげるだけ。

こういうのを自然とできる人は本当に魅力的だよね。

 

 

 

―――終わり

 

 

 

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