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『明日の君と逢うために 』 夕霧瑠璃子 感想 (6418文字)

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評価:★★★★(4.0)

 

行ってみたくはありませんか。

なにもないけれど、自由な世界へ―――

  

 

いや、俺は『向こう』には行かないよ

大事なものは全部こっちにあるんだよ。俺は、そう思う

 

 

 

 

 

 

 

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ほんと舞はひどいw

 

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は? デートぉ?

あんな可愛くて胸の大きい子が、この薄着の時期に周りをうろうろしてたら手も出しちゃうわよねえ


冗談とわかりつつもほんとひどいw 冗談だよね? ガチで言っているのか言ってないのか本当に分かり難いやつだw

デートで舞い上がってるからって、バイト先に彼女を自慢しに来るか? けっこうイタいな、八代ちん

(七海)

なんだろう、胸にぐさぐさ刺さってくるぞ。

 

 

満腹になるのはとても普通

 

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誰だって、満腹になればそれ以上食べられないんです。だから、残すことは恥ずかしいことでもなんでもないですよ


自分が作った料理ならいざ知れず、他の人が作った料理は「残しちゃまずい!」なんて思いがち。

それは単純に食材がもったいないという理由もある。ただやはり大きな割合を占めるのは、「せっかく作ってくれたのに!」という情の念だろうか。

満腹になってさらに食べて食べる。それはとても身体に悪いものね。私も今度からは一言添えて、辞退してみよう。残すことは恥ずかしいことじゃない。

 

 

良き友だち

 

あんたが校内をうろついていたら、生徒たちがびびっちゃうでしょ

だからね勝手に入ってこないようにって説教していたところなのよ

まあ……里佳に説教されるようじゃ俺もおしまいだな
なにぃ……

俺は見てくれが怖いかもしれんが、中身のヤバさでは里佳には勝てない。

よし、そのケンカ買った!


この二人はほんと仲いいよなーなんて。いつも顔を合わせるたびにあーだこーだ言い合い、大人になってもじゃれあうようにケンカができる。とても素敵。

 

 

 

変わらないことは難しいんだよ

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「里佳は―――変わらないことを選んだんだ。それはそれで大したものだがな」

変わらない、ということは難しいことなのかもしれない。

 

変わらないことは難しい。ほんとうにとっても。変わることを選ぶより、変わらないことを選ぶほうがとてもとても難しい。

なぜなら、世界は壊れる方向だけを指し示しているから。時計の針は一秒ごとに身の回りを推し進めていく。それに抗うには、抵抗するにはその分の「エネルギー」が必要になる。

自分の力で、意志で、エネルギーを送り続けなきゃいけない。じゃないと望んでいた停滞した心は、すぐ流されていってしまうから。

 

 

 

素直じゃない

 

勉強を教わって、夕食までいただいてしまって……すいません

ああ、気にしなくていい。一人分くらい増えても、別に手間でもなんでもないからさ

つーか、今日みたいに直輝先生が忙しい日はうちに飯食いに来たらどうだ?

そ、そこまで甘えるわけにはいきません!

 

シュウからすると、迷惑でもなんでもないのだから甘えてきてもいいのに。

そして辞退した瑠璃ちゃんは、あとで「なんてわたしもったいないことをしちゃったんでしょうか><」と思っていそうでとても可愛い。

 

 

忘れるっていうこと

 

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「わたしのあだ名以外のこと、なにか覚えていますか?」

「…………」

「……ごめん」

「ふふ。だと思いました。いいんですよ、もうお7年も前のことですからね」

 

若宮明日香は自分の記憶を忘れてしまった。なくしてしまった。そのために自分が分からなく、自分を取り巻いていた人たちのことも分からない状況になった。

そして、夕霧瑠璃子。彼女は八代修司から「忘れられて」いた。明日香とは反対のケースのように思える。

自分が自分のことを忘れるんじゃなくて、
相手が自分のことを忘れるということ。


記憶を忘れる。忘れていたことにさえ気付かない。それが忘れる。

 

わたしを思い出してくれただけで―――充分です

 

 

止まった時間

 

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でも、わたしの時間は―――この数年間止まっていたようなものですから。

ぼーっとしてますからね、わたし。いつまでも大人になれないんです。

(だから、幼い頃に抱いた気持ちを今も持ち続けていると)

シュウ先輩が7年間、明日香さんを想っていたみたいに。

わたしもまた、7年あなたを思い続けました。この気持ちを知ってもらうだけじゃなくて――

 

シュウがあーちゃんを失って、過去を止まらせたように。
リコはシュウを失って、過去を止まらせてしまったんだろうか。


リコはシュウに出逢って変わった。引きこもりがちで内気だったのが、ちょっぴりアグレッシブになった。お菓子を作ったり、外界に思いを馳せるようになった。

自分の世界はこの家だけじゃなくて、家族だけじゃなくて、もっともっと広いんだと知ったんだ。それはきっと強烈な原体験。

狭かった世界が、色あせた世界が、色とりどりな世界に移り変わった瞬間だったんだと思う。強烈で苛烈で激烈な一回性。

それをシュウがリコにもたらした。私ならきっとそんな人を気にかけてやまなくなる。いつしかそれは好きの感情さえ芽生えるかもしれない。



人は人を7年間も想い続けられるだろうか? 流れ行く世界で、目まぐるしく変わる日常の中で、変わることのない思いを持ち続けていられるだろうか。

それはきっと難しい。変わらないものなんてない、けれど変わらないようにすることは出来る。変わることを遅らせることはできる。

大切なぬいぐるみに綻びがでたら修繕するように、汚れがついたら手入れをするように、好きという気持ちを磨き続けてきたんじゃないだろうか、リコという女の子は。


自分の世界を広げてくれた人に、あの時の気持ちを、そして今も色あせていなかった「大好き」を言うために。そしてはじめて、彼女の止まった時間が動き始める。

長かった初恋が終わって、終わることのない好きを手に入れた。


―――

シュウのあーちゃんに対する想いは、失った悲しみによるものが大きい。すべてを失ったから、すべてを取り戻すために。そんな想いが溢れている。

対して、リコの想いは「好き」の一点張りな気がする。シュウを見ると暗さを感じてしまうが、リコは明るさを持っているように見えるのはきっとのそのせいだろうか。

 

 

 

 

大人になると

大人になると―――じゃなくて、大人になるまでに色々とあったのよ


そうなんだよね。大人になったからって、一瞬でその地点へ到達したわけじゃない、それなりの長い道のりがあって里佳姉がいる。

 

他人のことばかり考えてるあいつが、ちょっと鬱陶しいの

 

夕霧家の娘はみんな短命で―――瑠璃子も例外じゃない

あるとき高熱を発し、身体のあちこちに激痛を覚え、多臓器不全を起こして……急速に死に至る。原因はまったく不明だ。

 

 

青い鳥

 

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行ってみたくはありませんか。なにもないけれど、自由な世界へ―――

いや、俺は『向こう』には行かないよ

大事なものは全部こっちにあるんだよ。俺は、そう思う


別の遠いどこかには、大事なものがある。そう考えがちだけど、実際はどこもかしこも似たような場所ばかりだと思う。

新天地が、天国みたいな場所とは限らない。けれど行った先でほんとうに「大事な」何かが見つかる場合がある。じつは大事なものは自分の周囲にあった―――そう青い鳥のように。

平々凡々と暮らしていれば、そんなことに気付かない。なぜなら青い鳥を見つけるのにも、ある種の経験が必要だからだ。八代修司は大事な人を失った。

きっとそれは、彼が”ここ"に大事なものがいっぱいあると気づけるようになった契機だったんだと思う。

 

 

 

 

りんの奇跡

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瑠璃子の身体を治すためには、人間の命を救うためには、それに必要なのも―――命。

まっすぐな強い意志が無ければ、どれだけ願っても、なにを差し出しても叶わない。

もし叶わなくても、『叶わない』という結果を出すためには―――やっぱり命が必要になる


いつだってりんは選択の分岐点なる存在。泉水小夜では彼女自身が奇跡を願い、今度はシュウが奇跡を欲する。瑠璃子に生きてほしいがために。

みんな、みんな奇跡を求めている。なぜか? それは”いま"ここで『明日』が失われてしまうからだ。幸せで希望に満ちていて自分と彼女が笑っている明日が潰えてしまうからだ。

だから、みんな『明日』を求める。奇跡を欲する。それも自分だけの明日じゃない、ふたりの明日じゃないとダメなんだ。だからリコはシュウの願望を止める。

シュウが命を代償にリコを助けても、それは一人だけの明日にしかならないから。

 

 

 

 

りんと一人ぼっち

 

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りん

どうして、あなたも雨に濡れているんですか?

りんはおまえたちとは違う存在

(独り言のようにいって、りんは俺とリコに深い眼差しを注いできた)

だけど、時々、神であることを忘れたくなる……それだけのこと


りんはずっと一人ぼっちだったんだ。島にはもう神とよべるきべ存在は自分しかいない。人間との交流は、特質上ままならない。

りんが”はじめ"から、一人ぼっちだったらこんな気持ちを抱かなかったと思う。世界でたった一人の神様、たった1つの個体。言葉を介すべき存在はいないし、交流できるものもいない。

自分だけで世界をみて、自分だけで世界を作り上げる。そんな単一神だったら、寂しいだなんていう感情は起こらなかっただろう。

りんは自我を持っている。自我を持つためには必ず「他者」が絶対不可欠だ。他者がいるから、自分を認識できる。自己を省みることができる。自己内省こそ自我を育てるたった1つの道筋。

りんは自我を持っている。だから、自分以外誰もいなくなった人の世界で、孤独を感じてるんだと思う。

 

 

 

泣いちゃダメなんだ

 

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「ウソだろ、だって瑠璃ちゃん、あんなに元気だったじゃないか。一緒に勉強して、試験だって受けてたしっ」

「泣いちゃダメだよ、ナナちゃん。瑠璃ちゃんは―――治らないって決まったわけじゃない」

「だから、泣いちゃダメなんだ。それは、諦めたってことになるんだよ、ナナちゃん」

 

望んだ明日を手に入れるには、諦めちゃだめなんだ。それはシュウと泉水小夜が示してくれている。二人とも泣いてなんかないし、諦めてだっていなかった。

いつだって、望むべきもののためにひたすら走っていた。

 

 

 

明日への鍵

 

 

りんたちの世界への扉を開いた者がいたの

この世界には、いくつか扉があって―――それらの扉は、ほとんど人が開いたものなの

命を懸け、すべてを懸けて女の子は扉を開き、りんに願った……

市にゆこうとしている、恋人の命を救ってくれって

 

ああそうか。そうだったんだ。『明日』への扉の鍵はいつもりんが提示してくれたんだ。「絶対の覚悟」と「絶対の意志」が必要だということを、毎度彼女は問うてきた。

 

だから想いの強さは大丈夫かと問い、大事なものを支払う覚悟はあるのかと聞いてきた。

望む。誰かとの明日のために、走れ―――とそう言ってきているんだと思う。

 

 

一人の未来はいらない

 

わたしは、悲しみのない未来がほしい

俺は、リコに生きてほしいと思った。でも、それだけじゃダメだってわかったんだ。

リコが止めてくれたから、俺はおまえを一人にせずに済んだ。
だけど、リコが一人で先にいくなんて……リコのいない未来なんて……俺は、いらない

わたしがほしいのは、先輩と一緒にいる『今』から繋がっている未来なんです

すべての過去も未来も、そう―――全部受け止めて……

 

 

 

名前を贈る

 

リコ―――漢字では『理子』。

夕霧瑠璃子は、通りすがりのひねくれたガキに『リコ』と呼ばれ―――
学園を卒業してすぐに、苗字が八代に変わって―――

 

人は大事なものに形を与えていく生き物。見えるものに価値を付随させて、より価値のあるものにしていこうとする。それはとっても素敵なことなんだと思う。

名前はやっぱり大事だなって。

 

 

代償

 

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「俺は、元々丈夫にできてるんだよ」

りんと別れ、現実に帰還してから―――

俺の身体にも夕霧家の病気が宿っていることが、判明した。それはなんとなく納得できる話だった。

病気を分け合うことで、瑠璃子の命が―――いくらか延びたということだろう。

この身体がどこまでもつのか、わからない。
だけど、精一杯、ぎりぎりまで頑張ってみようと思う。
大切な女の子と、生まれた新しい命。

守るべきものが二つもあるんだ。
もう、奇跡は二度と起こらない。
だから自分の力で、確かな意志を持って未来を守っていこう。


幸せは、今ここにあるのだから―――

 

命の半分こ。「僕の愛も、君の罰も、すべて分け合うんだ」 そんな言葉を思い出した。八代修司の全生命が60年くらいだとしたら、その半分30年分くらいを瑠璃子にあげたということなんだろうか。

おそらく50手前には二人とも死ぬ。けれど、一緒に死ねるんだとしたらそれはとても素敵なことかもしれない。
 

夕霧家に生まれた女の子でありながら、リコはあの病気に冒されていないのだ。りんが消えたこと、『向こう』との繋がりが消えたことと関係があるのか――それはわからない。

 

 

代償2

 

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俺が望んでいるのは、リコとの未来だけだ。でも……まず必要なのは、リコの未来だ。この子が生きていないければ、願いもなにもない

だけど、もちろん代償は必要。もしかすると、死ぬより辛いかもしれない……

二人が、命よりも大事に思っているもの。

修司と瑠璃子、二人で作ってきた思い出―――ううん、過去と今を全部


修司とリコ、二人は二人の思い出を引き換えにして、リコ本人を延命させる。命を救うには命一個分が必要だけれど、記憶だった場合「二人分の記憶」が必要。

それともりんは「大事に思っているもの」を代償として選ぶんだろうか。


命よりも大事な記憶を代償として差し出したのは、きっとシュウもリコもお互いにまた会えるという自信があったように思える。じゃないと、ほんとうにほんとうに大事な二人の思い出なんて差し出せるわけがない。

 

もう一度、会いましょう。そして……

またそこから……始めよう。また、おまえの名前を呼ぶよ。

(瑠璃子、修司)

 

そうして、未来に約束する。リコは夕霧家の呪いを取り去り、普通の女の子になった。

泉水小夜の時を思い出す。二人ともに共通しているのが、「待つ」か「待たないか」なんじゃないだろうか。

前者だと問題が解決され、すぐに幸せな日常を送ることができる。しかし後者の選択は、幸せな明日を得るために、待たなければいけない。

小夜が向こう側から待ったように。リコを街道で見つけたように。

しかも、両者とも「本来ありえない」ことが起きている。小夜の場合、小夜と修司が二人の記憶を有していること。リコの場合は、二人とも記憶が欠損したにも関わらず、「あだ名」を思い出したこと。

 

・「待つ」「待たない」
・本来ありえないことが起こる


2つ目の、ありえないことが起こるには、また別の代償をどこかで払っているんだろうか。いやけど若宮明日香も、記憶を失っているはずなのに、シュウのことを朧気ながらも思い出しているし。

つまりこれは、りんの能力も絶対じゃないと見るべき? それとも明日への約束は神様の力さえも逆行するということなんだろうか。
 

 

「なにか、別のあだ名が欲しいんですよね……って初対面の人になにを話してるんでしょう」

「いや、なんか面白いね。あだ名か……」

「なにか思いつきますか?」


少女は、ふわふわの髪を揺らして、明るい笑顔を見せて―――突然、一つの名前が浮かぶ。

 

「そうだなあ、たとえば―――」

 

 

 

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