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猫箱ただひとつ

物語追求blog。アニメ、マンガ、ギャルゲーを取り扱ってるよ

『明日の君と逢うために』 泉水小夜 感想 (9793文字)

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★★★★(4.1)

  

こんなとこに一人で寂しくないか?

 

別に
騒がしい教室よりはずっとマシだ 

わたしが寂しいかどうか、他人にわかるはずがないだろ

 

 

 

 

 

 

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過去にケリをつけるためには、過去より大事なものを見つければいいんだ

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泉水小夜はどうしても取り戻したかった。お姉ちゃんを、お姉ちゃんとの明日を取り戻したかった。

八代修司も7年前のあの日をいつか返してほしいと、切に願っていた。二人は似ている。どうしよもなく似ている。

大事だった人を失った痛みを、長い時間を待ち続けた苦しみを、ぐじぐじぐじと心を抉る後悔を持ち合わせているのだから。

そんなよく似た悲しみを背負った小夜を見て、修司はおそらく惹かれてしまったんだ。本来なら明日香のそばにいて、あーちゃんを取り戻す方法を探してみるべきなんだ彼は。


だってこの島に戻ってきたのは、「すべてを取り戻すため」だけに修司はやってきた。あーちゃんとの明日を取り戻すためだけに。

でも自分と同じく過去だけを見つめ続けている小夜を見て、小夜の中に自分を見つけてしまったんじゃないだろうか。止まった時間、止まった時間軸、壊れた懐中時計は秒針を刻まない。

今を生きていても、"明日”に向かって生きているわけじゃない。それはとても不健全で、とても悲しいことなんだとそんなふうに思うよ。

修司が小夜を見つけてしまえば、あとは二人は結ばれてしまうだけだったんだろう。雨の日の異質な教室で彼らは恋人になる。それは修司にとって過去から断ち切るための、契機。

あーちゃんという過去を忘れたんじゃない。ただ小夜より価値が低くなってしまったんだ。"今”ここにいる小夜と、それ以外の事柄はすべて価値を下げてしまった。

小夜という同じ傷を持って、同じ苦しみを味わってきて、同じ後悔をしてきた彼女と二人で一緒に歩く、歩み続ける。それが修司の一番の価値になった。

だから修司は、あの日から失われた7年間を気にしなくなった。
けれど小夜は違った。彼女は修司が好き。でも未だにお姉さんのことを思い出してしまう。

ここまでならよくあることだと思う。だって苦しい記憶なんてみんな持ち合わせている。そういうのは時間がいつだって押しやってくれてた。ラベルを張って物置にしまうように。

でも、ほんとうに、ほんとうに辛い過去はその「過去」自体と対峙しなければケリがつけられないんだろう。だから小夜は願う。りんに願った。

待っているだけじゃダメだったんだ。

こっちから会いにいけば―――それでよかったんだ

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お姉ちゃんに大好きだよって、あの日言えなかったことをするんだ。出来なかったことをやり遂げるんだ。じゃないと前へ進めない。

―――あの日、できなかったことをするんだ



私たちはどこまでいっても、過去が大事なんだなとそうつくづく思う。。いつだってどこまでだって、「あの日」に縛られている。きつくきつく。

でもそれが人間なんだろう。過去は「記憶」そのものだから。過去がない私は、もうその私じゃないように。自分が自分でいるために過去があって記憶がある。

だからそれに価値を大きく付随させてしまう。

それにさ写真は色褪せるけど、記憶だけは色褪せない。たとえ時間とともに解釈が変わるかもしれないけど、本質の部分では同じだと思うんだよ。

永遠ではないけれど、この世界でもっとも永遠に近い概念なんじゃないだろうか。記憶ってやつは。だからこそ変わらない美しさがそこには留められている。そんなふうに思う。

  

 

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そして修司は選択を迫られる。「小夜を追いかける」「願いを叶えさせてやる」の2択だ。

小夜を追いかけると、彼女は修司をみて過去に決着をつけてしまう。お姉さんに会えなくても、それと同等の大事なものを"実感”できれば人は過去とケリをつけられるかもしれない。


そして「願いを叶えさせてやる」と、小夜は修司と約束をしてお姉さんに会いにいってしまう。でも私は思うんだ。過去に縛られていはいるけど、過去を見つめているわけじゃないと。

どの選択を、どの行動をとっても泉水小夜という女の子は「明日」のために行動している。幸せな自分と修司が笑っていられる明日を掴むために、彼女は行動をした。


うん。過去にケリをつけるためには、過去より大事な存在を見つければいいんだと思う。泉水小夜にとって、八代修司にとってそれはたまたまお互いだったんじゃないだろうか。

 

 

「二人で歩いていれば、それでいい――」
「ああ、二人ならそれでいいよな――」

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はい。ということで泉水小夜の感想終わりです。懐かしい書き方でした。うんうんこういうのも悪くはないです。むしろこういう書き方のほうが私は好きなんだなーって実感しました。

こういう感情のうねりをぶつけるだけの記事って、いい作品の場合でしかできない気もします。そのせいかなー? とか。

「TIME―orgel―」を聞きながら記事を書いていたら、なんかもう無性に悲しくなってきて、泣きながら打っていました。そのあとに聞く「TIME」の歌の素晴らしいこと……。 

 そういえば修司が取った選択って2番目って、直樹先生と同じ一手ですよね。あいての為にを想って、行かせてあげる。相手の選択を尊重してあげる。(なんていうとfateのセイバーとか思い出しちゃいます)

 

 

 

 

 

 

 

明日の君と逢うために」雑感コーナー

 

 

 

一人がいい

 

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パンをかじりながら、自分が苛ついているのを再確認する。ただ―――若宮と八代を見ていると、無性に腹が立ってしまうのだ。

「やはり一人がいい……」
「いや、いいも悪いも……ずっと一人だったんだな、わたしは」


大好きだったお姉さんは未だ返ってこなくて、なのに八代修司の前には若宮明日香がいることに耐えられないんだろう。理不尽だと不公平だと、そう思ってしまうんじゃないだろうか。

さらにその修司が明日香にたいするぞんざいな態度にいらいらする。お前は何しに戻ってきたんだ? 大事な若宮明日香が帰ってきたのに、なんで労って優しくしてやらないんだよ。ああむかつく。そんなふうに。

なのに、なぜあいつを大事にしない? わたしなんかにかまってどうする? 正直言って、おまえが羨ましい。会いたい人に会えたんだからな

 

シュウは明日香を取り戻しにここにきた。ううん違う。もっと厳密にいうと、あーちゃんとの明日を取り戻しにきたんだ。7年前のあの夏を、あの日々を、あの遊んだ時間をその延長線上にある未来を求めてここにきたんだ

でもそこにいたのはあーちゃんじゃなかった。外見が一緒なだけの別の違う人がいた。取り戻せなかった。7年前のあの日を。

あの日からずっと引き裂かれるような痛みを覚えていたんだ。失った痛みを、欠けた心を、損失感を、ずっと引きずってきたんだ。

でもあーちゃんじゃなくても、明日香はそこにいた。若宮明日香。記憶がてんでばらばらの知らない知り合い。
シュウはもっと求めても良かった。あの日を。もっともっと求めてよかったんだ。

泉小夜はシュウと似ている。失った人がいて、失った人を待ち続けていた。とても似ている。待つって7年だよ。7年間も待つんだよ。小学校1年生からだったらもう中学生だよ? そんな時間なんだ。それも大人の7年間じゃない。子どもの7年間だ。それがどれほどに蜜で重いものかみんな知っている分かっている。

そんな時間を歩んできたんだ。

 

いや……

わたしは、やはり一人でいるべきなんだ
…………
違う、と言いたかった。
一人でいてもなにも始まらないと。
だけど、泉水は大事な人を失って、何年もそのままで……。いつの間にか、身動きが取れなくなってしまっている。


そうなんだ。みんな時計の針が止まっている。みんな過去だけを見つめている。止まった時間を、止まった思い出を色あせず持ち続けている。

だからここまで来た。長い道のりの果てにここまできたんだ。未来を生きるためじゃない、前を向くためじゃない。過去と決着するために。

止まった時間が彼女たちの生きる原動力だった。そしてそれもいつしか止まってしまう。ううん違うな。止まった人を動かすために何かが必要なんだ。
それは愛とか好きとかそういうものでいい。シュウはそれに気づいたのだろうか。あーちゃんよりも、止まった自分の過去よりも、今止まっている泉水小夜を放っておけないってそう思ってしまったんだろうか。

 

「姉さん……」

わたしはずっと、ひとりぼっちでもかまわないと思ってきました。
ただ一人、会いたい人は姉さんだけ。

優しかったあなたが大好きだから……。
もうこの世界にいないとわかっていても、会いたくて会いたくたまらない。
ずっとそう思ってきたから……今更、誰かと一緒にいることを選んでしまったら―――

これまでの自分の想いも、姉さんのことも裏切ってしまうような気がするんです。

泉水小夜は、明日と契約したんだ。それは願いといってもいいのかもしれない。自分が捧げられる大事なものを捧げて、一番大事なものを欲しいって。大事だったお姉ちゃんが帰ってきてほしいってそうやってずっと思ってきたんだ。

大事だった友だち、そういう周囲の人間をすべて捧げて、自分に課して生きてきた。すべてはあの日を取り戻すために。

本当はわたしも、終わりにしたいんだ。もう、あれから10年……。

戻ってこないとわかっている人を待ち続けるには……あまりにも長すぎた。
姉さんの代わりなんていない。だけど、わたしには新しい繋がりが必要……なんだと思う

シュウは7年で小夜は10年。10年だぞ、10年もすべてを払って成し遂げたかったんだ。でももう、もう泉水も気づいているんだろう。私のお姉ちゃんは帰ってこないんだって。

10年も孤独に耐えて、周りを拒絶して、得たのはなんだったんだろう。何もなかったじゃないか。失って失って失って失っていくばっかりだったじゃないか。でもこういうとき人は決して立ち止まらないことを私は感覚としてわかる。

もう一度はじめてしまったんだ。年数を積むごとに、失った何かに対して意味をつけはじめる。「あともう少しで」と。あとすこしでお姉ちゃんが帰ってきて、そうしたら失った分のものは全部帳消しになるんだって。そう思ってしまうんだ。

進んでいるように見えて、ずっと同じ場所にいる泉水小夜。そんな彼女が望んでいたのは止まった自分を動かしてくれる何かだったんじゃないだろうか。

それは泉水咲でもいいし、またはほかの―――修司でもいい。

八代が来てくれた。だから、わたしはもう待つのをやめにしよう……

人の気持ちは変わるんだよ

小夜の顔に、穏やかな笑みが浮かんでいる。

 

いつかは、区切りをつけなくてはいけなかったんだ。

―――

りんが余計なことを言わなければ、俺たちはお互いだけを見て、恋を楽しんでいられたんだろう。―――大事なことから目を背けたまま。

やっぱり姉さんのことをもっと知りたい。どうして、いなくなったのか……それを知らないと、わたしは先に進めない……。

止まった時間を動かすためには、止まった時間そのものに干渉しなければいけないんだ。

 

飯のこととか遊ぶことしか考えないようだけど、優秀だ。たぶん、良い学校に進学するだろう

だろうな
そして、俺は明日香より遙かに学力が劣る

でも、明日香が、やりたいことがあるのに、自分の進路とか未来とか棒に振って、俺と同じ学校に通うーーなんていいだしたら、俺は怒るね

そんなの友情でもなんでもない。ただの馴れ合いだろ。
友だちが、進みたい道があるならそれを応援する。そういうことだろう。
咲さんは、理由はともかく自分の意志で『向こう』の世界へ行った

直樹先生は、咲さんがやったことを認めてあげたんだ。自分の好きなようにすればいい、帰ってこなくても仕方ないって


咲さんの行動は私はなんとなくだけどわかる。ここよりずっと遠い世界。誰も見たことがない世界、誰も自分のことを知らない世界。そういう最果ての願望を有していたんじゃないだろうか。

そして実行に写した。それはもう"ここ”に未練がないということでもある。たしかに小夜や里香姉のことは心配はしているかもしれない。でもそれはほんのすこしだろう。きっと二人は私がいなくてもやっていける、いやそもそも自分がいなくなって悲しんでいるなんて考慮外かもしれない。

でも思うんだよ。それは自殺とどう違うのだろうと。向こうの世界が死の世界にしか見えない。もっというなら人間にとってはか。

むこうの世界からこっちに帰ってきた明日香は、記憶を消失して帰ってきた。記憶というのはその人そのもの。それを失うことはその人はもうどこにもいないということになる。

人間を突き詰めていくと最後には「記憶」という情報の蓄積が人間自体になりうるのかもしれない。

いやずれた。
そしてそんな向こう側へ行ってしまった人間を認めてあげるのはとても難しいのかもしれない。誰だって今生の別れは嫌だ。

 

修司と一緒にいれば、わたしは笑っていられる。だけど、ふとした瞬間に―――

待っているだけじゃダメだったんだ。こっちから会いにいけば―――それでよかったんだ。神には、おまえには人の願いを叶える力があるんだろう?

でも叶えるにはそれなりの代償をもらうことになっている

わたしが『向こう』に消えたら、みんなが、――わたしを忘れてくれるように

 

このあとシュウは選択をすることになる。小夜を引き止めるか、願いを叶えさせてやるかの二択だ。そしてどちらを選んでも、彼女はお姉さんに会って、「姉さんとずっと一緒にいたかったと。大好きだったと」気持ちを伝えたんだろう。

どちらを選んでも、小夜はお姉さんに会わなければいけない。会って気持ちを伝えないと前へ進めないんだ。

泉水小夜―――俺が大好きな女の子。
忘れるものか、絶対に。
俺は、もう一度待ち続けるんだ。

いや、あーちゃんを待っていたときとは違う。
もう二度と会えないかもなんて―――そんなことは少しも思わない。
今度は、再会を確信したお別れなんだ。
短くても、小夜と重ねてきた時間が、再会を信じさせてくれる。

決して忘れない、あきめない意志が俺の中に宿っている。


泉水の願いを叶えさせたとき、修司はそう思った。

もう一度会えて、お互いのことを覚えていたら……
恋の続きを、してくれるか……?

これからもずっと続いていくんだ。俺たちの恋はまだ終わってなんかいない……
うん……

小夜、これが俺の願いだよ。
神様にじゃなくて、俺の心に、そして小夜の心に願う。
いつか必ず、願いが叶いますように――


小夜が向こう側にいったあと、修司以外の誰ひとり泉水小夜を覚えているものはいなかった。修司だけが彼女を覚えいた。忘れていなかったんだ。

でもなぜ彼だけが忘れていなかったんだろうか。りんが修司の願いを叶えた―――んだと思っていたけどどうも違うような気がする。修司は「神様にじゃなくて、俺の心に、そして小夜の心に願う」と言っている。

そして小夜自身は「もう一度会えて、お互いのことを覚えていたら」と言っている。もしかしたら小夜の願いが、本当の心から思った願いをりんは叶えてあげたのかもしれない。

りんは本当に心から叶えたいという願いしか、叶えないと毎回言っている。泉水小夜は

 



修司以外がわたしを忘れてくれるように―――

いや

修司だけがわたしを覚えているように。

そう願ったのかもしれない、もしそうなら帰ってきた泉水小夜の記憶は、修司以外は全欠損している可能性もある。だってそれが奇跡への代償なのだから。

すると「なんでそんな願いをしたんだ? 大損じゃないか」とも思う。だって泉水小夜は修司や周りの人間に悲しい想いをしてほしくないから、りんに願ったんだ。

「どうかみんながわたしを忘れてくれますように―――」

そしてそれが修司の言葉によって、想いによって変わったのだとしたら。

「修司だけがわたしを覚えてくれますように―――」

一番悲しんでほしくない人に、悲しんでもらう。覚えてもらう。それは泉水小夜と修司が交わした「約束」だったんじゃないだろうか。

ぜったいわたしはここに帰ってくるよ。りんが、神様が、もうこっちの世界には帰ってこれないとか言っているけどぜったいに帰ってくるよ。だからその時まで―――。

泉水は過去に決着をつけるために、向こう側へと行く。それはなにも過去に引きずられての行動じゃない。明日を夢見て、その明日を迎えるために、未来に希望を託しただけだったんじゃないだろうか。

それが高リスクだけの願い事。それはりんが叶えてくれるとかそういう話じゃなくて、泉水小夜自身が心の底からおもっただけのことなんだとそう思う。

 

だたいま、修司
おかえり、小夜――

 

待って待ち続けて、それで誰かがその場所に現れてくれたら、今まで待っていた分なんてちゃらになるんだ。

 

「あんな騒がしい家で暮らして、騒がしい教室で授業を受けて――」
「帰りは、お前がいるから」
「悲しみが入り込んできても、すぐにどこかへ消えてしまう」

「二人で歩いていれば、それでいい――」
「ああ、二人ならそれでいいよな――」

まだまだ終わらない夏を、風が吹き抜けてゆく。緑の木々が揺れ、彼女の髪もさらさらとなびいている。
俺も、彼女も待ち続けるだけの長い時間を終わらせて――

今は、二人で一緒にどこかで向かっている途中。
歩いて行く道の先に、なにがあるのか知らないけれど。

この青い空の下にある、俺たちだけの景色を見つけに行こう――

 

 

 

 

 

七海の一人称

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わかったよ。ほら、自己紹介しろ三つ編み。
三つ編みって呼ぶな! 七海! 七海 美菜!


七海はなんで一人称が「七海」なんだろう? 私とか美菜じゃなくて「七海」。自分の名前を一人称にするってお前さんどうしたのだよ。

 

 

寂しさは誰にもわからない

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こんなとこに一人で寂しくないか?
別に
騒がしい教室よりはずっとマシだ

わたしが寂しいかどうか、他人にわかるはずがないだろ

 

いいね、こういう小夜の強気なところ。勝手に私を規定するなら、他人のくせに―――なんて言っているようでとてもいい。

 

 

 

半身

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『昔のあなたとシュウは、まるで二人で一人みたいだったのよ』


いつの日か、里香姉は明日香にそう言った。おそらく明日香にピンともこなかっただろう。

シュウは7年間もその痛みを味わってきたんだ。好きとかそういう感情を超越した存在があーちゃん。そんなあーちゃんがある日消えた。
それは半身をもがれたような痛みだったと思う。7年、7年だぞ。

 

 

倫理を超えて

そう、泉水さんか。あたし、あんたのこと気に入らないわ。

奇遇だな。わたしもおまえは好きになれそうにない。


やっぱりこううい心象強度が高い人を見るととても羨ましいと思ってしまう。いいよねこういうの。他者の心を読解しようとせず、それに整形した言葉を作らず、ストレートに投げつけるこの感じ。たまらない。

 

 

他者を超えて

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ふーっ、とにかく生き返った
大げさな奴だ

(泉水はそう言って、浜辺のほうに目を向ける。明日香と七海、それにリコまで混じってなにやら砂遊びをしているようだ)

そろそろみんなのところに戻るか
戻りたかったら一人でもどれ。わたしは、もう少しここにいる

 

この場合、流されやすい人、空気を読む人は一も二もなく「うん」と頷いてしまうものだ。それは他者との軋轢を生まないために、他者に不快を感じさせないようにする最低限の処世術。

しかし、こればかりやっていると自分が周りに殺されてしまう。緩慢に緩慢にゆっくりと殺されていく。

泉水小夜はそうじゃない。

いつだって彼女は他者を拒絶する。それは集団から自分から遠ざかるということだ。まともな精神、低い能力の持ち主じゃこうはいかない。

一人で生きていくのって苦しいからものだからだ。寂しさを抱え苦しさを感じてもなお、他者を拒絶するその姿はただただかっこよく美しい。

そして、それはお姉さんとの遺恨を残してゆえの状態だとも言える。たしか彼女がこういうふうになってしまったのは、お姉さんのときのように大事な人が失う痛みをかんじたくないからじゃなかったけ 。

 

水着と似合う

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それ、昨日買った水着だよな
……ああ

すげえ似合ってるよ、それ
当たり前だろう


あれ?

そこは『何を恥ずかしいこと言っているんだ!』とか照れてほしかったな
なぜ私がおまえの希望に添わなければいけないんだ。自分に似合うものを買うのは当たり前だ。わざわざ似合ってる、なんて言われても嬉しくない。


思ってることをそのまま直接言って、かつ自分の心を傷つかない方法を模索したい。心象強度を高めたい。

 

 

リコとお礼

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シュウ先輩、明日香先輩、七海先輩、瀬戸先輩
本当にありがとうございました

……?
別にお礼を言われることなんてしてないぞ、七海たちは
今回ばかりは七海の言うとおりだね

いいんだよ
瑠璃ちゃんがお礼を言いたいなら、言えばいいし、あたしたちも受け止めるから


明日香の言うとおりなんだよね。誰かがお礼を気持ちを打ち明けているのに「そんなこと言わなくていいよ」なんて言葉はとても冷たい。

 

 

 

 

りんの感覚

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どうだ、学園祭は楽しかったか?
みんな楽しそうだった。りんにはそれで充分……
りん自身はどうだったんだ?
……わからない
もうわからなくなってるから……


りんとのお別れまで、もう少し。そんなりんは楽しいのかどうか分からないという。

なんでだ? 感覚機能が欠落していっているのか? 人間の世界に適用するための代償とかがあったのだろうか。それとも神様の世界に―――向こうの―――世界にいくということは人間らしさもおいて行ってしまうということなんだろうか。

 

 

選択。選択。選択。

 

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修司は島に戻ってきて、とりあえず周りのいろいろなことを知ろうとした。色々な人とか関わってきた。

……ん?
今回のお祭りまでに、修司はいくつもの選択を重ねてここにいる。だけど、まだこれから。

修司が本当になにを選んで、なにを手に入れて――


修司はいくつも選択を最後で選ぶことになる。泉水小夜、瑠璃子で必ずどちかを選ぶ。選ぶこと。選ぶこと選ぶこと。

 

 

選択と失うこと、取り戻すこと

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修司は大事なものを取り戻すために島に戻ってきた。
修司には大事なものがある。そのことは、りんも7年前から知っている。

そうだ、俺は取り戻すためにここにいる

だけど、修司は―――もしかしたら、なにもかも失うことになるかもしれない。


りんにはどこまで見えているんだろう。どこまでを見据えているんだろう。すべての光を吸収してしまうような黒曜石の目でなにを見つめているんだろうか。

失うことと、取り戻すこと、そして選択すること。全て何か繋がっている。

 

 

 

 

―――学園祭終了―――

 

 

言いたくないことを無理に言うわけ無いだろ

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どうして明日香を気にするのか、言いたくなければ言わなくていい

当たり前だ。言いたくないことを無理しておまえに話すわけないだろう。

 

集団に埋没して、自分の意見を殺してなるべく他者と合わせようとふんばっている私からするととてもガツンガツンくる。

「どうして明日香を気にするのか、言いたくなければ言わなくていい」

「当たり前だ。言いたくないことを無理しておまえに話すわけないだろう」


うんまさしく。孤高な人間はただそれだけでかっこいいんだよねえ。引き換えに一人になってしまうけど、他者に強制されたわけではなく一人で独りになるならそれはそれでいいのかもしれない。

 

……ずいぶんと優しいことだ
誰にでも優しいわけじゃないからな。自慢にはならない。
誰にでも優しい奴なんて信用できるものか

 

ですね。

 

 

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<参考>