つよきす 三学期レビュー 無印版を全てなかったことにして新たに作り直された本作は「つよきすとは何か?」を考えさせてくれる
*本記事は『つよきすCHRONICLE』(『つよきすFull Edition』→『つよきす三学期Full Edition』)の流れのもとで記述されており、また筆者は制作背景に関わる全てを重視しておらず《物語そのもの》の視点で語っていることにご注意。
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舞台裏、制作背景、開発環境は「作品を評価」する上で何ら関係がない。無価値だ
(1)再解釈されるつよきす(作品紹介)
『つよきす(&Full Edition)』(以下無印版)の各ヒロインと結ばれるお話を全てなかったことにして、『つよきす三学期 Full Edition』(以下三学期)は新たに各ヒロインとの恋愛模様を描く作品になっている。
無印版の共通√・各ヒロインの特徴をほそぼそ引き継いでいるものの――先述したように個別√を無かったことにしたこと、季節が春から冬へと移行したこと、新キャラクターが続々投入したことから本作は実質「つよきすの再解釈・再構成」を試みたと言っていい。
リメイク作品は往々にして「ドット絵から3D」「ボイス無からボイス有」「ピコピコ音から滑らかなサウンド」といったふうに作品外形の強化が行われるものだが、「中身」つまり物語の大筋・骨格と呼べるものは触れない傾向にある。その理由のひとつとしてシナリオの大幅な変更をしてしまえばそれはもう原作とは別の作品になってしまうからであり、例え中身に触れるとしても原作を尊重した上での追加要素・不適切な表現の削除に留まるのが多いのではないだろうか。絵も違う、音楽も違う、シナリオも違うとなったらそれは「◯◯のリメイク」という体裁を整えなくなってしまうだろう。
しかし『三学期』においてその「中身」まで書き換えられたため、本作は"リメイク"ではなく"原作の再解釈"作品という位置づけで見ていきたいと思う。
続きを読む『BALDR SKY Dive1』は過去と現代・ADVとACT2つのスイッチングで退屈をはぎとる!(作品紹介)
*今回大まかな作品構造に触れざるを得ないので、そういうのが嫌いな未プレイ者は読まないほうがいい。逆に「序盤のちょっとした情報くらいなら大丈夫」って人は、ここから先どうぞ。
2つのスイッチングで"退屈"を剥ぎ取る『BALDR SKY』
ヒロインに起こされる所から、本作は始まる。
「甲…起きて」
――とか、考えていると、ほら、さっそく、『あいつ』の呼ぶ声が聞こえてくる。
「…ほら起きて。早く起きないと遅刻しちゃうよ?」
そう、もう起きないと、学園の始業時間に遅れてしまう。
さっさと朝食を済ませて、今日も学園に行かなくちゃ。
――『BALDR SKY Dive1』
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異世界転生で得られる教訓は「今までの全てを取り替えることで人間の行動は変わる」という考え方(無職転生~本好きの下克上)
*両作品はほんのすこし触れる程度。
異世界転生と環境
『無職転生』『本好きの下克上』『この素晴らしい世界に祝福を!(アニメ)』『Re:ゼロから始める異世界生活(アニメ)』を読んでいると目をひかれるのは転生者は前世とは違う行動を取っていることである。
『無職転生』ならばルディは転生前は34歳無職で家族に更生を促されても聞く耳を持たず一日中PCに向かい無駄に無駄を極めた生活を送っていた。ときには幼子をオカズにし、養ってもらっている母親には傲慢な態度を取っては、周囲からはゴミを見るような視線を集めていた。
きっと彼からPCを遠ざけても働くことはなかっただろうし、または家を追い出しても(結果的に追い出すんですけどね)「俺これから一人で生きなきゃ」なんて思うこともなく流れのまにまに野垂れ死んていただろう。
彼に何かを与え、あるいは何かを失ったとしても、何も変わりはしないだろう。変わらずにいつまでも養護される立場を望み続けたに違いない。そう思わせる行動の数々であり、どこからどう見ても社会的には要らない存在であり、人として尊敬されるような人物ではないのである。
け・れ・ど
続きを読む『つよきす Full Edition』レビュー ゴキブリをかばう前代未聞のヒロインに腹筋が震える
*前半は作品紹介、後半は感想。
1)可憐でお淑やかなヒロインなんてものは存在しない
あなたはゴキブリを庇い立てるヒロインに出会ったことはあるだろうか? 私は『つよきす』をプレイするまでただの一度もお目にかかったことはなかったし、これからも出会うことはないと思う。
だって、あの、黒光りする生物だぞ?
見つけたら即刻悲鳴を上げながら殺虫スプレーを撒き散らし残骸をゴミ箱にいれるのすら嫌悪を催す存在を、例え、一時でも守りぬいたヒロインなんてそうそうお目にかかれるものではない。物語至上、一体何人の女の子がゴキブリを庇い立てる暴挙に走っただろうか。(もちろん相応の理由はあるのだけど)
そんな「ヒロイン」という像からどこまでも掛け離れたヒロインが登場するのが本作であり、強気で勝ち気でわがままで――一筋縄ではいかない――女性陣が待ち構えているのも『つよきす』の醍醐味である。
可憐でおしとやかなヒロインなんてものは存在しないのだ。存在するのは何かにつけて主人公をしごく上級生(体育会系)、主人公を手駒として扱う生徒会長、滅茶苦茶口が悪い幼なじみ、ガンをつけてくる後輩などなど。
彼女たちによって男性主導の男女関係は終焉を迎え、女性主導の男女関係がはじまっていく……というと大げさだけど女性の立場が強い作品である。
――http://www.candysoft.jp/ohp/01_products/tuyokiss/chara/character.html#nagomi
一見すれば、癖の強そうな女性ばかりなのでストレスのかかる物語なのかな?と疑心暗鬼になってしまいそうだが、これが最高なのである。
女性に主導権を握られるというのは尻に敷かれるのと同義ではあるが、合意の上ならば安心感に変わる。気軽に甘えられるということでもある。まるで「姉と弟」のような、その延長線上のような恋愛。案外これはこれでいいものだなと気付かされた。
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